(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128385
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】ガス吸収分光装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/39 20060101AFI20240913BHJP
G01N 21/3504 20140101ALI20240913BHJP
【FI】
G01N21/39
G01N21/3504
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037332
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂本 隼規
(72)【発明者】
【氏名】川嶋 悠太
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA01
2G059BB01
2G059CC04
2G059EE01
2G059FF04
2G059GG01
2G059HH01
2G059JJ01
2G059JJ14
2G059KK01
2G059MM01
2G059MM09
2G059MM10
(57)【要約】
【課題】キャビティリングダウン分光法に用いられるリングダウン信号のSN比を向上させる。
【解決手段】ガス吸収分光装置(1)は、レーザ光源(10)と、音響光学変調器(20)と、共振器(40)と、信号検出器(60)と、リングダウン信号の減衰時定数に基づいて共振器(40)に充填されたガス中の目的成分の濃度を計測するコントローラ(70)とを備える。音響光学変調器(20)は、1次光を共振器(40)に出力するオン状態と、1次光を共振器(40)に出力せずに0次光を外部に放出するオフ状態とに切り替えられる。ガス吸収分光装置(1)は、音響光学変調器(20)の0次光の強度を検出するタイミング検出器(80)をさらに備える。コントローラ70は、タイミング検出器(80)の出力信号に基づいてリングダウン信号の始点を決定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビティリングダウン分光法を用いてガス中の目的成分を計測するガス吸収分光装置であって、
少なくとも2つのミラーを含む共振器と、
前記共振器に照射するためのレーザ光を発する光源と、
前記共振器から取り出される光を検出する第1検出器と、
前記光源と前記共振器との間の光路に配置され、前記光源からのレーザ光を前記共振器へ出力するオン状態と、前記光源からのレーザ光を前記共振器へ出力しないオフ状態とに切り替えられる音響光学変調器と、
前記音響光学変調器が前記オン状態から前記オフ状態に切り替えられた後の前記第1検出器の出力信号を前記目的成分の計測に用いるリングダウン信号として取得する制御部とを備え、
前記音響光学変調器は、前記オン状態では1次光を前記共振器に出力し、前記オフ状態では0次光を外部に放出し、
前記ガス吸収分光装置は、前記0次光の強度を検出する第2検出器をさらに備え、
前記制御部は、前記第2検出器の出力信号に基づいて前記リングダウン信号の始点を決定する、ガス吸収分光装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記音響光学変調器が前記オン状態である状態で前記第1検出器の出力信号が第1しきい値に達した場合に前記音響光学変調器を前記オフ状態に切り替え、
前記音響光学変調器を前記オフ状態に切り替えた後であってかつ前記第2検出器による検出値が予め定められた始点条件を満たしたタイミングを前記リングダウン信号の始点とする、請求項1に記載のガス吸収分光装置。
【請求項3】
前記始点条件は、前記第2検出器の出力信号が第2しきい値に達したという条件である、請求項2に記載のガス吸収分光装置。
【請求項4】
前記第2検出器の出力信号を微分した値を出力する微分回路をさらに備え、
前記始点条件は、前記微分回路の出力信号が予め定められた態様で変化したという条件である、請求項2に記載のガス吸収分光装置。
【請求項5】
前記0次光の波長を検出する波長検出装置をさらに備える、請求項1~4のいずれかに記載のガス吸収分光装置。
【請求項6】
二酸化炭素の放射性同位体である14CO2の濃度を計測可能に構成される、請求項1~4のいずれかに記載のガス吸収分光装置。
【請求項7】
前記共振器に充填されたガスに飽和吸収が発生しており、
