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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128312
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】物品検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/18 20180101AFI20240913BHJP
   G01N 23/04 20180101ALI20240913BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20240913BHJP
【FI】
G01N23/18
G01N23/04
G06T7/00 600
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037238
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000147833
【氏名又は名称】株式会社イシダ
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100180851
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼口 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100156395
【弁理士】
【氏名又は名称】荒井 寿王
(72)【発明者】
【氏名】吉田 昇馬
(72)【発明者】
【氏名】万木 太
(72)【発明者】
【氏名】堤 弘法
(72)【発明者】
【氏名】岩見 有希
(72)【発明者】
【氏名】池田 真也
【テーマコード(参考)】
2G001
5L096
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001BA11
2G001CA01
2G001DA08
2G001FA02
2G001FA06
2G001FA09
2G001FA12
2G001FA30
2G001HA07
2G001HA13
2G001JA09
2G001KA03
2G001LA01
2G001MA04
2G001PA11
2G001SA14
5L096BA03
5L096CA17
5L096CA24
5L096FA06
5L096FA59
5L096GA51
5L096KA04
(57)【要約】
【課題】折れた物品を不良品と精度よく判定することが可能な物品検査装置を提供する。
【解決手段】物品検査装置100は、物品BにX線を照射するX線照射部6と、物品Bを透過したX線を検出するX線検出部7と、X線検出部7の検出結果から生成されるX線透過画像に基づいて学習済みモデルを用いて物品Bが良品か不良品かを判定する判定部13と、を備える。判定部13は、X線透過画像における物品Bの輪郭に基づき学習した第1学習済みモデルと、X線透過画像における物品Bの端部に基づき学習した第2学習済みモデルと、を学習済みモデルとして用いる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品に電磁波を照射する照射部と、
前記照射部により照射され前記物品を透過又は反射した前記電磁波を検出する検出部と、
前記検出部の検出結果から生成される画像に基づいて、学習済みモデルを用いて前記物品が良品か不良品かを判定する判定部と、を備え、
前記判定部は、
前記画像における前記物品の輪郭に基づき学習した第1学習済みモデルと、前記画像における前記物品の端部に基づき学習した第2学習済みモデルと、を前記学習済みモデルとして用いる、物品検査装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記第1学習済みモデルを用いた判定結果と前記第2学習済みモデルを用いた判定結果とのうちの少なくとも何れかが、前記物品を不良品と判定する判定結果の場合に、当該判定結果を出力する、請求項1に記載の物品検査装置。
【請求項3】
前記画像を表示する表示部と、
前記表示部に表示された前記画像に、ユーザの指定により前記物品の端部に関する指定箇所を描画する描画部と、
前記画像における前記指定箇所を含む一部分を教師データとした機械学習により、前記第2学習済みモデルを生成する学習部と、を備える、請求項1又は2に記載の物品検査装置。
【請求項4】
前記学習部は、前記画像における前記物品の面積が下限閾値以下の場合、当該物品の端部に関する前記指定箇所を含む一部分について、教師データとして機械学習を行わない、請求項3に記載の物品検査装置。
