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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128355
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】エンジン制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 45/00 20060101AFI20240913BHJP
【FI】
F02D45/00 364A
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037288
(22)【出願日】2023-03-10
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-01-09
(71)【出願人】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(74)【代理人】
【識別番号】100167793
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 学
(72)【発明者】
【氏名】横井 健
【テーマコード(参考)】
3G384
【Fターム(参考)】
3G384AA13
3G384AA16
3G384BA02
3G384DA04
3G384EA02
3G384ED07
3G384FA54Z
(57)【要約】
【課題】様々な種類の燃料を補充可能なエンジンの運転条件を適切に設定する。
【解決手段】エンジン制御装置1は、エンジン2の現在の回転数と、エンジン2の気筒21に噴射させる燃料の噴射量を示す指示値とに応じたエンジン2の推定トルクを取得する第1取得部121と、指示値に応じた量の燃料がエンジン2の気筒21に噴射された際に、エンジン2の出力軸3に連結された発電機4が発電した発電量に応じた実トルクを取得する第2取得部122と、第1取得部121が取得した推定トルクと、第2取得部122が取得した実トルクとの第1トルク差に基づいて、気筒21で燃料を燃焼させる燃焼タイミング及び指示値のうちの少なくともいずれかを補正する補正部123と、を有する。
【選択図】図1


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの回転数と、前記エンジンの気筒に噴射させる燃料の噴射量を示す指示値とに応じた前記エンジンの推定トルクを取得する第1取得部と、
前記指示値に応じた量の燃料が前記エンジンの気筒に噴射された際に、前記エンジンの出力軸に連結された発電機が発電した発電量に応じた実トルクを取得する第2取得部と、
前記推定トルクと、前記実トルクとの第1トルク差に基づいて、前記気筒で燃料を燃焼させる燃焼タイミングを補正する補正部と、を有する
エンジン制御装置。
【請求項2】
前記補正部は、前記第1トルク差が所定値未満の場合には前記燃焼タイミングを補正せず、前記第1トルク差が所定値以上の場合には前記燃焼タイミングを補正する、
請求項1に記載のエンジン制御装置。
【請求項3】
前記補正部は、
補正された燃焼タイミングで燃料を燃焼させた際に取得された実トルクと前記推定トルクとの第2トルク差が所定値以上の場合には、前記指示値を補正し、
前記第2トルク差が前記所定値未満の場合には、前記指示値を補正しない、
請求項2に記載のエンジン制御装置。
【請求項4】
エンジンの回転数と、前記エンジンの気筒に噴射させる燃料の噴射量を示す指示値とに応じた前記エンジンの推定トルクを取得する第1取得部と、
前記指示値に応じた量の燃料が前記エンジンの気筒に噴射された際に、前記エンジンの出力軸に連結された発電機が発電した発電量に応じた実トルクを取得する第2取得部と、
前記推定トルクと、前記実トルクとの第1トルク差に基づいて、前記指示値を補正する補正部と、を有する
エンジン制御装置。
【請求項5】
前記第2取得部は、前記エンジンの燃料が補給された場合に前記実トルクを取得する、
請求項1から4のいずれか一項に記載のエンジン制御装置。
【請求項6】
前記第2取得部は、前記エンジンを備える車両に搭載された、前記発電機と異なるモータで前記車両が走行している間に、前記実トルクを取得する、
