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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128380
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】冷却器
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/36 20060101AFI20240913BHJP
【FI】
H01L23/36 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037324
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】弁理士法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】讃岐 育孝
(72)【発明者】
【氏名】中村 淳
(72)【発明者】
【氏名】内部 銀二
(72)【発明者】
【氏名】藤本 裕地
【テーマコード(参考)】
5F136
【Fターム(参考)】
5F136BA02
5F136CB07
5F136CB08
5F136DA27
5F136FA02
5F136FA03
5F136GA12
(57)【要約】
【課題】従来の冷却器に比較して高い放熱性能を有しながら、簡便に製造できる冷却器を提供する。
【解決手段】冷却器1は、発熱体に接触する第1面FSと第1面FSとは反対側の第2面SSとを含む冷却板10と、冷媒FLが流通する流路部24とを具備し、流路部24は、第2面SSに外壁面が対向した状態で当該第2面SSに沿って積層された複数の流路板22とを備え、複数の流路板22の各々には、開口部221が形成され、複数の流路板22にわたり開口部221が連通することで冷媒FLの流路Pが形成され、複数の流路板22のうち第1流路板における開口部221の内周面222と、複数の流路板22のうち第1流路板に隣接する第2流路板における開口部221の内周面222との間には、段差223が形成される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱体に接触する第1面と前記第1面とは反対側の第2面とを含む冷却板と、
冷媒が流通する流路部とを具備し、
前記流路部は、
前記第2面に外壁面が対向した状態で当該第2面に沿って積層された複数の流路板を備え、
前記複数の流路板の各々には、開口部が形成され、
前記複数の流路板にわたり前記開口部が連通することで冷媒の流路が形成され、
前記複数の流路板のうち第1流路板における前記開口部の内周面と、前記複数の流路板のうち前記第1流路板に隣接する第2流路板における前記開口部の内周面との間には、段差が形成される
冷却器。
【請求項2】
前記第1流路板の前記開口部の形状と、前記第2流路板の前記開口部の形状とは、互いに異なる、請求項1に記載の冷却器。
【請求項3】
前記開口部の内周面は、当該開口部の中心軸に対して傾斜する傾斜面である、請求項1に記載の冷却器。
【請求項4】
前記開口部内において、前記冷媒の下流側の開口は、前記冷媒の上流側の開口よりも大きい、請求項3に記載の冷却器。
【請求項5】
前記開口部内において、前記冷媒の上流側の開口は、前記冷媒の下流側の開口よりも大きい、請求項3に記載の冷却器。
【請求項6】
前記複数の流路板の各々には、前記開口部を含む複数の開口部が形成され、
前記複数の開口部の各々が前記複数の流路板にわたり連通することで、互いに並行する複数の流路が形成される
請求項1の冷却器。
【請求項7】
前記複数の流路板の各々には、当該流路板の表面に平行な第1方向及び第2方向にわたり前記複数の開口部が形成される
請求項6の冷却器。
【請求項8】
前記複数の流路板の各々は、長尺状の板状部材であり、
前記複数の流路板の各々において長辺に対応する前記外壁面が前記第2面に対向し、
前記複数の流路板の積層の厚さは、前記各流路板の長辺の長さを下回る
請求項1の冷却器。
【請求項9】
前記流路部を収容する収容空間と、前記収容空間に冷媒を供給するための供給管と、前記収容空間から冷媒を排出するための排出管とを含む筐体を具備し、
前記冷却板は、前記筐体に固定されることで前記収容空間を閉塞する
請求項1の冷却器。
【請求項10】
前記複数の流路板は、
前記第1流路板を含む複数の第1流路板と、
前記第2流路板を含む複数の第2流路板と、を含み、
前記複数の第1流路板の各々と前記複数の第2流路板の各々とは、前記第2面に沿って交互に積層される