【請求項5】
前記画像における前記物品の輪郭に関する輪郭情報を教師データとした機械学習により、前記第1学習済みモデルを生成する学習部を備え、
前記学習部は、前記画像における前記物品の面積が上限閾値以上の場合、当該物品の前記輪郭情報について、教師データとして機械学習を行わない、請求項1又は2に記載の物品検査装置。
【請求項6】
1つの前記物品のみを含む前記画像と当該物品の輪郭に関する輪郭情報とを有する単体データを、複数種記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された複数種の前記単体データを合成することにより、複数の前記物品を含む前記画像と複数の当該物品の前記輪郭情報とを有する合成データを、複数種生成する生成部と、
前記生成部で生成した複数種の前記合成データの前記輪郭情報を教師データとした機械学習により、前記第1学習済みモデルを生成する学習部と、を備える、請求項1又は2に記載の物品検査装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一側面は、物品検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、物品に電磁波を照射する照射部と、照射部により照射され物品を透過した電磁波を検出する検出部と、検出部の検出結果から生成される画像に基づいて、学習済みモデルを用いて物品が良品か不良品かを検査する検査部と、を備えた物品検査装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-152489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した物品検査装置では、折れた物品についても良品と誤って判定してしまう可能性がある。
【0005】
そこで、本発明の一側面は、折れた物品を不良品と精度よく判定することが可能な物品検査装置を提供することを課題とする。
を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の一側面に係る物品検査装置は、物品に電磁波を照射する照射部と、照射部により照射され物品を透過又は反射した電磁波を検出する検出部と、検出部の検出結果から生成される画像に基づいて、学習済みモデルを用いて物品が良品か不良品かを判定する判定部と、を備え、判定部は、画像における物品の輪郭に基づき学習した第1学習済みモデルと、画像における物品の端部に基づき学習した第2学習済みモデルと、を学習済みモデルとして用いる。
【0007】
画像上における折れた物品は、占める面積が良品とは異なるという第1の特徴と、良品には無い断面が端部に含まれるという第2の特徴と、を有することが見出される。そこで、本発明の一側面では、物品の輪郭に基づき学習した第1学習済みモデルを用いて判定することで、第1の特徴の観点から効果的に、折れた物品を不良品と判定することができる。また本発明の一側面では、物品の端部に基づき学習した第2学習済みモデルを用いて判定することで、第2の特徴の観点から効果的に、折れた物品を不良品と判定することができる。したがって、折れた物品を不良品と精度よく判定することが可能となる。
【0008】
(2)上記(1)に記載の物品検査装置では、判定部は、第1学習済みモデルを用いた判定結果と第2学習済みモデルを用いた判定結果とのうちの少なくとも何れかが、物品を不良品と判定する判定結果の場合に、当該判定結果を出力してもよい。この場合、折れた物品を不良品と確実に判定することが可能となる。
【0009】
(3)上記(1)又は(2)に記載の物品検査装置は、画像を表示する表示部と、表示部に表示された画像に、ユーザの指定により物品の端部に関する指定箇所を描画する描画部と、画像における指定箇所を含む一部分を教師データとした機械学習により、第2学習済みモデルを生成する学習部と、を備えていてもよい。これにより、画像全体を教師データとする場合と比べて、教師データを作成する際の作業量を削減でき、効率よく機械学習を行って第2学習済みモデルを生成することが可能となる。
【0010】
(4)上記(3)に記載の物品検査装置では、学習部は、画像における物品の面積が下限閾値以下の場合、当該物品の端部に関する指定箇所を含む一部分について、教師データとして機械学習を行わなくてもよい。画像上において、物品の面積が下限閾値以下の場合、物品の断面が端部に現れていないことが多い。この点、本発明の一側面では、第2学習モデルを生成するにあたり、物品の面積が下限閾値以下の画像を機械学習から省くことができる。よって、判定精度の高い第2学習済みモデルを生成することが可能となる。
【0011】
