(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128359
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】スパンボンド不織布の製造方法
(51)【国際特許分類】
D04H 3/16 20060101AFI20240913BHJP
D04H 3/14 20120101ALI20240913BHJP
D04H 3/147 20120101ALI20240913BHJP
【FI】
D04H3/16
D04H3/14
D04H3/147
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037294
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】村井 洸太
(72)【発明者】
【氏名】島田 大樹
【テーマコード(参考)】
4L047
【Fターム(参考)】
4L047AA14
4L047AA27
4L047AB03
4L047BA08
4L047CB01
4L047CC04
4L047CC05
4L047EA06
(57)【要約】
【課題】 低い目付でも優れた強度を有し、柔軟性や肌触りに優れたスパンボンド不織布を製造する方法を提供すること。
【解決手段】 芯成分として、体積比率を1:1としたクロロホルム/メタノール溶媒中に浸漬させた後、15分間、45kHz、溶融温度が30℃の条件で超音波処理することで抽出される、有機過酸化物量が100ppm以上1000ppm以下である第1のポリプロピレン系樹脂を、鞘成分として第2のポリプロピレン系樹脂を、吐出孔を有する複合紡糸口金に供給し、該複合紡糸口金から紡出した後、紡出された糸条を冷却固化し、エジェクターにて紡糸速度3000m/分以上6000m/分以下で牽引、延伸して、芯鞘型複合繊維を得る工程と、前記芯鞘型複合繊維をネット上に捕集して、繊維ウェブを形成する工程と、前記繊維ウェブを熱接着して、融着部と非融着部とを形成する工程と、を有する、スパンボンド不織布の製造方法。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯成分として、体積比率を1:1としたクロロホルム/メタノール溶媒中に浸漬させた後、15分間、45kHz、溶融温度が30℃の条件で超音波処理することで抽出される、有機過酸化物量が100ppm以上1000ppm以下である第1のポリプロピレン系樹脂を、鞘成分として第2のポリプロピレン系樹脂を、吐出孔を有する複合紡糸口金に供給し、該複合紡糸口金から紡出した後、紡出された糸条を冷却固化し、エジェクターにて紡糸速度3000m/分以上6000m/分以下で牽引、延伸して、芯鞘型複合繊維を得る工程と、
前記芯鞘型複合繊維をネット上に捕集して、繊維ウェブを形成する工程と、
前記繊維ウェブを熱接着して、融着部と非融着部とを形成する工程と、
を有する、スパンボンド不織布の製造方法。
【請求項2】
前記非融着部における、前記芯鞘型複合繊維の鞘成分の配向パラメータOsに対する芯成分の配向パラメータOcの比率(Oc/Os)が1.2以上2.0以下とする、請求項1に記載のスパンボンド不織布の製造方法。
【請求項3】
前記第1のポリプロピレン系樹脂が以下の式1を満たす、請求項1または2に記載のスパンボンド不織布の製造方法。
1.5≦Mz/Mw≦2.5 ・・・(式1)
ここで、Mzは第1のポリプロピレン系樹脂のz平均分子量であり、Mwは第1のポリプロピレン系樹脂の重量平均分子量である。
【請求項4】
前記第1のポリプロピレン系樹脂のメルトフローレートが5g/10分以上250g/10分以下である、請求項1または2に記載のスパンボンド不織布の製造方法。
【請求項5】
前記第1のポリプロピレン系樹脂と前記第2のポリプロピレン系樹脂とが、以下の式2を満たす、請求項1または2に記載のスパンボンド不織布の製造方法。
5≦Tmr1-Tmr2≦30 ・・・(式2)
ここで、Tmr1は前記芯鞘型複合繊維の芯成分の融解ピーク温度(℃)であり、Tmr2は前記芯鞘型複合繊維の鞘成分の融解ピーク温度(℃)である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスパンボンド不織布の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
紙おむつや生理用ナプキン等の衛生材料やマスク等には、低価格であることや実使用における適度な柔軟性と物理特性を得やすいことから、スパンボンド不織布が多く用いられる。これらの用途は1回の使用で廃棄し焼却処分や埋め立て処分する場合が多いことから、環境配慮の観点で使用するプラスチック量の削減が求められている。
【0003】
スパンボンド不織布におけるプラスチック量を削減することは、具体的には、1m2あたりの不織布質量である目付(g/m2)を低減することであるが、目付を低減すればするほど、一般には不織布の物理特性である引張強度が低下し、実使用時に破れる等の課題が顕在化する。そこで、スパンボンド不織布の強度向上が種々検討されている。
【0004】
スパンボンド不織布の強度を向上する手法としては、糸の強度を向上させる方法や熱接着性を向上させる方法などが考えられる。前者としては、例えば、特許文献1では、MFR、分子量分布、定常状態コンプライアンスが特定の範囲のプロピレン系重合体からなるスパンボンド不織布が提案されている。これによれば、強度と摩擦堅牢性のバランスに優れたスパンボンド不織布が得られる旨、記載されている。また、後者としては、例えば、特許文献2では、異なる溶融温度のメタロセンポリプロピレンからなる芯鞘型複合繊維を特定の温度条件で製造すること、そしてその繊維をスパンボンド製品に製造することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001-355172号公報
【特許文献2】特表2012-500343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1や2に開示された方法ではある程度、機械的強度を高めることはできるものの、近年要求されるような低い目付のスパンボンド不織布を得ようとすると、実用に供しうる強度のスパンボンド不織布を得ることが困難である。
【0007】
そこで、本発明の目的は、低い目付でも優れた強度を有し、柔軟性や肌触りに優れたスパンボンド不織布を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するべく鋭意検討を重ねた結果、スパンボンド不織布を構成する芯鞘型複合繊維の芯成分のポリプロピレン樹脂について、ラジカル発生剤として用いられる有機過酸化物を添加し、特定の条件で紡糸することにより、分子量分布が狭化し、繊維の分子配向が高配向化することを見出し、低い目付でも優れた機械的強度を有するスパンボンド不織布を製造することができるという知見を得た。
【0009】
本発明は、これら知見に基づいて完成に至ったものであり、本発明によれば、以下の発明が提供される。
【0010】
[1] 芯成分として、体積比率を1:1としたクロロホルム/メタノール溶媒中に浸漬させた後、15分間、45kHz、溶融温度が30℃の条件で超音波処理することで抽出される、有機過酸化物量が100ppm以上1000ppm以下である第1のポリプロピレン系樹脂を、鞘成分として第2のポリプロピレン系樹脂を、吐出孔を有する複合紡糸口金に供給し、該複合紡糸口金から紡出した後、紡出された糸条を冷却固化し、エジェクターにて紡糸速度3000m/分以上6000m/分以下で牽引、延伸して、芯鞘型複合繊維を得る工程と、
