(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128387
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】ウインドレギュレータ試験方法及びウインドレギュレータ試験装置
(51)【国際特許分類】
E05F 15/689 20150101AFI20240913BHJP
G01M 17/007 20060101ALN20240913BHJP
B60J 1/17 20060101ALN20240913BHJP
E05F 15/686 20150101ALN20240913BHJP
【FI】
E05F15/689
G01M17/007 Z
B60J1/17 A
E05F15/686
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037334
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000146434
【氏名又は名称】株式会社城南製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾山 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】高橋 智道
(72)【発明者】
【氏名】金井 秀聡
(72)【発明者】
【氏名】若林 明
【テーマコード(参考)】
2E052
3D127
【Fターム(参考)】
2E052AA09
2E052CA06
2E052DA03
2E052DB03
2E052EA14
2E052EB01
2E052EC01
3D127AA07
3D127CB05
(57)【要約】
【課題】本発明は、窓ガラスの作成に先駆けて、ウインドレギュレータの駆動試験を行うことができるウインドレギュレータ試験方法及びウインドレギュレータ試験装置を提供することを目的としている。
【解決手段】車両用ドアの窓ガラスを昇降させるウインドレギュレータ15の駆動試験を行うウインドレギュレータ試験方法であって、窓ガラスに代えて、曲率が窓ガラスの曲率と同等となるように湾曲させた樹脂板11を用い、樹脂板11を、ウインドレギュレータ15に対する位置関係が窓ガラスと同等となるように配設した状態で、ウインドレギュレータ15の駆動試験を行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用ドアの窓ガラスを昇降させるウインドレギュレータの駆動試験を行うウインドレギュレータ試験方法であって、
前記窓ガラスに代えて、曲率が前記窓ガラスの曲率と同等となるように湾曲させた樹脂板を用い、
前記樹脂板を、前記ウインドレギュレータに対する位置関係が前記窓ガラスと同等となるように配設した状態で、前記ウインドレギュレータの駆動試験を行うことを特徴とするウインドレギュレータ試験方法。
【請求項2】
前記樹脂板を配設する樹脂板配設工程と、
前記樹脂板に静電気を帯電させる静電気帯電工程と、
前記樹脂板配設工程及び前記静電気帯電工程の後、前記ウインドレギュレータのテスト駆動を行うテスト駆動工程と、を実行することを特徴とする請求項1に記載のウインドレギュレータ試験方法。
【請求項3】
前記樹脂板を、曲率が前記窓ガラスの曲率と同等となるように湾曲させる樹脂板矯正工程を、更に実行し、
前記樹脂板配設工程、前記樹脂板矯正工程及び前記静電気帯電工程の後、前記テスト駆動工程を実行することを特徴とする請求項2に記載のウインドレギュレータ試験方法。
【請求項4】
車両用ドアの窓ガラスを昇降させるウインドレギュレータの駆動試験を行うウインドレギュレータ試験装置であって、
前記窓ガラスに代えて、曲率が前記窓ガラスの曲率と同等となるように湾曲させた樹脂板を用い、
前記樹脂板を、前記ウインドレギュレータに対する位置関係が前記窓ガラスと同等となるように配設した状態で、前記ウインドレギュレータの駆動試験を行うことを特徴とするウインドレギュレータ試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウインドレギュレータ試験方法及びウインドレギュレータ試験装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ウインドレギュレータ試験装置として、例えば、実際に使用する車両用ドアにウインドレギュレータを取り付けて、ウインドレギュレータの駆動試験を行うものがある(特許文献1参照)。このウインドレギュレータ試験装置(耐久試験装置)では、実際に使用する車両用ドア(サイドドア)にウインドレギュレータ(パワーウインドレギュレータ)を取り付けた状態で駆動試験を行うことで、ウインドレギュレータが使用される状況を再現して、駆動試験を行うことができる。