(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128352
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】無人搬送台車
(51)【国際特許分類】
B62B 3/02 20060101AFI20240913BHJP
【FI】
B62B3/02 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037285
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125737
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 昭博
(72)【発明者】
【氏名】寺澤 佑一
(72)【発明者】
【氏名】西本 翔太郎
(72)【発明者】
【氏名】森中 裕紀
【テーマコード(参考)】
3D050
【Fターム(参考)】
3D050AA38
3D050BB02
3D050BB22
3D050BB30
3D050DD01
3D050GG01
3D050HH07
(57)【要約】
【課題】長尺搬送対象物を搬送する無人搬送台車を提供すること。
【解決手段】長尺搬送対象物3を複数台で支持して搬送するものであって、車輪21,22に対する回転および走行角度について駆動制御が可能な走行装置12と、走行装置12によって支持された台車本体11と、台車本体11に対して縦軸を中心として回転することにより左右端が交互に前後する載置台40(41)と、載置台40(41)の回転角度を検出する回転角度監視機構58と、回転角度監視機構58の検出信号を基に走行装置12に対する駆動制御を行う駆動制御装置7と、を有する無人搬送台車1。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺搬送対象物を複数台で支持して搬送する無人搬送台車であって、
車輪に対する回転および走行角度について駆動制御が可能な走行装置と、
前記走行装置によって支持された台車本体と、
前記台車本体に対して縦軸を中心として回転することにより左右端が交互に前後する載置台と、
前記載置台の回転角度を検出する回転角度監視機構と、
前記回転角度監視機構の検出信号を基に前記走行装置に対する駆動制御を行う駆動制御装置と、
を有する無人搬送台車。
【請求項2】
前記回転角度監視機構は、前記載置台について設定された基準角度からの回転角度をズレ量として検出するものであり、前記駆動制御装置は、前記載置台を前記基準角度に戻すための前記走行装置に対する駆動制御を行うものである請求項1に記載の無人搬送台車。
【請求項3】
前記駆動制御装置は、前記回転角度監視機構の検出信号から得られる前記基準角度に対するズレ方向とズレ量とを基に、前記載置台を前記基準角度に戻すための前記走行装置に対する駆動制御を行うものである請求項1に記載の無人搬送台車。
【請求項4】
前記走行装置は、平行に配置された前記一対の車輪と、前記一対の車輪を前後から挟むように配置された各々の駆動モータとが、装置本体に対して一体に構成されたものであり、前記台車本体の前後左右の位置に、前記装置本体が前記台車本体に対して鉛直方向の装置回転軸によって回転可能に組み付けられたものである請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の無人搬送台車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車体などの長尺搬送対象物を搬送する無人搬送台車に関する。
【背景技術】
【0002】
製造工場あるいは建設現場など多くの場所において無人搬送台車を使用した搬送対象物の自動搬送が行われている。搭載する対象搬送物が長尺なものである場合、その長尺搬送対象物は複数の無人搬送台車によって搭載され、各無人搬送台車の走行制御を連動させた協調搬送が行われる。下記特許文献1には、複数の2輪独立駆動式移動ロボットにより搬送対象物を協調搬送する移動ロボットによる協調搬送方式が開示されている。
【0003】