前記芯鞘型複合繊維をネット上に捕集して、繊維ウェブを形成する工程と、
前記繊維ウェブを熱接着して、融着部と非融着部とを形成する工程と、
を有する、スパンボンド不織布の製造方法。
【0011】
[2] 前記非融着部における、前記芯鞘型複合繊維の鞘成分の配向パラメータOsに対する芯成分の配向パラメータOcの比率(Oc/Os)が1.2以上2.0以下とする、前記[1]に記載のスパンボンド不織布の製造方法。
【0012】
[3] 前記第1のポリプロピレン系樹脂が以下の式1を満たす、前記[1]または[2]に記載のスパンボンド不織布の製造方法
1.5≦Mz/Mw≦2.5 ・・・(式1)
ここで、Mzは第1のポリプロピレン系樹脂のz平均分子量であり、Mwは第1のポリプロピレン系樹脂の重量平均分子量である。
【0013】
[4] 前記第1のポリプロピレン系樹脂のメルトフローレートが5g/10分以上250g/10分以下である、前記[1]~[3]のいずれかに記載のスパンボンド不織布の製造方法。
【0014】
[5] 前記第1のポリプロピレン系樹脂と前記第2のポリプロピレン系樹脂とが、以下の式2を満たす、前記[1]~[4]のいずれかに記載のスパンボンド不織布の製造方法
5≦Tmr1-Tmr2≦30 ・・・(式2)
ここで、Tmr1は前記芯鞘型複合繊維の芯成分の融解ピーク温度(℃)であり、Tmr2は前記芯鞘型複合繊維の鞘成分の融解ピーク温度(℃)である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の製造方法によれば、低い目付でも優れた強度を有し、柔軟性や肌触りに優れたスパンボンド不織布が得られる。これらの特性から、本発明のスパンボンド不織布の製造方法で得られたスパンボンド不織布は、特に衛生材料用途として好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のスパンボンド不織布の製造方法は、芯成分として、体積比率を1:1としたクロロホルム/メタノール溶媒中に浸漬させた後、15分間、45kHz、溶融温度が30℃の条件で超音波処理することで抽出される、有機過酸化物量が100ppm以上1000ppm以下である第1のポリプロピレン系樹脂を、鞘成分として第2のポリプロピレン系樹脂を、吐出孔を有する複合紡糸口金に供給し、該複合紡糸口金から紡出した後、紡出された糸条を冷却固化し、エジェクターにて紡糸速度3000m/分以上6000m/分以下で牽引、延伸して、芯鞘型複合繊維を得る工程と、前記芯鞘型複合繊維をネット上に捕集して、繊維ウェブを形成する工程と、前記繊維ウェブを熱接着して、融着部と非融着部とを形成する工程を有する製造方法である。
【0017】
以下に、その構成要素について詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下に説明する範囲に何ら限定されるものではなく、そして、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0018】
[芯鞘型複合繊維を得る工程]
<1>芯成分(第1のポリプロピレン系樹脂)
本工程において、後述する複合紡糸口金に供給する芯成分として、体積比率を1:1としたクロロホルム/メタノール溶媒中に浸漬させた後、15分間、45kHz、溶融温度が30℃の条件で超音波処理することで抽出される、有機過酸化物量が100ppm以上1000ppm以下である第1のポリプロピレン系樹脂を用いる。この第1のポリプロピレン系樹脂は、原料樹脂であるポリプロピレン系樹脂に、ラジカル発生剤として用いられる有機過酸化物を添加するなどして得ることができる。
【0019】
まず、原料樹脂であるポリプロピレン系樹脂は、ポリエチレン系樹脂などの他のポリオレフィン系樹脂と比較して紡糸性や強度特性に優れることから好適である。また、本発明で用いられるポリプロピレン系樹脂としては、プロピレンの単独重合体もしくはプロピレンと各種α-オレフィンとの共重合体などが挙げられる。
【0020】
この原料樹脂は、リサイクル樹脂であってもよい。リサイクル樹脂を使用することでバージン石化原料の使用量を削減することができ、スパンボンド不織布の製造時における環境負荷を減らすことができる。
【0021】
次に、前記の有機過酸化物としては、ラジカル発生剤として用いられるものが好ましく、具体的には、「メチルエチルケトンパーオキシド、メチルイソブチルケトンパーオキシド」等のケトンパーオキシド類、「ジベンゾイルパーオキシド、ジ-(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジラウロイルパーオキシド、ジデカノイルパーオキシド、ジ-(2,4-ジクロロベンゾイル)パーオキシド」等のジアシルパーオキシド類、「t-ブチルヒドロパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキシド、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジヒドロパーオキシド」等のヒドロパーオキシド類、「ジ-t-ブチルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン」等のジアルキルパーオキシド類、「1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)ブタン」等のパーオキシケタール類、「t-ブチルパーオキシオクトエート、t-ブチルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシベンゾエート」等のアルキルパーエステル類、「ジ-(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ-sec-ブチルパーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート」等のパーオキシカーボネート類が好ましい例として挙げられるが、中でも少量添加量で後述するメルトフローレート、Mw/Mn、あるいは、Mz/Mwの制御が容易なジアルキルパーオキシド類がより好ましい。
【0022】
そして、前記のとおり、芯成分としては、体積比率を1:1としたクロロホルム/メタノール溶媒中に浸漬させた後、15分間、45kHz、溶融温度が30℃の条件で超音波処理することで抽出される、有機過酸化物量が100ppm以上1000ppm以下である第1のポリプロピレン系樹脂である。この有機過酸化物量の範囲について、この下限が100ppm以上、好ましくは、200ppm以上、さらに好ましくは300ppm以上であることで、紡糸時の冷却固化過程において、結晶核剤として作用することで、分子の配向結晶化が促進される。これにより、スパンボンド不織布を構成する繊維の分子配向および繊維強度を高めることができ、力学特性に優れたスパンボンド不織布が得られる。一方、前記の有機過酸化物量について、その上限が1000ppm以下、好ましくは800ppm以下であることで、衛生材料や防護服等の人体に直接触れる用途として利用された際に、有機過酸化物によってかぶれ等の肌トラブルが生じるリスクを最小限に抑えることができる。
