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特開2024-128351肝細胞からなるスフェロイドの品質評価方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128351
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】肝細胞からなるスフェロイドの品質評価方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/06 20060101AFI20240913BHJP
   G01N 21/17 20060101ALI20240913BHJP
   G01N 33/48 20060101ALI20240913BHJP
   G01N 33/483 20060101ALI20240913BHJP
   C12Q 1/26 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
C12Q1/06
G01N21/17 630
G01N33/48 M
G01N33/48 Z
G01N33/483 C
C12Q1/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037283
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(71)【出願人】
【識別番号】511155187
【氏名又は名称】株式会社サイフューズ
(74)【代理人】
【識別番号】100135013
【弁理士】
【氏名又は名称】西田 隆美
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 涼
(72)【発明者】
【氏名】前川 敏彦
(72)【発明者】
【氏名】井上 愛優
【テーマコード(参考)】
2G045
2G059
4B063
【Fターム(参考)】
2G045AA24
2G045CB01
2G045FA14
2G045FA19
2G045JA03
2G059AA05
2G059BB04
2G059BB09
2G059BB14
2G059DD13
2G059EE02
2G059EE09
2G059FF02
2G059GG02
2G059HH01
2G059JJ17
2G059JJ22
2G059MM01
2G059MM05
2G059MM09
2G059MM10
4B063QA01
4B063QQ08
4B063QX01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】細胞に染色等の加工を行うことなく、非侵襲で、バイオ3Dプリンタに使用されるスフェロイドの局在領域を観察しスフェロイドの状態を評価できる方法を提供する。
【解決手段】まず、複数種の肝臓由来細胞を三次元培養したスフェロイドを光干渉断層撮影により撮影し(画像取得工程)、撮影画像から局在領域を抽出し(領域抽出工程)、局在領域を解析し(解析工程)、スフェロイドの状態を評価する(評価工程)。解析工程は、撮影画像におけるスフェロイド全体の面積を算出する第1算出工程(S41)と、局在領域の面積を算出する第2算出工程(S42)と、2つの面積に基づいて局在領域の割合を算出する第3算出工程(S43)と、当該割合に基づいて評価パラメータを算出する第4算出工程(S44)とを有する。このような評価パラメータを用いれば、非侵襲で、スフェロイドの評価を行うことができる。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオ3Dプリンタに使用されるスフェロイドの評価方法であって、
前記スフェロイドは、肝細胞を含む複数種の肝臓由来細胞を含むスフェロイドであり、
光干渉断層撮影により前記スフェロイドを撮影して、撮影画像を取得する画像取得工程と、
前記撮影画像から、一種類の細胞が局在する局在領域を抽出する領域抽出工程と、
前記局在領域を解析する解析工程と、
前記スフェロイドの状態を評価する評価工程と、
を有し、
前記解析工程は、
前記撮影画像における、前記スフェロイド全体の面積を算出する第1算出工程と、
前記撮影画像における、前記局在領域の面積を算出する第2算出工程と、
前記スフェロイド全体の面積と、前記局在領域の面積とに基づいて、前記局在領域の割合を算出する第3算出工程と、
前記局在領域の割合に基づいて、評価パラメータを算出する第4算出工程と、
を有する、評価方法。
【請求項2】
請求項1に記載の評価方法であって、
前記評価工程は、
前記評価パラメータに基づいて前記スフェロイドの良否判定を行う判定工程
を含む、評価方法。
【請求項3】
請求項1に記載の評価方法であって、
前記評価パラメータは、前記スフェロイドにおける、所定のタンパク質の分泌量の推定値である、評価方法。
【請求項4】
請求項3に記載の評価方法であって、
前記評価パラメータは、前記スフェロイドにおける、CYP3A4の酵素活性の推定値である、評価方法。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の評価方法であって、