請求項1の冷却器。
【請求項11】
前記複数の流路板の厚さが、互いに一致する、請求項1に記載の冷却器。
【請求項12】
前記複数の流路板は、互いに厚さが異なる少なくとも2枚の流路板を含む、請求項1に記載の冷却器。
【請求項13】
前記第1流路板の開口部の寸法と、前記第2流路板の開口部の寸法とは、互いに異なり、互いに同心である、請求項2に記載の冷却器。
【請求項14】
前記第1流路板の開口部の寸法と、前記第2流路板の開口部の寸法とは、互いに異なり、前記第1流路板の開口部の中心軸と、前記第2流路板の開口部の中心軸とは、互いに一致しない、請求項2に記載の冷却器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばパワー半導体モジュール等の発熱体を冷却するために、冷媒を用いた冷却器が用いられる。発熱体をより効率的に冷却するため、冷却器は、多穴管を備えることがある。しかし、多穴管を備える冷却器は、冷媒の流路が多数に分流されるため、冷媒の流速が低くなり、放熱性能が低くなる。
【0003】
例えば、特許文献1は、放熱性能を高めるため、多穴管を、冷媒の流れ方向に蛇行させる構成を有する冷却器を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許5423637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1で開示される冷却器は、多穴管が一体となって形成されているため、加工が困難であった。
【0006】
そこで、本発明は、従来の冷却器に比較して高い放熱性能を有しながら、簡便に製造できる冷却器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る冷却器は、発熱体に接触する第1面と前記第1面とは反対側の第2面とを含む冷却板と、冷媒が流通する流路部とを具備し、前記流路部は、前記第2面に外壁面が接触 対向した状態で当該第2面に沿って積層された複数の流路板とを備え、前記複数の流路板の各々には、開口部が形成され、前記複数の流路板にわたり前記開口部が連通することで冷媒の流路が形成され、前記複数の流路板のうち第1流路板における前記開口部の内周面と、前記複数の流路板のうち前記第1流路板に隣接する第2流路板における前記開口部の内周面との間には、段差が形成される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】冷却器1、及び冷却器1を含む半導体装置5の斜視図。
図2】ウォータージャケット20の構成を示す図。
図3】ウォータージャケット20の構成を示す図。
図4】流路部24の一部の断面図。
図5】領域R1の拡大図。
図6】冷却器1の断面図。
図7】領域R2の拡大図。
図8】流路部24Aの一部の断面図。
図9】領域R3の拡大図。
図10】冷却器1Aの断面図。
図11】領域R4の拡大図。
図12】流路部24Bの一部の断面図。
図13】冷却器1Cの断面図。
図14】流路部24Dの一部の断面図。
図15】流路部24Dの一部の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態に係る冷却装置について図面を参照して説明する。なお、各図において、各部の寸法及び縮尺は、実際のものと適宜に異ならせてある。また、以下に述べる実施形態は、好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本開示の範囲は、以下の説明において特に本開示を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0010】
1:第1実施形態
以下、図1図7を参照することにより、第1実施形態に係る冷却器について説明する。
【0011】
1-1:第1実施形態の構成
図1は、第1実施形態に係る冷却器1、及び冷却器1を含む半導体装置5の斜視図である。冷却器1は、冷却板10と、ウォータージャケット20とを備える。冷却板10は、ウォータージャケット20に載置される。冷却板10は、金属、とりわけ銅やアルミニウムなどの熱伝導率の比較的高い金属により構成されることが好適である。あるいは、冷却板10は、クラッド材により構成されてもよい。載置の方法は、例えば、TIM(Therfmal Interface Material)を介した接合が望ましい。あるいは、載置の方法は、例えば溶接によるものでもよい。
【0012】
