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特開2024-128375吹付ノズルの移動量の補正方法、及び、吹付信号補正器
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  • 特開-吹付ノズルの移動量の補正方法、及び、吹付信号補正器 図1
  • 特開-吹付ノズルの移動量の補正方法、及び、吹付信号補正器 図2
  • 特開-吹付ノズルの移動量の補正方法、及び、吹付信号補正器 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128375
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】吹付ノズルの移動量の補正方法、及び、吹付信号補正器
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/10 20060101AFI20240913BHJP
【FI】
E21D11/10 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037318
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】坂西 孝仁
(72)【発明者】
【氏名】尾畑 洋
(72)【発明者】
【氏名】宮川 克己
(72)【発明者】
【氏名】杉本 憲二
【テーマコード(参考)】
2D155
【Fターム(参考)】
2D155DB06
2D155LA15
(57)【要約】
【課題】吹付ノズルの移動量を、吹付機毎に適正に補正する。
【解決手段】
吹付機10に搭載されて対象物に吹付コンクリートを吹付ける吹付ノズル14の移動量を制御する吹付機コントローラ20に電気的に接続されて吹付機コントローラ20の出力信号を補正する吹付信号補正器30を、吹付ノズル14が取付けられる吹付機10の番号を入力する吹付機判別手段31と、番号が入力された吹付機10に取付けられたときの吹付ノズル14の移動量と予め設定された基準移動量との差または比を吹付機10の番号毎に記憶する記憶手段32と、吹付機コントローラ20の出力信号を補正する信号補正手段33とから構成し、前記の吹付機10の番号と吹付機10毎の基準移動量との差または比とを用いて吹付機コントローラ20の出力信号を補正して、吹付機10に設けられたノズル制御部17に送るようにした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吹付機に搭載されて対象物に吹付コンクリートを吹付ける吹付ノズルの移動量を補正する方法であって、
前記吹付ノズルの移動量の予め設定された基準移動量に対する差または比を、前記吹付ノズルが取付けられる吹付機の番号毎に記憶するステップと、
前記吹付ノズルが取付けられる吹付機の番号と、前記記憶された吹付機毎の吹付機毎の基準移動量との差または比を用いて、前記吹付ノズルの移動量を補正するステップと、
を備えたことを特徴とする吹付ノズルの移動量の補正方法。
【請求項2】
吹付機に搭載されて対象物に吹付コンクリートを吹付ける吹付ノズルの移動量を制御する吹付機コントローラに電気的に接続されて前記吹付機コントローラの出力信号を補正する吹付信号補正器であって、
前記吹付ノズルが取付けられる吹付機の番号を入力する手段と、
前記番号が入力された吹付機に取付けられたときの吹付ノズルの移動量と予め設定された基準移動量との差または比を前記吹付機の番号毎に記憶する記憶手段と、
前記出力信号を補正する補正手段と、を備え、
前記補正手段は、前記入力された吹付機の番号と前記記憶手段に記憶された吹付機毎の基準移動量との差または比とを用いて、前記出力信号を補正することを特徴とする吹付信号補正器。
【請求項3】
請求項2に記載の吹付信号補正器であって、前記吹付機に設けられて前記吹付ノズルの位置を制御するノズル制御部に外付けされていることを特徴とする吹付信号補正器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル壁面へのコンクリートを吹付ける吹付ノズルの移動量を補正する方法と、吹付ノズルの移動量の補正に用いられる吹付信号補正器に関する。
【背景技術】
【0002】