前記領域抽出工程は、
前記撮影画像から、前記スフェロイドに相当する全体領域を抽出する第1抽出工程と、
前記全体領域のうち、輝度値が所定の閾値よりも高い高輝度領域を抽出する第2抽出工程と、
前記全体領域から、前記高輝度領域および前記高輝度領域よりも内側の領域を除いた残りの領域を、前記局在領域として抽出する第3抽出工程と、
を有する、評価方法。
【請求項6】
バイオ3Dプリンタに使用されるスフェロイドの評価方法であって、
前記スフェロイドは、肝細胞を含む複数種の肝臓由来細胞を含むスフェロイドであり、
光干渉断層撮影により前記スフェロイドを撮影した撮影画像を入力情報とし、一種類の細胞が局在する局在領域を出力情報とする学習モデルを、深層学習により作成する学習工程と、
光干渉断層撮影により前記スフェロイドを撮影して、撮影画像を取得する画像取得工程と、
前記撮影画像を、前記学習モデルに入力して、前記学習モデルから出力される前記局在領域を得る領域抽出工程と、
前記局在領域を解析する解析工程と、
前記スフェロイドの状態を評価する評価工程と、
を有し、
前記解析工程は、
前記撮影画像における、前記スフェロイド全体の面積を算出する第1算出工程と、
前記撮影画像における、前記局在領域の面積を算出する第2算出工程と、
前記スフェロイド全体の面積と、前記局在領域の面積とに基づいて、前記局在領域の割合を算出する第3算出工程と、
前記局在領域の割合に基づいて、評価パラメータを算出する第4算出工程と、
を有する、評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スフェロイドの評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の細胞により構成される生体試料を光干渉断層撮影(Optical Coherence Tomography;OCT)により撮影し、得られた断層画像に基づいて、生体試料を観察する観察装置が知られている。従来の観察装置については、例えば特許文献1に記載されている。この種の観察装置を使用すれば、生体試料の立体構造を非侵襲で観察することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-181348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スフェロイド等の生体試料は、他の部分と細胞の状態が異なる特異部を有する場合がある。例えば、複数種類の細胞を組み合わせてスフェロイドなどの生体試料を作成する場合、一部の種類の細胞が生体試料の外側または内側に局在する場合がある。また、幹細胞とそれ以外の種類の細胞を含むスフェロイドなどの生体試料においては、分化した細胞が生体試料の一部分に局在する場合もある。生体試料の品質管理を行う上で、これらの特異部を観察することは、極めて重要である。
【0005】
従来、スフェロイドの局在領域のような特異部を観察する方法としては、蛍光試薬を用いて観察対象の切片を染色する方法が知られている。しかしながら、この方法によれば観察対象がダメージを受ける。このため、生体試料の特異部を、ダメージを与えず自然な状態のまま観察する技術が求められている。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、非侵襲でもスフェロイドの状態を評価できる評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本願の第1発明は、スフェロイドの評価方法であって、前記スフェロイドは、肝細胞を含む複数種の肝臓由来細胞を含むスフェロイドであり、光干渉断層撮影により前記スフェロイドを撮影して、撮影画像を取得する画像取得工程と、前記撮影画像から、一種類の細胞が局在する局在領域を抽出する領域抽出工程と、前記局在領域を解析する解析工程と、前記スフェロイドの状態を評価する評価工程と、を有し、前記解析工程は、前記撮影画像における、前記スフェロイド全体の面積を算出する第1算出工程と、前記撮影画像における、前記局在領域の面積を算出する第2算出工程と、前記スフェロイド全体の面積と、前記局在領域の面積とに基づいて、前記局在領域の割合を算出する第3算出工程と、前記局在領域の割合に基づいて、評価パラメータを算出する第4算出工程と、を有する。
【0008】
本願の第2発明は、第1発明の評価方法であって、前記評価工程は、前記評価パラメータに基づいて前記スフェロイドの良否判定を行う判定工程を含む。
【0009】
本願の第3発明は、第1発明の評価方法であって、前記評価パラメータは、前記スフェロイドにおける、所定のタンパク質の分泌量の推定値である。
【0010】
本願の第4発明は、第3発明の評価方法であって、前記評価パラメータは、前記スフェロイドにおける、CYP3A4の酵素活性の推定値である、評価方法。
【0011】
本願の第5発明は、第1発明ないし第4発明のいずれか一発明の評価方法であって、前記領域抽出工程は、前記撮影画像から、前記スフェロイドに相当する全体領域を抽出する第1抽出工程と、前記全体領域のうち、輝度値が所定の閾値よりも高い高輝度領域を抽出する第2抽出工程と、前記全体領域から、前記高輝度領域および前記高輝度領域よりも内側の領域を除いた残りの領域を、前記局在領域として抽出する第3抽出工程と、を有する。