【0023】
なお、本発明において、前記の有機過酸化物量は、以下の方法によって、測定、算出される値のことを指す。
(1) ペレット状とした第1のポリプロピレン系樹脂25mgを5点、試験片として採取する。
(2) (1)で得られた試験片を、体積比率を1:1としたクロロホルム/メタノール溶媒中に浸漬させた後、15分間、45kHz、溶液温度が30℃の条件で超音波処理する。この超音波処理には、例えば、アズワン株式会社製超音波洗浄器「VS-100III」などを用いることができる。また、試験片の質量に対する前記の溶媒の量は、試験片1mgに対し溶媒0.8mLで行うものとし、溶液温度が30℃に保たれるよう、保冷剤などで冷却しながら抽出する。
(3) (2)で得られた超音波処理後の溶液を、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製のフィルター(以降、単に「PTFEフィルター」と略記することがある。孔径:0.45μm)で濾過を行い、試料溶液とする。ここで、PTFEフィルターは、例えば、アドバンテック東洋株式会社製「T010A」など)を用いることができる。
(4) 有機過酸化物0.1gを、体積比率1:1としたクロロホルム/メタノール溶液10mLに溶解させ、標準原液(10μg/mL)を調製する。そして、この標準原液を前記のクロロホルム/メタノール溶液で希釈することにより、各濃度(0.1μg/mL、0.2μg/mL、0.5μg/mL、1.0μg/mL)の標準溶液を調製する。このとき、上記の有機過酸化物としては、下記のものが挙げられ、それぞれについて、各濃度の標準溶液を調製する。また、他の方法(例えば、ヨウ素滴定法、ポーラログラフ法など)によって、下記の有機過酸化物以外の有機過酸化物を含有していることが明らかな場合、あるいは、少なくとも含有していることが推測される場合には、当該有機過酸化物の標準溶液も調製する。
・メチルエチルケトンパーオキシド
・メチルイソブチルケトンパーオキシド
・ジベンゾイルパーオキシド
・ジ-(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキシド
・ジラウロイルパーオキシド
・ジデカノイルパーオキシド
・ジ-(2,4-ジクロロベンゾイル)パーオキシド
・t-ブチルヒドロパーオキシド
・クメンヒドロパーオキシド
・ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキシド
・2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジヒドロパーオキシド
・ジ-t-ブチルパーオキシド、ジクミルパーオキシド
・2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン
・2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3,α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン
・1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン
・2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)ブタン
・t-ブチルパーオキシオクトエート
・t-ブチルパーオキシピバレート
・t-ブチルパーオキシネオデカノエート
・t-ブチルパーオキシベンゾエート
・ジ-(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート
・ジイソプロピルパーオキシジカーボネート
・ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート
・ジ-sec-ブチルパーオキシジカーボネート
・t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート
(5) 前記の試料溶液を用いて、以下の条件で液体クロマトグラフ質量分析(LC/MS/MS)に供する。
・高速液体クロマトグラフィー(HPLC): 例えば、株式会社島津製作所製「LC-20A」など
・質量分析計(MS): 例えば、Sciex製「API4000」など
・カラム: ODS系カラム(例えば、株式会社住化分析センター製「SUMIPAX ODS Aシリーズ」など)
・移動相: 0.1%ギ酸水溶液+メタノール(グラジエント抽出条件)
・注入量: 5μL
・イオン化: エレクトロスプレーイオン化法(ESI)
(6) 各試料溶液のマススペクトル(MS)より有機過酸化物を同定し、前記の有機過酸化物の標準溶液より得られた検量線を用いて、ピーク面積より有機過酸化物量(ppm)を定量する。
(7) 各試験片について測定した値の算術平均値(ppm)の小数点以下第1位を四捨五入し、有機過酸化物量(ppm)を求めた。
【0024】
また、第1のポリプロピレン系樹脂中の有機過酸化物量は、原料樹脂への有機過酸化物の添加形態、添加温度などにより制御することができる。例えば、添加形態としては、有機過酸化物を直接、ポリプロピレン系樹脂に添加する方法やマスターバッチを使用する方法が挙げられる。有機過酸化物の添加量を微少量制御するには直接添加する方法が好ましいが、均一にポリプロピレン系樹脂に添加するにはマスターバッチによって添加する方法が好ましく、より安定した紡糸が可能となる。
【0025】
前記の第1のポリプロピレン系樹脂は、プロピレンの単独重合体の割合が60質量%以上であることが好ましく、より好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは80質量%以上である。このようにすることで良好な紡糸性を維持し、かつ強度を向上させることができる。
【0026】
また、前記の第1のポリプロピレン系樹脂は、2種以上の混合物であってもよく、またポリエチレン、ポリ-4-メチル-1-ペンテンなどのその他のオレフィン系樹脂や熱可塑性エラストマー等を含有する樹脂組成物を用いることもできる。
【0027】
前記の第1のポリプロピレン系樹脂には、本発明の効果をさらに高めるために、あるいは、他の特性を付与するために本発明の効果を損なわない範囲で、通常用いられる酸化防止剤、耐候安定剤、耐光安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、帯電助剤、紡曇剤、ブロッキング防止剤、ポリエチレンワックスを含む滑剤、結晶核剤、および顔料等の添加物、あるいは他の重合体を必要に応じて添加することができる。
【0028】
さらに、前記の第1ポリプロピレン系樹脂の融点(Tmr1)は、120℃~200℃であることが好ましい。この融点(Tmr1)を好ましくは120℃以上、より好ましくは130℃以上、さらに好ましくは140℃以上とすることにより、実用に耐え得る耐熱性を得やすくなる。また、融点を好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下、さらに好ましくは170℃以下とすることにより、口金から吐出された糸条を冷却し易くなり、繊維同士の融着を抑制し細い繊維径でも安定した紡糸が行いやすくなる。ここで第1のポリプロピレン系樹脂の融点(Tmr1)とは、第1のポリプロピレン系樹脂を示差走査型熱量測定法(DSC)によって測定して得られる、最大の融解ピーク温度を指す。