前記制御部は、前記共振器に充填されたガスによる飽和吸収を利用したキャビティリングダウン分光法を用いて、前記目的成分の濃度を計測する、請求項1~4のいずれかに記載のガス吸収分光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガス吸収分光法の一種であるキャビティリングダウン分光法(CRDS:Cavity Ring-Down absorption Spectroscopy)を用いてガス中の目的成分の濃度を求めるためのガス吸収分光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス吸収分光法の1つとして、キャビティリングダウン分光法(CRDS)が知られている。CRDSとは、高反射率ミラーを含んで構成された共振器(キャビティ)を用いてガスによる光吸収のための実効光路長を長くすることにより、当該ガスに含まれる目的成分の濃度を高感度に求める分光手法である。CRDSでは、共振器内に光(レーザ光)が蓄積された後に共振器に入力される光が遮断され、光を遮断した際に発生するリングダウン信号(ミラーの反射漏れによる損失およびガスによる光吸収によって減衰する光強度信号)の減衰時定数から、ガスに含まれる目的成分の濃度が計測される。具体的には、共振器内に微量のガスを導入したとき、レーザ光の波数とガスの吸収波数とが一致するとガスにより光吸収が起こり、リングダウン信号の減衰時間が短くなる。この原理を利用して、リングダウン信号の減衰時定数から、ガスに含まれる目的成分の濃度が計測される。リングダウン信号の減衰時定数は、光強度の不安定性に左右されないため、高精度の濃度計測が実現できる。
【0003】
リングダウン信号を生成するためのスイッチング(共振器に入力される光の遮断)は、リングダウン信号の減衰時間よりも早い応答速度が必要である。そのため、リングダウン信号を生成するのためのスイッチングは、通常、高速スイッチング素子である音響光学変調器(AOM:Acousto-Optic Modulator)を用いて行われている。具体的には、共振器の後方に設置された信号検出器で共振器から取り出される光の強度を常時モニタし、信号検出器の出力信号がしきい値を超えた時に音響光学変調器に遮断信号を送信して音響光学変調器を光遮断状態にすることによって、リングダウン信号を生成させている(たとえば非特許文献1ご参照)。
【0004】
また、飽和吸収を利用したキャビティリングダウン分光法が知られている(たとえば特許文献1、非特許文献2ご参照)。飽和吸収を利用したキャビティリングダウン分光法では、飽和吸収は非線形な吸収であることを利用して、リングダウン信号から、共振器による減衰時定数とガス吸収による減衰時定数とを同時に別々に計測することができる。これにより、飽和吸収を利用したキャビティリングダウン分光法では、レーザ光源や共振器の不安定性の影響を抑えて更に高感度な計測ができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】"A cavity ring-down spectrometer for study of biomedical radiocarbon-labeled samples", Journal of Applied Physics 124, 033101 (2018); doi: 10.1063/1.5041015
【非特許文献2】IACOPO GALLI et al., "Spectroscopic detection of radiocarbon dioxide at parts-per-quadrillion sensitivity", Vol.3, No.4/April 2016/Optica
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、CRDSでは、信号検出器の出力信号がしきい値を超えた時に音響光学変調器に遮断信号を送信して音響光学変調器を光遮断状態にすることによって、リングダウン信号を計測(生成)している。
【0008】
リングダウン信号の計測は、共振器に入力される光を完全に遮断した状態で行なう必要がある。ところが、音響光学変調器に遮断信号を送信してから音響光学変調器が実際に光を完全に遮断するまでにはタイムラグ(時間分布)が存在する。その対策として、従来においては、信号検出器の出力信号がしきい値を超えた時から予め定められた遅れ時間(一定時間)が経過した時点を、リングダウン信号の始点としていた。
【0009】
しかしながら、上記の遅れ時間を用いる従来手法では、音響光学変調器による光遮断を検出するものではないため、音響光学変調器が確実に光を遮断していることを担保するために遅れ時間を長めに設定せざるを得ず、リングダウン信号の始点が、実際に光遮断が開始されるタイミングよりも遅れてしまう。その結果、光遮断直後の強度の大きい部分の信号がリングダウン信号に含まれなくなり、リングダウン信号のSN比(signal-to-noise ratio、信号雑音比)が悪化してしまう傾向にあった。
【0010】