冷却器1の内部には、冷却板10に接する発熱体を冷却することを目的に、粘性を有する液体の冷媒が流通する。冷媒を冷却器1に供給するための供給管71がウォータージャケット20に接続される。また、発熱体を冷却した後の冷媒を冷却器1から排出するための排出管72が、ウォータージャケット20に接続される。冷媒は図示しないポンプにより、冷却器1に供給される。
【0013】
なお、以降の説明では、相互に直交するX軸、Y軸及びZ軸を想定する。X軸、Y軸及びZ軸は、以降の説明で例示される全図において共通である。図1に例示される通り、任意の地点からみてX軸に沿う一方向をX1方向と表記し、X1方向と反対の方向をX2方向と表記する。X軸方向は、X1方向及びX2方向の両方向を含む方向である。同様に、任意の地点からY軸に沿って相互に反対の方向をY1方向及びY2方向と表記する。Y軸方向は、Y1方向及びY2方向の両方向を含む方向である。また、任意の地点からZ軸に沿って相互に反対の方向をZ1方向及びZ2方向と表記する。Z軸方向は、Z1方向及びZ2方向の両方向を含む方向である。
【0014】
図1において、冷却器1に冷媒FLが供給され、冷却器1から冷媒FLが排出される方向をY軸方向とする。また、冷却器1のウォータージャケット20の底面を水平面に設置することを仮定した場合に、当該水平面においてY軸に直交する方向をX軸方向とする。更に、X軸、及びY軸に直交する方向であって、冷却板10とウォータージャケット20との載置方向をZ軸方向とする。
【0015】
冷却器1においては、発熱体が冷却される。発熱体は、冷却器1による冷却の対象となる物体である。第1実施形態の発熱体は、複数の半導体モジュール50A~50Cである。ここで「半導体モジュール」とは、半導体素子(例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)又はMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)等のスイッチング素子を含む半導体チップ)を樹脂ケースに収容した半導体モジュールである。半導体装置5は、冷却器1と半導体モジュール50A~50Cとを備える。3個の半導体モジュール50A~50Cが、それぞれ3個の領域40A~40Cにおいて、冷却板10に接する。3個の領域40A~40Cは、冷却板10のZ1方向に位置する表面である第1面FSに含まれる。
【0016】
冷媒FLは、Y2方向から、供給管71を経由して、ウォータージャケット20に供給される。供給された冷媒FLは、冷却板10の領域40A~40Cに接する半導体モジュール50A~50Cを冷却する。半導体モジュール50A~50Cを冷却した後の冷媒FLは、ウォータージャケット20から、排出管72を経由してY1方向へと排出される。
【0017】
図2及び図3は、ウォータージャケット20の構成を示す図である。図2に示されるように、ウォータージャケット20は、筐体21を備える。筐体21には、収容空間23が設けられる。図2に示される例において、収容空間23は、直方体の形状を有する。また、ウォータージャケット20は、複数の流路板22A~22Hからなる流路部24を備える。複数の流路板22A~22Hの各々は、X軸方向を長手方向とする長尺の板状部材であることが好適である。また、複数の流路板22A~22Hの各々は、プレス加工等により製造されることが好適である。複数の流路板22A~22Hの長辺に対応し、Z1方向に位置する外壁面は、冷却板10のZ2方向に位置する表面である第2面SSに対向する。また、図3に示されるように、複数の流路板22A~22Hは、Y軸方向に積層する。複数の流路板22A~22Hの各々に備わるXZ平面に平行な表面が、互いに隙間なく接する状態で、複数の流路板22A~22Hの各々のZ1方向に位置する外壁面が、冷却板10に接合する。複数の流路板22A~22Hの各々と冷却板10との接合方法は、ろう付けであることが好適である。
【0018】
また、冷却板10が筐体21に固定されることで、収容空間23は閉塞される。複数の流路板22A~22Hが一体となった流路部24は、収容空間23内に設置される。流路部24のY軸方向の厚さは、各流路板22A~22HのX軸方向の長辺の長さを下回ることが好適である。
【0019】
複数の流路板22A~22Hの各々は金属製であることが好適である。しかし、複数の流路板22A~22Hの各々は金属製でなくてもよい。また、複数の流路板22A~22Hの板厚は互いに等しいことが好適である。しかし、複数の流路板22A~22Hの板厚は、互いに等しくなくてもよい。複数の流路板22A~22HのY軸方向の厚さは、1mm~2mm程度であることが好適である。しかし、当該厚さは、1mm~2mm程度に限定されない。また、複数の流路板22A~22Hの各々は、単一の部材によって構成されてもよく、複数の部材から構成されてもよい。例えば、複数の流路板22A~22Hの各々は、複数の1mm~2mmよりも薄い金属板を張り合わせることにより製造されてもよい。