【0029】
また、前記の第1のポリプロピレン系樹脂のメルトフローレート(以下、MFR1と略すことがある。)は、5g/10分以上250g/10分以下であることが好ましい。第1のポリプロピレン系樹脂のMFR1を好ましくは5g/10分以上とし、より好ましくは10g/10分以上とし、さらに好ましくは20g/10分以上とすることにより、細い繊維径でも安定して紡糸することができ、肌触りに優れ、地合が均一なスパンボンド不織布とすることができる。一方、第1のポリプロピレン系樹脂のMFR1を好ましくは250g/10分以下とし、より好ましくは240g/10分以下とし、さらに好ましくは230g/10分以下とすることにより、単糸強度の低下を抑制し、強度に優れたスパンボンド不織布とすることができる。
【0030】
なお、第1のポリプロピレン系樹脂のMFR1は、ASTM D1238(A法)によって測定される値を採用する。この規格によれば、ポリプロピレン系樹脂は荷重:2.16kg、温度:230℃にて測定することが規定されている。
【0031】
もちろん、MFRの異なる2種類以上の樹脂を任意の割合でブレンドして、本発明で用いられるポリプロピレン系樹脂のMFRを調整することもできる。この場合、主となるポリプロピレン系樹脂(ポリプロピレン系樹脂中、最も大きな質量%を占めるポリプロピレン系樹脂のことを指す)に対してブレンドする樹脂のMFRは、10g/10分~1000g/10分であることが好ましく、より好ましくは20g/10分~800g/10分、さらに好ましくは30g/10分~600g/10分である。このようにすることにより、ブレンドしたポリプロピレン系樹脂に部分的に粘度斑が生じることを防ぎ、単繊維径や単繊維繊度を均一化したり、細い繊維でも安定して紡糸したりすることができる。
【0032】
前記第1のポリプロピレン系樹脂が以下の式1を満たすことが好ましい。
【0033】
1.5≦Mz/Mw≦2.5 ・・・(式1)
ここで、Mzは第1のポリプロピレン系樹脂のz平均分子量であり、Mwは第1のポリプロピレン系樹脂の重量平均分子量であり、それぞれゲル浸透クロマトグラフィー(以下、GPC)法により求めることができる。
【0034】
前記の第1のポリプロピレン系樹脂のMz/Mwが好ましくは2.5以下、より好ましくは2.3以下、さらに好ましくは2.1以下とすることにより、分子量分布が狭まり、繊維の分子配向が高くなり、繊維強度を向上することができる。一方、第1のポリプロピレン系樹脂のMz/Mwが好ましくは1.5以上、より好ましくは1.6以上、さらに好ましくは1.7以上とすることにより、芯鞘型複合繊維の分子配向を適度なものとし、糸切れによる欠点を抑制することができる。
【0035】
なお、本発明において、Mw、Mn、Mzは、以下の方法によって測定、算出される値のことを指す。
(1) ペレット状とした第1のポリプロピレン系樹脂5mgを5点、試験片として採取する。
(2) (1)で得られた試験片に対して、1,2,4-トリクロロベンゼン(例えば、富士フイルム和光純薬株式会社製など)5mLを加える。試料の性質に依存して、前記の溶液を165℃で20分間加熱して溶解を容易にすることができる。次いで、前記の溶液をPTFEフィルター(孔径:0.45μm)を用いて濾過を行い、試料溶液を作製した。ここで、PTFEフィルターは、例えば、アドバンテック東洋株式会社製「T010A」など)を用いることができる。
(3) (2)で得られた試料溶液について、GPCを用いて、以下の条件で測定を行い、例えば、Wyatt Technology製「Empower」などを用いて、GPCにおける排出曲線についての解析を行うことで、Mw、Mn、Mzを求めることができる。
・装置:例えば、Polymer Laboratories社製「PL-220」など
・検出器:示差屈折率検出器RI
・カラム:Shodex HT-G(ガードカラム)+Shodex HT-806M×2本(8.0mm×30cm、例えば、昭和電工株式会社製など)
・溶媒:1,2,4-トリクロロベンゼン(0.1%BHT添加)
・流速:1.0mL/分
・カラム温度:145℃
・注入量:0.20mL
・標準試料:単分散ポリスチレン(例えば、東ソー株式会社製のものなど)、ジベンジル(例えば、東京化成工業株式会社製のものなど)。
【0036】
<2>鞘成分(第2のポリプロピレン系樹脂)
本工程において、スパンボンド不織布を構成する芯鞘型複合繊維の鞘成分の原料は、ポリプロピレン系樹脂(第2のポリプロピレン系樹脂)を主成分としてなる。ポリプロピレン系樹脂は、ポリエチレン系樹脂などの他のポリオレフィン系樹脂と比較して紡糸性や強度特性に優れることから好適である。また、本発明で用いられるポリプロピレン系樹脂としては、プロピレンの単独重合体もしくはプロピレンと各種α-オレフィンとの共重合体などが挙げられる。
【0037】
前記の第2のポリプロピレン系樹脂は、プロピレンの単独重合体の割合が60質量%以上であることが好ましく、より好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは80質量%以上である。このようにすることで良好な紡糸性を維持し、かつ強度を向上させることができる。
【0038】
また、前記の第2のポリプロピレン系樹脂は、2種以上の混合物であってもよく、またポリエチレン、ポリ-4-メチル-1-ペンテンなどのその他のオレフィン系樹脂や熱可塑性エラストマー等を含有する樹脂組成物を用いることもできる。
【0039】
前記の第2のポリプロピレン系樹脂には、本発明の効果をさらに高めるために、あるいは、他の特性を付与するために本発明の効果を損なわない範囲で、通常用いられる酸化防止剤、耐候安定剤、耐光安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、帯電助剤、紡曇剤、ブロッキング防止剤、ポリエチレンワックスを含む滑剤、結晶核剤、および顔料等の添加物、あるいは他の重合体を必要に応じて添加することができる。
【0040】
さらに、前記の第2のポリプロピレン系樹脂の融点(Tmr2)は、120℃~200℃であることが好ましい。この融点(Tmr2)を好ましくは120℃以上、より好ましくは130℃以上、さらに好ましくは140℃以上とすることにより、実用に耐え得る耐熱性を得やすくなる。また、融点を好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下、さらに好ましくは170℃以下とすることにより、口金から吐出された糸条を冷却し易くなり、繊維同士の融着を抑制し細い繊維径でも安定した紡糸が行いやすくなる。ここで第2のポリプロピレン系樹脂の融点(Tmr2)とは、第2のポリプロピレン系樹脂を示差走査型熱量測定法(DSC)によって測定して得られる、最大の融解ピーク温度を指す。
【0041】
また、前記の芯成分を構成する前記の第1のポリプロピレン系樹脂と、鞘成分を構成する前記の第2のポリプロピレン系樹脂とが以下の式2を満たすことが好ましい。
【0042】
5≦Tmr1-Tmr2≦30 ・・・(式2)