特に、このウインドレギュレータ試験装置は、車両用ドアの窓ガラス(ドアガラス)に静電気を帯電させた状態で、ウインドレギュレータの駆動試験を行うことで、窓ガラスに静電気が帯電された状況を再現して、駆動試験を行うことができ、窓ガラスに静電気が帯電された状況下で、ウインドレギュレータを駆動したとき、ウインドレギュレータに塗布されたグリスが窓ガラスに付着する等の不具合が生じるか否かを試験することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のウインドレギュレータ試験装置では、実際に使用する窓ガラスを用いるため、窓ガラスを作成してから、ウインドレギュレータの駆動試験を行う必要があり、窓ガラスの作成に先駆けて、ウインドレギュレータの駆動試験を行うことができないという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、窓ガラスの作成に先駆けて、ウインドレギュレータの駆動試験を行うことができるウインドレギュレータ試験方法及びウインドレギュレータ試験装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するため、車両用ドアの窓ガラスを昇降させるウインドレギュレータの駆動試験を行うウインドレギュレータ試験方法であって、前記窓ガラスに代えて、曲率が前記窓ガラスの曲率と同等となるように湾曲させた樹脂板を用い、前記樹脂板を、前記ウインドレギュレータに対する位置関係が前記窓ガラスと同等となるように配設した状態で、前記ウインドレギュレータの駆動試験を行うことを特徴とするウインドレギュレータ試験方法を提供する。
【0007】
また、本発明は、上記目的を達成するため、車両用ドアの窓ガラスを昇降させるウインドレギュレータの駆動試験を行うウインドレギュレータ試験装置であって、前記窓ガラスに代えて、曲率が前記窓ガラスの曲率と同等となるように湾曲させた樹脂板を用い、前記樹脂板を、前記ウインドレギュレータに対する位置関係が前記窓ガラスと同等となるように配設した状態で、前記ウインドレギュレータの駆動試験を行うことを特徴とするウインドレギュレータ試験装置を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るウインドレギュレータ試験方法及びウインドレギュレータ試験装置は、窓ガラスの作成に先駆けて、ウインドレギュレータの駆動試験を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係るウインドレギュレータ試験装置の構成を示した正面構成図である。
【
図2】ウインドレギュレータ試験装置を示した斜視図である。
【
図3】ウインドレギュレータ試験装置を示した側面図である。
【
図4】ウインドレギュレータ試験装置を示した分解斜視図である。
【
図5】ウインドレギュレータ駆動試験を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係るウインドレギュレータ試験装置及びウインドレギュレータ試験方法について説明する。このウインドレギュレータ試験装置は、車両用ドアの窓ガラスに静電気が帯電した状態で、ウインドレギュレータを駆動したとき、ウインドレギュレータ上のグリスが窓ガラスに付着するか否かを試験する試験装置である。特に、本ウインドレギュレータ試験装置は、窓ガラスに代えて樹脂板を配設した状態で、ウインドレギュレータの駆動試験を行うものである。なお、以下、各図に示す通り、左右、前後及び上下を規定して説明する。
【0011】
(ウインドレギュレータ試験装置の構成)
図1乃至
図3に示すように、ウインドレギュレータ試験装置1は、車両用ドアの窓ガラスを代替するダミー窓ガラスとして樹脂板11を用いたものであり、上下方向に起立して配設されたベース12と、スペーサ13(
図3参照)を介してベース12に固定されたサブベース14と、サブベース14に固定されると共に、ウインドレギュレータ15の上下端部を取り付ける上取付部16及び下取付部17と、ベース12に固定されると共に、樹脂板11を支持する左右一対の支持部材18、18と、樹脂板11の曲率を矯正する左右一対の矯正部材19、19と、を備えている。
【0012】
また、
図1に示すように、ウインドレギュレータ試験装置1は、樹脂板11に帯電した静電気量を検出する静電気センサー21と、ウインドレギュレータ15の駆動を制御する制御部22と、を備えている(
図1参照)。本実施形態では、ウインドレギュレータ試験装置1に対し、試験対象となるウインドレギュレータ15と、試験体となる樹脂板11とを取り付けた状態で、制御部22の制御の下、ウインドレギュレータ15の駆動試験が行われる。