移動ロボットは、各々が2車輪の中点から車輪の進行方向に所定距離を隔てた位置で、その垂直軸の周りに回転自在に搬送対象物を支持する。そして、例えば2台の移動ロボットによる搬送対象物の搬送では、それぞれの制御装置によって搬送対象物の動作指令を受け、所定の演算が独立して実行される。移動ロボットがどのような角度で搬送対象物を把持していたとしても、移動ロボット自身の姿勢およびハンドの角度を計測することで所定の動作を実現でき、互いの移動ロボットの情報を一切必要とせず、搬送対象物の動作指令のみを受けるだけで協調搬送が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-042958号公報
【特許文献2】特開2011-216007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、長尺搬送物の中でも、鉄道車両の様に、重心の高い製品の搬送を実現するには搬送ルートに限りなく近い走行制御が必要である。複数台における長尺搬送対象物の搬送では、例えば前記特許文献2に記載のオムニホイールを使用した無人搬送台車において、予め設定された条件に基づく協調搬送が行われる。しかし、前記無人搬送台車が、離れた位置で長尺搬送対象物を支持して走行するため、搬送の途中に無人搬送台車同士の相対的な位置関係にズレが生じてしまうことがある。このとき位置ズレが生じたままの走行が継続されると、そのズレ量が大きくなるなどして搬送ルートに従った走行制御を難しくしてしまうおそれがある。そこで、これまでの無人搬送台車は、複数台で長尺搬送対象物を搭載して搬送する様な場合、速度、位置情報等を基にした高精度な状態監視が必要であった。
【0006】
そこで、本発明は、かかる課題を解決すべく、簡単な構成により長尺搬送対象物を搬送する無人搬送台車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る無人搬送台車は、長尺搬送対象物を複数台で支持して搬送するものであって、車輪に対する回転および走行角度について駆動制御が可能な走行装置と、前記走行装置によって支持された台車本体と、前記台車本体に対して縦軸を中心として回転することにより左右端が交互に前後する載置台と、前記載置台の回転角度を検出する回転角度監視機構と、前記回転角度監視機構の検出信号を基に前記走行装置に対する駆動制御を行う駆動制御装置と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
前記構成によれば、長尺搬送対象物を例えば前後の無人搬送台車の載置台に搭載して搬送する際、回転角度監視機構によって載置台の角度を検出することにより、無人搬送台車同士の相対的な位置ズレを確認することができ、それを基に制御装置が走行装置に対して駆動制御することにより車輪に対する回転および走行角度の調整により位置ズレの修正が行える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】鉄道車体を2台の無人搬送台車に搭載した搬送時の状態を示した斜視図である。
【
図2】無人搬送台車を上方から示した斜視図である。
【
図3】無人搬送台車を下方から示した斜視図である。
【
図5】無人搬送台車の走行装置の外観斜視図である。
【
図6】装置本体を正面から示した
図5のN-N矢視図である。
【
図7】無人搬送台車の載置台を下側から示した斜視図である。
【
図8】載置台を
図7のM-M矢視で示した断面斜視図である。
【
図9】載置台を
図7の矢印L方向から見た図である。
【
図10】無人搬送台車制御システムの機能構成を簡易的に示したブロック図である。
【
図11】鉄道車体が横向きになって横行する際、左右の無人搬送台車にズレが生じた状況を示した図である。
【
図12】2台の無人搬送台車の相対的な位置関係にズレが生じた場合のテーブルの回転を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る無人搬送台車の一実施形態について図面を参照しながら以下に説明する。本実施形態では、鉄道車両の車体部(以下、鉄道車体と記す)に対する検査や修繕などを行う鉄道車両検修工場において、その鉄道車体を搬送する無人搬送台車に関して説明する。