(5)上記(1)~(4)の何れか一項に記載の物品検査装置は、画像における物品の輪郭に関する輪郭情報を教師データとした機械学習により、第1学習済みモデルを生成する学習部を備え、学習部は、画像における物品の面積が上限閾値以上の場合、当該物品の輪郭情報について、教師データとして機械学習を行わなくてもよい。画像上において、物品の面積が上限閾値以上の場合、輪郭情報からでは不良品と良品との区別がつきにくい。この点、本発明の一側面では、第1学習モデルを生成するにあたり、不良品と良品との区別がつきにくい画像を機械学習から省くことができる。よって、判定精度の高い第1学習済みモデルを生成することが可能となる。
【0012】
(6)上記(1)~(4)の何れか一項に記載の物品検査装置は、1つの物品のみを含む画像と当該物品の輪郭に関する輪郭情報とを有する単体データを、複数種記憶する記憶部と、記憶部に記憶された複数種の単体データを合成することにより、複数の物品を含む画像と複数の当該物品の輪郭情報とを有する合成データを、複数種生成する生成部と、生成部で生成した複数種の合成データの輪郭情報を教師データとした機械学習により、第1学習済みモデルを生成する学習部と、を備えていてもよい。この場合、第1学習済みモデルを生成するにあたり、例えば物品単体毎に輪郭を描画するアノテーションが不要となり、ミス及び手間を低減することが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一側面によれば、折れた物品を不良品と精度よく判定することが可能な物品検査装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、一実施形態に係る物品検査装置の構成図である。
図2図2は、図1に示されるシールドボックスの内部の構成図である。
図3図3は、制御ユニットの機能構成図である。
図4図4(a)は、X線透過画像の一例を示す図である。図4(b)は、図4(a)のX線透過画像において端部指定箇所を描画した一例を示す図である。
図5図5は、第1及び第2学習済みモデルを利用した物品の検査方法を説明するためのフローチャートである。
図6図6は、第1学習済みモデルを用いた判定結果が不良品である場合の表示操作部の表示例を示す図である。
図7図7は、第2学習済みモデルを用いた判定結果が不良品である場合の表示操作部の表示例を示す図である。
図8】変形例に係る被検査物を示す概略平面図である。
図9図9(a)は、たれが同梱されていない物品のX線透過画像を示す模式図である。図9(b)は、図9(a)のX線透過画像の明るさを示すグラフである。
図10図10(a)は、たれが同梱されている物品のX線透過画像を示す模式図である。図10(b)は、図10(a)のX線透過画像の補正前の明るさを示すグラフである。図10(c)は、図10(a)のX線透過画像の補正後の明るさを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、実施形態について詳細に説明する。以下の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0016】
図1に示されるように、物品検査装置100は、物品を含む被検査物Gの検査(例えば、収納数検査、異物検査、欠品検査、割れ欠け検査等)を実施する装置であり、例えば、生産ライン等に実装される。ここでの被検査物Gは、袋入りの複数の物品である。物品は特に限定されず、ソーセージ等であってもよいし、その他の長尺状の物品であってもよいし、様々な物品であってもよい。物品検査装置100は、装置本体2と、支持脚3と、シールドボックス4と、搬送部5と、X線照射部(照射部)6と、X線検出部(検出部)7と、表示操作部(表示部)8と、制御ユニット10とを備える。
【0017】
物品検査装置100は、被検査物Gを搬送しつつ被検査物GのX線透過画像を生成し、当該X線透過画像に基づいて被検査物Gの検査を行う。物品検査装置100は、搬入コンベア51よりも後段であって搬出コンベア52よりも前段に配置される。検査前の被検査物Gは、搬入コンベア51によって物品検査装置100に搬入される。検査後の被検査物Gは、搬出コンベア52によって物品検査装置100から搬出される。
【0018】
装置本体2は、制御ユニット10等を収容している。支持脚3は、装置本体2を支持している。シールドボックス4は、装置本体2に設けられている。シールドボックス4は、外部へのX線(電磁波)の漏洩を防止する。シールドボックス4の内部には、X線による物品の検査が実施される検査領域Rが設けられている。シールドボックス4には、搬入口4a及び搬出口4bが形成されている。検査前の被検査物Gは、搬入コンベア51から搬入口4aを介して検査領域Rに搬入される。検査後の被検査物Gは、検査領域Rから搬出口4bを介して搬出コンベア52に搬出される。