【0013】
図1乃至
図3に示すように、試験対象となるウインドレギュレータ15は、例えば、キャリアプレート31と、キャリアプレート31を昇降自在に支持するガイドレール32と、キャリアプレート31を牽引する上昇側ワイヤ33及び下降側ワイヤ34と、ガイドレール32の下端部に配設され、上昇側ワイヤ33及び下降側ワイヤ34を駆動する駆動部35と、ガイドレール32の上端部にプーリブラケット36を介して配設され、上昇側ワイヤ33を方向転換するプーリ37と、を備えている。ウインドレギュレータ15は、駆動部35によって、上昇側ワイヤ33及び下降側ワイヤ34を繰り出し又は巻き取ることで、キャリアプレート31を上下方向に牽引してキャリアプレート31を昇降させる。これによって、キャリアプレート31に支持された窓ガラスを昇降させる構成を有している。なお、ウインドレギュレータ15のワイヤ33、34やガイドレール32には、グリスが塗られている。本ウインドレギュレータ試験装置1は、このワイヤ33、34やガイドレール32に塗られたグリスが、窓ガラスに付着するか否かを試験するものである。
【0014】
なお、本ウインドレギュレータ試験装置1では、窓ガラスをキャリアプレート31上に配設させるのに代えて、窓ガラスを代替する樹脂板11を一対の支持部材18、18に固定的に配設する構成となっている。これに伴って、本実施形態では、ウインドレギュレータ15の駆動時に、キャリアプレート31が樹脂板11に接触しないように、キャリアプレート31の前側を一部研削して、キャリアプレート31の厚みを薄くしている。
【0015】
上取付部16は、サブベース14に固定されると共に、ウインドレギュレータ15の上端部が取り付けられている。詳細には、ガイドレール32の上端部が固定されたプーリブラケット36が、上取付部16に取り付けられている。一方、下取付部17は、サブベース14に固定されると共に、ウインドレギュレータ15の下端部が取り付けられている。詳細には、ガイドレール32の下端部が固定された駆動部35が、下取付部17に取り付けられている。試験対象となるウインドレギュレータ15は、上取付部16及び下取付部17によって、鉛直姿勢から左側に傾いた姿勢で配設されている。すなわち、ウインドレギュレータ15は、上取付部16及び下取付部17によって、実際の車両用ドアに取り付けられた状態と同様の角度だけ鉛直姿勢から左側に傾けて配設されている。これによって、車両用ドアに取り付けられた場合と同様の姿勢で、ウインドレギュレータ15の駆動試験を行うことができるようになっている。
【0016】
図1乃至
図4に示すように、樹脂板11は、アクリル又は塩化ビニルによって形成された透明又は半透明の板材であり、方形状に形成されている。上記したように、樹脂板11は、窓ガラスを代替するダミー窓ガラスとして用いられる。樹脂板11の左右方向の寸法は、ウインドレギュレータ15の左右方向の寸法より大きく形成されている。また、樹脂板11の上下方向の寸法は、キャリアプレート31の移動範囲より大きく形成されており、特に、窓ガラスの上下方向の寸法よりも大きく形成されていることが好ましい。すなわち、樹脂板11の寸法は、キャリアプレート31の移動範囲全域及びプーリ37と対面可能な寸法となっており、樹脂板11は、キャリアプレート31の移動範囲全域及びプーリ37と対面するように配設される。また、
図4に示すように、樹脂板11には、8つの取付孔11aが形成されており、8つの取付孔11aによって、一対の支持部材18に取り付けられている。
【0017】
各支持部材18は、スペーサ23を介してベース12に固定されると共に、上下方向に延在したレール部材41と、レール部材41の上下端部に固定された上下2つのブラケット42と、を備えている。樹脂板11は、当該一対の支持部材18の各2つのブラケット42に取り付けられている。詳細には、樹脂板11の取付孔11aは、一対の支持部材18の各2つのブラケット42に対応する4か所において、2つずつ形成されており、樹脂板11は、ボルト及びナットを用い、この8つの取付孔11aによって、一対の支持部材18の各2つのブラケット42に取り付けられている。一対の支持部材18に樹脂板11が取り付けられることで、樹脂板11は、ウインドレギュレータ15に対する位置関係が窓ガラスと同等となるように配設された状態となる。すなわち、樹脂板11とウインドレギュレータ15との位置関係が、車両用ドアに取り付けられた窓ガラスとウインドレギュレータ15との位置関係と同様になるように、樹脂板11が配設される。
【0018】
