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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128383
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】オーラルケア製品
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/34 20060101AFI20240913BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20240913BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
A61K8/34
A61Q11/00
A61K8/37
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037329
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ボウ ニサ
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB052
4C083AC101
4C083AC102
4C083AC121
4C083AC122
4C083AC132
4C083AC181
4C083AC421
4C083AC422
4C083AC431
4C083AC432
4C083AC441
4C083AC862
4C083AD221
4C083AD531
4C083AD532
4C083BB04
4C083CC41
4C083DD01
4C083DD27
4C083EE01
(57)【要約】
【課題】最内層が直鎖状低密度ポリエチレンにより形成され、紫外線の透過を可能にする構造を少なくとも一部に有する容器に、口腔用組成物が充填されてなるオーラルケア製品であって、紫外線に晒されても使用時に不快な異味が発生するのを有効に抑制することができるオーラルケア製品に関する。
【解決手段】直鎖状低密度ポリエチレンにより形成されてなる最内層を備え、かつ紫外線透過率10%以上である領域を少なくとも一部に有する容器(X)に、口腔用組成物(Y)が充填されてなるオーラルケア製品であって、
口腔用組成物(Y)が、次の成分(A)~(C):
(A)エタノール(a1)、及びプロピレングリコール(a2)から選ばれる1種又は2種のアルコール 1質量%以上6質量%以下
(B)メントール
(C)ノニオン界面活性剤
を含有し、かつ成分(C)の含有量と成分(B)の含有量との質量比((C)/(B))が1.5以上15以下である、オーラルケア製品。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直鎖状低密度ポリエチレンにより形成されてなる最内層を備え、かつ紫外線透過率10%以上である領域を少なくとも一部に有する容器(X)に、口腔用組成物(Y)が充填されてなるオーラルケア製品であって、
口腔用組成物(Y)が、次の成分(A)~(C):
(A)エタノール(a1)、及びプロピレングリコール(a2)から選ばれる1種又は2種のアルコール 1質量%以上6質量%以下
(B)メントール
(C)ノニオン界面活性剤
を含有し、かつ成分(C)の含有量と成分(B)の含有量との質量比((C)/(B))が1.5以上15以下である、オーラルケア製品。
【請求項2】
成分(C)が、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、及びポリオキシエチレンアルキルエーテルから選択される1種又は2種以上である、請求項1に記載のオーラルケア製品。
【請求項3】
口腔用組成物(Y)において、成分(A)の含有量と成分(B)の含有量との質量比((A)/(B))が、3以上600以下である、請求項1又は2に記載のオーラルケア製品。
【請求項4】
容器(X)が、少なくとも本体部、及び口栓部から構成されてなり、かつ紫外線透過率10%以上である領域が口栓部における本体部との連設部位に設けられてなる、請求項1~3のいずれか1項に記載のオーラルケア製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器に口腔用組成物が充填されてなるオーラルケア製品に関する。
【背景技術】
【0002】
柔軟性や耐薬品性等に優れることで知られる直鎖状低密度ポリエチレンは、口腔用組成物を充填する容器の最内層を形成する材料として多用されている。そして、かかる容器に充填されてなる種々の口腔用組成物の開発がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1には、油性薬効成分、トリアシルグリセロール、ノニオン性界面活性剤、水、及び香料成分を特定の含有量及び質量比にて含有し、最内層が直鎖状低密度ポリエチレンであるチューブ容器に収容されている容器入り歯磨組成物が開示されており、油性薬効成分の容器への吸着防止や良好な香味の付与を図っている。また、特許文献2には、最内層が直鎖状低密度ポリエチレンからなるチューブ容器に、イソプロピルメチルフェノール、アニオン性界面活性剤、ノニオン界面活性剤、及びフッ素化合物を配合した歯磨組成物が充填されており、イソプロピルメチルフェノールの容器への吸着を抑制して安定化の向上を試みている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-231972号公報