請求項5に記載のエンジン制御装置。
【請求項7】
前記補正部は、前記第1トルク差が大きいほど前記燃焼タイミングを大きく早める又は遅らせる、
請求項1に記載のエンジン制御装置。
【請求項8】
前記補正部は、前記第1トルク差が大きいほど前記指示値を大きくする、
請求項4に記載のエンジン制御装置。
【請求項9】
前記第1取得部は、前記エンジンの回転数と指示値と推定トルクとの関係を示す情報から、現在の前記エンジンの回転数及び前記指示値に応じた推定トルクを取得する、
請求項1から4のいずれか一項に記載のエンジン制御装置。
【請求項10】
前記第2取得部は、前記発電機の発電量と実トルクとの関係を示す情報から、前記気筒に燃料が前記指示値で噴射された際の前記発電機の発電量に応じた実トルクを取得する、
請求項1から4のいずれか一項に記載のエンジン制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンを制御するエンジン制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンの燃料の燃焼タイミングや燃料の噴射量等の運転条件を制御する技術が知られている。特許文献1には、バイオ燃料の使用時にユーザが設定したバイオ燃料の種類と混合割合での運転条件の補正量を算出するマップを参照して、バイオ燃料の種類と混合割合における噴射タイミング及び噴射量をエンジンに指令する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-169245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、燃料の種類や混合割合等の燃料に関する情報をユーザが誤って設定すると気筒内で燃料が適切に燃焼しなくなるおそれがあった。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、様々な種類の燃料を補充可能なエンジンの運転条件を適切に設定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様においては、エンジンの回転数と、前記エンジンの気筒に噴射させる燃料の噴射量を示す指示値とに応じた前記エンジンの推定トルクを取得する第1取得部と、前記指示値に応じた量の燃料が前記エンジンの気筒に噴射された際に、前記エンジンの出力軸に連結された発電機が発電した発電量に応じた実トルクを取得する第2取得部と、前記推定トルクと、前記実トルクとの第1トルク差に基づいて、前記気筒で燃料を燃焼させる燃焼タイミングを補正する補正部と、を有するエンジン制御装置を提供する。
【0007】
前記補正部は、前記第1トルク差が所定値未満の場合には前記燃焼タイミングを補正せず、前記第1トルク差が所定値以上の場合には前記燃焼タイミングを補正してもよい。
【0008】
前記補正部は、補正された燃焼タイミングで燃料を燃焼させた際に取得された実トルクと前記推定トルクとの第2トルク差が所定値以上の場合には、前記指示値を補正し、前記第2トルク差が前記所定値未満の場合には、前記指示値を補正しなくてもよい。
【0009】
本発明の第2の態様においては、エンジンの回転数と、前記エンジンの気筒に噴射させる燃料の噴射量を示す指示値とに応じた前記エンジンの推定トルクを取得する第1取得部と、前記指示値に応じた量の燃料が前記エンジンの気筒に噴射された際に、前記エンジンの出力軸に連結された発電機が発電した発電量に応じた実トルクを取得する第2取得部と、前記推定トルクと、前記実トルクとの第1トルク差に基づいて、前記指示値を補正する補正部と、を有するエンジン制御装置を提供する。
【0010】
前記第2取得部は、前記エンジンの燃料が補給された場合に前記実トルクを取得してもよい。
【0011】
前記第2取得部は、前記エンジンを備える車両に搭載された、前記発電機と異なるモータで前記車両が走行している間に、前記実トルクを取得してもよい。
【0012】
前記補正部は、前記第1トルク差が大きいほど前記燃焼タイミングを大きく早める又は遅らせてもよい。
【0013】
前記補正部は、前記第1トルク差が大きいほど前記指示値を大きくしてもよい。
【0014】