【0012】
本願の第6発明は、スフェロイドの評価方法であって、前記スフェロイドは、肝細胞を含む複数種の肝臓由来細胞含むスフェロイドであり、光干渉断層撮影により前記スフェロイドを撮影した撮影画像を入力情報とし、一種類の細胞が局在する局在領域を出力情報とする学習モデルを、深層学習により作成する学習工程と、光干渉断層撮影により前記スフェロイドを撮影して、撮影画像を取得する画像取得工程と、前記撮影画像を、前記学習モデルに入力して、前記学習モデルから出力される前記局在領域を得る領域抽出工程と、前記局在領域を解析する解析工程と、前記スフェロイドの状態を評価する評価工程と、を有し、前記解析工程は、前記撮影画像における、前記スフェロイド全体の面積を算出する第1算出工程と、前記撮影画像における、前記局在領域の面積を算出する第2算出工程と、前記スフェロイド全体の面積と、前記局在領域の面積とに基づいて、前記局在領域の割合を算出する第3算出工程と、前記局在領域の割合に基づいて、評価パラメータを算出する第4算出工程と、を有する。
【発明の効果】
【0013】
本願の第1発明~第6発明によれば、複数種の細胞を含むスフェロイドの撮影画像から、特定の種類の細胞が局在する局在領域を抽出し、局在領域の割合に基づいた評価パラメータを算出できる。これにより、非侵襲でもスフェロイドの評価を行うことができる。
【0014】
特に、本願の第3発明および第4発明によれば、組織の一部として必要な挙動をしているか否かが直接現れるパラメータを評価パラメータとすることにより、よりユーザに理解しやすい評価パラメータが得られる。
【0015】
特に、本願の第5発明によれば、生体試料の外表面に広がる特異部に相当する局在領域を、精度よく抽出できる。
【0016】
特に、本願の第6発明によれば、学習モデルを用いて、スフェロイドの撮影画像から、精度良く局在領域を抽出できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】観察装置の構成を示した図である。
図2】観察装置の制御ブロック図である。
図3】画像処理/評価装置の機能を、概念的に示したブロック図である。
図4】スフェロイドの例を模式的に示した図である。
図5】作成工程から組織形成工程の流れを示したフローチャートである。
図6】局在領域の領域抽出工程の流れの一例を示すフローチャートである。
図7】断層画像を模式的に示した図である。
図8】全体領域を抽出した結果を、模式的に示した図である。
図9】局在領域を抽出した結果を、模式的に示した図である。
図10】スフェロイドの解析・評価工程の流れの一例を示すフローチャートである。
図11】実験1の実験結果を示したグラフである。
図12】実験2の実験結果を示したグラフである。
図13】学習モデルを利用する場合の、作成工程から組織形成工程の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0019】
<1.観察装置の構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る観察装置1の構成を示した図である。この観察装置1は、試料容器90内に保持された生体試料9を撮影し、得られた画像に基づいて、生体試料9の状態を評価する装置である。
【0020】
この観察装置1で観察および評価する生体試料9は、スフェロイドと呼ばれる細胞集塊である。
【0021】
スフェロイドは、公知の各種用途に用いることができる。例えば、バイオ3Dプリンタに複数配置して、より大きなサイズの立体構造体を形成することができる。バイオ3Dプリンタにスフェロイドを配置するにあたっては三次元的に配置することが好ましい。例えば、肝臓を構成する2種類以上の細胞を均一に含むスフェロイドから立体構造体を形成する場合、得られた立体構造体を再生医療の分野や被検物質の肝毒性の評価に用いる等の用途に使用することができる。好適には、観察装置1では、バイオ3Dプリンタ用部品として適したスフェロイドを選別するために、複数種類の細胞を含むスフェロイドの状態の良否を評価する。
【0022】
図1に示すように、観察装置1は、ステージ10、撮像部20、およびコンピュータ30を備えている。
【0023】
ステージ10は、試料容器90を支持する支持台である。試料容器90には、例えば、ウェルプレートが使用される。ウェルプレートは、複数のウェル(凹部)91を有する。各ウェル91は、U字状またはV字状の底部を有する。生体試料9は、各ウェル91の底部付近に、培養液とともに保持される。試料容器90の材料には、光を透過する透明な樹脂またはガラスが使用される。
【0024】
ステージ10は、上下方向に貫通する開口部11を有する。試料容器90は、ステージ10の当該開口部11に嵌め込まれた状態で、水平に支持される。したがって、試料容器90の下面は、ステージ10に覆われることなく、撮像部20へ向けて露出する。
【0025】