【特許文献2】特開2016-199473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本発明者は、こうした最内層が直鎖状低密度ポリエチレンにより形成された容器に紫外線の透過が可能な領域が存在すると、紫外線に晒されることにより、充填物である組成物において、これを口腔内に適用した時に異味をもたらしてしまうことに新たに着目した。
通常、上記特許文献に記載されるような、口腔用組成物を充填する容器は、良好な保存安定性や耐候性等を確保し得るよう、不要に光に晒されることのない構成を備えている。したがって、これらの文献には、紫外線に晒されることにより発生し得る不具合についての検討は一切なされていない。一方、こうした発生し得る不具合に対し、本発明者により改善の余地があることが判明し、本発明を見出すに至ったものである。
【0006】
したがって、本発明は、最内層が直鎖状低密度ポリエチレンにより形成され、紫外線の透過を可能にする構造を少なくとも一部に有する容器に、口腔用組成物が充填されてなるオーラルケア製品であって、紫外線に晒されても使用時に不快な異味が発生するのを有効に抑制することができるオーラルケア製品に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、直鎖状低密度ポリエチレンにより形成されてなる最内層を備え、かつ一部の領域が高い紫外線透過率である容器に、特定の成分を特定の量的条件にて含有する口腔用組成物を充填することにより、紫外線に晒された後においても不快な異味の発生を抑制することができるオーラルケア製品が得られることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、直鎖状低密度ポリエチレンにより形成されてなる最内層を備え、かつ紫外線透過率10%以上である領域を少なくとも一部に有する容器(X)に、口腔用組成物(Y)が充填されてなるオーラルケア製品であって、
口腔用組成物(Y)が、次の成分(A)~(C):
(A)エタノール(a1)、及びプロピレングリコール(a2)から選ばれる1種又は2種のアルコール 1質量%以上6質量%以下
(B)メントール
(C)ノニオン界面活性剤
を含有し、かつ成分(C)の含有量と成分(B)の含有量との質量比((C)/(B))が1.5以上15以下である、オーラルケア製品を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明のオーラルケア製品であれば、最内層が直鎖状低密度ポリエチレンにより形成され、かつ高い紫外線透過率の領域を一部に有する容器に口腔用組成物が充填されて、紫外線に晒される状況でも、析出物の発生や含有成分の分離を抑制して良好な安定性を保持しつつ、使用時における不快な異味の発生を有効に抑制することができる。
したがって、かかる不快な異味の発生を懸念することなく、紫外線透過率の高い領域を容器に設ける自由度が増し、充填物である口腔用組成物の視認容易性や容器の操作性を高めて、オーラルケア製品の機能性向上を図ることも可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
なお、本発明において発生の抑制を図る、口腔用組成物がもたらし得る「異味」とは、紫外線に晒される条件において、容器の最内層を形成する直鎖状低密度ポリエチレン由来の不快感を伴うような味のほか、口腔用組成物における含有成分由来の不快な味をも含む意味である。
【0011】
本発明のオーラルケア製品を構成する容器(X)は、直鎖状低密度ポリエチレン(以下、「LLDPE」とも称する)により形成されてなる最内層を備え、かつ紫外線透過率10%以上の領域を少なくとも一部に有する。
すなわち、容器(X)は、10%以上もの高い紫外線透過率を有する領域を少なくとも一部に有することから、この領域を介して透過する紫外線に、充填物である口腔用組成物(Y)が晒されることとなる。
【0012】
本発明のオーラルケア製品を構成する容器(X)は、紫外線透過率10%以上である領域を少なくとも一部に有し、かかる領域における紫外線透過率は、好ましくは13%以上であってもよく、好ましくは18%以上であってもよく、より好ましくは20%以上であってもよい。上限値については、特に制限はないが、通常60%以下である。
【0013】
また、紫外線透過率10%以上である領域の、容器(X)の全域に占める割合は、かかる領域を設ける理由等により変動し得るが、容器(X)の、好ましくは1%以上であり、3%以上であってもよく、5%以上であってもよい。
【0014】
容器(X)の紫外線透過率10%以上である領域を設ける方法については、特に制限はなく、かかる領域のみ別の材料を用いて紫外線透過率10%以上である領域を形成してもよく、一旦形成した容器(X)にかかる領域を設けるための穴をあけた後に、かかる紫外線透過率10%以上である領域を形成してもよく、或いは容器全体の平均紫外線透過率を10%以上としてもよい。