【0020】
図3に示されるように、流路板22Aには、複数の開口部221Aが形成されることが好適である。例えば図3に示されるように、流路板22Aには、当該流路板22AのXZ平面に平行な表面において、X軸方向及びZ軸方向にわたり複数の開口部221Aが形成される。なお、X軸方向は「第1方向」の一例である。また、Z軸方向は「第2方向」の一例である。また、この場合、流路板22Aに形成される複数の開口部221Aは、格子状に整列することが好適である。しかし、複数の開口部221Aは、格子状に整列していなくてもよい。また、図3に示される例において、複数の開口部221Aは、X軸方向に17列、Z軸方向に4列並んでいる。しかし、流路板22Aに複数の開口部221Aが格子状に整列する場合、X軸方向の列数、及びZ軸方向の列数は、任意の列数としてよい。複数の開口部221Aの各々は円形である。流路板22B~22Hの各々についても、流路板22Aと同様に、複数の開口部221B~221Hが形成される。複数の流路板22B~22Hと、複数の開口部221B~221Hとは、互いに一対一に対応する。複数の開口部221B~221Hの各々も、複数の開口部221Aと同様に円形である。
【0021】
図4は、図2に示されるA-A線を通り、XY平面に平行な平面で切断した流路部24の一部の断面図である。図4に示されるように、開口部221A~221HがY軸方向に連通することにより、冷媒の流路P11~P18が形成される。具体的には、流路板22Aには、複数の開口部221Aが形成される。同様に、流路板22B~22Hの各々には、複数の開口部221B~221Hが形成される。複数の開口部221A~221Hの各々が、複数の流路板22A~22Hにわたり連通することで、互いに並行する複数の流路P11~P18が形成される。
【0022】
開口部221A~開口部221Hは、形状が互いに異なる開口部を含む。図4に示される例においては、開口部221A,221C,221E,及び221GのX軸方向の幅と、開口部221B,221D,221F,及び221HのX軸方向の幅とは互いに異なる。一例として、開口部221A,221C,221E,及び221GのX軸方向の幅は、1.0mm~1.8mmであることが好適である。一方、開口部221B,221D,221F,及び221HのX軸方向の幅は、1.1mm~2.0mmであることが好適である。開口部221A,221C,221E,及び221GのX軸方向の幅は、開口部221B,221D,221F,及び221HのX軸方向の幅に比較して、70%~90%であることが好適である。また、開口部221A,221C,221E,及び221GのXZ平面に平行な断面の断面積は、0.7mm~1.8mmであることが好適である。開口部221B,221D,221F,及び221HのXZ平面に平行な断面の断面積は、1.1mm~3.1mmであることが好適である。開口部221A,221C,221E,及び221GのXZ平面に平行な断面の断面積は、開口部221B,221D,221F,及び221HのXZ平面に平行な断面の断面積に比較して、49%~81%であることが好適である。
【0023】
また、流路P11において、開口部221A~221Hの各々の中心軸は、流路P11自体の中心軸CT11と一致する。流路P12~P18においても同様である。すなわち、開口部221A~221Hは互いに同心である。
【0024】
図4において、Y1方向からY2方向に向かって奇数番目の流路板である流路板22A,22C,22E,及び22Gは、「第1流路板」の一例である。具体的には、図4において、X軸方向の幅が相対的に小さな開口部221A,221C,221E,及び221Gが備わる流路板22A,22C,22E,及び22Gは、「第1流路板」の一例である。一方、Y1方向からY2方向に向かって偶数番目の流路板である流路板22B,22D,22F,及び22Hは、「第2流路板」の一例である。具体的には、X軸方向の幅が相対的に大きな開口部221B,221D,221F,及び221Hが備わる流路板22B,22D,22F,及び22Hは、「第2流路板」の一例である。複数の第1流路板の各々と、複数の第2流路板の各々とは交互に積層される。
【0025】
