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  • 特開-二酸化炭素濃縮装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128309
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】二酸化炭素濃縮装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/14 20060101AFI20240913BHJP
   A01G 9/18 20060101ALI20240913BHJP
   A01G 7/02 20060101ALI20240913BHJP
   B01D 53/18 20060101ALI20240913BHJP
   B01D 53/62 20060101ALI20240913BHJP
   B01D 53/78 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
B01D53/14 210
A01G9/18
A01G7/02
B01D53/18 ZAB
B01D53/62
B01D53/78
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037234
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】田邊 史行
(72)【発明者】
【氏名】松村 貴士
(72)【発明者】
【氏名】児島 俊貴
【テーマコード(参考)】
2B022
2B029
4D002
4D020
【Fターム(参考)】
2B022DA12
2B022DA15
2B029JA02
2B029JA06
2B029JA10
4D002AA09
4D002AC10
4D002BA02
4D002CA06
4D002DA17
4D002DA19
4D002DA31
4D002DA70
4D002EA07
4D002FA01
4D020AA03
4D020BA07
4D020BA16
4D020BA19
4D020BA30
4D020BB04
4D020BC02
4D020CB03
(57)【要約】
【課題】加圧と除圧を繰り返すだけで大気中の二酸化炭素を濃縮することができる二酸化炭素濃縮装置を提供する。
【解決手段】気体から当該気体中に含まれる二酸化炭素を吸収することで二酸化炭素を捕集する二酸化炭素濃縮装置であって、前記装置が二酸化炭素吸収液を内部に有する容器と、気体を圧縮するためのピストンとからなり、前記ピストンが気体を給排気するための給排気口を備え、前記給排気口が気体の出入りを制御するバルブを備え、前記二酸化炭素吸収液がイオン液体である二酸化炭素濃縮装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体から当該気体中に含まれる二酸化炭素を吸収することで二酸化炭素を捕集する二酸化炭素濃縮装置であって、前記装置が二酸化炭素吸収液を内部に有する容器と、気体を圧縮するためのピストンとからなり、前記ピストンが気体を給排気するための給排気口を備え、前記給排気口が気体の出入りを制御するバルブを備え、前記二酸化炭素吸収液がイオン液体である二酸化炭素濃縮装置。
【請求項2】
前記イオン液体を構成するカチオンがイミダゾリウム及び/又はイミダゾリニウムである請求項1に記載の二酸化炭素濃縮装置。
【請求項3】
前記気体が空気である請求項1又は2に記載の二酸化炭素濃縮装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素濃縮装置に関する。
【背景技術】
【0002】
施設園芸では光合成によりハウス内二酸化炭素濃度が低下して植物の生育に悪影響が出るため、人工的に二酸化炭素を供給する必要があった。従来は灯油を燃やして発生した二酸化炭素を施設内に導入する装置や、大気中の二酸化炭素をゼオライト等で吸着させ熱をかけて脱離させる装置等で二酸化炭素を供給していた(特許文献1及び2)。
【0003】
一方、上記装置は化石燃料を燃焼させる必要があり、燃料代が必要なうえ持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)に向けたエネルギーの観点から好ましくない。また後者も二酸化炭素を脱離させるため高温にする必要があり電力が大きくなってしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-147996号公報
