(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128365
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
B41J 29/54 20060101AFI20240913BHJP
B41J 19/20 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
B41J29/54 A
B41J19/20 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037307
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】片岡 英之
(72)【発明者】
【氏名】青野 宗豊
【テーマコード(参考)】
2C061
2C480
【Fターム(参考)】
2C061AQ05
2C061AS06
2C061BB10
2C061BB23
2C480CA01
2C480CB02
2C480CB11
2C480CB27
(57)【要約】
【課題】キャリッジの規制状態と規制解除状態とを容易に切り換える。
【解決手段】ヘッド5と、キャリッジ4と、キャリッジ4の移動を規制する規制状態と、キャリッジ4の移動を可能にする規制解除状態と、を切り換えるロック機構部100と、ロック機構部100を規制状態と規制解除状態とで切り換える動力をロック機構部100に伝達する伝達機構112と、伝達機構112を構成する少なくとも一つの伝達歯車113に回転力を加えることが可能に構成され、伝達歯車113を回転させることで規制状態と規制解除状態とを切り換え可能な切り換え機構120と、を備え、切り換え機構120は、軸部121と、軸部121が第1方向P1に移動することで伝達歯車113に嵌合する嵌合部122と、を有し、嵌合部122が伝達歯車113に嵌合した状態で軸部121を回転させることで伝達歯車113を回転可能な印刷装置1。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送される媒体に液体を吐出するヘッドと、
前記ヘッドを保持し、前記媒体の搬送方向と交差する幅方向に往復移動するキャリッジと、
前記幅方向における前記キャリッジの移動を規制する規制状態と、前記幅方向における前記キャリッジの移動を可能にする規制解除状態と、を切り換えるロック機構部と、
前記ロック機構部を前記規制状態と規制解除状態とで切り換える動力を生成する駆動源と、
前記駆動源と前記ロック機構部との間に配置され、伝達歯車を含んで構成され、前記駆動源が生成した前記動力を前記ロック機構部に伝達する伝達機構と、
前記伝達歯車に前記駆動源が生成した前記動力とは異なる回転力を加えることが可能に構成され、前記伝達歯車を回転させることで前記ロック機構部の前記規制状態と前記規制解除状態とを切り換え可能な切り換え機構と、
を備え、
前記切り換え機構は、
前記伝達歯車の回転軸方向に延設される軸部と、前記軸部が前記回転軸方向に沿う第1方向に移動することで前記伝達歯車に嵌合する嵌合部と、を有し、
前記嵌合部が前記伝達歯車に嵌合した状態で前記軸部を回転させることで、前記伝達歯車を回転可能に構成されていることを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載された印刷装置において、
前記キャリッジは、前記幅方向において、前記ヘッドによって前記媒体に記録を行うことが可能な記録領域と、前記記録領域から外れた待機位置と、に移動可能であり、
前記ロック機構部は、前記キャリッジが前記待機位置に位置した状態において前記規制状態と規制解除状態とを切り換えることを特徴とする印刷装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載された印刷装置において、
前記伝達歯車は、側面に前記嵌合部が嵌合される被嵌合部が形成され、
前記切り換え機構は、前記軸部の前記第1方向における先端に前記嵌合部を有し、前記軸部が前記第1方向に移動することで前記被嵌合部に前記嵌合部が嵌合することを特徴とする印刷装置。
【請求項4】
請求項3に記載された印刷装置において、
前記軸部の前記第1方向における端部は、前記第1方向に進むにつれて細くなっていることを特徴とする印刷装置。
【請求項5】
請求項1または2に記載された印刷装置において、