図5は、図4に示される領域R1の拡大図である。図5に示されるように、互いに隣接する開口部221Gの内径と、開口部221Hの内径とが互いに異なるため、開口部221Gの内周面222Gと、開口部221Hの内周面222Hとの間には、段差223が形成されている。開口部221Hにおいて、流路P11の中心軸CT11の近傍を通過する冷媒FL1は、開口部221Hから開口部221Gに直線的に移動する。一方、開口部221Hにおいて、中心軸CT11から離れた位置を通過する冷媒FL2及びFL3は、開口部221H内を内において、段差223に衝突する。この結果、段差223の近傍に乱流が発生する。
【0026】
図6は、図1の断面Cにおける冷却器1の断面図である。図6に示されるように、複数の開口部221A~221Hの各々はY軸方向に延在する。また、複数の開口部221A~221HがY軸方向に連通することにより、冷媒の流路P11~P41が形成される。より具体的には、複数の開口部221A~221Hの各々が、複数の流路板22A~22Hにわたり連通することで、互いに並行する複数の流路P11~P41が形成される。
【0027】
図6に示される例においては、開口部221A,221C,221E,及び221GのZ軸方向の幅と、開口部221B,221D,221F,及び221HのZ軸方向の幅とは互いに異なる。また、流路P11において、開口部221A~221Hの各々の中心軸は、流路P11自体の中心軸CT11と一致する。流路P21~P41においても同様である。
【0028】
図7は、図4に示される領域R2の拡大図である。図7に示されるように、互いに隣接する開口部221Gの内径と、開口部221Gの内径とが、互いに異なるため、開口部221Gの内周面222Gと、開口部221Hの内周面222Hとの間には、段差223が形成されている。開口部221Hにおいて、流路P11の中心軸CT11の近傍を通過する冷媒FL4は、開口部221Hから開口部221Gに直線的に移動する。一方、開口部221Hにおいて、中心軸CT11から離れた位置を通過する冷媒FL5及びFL6は、開口部221H内において、段差223に衝突する。この結果、段差223の近傍に乱流が発生する。
【0029】
乱流の発生によって、冷媒FL2、FL3、FL5及びFL6が段差223の近傍に流れ込み、単位量の冷媒FL2、FL3、FL5及びFL6が、段差223及び開口部221Hの内周面222Hに接触する面積が増加する。また、流体の温度層である温度境界層が、段差がないときに発生する厚い温度境界層と比べ、段差により流体が乱されることで、流路板22Hと冷媒FL2、FL3、FL5及びFL6との間に発生する温度境界層が薄くなる。この結果、流路板22G及び22Hにおける放熱性能が高まる。延いては、冷却器1全体での放熱性能が高まる。
【0030】
1-2:第1実施形態が奏する効果
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0031】
本実施形態に係る冷却器1は、発熱体に接触する第1面FSと第1面FSとは反対側の第2面SSとを含む冷却板10と、冷媒FLが流通する流路部24とを具備する。流路部24は、第2面SSに外壁面が対向した状態で当該第2面SSに沿って積層された複数の流路板22A~22Hを備える。複数の流路板22A~22Hの各々には、開口部221A~221Hが形成される。複数の流路板22A~22Hにわたり開口部221A~221Hが連通することで冷媒FLの流路Pが形成される。複数の流路板22A~22Hのうち流路板22Gにおける開口部221Gの内周面222Gと、複数の流路板22A~22Hのうち流路板22Gに隣接する流路板22Hにおける開口部221Hの内周面222Hとの間には、段差223が形成される。
【0032】
この構成によれば、従来の冷却器に比較して高い放熱性能を有しながら、簡便に製造できる冷却器1を提供できる。とりわけ、開口部221どうしが隣接する箇所に段差223を設けることにより、冷媒FLの乱流が発生することで放熱性能が高まる。また、複数の流路板22を積層することにより、当該冷却器1を簡便に製造できる。
【0033】
また、本実施形態に係る冷却器1において、第1流路板としての流路板22Gの開口部221Gの形状と、第2流路板としての流路板22Hの開口部221Hの形状とは、互いに異なる。
【0034】
この構成によれば、開口部221Gの形状と、開口部221Hとの形状を互いに異ならせることにより、流路板22Gにおける開口部221Gの内周面222Gと、流路板22Gに隣接する流路板22Hにおける開口部221Hの内周面222Hとの間に簡便に段差223を設けることができる。
【0035】