【0019】
搬送部5は、物品検査装置100の外部である搬入コンベア51から受け取った被検査物Gを搬送する部材であり、シールドボックス4の中央を貫通するように配置されている。搬送部5は、搬入口4aから検査領域Rを介して搬出口4bまで、搬送方向Aに沿って被検査物Gを搬送する。搬送部5は、搬入口4a及び搬出口4bよりも外側に突出してもよい。
【0020】
図1及び図2に示されるように、X線照射部6は、被検査物GにX線を照射するX線源であり、シールドボックス4内に配置されている。X線照射部6は、例えば、X線を出射するX線管と、X線管から出射されたX線を搬送方向Aに垂直な面内において扇状に広げる絞り部と、を有している。X線照射部6から照射されるX線には、低エネルギー(長波長)から高エネルギー(短波長)までの様々なエネルギー帯のX線が含まれてもよい。
【0021】
X線検出部7は、X線照射部6により照射され物品を透過したX線を検出するセンサ部材である。X線検出部7は、シールドボックス4内であって、上下方向においてX線照射部6に対向する位置に配置される。X線検出部7は、特定のエネルギー帯のX線を検出可能でもよいし、フォトンカウンティング方式でX線を検出可能でもよい。X線検出部7は、直接変換型検出部でもよいし、間接変換型検出部でもよい。X線検出部7の種類の違いによって、物品の画像の生成時間、データ量などに違いが生じ得る。X線検出部7は、ラインセンサを含んでもよいし、二次元的に配置されるセンサ群を含んでもよい。X線検出部7に含まれるセンサは、例えば、CdTe半導体検出器などの光子検出型センサである。
【0022】
表示操作部8は、装置本体2に設けられている部材である。表示操作部8は、各種情報を表示すると共に、外部から各種条件の入力操作を受け付ける。表示操作部8は、X線透過画像を表示する。表示操作部8は、例えば、液晶ディスプレイであり、タッチパネルとしての操作画面を表示する。この場合、オペレータ等のユーザは、表示操作部8を介して各種条件を入力できる。本実施形態では、ユーザは、タッチパネルに表示されたX線透過画像上において物品の端部をタッチ(指定)することにより、物品の端部に関する指定箇所(以下、「端部指定箇所」ともいう)を入力可能である。その結果、タッチパネル上において後述の描画部14により端部指定箇所が描画される。
【0023】
制御ユニット10は、物品検査装置100の制御部の一部として機能し、主に物品検査装置100の各部の動作を制御する。制御ユニット10は、装置本体2内に配置されている。制御ユニット10は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサコンピュータ、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等のメモリ、及びSSD(Solid State Drive)等のストレージを含むコンピュータを有する。ROMには、例えば、物品検査装置100を制御するためのプログラム、画像を生成するためのプログラムなどが記録されている。
【0024】
図3は、制御ユニット10の機能構成図である。図3に示されるように、制御ユニット10は、画像生成部11、記憶部12、判定部13、描画部14、合成データ生成部(生成部)15及び学習部16を有する。画像生成部11は、X線検出部7の検出結果に基づいてX線透過画像を生成する。X線透過画像の生成手法は特に限定されず、公知の種々の手法を用いることができる。
【0025】
記憶部12は、制御ユニット10にて使用又は生成される各種の信号及びデータ等を記録する。記憶部12には、判定部13で用いられる第1及び第2学習済みモデル、第1及び第2学習済みモデルの生成に利用されるプログラム及びアルゴリズム等が記憶されている。第1及び第2学習済みモデルは、機械学習によって自動設定されるプログラムである。第1学習済みモデルは、X線透過画像における物品の輪郭に基づき学習したモデルである。第2学習済みモデルは、X線透過画像における物品の端部に基づき学習したモデルである。第1及び第2学習済みモデルは、セマンティック・セグメンテーションを行えるモデルである。なお、第1及び第2学習済みモデルは、インスタンス・セグメンテーションを行えるモデルであってもよい。
【0026】
第1及び第2学習済みモデルの生成に利用されるとして利用するアルゴリズムの種類及び/又は構成は、特に限定されない。アルゴリズムの種類は、例えば、ランダムフォレスト決定木、多層パーセプトロン(ニューラルネットワーク)等である。アルゴリズムの構成は、中間層の数、各層のユニット数、分岐数、目的変数、説明変数等である。アルゴリズムの種類及び/又は構成は、ディープラーニングによって生成されてもよい。