撮像部20は、試料容器90内の生体試料9を撮影するユニットである。撮像部20は、ステージ10に支持された試料容器90の下方に配置されている。本実施形態の撮像部20は、生体試料9の断層画像および三次元画像を撮影することが可能な、光干渉断層撮影(Optical Coherence Tomography;OCT)装置である。
【0026】
図1に示すように、撮像部20は、光源21、物体光学系22、参照光学系23、検出部24、および光ファイバカプラ25を有する。光ファイバカプラ25は、第1光ファイバ251~第4光ファイバ254が、接続部255において連結されたものである。光源21、物体光学系22、参照光学系23、および検出部24は、光ファイバカプラ25により構成される光路を介して、互いに接続されている。
【0027】
光源21は、LED等の発光素子を有する。光源21は、広帯域の波長成分を含む低コヒーレンス光を出射する。生体試料9を侵襲することなく、生体試料9の内部まで光を到達させるために、光源21から出射される光は、近赤外線であることが望ましい。光源21は、第1光ファイバ251に接続されている。光源21から出射される光は、第1光ファイバ251へ入射し、接続部255において、第2光ファイバ252へ入射する光と、第3光ファイバ253へ入射する光とに、分岐される。
【0028】
第2光ファイバ252は、物体光学系22に接続されている。接続部255から第2光ファイバ252へ進む光は、物体光学系22へ入射する。物体光学系22は、コリメータレンズ221および対物レンズ222を含む複数の光学部品を有する。第2光ファイバ252から出射された光は、コリメータレンズ221および対物レンズ222を通って、試料容器90内の生体試料9へ照射される。このとき、対物レンズ222により、光が生体試料9へ向けて収束する。そして、生体試料9において反射した光(以下「観察光」と称する)は、対物レンズ222およびコリメータレンズ221を通って、再び第2光ファイバ252へ入射する。
【0029】
図1に示すように、物体光学系22は、走査機構223に接続されている。走査機構223は、コンピュータ30からの指令に従って、物体光学系22を、鉛直方向および水平方向に微小移動させる。これにより、生体試料9に対する光の入射位置を、鉛直方向および水平方向に微小移動させることができる。
【0030】
また、撮像部20は、図示を省略した移動機構により、水平方向に移動可能となっている。これにより、撮像部20の視野を、複数のウェル91の間で切り替えることができる。
【0031】
第3光ファイバ253は、参照光学系23に接続されている。接続部255から第3光ファイバ253へ進む光は、参照光学系23へ入射する。参照光学系23は、コリメータレンズ231およびミラー232を有する。第3光ファイバ253から出射された光は、コリメータレンズ231を通って、ミラー232へ入射する。そして、ミラー232により反射された光(以下「参照光」と称する)は、コリメータレンズ231を通って、再び第3光ファイバ253へ入射する。
【0032】
図1に示すように、ミラー232は、進退機構233に接続されている。進退機構233は、コンピュータ30からの指令に従って、ミラー232を、光軸方向に微小移動させる。これにより、参照光の光路長を変化させることができる。
【0033】
第4光ファイバ254は、検出部24に接続されている。物体光学系22から第2光ファイバ252へ入射した観察光と、参照光学系23から第3光ファイバ253へ入射した参照光とは、接続部255において合流して、第4光ファイバ254へ入射する。そして、第4光ファイバ254から出射された光は、検出部24へ入射する。このとき、観察光と参照光との間で、位相差に起因する干渉が生じる。この干渉光の分光スペクトルは、観察光の反射位置の高さによって異なる。
【0034】
検出部24は、分光器241および光検出器242を有する。第4光ファイバ254から出射された干渉光は、分光器241において波長成分ごとに分光されて、光検出器242へ入射する。光検出器242は、分光された干渉光を検出し、その検出信号を、コンピュータ30へ出力する。
【0035】
コンピュータ30の後述する画像取得部41は、光検出器242から得られる検出信号をフーリエ変換することで、観察光の鉛直方向の光強度分布を求める。また、走査機構223により、物体光学系22を水平方向に移動させつつ、上記の光強度分布の算出を繰り返すことにより、三次元空間の各座標における観察光の光強度分布を求めることができる。その結果、コンピュータ30は、生体試料9の断層画像および三次元画像を得ることができる。
【0036】
断層画像は、二次元座標上に配列された複数の画素(ピクセル)により構成され、画素毎に輝度値が規定されたデータである。三次元画像は、三次元座標上に配列された複数の画素(ボクセル)により構成され、画素毎に輝度値が規定されたデータである。すなわち、断層画像および三次元画像は、いずれも、所定の座標上に輝度値が分布した撮影画像である。
【0037】
コンピュータ30は、撮像部20を動作制御する制御部としての機能を有する。また、コンピュータ30は、撮像部20から入力される検出信号に基づいて断層画像および三次元画像を作成し、得られた断層画像および三次元画像に基づいて、生体試料9の状態を評価するデータ処理部としての機能を有する。