前記切り換え機構は、前記軸部の前記第1方向とは反対の第2方向の端部に把持部を有することを特徴とする印刷装置。
【請求項6】
請求項1または2に記載された印刷装置において、
前記切り換え機構は、前記軸部を前記第1方向とは反対の第2方向に付勢する付勢部材を有することを特徴とする印刷装置。
【請求項7】
請求項1または2に記載された印刷装置において、
前記切り換え機構は、前記軸部を前記第1方向に移動させすぎることを規制する規制部を有することを特徴とする印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、様々な印刷装置が使用されている。このうち、搬送される媒体に液体を吐出するヘッドを保持し媒体の搬送方向と交差する幅方向に往復移動するキャリッジを備える印刷装置がある。例えば、特許文献1には、記録ヘッドを保持し印刷用紙の搬送方向と交差する幅方向に往復移動するキャリッジを備えるプリンターが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のプリンターのような、搬送される媒体に液体を吐出するヘッドを保持し幅方向に往復移動するキャリッジを備える印刷装置においては、印刷装置の移動時などにおいてキャリッジが幅方向に移動しないようにロック機構部を有する場合がある。特許文献1のプリンターは、ロック機構部としてのキャリッジロック機構が設けられている。一般的に、ロック機構部は電源をオンしたタイミングや電源をオンにしてロック解除指示を送信したタイミングなどに伴いロックが解除されるが、例えば、電源トラブルなどが発生し電源をオンにできない場合などがあると、キャリッジを移動させることが困難な場合があった。電源をオンにできない場合にキャリッジを移動させるには、印刷装置を分解し直接歯車などを手動で回転させることや狭いスペースで工具を使用することなどが必要となり、印刷装置を損傷させる虞が発生することや作業者に大きな負荷をかけることとなる。このため、例えば、電源をオンにできない場合などにおいてもキャリッジのロック状態とロック解除状態とを容易に切り換えることが可能な構成が好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための本発明の印刷装置は、搬送される媒体に液体を吐出するヘッドと、前記ヘッドを保持し、前記媒体の搬送方向と交差する幅方向に往復移動するキャリッジと、前記幅方向における前記キャリッジの移動を規制する規制状態と、前記幅方向における前記キャリッジの移動を可能にする規制解除状態と、を切り換えるロック機構部と、前記ロック機構部を前記規制状態と規制解除状態とで切り換える動力を生成する駆動源と、前記駆動源と前記ロック機構部との間に配置され、伝達歯車を含んで構成され、前記駆動源が生成した前記動力を前記ロック機構部に伝達する伝達機構と、前記伝達歯車に前記駆動源が生成した前記動力とは異なる回転力を加えることが可能に構成され、前記伝達歯車を回転させることで前記ロック機構部の前記規制状態と前記規制解除状態とを切り換え可能な切り換え機構と、を備え、前記切り換え機構は、前記伝達歯車の回転軸方向に延設される軸部と、前記軸部が前記回転軸方向に沿う第1方向に移動することで前記伝達歯車に嵌合する嵌合部と、を有し、前記嵌合部が前記伝達歯車に嵌合した状態で前記軸部を回転させることで、前記伝達歯車を回転可能に構成されていることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図2】
図1の印刷装置の側面断面図であって規制状態を表す図。
【
図3】
図1の印刷装置の側面断面図であって規制解除状態を表す図。
【
図4】
図1の印刷装置の斜視図であって規制状態を表す図。
【
図5】
図1の印刷装置の斜視図であって規制解除状態を表す図。
【
図6】
図1の印刷装置の斜視断面図であって切り換え機構を伝達歯車に嵌合させていない状態を表す図。
【
図7】
図1の印刷装置の斜視断面図であって切り換え機構を伝達歯車に嵌合させている状態を表す図。
【
図8】
図1の印刷装置の斜視図であって切り換え機構を伝達歯車に嵌合させていない状態を表す図。
【
図9】
図1の印刷装置の斜視図であって切り換え機構を伝達歯車に嵌合させている状態を表す図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
最初に、本発明について概略的に説明する。