【0027】
記憶部12は、1つの物品のみを含むX線透過画像と当該物品の輪郭に関する輪郭情報とを有する単体データを、複数種記憶する。輪郭情報としては特に限定されず、例えば画像上の輪郭に対応する各位置の情報であってもよい。
【0028】
判定部13は、画像生成部11で生成したX線透過画像を検査し、検査結果を出力する。判定部13は、X線透過画像に基づき、第1及び第2学習済みモデルを用いて、物品(被検査物G)が良品か否かを判定する。判定部13は、第1学習済みモデルを用いた判定結果と第2学習済みモデルを用いた判定結果とのうちの少なくとも何れかが、物品を不良品と判定する判定結果の場合に、物品を不良品とする当該判定結果を表示操作部8を介して出力する。
【0029】
描画部14は、表示操作部8に表示されたX線透過画像に、当該表示操作部8を介して指定された端部指定箇所を描画する。例えば図4(a)に示されるように、複数の物品Bが袋に入れられてなる被検査物Gに関するX線透過画像P1が表示操作部8に表示されている場合に、ユーザは、X線透過画像P1における複数の物品Bの端部をタッチにより指定する。これにより、描画部14は、例えば図4(b)に示されるように、表示操作部8のX線透過画像P1に複数の端部指定箇所を点で描画する。このとき、端部指定箇所の指定を、良品の端部と不良品の端部とで分けて行ってもよく、この場合、良品の端部と不良品の端部とで区別して端部指定箇所が描画される。
【0030】
描画部14は、X線透過画像における端部指定箇所を含む一部分(端部指定箇所中心とした半径数ピクセルの円内部分)を、物品端部画像として別画像に描画する。物品端部画像は、第2学習済みモデルの教師データとして、良品及び不良品の何れかと関連付けられて記憶部12に記憶される。ここでの例では、物品端部画像は、当該物品端部画像が対象とする物品の面積と関連付けられて記憶部12に記憶される。例えば物品Bの面積は、公知の種々の画像処理を用いてX線透過画像から取得することができる。
【0031】
合成データ生成部15は、記憶部12に記憶された複数種の単体データを合成することにより、複数の物品Bを含む学習用合成画像としてのX線透過画像と、複数の当該物品Bのアノテーション情報である輪郭情報と、を有する合成データを、自動的に複数種生成する。生成した合成データは、記憶部12に記憶される。合成データの輪郭情報は、第1学習済みモデルの教師データとして、良品及び不良品の何れかと関連付けられて記憶部12に記憶される。ここでの例では、合成データの輪郭情報は、当該輪郭情報が対象とする物品Bの面積と関連付けられて記憶部12に記憶される。
【0032】
学習部16は、合成データの輪郭情報を教師データとした機械学習により、第1学習済みモデルを生成する。学習部16は、X線透過画像における物品Bの面積が上限閾値以上の場合、当該物品Bの輪郭情報について教師データとして機械学習を行わない。上限閾値は、特に限定されず、例えば物品Bの標準長さ(規定長さ)の四分の三の長さである。学習部16は、生成した第1学習済みモデルを記憶部12に記憶する。
【0033】
学習部16は、物品端部画像を教師データとした機械学習により、第2学習済みモデルを生成する。学習部16は、X線透過画像における物品Bの面積が下限閾値以下の場合、当該物品Bに係る物品端部画像について、教師データとして機械学習を行わない。下限閾値は、特に限定されず、例えば物品Bの標準長さの四分の一の長さである。学習部16は、生成した第2学習済みモデルを記憶部12に記憶する。
【0034】
次に、第1及び第2学習モデルの生成方法の一例について説明する。
【0035】
まず、物品検査装置100を動作させ、物品Bの単体の画像とその輪郭データを含む単体データを取得する処理を、複数種の物品Bを対象として行う。合成データ生成部15により、複数種の単体データを適宜に合成することにより、学習用合成画像となるX線透過画像と複数の当該物品Bの輪郭情報とを有する合成データを、自動的に複数種生成する。そして、学習部16により、生成した複数種の合成データの輪郭情報を教師データとした機械学習を行い、第1学習済みモデルを得る。
【0036】
また、物品検査装置100を動作させ、学習用画像となる被検査物GのX線透過画像を画像生成部11により生成し、X線透過画像を表示操作部8に表示させる。ユーザが端部指定箇所を指定したことに応じて、当該指定箇所を含む物品端部画像を描画部14により描画する。以上の処理を複数回繰り返し行い、複数の物品端部画像を取得する。そして、学習部16により、複数の物品端部画像を教師データとした機械学習を行い、第2学習済みモデルを得る。
【0037】
次に、図5を参照しながら、第1及び第2学習モデルを利用した物品Bの検査方法の一例について説明する。
【0038】