【0038】
図2は、観察装置1の制御ブロック図である。図2中に概念的に示したように、コンピュータ30は、CPU等のプロセッサ31、RAM等のメモリ32、およびハードディスクドライブ等の記憶部33を有する。記憶部33内には、観察装置1内の各部を動作制御するための制御プログラムP1と、断層画像および三次元画像を作成して、生体試料9の状態を評価するためのデータ処理プログラムP2とが、記憶されている。
【0039】
また、図3に示すように、コンピュータ30は、上述した光源21、走査機構223、進退機構233、光検出器242、および後述する表示部70と、それぞれ通信可能に接続されている。コンピュータ30は、制御プログラムP1に従って、上記の各部を動作制御する。これにより、試料容器90に保持された生体試料9の撮影処理が進行する。
【0040】
図3は、生体試料9の観察・評価を行うための画像処理/評価装置としてのコンピュータ30の機能を、概念的に示したブロック図である。図3に示すように、コンピュータ30は、画像取得部41、領域抽出部42、および評価部43を有する。画像取得部41、領域抽出部42、および評価部43の各機能は、コンピュータ30のプロセッサ31が、上述したデータ処理プログラムP2に従って動作することにより、実現される。画像取得部41、領域抽出部42、および評価部43が実行する処理の詳細については、後述する。
【0041】
<2.作製工程、画像取得工程、領域抽出工程、解析・評価工程、および組織形成工程について>
続いて、上記の観察装置1におけるスフェロイド9(生体試料9)の作製工程、画像取得工程、領域抽出工程、解析・評価工程、および組織形成工程について、説明する。
【0042】
スフェロイド9には、主要組織、神経組織を始めとした様々な種類の細胞により構成されるスフェロイドを用いることができる。スフェロイド9は、バイオ3Dプリンタにおいて材料となるものであることが好ましい。
【0043】
いずれの組織に由来する細胞によって構成されるスフェロイドであっても、複数種類の細胞を含むスフェロイドにおいては、細胞が均一に分布せず、特定種類の細胞が一部に局在することで、スフェロイドの遺伝子発現やタンパク質分泌に影響を及ぼすことがある。このため、スフェロイド9において複数種類の細胞が均一に分布しているか否かを評価すること、好適には、バイオ3Dプリンタによる再生医療用もしくはin vitro評価用等の構造体の形成に利用できるほどに複数種類の細胞が均一に分布しているか否かを評価することが求められる。
【0044】
スフェロイド9は、2種類以上の細胞を、用途、細胞の種類や割合などの条件に応じて公知の方法により共培養して得ることができる。
【0045】
スフェロイド9は、いわゆる肝スフェロイドであることが好ましい。肝スフェロイドは、肝臓を構成する複数種類の細胞のうち、肝実質細胞(肝細胞)を含む2種類以上の細胞を含む細胞集塊である。肝スフェロイドが肝実質細胞(肝細胞)の他に含む細胞は、肝臓由来の細胞であればよく、例えば、肝類洞内皮細胞、クッパー細胞、肝星細胞、ピット細胞、胆管上皮細胞、中皮細胞などが含まれていてもよい。
【0046】
図4は、以下の説明において観察対象とするスフェロイド9の例を、模式的に示した図である。図4(a),(b)のスフェロイド9は、いずれも、局在領域9aを有する。局在領域9aは、スフェロイド9を構成する複数種類の細胞のうち、特定の細胞が局在した部分である。
【0047】
局在領域9aは、例えば、図4(a)のように、スフェロイド9の表面(外側)に局在する場合や、図4(b)のように、スフェロイド9の内側に局在することが考えられる。
【0048】
図5は、作成工程から組織形成工程の流れを示したフローチャートである。観察装置1によるスフェロイド9の解析・評価工程と、バイオ3Dプリンタによる組織形成工程とを行うときには、まず、多数のスフェロイド9を作成する(ステップS1,スフェロイド作成工程)。そして、作成したスフェロイド9が、試料容器90へと収容される。なお、スフェロイド9は、試料容器90内で作成されてもよいし、別の培養容器で作成されたスフェロイド9を試料容器90内へと収容してもよい。このとき、試料容器90内には、培養液とともに複数のスフェロイド9が保持されている。
【0049】
次に、観察装置1のステージ10に試料容器90をセットし、撮像部20により、スフェロイド9の撮影を行う(ステップS2,画像取得工程)。本実施形態では、撮像部20が、光干渉断層撮影を行う。具体的には、光源21から光を出射し、走査機構223により物体光学系22を微少移動させながら、観察光および参照光の干渉光を、波長成分ごとに、光検出器242で検出する。コンピュータ30の画像取得部41は、光検出器242から出力される検出信号に基づいて、スフェロイド9の各座標位置における光強度分布を算出する。これにより、スフェロイド9の断層画像D1および三次元画像D2が得られる。
【0050】