上記課題を解決するための本発明の第1の態様の印刷装置は、搬送される媒体に液体を吐出するヘッドと、前記ヘッドを保持し、前記媒体の搬送方向と交差する幅方向に往復移動するキャリッジと、前記幅方向における前記キャリッジの移動を規制する規制状態と、前記幅方向における前記キャリッジの移動を可能にする規制解除状態と、を切り換えるロック機構部と、前記ロック機構部を前記規制状態と規制解除状態とで切り換える動力を生成する駆動源と、前記駆動源と前記ロック機構部との間に配置され、伝達歯車を含んで構成され、前記駆動源が生成した前記動力を前記ロック機構部に伝達する伝達機構と、前記伝達歯車に前記駆動源が生成した前記動力とは異なる回転力を加えることが可能に構成され、前記伝達歯車を回転させることで前記ロック機構部の前記規制状態と前記規制解除状態とを切り換え可能な切り換え機構と、を備え、前記切り換え機構は、前記伝達歯車の回転軸方向に延設される軸部と、前記軸部が前記回転軸方向に沿う第1方向に移動することで前記伝達歯車に嵌合する嵌合部と、を有し、前記嵌合部が前記伝達歯車に嵌合した状態で前記軸部を回転させることで、前記伝達歯車を回転可能に構成されていることを特徴とする。
【0008】
本態様によれば、伝達歯車に回転力を加えることが可能に構成され伝達歯車を回転させることで規制状態と規制解除状態とを切り換え可能な切り換え機構を備え、切り換え機構は軸部と軸部が第1方向に移動することで伝達歯車に嵌合する嵌合部とを有し、嵌合部が伝達歯車に嵌合した状態で軸部を回転させることで伝達歯車を回転可能に構成されている。このため、ユーザーは、例えば、電源トラブルなどが発生し電源をオンにできない場合などにおいても、軸部を第1方向に移動させて回転させるだけでキャリッジの規制状態と規制解除状態とを容易に切り換えることができる。
【0009】
本発明の第2の態様の印刷装置は、第1の態様に従属する態様であって、前記キャリッジは、前記幅方向において、前記ヘッドによって前記媒体に記録を行うことが可能な記録領域と、前記記録領域から外れた待機位置と、に移動可能であり、前記ロック機構部は、前記キャリッジが前記待機位置に位置した状態において前記規制状態と規制解除状態とを切り換えることを特徴とする。
【0010】
本態様によれば、キャリッジは幅方向において記録領域と待機位置とに移動可能であり、ロック機構部はキャリッジが待機位置に位置した状態において規制状態と規制解除状態とを切り換える。このような構成とすることで、所望の待機位置にキャリッジを確りと固定することが可能になり、例えば、規制状態においてキャリッジの幅方向における移動を効果的に抑制することができる。
【0011】
本発明の第3の態様の印刷装置は、前記第1または第2の態様に従属する態様であって、前記伝達歯車は、側面に前記嵌合部が嵌合される被嵌合部が形成され、前記切り換え機構は、前記軸部の前記第1方向における先端に前記嵌合部を有し、前記軸部が前記第1方向に移動することで前記被嵌合部に前記嵌合部が嵌合することを特徴とする。
【0012】
本態様によれば、伝達歯車は側面に被嵌合部が形成され、切り換え機構は軸部の第1方向における先端に嵌合部を有し、軸部が第1方向に移動することで被嵌合部に嵌合部が嵌合する。このような構成とすることで、伝達機構及び切り換え機構の構成を簡単にすることができる。
【0013】
本発明の第4の態様の印刷装置は、前記第3の態様に従属する態様であって、前記軸部の前記第1方向における端部は、前記第1方向に進むにつれて細くなっていることを特徴とする。
【0014】
本態様によれば、軸部の第1方向における端部は第1方向に進むにつれて細くなっている。このような構成とすることで、軸部を第1方向に移動させやすくすることができる。
【0015】
本発明の第5の態様の印刷装置は、前記第1または第2の態様に従属する態様であって、前記切り換え機構は、前記軸部の前記第1方向とは反対の第2方向の端部に把持部を有することを特徴とする。
【0016】
本態様によれば、切り換え機構は軸部の第2方向の端部に把持部を有する。このような構成とすることで、ユーザーは把持部を把持して軸部の第1方向への移動や回転を行うことができ、操作性を向上することができる。
【0017】
本発明の第6の態様の印刷装置は、前記第1または第2の態様に従属する態様であって、前記切り換え機構は、前記軸部を前記第1方向とは反対の第2方向に付勢する付勢部材を有することを特徴とする。
【0018】