通常のコンクリート吹付作業においては、作業者が、吹付位置直下で吹付ロボットを操作することにより作業をしている。具体的には、作業者が吹付機を遠隔操作する遠隔操作装置(吹付機コントローラ)のリモコンボックスの操作杆を操作して、ブーム、スライダー、及び、ノズルホルダの移動・回転を制御してノズル位置を設定するとともに、吹付ノズルからコンクリートをトンネル壁面等に吹付けるようにしている(例えば、特許文献1参照)。操作杆からの出力信号は、吹付機本体に設けられた吹付制御盤からブーム駆動装置等の駆動装置に送られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-33911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、1台の吹付機コントローラを複数の吹付機の共通のコントローラとして用いた場合には、吹付機によっては、コントローラからの指令信号が同じでも、吹付ノズルの移動量が設定値と異なる場合があった。
【0005】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたもので、吹付ノズルの移動量を、吹付機毎に適正に補正する方法と、吹付ノズルの移動量を吹付機毎に補正する吹付信号補正器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、吹付機に搭載されて対象物に吹付コンクリートを吹付ける吹付ノズルの移動量を補正する方法であって、前記吹付ノズルの移動量の予め設定された基準移動量に対する差または比を、前記吹付ノズルが取付けられる吹付機の番号毎に記憶するステップと、前記吹付ノズルが取付けられる吹付機の番号と、前記記憶された吹付機毎の基準移動量との差または比とを用いて、前記吹付ノズルの移動量を補正するステップと、を備えたことを特徴とする。
これにより、1台の吹付機コントローラを用いても、吹付機に起因する吹付ノズルの移動量の誤差を大幅に低減することができる。
また、本発明は、吹付機に搭載されて対象物に吹付コンクリートを吹付ける吹付ノズルの移動量を制御する吹付機コントローラに電気的に接続されて前記吹付機コントローラの出力信号を補正する吹付信号補正器であって、前記吹付ノズルが取付けられる吹付機の番号を入力する手段と、前記番号が入力された吹付機に取付けられたときの吹付ノズルの移動量と予め設定された基準移動量との差または比を前記吹付機の番号毎に記憶する記憶手段と、前記出力信号を補正する補正手段と、を備え、前記補正手段は、前記入力された吹付機の番号と前記記憶手段に記憶された吹付機毎の吹付機毎の基準移動量との差または比とを用いて、前記出力信号を補正することを特徴とする。
このような構成を採ることにより、吹付ノズルの移動量を、吹付機に依らず適正に制御することができる。
また、吹付信号補正器を、前記吹付機に設けられて前記吹付ノズルの位置を制御するノズル制御部に外付けしたので、ノズル制御部の構成を変更することなく、吹付ノズルの移動量を適正に制御することができる。
【0007】
なお、前記発明の概要は、本発明の必要な全ての特徴を列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。この明細書において、コンクリートは、モルタルや吹付材料も含むものとする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施の形態に係る吹付機コントローラと吹付信号補正器を示す図である。
図2】本実施の形態に係る吹付機を示す図である。
図3】操作信号と補正信号の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1図2は本実施の形態を示す図で、各図において、10は吹付機、20は吹付機コントローラ、30は吹付信号補正器である。
吹付機10は、走行機構111やアウトトリガー機構112などを備えた吹付機本体11と、吹付機本体11の図示しない切羽側に設けられたブーム12と、ブーム12の上部側に設けられたスライダー13と、スライダー13の先端側に取付けられて、図示しないコンクリート圧送装置に接続された吹付ノズル14を搭載するノズルホルダ15とを備える。ブーム12、スライダー13、及び、ノズルホルダ15が吹付ノズル14の位置を設定するためのアーム装置16を構成する。
吹付機本体11には、アーム装置16を駆動して吹付ノズル14の位置を所定の吹付位置に移動させるためのノズル制御部17が設けられている。