前記第1取得部は、前記エンジンの回転数と指示値と推定トルクとの関係を示す情報から、現在の前記エンジンの回転数及び前記指示値に応じた推定トルクを取得してもよい。
【0015】
前記第2取得部は、前記発電機の発電量と実トルクとの関係を示す情報から、前記気筒に燃料が前記指示値で噴射された際の前記発電機の発電量に応じた実トルクを取得してもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、様々な種類の燃料を補充可能なエンジンの運転条件を適切に設定できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】エンジン制御装置の構成を説明するための図である。
図2】指示値と回転数と推定トルクとの関係を示す制御マップを模式的に示す図である。
図3】エンジン制御装置1が実行する燃焼タイミング及び指示値を補正する処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[エンジン制御装置1の構成]
図1は、エンジン制御装置1の構成を説明するための図である。エンジン制御装置1は、車両Vに搭載されたエンジン2を制御する。車両Vは、エンジン2に加えて、発電機4及びモータ6を搭載している。発電機4は、エンジン2の出力軸3に連結されている。発電機4は、出力軸3が回転すると、エンジン2が出力するトルクに応じた量の電力を発電する。発電機4は、クラッチ5によりモータ6と接続されたり、切断されたりする。モータ6の回転軸7は、車両Vの車輪8に接続されている。
【0019】
ところで、エンジン2が停止している間に、エンジン2の停止直前に貯蔵されていた燃料の種類と異なる種類の燃料が補給されることがある。異なる種類の燃料が補給された場合、燃料が燃焼する際の熱量は変化する。そこで、エンジン制御装置1は、燃料が補給された場合にエンジン2の運転条件を補正する。運転条件は、例えばエンジン2の気筒21に噴射させる燃料の噴射量、及び燃料を燃焼させる燃焼タイミングである。
【0020】
エンジン制御装置1は、記憶部11及び制御部12を含む。記憶部11は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びハードディスク等を含む記憶媒体である。記憶部11は、制御部12が実行するプログラムを記憶する。
【0021】
記憶部11は、燃料の噴射量を示す指示値とエンジン2の回転数(以下、回転数と言う)と推定トルクとの関係を示す情報を記憶する。指示値は、例えば噴射部22の弁を開放する噴射時間、噴射部22に印加する電圧又は電流の大きさである。指示値と回転数と推定トルクとの関係を示す情報は、例えば指示値と回転数と推定トルクとを軸とする三次元空間上の曲面として表される制御マップである。図2は、指示値と回転数と推定トルクとの関係を示す制御マップMを模式的に示す図である。
【0022】
記憶部11は、制御マップMを記憶する。記憶部11は、指示値と回転数と推定トルクとの関係を示す情報としてデータテーブルを記憶してもよい。また、記憶部11は、指示値及び回転数を入力すると推定トルクを出力する関数を、指示値と回転数と推定トルクとの関係を示す情報として記憶してもよい。
【0023】
制御部12は、例えばCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサを含む計算リソースである。制御部12は、記憶部11に記憶されたプログラムを実行することにより、第1取得部121、第2取得部122、補正部123及び噴射制御部124としての機能を実現する。
【0024】
第1取得部121は、エンジン2の現在の回転数と、指示値とに応じたエンジン2の推定トルクを取得する。具体的には、まず、第1取得部121は、噴射部22に燃料を噴射させる噴射制御部124が燃料を噴射させる際の指示値を、噴射制御部124から取得する。続いて、第1取得部121は、指示値に応じた量の燃料を噴射制御部124が噴射部22に噴射させた際に回転数センサ31が検出したエンジン2の出力軸3の現在の回転数を、回転数センサ31から取得する。そして、第1取得部121は、制御マップMから、回転数センサ31から取得した回転数及び噴射制御部124から取得した指示値に応じた推定トルクを取得する。また、第1取得部121は、指示値及び回転数を入力すると推定トルクを出力する関数に指示値及び回転数を入力することで推定トルクを取得してもよい。