【特許文献2】特開2019-062862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、加圧と除圧を繰り返すだけで大気中の二酸化炭素を濃縮することができる二酸化炭素濃縮装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の目的を達成すべく鋭意検討を行った結果、本発明に到達した。すなわち本発明は、気体から当該気体中に含まれる二酸化炭素を吸収することで二酸化炭素を捕集する二酸化炭素濃縮装置であって、前記装置が二酸化炭素吸収液を内部に有する容器と、気体を圧縮するためのピストンとからなり、前記ピストンが気体を給排気するための給排気口を備え、前記給排気口が気体の出入りを制御するバルブを備え、前記二酸化炭素吸収液がイオン液体である二酸化炭素濃縮装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の二酸化炭素濃縮装置は、加圧と除圧を繰り返すだけで大気中の二酸化炭素を濃縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】二酸化炭素濃縮装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の二酸化炭素濃縮装置は、気体から当該気体中に含まれる二酸化炭素を吸収することで二酸化炭素を捕集する二酸化炭素濃縮装置であって、前記装置が二酸化炭素吸収液を内部に有する容器と、気体を圧縮するためのピストンとからなり、前記ピストンが気体を給排気するための給排気口を備え、前記給排気口が気体の出入りを制御するバルブを備える。
【0010】
本発明における気体は、二酸化炭素を含む気体である。二酸化炭素を含む気体としては、空気、工場等で排出される排気ガス等が挙げられる。
【0011】
本発明における二酸化炭素吸収液はイオン液体である。
イオン液体は、カチオン(陽イオン)とアニオン(陰イオン)とを主成分(例えば、50重量%以上、好ましくは80重量%以上、更に好ましくは90重量%以上、特に好ましくは100重量%)として含み、常温常圧下(例えば、100℃程度以下、1気圧程度)で液体の形態であればよい。
【0012】
カチオンとしては、1価の有機カチオン、例えば、アンモニウム、イミダゾリウム、イミダゾリニウム、ピリジニウム、ピロリジニウム、ピペリジニウム、ホスホニウム及びスルホニウム等が挙げられる。
【0013】
アンモニウムとしては、例えば、テトラアルキルアンモニウム[例えば、トリメチル-n-プロピルアンモニウム、n-ブチル-トリメチルアンモニウム、n-ヘキシル-トリメチルアンモニウム、トリエチル-メチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、n-ブチル-トリエチルアンモニウム、テトラ-n-ブチルアンモニウム等のアルキルアンモニウム等];官能基を有するアンモニウム[例えば、2-ヒドロキシエチル-トリメチルアンモニウム等のヒドロキシル基を有するアンモニウム;2-メトキシエチル-ジエチル-メチルアンモニウム等のエーテル基を有するアンモニウム等]等が挙げられる。
【0014】
イミダゾリウムとしては、例えば、1,3-ジアルキルイミダゾリウム[例えば、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム、1-n-ブチル-3-メチルイミダゾリウム、1-n-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウム、1-n-オクチル-3-メチルイミダゾリウム等];官能基を有するイミダゾリウム[例えば、1-メチル-3-ノナフルオロヘキシルイミダゾリウム、1-メチル-3-トリデカフルオロオクチルイミダゾリウム等のフッ化アルキル基を有するイミダゾリウム;1-(3-アミノプロピル)-3-ブチルイミダゾリウム等のアミノ基を有するイミダゾリウム等]等が挙げられる。
【0015】
イミダゾリニウムとしては、例えば、1,2,3,4-テトラメチルイミダゾリニウム、1,3,4-トリメチル-2-エチルイミダゾリニウム、1,3-ジメチルイミダゾリニウム、1,3-ジメチル-2,4-ジエチルイミダゾリニウム、1,2-ジメチル-3,4-ジエチルイミダゾリニウム、1-メチル-2,3,4-トリエチルイミダゾリニウム、1,2,3,4-テトラエチルイミダゾリニウム等が挙げられる。
【0016】
ピリジニウムとしては、例えば、N-アルキルピリジニウム[例えば、N-エチルピリジニウム、N-ブチルピリジニウム等]等が挙げられる。