ノズル制御部17は、接点リレーとマグネットスイッチから成り、操作信号によりON・OFFする吹付制御盤171と、ブーム駆動手段172と、スライダー駆動手段173と、ノズルホルダ駆動手段174とを備える。
ここで、図2の左右方向であるx軸方向をトンネルの軸方向(前後方向)、上下方向であるz軸方向を上下方向、同図の紙面に垂直な方向であるy軸方向をトンネル幅方向(左右方向)とする。
ブーム駆動手段172はブーム12を上下方向及び左右方向に回転させ、スライダー駆動手段173はスライダー13を前後方向に移動させる。また、ノズルホルダ駆動手段174は、ノズルホルダ15を上下方向及び左右方向に回転させることで、吹付ノズル14を上下方向及び左右方向に回転させる。
したがって、ブーム12とノズルホルダ15を上下、左右に回転させるととともに、スライダー13を前後に移動させることで、吹付ノズル14の位置と吹付コンクリートの吹付方向とを設定することができる。
コントローラコネクタ18は、当該制御盤171の外側に設けられた接続端子で、従来は、吹付機コントローラ20の信号ケーブル24が接続されていたが、本例では、吹付信号補正器30に接続されている。コントローラコネクタ18は、吹付信号補正器30からの操作信号を吹付制御盤171に送る。すなわち、吹付信号補正器30はノズル制御部17の吹付制御盤171に外付けされている。
【0010】
吹付機コントローラ20は、ブーム操作部21と、スライダー操作部22と、ノズルホルダ操作部23とを備えたコントロールボックスから構成される。
ブーム操作部21は、上,下,左,右の4方向の操作ボタンを有し、作業員40が、いずれかの操作ボタンを押すことで、ブーム12を上,下,左,右の4方向のいずれかに予め設定された所定の回転角度(例えば、5°)だけ回転させるための出力信号を吹付信号補正器30に出力する。出力信号は、信号ケーブル24を介して、吹付機コントローラ20から吹付信号補正器30に送られる。
また、本例では、図3(a)に示すように、出力信号を、所定の回転角度に対応するパルス幅T1を有するパルス信号とした。
スライダー操作部22は、前,後2方向の操作ボタンを有し、いずれかの操作ボタンを押すことで、スライダー13を前後方向のいずれかに予め設定された所定の移動量(例えば、210cm)だけ移動させるための出力信号が吹付信号補正器30に出力される。
ノズルホルダ操作部23は、上,下,左,右の4方向の操作ボタンを有し、いずれかの操作ボタンを押すことで、ノズルホルダ15を上,下,左,右の4方向のいずれかにあらかじめ設定された所定の角度(例えば、5°)だけ回転させるための出力信号を吹付信号補正器30に出力する。
スライダー操作部22からの出力信号も、ノズルホルダ操作部23からの出力信号も、ブーム操作部21からの出力信号と同様に、所定の移動量もしくは所定の回転角度に対応するパルス幅を有するパルス信号を出力する。
【0011】
吹付信号補正器30は、吹付機判別手段31と、記憶手段32と、信号補正手段33と、補正操作信号出力手段34とを備え、吹付機コントローラ20に電気的に接続されて、吹付機コントローラ20の出力信号である操作信号を補正した補正操作信号を出力する。
吹付機判別手段31は、予め登録されている複数の吹付機10の中から、吹付現場にて吹付機コントローラ20が制御する吹付機10を特定する。具体的には、吹付機10の番号に相当するバーコードが印刷された吹付機識別カード35を吹付機判別手段31に読取らせることで、使用する吹付機10を特定してもよいし、テンキーを用いて吹付機10の番号を入力することで、使用する吹付機10を特定してもよい。
記憶手段32は、予め登録されている複数の吹付機10(例えば、吹付機101~120)のそれぞれについて、操作ボタンを押したときのブーム12,スライダー13、ノズルホルダ15の目標回転角度もしくは目標移動量である基準移動量と、吹付機10の実際の移動量との比を記憶する。
例えば、吹付機107では、ブーム操作部21の操作ボタン(例えば、上方回転ボタン)を押すと、ブーム12は、例えば、5°だけ回転すべきところ、4°しか回転しなかったとすると、記憶手段32には、(n,r)=(107,0.8)というデータが記憶される。ここで、nは吹付機の番号、rは吹付機107のブーム12の移動量である回転角度(4°)の予め設定された基準移動量(5°)に対する比である。