【0025】
第2取得部122は、指示値に応じた量の燃料が気筒21に噴射された際に、発電機4が発電した発電量を取得する。例えば、第2取得部122は、指示値に応じた量の燃料が気筒21に噴射されたときに発電機4に流れた電流値及び当該電流値が流れたときの電圧値を取得して、取得した電流値及び電圧値に応じた発電量を取得する。具体的には、第2取得部122は、電流値と電圧値との積を発電量として取得する。
【0026】
第2取得部122は、発電量に応じた実トルクを取得する。具体的には、第2取得部122は、発電量と実トルクとの関係を示す情報から、発電量に応じた実トルクを取得する。発電量と実トルクとの関係を示す情報は、記憶部11に記憶されている。発電量と実トルクとの関係を示す情報は、例えば発電量を入力すると実トルクを出力する関数であるが、発電量と実トルクを関連付けたデータテーブルであってもよい。
【0027】
第2取得部122は、エンジン2の燃料が補給された場合に実トルクを取得する。例えば、第2取得部122は、エンジン2の停止直前に燃料タンクに貯蔵されていた燃料の量よりもエンジン2の始動直後に燃料タンクに貯蔵されている燃料の量が多い場合に実トルクを取得する。具体的には、第2取得部122は、燃料タンクに設けられた燃料の量を検出するセンサの検出値に基づき、エンジン2の停止直前に検出されたセンサの検出値が示す燃料の量よりもエンジン2の始動直後に検出されたセンサの検出値が示す燃料の量が多い場合に実トルクを取得する。
【0028】
第2取得部122は、車両Vに搭載されたECU(Electronic Control Unit)から燃料が補給されたことを示す情報を受け付けてもよい。この場合、ECUは、エンジン2の停止直前の燃料の量よりもエンジン2の始動直後の燃料の量が多い場合、燃料が補給されたことを示す情報を第2取得部122に通知する。第2取得部122は、燃料が補給されたことを示す情報を受け付けた場合に実トルクを取得する。
【0029】
第2取得部122は、エンジン2の燃料が補給されていない場合には、実トルクを取得しない。具体的には、エンジン2の停止直前に燃料タンクに貯蔵されていた燃料の量がエンジン2の始動直後に燃料タンクに貯蔵されている燃料の量以上であれば、実トルクを取得しない。また、第2取得部122は、燃料が補給されたことを示す情報をECUから受け付けていない場合又は燃料が補給されていないことを示す情報をECUから受け付けた場合、実トルクを取得しない。これにより、第2取得部122は、実行する必要のない処理の実行を抑制できる。
【0030】
第2取得部122は、燃料が補給された後、モータ6で車両Vが走行している間に実トルクを取得する。具体的には、第2取得部122は、発電機4とモータ6との間の動力の伝達をクラッチ5に切断させて、車両Vがモータ6の駆動力のみで走行している間の実トルクを取得する。噴射制御部124は、第2取得部122が実トルクを取得する際には、所定の指示値で噴射部22に燃料を噴射させる。
【0031】
補正部123は、推定トルクと実トルクとの第1トルク差に基づいて、気筒21で燃料を燃焼させる燃焼タイミング及び指示値のうちの少なくともいずれかを補正する。例えば、補正部123は、第1トルク差が所定値以上の場合には燃焼タイミング及び指示値の少なくともいずれかを補正する。所定値は、例えば第2取得部122が取得する電圧及び電流の検出誤差により生じ得る推定トルクと実トルクとの差に応じて定められている。所定値の具体的な値は、実験などにより適宜定めればよい。これにより、補正部123は、例えばエンジン2の停止直前に貯蔵されていた燃料の種類と異なる種類の燃料が補給されたことにより、実トルクが推定トルクから大きく乖離している場合に燃焼タイミング及び指示値を補正できる。
【0032】
なお、補正部123は、第1トルク差が所定値未満の場合には燃焼タイミング及び指示値を補正しない。これにより、補正部123は、第1トルク差が小さく、燃焼タイミング及び指示値を補正する必要がない場合に補正してしまうことを抑制できる。
【0033】