この発明はこのような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、キャビティリングダウン分光法に用いられるリングダウン信号のSN比を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示によるガス吸収分光装置は、キャビティリングダウン分光法を用いてガス中の目的成分を計測するガス吸収分光装置であって、少なくとも2つのミラーを含む共振器と、共振器に照射するためのレーザ光を発する光源と、共振器から取り出される光を検出する第1検出器と、光源と共振器との間の光路に配置され、光源からのレーザ光を共振器へ出力するオン状態と、光源からのレーザ光を共振器へ出力しないオフ状態とに切り替えられる音響光学変調器と、音響光学変調器がオン状態からオフ状態に切り替えられた後の第1検出器の出力信号を目的成分の計測に用いるリングダウン信号として取得する制御部とを備える。音響光学変調器は、オン状態では1次光を共振器に出力し、オフ状態では0次光を外部に放出する。ガス吸収分光装置は、0次光の強度を検出する第2検出器をさらに備える。制御部は、第2検出器の出力信号に基づいてリングダウン信号の始点を決定する。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、キャビティリングダウン分光法に用いられるリングダウン信号のSN比を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】ガス吸収分光装置の全体構成を模式的に示す図(その1)である。
【
図2】AOMの回折光パワーおよび信号検出器の出力信号の波形の一例を模式的に示す図(その1)である。
【
図3】コントローラの処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図4】AOMの回折光パワーおよび信号検出器の出力信号の波形の一例を模式的に示す図(その2)である。
【
図5】AOMの0次光強度の1次微分値を出力する微分回路の一例を示す図である。
【
図6】AOMの0次光強度の1次微分値の波形の一例を模式的に示す図である。
【
図7】ガス吸収分光装置の全体構成を模式的に示す図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下では図中の同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さないものとする。
【0015】
<システム構成>
図1は、本実施の形態によるガス吸収分光装置1の全体構成を模式的に示す図である。ガス吸収分光装置1は、ガス(試料ガス)に含まれる目的成分による光吸収をキャビティリングダウン分光法(CRDS)により計測可能に構成される。なお、本実施の形態によるガス吸収分光装置1は、炭素の質量が異なった3種類の二酸化炭素の同位体(
12CO
2,
13CO
2,
14CO
2)のうちの
14CO
2の存在比を定量することを想定している。なお、
14CO
2の天然存在比(=
14CO
2/(
12CO
2+
13CO
2+
14CO
2))は10
-12のオーダーであり、非常に低濃度である。
【0016】
ガス吸収分光装置1は、レーザ光源10と、アイソレータ15と、音響光学変調器(AOM)20と、共振器モード結合用光学系30と、共振器40と、ミラーM1,M2と、信号検出器60と、コントローラ70とを備える。
【0017】
レーザ光源10は、共振器40に照射するためのレーザ光を発する。レーザ光源10は、コントローラ70からの指令に従ってレーザ光の発振周波数を可変に構成されている。具体的には、レーザ光源10は、分布帰還型の量子カスケードレーザ(QCL:Quantum Cascade Laser)11と、レーザドライバ12とを含む。QCL11は、たとえば中心発振波数2200cm-1程度(波長4.5μm程度)のレーザ光を発する。レーザドライバ12は、コントローラ70からの指令に従ってQCL11に駆動電流を供給する。QCL11への駆動電流を変更することにより、QCL11の発振波数を0.2cm-1程度掃引することができ、12CO2,13CO2,14CO2の吸収線をカバーしている。
【0018】
アイソレータ15は、レーザ光源10と共振器40との間の光路に設けられている。レーザ光源10の直後にアイソレータ15を配置することによって、戻り光に由来するレーザ波数の不安定化を防ぐことができる。
【0019】
AOM20は、レーザ光源10と共振器40との間の光路に設けられている。AOM20は、コントローラ70からの指令に従って、レーザ光源10から共振器40へのレーザ光の照射と遮断とを切り替える。
【0020】
AOM20は、光を照射するための指令(以下「AOMオン信号」ともいう)がコントローラ70から印加されることによって、1次光を共振器40に出力するオン状態となる。なお、AOM20がオン状態であるときのAOM20の1次光回折効率は約85%であり、2次より高次の回折はほぼ存在しない。したがって、AOM20がオン状態であるときは、レーザ光源10からAOM20に入力される光のうち、約85%が1次光として共振器40に出力されて共振器40内に蓄積されていき、残りの約15%は0次光(AOM20内で回折せずにそのまま透過する光)として外部に放出される。
【0021】
AOM20は、光を遮断するための指令(以下「AOMオフ信号」ともいう)がコントローラ70から印加されることによって、1次光を共振器40に出力しないオフ状態となる。すなわち、AOM20がオフ状態であるときには、AOM20の1次光回折効率は約0%となり、AOM20から共振器40に照射されるレーザ光(1次光)が遮断される。言い換えれば、AOM20がオフ状態であるときは、レーザ光源10からAOM20に入力される光の約100%が0次光として外部に放出される。
【0022】