観察装置1は、1つのスフェロイド9について、複数の断層画像D1と、1つの三次元画像D2とを取得する。また、観察装置1は、撮影対象となるウェル91を変更しながら、ステップS2の処理を繰り返すことにより、複数のスフェロイド9の断層画像D1および三次元画像D2を取得する。得られた断層画像D1および三次元画像D2は、コンピュータ30の記憶部33に記憶される。また、コンピュータ30は、得られた断層画像D1および三次元画像D2を、表示部70に表示する。
【0051】
図6は、断層画像D1を模式的に示した図である。図6の例では、略球形のスフェロイド9の外周部に、局在領域9aに相当する領域(以下「局在領域A」と称する)が存在している。コンピュータ30の領域抽出部42は、断層画像D1から、この局在領域Aを抽出する(ステップS3,領域抽出工程)。
【0052】
図7は、ステップS3のスフェロイド9の局在領域9a(上記の「局在領域A」)を抽出する領域抽出工程の流れの一例を示すフローチャートである。図7の例では、まず、領域抽出部42は、断層画像D1から、スフェロイド9の全体に相当する全体領域A1を抽出する(ステップS31,第1抽出工程)。具体的には、断層画像D1のうち、輝度値が予め設定された第1閾値よりも高い領域を、全体領域A1として抽出する。図8は、全体領域A1を抽出した結果を、模式的に示した図である。
【0053】
次に、領域抽出部42は、全体領域A1から、輝度値が、所定の第2閾値よりも高い領域を、高輝度領域A2として抽出する(ステップS32,第2抽出工程)。なお、第2閾値は、第1閾値よりも高い値である。図8では、環状の高輝度領域A2が、破線で示されている。略球形の細胞塊の外周部は、輝度が高くなる傾向が強い。このため、ステップS32では、高輝度領域A2を抽出することで、略球形の細胞塊の外周部を特定する。
【0054】
その後、領域抽出部42は、全体領域A1から、高輝度領域A2および高輝度領域A2よりも内側の領域を除いた残りの領域を、局在領域Aとして抽出する(ステップS33,第3抽出工程)。図9は、局在領域Aを抽出した結果を、模式的に示した図である。これにより、球形の細胞塊の外表面に広がる局在領域9aに相当する局在領域Aを、適切に抽出することができる。
【0055】
このように、ステップS3では、断層画像D1のうち、輝度値が所定の条件を満たす領域を、局在領域Aとして抽出する。局在領域Aの抽出手順は、必ずしも、上記のステップS31~S33の通りでなくてもよい。領域抽出部42は、局在領域Aの位置や輝度値に応じて、適切な手順で、局在領域Aを抽出すればよい。
【0056】
その後、コンピュータ30の評価部43は、ステップS3で抽出された局在領域Aを解析し、スフェロイド9の状態を評価する(ステップS4,解析・評価工程)。このステップS4では、評価部43は、断層画像D1および三次元画像D2における局在領域9aを解析し、スフェロイド9の状態を評価する。
【0057】
図10は、ステップS4のスフェロイド9の状態を評価する解析・評価工程の流れの一例を示すフローチャートである。図10の例の解析・評価工程では、撮影画像である断層画像D1における局在領域Aの面積に基づいて、スフェロイド9の状態を評価する。また、図10の例の解析・評価工程は、ステップS41~S44を含む解析工程と、ステップS45を含む評価工程とからなる。
【0058】
図10の例では、まず、評価部43は、断層画像D1における、スフェロイド9全体の面積を算出する(ステップS41,第1算出工程)。具体的には、評価部43は、断層画像D1における全体領域A1の面積を算出する。全体領域A1の面積は、例えば、全体領域A1に含まれる画素数に基づいて算出すればよい。
【0059】
次に、評価部43は、断層画像D1における、局在領域Aの面積を算出する(ステップS42,第2算出工程)。具体的には、評価部43は、断層画像D1における局在領域Aの面積を算出する。局在領域Aの面積は、例えば、局在領域Aに含まれる画素数に基づいて算出すればよい。
【0060】
続いて、評価部43は、ステップS41の第1算出工程で算出したスフェロイド9全体の面積と、ステップS42の第2算出工程で算出した局在領域Aの面積とに基づいて、局在領域9aの割合を算出する(ステップS43,第3算出工程)。ステップS43で算出される割合は、例えば、代表的な1つの断層画像D1における面積割合(局在領域Aの面積を全体領域A1の面積で除したもの)であってもよい。
【0061】
また、例えば、1つのスフェロイド9について複数の断層画像D1を取得している場合、ステップS43の第3算出工程において算出される局在領域9aの割合は、体積の割合であってもよい。その場合、まず、複数の断層画像D1の全体領域A1および局在領域Aの面積に基づいて、スフェロイド9全体および局在領域9aの体積を算出する。その後、局在領域9aの体積をスフェロイド9全体の体積で除して局在領域9aの割合を算出する。
【0062】
その後、評価部43は、評価パラメータVを算出する(ステップS44,第4算出工程)。評価パラメータVは、ステップS43の第3算出工程において算出される局在領域9aの割合に基づいて算出される。評価パラメータVは、例えば、後述の実験2に示されるように、局在領域9aの割合に基づいて算出される、スフェロイド9における、所定の遺伝子発現の度合いの推定値や、所定のタンパク質の分泌量の推定値である。スフェロイド9が肝スフェロイドである場合、評価パラメータVには、例えば、スフェロイド9からのタンパク質CYP3A4の分泌量が用いられる。