図1は、鉄道車体を2台の無人搬送台車に搭載した搬送時の状態を示した斜視図である。この鉄道車体3は、通常の運転時にはその前部および後部が既知の台車に搭載されて鉄道レールを走行し、検査及び修理時(「検修」ともいう)には、既知の仮台車に搭載されるものであるが、本実施形態の無人搬送台車1は、そうした仮台車に換えて鉄道車体3を前後で支持し、当該鉄道車体を検査あるいは修繕する為に鉄道車両検修工場内を無人搬送するものである。
【0011】
鉄道車体3は、鉄道車両検修工場において定期的に検査などが行われるが、その鉄道車両検修工場には鉄道レールが敷かれており、トラバーサなどの設備が備えられている。ここで言うトラバーサは、既知の製品の様に、前記鉄道レールとは別に、横行用の専用レールが敷設されたものを指している。これまで鉄道車両検修工場内を移動する鉄道車体3は、前記台車の代わりに既知の仮台車が使用され、そこに搭載されることにより鉄道レールに従った移動が行われていた。従って、鉄道車両検修工場では、鉄道車体3は鉄道レールに沿った長手方向の前後搬送と、トラバーサを使用した短手方向(Y軸方向)の横行搬送によって行われていた。
【0012】
本実施形態の無人搬送台車1は、このような従来から使用されてきた鉄道車両検修工場において鉄道レールなどに従わない自由な無人搬送を可能にするものである。
図2乃至
図4は、その無人搬送台車1を示した図である。特に、
図2は上方から示した斜視図であり、
図3は下方から示した斜視図、そして
図4は平面図である。尚、本実施形態では、各図に示すX軸方向を、鉄道車体3が正しい姿勢で移動する際の車体長手方向(車体前後方向)として説明し、
図4に示すY軸方向を、鉄道車体3が横行する方向、ないしは前記無人搬送台車1の幅方向として説明する。
【0013】
無人搬送台車1は、鋼管や板材を接合した台車本体11によって構成され、その台車本体11は、前後左右に組み付けられた4台の走行装置12に支持されている。4台の走行装置12は同じ構造であり、台車本体11に対して下側から組み付けられている。ここで、
図5は、走行装置12の外観斜視図であり、
図6は、装置本体を、走行方向に向かって正面から示した
図5のN-N断面矢視図である。
【0014】
走行装置12は、装置本体20に対して独立して回転する一対の車輪21,22と駆動モータ23,24とが一体になって構成されている。車輪21,22は、各々の車軸が同軸上に位置することで平行に配置され、その車輪21,22を前後に挟んで配置された駆動モータ23,24から、減速機25,26を介して対応する車軸に回転が伝達されるよう構成されている。すなわち、減速機25,26の出力軸と車輪21,22の車軸との間で、各ギヤに間接伝動部材27が掛け渡され、駆動モータ23,24の回転出力が車輪21,22へと伝達されるようになっている。
【0015】
走行装置12(装置本体20)は、鉛直な姿勢の装置回転軸28が上方に突き出し、その周りには環形状の固定リング29が設けられ、走行装置12は、この固定リング29を介して台車本体11に取付けられている。装置本体20は、装置回転軸28が固定リング29と軸受けを介して一体に組付けられ、その装置回転軸28を中心に
図3の矢印A方向に回転するよう構成されている。従って、走行装置12(装置本体20)は、駆動モータ23,24が単に走行用として機能するだけではなく、操舵用としても機能するようになっている。すなわち、駆動モータ23,24の駆動制御によって、例えば車輪21,22が同じ方向に回転すれば直進走行が行われ、それぞれが逆方向に回転すれば操舵が行われる。
【0016】
走行装置12は、こうして車輪21,22の角度を変えることができ、駆動モータ23,24による車輪21,22の回転制御によって走行方向の切り換えが可能である。そのため、無人搬送台車1に搭載した鉄道車体3の横行や一定角度の斜行による搬送が可能になっている。すなわち、4つの走行装置12に対する制御によって車輪21,22の角度が揃えられ、搭載した鉄道車体3の進行方向を、
図1のX軸で示すように車体前後方向に直進走行させるだけではなく、X軸に直交する車体幅方向の横行、一定の角度をつけた斜め方向の斜行による走行が可能になっている。