AOM20がオン状態である場合、AOM20の1次光は、共振器モード結合用光学系30を通過した後、ミラーM1,M2で反射されて共振器40に入力される。共振器モード結合用光学系30は、1つ以上のレンズもしくは放物面ミラーを含んで構成され、共振器40の内部でレーザ光がビームウエストを結ぶように調整する。
【0023】
共振器40は、AOM20と信号検出器60との間の光路に設けられている。共振器40は、試料ガスを密閉可能な容器(セル)を含んで構成され、計測開始前に試料ガスを内部に導入するための導入管44と、計測終了後に試料ガスを外部に排出するための排出管45とを有する。導入管44には導入バルブ46が設けられている。排出管45には排出バルブ47が設けられている。導入バルブ46および排出バルブ47の開閉もコントローラ70により制御可能である。
【0024】
さらに、共振器40の内部には、一対のミラー41,42が備えられる。ミラー41,42は、共振器40の内部において光が互いの間で反射するように対向して配置されている。各ミラー41,42には、共振器40の安定条件を満たし易くするため、凹面になったものが採用される。また、各ミラー41,42には、共振器40の外部に漏れ出す光が極めて微弱になるように高反射率(たとえば99.9%程度)のものが採用される。共振器40の共振器長(ミラー41,42間の光軸方向の距離)は、たとえば450mm程度である。なお、共振器40の内部に配置されるミラーの数は、2つに限定されるものではなく、3つ以上であってもよい。つまり、光が互いの間で反射するようにミラーが配置された共振器であってもよいし、一方向に反射するようにミラーがリング状に配置された共振器であってもよい。
【0025】
ミラー41には、ピエゾ素子(圧電素子)43が配置されている。ピエゾ素子43は、コントローラ70からの指令に従って、共振器40を構成するミラー41を駆動することで、ミラー41を光軸方向に変位させる。これにより、共振器40の共振器長を変更することができる。したがって、レーザ波数に一致するように共振器長を可変させたり、また、共振器長に一致するようにレーザ波数を掃引したりすることができる。なお、ミラー41ではなくミラー42にピエゾ素子が配置されていてもよいし、ミラー41およびミラー42の両方にピエゾ素子が配置されていてもよい。
【0026】
信号検出器60は、フォトダイオードまたはイメージセンサなどの光検出器である。信号検出器60は、共振器40のミラー42から取り出された微弱な透過光を共振器40の出力光として検出し、その検出結果を示す信号(検出信号)をコントローラ70に出力する。信号検出器60には、たとえば液体窒素冷却InSb(インジウムアンチモン)検出器を採用することができる。
【0027】
コントローラ70は、CPU(Central Processing Unit)またはFPGA(Field-Programmable Gate Array)などのプロセッサ71と、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)などのメモリ72と、入出力ポート(図示せず)とを含む。
【0028】
コントローラ70は、ガス吸収分光装置1を構成する各機器を制御する。具体的には、コントローラ70は、レーザ光の発振周波数を走査するための指令をレーザドライバ12に出力したり、上述のAOMオン信号あるいはAOMオフ信号をAOM20に出力したりする。コントローラ70は、試料ガスを共振器40の内部に導入するための指令を導入バルブ46に出力したり、試料ガスを共振器40の外部に排出するための指令を排出バルブ47に出力したりする。コントローラ70は、ミラー41を変位させるための電圧をピエゾ素子43に印加する。また、コントローラ70は、試料ガスに含まれる目的成分の濃度(絶対濃度)を信号検出器60からの検出信号に基づいて算出するための各種データ処理を実行する。
【0029】
なお、コントローラ70は、機能毎に2以上のユニットに分割して構成されていてもよい。たとえば、コントローラ70は、各機器を制御するユニットと、各種データ処理を実行するユニットとに分割されていてもよい。
【0030】
<キャビティリングダウン分光法(CRDS)による計測原理>
ガス吸収分光装置1におけるキャビティリングダウン分光法(CRDS)による計測原理について簡単に説明する。一般に、共振器には、共振器に照射される光の周波数が特定の周波数である場合に共振が生じるとの共振条件が存在する。共振器40に照射されるレーザ光の周波数が共振器40の共振条件を満たす場合、レーザ光源10からのレーザ光のパワーが共振器40内に蓄えられていく。
【0031】
コントローラ70は、レーザ光のパワーが共振器40内に十分に蓄積されたか否かを、信号検出器60の出力信号(共振器40の出力光)によって判定する。コントローラ70は、共振器40の出力光が予め定められたしきい値th1に達した時に、レーザ光のパワーが共振器40内に十分に蓄積されたと判定して、AOMオフ信号をAOM20に出力する。これにより、共振器40に入力される光がAOM20によって遮断される。そうすると、共振器40内に蓄えられていた光は、ミラー41とミラー42との間を多数回(通常、数千~数万回)往復する。この光は、ミラー41,42の間を往復するうちに、ミラー41,42の反射漏れによる損失、および試料ガス中の目的成分による吸収によって、徐々に減衰する。そのため、ミラー42から漏れ出る共振器40の出力光は、徐々に減衰する。CRDSでは、光が試料ガスを通過する距離(実行光路長)を共振器40を用いて長くすることで、目的成分による光吸収が極めて僅かであっても、その光吸収を検出できる。