本態様によれば、切り換え機構は軸部を第2方向に付勢する付勢部材を有する。軸部が第1方向へ移動し続けていると、嵌合部が伝達歯車に嵌合した状態が続くこととなり、嵌合部と伝達歯車とが擦れるなどして異音を発生させる虞やこれらの損傷を招く虞がある。しかしながら、このような構成とすることで、異音の発生や嵌合部及び伝達歯車の損傷などを抑制することができる。
【0019】
本発明の第7の態様の印刷装置は、前記第1または第2の態様に従属する態様であって、前記切り換え機構は、前記軸部を前記第1方向に移動させすぎることを規制する規制部を有することを特徴とする。
【0020】
本態様によれば、切り換え機構は軸部を第1方向に移動させすぎることを規制する規制部を有する。このような構成とすることで、軸部を第1方向に移動させすぎることで嵌合部及び伝達歯車が損傷するということなどを抑制することができる。
【0021】
以下、図面を参照して、本発明に係る実施形態を具体的に説明する。最初に、
図1を参照して本発明の一実施例に係る印刷装置1の概要について説明する。なお、
図1においては、構成を分かり易くするために一部の構成部材を簡略化及び省略して表している。ここで、図中のX軸方向は水平方向であって媒体Mがロール状に巻き重ねられたロール体R1を保持する保持部2の支持部の延びる方向であり、Y軸方向は水平方向であるとともに印刷装置1の前後方向であってX軸方向と直交する方向、Z軸方向は鉛直方向である。また、以下においては、矢印の向く方向を+方向、矢印の向く方向とは反対方向を-方向とする。例えば、鉛直上方向は+Z方向、鉛直下方向は-Z方向、印刷装置1の前方は+Y方向、印刷装置1の後方は-Y方向とする。
【0022】
本実施例の印刷装置1は、本体部9を備えており、本体部9のX軸方向の両端部分には、脚部7が取り付けられている。また、本実施例の印刷装置1は、本体部9の後方側である-Y方向側に媒体Mがロール状に巻き重ねられたロール体R1を保持する保持部2を備えている。保持部2は、ロール体R1から媒体Mを本体部9に送り出す送出部の役割をしている。
【0023】
そして、本実施例の印刷装置1においては、媒体Mを搬送方向Aに搬送する際、X軸方向に沿う回転軸となる保持部2を回転方向Cに回転する。保持部2はロール体R1の巻き芯である紙管に挿入する部材である。なお、
図1では画像が形成される画像形成面M1が外側になるように巻かれているロール体R1を使用しているが、画像形成面M1が内側になるように巻かれているロール体R1を使用する場合は、保持部2は回転方向Cとは逆方向に回転してロール体R1から媒体Mを送り出すことが可能である。
【0024】
また、本実施例の印刷装置1は、媒体Mを支持する媒体支持部3などからなる媒体Mの搬送経路を備えている。本実施例の印刷装置1は、媒体支持部3として、搬送方向Aにおける上流側から下流側に向かって、媒体支持部3A、媒体支持部3B及び媒体支持部3Cを備えている。また、印刷装置1は、該搬送経路において媒体Mを搬送方向Aに搬送するための搬送部として、駆動ローラーと従動ローラーとからなるローラー対8を備えている。ただし、搬送部の構成に特に限定はない。
【0025】
また、本実施例の印刷装置1は、媒体支持部3Bと対向する位置に、複数のノズルが設けられ該ノズルからインクを吐出して画像を形成する印刷部としてのヘッド5と、該ヘッド5を搭載して幅方向Bに往復移動可能なキャリッジ4と、を備えている。なお、本実施例の印刷装置1では、媒体支持部3B上のヘッド5と対向する位置における搬送方向Aは+Y方向であり、ヘッド5の移動方向である幅方向BはX軸方向に沿う方向であり、インクの吐出方向は-Z方向である。
【0026】
上記のような構成により、ヘッド5は、搬送方向Aと交差する方向である幅方向Bに往復移動しながら、搬送される媒体Mに不図示のノズルからインクを吐出して画像を形成することが可能である。本実施例の印刷装置1は、所定の搬送量で媒体Mを搬送方向Aに搬送させることと、媒体Mを停止した状態でヘッド5を幅方向Bに移動させながらインクを吐出させることと、を送り返すことで、媒体Mに所望の画像を形成可能である。
【0027】
また、媒体支持部3のうちの媒体支持部3Cには、媒体Mの画像形成面M1とは反対側の被支持面M2を加熱するための加熱部としてヒーター20が設けられている。本実施例のヒーター20は電熱線などで構成されるが、このような構成に限定されない。また、媒体支持部3Cだけでなく、媒体支持部3Aや媒体支持部3Bにも媒体Mの画像形成面M1とは反対側の被支持面M2を加熱する媒体加熱部を設けていてもよい。