第1のポリプロピレン系樹脂と第2のポリプロピレン系樹脂の融解ピーク温度の差が好ましくは5℃以上、より好ましくは7℃以上、さらに好ましくは10℃以上であることにより、熱接着時に繊維表層を形成する成分のみを軟化させることができる。そして、このようにすることにより、繊維内層の配向を残留させつつ、繊維同士を強固に熱接着させることができるため、実用に供しうる強度を有するスパンボンド不織布とすることができる。一方、芯成分と鞘成分の融解ピーク温度の差が好ましくは30℃以下、より好ましくは28℃以下、さらに好ましくは26度以下であることにより、熱接着時に過度に軟化し熱ロールに貼りつくなどの操業上の問題が発生することを防ぐことができる。
【0043】
前記の第2のポリプロピレン系樹脂のメルトフローレート(以下、MFR2と略すことがある。)は、5g/10分~250g/10分であることが好ましい。第2のポリプロピレン系樹脂のMFR2を好ましくは5g/10分以上とし、より好ましくは10g/10分以上とし、さらに好ましくは20g/10分以上とすることにより、細い繊維径でも安定して紡糸することができ、肌触りに優れ、地合が均一なスパンボンド不織布とすることができる。一方、第2のポリプロピレン系樹脂のMFR2を好ましくは250g/10分以下とし、より好ましくは240g/10分以下とし、さらに好ましくは230g/10分以下とすることにより、単糸強度の低下を抑制し、強度に優れたスパンボンド不織布とすることができる。
【0044】
なお、第2のポリプロピレン系樹脂のMFR2は、ASTM D1238(A法)によって測定される値を採用する。この規格によれば、ポリプロピレン系樹脂は荷重:2.16kg、温度:230℃にて測定することが規定されている。
【0045】
もちろん、MFRの異なる2種類以上の樹脂を任意の割合でブレンドして、本発明で用いられるポリプロピレン系樹脂のMFRを調整することもできる。この場合、主となるポリプロピレン系樹脂(ポリプロピレン系樹脂中、最も大きな質量%を占めるポリプロピレン系樹脂のことを指す)に対してブレンドする樹脂のMFRは、10g/10分~1000g/10分であることが好ましく、より好ましくは20g/10分~800g/10分、さらに好ましくは30g/10分~600g/10分である。このようにすることにより、ブレンドしたポリプロピレン系樹脂に部分的に粘度斑が生じることを防ぎ、単繊維径や単繊維繊度を均一化したり、細い繊維でも安定して紡糸したりすることができる。
【0046】
<3>芯鞘型複合繊維を得る工程
本工程では、芯成分として前記の第1のポリプロピレン系樹脂を、鞘成分として第2のポリプロピレン系樹脂を、吐出孔を有する複合紡糸口金に供給し、該複合紡糸口金から紡出した後、紡出された糸条を冷却固化し、エジェクターにて紡糸速度3000m/分以上6000m/分以下で牽引、延伸して、芯鞘型複合繊維を得る。
【0047】
複合紡糸口金やエジェクターの形状は特に制限されないが、例えば、丸形や矩形等、種々の形状のものを採用することができる。なかでも、圧縮エアの使用量が比較的少なくエネルギーコストに優れること、糸条同士の融着や擦過が起こりにくく、糸条の開繊も容易であることから、矩形の複合紡糸口金と矩形エジェクターの組み合わせが好ましく用いられる。
【0048】
本工程において、紡糸温度、すなわち、複合紡糸口金の吐出孔の温度は、180℃~250℃であることが好ましく、より好ましくは200℃~240℃であり、さらに好ましくは220℃~230℃である。紡糸温度を上記範囲内とすることにより、安定した溶融状態とし、優れた紡糸安定性を得ることができる。
【0049】
本工程において、単孔吐出量、すなわち、口金の1つの孔から吐出されるポリプロピレン系樹脂の量は0.15g/分~2.5g/分が好ましく、より好ましくは0.2g/分~2.0g/分であり、さらに好ましくは0.3g/分~1.5g/分である。単孔吐出量を上記範囲内とすることにより、細糸や糸の冷却不足による糸切れを防ぐことができ、品質の高い芯鞘型複合繊維を得ることができる。
【0050】
次に、紡出された糸条を冷却固化する。紡出された糸条を冷却する方法としては、例えば、冷風を強制的に糸条に吹き付ける方法、糸条周りの雰囲気温度で自然冷却する方法、および複合紡糸口金とエジェクター間の距離を調整する方法等が挙げられ、またはこれらの方法を組み合わせる方法を採用することができる。また、冷却条件は、複合紡糸口金の単孔あたりの吐出量、紡糸温度および雰囲気温度等を考慮して適宜調整して採用することができる。
【0051】
そして、冷却固化された糸条は、エジェクターにて紡糸速度3000m/分以上6000m/分以下で牽引、延伸して芯鞘型複合繊維を得る。
【0052】
この紡糸速度は、3000m/分~6000m/分である。より好ましくは3500m/分~5500m/分であり、さらに好ましくは4000m/分~5000m/分である。紡糸速度を3000m/分~6000m/分とすることにより、高い生産性を有することになり、また繊維の配向結晶化が進み、高強度の長繊維を得ることができる。
【0053】
<4>芯鞘型複合繊維
先に説明した工程で得られる芯鞘型複合繊維は、平均単繊維径が8μm~20μmであることが好ましい。平均単繊維径を好ましくは8μm以上、より好ましくは9μm以上、さらに好ましくは10μm以上とすることにより、紡糸性の低下を防ぎ、生産安定性を高めることができる。一方、平均単繊維径を好ましくは20μm以下、より好ましくは17μm以下、さらに好ましくは14μm以下とすることにより、肌触りに優れ、地合が均一であり、強度に優れたスパンボンド不織布を得ることができる。平均単繊維径は、紡糸温度、単孔吐出量、紡糸速度などによって制御することができる。
【0054】
前記の芯鞘型複合繊維の平均単繊維径(μm)は、以下の手順によって算出される値を採用するものとする。
(1)スパンボンド不織布からランダムに小片サンプル(100×100mm)を10個採取する。
(2)マイクロスコープまたは走査型電子顕微鏡で500~2000倍の表面写真を撮影し、各サンプルから10本ずつ、計100本の非融着部の芯鞘型複合繊維の幅(直径)を測定する。芯鞘型複合繊維の断面が異形の場合には断面積を測定し、同一の断面積を有する正円の直径を求める。
(3)測定した100本の直径の値の平均し、小数点以下第二位を四捨五入して平均単繊維径(μm)とする。
【0055】
前記の芯鞘型複合繊維は、鞘成分の質量比率が20質量%~80質量%であることが好ましい。鞘成分の質量比率が好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上であることにより、熱接着時に鞘成分同士が強固に融着し、実用に供しうる十分な強度を有するスパンボンド不織布とすることができる。一方、鞘成分の比率が好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下であることにより、高配向である芯成分の割合を増やし、芯鞘型複合繊維の単糸強度を向上させ、実用に供しうる十分な強度を有するスパンボンド不織布とすることができる。
【0056】
前記の芯鞘型複合繊維は、後述されるスパンボンド不織布の非融着部における、芯鞘型複合繊維の鞘成分の配向パラメータOsに対する芯成分の配向パラメータOcの比率(Oc/Os)が1.2以上2.0以下であることが好ましい。このようにすることにより、低目付でも優れた強度を有し、柔軟性や肌触りに優れたスパンボンド不織布とすることができる。前記の配向比率(Oc/Os)を好ましくは1.2以上、より好ましくは1.3以上、さらに好ましくは1.5以上とすることにより、熱接着時に繊維表層のみを軟化させることができる。このようにすることにより、繊維内層の分子配向を残留させつつ、繊維同士を強固に熱接着させることができるため、実用に供しうる強度を有するスパンボンド不織布とすることができる。一方、前記の配向比率(Oc/Os)を好ましくは2.0以下、より好ましくは1.9以下、さらに好ましくは1.8以下とすることにより、紡糸時に繊維内層に過度に延伸応力が集中し、紡糸安定化が低下することを防ぐことができる。