【0017】
更に、走行装置12は、一対の車輪21,22について、走行装置12の正面から見た車軸の角度が走行面に従って傾くよう構成されている。走行装置12は、装置回転軸28が支持ブロック31と一体になり、その支持ブロック31に対して、車輪21,22および駆動モータ23,24などを保持した本体フレーム32が装置前後軸33によって軸支されている。装置前後軸33は、鉛直な装置回転軸28に対して直交し、一対の車輪21,22の進行方向と同軸で、且つ地面に水平な回転軸である。従って、無人搬送台車1の4台の走行装置12は、車輪21,22が、
図3に示す矢印A方向に回転し、車輪21,22の車軸が、
図3および
図6に示す矢印B方向の回転によって傾くようになっている。
【0018】
無人搬送台車1は、台車本体11に対して不図示の揺動梁が設けられ、4台ある走行装置12のうち前側の2台または後側の2台がその揺動梁に組み付けられている。その揺動梁は、台車本体11に対して幅方向の中心位置となる前後方向(X軸方向)に平行な前後軸によって軸支されたものであり、
図2の矢印Cで示すように上下に揺動する左右端部に走行装置12がそれぞれ組み付けられている。この様な構成の走行装置12を有することにより、無人搬送台車1は、凹凸があって平坦でない鉄道車両検修工場内を安定して走行することができるようになっている。
【0019】
次に、無人搬送台車1は、台車本体11上に長尺搬送対象物である鉄道車体3を搭載する為の載置台40が設けられている。その載置台40は、それぞれ異なる回転軸46,52,55と形状を持つ3層構造の略長方体であって、無人搬送台車1を前後方向に見た中間位置に配置されている。ここで、
図7乃至
図9は載置台40を示した図であり、特に、
図7は載置台40を下側から見た斜視図であり、
図8は載置台40を
図7のM-M矢視に沿って、Z方向に分割した(切断した)断面斜視図であり、
図9は載置台40を
図7の矢印L方向から見た図である。なお、この載置台40に関しては、その配置が無人搬送台車1の前後方向になる短手方向をX軸、同じく幅方向である長手方向をY軸、そして高さ方向をZ軸として説明する。
【0020】
載置台40は、鉄道車体3が搭載されるヨーイングテーブル41の下にローリングテーブル42およびピッチングテーブル43が上下に重なるようにして一体に構成されている。先ず一番下のピッチングテーブル43は、そのY軸方向両端部が昇降用支持ロッド45に軸支されている。円柱形状の昇降用支持ロッド45は、Z軸方向に移動できるように、台車本体11側に形成された不図示のガイド部材に挿入されている。昇降用支持ロッド45の側面には、複数の受け溝451が軸方向(Z軸方向)に所定の間隔で形成され、台車本体11側には、その受け溝451に、不図示のストッパを嵌入させる位置決め機構が構成されている。
【0021】
不図示の位置決め機構は、昇降用支持ロッド45の上下動に伴い対応する高さに位置した受け溝451に向け、既知の方法によってストッパを出し入れさせるよう構成されたものである。従って、ストッパが受け溝451に嵌入した昇降用支持ロッド45は、台車本体11に対して位置決め固定された状態となり、載置台40がその昇降用支持ロッド45に従って高さが調節される。2本の昇降用支持ロッド45は、上端部にピン孔が形成され、横軸である横支持ピン46によってピッチングテーブル43が連結されている。従って、ピッチングテーブル43は、一対の昇降用支持ロッド45に軸支され、特に横支持ピン46がY軸方向に沿って同軸上に位置する為、ピッチングテーブル43の前後の両端が上下に揺動するピッチング動作(
図3のD方向)が可能になっている。
【0022】
載置台40は、ピッチングテーブル43にローリングテーブル42が一体的に構成されている。これにより、そのY軸方向両端部に配置された一点鎖線で示す一対の昇降用油圧ジャッキ51がローリングテーブル42左右端部の裏面に当接し、昇降させることによって、他の載置台40に関わる構造物が支持されている。従って、昇降用油圧ジャッキ51が伸縮することによって、ピッチングテーブル43も上下方向に昇降し、前述したように昇降用支持ロッド45が位置決めされることにより載置台40の高さ調節が行われる。昇降用油圧ジャッキ51は、類似する従来の仮台車とは異なり、前記油圧ジャッキ51の図示しないピストンロッドの先端とローリングテーブル42が結合したり、軸支されている必要はない。寧ろ、油圧ジャッキ51と載置台40が結合されず、当接することによって昇降されることにより、電力や油圧の自由な制御が可能になり、無人搬送車1そのものの稼働時間増大に寄与する。