【0012】
信号補正手段33は、吹付機判別手段31に入力された吹付機10の番号nと記憶手段32に記憶された吹付機毎の基準移動量との比rとを用いて、吹付機コントローラ20からの出力信号を補正した補正操作信号を作成する。
図3(a)に示すように、吹付機コントローラ20からの出力信号を、ブーム12の基準移動量(例えば、5°)に対応するパルス幅T1を有するパルス信号S1とする。
そして、吹付機107では、記憶手段32に記憶されたデータが(n,r)=(107,0.8)であるので、パルス信号S1をそのままノズル制御部17に送っても、ブーム12は4°しか回転しない。
信号補正手段33では、図3(b)に示すように、ノズル制御部17に送るパルス信号S1を、記憶手段32に記憶されたデータ(n,r)に基づいて補正した補正操作信号S2を作成する。具体的には、補正操作信号S2を、パルス幅T2がT2=(T1/r)であるパルスとすればよい。すなわち、補正操作信号S2をノズル制御部17に送れば、吹付機107のブーム12の回転角度を基準移動量である、5°に修正することができる。
スライダー13の移動量の補正も、ノズルホルダ15の回転角度の補正も、ブーム12の補正と同様に行うことができる。
補正操作信号出力手段34は、信号補正手段33で作成された補正操作信号をノズル制御部17に出力する。
【0013】
次に、吹付信号補正器30の動作について説明する。
なお、記憶手段32には、予め求めておいた吹付機10の番号nと吹付機10毎の基準移動量との比rとの関係が記憶されているものとする。
はじめに、使用する吹付機10の番号を吹付信号補正器30の吹付機判別手段31に入力する。
そして、信号補正手段33に吹付機コントローラ20から操作信号が入力されると、信号補正手段33は、記憶手段32に記憶されている、予め求めておいた吹付機10の番号nと吹付機10毎の実際の移動量と基準移動量との比rとの関係を用いて、吹付機コントローラ20の出力信号を補正して、吹付機10に設けられたノズル制御部17に送る。これにより、吹付機10に依存するノズル移動量のバラツキを大幅に低減できる。したがって、吹付信号補正器30を用いることにより、1台の吹付機コントローラ20で複数の吹付機10を精度よく操作することができる。
【0014】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に記載の範囲には限定されない。前記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者にも明らかである。そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲から明らかである。
【0015】
例えば、前記実施の形態では、吹付機判別手段31に入力された吹付機10の番号nと記憶手段32に記憶された吹付機毎の実際の移動量と基準移動量との比rとを用いて、吹付機コントローラ20からの出力信号を補正したが、吹付機毎の実際の移動量と基準移動量との差を用いて補正操作信号を作成してもよい。
また、前記実施の形態では、吹付機コントローラ20と吹付信号補正器30とを信号ケーブル24で接続したが、無線により接続してもよい。
また、前記実施の形態では、吹付機コントローラ20とノズル制御部17との間に吹付信号補正器30を設けたが、吹付信号補正器30を吹付機コントローラ20に内蔵させてもよい。この場合、信号ケーブル24からは、信号補正手段33で補正されて補正操作信号出力手段34から出力される補正操作信号が、コントローラコネクタ18を介して、ノズル制御部17の吹付制御盤171に送られる。
【符号の説明】
【0016】
10 吹付機、11 吹付機本体、111 走行機構、112 アウトトリガー機構、12 ブーム、13 スライダー、14 吹付ノズル、15 ノズルホルダ、
16 アーム装置、17 ノズル制御部、171 吹付制御盤、172 ブーム駆動手段、173 スライダー駆動手段、174 ノズルホルダ駆動手段、
18 コントローラコネクタ、
20 吹付機コントローラ、21 ブーム操作部、22 スライダー操作部、
23 ノズルホルダ操作部、24 信号ケーブル、
30 吹付信号補正器、31 吹付機判別手段、32 記憶手段、33 信号補正手段、34 補正操作信号出力手段、35 吹付機識別カード、40 作業員。
図1
図2
図3