また、本実施形態に係る冷却器1において、複数の流路板22A~22Hの各々には、複数の開口部221A~221Hが形成される。複数の開口部221A~221Hの各々が複数の流路板22A~22Hにわたり連通することで、互いに並行する複数の流路Pが形成される。
【0036】
この構成によれば、各流路板22A~22Hにおける複数の開口部221A~221Hの各々が複数の流路板22A~22Hにわたり連通することで複数の流路Pが形成される。したがって、冷却板10の広範囲にわたり発熱体を冷却することが可能となる。
【0037】
また、本実施形態に係る冷却器1において、複数の流路板22A~22Hの各々には、当該流路板22A~22Hの表面に平行なX軸方向及びZ軸方向にわたり複数の開口部221A~221Hが形成される。
【0038】
この構成によれば、冷却板10の広範囲にわたり発熱体を冷却することが可能である。
【0039】
また、本実施形態に係る冷却器1において、複数の流路板22A~22Hの各々は、長尺状の板状部材である。複数の流路板22A~22Hの各々において長辺に対応する外壁面が、冷却板10の第2面SSに対向する。複数の流路板22A~22Hの積層の厚さは、各流路板22A~22Hの長辺の長さを下回る。
【0040】
この構成によれば、複数の流路板22A~22Hの積層の厚さが各流路板22A~22Hの長辺の長さを上回る構成と比較して、必要な流路板22A~22Hの枚数が削減される。したがって、冷却器1の製造が簡素化される。
【0041】
また、本実施形態に係る冷却器1は、流路部24を収容する収容空間23と、収容空間23に冷媒FLを供給するための供給管71と、収容空間23から冷媒FLを排出するための排出管72とを含む筐体21を具備する。冷却板10は、筐体21に固定されることで収容空間23を閉塞する。
【0042】
この構成によれば、冷却板10が、収容空間23を閉塞するための蓋部として利用される。流路部24が収容空間23に収容された状態で冷却板10を筐体21に固定する簡便な工程により、収容空間23を密閉できる。
【0043】
また、本実施形態に係る冷却器1は、流路板22Gを含む複数の第1流路板としての流路板22A,22C,22E,及び22Gと、流路板22Hを含む複数の第2流路板としての流路板22B,22D,22F,及び22Hと、を含む。複数の第1流路板としての流路板22A,22C,22E,及び22Gの各々と、複数の第2流路板としての流路板22B,22D,22F,及び22Hの各々とは、冷却板10の第2面SSに沿って交互に積層される。
【0044】
この構成によれば、第1流路板としての流路板22A,22C,22E,及び22Gと、第2流路板としての流路板22B,22D,22F,及び22Hとを交互に積層することにより、簡便に冷却器1を製造できる。
【0045】
また、本実施形態に係る冷却器1において、複数の流路板22A~22Hの厚さが、互いに一致する。
【0046】
この構成によれば、複数の流路板22A~22Hの厚さを等しくすることにより、冷却器1を簡便に製造できる。
【0047】
また、本実施形態に係る冷却器1において、第1流路板としての流路板22Gの開口部221Gの寸法と、第2流路板としての流路板22Hの開口部221Hの寸法とは、互いに異なり、互いに同心である。
【0048】
この構成によれば、流路板22Gの開口部221Gと流路板22Hの開口部221Hとを同心とすることにより、冷却器1を簡便に製造できる。
【0049】
2:第2実施形態
以下、図8図11を参照することにより、第2実施形態に係る冷却器について説明する。なお、以下では説明の簡略化のため、第2実施形態に係る冷却器が備える構成要素のうち、第1実施形態に係る冷却器1と同一の構成要素については、同一の符号を用いると共に、その機能の説明を省略することがある。
【0050】
第2実施形態に係る冷却器1A、及び冷却器1Aを含む半導体装置5Aの斜視図は、図1に示される第1実施形態に係る冷却器1、及び冷却器1を含む半導体装置5の斜視図と同一である。また、第2実施形態に係るウォータージャケット20Aの構成を示す図は、図2及び図3に示される第1実施形態に係るウォータージャケット20の構成を示す図と同一である。第2実施形態に係るウォータージャケット20Aは、第1実施形態に係るウォータージャケット20が備える流路部24の代わりに、流路部24Aを備える。
【0051】
図8は、図2に示されるA-A線を通り、XY平面に平行な平面で切断した流路部24Aの一部の断面図である。
【0052】