【0023】
ローリングテーブル42は、Y軸方向の中央位置において前後軸である前後支持ピン52によってピッチングテーブル43に軸支されている。ローリングテーブル42は、昇降用油圧ジャッキ51に支持されていない状態では、ローリングテーブル42の左右の両端が上下に揺動(
図3のF方向)する様構成されている。
【0024】
次に、ヨーイングテーブル41とローリングテーブル42は、前記ヨーイングテーブル41中心部の位置決め穴(開口部)551の中心に沿って、Z軸と平行な縦軸である縦回転軸55が、前記ヨーイングテーブル41の垂直下方に沿って、円筒状に構成されている。前記円筒部には軸受け部47が配設され、ヨーイングテーブル41を縦回転軸55を中心として揺動可能に軸支している(
図4のE方向)。なお、台車本体11に組付けられた載置台40は、その縦回転軸55が無人搬送台車1の中央部に位置することとなる。そして、無人搬送台車1は、位置決め穴551に鉄道車体3側の位置決めピン(中心ピンともいう)が入り込み、ヨーイングテーブル42と固定されることにより、その載置台40に鉄道車両3が搭載される。
【0025】
ヨーイングテーブル41は、ローリングテーブル42に対して縦回転軸55を中心としたヨーイング動作(
図4の矢印E方向)が可能になっている。ヨーイング動作は、ヨーイングテーブル41の左右両端を、
図4の矢印E方向の様に、前後に揺動させるものであるが、その両端部には規制機構56が設けられている。規制機構56は、ローリングテーブル42のY軸方向の両側面に、縦回転軸55の中心を通るX軸に平行な中心線を対象軸として、線対称となるよう構成されている。
【0026】
規制機構56は、ローリングテーブル42の側面に略直方体形状のガイドブロック61が、上記ローリングテーブル42の側面から長手方向(Y軸)に突出する様に固定され、そのガイドブロック61をX軸方向に貫いたガイドロッド62が、ガイドブロック61に保持されたオイルレスブッシュによって摺動可能に支持されている。ガイドブロック61には、ガイドロッド62と平行に配置される2本の支持ロッド63の一端が固定され、その支持ロッド63の他端にはガイド端部板65が、ガイドロッド62の軸中心に対し、垂直となる様、配設されている。2本の支持ロッド63の他端には雄ネジ部が形成され、ガイド端部板65に形成された2箇所の孔を貫通している。そして、各々の雄ネジ部に一対のナットを螺合させてガイド端部板65を挟み込むことにより、支持ロッド63の他端部にガイド端部板65が位置決め固定されている。
【0027】
更に、ガイドブロック61とガイド端部板65との間には、ガイドロッド62包む様にして形状記憶型のコイルバネ66が組み込まれている。ガイドロッド62にはフランジ621が形成され、ガイド端部板65に支持される様にして2つのコイルバネ66が直列に組み込まれている。ヨーイングテーブル41の長手方向の側面部には、前記側面部の両端で、且つヨーイングテーブル41に対して垂直下方(Z軸方向)に延在する様に配設された、作用板67が固定され、コイルバネ66によって付勢されたガイドロッド62は、前記ガイドロッド 62の半円球状の先端が作用板67に当接されている。前記当接により、作用版67に働いた付勢力は、最終的にヨーイングテーブル41に働き、矢印E方向の余計なヨーイング動作を抑えるように作用する。こうした規制機構56は、ローリングテーブル42の左右両側に設けられ、ヨーイングテーブル41が左右均等なバネ力で付勢されている。そのため、載置台40は、鉄道車体3を搭載するヨーイングテーブル41の長手方向(横支持ピン46と平行な方向、前後支持ピン52と直交する方向)が、台車本体11の幅方向と平行になる様に姿勢が安定する。
【0028】
従って、以上の構成による載置台40は、