【0032】
コントローラ70は、共振器40に入力される光をAOM20によって遮断した後の信号検出器60の出力信号を「リングダウン信号」として取得し、取得されたリングダウン信号の減衰時定数を「リングダウン時間」として算出する。コントローラ70は、算出されたリングダウン時間から、試料ガスに含まれる目的成分の濃度を算出する。
【0033】
コントローラ70は、信号検出器60の出力信号を例えば0.2μsec間隔で取得し、取得された信号検出器60の出力信号からリングダウン時間を算出する。共振器40の内部にレーザ光を吸収するガス成分が存在しない時、リングダウン時間は、共振器40による減衰時定数となるため、概ね一定の値となる。一方、共振器40の内部にレーザ光を吸収するガス成分が存在する場合、リングダウン時間は、ガス成分の濃度に応じて変動する値となる。この点を利用して、目的成分の濃度を定量することができる。
【0034】
なお、現実的には光フリンジノイズ(エタロン効果)によりリングダウン時間はレーザ波数に対して一定とはならない。そのため、各レーザ光の波数においてリングダウン信号を繰り返し算出することで、レーザ波数とリングダウン信号との対応関係を示す吸収スペクトルを得ることができる。吸収スペクトルの形状と既知のガス吸光度とを比較することにより、目的成分の濃度を定量することができる。
【0035】
<リングダウン信号の始点>
上述のように、共振器40に入力される光をAOM20によって遮断した後の信号検出器60の出力信号が「リングダウン信号」として取得(生成)される。
【0036】
リングダウン信号の始点は、AOM20による完全な光遮断が実際に開始されるタイミングであることが望ましい。ところが、コントローラ70からAOM20にAOMオフ信号を送信してからAOM20が実際に光を完全に遮断するまでには、タイムラグが存在する。そのため、従来においては、AOMオフ信号の送信タイミングから一定の遅れ時間が経過したタイミングを、リングダウン信号の始点としていた。
【0037】
しかしながら、上記の遅れ時間を用いる従来手法では、リングダウン信号のSN比(signal-to-noise ratio)が悪化してしまう傾向にあった。以下、この点についてより詳しく説明する。
【0038】
図2は、AOM20の回折光パワーおよび信号検出器60の出力信号の波形の一例を模式的に示す図である。時刻t1よりも前においては、AOM20がオン状態であり、AOM20の1次光が共振器40に入力されている。これにより、共振器40内に光が蓄積されて、それに伴って信号検出器60の出力信号が増加していく。
【0039】
信号検出器60の出力信号がしきい値th1に達する時刻t1にて、共振器40内に十分に光が蓄積されたと判定されて、AOMオフ信号がAOM20に出力される。これにより、1次光は減少し始め、その後の時刻t2にて完全にオフ(0%)になる。この時刻t2において共振器40に新たに入力されるレーザ光が完全に遮断される。したがって、リングダウン信号の始点は時刻t2であることが望ましい。
【0040】
しかしながら、AOMオフ信号がAOM20に出力される時刻t1から実際に共振器40に新たに入力されるレーザ光が完全に遮断される時刻t2までにはタイムラグが存在する。このライムラグを考慮し、従来においては、時刻t1から予め定められた遅れ時間(一定時間)が経過した時刻t3を、リングダウン信号の始点としていた。
【0041】
ところが、上記のような遅れ時間を用いる従来手法では、AOM20が確実に光を遮断していることを担保するために遅れ時間を長めに設定せざるを得ず、リングダウン信号の始点が、AOM20による光遮断が実際に開始されるタイミングよりも遅れてしまう傾向にあった。その結果、光遮断直後の強度の大きい時刻t2から時刻t3での信号がリングダウン信号に含まれなくなり、リングダウン信号のSN比が悪化してしまう傾向にあった。
【0042】
このような問題を解決するために、本実施の形態においては、AOM20から放出される0次光の強度に基づいて、リングダウン信号の始点を決定する。具体的には、本実施の形態によるガス吸収分光装置1は、AOM20の0次光を検出するための構成として、ミラーM3およびタイミング検出器80を備える。
【0043】
AOM20の0次光は、ミラーM3で反射してタイミング検出器80に入力される。タイミング検出器80は、信号検出器60と同様、フォトダイオードまたはイメージセンサなどの光検出器である。信号検出器60は、AOM20の0次光の強度を検出し、その検出結果を示す信号をコントローラ70に出力する。
【0044】
時刻t1よりも前においては、AOM20がオン状態であり、レーザ光源10からAOM20に入力される光のうちの、約85%が1次光、残りの約15%が0次光となる。