【0028】
また、搬送経路における媒体支持部3Cと対向する部分には、気流Fを吹き付けることによりヘッド5から媒体Mの画像形成面M1に吐出されたインクを乾燥させる送風部10が設けられている。本実施例の送風部10は、気流Fを加熱する気流加熱部11を備え、加熱した気体を気流Fとして媒体Mの画像形成面M1に送風することが可能な構成となっているが、このような構成に限定されない。
【0029】
また、搬送方向Aにおける媒体支持部3Cの下流には、搬送方向Aに搬送される媒体Mをロール状に巻き取ってロール体R2とする巻取部としての保持部6が設けられている。なお、本実施例の印刷装置1においては、保持部2と保持部6とは同様の構成をしており、保持部6は回転方向Cに回転する。保持部6はロール体R2の巻き芯である紙管を挿入する部材である。
図1では、保持部6が回転方向Cに回転することで画像形成面M1が外側になるように巻かれているが、画像形成面M1が内側になるように媒体Mを巻き取ってもよい。その場合は、保持部6は回転方向Cとは逆方向に回転する。
【0030】
また、本実施例の印刷装置1は、本体部9にCPUや情報を記憶する記憶部などを有する制御部12を備えている。そして、幅方向Bにキャリッジ4を往復移動させるための駆動源であるモーター13を備えている。モーター13は制御部12と電気的に接続され、制御部12の制御により駆動する。
【0031】
上記のように、本実施例の印刷装置1は、搬送される媒体Mに液体を吐出するヘッド5と、ヘッド5を保持し幅方向Bに往復移動するキャリッジ4と、を備えている。さらに、本実施例の印刷装置1は、幅方向Bにおけるキャリッジ4の移動を規制する規制状態と、幅方向Bにおけるキャリッジ4の移動を可能にする規制解除状態と、を切り換えるロック機構部100を備えている。ここで、
図2から
図5を参照して、ロック機構部100及びその周辺の構成について説明する。
【0032】
ここで、
図2は、本実施例の印刷装置1の側面断面図であって、幅方向Bにおけるキャリッジ4の移動が規制される規制状態を表している。また、
図3は、印刷装置1の側面断面図であって、幅方向Bにおけるキャリッジ4の移動が可能である規制解除状態を表している。また、
図4は、印刷装置1の斜視図であって規制状態を表している。そして、
図5は、印刷装置1の斜視図であって規制解除状態を表している。なお、
図2から
図5のいずれもキャリッジ4がホームポジションにある状態を表しており、ホームポジションとは、幅方向Bにおいてヘッド5によって媒体Mに記録を行うことが可能な記録領域から外れた位置にあるキャリッジ4の待機位置に相当する。具体的には、ホームポジションは、幅方向Bにおけるキャリッジ4の移動範囲のうちの最も-X方向側の位置に対応する。
【0033】
図2から
図5で表されるように、キャリッジ4がホームポジションにある際にキャリッジ4と対向する位置には、インクシステムユニット110が設けられている。インクシステムユニット110には不図示のキャップやワイパーや吸引機構などが設けられ、キャリッジ4をホームポジションに位置させることによりヘッド5のキャッピングやメンテナンスなどを行うことが可能な構成となっている。
【0034】
図2と
図3、または、
図4と
図5を比較するとわかるように、インクシステムユニット110には、Z軸方向に沿ってキャリッジ4に対して進退する棒状部材111が設けられている。そして、
図4と
図5を比較するとわかるように、キャリッジ4には、キャリッジ4がホームポジションにある際に棒状部材111の挿入を許容する挿入スペース42が設けられている。挿入スペース42は、キャリッジ4において+Y方向に突出する凸部41の間に設けられ、
図2及び
図4で表されるように棒状部材111が+Z方向に進出して挿入スペース42に挿入された際に、キャリッジ4が幅方向Bに移動しようとしても棒状部材111が凸部41に当接することでキャリッジ4の移動が規制される構成となっている。このように、棒状部材111と挿入スペース42と凸部41とでロック機構部100を構成している。
【0035】
また、
図2及び
図3で表されるように、インクシステムユニット110には、動力源である
図1で表されるモーター13やモーター13の回転を伝達する不図示の複数の歯車等で構成された伝達機構112が設けられている。すなわち、モーター13は、ロック機構部100を規制状態と規制解除状態とで切り換える動力を生成する。また、伝達機構112は、モーター13とロック機構部100との間に配置され、歯車を含んで構成され、モーター13が生成した動力をロック機構部100に伝達する。