また、容器(X)は、少なくとも口腔用組成物(Y)を収容するための本体部、及び容器を密閉するための口栓部の部材から構成されていてもよく、この場合、容器(X)における紫外線透過率10%以上である領域は、本体部の一部に形成されていてもよく、口栓部の一部に形成されていてもよく、或いは本体部と口栓部との双方に跨って形成されていてもよい。
なお、容器(X)において、紫外線透過率10%以上の領域を設けるにあたり、その理由には特に制限はなく、例えば、加工性を高める観点からであってもよく、容器(X)全体が呈する審美性の観点からであってもよく、或いはかかる領域を介することによる外界からの口腔用組成物(Y)の視認容易性や容器(X)の操作性向上の観点からであってもよい。
【0015】
また、紫外線透過率10%以上の領域の形状にも特に制限はなく、かかる領域を形成する部材に応じて適宜設計することができる。例えば、口栓部における本体部との連設部位にOリング状の領域として設けられていてもよく、また外界からの口腔用組成物(Y)の視認が可能になるよう、本体部の側面に窓のような帯状の領域として設けられていてもよい。
【0016】
なお、かかる容器(X)は、最内層が直鎖状低密度ポリエチレンにより形成されていればよく、さらに他の材料により形成された最外層や中間層とともに多層構造を有していてよい。
容器(X)が、最内層のほか最外層や中間層を含む多層構造を有する場合、これら最外層や中間層を形成する材料は、容器に付与する保存安定性や耐候性、加工性等を考慮して、適宜選択することができる。
【0017】
かかる最外層や中間層を形成する材料としては、具体的には、例えば、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレ-ト(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート(PC)、低密度ポリエチレン(LDPE)やポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン、エチレン-プロピレン共重合体(EP)、エチレン-オレフィン共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、ナイロン-6やナイロン-66等のポリアミド、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリイミド(PI)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエーテルスルフォン(PES)、未延伸ポリプロピレン(CPP)、二軸延伸ナイロン(ON)等が挙げられる。
または、アルミニウム等の金属薄膜、又は塩化ビニリデン(PVDC)、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)等の層に、アルミニウム、酸化アルミニウムやシリカ等の無機酸化物等を蒸着させた材料を用いてもよい。
【0018】
なお、このような各層を積層することによって容器(X)を多層構造とする場合、接着剤によるドライラミネーションや熱により接着させる熱ラミネーション等、常法によるラミネーション法を用いることができる。
【0019】
容器(X)は、好ましくは、自立性を付与するための部材として、さらに底面部を備えていてもよく、またさらに上面部を備えていてもよい。
容器(X)の具体的な態様としては、例えば、底面部、本体部、及び口栓部の部材により容器(X)が構成される場合であって、本体部の側面に口栓部が連接されてなる態様や、本体部の上端において本体部の表面と背面とにより口栓部を挟み込んでなる態様が挙げられる。さらに底面部、本体部、上面部、及び口栓部の部材によって容器(X)が構成される場合、かかる上面部の中央において口栓部を連設してなる態様が挙げられる。また、口栓部は、詰め替え用容器やハードカバーへの付け替え用容器のように、注出口にキャップを配設してなる部材であってもよく、口部に吐出機構を備えるポンプが連設されてなる部材であってもよい。
【0020】
容器(X)の具体的な形態としては、いわゆるパウチ容器、ガセット袋容器、ボトル容器等が挙げられる。
【0021】
本発明のオーラルケア製品を構成する口腔用組成物(Y)は、次の成分(A)~(C):
(A)エタノール(a1)、及びプロピレングリコール(a2)から選ばれる1種又は2種のアルコール 1質量%以上6質量%以下
(B)メントール
(C)ノニオン界面活性剤
を含有し、かつ成分(C)の含有量と成分(B)の含有量との質量比((C)/(B))が1.5以上15以下である。
このような口腔用組成物(Y)であれば、直鎖状低密度ポリエチレンにより形成されてなる最内層を備えつつ高い紫外線透過率の領域を少なくとも一部に有する容器(X)に充填されて、紫外線に晒される状況にあっても、良好な安定性を保持しつつ、使用時において不快な異味の発生を有効に抑制することができる。
【0022】
口腔用組成物(Y)は、成分(A)として、エタノール(a1)、及びプロピレングリコール(a2)から選ばれる1種又は2種のアルコールを1質量%以上6質量%以下含有する。このように、かかる成分(A)を極限られた量で含有することにより、後述する成分(B)及び成分(C)とも相まって、紫外線に晒されることによる不快な異味の発生を効果的に抑制することができる。
【0023】