図5に示されるように、物品検査装置100において、検査用画像となる被検査物GのX線透過画像を画像生成部11により生成する(ステップS1)。判定部13により、生成したX線透過画像に基づき、第1学習済みモデルを用いて、被検査物Gに含まれる複数の物品が良品か不良品かを判定する(ステップS2)。判定部13により、生成したX線透過画像に基づき、第2学習済みモデルを用いて、被検査物Gに含まれる複数の物品が良品か不良品かを判定する(ステップS3)。なお、上記ステップS2,S3は順不同である。
【0039】
そして、判定部13により判定結果を出力する(ステップS4)。上記ステップS4では、上記ステップS2の判定及び/又は上記ステップS3の判定において不良品と判定した場合、表示操作部8に不良品(欠品)との判定結果を出力する。上記ステップS4では、上記ステップS2の判定及び上記ステップS3の判定の双方において良品と判定した場合、表示操作部8に良品との判定結果を出力する。
【0040】
図6は、第1学習済みモデルを用いた判定結果が不良品である場合の表示操作部8の表示例を示す図である。判定部13により、第1学習済みモデルを用いた判定結果が不良品と判定された場合には、図5に示されるように、表示操作部8において、欠品と表示され、第1学習済みモデルの感度レベルが高まっている。また、表示操作部8において表示されたX線透過画像における複数の物品Bの中で、折れが発生した物品B1が囲まれて喚起表示される。
【0041】
図7は、第2学習済みモデルを用いた判定結果が不良品である場合の表示操作部8の表示例を示す図である。判定部13により、第2学習済みモデルを用いた判定結果が不良品と判定された場合には、図6に示されるように、表示操作部8において、欠品と表示され、第2学習済みモデルの感度レベルが高まっている。また、表示操作部8において表示されたX線透過画像における複数の物品Bの中で、折れが発生した物品B2の断面が囲まれて喚起表示される。
【0042】
X線透過画像上における折れた物品Bは、占める面積が良品とは異なるという第1の特徴と、良品には無い断面が端部に含まれるという第2の特徴と、を有することが見出される。そこで、物品検査装置100では、物品Bの輪郭に基づき学習した第1学習済みモデルを用いて判定することで、第1の特徴の観点から効果的に、折れた物品Bを不良品と判定することができる。また、物品検査装置100では、物品Bの端部に基づき学習した第2学習済みモデルを用いて判定することで、第2の特徴の観点から効果的に、折れた物品Bを不良品と判定することができる。したがって、折れた物品Bを不良品と精度よく判定することが可能となる。
【0043】
物品検査装置100では、判定部13は、第1学習済みモデルを用いた判定結果と第2学習済みモデルを用いた判定結果とのうちの少なくとも何れかが、物品Bを不良品と判定する判定結果の場合に、当該判定結果を出力する。この場合、折れた物品Bを不良品と確実に判定することが可能となる。
【0044】
物品検査装置100は、X線透過画像を表示する表示操作部8と、表示操作部8に表示されたX線透過画像に端部指定箇所を描画する描画部14と、物品端部画像を教師データとした機械学習により第2学習済みモデルを生成する学習部16と、を備える。これにより、画像全体を教師データとする場合と比べて、教師データを作成する際の作業量を削減でき、効率よく機械学習を行って第2学習済みモデルを生成することが可能となる。
【0045】
X線透過画像上において、物品Bの面積が下限閾値以下の場合、物品Bの断面が端部に現れていないことが多い。この点、物品検査装置100では、学習部16は、X線透過画像における物品Bの面積が下限閾値以下の場合、当該物品Bの物品端部画像について教師データとして機械学習を行わない。よって、物品検査装置100では、第2学習モデルを生成するにあたり、物品Bの面積が下限閾値以下の画像を機械学習から省くことができる。よって、判定精度の高い第2学習済みモデルを生成することが可能となる。
【0046】
X線透過画像上において、物品Bの面積が上限閾値以上の場合、輪郭情報からでは不良品(折れた物品B)と良品との区別がつきにくい。この点、物品検査装置100は、輪郭情報を教師データとした機械学習により、第1学習済みモデルを生成する学習部16を備える。学習部16は、X線透過画像における物品Bの面積が上限閾値以上の場合、当該物品Bの輪郭情報について、教師データとして機械学習を行わない。よって、物品検査装置100では、第1学習モデルを生成するにあたり、不良品と良品との区別がつきにくい画像を機械学習から省くことができる。よって、判定精度の高い第1学習済みモデルを生成することが可能となる。
【0047】