【0036】
本実施例の印刷装置1は、電源をオンすることに伴って、制御部12がモーター13を制御することにより、自動的に規制解除状態にする。ただし、電源がオンになっただけでは規制解除状態とはせずに、規制解除をすることの指示や印刷を開始することの指示などを入力することに伴って規制解除状態とする構成などとしてもよい。また、本実施例の印刷装置1は、電源をオフすることに伴って、制御部12がモーター13を制御することにより、自動的に規制状態にする。このため、電源をオフにして印刷装置1を移動させる場合などにおいては、印刷装置1の移動中にキャリッジ4が幅方向Bに移動することを抑制することができる。
【0037】
ただし、電源をオンすることなくキャリッジ4を幅方向Bに移動させたい場合もある。そこで、本実施例の印刷装置1は、規制状態と規制解除状態とを切り換え可能な切り換え機構120を備え、電源がオフの状態でもロック機構部100を規制状態から規制解除状態に切り換えることが可能な構成となっている。以下に、その詳細について、
図6から
図9を参照して説明する。
【0038】
ここで、
図6は、本実施例の印刷装置1の斜視断面図であって切り換え機構120を伝達歯車113に嵌合させていない状態を表している。また、
図7は、印刷装置1の斜視断面図であって切り換え機構120を伝達歯車113に嵌合させている状態を表している。また、
図8は、印刷装置1の斜視図であって切り換え機構120を伝達歯車113に嵌合させていない状態を表している。そして、
図9は、印刷装置1の斜視図であって切り換え機構120を伝達歯車113に嵌合させている状態を表している。
【0039】
本実施例の印刷装置1の切り換え機構120は、
図2、
図3、
図6及び
図7で表される伝達機構112を構成する複数の歯車のうちの少なくとも一つの歯車である伝達歯車113にモーター13が生成した動力とは異なる回転力を加えることが可能に構成されている。なお、伝達歯車113の回転軸方向は、X軸方向、すなわち、幅方向Bに対応する。そして、伝達歯車113を回転させることで規制状態と規制解除状態とを切り換え可能である。ここで、切り換え機構120は、
図7などで表されるように、伝達歯車113の回転軸方向である幅方向Bに延設する軸部121と、軸部121が幅方向Bに沿う第1方向P1に移動することで伝達歯車113に嵌合する嵌合部122と、を有している。そして、
図7で表されるように、嵌合部122が伝達歯車113に嵌合した状態で軸部121を回転方向R1及び回転方向R2に回転させることで、伝達歯車113を回転方向R1及び回転方向R2に回転可能に構成されている。なお、本実施例においては、嵌合部122が伝達歯車113に嵌合した状態で軸部121を回転方向R1に回転させた場合はロック機構部100を規制状態から規制解除状態に切り換えることができ、嵌合部122が伝達歯車113に嵌合した状態で軸部121を回転方向R2に回転させた場合はロック機構部100を規制解除状態から規制状態に切り換えることができる。
【0040】
このように、本実施例の印刷装置1は、伝達歯車113に回転力を加えることが可能に構成され伝達歯車113を回転させることで規制状態と規制解除状態とを切り換え可能な切り換え機構120を備え、切り換え機構120は軸部121と軸部121が第1方向P1に移動することで伝達歯車113に嵌合する嵌合部122とを有し、嵌合部122が伝達歯車113に嵌合した状態で軸部121を回転させることで伝達歯車113を回転可能に構成されている。このような構成の切り換え機構120を備えることで、ユーザーは、例えば、電源トラブルなどが発生し電源をオンにできない場合などにおいても、軸部121を第1方向P1に移動させて回転させるだけでキャリッジ4の規制状態と規制解除状態とを容易に切り換えることができる。
【0041】
また、上記のように、本実施例の印刷装置1においては、キャリッジ4は、幅方向Bにおいて、ヘッド5によって媒体Mに記録を行うことが可能な記録領域と、記録領域から外れたホームポジションである待機位置と、に移動可能である。そして、ロック機構部100は、キャリッジ4がホームポジションに位置した状態において規制状態と規制解除状態とを切り換えることができる。このような構成とすることで、ホームポジションにキャリッジ4を確りと固定することが可能になり、例えば、規制状態においてキャリッジ4の幅方向Bにおける移動を効果的に抑制することができる。