開口部221A~221Hは、形状が互いに同一である。また、開口部221A~221Hの内周面はテーパー状である。具体的には当該内周面は、開口部221A~221Hの中心軸CT11~CT18に対して傾斜する傾斜面となっている。開口部221A~221H内において、冷媒FLの下流側の開口は、冷媒FLの上流側の開口よりも断面積が大きい。
【0053】
図9は、図8に示される領域R3の拡大図である。図9に示されるように、互いに隣接する開口部221Gの内周面222Gと、開口部221Hの内周面222Hとの各々は、中心軸CT11に対して同様に傾斜するテーパー状である。この結果、開口部221Gの内周面222Gと、開口部221Hの内周面222Hとの間には、段差223が形成されている。開口部221Hにおいて、流路P11の中心軸CT11の近傍を通過する冷媒FL7は、開口部221Hから開口部221Gに直線的に移動する。一方、開口部221Hにおいて、中心軸CT11から離れた位置を通過するFL8及びFL9は、開口部221H内において、段差223に衝突する。この結果、段差223の近傍に乱流が発生する。
【0054】
図10は、図1の断面Cにおける冷却器1Aの断面図である。図10に示されるように、複数の開口部221A~221Hの各々はY軸方向に延在する。また、複数の開口部221A~221HがY軸方向に連通することにより、冷媒の流路P11~P41が形成される。より具体的には、複数の開口部221A~221Hの各々が、複数の流路板22A~22Hにわたり連通することで、互いに並行する複数の流路P11~P41が形成される。
【0055】
図11は、図10に示される領域R4の拡大図である。図11に示されるように、互いに隣接する開口部221Gの内周面222Gと、開口部221Hの内周面222Hとの各々は、中心軸CT11に対して同様に傾斜するテーパー状である。この結果、開口部221Gの内周面222Gと、開口部221Hの内周面222Hとの間には、段差223が形成されている。開口部221Hにおいて、流路P11の中心軸CT11の近傍を通過する冷媒FL10は、開口部221Hから開口部221Gに直線的に移動する。一方、開口部221Hにおいて、中心軸CT11から離れた位置を通過するFL11及びFL12は、開口部221H内において、段差223に衝突する。この結果、段差223の近傍に乱流が発生する。
【0056】
乱流の発生によって、冷媒FL11及び冷媒FL12が、段差223の近傍に流れ込み、単位量の冷媒FL8及び冷媒FL9が、段差223及び開口部221Hの内周面に接触する面積が増加する。また、流体の温度層である温度境界層が、段差がないときに発生する厚い温度境界層と比べ、段差により流体が乱されることで、流路板22Hと冷媒FL11及び冷媒FL12との間に発生する温度境界層が薄くなる。この結果、流路板22G及び22Hにおける放熱性能が高まる。延いては、冷却器1A全体での放熱性能が高まる。
【0057】
2-2:第2実施形態が奏する効果
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0058】
本実施形態に係る冷却器1Aにおいて、開口部221A~221Hの内周面222A~222Hは、当該開口部221A~221Hの中心軸CTに対して傾斜する傾斜面である。
【0059】
この構成によれば、開口部221A~221Hの内周面222A~222Hを傾斜面とすることにより、第1流路板としての流路板22Gにおける開口部221Gの内周面222Gと、流路板22Gに隣接する第2流路板としての流路板22Hにおける開口部221Hの内周面222Hとの間に簡便に段差を設けることができる。延いては、従来の冷却器に比較して高い放熱性能を有しながら、簡便に製造できる冷却器1Aを提供できる。
【0060】
また、本実施形態に係る冷却器1Aの開口部221A~221H内において、冷媒FLの下流側の開口は、冷媒FLの上流側の開口よりも大きい。
【0061】
この構成によれば、開口部221A~221H内で、冷媒FLの下流側の開口を、冷媒FLの上流側の開口よりも大きくすることにより、当該開口部221A~221H内の下流側に、冷媒FLの乱流を発生させることができる。
【0062】
3:変形例
本開示は、以上に例示した実施形態に限定されない。具体的な変形の態様を以下に例示する。
【0063】
3-1:変形例1
第1実施形態に係る冷却器1において、X軸方向の幅が相対的に小さな開口部221A,221C,221E,及び221Gを備える第1流路板と、X軸方向の幅が相対的に大きな開口部221B,221D,221F,及び221Hを備える第2流路板とは、交互に積層される。しかし、第1流路板と第2流路板とは交互に積層されなくてもよい。