図3における矢印D,F方向、
図4における矢印E方向の揺動機構を持ち、鉄道車体3の搬送時に余裕を持たせることと同時に、規制機構56の機械的な構成により、E方向の揺動を抑えることにより、鉄道車体3搭載時や搬送時において、正確な搬送作業が可能となる。
【0029】
さて、載置台40は、ローリングテーブル42に縦回転軸55を介して軸支されたヨーイングテーブル41が左右端を前後させるように揺動するが、このヨーイングテーブル41には揺動時の角度を検出する為、ポテンショメータなどの回転角度監視機構58が縦回転軸55と軸受け部47に跨って設けられている。ヨーイングテーブル41の長手方向(横支持ピン46と平行な方向、前後支持ピン52と直交する方向)が台車本体11の幅方向(K軸)と平行になる状態が、回転角度監視機構58による検出角度がゼロとなるように設定されている。
【0030】
前記監視機構58は例として、ロータリ式で一軸のポテンショメータが挙げられる。
機械的構成としては、K軸に対して同軸となる様、二つの梁554,555が載置台40の縦回転軸55底部に配設される。内梁555は縦回転軸55に、外梁554は軸受け部47に繋がっており、双方の中点となる部分にポテンショメータ等の前記角度監視機構58が配設される。前記角度監視機構58の配設向き(特に上下方向)は、本発明によって何ら指定されることはないが、メンテナンスの観点から、回転軸部を上向きに、本体部を下向きにすることが好ましい。
【0031】
次に、
図10は、無人搬送台車制御システムの機能構成を簡易的に示したブロック図である。この無人搬送台車制御システムでは、コンピュータを用いて構成された搬送管理装置8と、無人搬送台車1(1A,1B)に搭載された駆動制御装置7との間で走行指令などの情報通信が行われ、搬送ルートに従った鉄道車体3の搬送が行われるようになっている。
【0032】
2台の無人搬送台車1A,1Bは、一方がマスタとなり他方がスレーブとなって協調搬送が行われる。駆動制御装置7は、搬送管理装置5および無人搬送台車1A,1B同士で走行情報を送受信する為の走行情報通信部71を有し、鉄道車体3を搬送する為の搬送情報を受けるほか互いの走行状態について確認が行われるようになっている。また、駆動制御装置7は、各々の無人搬送台車1A,1Bについて進行速度や移動方向、現在の位置座標などの走行情報を算出する走行情報算出部72を有し、マスタ側であれば自らの位置座標が算出され、スレーブ側であればマスタ側との相対的な位置関係が算出される。
【0033】
更に、駆動制御装置7は、走行装置12に対する走行指令を作成する駆動指令部73を有している。その駆動指令部73は、搬送管理装置5から鉄道車両検修工場における搬送ルートなどを含む搬送情報、走行情報算出部72において算出される走行情報、そして走行情報通信部71を介して取得した他方の無人搬送台車1に関する走行情報などに基づき、所定の搬送ルートに従った走行制御が行われる。その際、駆動指令部73では前述した回転角度監視機構58からの検出信号に基づく走行位置の調整が行われる。
【0034】
続いて、
図11、
図12を用いて、鉄道車両検修工場における鉄道車体3の搬送を説明する。2台の無人搬送台車1A,1Bは、各々の走行装置12について走行制御が行われ、駆動モータ23,24によって車輪21,22に所定の回転が与えられ、協調した鉄道車体3を搬送する為の走行制御が行われる。鉄道車体3は、
図1に示すX軸方向に前後走行する他、そのX軸に直交する車体短手方向の横行や、所定の角度方向に移動する斜行といった走行方向の切り換えが行われて所定の搬送ルートに沿って移動する。
【0035】
例えば、鉄道車体3を横行させる場合は、車輪21,22の回転を制御することによって装置本体20が
図3の矢印Aで示す方向に90度回転することにより、鉄道車体3は短手方向に横移動することになる。このとき左右の無人搬送台車1A,1Bは、走行方向の位置が一致するようにした走行制御が行われるが、
図11に示す様に両台車に相対的な位置ズレが生じてしまうことがある。搬送対象となる鉄道車体3の重量バランスに依る無人搬送台車1A,1Bへの速度差の発生の他、走行面の凹凸などを原因として一方の走行速度に変化が生じることなどがあるためである。