成分(A)としては、エタノール(a1)を単独で含有してもよく、又はプロピレングリコール(a2)を単独で含有してもよく、エタノール(a1)とプロピレングリコール(a2)との双方を含有してもよい。なかでも、効果的に不快な異味の発生を抑制する観点から、エタノール(a1)を単独で含有するか、或いはプロピレングリコール(a2)を単独で含有することが好ましく、エタノール(a1)を単独で含有することがより好ましい。
【0024】
かかる成分(A)の含有量は、不快な異味の発生を有効に抑制する観点から、口腔用組成物(Y)中に、1質量%以上であって、好ましくは1.2質量%以上であり、より好ましくは1.5質量%以上であり、6質量%以下であって、好ましくは5.5質量%以下であり、好ましくは5質量%以下である。また、成分(A)の含有量は、口腔用組成物(Y)中に、合計で1質量%以上6質量%以下であって、好ましくは1.2~5.5質量%であり、より好ましくは1.5~5質量%である。
【0025】
口腔用組成物(Y)は、成分(B)として、メントールを含有する。本発明のオーラルケア製品であれば、良好な安定性を保持しつつ、紫外線に晒されることによる不快な異味の発生を効果的に抑制して、成分(B)由来の良好な香味を発現させることができる。
成分(B)の含有量は、口腔用組成物(Y)中に、好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.025質量%以上であり、さらに好ましくは0.035質量%以上であり、好ましくは0.3質量%以下であり、より好ましくは0.25質量%以下であり、さらに好ましくは0.2質量%以下であり、またさらに好ましくは0.13質量%以下である。また、成分(B)の含有量は、口腔用組成物(Y)中に、好ましくは0.01~0.3質量%であり、より好ましくは0.025~0.25質量%であり、さらに好ましくは0.035~0.2質量%であり、またさらに好ましくは0.035~0.13質量%である。
【0026】
口腔用組成物(Y)において、良好な安定性を保持しつつ、紫外線に晒されることによる不快な異味の発生を効果的に抑制し、良好な香味を発現させる観点から、成分(A)の含有量と成分(B)の含有量との質量比((A)/(B))は、好ましくは3以上であり、より好ましくは6以上であり、さらに好ましくは10以上であり、またさらに好ましくは25以上であり、好ましくは600以下であり、より好ましくは200以下であり、さらに好ましくは115以下であり、またさらに好ましくは75以下である。また、成分(A)の含有量と成分(B)の含有量との質量比((A)/(B))は、好ましくは3以上600以下であり、より好ましくは6~200であり、さらに好ましくは10~115であり、またさらに好ましくは25~75である。
【0027】
口腔用組成物(Y)は、成分(C)として、ノニオン界面活性剤を含有する。かかる成分を含有することにより、上記成分(B)との相まって、良好な安定性を保持しつつ、紫外線に晒されることによる不快な異味の発生を効果的に抑制することができる。
【0028】
成分(C)としては、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油;ミリスチン酸ポリグリセリル、ラウリン酸ポリグリセリル、ステアリン酸ポリグリセリル、オレイン酸ポリグリセリル等のグリセリン脂肪酸エステル;ショ糖脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、モノセチルグリセリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレンラノリン等のポリオキシエチレン誘導体;ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタンモノステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル;テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット等のポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル;ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノオレート等のポリエチレングリコール脂肪酸エステル;イソステアリルグリセリルエーテル等のアルキルグリセリルエーテルから選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
なかでも、成分(C)としては、効果的に不快な異味の発生を抑制する観点から、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、及びポリオキシエチレンアルキルエーテルから選択される1種又は2種以上が好ましく、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、グリセリン脂肪酸エステル、及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルから選択される1種又は2種以上がより好ましい。
【0029】
なお、成分(C)としてポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を含有させる場合、かかるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油のエチレンオキサイドの平均付加モル数は、40以下のものが好ましく、15~40のものが好ましく、20~40のものがより好ましい。