物品検査装置100は、1つの物品Bのみを含むX線透過画像と当該物品Bの輪郭情報とを有する単体データを、複数種記憶する記憶部12と、記憶部12に記憶された複数種の単体データを合成することにより、複数の物品Bを含むX線透過画像と複数の当該物品Bの輪郭情報とを有する合成データを、複数種生成する合成データ生成部15と、合成データ生成部15で生成した複数種の合成データの輪郭情報を教師データとした機械学習により、第1学習済みモデルを生成する学習部16と、を備える。この場合、第1学習済みモデルを生成するにあたり、例えば物品B単体毎に輪郭を描画するアノテーション(例えば、折れ部分全体を囲ったり、塗りつぶしたりすること)が不要となり、学習用の画像を多数取得する際のミス及び手間を低減することが可能となる。作業効率を大幅に改善することができる。
【0048】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0049】
図8は、変形例に係る被検査物G0を示す概略平面図である。図9(a)は、たれT0が同梱されていない物品B0のX線透過画像を示す模式図である。図9(b)は、図9(a)のX線透過画像の明るさを示すグラフである。図10(a)は、たれT0が同梱されている物品B0のX線透過画像を示す模式図である。図10(b)は、図10(a)のX線透過画像の補正前の明るさを示すグラフである。図10(c)は、図10(a)のX線透過画像の補正後の明るさを示すグラフである。図9(b)、図10(b)及び図10(c)において、縦軸は明るさであり、横軸はX線透過画像における左右方向の位置である。
【0050】
図8に示される被検査物G0は、たれ(同梱物)T0が同梱されている肉団子等の物品B0を複数含む。このような被検査物G0について、物品B0の個数をカウントする場合、たれT0のある部分とない部分とでは、明るさが異なる。そこで、被検査物G0のX線透過画像の濃淡から、たれT0を識別し、たれT0の明るさがX線透過画像の背景部分の明るさと同じになるよう、明るさを補正してもよい。これにより、たれT0と重なる物品B0の明るさが他の物品B0と略一致し、物品B0のしきい値により物品B0の個数カウントが可能となる。
【0051】
具体的には、図9(a)及び図9(b)に示されるように、たれT0が同梱されていない物品B0では、X線透過画像の明るさの変化と閾値αとに基づき、物品B0の個数カウントを行う。図10(a)及び図10(b)に示されるように、たれT0が同梱されている物品B0では、たれT0の影響により、X線透過画像の明るさの変化と閾値αとに基づくと、個数カウントができない場合がある。そこで、図10(b)に示されるように、まず、X線透過画像の濃淡から、明るさのグラフ上においてたれT0が存在するたれ部分R0を識別する。図10(c)に示されるように、たれ部分R0が背景部分の明るさと一致するように明るさ補正する。このような補正により、正しく個数カウントすることが可能となる。
【0052】
上記実施形態では、物品検査装置100は、X線を利用して物品Bを検査しているが、X線以外の電磁波を利用して物品を検査してもよい。換言すると、物品検査装置は、X線とは異なる方式にて物品を検査してもよい。例えば、物品検査装置は、紫外線、赤外線及び/又は可視光を用いて物品を検査してもよい。上記実施形態では、物品Bを透過した電磁波を検出部で検出しているが、物品Bで反射した電磁波を検出部で検出してもよい。上記実施形態では、物品検査装置100の制御ユニット10とは別の演算装置によって学習済みモデルを生成してもよい。
【0053】
上記実施形態では、学習部16は、X線透過画像における物品Bの面積が下限閾値以下であっても当該物品Bの物品端部画像について教師データとして機械学習を行ってもよい。上記実施形態では、学習部16は、X線透過画像における物品Bの面積が上限閾値以上であっても当該物品Bの輪郭情報について教師データとして機械学習を行ってもよい。
【0054】
上記実施形態では、物品端部画像を教師データとしたが、これに限定されず、X線透過画像の全体を教師データとしてもよい。上記実施形態では、物品B単体に係る単体データを合成して得た合成データの輪郭情報を教師データとしたが、これに限定されない。複数の物品Bを含む被検査物Gを透過したX線からX線透過画像を画像生成部11で生成し、当該X線透過画像における複数の物品Bの輪郭情報を教師データとしてもよい。
【符号の説明】
【0055】
6…X線照射部(照射部)、7…X線検出部(検出部)、8…表示操作部(表示部)、12…記憶部、13…判定部、14…描画部、15…合成データ生成部(生成部)、16…学習部、100…物品検査装置、B,B1,B2…物品、P1…X線透過画像。
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