【0064】
図12は、変形例1に係る冷却器1Bに備わる流路部24Bの一部の断面図の例である。図12に示されるように、第1流路板である流路板22Aと22Cの組、及び流路板22Eと22Gの組の各々が、互いに隣接する。また、第2流路板である流路板22B及び22Dの組、及び流路板22F及び22Hの組の各々が、互いに隣接する。更に、流路板22Aと22Cの組、流路板22B及び22Dの組、流路板22Eと22Gの組、及び流路板22F及び22Hの組が積層される。この結果、第1実施形態に係る流路部24Bに比較して、段差223の数が減少する。延いては、冷却器1Bのユーザは、必要とされる放熱性能に応じて、段差の数を調整できる。
【0065】
3-2:変形例2
第1実施形態に係る冷却器1に備わる流路P11において、開口部221A~221Hの各々の中心軸は、流路P11自体の中心軸CT11と一致する。流路P12~P18においても同様である。すなわち、冷却器1において、開口部221A~221Hは互いに同心である。しかし、開口部221A~221Hは互いに同心でなくてもよい。
【0066】
図13は、図1の断面Cにおける、変形例2に係る冷却器1Cの断面図である。冷却器1Cにおいて、複数の開口部221A~221Hは互いに同心ではない。図13に示される例において、複数の開口部221A~221Hは、各々の中心軸ではなく、各々の内周面222A~222HのZ1方向又はZ2方向に位置する端部が互いに一致する。複数の開口部221A~221Hの中心の位置をずらすことにより、流路P11~P41の発熱体側、又は流路P11~P41の発熱体と反対側をより肉厚とすることで、より放熱性能を高めることができる。また、図13に示される例においては、最もZ1方向に位置する開口部221A~221HのZ1方向及びZ2方向の端部の双方が互いに一致する。この結果、冷却板10に載置される放熱体が均一に冷却される。
【0067】
3-3:変形例3
第2実施形態に係る冷却器1Aに備わる開口部221A~221H内において、冷媒FLの下流側の開口は、冷媒FLの上流側の開口よりも大きい。しかし、開口部221A~221H内において、冷媒FLの下流側の開口と、冷媒FLの上流側の開口のうちいずれが大きくてもよい。
【0068】
図14は、変形例3に係る冷却器1Dに備わる流路部24Dの一部の断面図の例である。図14に示されるように、開口部221A~221H内において、冷媒FLの上流側の開口は、冷媒FLの下流側の開口よりも大きくてもよい。開口部221A~221H内で、冷媒FLの上流側の開口を、冷媒FLの下流側の開口よりも大きくすることにより、当該開口部221A~221H内の上流側に、冷媒FLの乱流を発生させることができる。
【0069】
図15は、変形例3に係る冷却器1Dに備わる流路部24Dの一部の断面図の更なる例である。図15に示されるように、流路板22A~22Hの各々において、開口部221A~221H内の、冷媒FLの上流側の開口を、冷媒FLの下流側の開口よりも大きくするか、冷媒FLの下流側の開口を、冷媒FLの上流側の開口よりも大きくするかを、流路板22A~22H毎に変化させてもよい。また、各々の流路板22A~22Hの中で、開口部221A~221H内の、冷媒FLの下流側の開口を、冷媒FLの上流側の開口よりも大きくするかを、開口部221A~221H毎に変化させてもよい。
【0070】
3-4:変形例4
第1実施形態に係る冷却器1、及び第2実施形態に係る冷却器1Aにおいて、複数の流路板22A~22Hは、互いに一致する。しかし、複数の流路板22A~22Hは、互いに厚さが異なる少なくとも2枚の流路板22を含んでもよい。
【0071】
複数の流路板22の板厚を異ならせることにより、冷媒FLの流速と、冷媒FLの乱流の発生の度合いとの兼ね合いから、冷却器1及び冷却器1Aのユーザは、複数の流路板22の板厚を最適な比率に設定できる。
【符号の説明】
【0072】
1,1A,1B,1C,1D…冷却器、5,5A…半導体装置、10…冷却板、20,20A…係るウォータージャケット、21…筐体、22,22A~22H…流路板、23…収容空間、24,24A~24D…流路部、40A~40C…領域、50A~50C…半導体モジュール、71…供給管、72…排出管、221,221A~221H…開口部、222A~222H…内周面、223…段差、CT11~CT41…中心軸、FL1~FL12…冷媒、P11~P41…流路、R1~R4…領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15