【0057】
ここで、芯鞘型複合繊維の配向パラメータとは、数値が大きいほど分子鎖が特定の方向に配向していることを示し、数値が小さいほど分子鎖がランダムに配向していることを示す指標(単位なし)である。なお、この配向パラメータは完全にランダムに配向しているとき、1.0となる。
【0058】
そして、前記の配向パラメータOsおよび配向パラメータOcは、以下の方法で測定される。なお、本発明では海島型複合繊維も芯鞘型複合繊維に含まれるものとし、海島型複合繊維の場合においては、前記の芯鞘型複合繊維の場合と同様、配向パラメータOs、Ocを測定・解釈などするとき、「鞘成分」とあるのを「海成分」と、「芯成分」とあるのを「島成分」と読み替えた上で、測定などを行うこととする。
(1)スパンボンド不織布の非融着部の中央付近(周囲の融着部から概ね等距離となる箇所)の芯鞘型複合繊維をサンプリングし、繊維片の試料をビスフェノール系エポキシ樹脂で樹脂包埋する。
(2)樹脂が硬化した後、ミクロトームにより切片を切り出す。切片厚みは2μmとする。この際、切断面が楕円形となるよう繊維軸から傾けて切断し、以降では楕円形の短軸の厚みが一定厚を示す箇所を選択して測定する。なお、切断角度が4°以内とすることで、2μmの膜厚内では繊維軸と平行と見なすことができる。
(3)非融着部の芯鞘型複合繊維の切片の繊維表層から中心部にかけて、繊維軸方向(平行方向)および繊維軸方向に直交する方向(垂直方向)の偏光を入射し、ラマンスペクトルのライン測定を行う。
(4)非融着部の芯鞘型複合繊維の芯成分、鞘成分それぞれの位置において、平行方向、垂直方向のそれぞれについて、810cm-1付近および840cm-1付近のラマンバンド強度I810およびI840を算出し、その強度比I810/I840を算出する。
(5)以下の式(a)に基づいて配向パラメータを算出する。芯成分が独立した複数の領域に分割されている場合は、すべての領域で配向パラメータを測定し、最も高い値を採用する
配向パラメータ=(I810/I840)平行/(I810/I840)垂直 (a)
(6)芯鞘型複合繊維の繊維軸方向に場所を変えて3箇所で同様の測定を行い、配向パラメータの平均値を算出し、小数点以下第二位を四捨五入する。
【0059】
なお、スパンボンド不織布の非融着部の中央付近(周囲の融着部から概ね等距離となる箇所)の芯鞘型複合繊維をサンプリングすることが困難である場合は、以下の手順で測定することもできる。
(1)スパンボンド不織布の試料をビスフェノール系エポキシ樹脂で樹脂包埋する。
(2)樹脂が硬化した後、スパンボンド不織布の非融着部の中央付近(周囲の融着部から概ね等距離となる箇所)が切断面となるようミクロトームにより切片を切り出す。切片厚みは2μmとする。切断角度が繊維軸から4°以内である箇所を選択して以降の測定を行う。
(3)非融着部の芯鞘型複合繊維の切片の繊維表層から中心部にかけて、繊維軸方向(平行方向)および繊維軸方向に直交する方向(垂直方向)の偏光を入射し、ラマンスペクトルのライン測定を行う。
(4)非融着部の芯鞘型複合繊維の芯成分、鞘成分それぞれの位置において、平行方向、垂直方向のそれぞれについて、810cm-1付近および840cm-1付近のラマンバンド強度I810およびI840を算出し、その強度比I810/I840を算出する。
(5)以下の式(a)に基づいて配向パラメータを算出する。芯成分が独立した複数の領域に分割されている場合は、すべての領域で配向パラメータを測定し、最も高い値を採用する
配向パラメータ=(I810/I840)平行/(I810/I840)垂直 (a)
(6)スパンボンド不織布の異なる非融着部について3箇所で同様の測定を行い、配向パラメータの平均値を算出し、小数点以下第二位を四捨五入する。
【0060】
[繊維ウェブを形成する工程]
本工程では、前記の芯鞘型複合繊維をネット上に捕集して、繊維ウェブを形成する。より具体的には、前記の芯鞘型複合繊維を、周囲の空気流速を減じるような開繊部に通過させることにより開繊させ、その後、移動するネット上に捕集して繊維ウェブを得る。
【0061】
前記の繊維ウェブに対して、後述する融着部と非融着部とを形成する工程の前に、移動するネット上に繊維ウェブを載せたまま、その上の面から熱フラットロールを当接させて、繊維ウェブを仮接着させることも好ましい態様である。このようにすることにより、移動するネット上を搬送中に不織繊維ウェブの表層がめくれたり吹き流れたりして地合が悪化することを防いだり、糸条を捕集してから熱圧着するまでの搬送性を改善することができる。
【0062】
[融着部と非融着部とを形成する工程]
本工程では、前記の繊維ウェブを熱接着して、融着部と非融着部とを形成する。ここで、本発明において「融着部」とは、例えば、一対の凹凸を有するロールにより熱接着する場合は、上側ロールの凸部と下側ロールの凸部とが重なって繊維ウェブに当接する部分のことを指し、凹凸を有するロールとフラットロールとにより熱接着する場合は、凹凸を有するロールの凸部が繊維ウェブに当接する部分のことを指す。つまり、凹凸を有するロールの凸部が繊維ウェブに接触して、当該箇所の繊維が部分的に溶融し、繊維交点同士が融着している部分が「融着部」であり、そうでない部分が「非融着部」である。一方、上下一対のフラット(平滑)ロールにより熱接着する場合には、融着部のみが形成されることとなる。また、超音波接着する場合は、超音波加工により熱溶着させる部分(発振ホーンが接触する部分)が融着部となる。
【0063】
繊維ウェブを融着させる方法は特に制限されないが、例えば、上記したように、上下一対のロール表面にそれぞれ彫刻(凹凸部)が施された熱エンボスロール、片方のロール表面がフラット(平滑)なロールと他方のロール表面に彫刻(凹凸部)が施されたロールとの組み合わせからなる熱エンボスロール、さらには、上下一対のフラット(平滑)ロールの組み合わせからなる熱カレンダーロールなど、各種ロールにより熱融着させる方法、ホーンの超音波振動により熱融着させる方法、および不織繊維ウェブに熱風を貫通させて芯鞘型複合繊維の表面を軟化または融解させ、繊維交点同士を熱融着させるなどの方法が挙げられる。
【0064】
なかでも、上下一対のロール表面にそれぞれ彫刻(凹凸部)が施された熱エンボスロール、または片方のロール表面がフラット(平滑)なロールと他方のロール表面に彫刻(凹凸部)が施されたロールとの組み合わせからなる熱エンボスロールを用いることが好ましい。このようにすることで、生産性良く、スパンボンド不織布の強度を向上させる融着部と、風合いや肌触りを向上させる非融着部と、を設けることができる。
【0065】
熱エンボスロールの表面材質としては、片方のエンボスロールの彫刻(凹凸部)が他方のロール表面に転写することを防ぐため、両方のロールの素材が同等の硬度を有することが好ましく、さらには、十分な熱融着効果を得るために、両方のロールの素材が金属製であることが好ましい態様である。
【0066】