【0045】
時刻t1にてAOMオフ信号がAOM20に出力されると、1次光が減少し始め、0次光が増加し始める。1次光がゼロになる時刻t2にて、0次光は、レーザ光源10が出力するレーザ光の強度とほぼ同じレベルに達する。
【0046】
この点に鑑み、コントローラ70は、タイミング検出器80の出力信号(0次光の強度)に基づいて、1次光がゼロになったか否かを判定する。たとえば、コントローラ70は、タイミング検出器80の出力信号(0次光の強度)が、レーザ光源10が出力するレーザ光の強度とほぼ同じしきい値th2に達した時刻t2を、リングダウン信号の始点とする。
【0047】
図3は、コントローラ70がリングダウン信号の始点を決定する際に行なう処理手順の一例を示すフローチャートである。このフローチャートは、AOM20にAOMオン信号が出力した時点で開始される。
【0048】
まず、コントローラ70は、共振器40の出力光強度(信号検出器60の出力信号)を取得する(ステップS10)
次いで、コントローラ70は、共振器40の出力光強度がしきい値th1に達したか否かを判定する(ステップS11)。出力光強度がしきい値th1に達していない場合(ステップS11においてNO)、コントローラ70は、処理をステップS10に戻す。
【0049】
出力光強度がしきい値th1に達した場合(ステップS11においてYES)、コントローラ70は、AOMオフ信号をAOM20に出力する(ステップS12)。
【0050】
その後、コントローラ70は、AOM20の0次光強度(タイミング検出器80の出力信号)を取得する(ステップS13)。
【0051】
次いで、コントローラ70は、0次光強度がしきい値th2に達したか否かを判定する(ステップS14)。0次光強度がしきい値th2に達していない場合(ステップS14においてNO)、コントローラ70は、処理をステップS13に戻す。
【0052】
0次光強度がしきい値th2に達した場合(ステップS14においてYES)、コントローラ70は、0次光強度がしきい値th2に達した時点をリングダウン信号の始点とする(ステップS15)。
【0053】
以上のように、本実施の形態によるガス吸収分光装置1には、AOM20から放出される0次光強度を検出するタイミング検出器80が備えられる。コントローラ70は、タイミング検出器80の出力信号がしきい値th2に達した時点を、リングダウン信号の始点とする。これにより、従来のような遅れ時間を用いる従来手法に比べて、リングダウン信号の始点を、AOM20による完全な光遮断が実際に開始されるタイミングにより近づけることができる。その結果、リングダウン信号のSN比を向上させることができるので、濃度計測精度をより向上させることができる。
【0054】
本実施の形態によるレーザ光源10、AOM20、共振器40、信号検出器60、コントローラ70、およびタイミング検出器80は、本開示の「光源」、「音響光学変調器」、「共振器」、「第1検出器」、「制御部」、および「第2検出器」にそれぞれ対応し得る。
【0055】
<変形例1>
上述の実施の形態においては、AOM20の0次光強度に基づいてリングダウン信号の始点を決定する手法を、飽和吸収を利用しないキャビティリングダウン分光法(CRDS)に適用する例について説明した。しかしながら、上述の手法は、飽和吸収を利用したCRDSに適用可能である。
【0056】
非線形な吸収現象である飽和吸収は、共振器内部に蓄積された光のパワー密度を高くすることで発生し易くなるので、レーザ光パワーを上げること、およびレーザ光の共振器結合率を上げることが重要となる。したがって、飽和吸収を安定的に発生させるためには、レーザ発振波数を安定させ、共振器結合率を安定させる必要がある。レーザ波数を安定化させる手法としては、たとえばPDH(Pound Drever Hall)法などを適用することが望ましい。
【0057】
図4は、本変形例1によるガス吸収分光装置1における、AOM20の回折光パワーおよび信号検出器60の出力信号の波形の一例を模式的に示す図である。本変形例1によるガス吸収分光装置1は、試料ガス中に含まれる目的成分の濃度を、飽和吸収を利用したキャビティリングダウン分光法により計測する。本変形例1によるガス吸収分光装置1のその他の構成は、上述の実施の形態によるガス吸収分光装置1と同じである。
【0058】
上述のように、飽和吸収は、共振器40内の光のパワー密度が高い場合に発生し易くなる。飽和時にはガスによる光吸収率が低下しているため、リングダウン信号の強度が大きいときには、リングダウン信号の減衰成分は、通常吸収による減衰と共振器40による減衰とが中心となる。
【0059】
飽和吸収が起きている時間はガス濃度に対して吸収量が小さくなり、飽和吸収が起きていない時間は通常吸収のみになる。そのため、
図4に示すように、飽和ありの場合のリングダウン信号の波形は、飽和吸収が起きている時間では飽和なしの場合のリングダウン信号の波形に比べて僅かに上に凸となり、その後、飽和なしの場合のリングダウン信号の波形と同一になる。そのため、この両信号の差分を計測することで、共振器40による減衰時定数とガス吸収による減衰時定数とを同時に別々に計測することができ、光フリンジノイズを分離して計測できる。上記差分を精度よく計測するためには、AOM20による光遮断直後のSN比が高い状態(飽和吸収が起きている時間)の信号をより多く取得することが有効である。したがって、AOM20の0次光強度に基づいてリングダウン信号の始点を決定する手法は、飽和吸収を利用したCRDSに非常に有効である。