【0036】
無人搬送台車1A,1Bは、このズレ量Sが大きくなることで搬送ルートから外れてしまうおそれがある。これまでの無人搬送車(AGV)における走行位置の調整制御は、駆動モータにおけるエンコーダ値の演算や、地上に設置した位置検知センサからの検出情報やGPS情報などに従って行われていた。しかし、こうした従来技術による無人搬送車の走行制御は、その構造や演算処理が複雑になるほかコストがかかってしまっていた。この点、本実施形態では鉄道車体3の搬送時における無人搬送台車1A,1Bの相対的な位置ズレを、コストをかけずに正しい位置関係に戻す為の走行制御が行われる。
【0037】
図11では、鉄道車体3が横向きになって短手方向に横行し、図面左側の無人搬送台車1Aが右側の無人搬送台車1Bより先行してしまっている状況が示されている。このとき鉄道車体3の長手方向の姿勢がY軸に対して傾いているが、その鉄道車体3を搭載する載置台40はヨーイングテーブル41が揺動して傾いている。すなわち、本実施形態の無人搬送台車1A,1Bでは、鉄道車体3における載置台40との位置関係が長手方向の傾きに影響されることなく一定になり、バランスを崩してしまうことや、台車との搭載部分に生じ得るひずみの影響などが回避できる。
【0038】
こうした載置台40を備えた無人搬送台車1A,1Bでは、回転角度監視機構58によってヨーイングテーブル41の回転角度θが検出可能である。載置台40は、
図4に示す様に、その長手方向が台車本体11の幅方向(前後方向のX軸に直交し、Y軸に平行なる方向)を向いた状態が鉄道車体3を搬送する際の基本姿勢であり、この状態を基準角度K(θ=0°)として回転角度θが検出される。そして、鉄道車体3によって互いが連結状態になった無人搬送台車1A,1Bでは、相対的な位置ずれが生じた場合、回転角度監視機構58によって検出された回転角度θが本来の位置関係から外れたときのズレ量Sに比例する。尚、θが基準角度Kである(θ=0°)ならば、ズレ量S=0である。
【0039】
このような無人搬送台車1A,1Bにおける相対的な位置ズレおよびそれに伴うヨーイングテーブル41の揺動は、鉄道車体3の前後走行、横行および斜行のどのような方向の走行であっても生じ得る。従って、いずれの場合であっても回転角度θを基準角度Kに戻すことにより鉄道車体3の長手方向の姿勢をX軸に合わせることができ、左右の無人搬送台車1A,1Bの走行位置を揃えることになる。そして、この様な処理が左右の無人搬送台車1A,1Bを搬送ルートに沿って走行させる走行制御の補助になる。
【0040】
ところで、無人搬送台車1A,1Bにおける相対的な位置ズレは、
図12に示す様に載置台40の両方向の回転として生じ得る。鉄道車体3の横行を例に挙げれば、
図11の示す場合と、その逆であって図面右側の無人搬送台車1Bが左側の無人搬送台車1Aより先行する場合とである。なお、
図12は、無人搬送台車1A,1Bの相対的な位置関係にズレが生じた場合における載置台40のヨーイングテーブル41の回転を示した図である。
【0041】
ヨーイングテーブル41の回転方向は、基準角度Kに対して右側の回転角度Rθと左側の回転角度Lθとがあり、それによって無人搬送台車1A,1Bの相対的な位置ズレの状態が判断できる。鉄道車体3の横行の場合には、回転角度Rθであれば
図11に示す状況、つまり左側の無人搬送台車1Aが右側の無人搬送台車1Bより先行してしまっていることが分かる。一方、ヨーイングテーブル41の回転が回転角度Lθの場合であればその逆である。そして、その回転角度Rθ,Lθの数値によって無人搬送台車1A,1Bにおける本来の位置関係からのズレ量Sが算出できる。
【0042】
駆動指令部73では回転角度監視機構58からの検出信号を基に得られる回転角度Rθ,Lθにより、走行制御における無人搬送台車1A,1Bの走行位置の調整が行われる。駆動指令部73において、予め設定した閾値となる角度θ´を位置ズレ量Sの判定基準として回転角度Rθ,Lθの情報を基に位置ズレを判断し、ヨーイングテーブル41が基準角度Kに戻る様に、予め設定された走行装置12の駆動モータ23,24に対する走行制御が行われる。これにより所定の走行装置12における車輪21,22の回転が制御され、無人搬送台車1A,1Bの走行位置の調整によってズレ量Sの修正が行われる。