補正部123は、第1トルク差が所定値以上である場合には、まず、燃焼タイミングを補正する。燃焼タイミングは、ディーゼルエンジンであれば燃料の噴射タイミングであり、ガソリンエンジンであれば点火タイミングである。補正部123は、第1トルク差が大きいほど燃焼タイミングを大きく補正する。具体的には、補正部123は、補正された後の燃焼タイミングで燃料が燃焼するように、第1トルク差が大きいほど燃焼タイミングを大きく早める。補正部123は、早めた燃焼タイミングを噴射制御部124に通知する。これにより、補正部123は、噴射する燃料の量を変えることなく、エンジン2に適切なトルクを出力させられるようになるので、車両Vの燃費を向上できる。
【0034】
なお、補正部123は、燃焼タイミングを早めても第1トルク差が0にならない場合に燃焼タイミングを遅らせてもよい。例えば、補正部123は、燃焼タイミングを早めた後に取得された第1トルク差の絶対値が0でない場合、燃焼タイミングを遅らせる。具体的には、補正部123は、燃焼タイミングを早めた後に取得された第1トルク差の絶対値が、所定値よりも小さく0よりも大きい第1閾値以上である場合、第1トルク差が大きいほど燃焼タイミングを大きく遅らせる。補正部123は、第1トルク差の絶対値が第1閾値未満である場合、早めた燃焼タイミングを噴射制御部124に通知する。第1閾値は、推定トルクと実トルクの乖離を許容できる値として、エンジン制御装置1を製造する事業者が適宜定めればよい。
【0035】
補正部123は、燃焼タイミングを早めてから燃焼タイミングを遅らせたが、これに限らず、燃焼タイミングを遅らせてから燃焼タイミングを早めてもよい。この場合、補正部123は、燃焼タイミングを遅らせる。補正部123は、燃焼タイミングを遅らせた後の第1トルク差の絶対値が第1閾値以上であるか否かを判定する。補正部123は、第1トルク差の絶対値が第1閾値未満である場合、遅らせた燃焼タイミングを噴射制御部124に通知する。補正部123は、第1トルク差の絶対値が第1閾値以上である場合、第1トルク差が大きいほど燃焼タイミングを大きく早める。
【0036】
補正部123は、燃焼タイミングを補正しても第1トルク差が所定値以上の場合に指示値を補正する。具体的には、補正部123は、補正した後の燃焼タイミングで燃料を燃焼させた際に取得された補正後実トルクと推定トルクとの第2トルク差が所定値以上の場合には、指示値を補正する。より具体的には、補正部123は、第2トルク差が所定値以上の場合、第2トルク差が大きいほど指示値を大きくする。補正部123は、第2トルク差が所定値未満の場合には、指示値を補正しない。
【0037】
補正部123は、第1トルク差が所定値よりも大きい判定値以上の場合、燃焼タイミングを補正することなく指示値を補正してもよい。判定値は、燃焼タイミングの補正により第1トルク差を0にできる値よりも大きい。補正部123は、第1トルク差が判定値以上の場合、第1トルク差が大きいほど指示値を大きくする。これにより、補正部123は、燃焼タイミングを補正しても第1トルク差が0にできない場合に、燃焼タイミングを補正することなく指示値を補正できるので、補正する処理にかかる時間を短くできる。
【0038】
(変形例1)
上記の実施の形態のエンジン制御装置1は、指示値及び燃焼タイミングの両方を補正した。これに限らず、エンジン制御装置1は、燃焼タイミングのみを補正してもよい。この場合、エンジン制御装置1は、第1トルク差が所定値以上の場合に燃焼タイミングを補正し、第1トルク差が所定値未満の場合に燃焼タイミングを補正しない。
【0039】
(変形例2)
エンジン制御装置1は、燃焼タイミングに替えて指示値のみを補正してもよい。この場合、エンジン制御装置1は、第1トルク差が所定値以上の場合に指示値を補正し、第1トルク差が所定値未満の場合に指示値を補正しない。
【0040】
[燃焼タイミング及び指示値を補正する処理]
図3は、エンジン制御装置1が実行する燃焼タイミング及び指示値を補正する処理の流れの一例を示すフローチャートである。図3のフローチャートは、エンジン2の燃料が補給された場合に実行される。図3のフローチャートが実行される場合、エンジン制御装置1は、クラッチ5を断状態にして発電機4とモータ6の間の動力の伝達を切断する。
【0041】