このような熱エンボスロールによるエンボス接着面積率は、5~30%であることが好ましい。接着面積を好ましくは5%以上、より好ましくは8%以上、さらに好ましくは10%以上とすることにより、スパンボンド不織布として実用に供し得る強度を得ることができる。一方、接着面積を好ましくは30%以下、より好ましくは25%以下、さらに好ましくは20%以下とすることにより、衛生材料用のスパンボンド不織布として、特に紙おむつ用途での使用に適した適度な柔軟性を得ることができる。超音波接着を用いる場合でも、接着面積率は同様の範囲であることが好ましい。
【0067】
ここでいう接着面積率(%)とは、前記の融着部がスパンボンド不織布全体に占める面積割合のことを言う。具体的には、以下の式で示される。
【0068】
接着面積率(%)={融着部の面積(mm2)}/[{融着部の面積(mm2)}+{非融着部の面積(mm2)}]×100
={融着部の面積(mm2)}/{スパンボンド不織布の面積(mm2)}×100
熱接着によって形成される、融着部の形状は特に制限されないが、例えば、円形、楕円形、正方形、長方形、平行四辺形、ひし形、正六角形および正八角形などを用いることができる。また融着部は、スパンボンド不織布の長手方向(搬送方向)と幅方向にそれぞれ一定の間隔で均一に存在していることが好ましい。このようにすることにより、スパンボンド不織布の強度のばらつきを低減することができる。
【0069】
熱接着時の熱エンボスロールの表面温度は、使用しているポリプロピレン系樹脂の融点(以降、Tmr(℃)と記載することがある)に対し30℃低い温度から10℃高い温度(すなわち、(Tmr-30℃)~(Tmr+10℃))とすることが好ましい態様である。熱ロールの表面温度をポリプロピレン系樹脂の融点に対し好ましくは-30℃(すなわち、(Tmr-30℃)、以下同様)以上とし、より好ましくは-20℃(Tmr-20℃)以上とし、さらに好ましくは-10℃(Tmr-10℃)以上とすることにより、強固に熱接着させ実用に供しうる強度のスパンボンド不織布を得ることができる。また、熱エンボスロールの表面温度をポリプロピレン系樹脂の融点に対し好ましくは+10℃(Tmr+10℃)以下とし、より好ましくは+5℃(Tmr+5℃)以下とし、さらに好ましくは+0℃(Tmr+0℃)以下とすることにより、過度な熱接着を抑制し、衛生材料用のスパンボンド不織布として、特に紙おむつ用途での使用に適した適度な柔軟性を得ることができる。
【0070】
熱接着時、熱エンボスロールを用いる際の当該熱エンボスロールの線圧は、50N/cm~500N/cmとすることが好ましい。熱エンボスロールの線圧を好ましくは50N/cm以上とし、より好ましくは100N/cm以上とし、さらに好ましくは150N/cm以上とすることにより、強固に熱接着させ実用に供しうる強度のスパンボンド不織布を得ることができる。一方、熱エンボスロールの線圧を好ましくは500N/cm以下とし、より好ましくは400N/cm以下とし、さらに好ましくは300N/cm以下とすることにより、衛生材料用のスパンボンド不織布として、特に紙おむつ用途での使用に適した適度な柔軟性を得ることができる。
【0071】
また本工程では、スパンボンド不織布の厚みを調整することを目的に、上記の熱エンボスロールによる熱接着の前および/あるいは後に、上下一対のフラットロールからなる熱カレンダーロールにより熱圧着を施すことができる。上下一対のフラットロールとは、ロールの表面に凹凸のない金属製ロールや弾性ロールのことであり、金属製ロールと金属製ロールを対にしたり、金属製ロールと弾性ロールを対にしたりして用いることができる。
【0072】
また、ここで弾性ロールとは、金属製ロールと比較して弾性を有する材質からなるロールのことである。弾性ロールとしては、例えば、ペーパー、コットンおよびアラミドペーパー等のいわゆるペーパーロールや、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコン系樹脂、ポリエステル系樹脂および硬質ゴム、およびこれらの混合物からなる樹脂製のロールなどが挙げられる。
【0073】
[その他の後加工]
上記の工程までを行って得られたものをスパンボンド不織布として使用してもよいが、さらに、使用目的に応じて、種々の後加工を行うこともできる。
【0074】
例えば、融着部と非融着部とを形成した後の繊維ウェブに薬液を付与し、新たに機能性を持たせることができる。この薬液を付与する方法としては、液体を満たした薬液槽から、薬液槽中を回転する金属ロールによって溶液を巻き上げ、金属ロールの上方に積層不織布を当接させることにより、液体を積層不織布表面へ転写させるロールコーティング法、グラビア法、フレキソ法、スプレーコーティング法等が挙げられる。中でも、生産性に優れ、溶液を均一に付与することができ、かつ液体の付与量の調節が容易にでき、さらには積層不織布の片面にのみ液体を付与できることから、ロールコーティング法を用いることが好ましい。
【0075】
その他、孔開け、印刷、フィルムラミネートなどの後加工を行うこともできる。
【0076】
[スパンボンド不織布]
本発明によって得られるスパンボンド不織布の目付は、5g/m2以上100g/m2以下であることが好ましい。目付を好ましくは5g/m2以上とし、より好ましくは10g/m2以上とし、さらに好ましくは15g/m2以上とすることにより、実用に供し得る機械的強度のスパンボンド不織布を得ることができる。一方、目付は好ましくは100g/m2以下、より好ましくは50g/m2以下、さらに好ましくは30g/m2以下とすることにより、不織布の実使用に適した適度な柔軟性を有するスパンボンド不織布とすることができる。
【0077】
なお、スパンボンド不織布の目付は、JIS L1913:2010「一般不織布試験方法」の「6.2 単位面積当たりの質量」に準じ、以下の手順によって測定される値を採用するものとする。
(1)20cm×25cmの試験片を、試料の幅1m当たり3枚採取する。
(2)標準状態におけるそれぞれの質量(g)を量る。
(3)その算術平均値を1m2当たりの質量(g/m2)で表し、小数点以下第1位を四捨五入する。
【0078】
また、本発明によって得られるスパンボンド不織布の厚みは、0.05mm以上1.5mm以下であることが好ましい。厚みが好ましくは0.05mm以上、より好ましくは0.08mm以上、さらに好ましくは0.1mm以上であることによって、あるいは、厚みが好ましくは1.5mm以下、より好ましくは1mm以下、さらに好ましくは0.8mm以下であることによって、柔軟性と適度なクッション性を備え、実使用に適したスパンボンド不織布とすることができる。
【0079】
なお、スパンボンド不織布の厚み(mm)は、JIS L1906:2000「一般長繊維不織布試験方法」の「5.1 厚さ」に準じ測定される値を採用するものとする。
【0080】
本発明によって得られるスパンボンド不織布は、柔軟性や肌触りに優れ、地合が均一であり、実用に供しうる十分な強度を有し、かつ生産性に優れることから、衛生材料、医療材料、生活資材および工業資材等に幅広く用いることができる。特に衛生材料では使い捨ておむつ、生理用品および湿布材の基布等、医療材料では防護服やサージカルガウン等として好適に用いることができる。
【実施例0081】
次に、実施例に基づき本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0082】
[測定方法]