【0063】
評価パラメータVとして、ステップS43の第3算出工程において算出される局在領域9aの割合そのものが用いられてもよい。しかしながら、評価パラメータVとして、所定の遺伝子発現の度合いの推定値や、所定のタンパク質の分泌量の推定値のように、組織の一部として必要な挙動をしているか否かが直接現れるパラメータを評価パラメータVとすることにより、よりユーザに理解しやすい評価パラメータVが得られる。
【0064】
評価部43は、算出された評価パラメータVに基づいて、スフェロイド9の良否判定を行う(ステップS45,判定工程)。例えば、評価パラメータVが所定の閾値以上、または、所定の閾値以下である場合に、当該スフェロイド9がバイオ3Dプリンタの材料として適していると判断し、そうでない場合に、当該スフェロイド9がバイオ3Dプリンタの材料として不適切であると判断する。
【0065】
例えば、評価パラメータVが局在領域の割合そのものであり、再生医療用もしくは肝毒性評価用に適した健康なスフェロイドの選別を目的とする場合は、評価パラメータVが所定の閾値以下であるスフェロイドを「良」とし、所定の閾値より大きいスフェロイドを「否」とすることが好ましい。
【0066】
評価パラメータVとして、局在領域9aの割合に基づいて算出される、スフェロイドにおける、所定の遺伝子発現の度合いの推定値や、所定のタンパク質の分泌量の推定値を用いる場合には、遺伝子やタンパク質の種類、スフェロイドの組成、スフェロイドの用途などに応じて、評価パラメータVが所定の下限閾値以上、かつ、所定の上限閾値以下であるスフェロイドを「良」とすることが好ましい。
【0067】
評価部43により算出された局在領域9aの大きさ(面積または体積)、局在領域9aの割合、および評価パラメータVは、記憶部33に記憶される。また、評価部43は、評価パラメータVを、表示部70に表示する。
【0068】
以上のように、この観察装置1では、スフェロイド9を光干渉断層撮影により撮影し、得られた断層画像D1から、スフェロイド9の局在領域9aに相当する局在領域Aを抽出できる。これにより、非侵襲でも、スフェロイド9の局在領域9aを観察できる。また、局在領域9aの割合に基づいた評価パラメータVを算出することにより、スフェロイド9のバイオ3Dプリンタの材料としての適否を容易に評価できる。
【0069】
このようなステップS2の画像取得工程、ステップS3の領域抽出工程、およびステップS4の解析・評価工程を、作成した多数のスフェロイド9に対して行う。そして、ステップS4の解析・評価工程においてバイオ3Dプリンタの材料として適していると判断されたスフェロイド9を用いて、例えばバイオ3Dプリンタによって組織形成を行う(ステップS5,組織形成工程)。このようにすれば、例えば肝毒性評価用途に適した品質の良い組織を得ることができる。
【0070】
<3.実験>
<3-1.実験1>
上記の実施形態の評価方法において、光干渉断層撮影によって得られた断層画像(以下では「OCT画像」と称する)における局在領域の検出精度を確かめるため、以下の2種類の方法で肝スフェロイドの局在領域の面積割合を算出した。
【0071】
(方法1:OCT画像から局在領域の面積割合を算出)
複数の肝スフェロイドについて、上記の実施形態に記載の方法で、光干渉断層撮影を行い、得られたOCT画像(断層画像)のうち、任意の画像1つから、局在領域を抽出し、局在領域を全体領域で除した値を面積割合として算出した。
【0072】
(方法2:染色組織切片画像から局在領域の面積割合を算出)
方法1で光干渉断層撮影を行った複数の肝スフェロイドについて、蛍光試薬を用いて染色した後、任意の断面で切断し、当該切断面において、従来の手法で局在領域を抽出し、局在領域を全体領域で除した値を面積割合として算出した。
【0073】
図11は、実験1の実験結果であり、肝スフェロイドについて、光干渉断層撮影によって得られた画像(OCT画像)から算出された局在領域の面積割合と、染色した組織切片画像から算出された局在領域の面積割合との関係を示すグラフである。
【0074】
図11に示すように、光干渉断層撮影によって得られたOCT画像から算出された局在領域の面積割合と、従来の方法である染色した組織切片画像から算出された面積割合とのピアソンの積率相関係数は0.839となった。すなわち、光干渉断層撮影によって得られたOCT画像から算出された局在領域の面積割合は、従来の方法である染色した組織切片画像から算出された面積割合と十分に相関関係を有している。これより、光干渉断層撮影によって得られたOCT画像から局在領域の面積割合を算出する方法は、従来の方法と比較して同等の精度で面積割合を算出できていると考えられる。
【0075】
<3-2.実験2>
上記の実施形態の評価方法において、評価パラメータVとして所定の遺伝子発現の度合いの推定値や、所定のタンパク質の分泌量の推定値を用いる場合に、これらの評価パラメータVの推定値の信頼性を確かめるため、以下の方法で実験を行った。
【0076】