第1取得部121は、エンジン2の推定トルクを取得する(ステップS1)。具体的には、第1取得部121は、エンジン2の出力軸3の回転数と、噴射制御部124が燃料を噴射させる際の指示値とに応じた推定トルクを取得する。より具体的には、第1取得部121は、指示値と回転数と推定トルクとの関係を示す制御マップMから、取得した回転数及び指示値に対応する推定トルクを取得する。
【0042】
第2取得部122は、指示値に応じた量の燃料がエンジン2の気筒21に噴射された際のエンジン2の実トルクを取得する(ステップS2)。具体的には、第2取得部122は、発電機4の発電量と実トルクとの関係を示す情報から、指示値に応じた量の燃料が気筒21に噴射された際に発電機4が発電した発電量に応じた実トルクを取得する。
【0043】
補正部123は、推定トルクと実トルクとの第1トルク差が所定値以上か否かを判定する(ステップS3)。具体的には、補正部123は、第1トルク差の絶対値が所定値以上か否かを判定する。補正部123は、第1トルク差の絶対値が所定値未満の場合(ステップS3でNo)、燃焼タイミング及び指示値を補正する処理を終了する。
【0044】
補正部123は、第1トルク差の絶対値が所定値以上の場合(ステップS3でYes)、燃焼タイミングを補正する(ステップS4)。具体的には、補正部123は、第1トルク差が大きいほど燃焼タイミングを大きく早める又は遅らせる。
【0045】
第2取得部122は、補正した後の燃焼タイミングで燃料を燃焼させた際に取得された補正後実トルクを取得する(ステップS5)。そして、補正部123は、補正後実トルクと推定トルクとの第2トルク差が所定値以上か否かを判定する(ステップS6)。
【0046】
補正部123は、第2トルク差が所定値以上の場合(ステップS6でYes)、指示値を補正する(ステップS7)。第2取得部122は、補正後の指示値に応じた量の燃料が噴射された際の実トルクを取得する(ステップS8)。第2取得部122及び補正部123は、第2トルク差が所定値未満になるまでステップS6からステップS8を繰り返す。補正部123は、第2トルク差が所定値未満である場合(ステップS6でNo)、燃焼タイミング及び指示値を補正する処理を終了する。
【0047】
なお、補正部123は、ステップS8の後にステップS3に戻って、ステップS3からステップS8を繰り返しもよい。また、補正部123は、ステップS3で第1トルク差が所定値以上であると判定した後、第1トルク差が所定値よりも大きい判定値以上か否かを判定してもよい。この場合、補正部123は、第1トルク差が判定値以上の場合、指示値を補正し、第1トルク差が判定値未満の場合、燃焼タイミングを補正する。
【0048】
(変形例)
上記の実施の形態では、車両Vは、発電機4及びモータ6を搭載していたが、これに限らず、発電機4のみを搭載してもよい。この場合、車両Vは、燃焼タイミング及び指示値を補正する処理を実行中に走行できなくなるが、モータ6を搭載しないため、車両Vを製造する事業者は、車両Vを小型化及び低価格化できる。
【0049】
[エンジン制御装置1の効果]
以上説明したとおり、本発明に係るエンジン制御装置1は、異なる種類の燃料が供給されたり、それぞれ異なる複数種類の燃料が混合されたりして燃料のセタン価(又はオクタン価)が変わったとしても、適切な燃焼タイミング及び指示値を設定できる。言い換えると、エンジン制御装置1は、様々な種類の燃料を補充可能なエンジン2の運転条件を適切に設定できる。さらに、エンジン2を利用するユーザがエンジン2に給油する燃料の種類を設定する必要がなくなるので、ユーザの利便性を高められる。また、エンジン制御装置1が搭載される車両を製造する事業者は、種類の異なる燃料が使用可能かを検討する必要がなくなるので、車両の開発に係る費用を低減できるようになる。
【0050】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0051】
1 エンジン制御装置
11 記憶部
12 制御部
121 第1取得部
122 第2取得部
123 補正部
124 噴射制御部
2 エンジン
21 気筒
22 噴射部
3 出力軸
31 回転数センサ
4 発電機
5 クラッチ
6 モータ
7 回転軸
8 車輪
V 車両
図1
図2
図3