【0060】
<変形例2>
上述の実施の形態においては、AOM20の0次光強度がしきい値th2に達したことを条件としてリングダウン信号の始点を決定する例について説明した。しかしながら、リングダウン信号の始点を決定する条件はこれに限定されない。
【0061】
レーザ光源10が発するレーザ光の発振波数を掃引するためにはQCL11に供給する駆動電流を掃引する必要があるため、駆動電流の掃引に伴ってレーザ光源10が発するレーザ光の強度も変化する。そのため、たとえAOM20がオン状態あるいはオフ状態に固定されていたとしても、AOM20の0次光強度は常に一定値とはならない。
【0062】
この点を考慮し、AOM20の0次光強度の1次微分値を求め、0次光強度の1次微分値が予め定められた態様で変化したことを条件として、リングダウン信号の始点を決定するようにしてもよい。
【0063】
図5は、AOM20の0次光強度の1次微分値を出力する微分回路の一例を示す図である。
図5に示すような微分回路は、入力端子T1にAOM20の0次光強度を示す電圧信号が入力されることで、AOM20の0次光強度の1次微分値を示す電圧信号を出力端子T2から出力する。
【0064】
図6は、AOM20の0次光強度の1次微分値の波形の一例を模式的に示す図である。
図5に示す微分回路の出力信号が
図6に示すような態様で変化した場合に、AOM20の1次光が遮断されたと判定することができる。たとえば、コントローラ70は、微分回路の出力信号(0次光強度の1次微分値)が単調増加した後に単調減少し、かつしきい値を下回った場合に、AOM20の1次光が完全に遮断されたと判定するようにしてもよい。
【0065】
<変形例3>
上述のガス吸収分光装置1においては、狭い波長範囲内に存在する複数の吸収線の強度をモニタする必要がある。また、発振波長のドリフトあるいはゆらぎによりレーザ波長が一定とはならないため、レーザ波長を常時モニタする必要がある。
【0066】
従来においては、レーザ光の一部をビームスプリッタ等を用いて部分的に取り出し、吸収波長が既知のガスセルを透過したレーザ光の強度を計測して、現在のレーザ波長を算出していた。しかしながら、従来においては、レーザ光の一部を取り出す必要があるため、共振器へ入力されるレーザ光が減少する。よって、共振器の出力光強度が低下してしまい、濃度計測の下限に影響を与えるとの課題があった。
【0067】
そこで、濃度計測には影響のないAOM20の0次光を利用してレーザ波長を計測するようにしてもよい。
【0068】
図7は、本変形例3によるガス吸収分光装置1Aの全体構成を模式的に示す図である。本変形例3によるガス吸収分光装置1Aは、上述のガス吸収分光装置1に、波長検出装置90を追加したものである。ガス吸収分光装置1Aのその他の構成は、上述のガス吸収分光装置1と同じである。
【0069】
波長検出装置90は、波長検出セル91と、波長検出器92とを備える。波長検出セル91には、たとえばN2Oが充填されたセルが用いられる。N2Oは、14CO2定量のために必要な波数掃引範囲内に複数のピークが存在するため、絶対波長の計測に適する。なお、波長検出セル91に、N2Oおよびその他のガスを含んだセルが用いられてもよい。
【0070】
波長検出器92は、たとえばInAsSb(インジウム-ヒ素-アンチモン)検出器である。波長検出器92は、波長検出セル91を透過したAOM20の0次光の波長を検出する。
【0071】
以上のように、AOM20の0次光を利用してレーザ波長を計測するようにしてもよい。このようにすることで、濃度計測に影響を与えることなく、レーザ波長を計測することができる。すなわち、AOM20がオン状態である場合、レーザ光源10からAOM20に入力される光の85%は1次光として共振器40に出力されるが、残りの15%は0次光として外部に放出される。この点に鑑み、AOM20がオン状態である状態でAOM20から放出される15%の0次光の波長を波長検出装置90で検出することによって、1次光をスプリッタ等で別途分光することなく、共振器40に入力される1次光の波長を検出することができる。
【0072】
なお、波長検出装置90は、波長検出セルを含まない構成であってもよい。たとえば、レーザ光源10と図示しない参照用レーザ光源との間で構成された干渉計あるいは光ヘテロダイン検波により構成された波長検出器であってもよい。
【0073】
[態様]
上述した実施の形態およびその変形例は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0074】