まず、複数の肝スフェロイドについて、上記の実施形態に記載の方法で、光干渉断層撮影を行い、得られたOCT画像(断層画像)のうち、任意の画像1つから、局在領域を抽出し、局在領域を全体領域で除した値を面積割合として算出した。
【0077】
一方、光干渉断層撮影を行った当該複数の肝スフェロイドについて、それぞれの肝スフェロイドからのタンパク質CYP3A4の酵素活性を計測した。なお、各肝スフェロイドについて、光干渉断層撮影とタンパク質CYP3A4の酵素活性の計測とは、どちらを先に行ってもよい。
【0078】
図12は、実験2の実験結果であり、肝スフェロイドについて、OCT画像から算出された局在領域の面積割合と、CYP3A4の酵素活性との関係を示すグラフである。図12に示すように、肝スフェロイドにおけるOCT画像から算出された局在領域の面積割合と、CYP3A4の酵素活性とのピアソンの積率相関係数は-0.885となった。肝スフェロイドにおけるOCT画像から算出された局在領域の面積割合と、CYP3A4の酵素活性との間には、高い(負の)相関関係が認められる。このため、肝スフェロイドについて、OCT画像から算出された局在領域の面積割合に基づいて、CYP3A4の酵素活性を推定した場合に、その推定値には十分な信頼性があるものといえる。
【0079】
<4.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではない。
【0080】
<4-1.第1変形例>
上記の実施形態では、ステップS3において、領域抽出部42が、断層画像D1のうち、輝度値が所定の条件を満たす領域を、局在領域Aとして抽出していた。しかしながら、ステップS3において、領域抽出部42は、学習モデルを利用して局在領域Aを抽出してもよい。図13は、学習モデルを利用する場合の、評価処理の流れを示すフローチャートである。
【0081】
図13の例では、まず、コンピュータ30が、深層学習により学習モデルを作成する(ステップS0,学習工程)。学習モデルは、スフェロイド9の断層画像D1を入力情報とし、断層画像D1中の局在領域9aに相当する局在領域Aを出力情報とする入出力器である。コンピュータ30は、予め用意した多数の断層画像D1と、それらの断層画像D1に含まれる局在領域Aとを、教師データとして、教師あり機械学習アルゴリズムにより、学習モデルを作成する。学習モデルは、記憶部33に記憶される。機械学習アルゴリズムには、例えば、セマンティックセグメンテーションを使用することができるが、これには限られない。
【0082】
一方、多数のスフェロイド9の作成を行う(ステップS1,スフェロイド作成工程)。ステップ1のスフェロイド作成工程は、図13に記載のように、ステップS0の学習工程の後に行われてもよいし、学習工程の前や、学習工程と並行して行われてもよい。
【0083】
ステップS0の学習工程およびステップS1のスフェロイド作成工程の終了後、観察装置1により、スフェロイド9の撮影が行われる(ステップS2,画像取得工程)。続いて、コンピュータ30の領域抽出部42は、撮影により得られた断層画像D1から、局在領域9aに相当する局在領域Aを抽出する(ステップS3,領域抽出工程)。具体的には、領域抽出部42は、ステップS0で作成された学習モデルに、ステップS2で取得した断層画像D1を入力する。そうすると、学習モデルから局在領域Aが出力される。これにより、上述したステップS31~S33のような処理を行うことなく、局在領域Aを得ることができる。
【0084】
<4-2.第2変形例>
上記の実施形態では、断層画像D1から局在領域Aを抽出する場合について説明した。しかしながら、三次元画像D2から局在領域Aを抽出してもよい。三次元画像D2を対象とする場合、上述したステップS3において、三次元画像D2を構成する三次元座標のうち、局在領域9aに相当する三次元領域を、局在領域Aとして抽出する。そして、抽出した三次元領域の局在領域9aの体積とスフェロイド9全体の体積とから局在領域9aの割合を算出し、当該割合に基づいて評価パラメータVを算出する。抽出の方法は、上記の実施形態のような輝度値に基づく領域抽出であってもよく、上記の第1変形例のような学習モデルを使用した領域抽出であってもよい。
【0085】
<4-3.他の変形例>
上記の実施形態では、試料容器90が、複数のウェル(凹部)91を有するウェルプレートであった。そして、各ウェル91に、1つの生体試料9が保持されていた。しかしながら、1つのウェルの中に、複数の生体試料が保持されていてもよい。その場合、1つの画像の中に、複数の生体試料に相当する領域が含まれていてもよい。また、生体試料を保持する試料容器は、1つの凹部のみを有するディッシュであってもよい。
【0086】
また、上記の実施形態や変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0087】
1 観察装置
9 生体試料/スフェロイド
9a 局在領域
41 画像取得部
42 領域抽出部
43 評価部
90 試料容器
91 ウェル
A 局在領域
A1 全体領域
A2 高輝度領域
D1 断層画像
D2 三次元画像
V 評価パラメータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13