【0017】
ピロリジニウムとしては、例えば、N,N-ジアルキルピロリジニウム[例えば、N-メチル-N-プロピルピロリジニウム、N-ブチル-N-メチルピロリジニウム等]等が挙げられる。
【0018】
ピペリジニウムとしては、例えば、N,N-ジアルキルピペリジニウム[例えば、N-メチル-N-プロピルピペリジニウム、N-ブチル-N-メチルピペリジニウム等]等が挙げられる。
【0019】
ホスホニウムとしては、例えば、テトラアルキルホスホニウム[例えば、トリエチル-ペンチルホスホニウム、テトラブチルホスホニウム)、トリヘキシル-テトラデシルホスホニウム等]等が挙げられる。
【0020】
スルホニウムとしては、例えば、トリアルキルスルホニウム(例えば、トリエチルスルホニウム等)等が挙げられる。
【0021】
これらのカチオンのうち、二酸化炭素の吸収性の観点から好ましくはイミダゾリウム及びイミダゾリニウムであり、更に好ましくはイミダゾリウムであり、特に好ましくは1-エチル-3-メチルイミダゾリウムである。
これらのカチオンは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0022】
アニオンとしては、1価の陰イオン、例えば、フッ素含有アニオン、シアノ基含有アニオン、ハロゲンイオン(例えば、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等)、アルキルスルホネートイオン[例えば、メタンスルホネートイオン等アルキルスルホネートイオン等]、アルキルカルボキシレートイオン[例えば、酢酸イオン等のアルキル-カルボキシレートイオン等]、芳香族カルボキシレートイオン[例えば、フタル酸イオン等]、スルフェートイオン[例えば、メチルスルフェートイオン、エチルスルフェートイオン等のアルキルスルフェートイオン、ヒドロキシスルフェートイオン等]、硝酸イオン、アミノ酸由来のアニオン等が挙げられる。
【0023】
フッ素含有アニオンとしては、例えば、トリフラートイオン又は、ビス(フルオロスルホニル)アミドイオン又はビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミドイオン、[あるいはビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオンともいう]、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドイオン等のスルホニル基を有するアニオン;テトラフルオロホウ酸イオン、トリフルオロメチル-トリフルオロボレートイオン等のホウ素を有するアニオン;ヘキサフルオロリン酸イオン、トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェートイオン等のリンを有するアニオン;トリフルオロ酢酸イオン等のフッ化アルキルカルボキシレートイオン等が挙げられる。
【0024】
シアノ基含有アニオンとしては、例えば、ジシアナミドイオン、トリシアノメチドイオン及びテトラシアノボレートイオン等が挙げられる。
【0025】
アミノ酸由来のアニオンとしては、例えば、グリシン、アラニン、β-アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン、メチオニン、アスパラギン、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リシン、アルギニン、ヒスチジン、トリプトファン及びプロリン等に対応するカルボキシレートイオン等が挙げられる。
【0026】
これらのアニオンは、単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。これらのアニオンのうち、二酸化炭素の吸収性の観点から好ましくはフッ素含有アニオン及び芳香族カルボキシレートイオンであり、更に好ましくはフッ素含有アニオンであり、とくに好ましくはテトラフルオロホウ酸イオンである。
【0027】
代表的なイオン液体としては、例えば、アンモニウム、イミダゾリウム及びホスホニウムからなる群から選択される少なくとも1種のカチオンと、フッ素含有アニオン、シアノ基含有アニオン及びアミノ酸由来のアニオンからなる群から選択される少なくとも1種のアニオンとを含むイオン液体等が挙げられる。
イオン液体の具体例としては、テトラフルオロホウ酸1-エチル-3-メチルイミダゾリウム及びフタル酸1,2,3,4-テトラメチルイミダゾリニウム等が挙げられる。