【0042】
ここで、
図6などで表されるように、伝達歯車113は、伝達歯車113の回転軸方向に面する側面に嵌合部122が嵌合される被嵌合部113aが形成されている。また、切り換え機構120は、軸部121の第1方向P1における先端に嵌合部122を有している。そして、
図7などで表されるように、軸部121が第1方向P1に移動することで被嵌合部113aに嵌合部122が嵌合する構成となっている。このような構成とすることで、伝達機構112及び切り換え機構120の構成を簡単にすることができる。ただし、このような構成に限定されず、例えば、軸部121に伝達歯車113と嵌合可能な歯車を嵌合部として取り付け、軸部121が第1方向P1に移動することで軸部121に設けられた歯車の歯部と伝達歯車113の歯部とが嵌合する構成などとしてもよい。
【0043】
また、
図6及び
図7で表されるように、軸部121の第1方向P1における端部は、第1方向P1に進むにつれて細くなっている。このような構成とすることで、軸部121を第1方向P1に移動させやすくすることができる。
【0044】
また、
図6から
図9で表されるように、切り換え機構120は、軸部121の第1方向P1とは反対の第2方向P2の端部にユーザーが把持することが可能な把持部123を有している。切り換え機構120をこのような構成とすることで、ユーザーは把持部123を把持して軸部121の第1方向P1への移動や回転方向R1及び回転方向R2の回転を行うことができ、操作性を向上することができる。
【0045】
また、
図6及び
図7で表されるように、軸部121には突起部124が形成されるとともに、切り換え機構120を挿入可能なインクシステムユニット110の挿入口114には段差部115が形成されている。そして、
図6及び
図7で表されるように、軸部121の突起部124と挿入口114の段差部115との間に、捻じりコイルバネ130が取り付けられている。すなわち、本実施例の印刷装置1においては、切り換え機構120は、軸部121を第2方向P2に付勢する付勢部材としての捻じりコイルバネ130を有している。軸部121が第1方向P1へ移動し続けていると、嵌合部122が伝達歯車113に嵌合した状態が続くこととなり、嵌合部122と伝達歯車113とが擦れるなどして異音を発生させる虞やこれらの損傷を招く虞がある。しかしながら、このような構成とすることで、嵌合部122が伝達歯車113に嵌合した状態が続くことを抑制でき、異音の発生や嵌合部122及び伝達歯車113の損傷などを抑制することができる。
【0046】
なお、本実施例の印刷装置1においては、切り換え機構120を最大限第1方向P1へ移動させた場合に、把持部123がインクシステムユニット110に形成された壁部116に当接する構成となっている。すなわち、把持部123及び壁部116は、軸部121を第1方向P1に移動させすぎることを規制する規制部としての役割を兼ねている。このような構成とすることで、軸部121を第1方向P1に移動させすぎることで嵌合部122及び伝達歯車113が損傷するということなどを抑制することができる。
【0047】
本発明は、上述の実施例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。また、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施例中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0048】
1…印刷装置、2…保持部、3…媒体支持部、3A…媒体支持部、3B…媒体支持部、3C…媒体支持部、4…キャリッジ、5…ヘッド、6…保持部、7…脚部、8…ローラー対、9…本体部、10…送風部、11…気流加熱部、12…制御部、13…モーター、20…ヒーター、41…凸部、42…挿入スペース、100…ロック機構部、110…インクシステムユニット、111…棒状部材、112…伝達機構、113…伝達歯車、113a…被嵌合部、114…挿入口、115…段差部、116…壁部(規制部)、120…切り換え機構、121…軸部、122…嵌合部、123…把持部(規制部)、124…突起部、130…捻じりコイルバネ(付勢部材)、F…気流、M…媒体、M1…画像形成面、M2…被支持面、R1…ロール体、R2…ロール体、S1…領域、S2…領域