図11の例であれば、先行する無人搬送台車1Aの減速制御が行われ、または逆に無人搬送台車1Bの増速制御が行われる。
【0043】
鉄道車体3の搬送中は、常に回転角度監視機構58からの検出信号を基に得られる回転角度Rθ,Lθによって、ズレ方向およびズレ量の確認と、無人搬送台車1A,1Bに対する走行位置の調整が繰り返される。このときズレ方向に従って無人搬送台車1A,1Bの一方をズレが生じた台車として判定し、他方の台車に揃えるように駆動制御するようにしてもよい。例えば、
図11に示す状態であれば、無人搬送台車1Aが無人搬送台車1Bに走行位置を揃えるように減速させる。すなわち、無人搬送台車1A,1Bにおける走行位置の調整は相対的位置関係の調整であるため、無人搬送台車1A,1Bの一方を他方に揃える様に走行位置を調整すればよい。ただし、無人搬送台車1A,1Bの両方を互いに調整するようにした制御であってもよい。
【0044】
よって、本実施形態によれば、載置台40のヨーイングテーブル41がヨーイング動作する為、無人搬送台車1A,1Bを剛結する必要がなくなる。また、搬送中に無人搬送台車1A,1Bの間で相対的な位置ズレが生じたとしても、鉄道車体3が捻じれ等による破損の恐れを回避できる。そして、載置台40に設けた回転角度監視機構58により、搬送中に生じる無人搬送台車1A,1Bの相対的な位置ズレの検出が可能になり、搬送台車側の走行制御によって位置ズレの修正が行われる。
【0045】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
前記実施形態では、回転角度監視機構58の一例としてポテンショメータを例示したが、VRレゾルバであってもよいし、有底型のエンコーダであってもよいし、はたまた軸受け部47とリング型エンコーダが一体化された無底型のものであってもよい。
また、ヨーイングテーブル41の裏面と、ローリングテーブル42の表面に、近距離無線で相対位置を検出するセンサを用いる方法も考えられる。
【0046】
前記実施形態では、規制機構56のコイルバネ66に形状記憶型の合金を適用しているが、一般的な鋼や別の種類の合金を用いても構わない。更にはコイルバネ66の代わりとして油圧、若しくは電動によりガイドロッド62を摺動動作させ作用板67を付勢しても構わない。
また、規制機構56のガイドロッド62が、ヨーイングテーブル41を付勢することを利用して、回転角度監視機構58の代替をしてもよい。例えば、前記閾値に対し、ガイドロッド62の移動量から、ヨーイングテーブル41の回転角度θを算出する方法が考えられる。
【0047】
前記実施形態では、載置台40のヨーイング機構は、縦回転軸55と軸受け47から構成される事例を例示したが必ずしもこれに囚われることは無く、リングギヤや各種駆動機構を用い、前記の走行装置12の走行制御と組み合わせて、ズレ量Sを能動的に解消(S=0)する方式として構わない。その場合、鉄道車体3との接点にひずみ検知装置を取り付けること、でより高精度な制御が可能となる。
【0048】
また、本実施例での走行位置の調整(走行調整)は、走行装置12の加減速を主に例示したが、これに限られる必要はなく、前記閾値とは別に第二の閾値を設けて、走行装置12の装置回転軸28に基づく矢印A方向の回転を行い、速やかにズレ量Sを解消(S=0)とする制御を追加してもよい。
【符号の説明】
【0049】
1(1A,1B)…無人搬送台車 3…鉄道車体 5…搬送管理装置 7…駆動制御装置 11…台車本体 12…走行装置 20…装置本体 21,22…車輪 23,24…駆動モータ 25,26…減速機 28…装置回転軸 35…走行揺動梁 37…梁用前後軸 40…載置台 41…ヨーイングテーブル 42…ローリングテーブル 43…ピッチングテーブル 45…昇降用支持ロッド 46…横支持ピン 51…昇降用油圧ジャッキ 52…前後支持ピン 55…回転軸 56…規制機構 61…ガイドブロック 62…ガイドロッド 58…回転角度監視機構 71…走行情報通信部 72…走行情報算出部 73…駆動指令部 K…基準角度 θ(Rθ,Lθ)…回転角度