これらのイオン液体のうち、二酸化炭素の吸収性の観点から好ましくはテトラフルオロホウ酸1-エチル-3-メチルイミダゾリウムである。
【0028】
また、イオン液体は、前記イオン液体とともに、イオン液体以外の他の液体(又は第2の液体)を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。第2の液体としては、イオン液体と相溶可能な限り特に制限されず、揮発性が比較的低い液体である場合が多い。第2の液体としては、促進輸送剤、例えば、ヒドロキシル基を有するアミン(例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン等のモノ乃至トリアルカノールアミン等)、ポリアミン(例えば、(ポリ)エチレンポリアミン(例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等)等の(ポリ)アルキレンポリアミン等]等のアミン等が挙げられる。
【0029】
本発明の二酸化炭素濃縮装置は、前記装置が二酸化炭素吸収液を内部に有する容器と、気体(二酸化炭素を含むガス成分であり、例えば、空気、工場等で排出される排気ガス等)を圧縮するためのピストンとからなり、前記ピストンが気体を給排気するための給排気口を備え、前記給排気口が気体の出入りを制御するバルブを少なくとも備える。
【0030】
二酸化炭素濃縮工程は、例えば以下のように行われる。
図1に示す容器1中にイオン液体3を封入する。給排気口4から空気を供給しバルブ5を閉じ、ピストン2を押し下げて容器1内の空気を圧縮し、静置する。この状態でバルブ5を開放し、容器1内の圧縮空気を外部に排気し、ピストン2を圧縮前の位置にまで戻し、容器1内に新鮮な空気を供給する。この圧縮、排気、新鮮空気供給のサイクルを繰り返した後、バルブ5を開いた状態でピストン2を下げ、容器内の空気を全て排気し、この状態でバルブ5を閉じる。次いで、ピストン2を引き上げることでイオン液体3中に溶解した二酸化炭素を含む気体を容器内に取り出し、バルブ5を開いた状態でピストン2を押し下げることで給排気口4から二酸化炭素を含む気体を取り出す。
【0031】
農業分野(又は施肥用途)においては、屋内の二酸化炭素濃度を所定の水準に維持できる程度に、空気等から供給することを目的として利用される。施肥用途においては、例えば、100ppm(体積基準)程度の二酸化炭素濃度の低下であっても、植物(又は作物)の収穫量に大きく影響することが知られている。従って、比較的低い濃度であっても、二酸化炭素を濃縮できる本発明の二酸化炭素濃縮装置は、農業分野における二酸化炭素の施肥用途に好適に利用できる。
【0032】
施肥の対象となる植物は特に制限されず、農業用又は園芸用施設(例えば、温室、ビニールハウス及び植物工場等)等の屋内で栽培される植物であることが多い。具体的には、例えば、イチゴ、トマト、キュウリ、もやし等の果物又は野菜、バラ、水草等の花卉(又は観賞用植物)等であってもよい。
【実施例0033】
以下本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0034】
実施例1
図1に示す100mlの容器中にイオン液体としてテトラフルオロホウ酸1-エチル-3-メチルイミダゾリウムを20ml封入した。室温にて給排気口から空気(二酸化炭素濃度400ppm(体積基準))を供給し、ピストンにより容器内の空気が10気圧になるまで圧縮し、この状態で30秒間静置した。この状態でバルブを開放し、容器内の圧縮空気を外部に排気し、ピストンを圧縮前の位置にまで戻し、容器内に新鮮な空気を供給した。この圧縮、排気、新鮮空気供給のサイクルを30回繰り返した後、バルブを開いた状態でピストンを下げ、容器内の空気を全て排気し、この状態でバルブを閉じ、ピストンを引き上げることでイオン液体中に溶解した二酸化炭素を含む気体を取り出した。気体の体積は1気圧下で0.6ml、二酸化炭素濃度は60%(体積基準)であった。
【0035】
比較例1
二酸化炭素吸収性溶媒としてイオン液体の代りに水20mlを用いた以外は実施例1と同様にして行った。回収した気体の体積は1気圧下で0.9ml、二酸化炭素濃度は40%(体積基準)であったが水が蒸発したため水の内容量は15mlに減少した。
【産業上の利用可能性】
【0036】
空気中のような比較的低い濃度であっても、二酸化炭素を濃縮できる本発明の二酸化炭素濃縮装置は、農業分野における二酸化炭素の施肥用途に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0037】
1:容器
2:ピストン
3:イオン液体
4:給排気口
5:バルブ
図1