【0030】
口腔用組成物(Y)において、良好な安定性を保持しつつ、紫外線に晒されることによる不快な異味の発生を効果的に抑制し、成分(B)由来の良好な香味を発現させる観点から、成分(C)の含有量と成分(B)の含有量との質量比((C)/(B))は、1.5以上であって、好ましくは1.6以上であり、より好ましくは1.8以上であり、さらに好ましくは2以上であり、またさらに好ましくは2.5以上であり、15以下であって、好ましくは13以下であり、より好ましくは11以下であり、さらに好ましくは9以下である。また、成分(C)の含有量と成分(B)の含有量との質量比((C)/(B))は、1.5以上15以下であって、好ましくは1.6~13であり、より好ましくは1.8~11であり、さらに好ましくは2~9であり、またさらに好ましくは2.5~9である。
【0031】
口腔用組成物(Y)は、良好な安定性を保持しつつ、紫外線に晒されることによる不快な異味の発生を効果的に抑制して、成分(B)由来の良好な香味を発現させる観点から、さらにソルビトール、キシリトール、エリスリトール、還元パラチノース、マンニトール、マルチトール、及びグリセリンから選択される1種又は2種以上の多価アルコールを含有することが好ましい。
かかる多価アルコールの含有量は、口腔用組成物(Y)中に、好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは2質量%以上であり、さらに好ましくは3質量%以上であり、好ましくは40質量%以下であり、より好ましくは25質量%以下であり、さらに好ましくは10質量%以下である。また、多価アルコールの含有量は、口腔用組成物(Y)中に、好ましくは1~40質量%であり、より好ましくは2~25質量%であり、さらに好ましくは3~10質量%である。
【0032】
口腔用組成物(Y)において、良好な安定性を保持しつつ、紫外線に晒されることによる不快な異味の発生を効果的に抑制し、成分(B)由来の良好な香味を発現させる観点から、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、還元パラチノース、マンニトール、マルチトール、及びグリセリンから選択される1種又は2種以上の多価アルコールの含有量と成分(B)の含有量との質量比(多価アルコール/(B))は、好ましくは10以上であり、より好ましくは20以上であり、さらに好ましくは30以上であり、好ましくは100以下であり、より好ましくは90以下であり、さらに好ましくは80以下である。また、多価アルコールの含有量と成分(B)の含有量との質量比(多価アルコール/(B))は、好ましくは10~100であり、より好ましくは20~90であり、さらに好ましくは30~80である。
【0033】
口腔用組成物(Y)は、水を含有する。本発明における水とは、口腔用組成物(Y)に配合した精製水等だけでなく、配合した各成分に含まれる水分をも含む、口腔用組成物(Y)中に含まれる全水分を意味する。かかる水を含有することにより、含有する上記各成分を良好に溶解又は分散させて、所望の効果を充分に発揮させることができる。
【0034】
具体的には、口腔用組成物(Y)が洗口液や液状歯磨剤等の液体口腔用組成物である場合、かかる水の含有量は、口腔用組成物(Y)中に、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは80質量%以上であり、好ましくは99.7質量%以下であり、より好ましくは99.5質量%以下であり、さらに好ましくは99.4質量%以下である。また、口腔用組成物(Y)が洗口液や液状歯磨剤等の液体口腔用組成物である場合、かかる水の含有量は、口腔用組成物(Y)中に、好ましくは50~99.8質量%であり、より好ましくは70~99.5質量%であり、さらに好ましくは80質量%~99.4質量%である。
さらに、口腔用組成物(Y)が練歯磨剤や粉歯磨剤等の歯磨組成物である場合、かかる水の含有量は、口腔用組成物(Y)中に、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは10質量%以上であり、好ましくは60質量%以下であり、より好ましくは55質量%以下である。また、口腔用組成物(Y)が練歯磨剤や粉歯磨剤等の歯磨組成物である場合、かかる水の含有量は、好ましくは5~60質量%であり、より好ましくは10~55質量%である。
【0035】
なお、口腔用組成物(Y)が練歯磨剤や粉歯磨剤等の歯磨組成物である場合、その水分量は、配合した水分量及び配合した成分中の水分量から計算によって算出することもできるが、例えばカールフィッシャー水分計で測定することができる。カールフィッシャー水分計としては、例えば、微量水分測定装置(平沼産業社製)を用いることができる。この装置では、口腔用組成物(Y)を5gとり、無水メタノール25gに懸濁させ、この懸濁液0.02gを分取して水分量を測定することができる。
【0036】
口腔用組成物(Y)は、本発明の効果を阻害しない範囲で、さらに成分(B)以外の香料化合物を含有することができる。