実施例で用いた評価法とその測定条件について説明する。なお、各物性の測定において、特段の記載がないものは、前記の方法に基づいて測定を行ったものである。
【0083】
(1)樹脂のメルトフローレート(MFR)(g/10分):
樹脂のMFRは、荷重が2.16kgで、温度が130℃の条件で測定した。
【0084】
(2)スパンボンド不織布を構成する芯鞘型複合繊維の平均単繊維径(μm):
株式会社キーエンス製電子顕微鏡「VHX-D500」を用いて、前記の方法により測定した。
【0085】
(3)紡糸速度(m/分):
上記の平均単繊維径と樹脂の固体密度(0.91g/cm3)から、長さ10000m当たりの質量を平均単繊維繊度(dtex)として、小数点以下第二位を四捨五入して算出した。平均単繊維繊度と、各条件で設定した紡糸口金単孔から吐出される樹脂の吐出量(以下、単孔吐出量と略記する。)(g/分)から、次の式に基づき、紡糸速度を算出した
紡糸速度(m/分)=(10000×[単孔吐出量(g/分)])/[平均単繊維繊度(dtex)]。
【0086】
(4)スパンボンド不織布の非融着部の芯鞘型複合繊維の配向パラメータ:
測定装置には、愛宕物産株式会社製トリプルラマン分光装置「T-64000」を用いて、前記の方法により測定した。測定条件は、次のとおりで実施した。
・測定モード:顕微ラマン(偏光測定)
・対物レンズ:×100
・ビーム径:1μm
・光源:Ar+レーザー/514.5nm
・レーザーパワー:60mW
・回折格子:Single1800gr/mm
・クロススリット:100μm
・検出器:CCD/Jobin Yvon 1024×256。
【0087】
(5)スパンボンド不織布の融解ピーク温度Tm(℃):
測定装置にはPerkin-Elmer社製「DSC8500」を使用し、前記の方法により測定した。測定条件は、次のとおりで実施した。
・装置内雰囲気:窒素(20mL/分)
・温度・熱量校正:高純度インジウム(Tm=156.61℃、ΔHm=28.70J/g)
・温度範囲:20℃~200℃
・昇温速度:20℃/分
・試料量:約0.5~4mg
・試料容器:アルミニウム製標準容器。
【0088】
(6)スパンボンド不織布の目付あたりの引張強力(N/50mm/(g/m2)):
測定装置には株式会社エー・アンド・デイ(A&D)製「RTG-1250」を使用し、前記の方法により測定した。目付あたりの縦方向の引張強力は2.80(N/50mm)/(g/m2)以上、横方向の引張強力は1.50(N/50mm)/(g/m2)以上を合格とした。
【0089】
[原料樹脂、有機過酸化物添加マスターバッチ]
実施例、比較例で使用した原料樹脂、有機過酸化物添加したポリプロピレンマスターバッチは以下の通りである。
【0090】
(原料樹脂A)
ジーグラー・ナッタ触媒を用いて得られたプロピレン単独重合体であり、MFRが6g/10分、融解ピーク温度が160℃であるポリプロピレン。
【0091】
(原料樹脂B)
ジーグラー・ナッタ触媒を用いて得られたプロピレン単独重合体であり、MFRが3g/10分、融解ピーク温度が160℃であるポリプロピレン。
【0092】
(原料樹脂C)
メタロセン触媒を用いて得られたプロピレン単独重合体であり、MFRが150g/10分、融解ピーク温度が150℃であるポリプロピレン。
【0093】
(過酸化物を含むポリプロピレンマスターバッチ)
Polytechs社製「VMPP10X」(ポリプロピレンマスターバッチ:2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン10質量%含有)。
【0094】
[実施例1]
(a)芯鞘型複合繊維を得る工程
第1のポリプロピレン系樹脂として、原料樹脂Aに対して、ポリプロピレンマスターバッチを1.2質量%ブレンドし、芯成分に用いた。ブレンドチップはMFRが70g/10分、融点が160℃、Mz/Mwが2.03であった。また、第2のポリプロピレン系樹脂として、原料樹脂Cを用いた。
【0095】
それぞれの原料を押出機で溶融し、孔径φが0.40mmで、孔深度が0.8mmの紡糸口金から、紡糸温度が235℃、単孔吐出量が0.40g/分で、鞘成分比率50質量%の同心芯鞘型複合繊維を紡出した。紡出した糸条を冷却固化した後、これをエジェクターにおいて圧縮エアによって牽引、延伸した。芯鞘型複合繊維の平均単繊維径は12.8μmであり、これから換算した紡糸速度は3400m/分であった。
【0096】
(b)繊維ウェブを形成する工程
前記で得られた芯鞘型複合繊維を周囲の空気流速が減じられるような開繊部を通過することにより開繊させ、その後、裏面から空気吸引されるネットコンベアー上に着地させることで捕集し、繊維ウェブを得た。
【0097】
(c)融着部と非融着部とを形成する工程
前記で得られた繊維ウェブを以下の上ロール、下ロールから構成される上下一対の熱エンボスロールを用いて、線圧:500N/cm、熱接着温度:140℃の条件で熱接着し、融着部と非融着部とを有する、接着面積率11%、目付30g/m2のスパンボンド不織布を得た。
(上ロール):金属製でダイヤ柄の彫刻(凸部が菱形)がなされた、凸部の面積がロール表面全体の面積に対して11%であるエンボスロール
(下ロール):金属製フラットロール
上記の工程で得られたスパンボンド不織布は地合いが均一で、肌触りに優れたものであった。評価結果を表1に示す。
【0098】
[実施例2]
工程(a)において、第1のポリプロピレン系樹脂として、原料樹脂Bを用い、原料樹脂Bに対して、ポリプロピレンマスターバッチを1.2質量%ブレンドし、芯成分のMFRが70g/10分、融点が160℃、Mz/Mwが2.04であること以外は、実施例1と同じ工程により、スパンボンド不織布を得た。評価結果を表1に示す。
【0099】
[実施例3]
工程(a)において、鞘成分比率を30質量%としたこと、また、紡糸速度が3600m/分であり、複合繊維の平均単繊維径が12.6μmであること以外は、実施例1と同じ工程により、スパンボンド不織布を得た。評価結果を表1に示す。
【0100】
[実施例4]
工程(a)において、紡糸速度が4400m/分であり、複合繊維の平均単繊維径が11.2μmであること以外は、実施例1と同じ工程により、スパンボンド不織布を得た。評価結果を表1に示す。
【0101】
[比較例1]
工程(a)において、第1のポリプロピレン系樹脂と第2のポリプロピレン系樹脂の両方ともに原料樹脂Cを用い、ポリプロピレンマスターバッチを用いなかったこと、また、紡糸速度が3800m/分であり、複合繊維の平均単繊維径が12.8μmであること以外は、実施例1と同じ工程により、スパンボンド不織布を得た。評価結果を表1に示す。
【0102】
[比較例2]
工程(a)において、第1のポリプロピレン系樹脂として、原料Aのみを用い、ポリプロピレンマスターバッチを用いなかったこと以外は、実施例1と同じ工程により、スパンボンド不織布を得ることを試みた。しかし、糸切れが多発し、不織布を採取することができなかった。
【0103】
【0104】
実施例1~4のスパンボンド不織布は、低目付でも優れた強度を有し、柔軟性や肌触りに優れたものであった。
【0105】
一方、比較例1の工程で得られたスパンボンド不織布は縦引張強度、横引張強度ともに劣るものであった。また、比較例2の工程ではスパンボンド不織布が得られなかった。これは第1のポリプロピレン系樹脂に過酸化物を添加せず、MFRが小さすぎるため、粘度が高く曳糸性が不良になったものと考えられる。