(第1項) 本開示によるガス吸収分光装置は、キャビティリングダウン分光法を用いてガス中の目的成分を計測するガス吸収分光装置であって、少なくとも2つのミラーを含む共振器と、共振器に照射するためのレーザ光を発する光源と、共振器から取り出される光を検出する第1検出器と、光源と共振器との間の光路に配置され、光源からのレーザ光を共振器へ出力するオン状態と、光源からのレーザ光を共振器へ出力しないオフ状態とに切り替えられる音響光学変調器と、音響光学変調器がオン状態からオフ状態に切り替えられた後の第1検出器の出力信号を目的成分の計測に用いるリングダウン信号として取得する制御部とを備える。音響光学変調器は、オン状態では1次光を共振器に出力し、オフ状態では0次光を外部に放出する。ガス吸収分光装置は、0次光の強度を検出する第2検出器をさらに備える。制御部は、第2検出器の出力信号に基づいてリングダウン信号の始点を決定する。
【0075】
第1項に記載のガス吸収分光装置においては、音響光学変調器がオン状態からオフ状態に切り替えられた場合、音響光学変調器の1次光(共振器に入力される光)は減少してゼロになる一方、音響光学変調器の0次光は、1次光の減少に伴って増加し、1次光がゼロになったときに最大となる。このような特性に鑑み、第1項に記載のガス吸収分光装置においては、音響光学変調器の0次光の強度を検出する第2検出器が備えられ、第2検出器の出力信号に基づいてリングダウン信号の始点が決定される。これにより、0次光の強度に基づいて共振器に入力される1次光が完全に遮断されたか否かを判定し、共振器に入力される1次光が完全に遮断されたタイミングをリングダウン信号の始点とすることができる。そのため、従来のように第1検出器の出力信号(共振器の出力光強度)がしきい値を超えた時から一定の遅れ時間が経過したタイミングをリングダウン信号の始点とする場合に比べて、リングダウン信号の始点を、音響光学変調器による完全な光遮断が実際に開始されるタイミングにより近づけることができる。その結果、リングダウン信号のSN比を向上させることができる。
【0076】
(第2項) 第1項に記載のガス吸収分光装置において、制御部は、音響光学変調器がオン状態である状態で第1検出器の出力信号が第1しきい値に達した場合に音響光学変調器をオフ状態に切り替え、音響光学変調器をオフ状態に切り替えた後であってかつ第2検出器による検出値が予め定められた始点条件を満たしたタイミングをリングダウン信号の始点とする。
【0077】
第2項に記載のガス吸収分光装置によれば、第1検出器の出力信号(共振器の出力光)が第1しきい値に達した場合に、共振器内に十分な光が蓄積されたと判定して、音響光学変調器をオフ状態に切り替えることができる。そして、音響光学変調器がオフ状態に切り替えらることによって音響光学変調器から放出される0次光強度が予め定められた始点条件を満たした時点を、リングダウン信号の始点とすることができる。
【0078】
(第3項) 第2項に記載のガス吸収分光装置において、始点条件は、第2検出器の出力信号が第2しきい値に達したという条件である。
【0079】
第3項に記載のガス吸収分光装置によれば、第2検出器の出力信号(0次光の強度)が第2しきい値に達した時点を、共振器に入力される光が完全に遮断されたタイミングと判定して、リングダウン信号の始点とすることができる。
【0080】
(第4項) 第2項に記載のガス吸収分光装置は、第2検出器の出力信号を微分した値を出力する微分回路をさらに備える。始点条件は、微分回路の出力信号が予め定められた態様で変化したという条件である。
【0081】
第4項に記載のガス吸収分光装置によれば、0次光の強度の微分値が予め定められた態様で変化した時点を、共振器に入力される光が完全に遮断されたタイミングと判定して、リングダウン信号の始点とすることができる。
【0082】
(第5項) 第1~4項のいずれかに記載のガス吸収分光装置は、0次光の波長を検出する波長検出装置をさらに備える。
【0083】
第5項に記載のガス吸収分光装置において、0次光の波長を波長検出装置で検出することによって、1次光をスプリッタ等で分光することなく、共振器に入力される光の波長を検出することができる。
【0084】
(第6項) 第1~4項のいずれかに記載のガス吸収分光装置は、二酸化炭素の放射性同位体である14CO2の濃度を計測可能に構成される。
【0085】
第6項に記載のガス吸収分光装置によれば、14CO2の濃度を計測することができる。
【0086】
(第7項) 第1~4項のいずれかに記載のガス吸収分光装置において、共振器に充填されたガスに飽和吸収が発生している。制御部は、共振器に充填されたガスによる飽和吸収を利用したキャビティリングダウン分光法を用いて、目的成分の濃度を計測する。
【0087】
第7項に記載のガス吸収分光装置によれば、飽和吸収によるリングダウン信号の推移をより適切に計測することができる。
【0088】
今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0089】
1,1A ガス吸収分光装置、10 レーザ光源、12 レーザドライバ、15 アイソレータ、30 共振器モード結合用光学系、40 共振器、41,42,M1~M3 ミラー、43 ピエゾ素子、44 導入管、45 排出管、46 導入バルブ、47 排出バルブ、60 信号検出器、70 コントローラ、71 プロセッサ、72 メモリ、80 タイミング検出器、90 波長検出装置、91 波長検出セル、92 波長検出器。