かかる香料化合物としては、具体的には、例えば、Steffen Arctander編著“Perfume and Flavor Chemicals” Montclair, N.J.(U.S.A.) (1969年)、合成香料編集委員会編集「合成香料-化学と商品知識」(化学工業日報社、2016年12月20日、増補新版)、中島基貴編著「香料と調香の基礎知識」産業図書(1995年初版)等に記載されている香料化合物が挙げられる。
【0037】
口腔用組成物(Y)は、本発明の効果を阻害しない範囲で、上記成分以外の成分として、アニオン界面活性剤、及び両性界面活性剤から選ばれる1種又は2種以上の界面活性剤;フッ化物;トコフェロール酢酸エステル、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸ジカリウム等の薬効成分;塩化セチルピリジニウム等の抗菌剤;サッカリンナトリウム等の甘味料;着色剤等を含有することができる。
【0038】
口腔用組成物(Y)の25℃におけるpHは、良好な安定性を保持しつつ、紫外線に晒されることによる不快な異味の発生を効果的に抑制して、快適な使用感を付与する観点から、好ましくは4.5以上であり、より好ましくは5.0以上であり、さらに好ましくは6.0以上であり、好ましくは10.0以下であり、より好ましくは8.0以下であり、さらに好ましくは7.5以下である。
【実施例0039】
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明する。なお、表中に特に示さない限り、各成分の含有量は質量%を示す。
【0040】
[実施例1~11、比較例1~9]
表1~2に示す処方にしたがい、各口腔用組成物を調製した。次いで、得られた口腔用組成物(pH7)を下記容器内に充填し、オーラルケア製品を得た。
得られたオーラルケア製品を用い、下記方法にしたがって各評価を行った。
結果を表1~2に示す。
【0041】
《容器》
底面部、本体部、上面部、及び口栓部の部材によって構成されてなるパウチ容器(最内層:LLDPE、中間層:ナイロン/アルミ蒸着PET、最外層:PET)を用いた。かかる容器の上面部の中央には口栓部が連設されてなり、かかる連設部位に紫外線透過率15%のOリング状の領域を有していた。
【0042】
《安定性の評価》
得られた各オーラルケア製品について、口腔用組成物の外観を目視により観察し、下記基準にしたがって評価を行った。
数値が低いほど、安定性が高いと評価できる。
0:透明であり、かつ均一な状態であった
1:僅かに白濁してはいたが、均一な状態であった
2:析出物の生成、又は含有成分の分離が確認された
【0043】
《異味の評価》
得られた各オーラルケア製品について、紫外線フェードメーター(ATLAS Ci4000、東洋精機製作所社製)を用い、24時間、及び48時間にわたり紫外線を照射する試験(照度300~400nm(60W/m2)、庫内温度(40℃)、湿度(75%))を行った。
次いで、紫外線の照射から24時間及び48時間経過した時点で、オーラルケア製品から口腔用組成物を10g取り出し、専門パネラーにより口腔内に適用して官能評価を行い、その結果を下記基準にしたがって点数化した。
かかる官能評価は、専門パネラー3名により行い、下記基準にしたがって得られた点数結果の合計値を異味の最終評価の指標とした。
【0044】
・官能評価の点数化
4:異味をはっきりと感じ、かなり不快であった
3:異味を感じ、不快であった
2:異味をやや感じ、若干不快であった
1:極わずかに異味を感じたものの、不快ではなかった
0:異味を全く感じることなく、快適であった
・異味の最終評価
A:点数の合計値が3点未満
B:点数の合計値が3点以上6点未満
C:点数の合計値が6点以上9点未満
D:点数の合計値が9点以上
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【手続補正書】
【提出日】2024-06-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直鎖状低密度ポリエチレンにより形成されてなる最内層を備え、かつ紫外線透過率10%以上である領域を少なくとも一部に有する容器(X)に、口腔用組成物(Y)が充填されてなるオーラルケア製品であって、
口腔用組成物(Y)が、次の成分(A)~(C):
(A)エタノール(a1)、及びプロピレングリコール(a2)から選ばれる1種又は2種のアルコール 1質量%以上6質量%以下
(B)メントール
(C)ノニオン界面活性剤
を含有し、かつ成分(C)の含有量と成分(B)の含有量との質量比((C)/(B))が1.5以上15以下である、オーラルケア製品。
【請求項2】
成分(C)が、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、及びポリオキシエチレンアルキルエーテルから選択される1種又は2種以上である、請求項1に記載のオーラルケア製品。
【請求項3】
口腔用組成物(Y)において、成分(A)の含有量と成分(B)の含有量との質量比((A)/(B))が、3以上600以下である、請求項1又は2に記載のオーラルケア製品。
【請求項4】
容器(X)が、少なくとも本体部、及び口栓部から構成されてなり、かつ紫外線透過率10%以上である領域が口栓部における本体部との連設部位に設けられてなる、請求項1又は2に記載のオーラルケア製品。