一対の矯正部材19は、それぞれ、上下方向に延在する棒状に形成されている。そして、一対の矯正部材19は、樹脂板11を挟んで、一対の支持部材18の各ブラケット42に取り付けられる。詳細には、ボルト及びナットによる共締めによって、矯正部材19と樹脂板11とが、ブラケット42に取り付けられている。なお、各ブラケット42に対応する各2つの取付孔11aのうちの一方が、矯正部材19との共締めに用いられ、他方が、樹脂板11単体の取付けに用いられる。
【0019】
また、
図3及び
図4に示すように、各矯正部材19は、実際の車両用ドアに取り付けられる窓ガラスの曲率と同様の曲率に湾曲形成されている。一対の矯正部材19を、樹脂板11を挟んで、一対の支持部材18の各ブラケット42に取り付けることで、一対の矯正部材19が樹脂板11の前面側に接触して、矯正部材19の曲率に合わせて樹脂板11を湾曲させる。このように、一対の矯正部材19によって、樹脂板11を、曲率が窓ガラスの曲率と同等となるように湾曲させる。一対の矯正部材19によって、樹脂板11の曲率が窓ガラスの曲率と同等となるように樹脂板11が湾曲され、一対の支持部材18によって、樹脂板11のウインドレギュレータ15に対する位置関係が、窓ガラスと同等になるように樹脂板11が配設されることで、上下方向の各位置におけるウインドレギュレータ15に対する樹脂板11の離間距離を、窓ガラスと同等(好ましくは同一)にすることができる。なお、ここにいう曲率とは、左右方向から見たときの曲率である。
【0020】
静電気センサー21は、樹脂板11に帯電した静電気量を検出する測定装置である。本実施形態では、静電気センサー21による検出値は、樹脂板11に帯電させる静電気量を調整するのに用いられる。すなわち、静電気センサー21の検出値に基づき、樹脂板11に帯電した静電気量が、所定の範囲となっていることを確認した状態で、ウインドレギュレータ15の駆動試験が行われる。ここにいう静電気量の所定の範囲は、実際の車両用ドアの窓ガラスに生じると推定される静電気量の範囲であり、例えば、2000V以上10000V以下である。
【0021】
制御部22は、ウインドレギュレータ15の駆動部35に接続され、駆動部35を制御して、ウインドレギュレータ15の駆動を制御する駆動制御部である。すなわち、制御部22は、駆動部35を制御して、ウインドレギュレータ15のテスト駆動を行う。本実施形態では、テスト駆動として、キャリアプレート31を最大下降位置から最大上昇位置まで上昇させる上昇動作と、キャリアプレート31を最大上昇位置から最大下降位置まで下降させる下降動作と、からなる往復動作を、複数回(例えば50回)実行する。
【0022】
(ウインドレギュレータ駆動試験)
次に
図5を参照して、ウインドレギュレータ試験装置1によるウインドレギュレータ駆動試験(ウインドレギュレータ試験方法)について説明する。このウインドレギュレータ駆動試験は、車両用ドアにおいて、窓ガラスに静電気が帯電した状態でウインドレギュレータ15を駆動したとき、ウインドレギュレータ15に塗られたグリスが、窓ガラスに付着する不具合が生じるか否かを試験するものである。詳細には、車両用ドアに窓ガラス及びウインドレギュレータ15が取り付けられた状態で車両用ドアが使用されると、窓ガラスとモールディングとの摺接等によって、窓ガラスに静電気が帯電する。窓ガラスに静電気が帯電した状態で、ウインドレギュレータ15の駆動を繰り返すと、ウインドレギュレータ15のワイヤ33、34やガイドレール32に塗られたグリスが、静電気を帯電した窓ガラスに引き寄せられて、窓ガラスに付着する不具合が生じる虞がある。本ウインドレギュレータ駆動試験は、このようなグリスが窓ガラスに付着する不具合が生じるか否かを試験するものである。また、本ウインドレギュレータ駆動試験では、窓ガラスに代えて樹脂板11を用い、ウインドレギュレータ15に対する位置関係が窓ガラスと同様になるように樹脂板11を配設した状態で、ウインドレギュレータ15の駆動試験を行う。すなわち、本ウインドレギュレータ試験は、窓ガラスを樹脂板11に代替させた代替試験であると言える。また、実際の車両用ドアを用いるのではなく、窓ガラスとウインドレギュレータ15との位置関係(特に離間距離)を再現して、駆動試験を行うものである。
【0023】
図5に示すように、ウインドレギュレータ駆動試験では、まず、試験対象となるウインドレギュレータ15をウインドレギュレータ試験装置1に取り付ける(S1)。すなわち、ウインドレギュレータ15の上端部を上取付部16に取り付け、ウインドレギュレータ15の下端部を下取付部17に取り付ける。
【0024】
ウインドレギュレータ15をウインドレギュレータ試験装置1に取り付けたら、試験体となる樹脂板11をウインドレギュレータ試験装置1に取り付ける(S2)(樹脂板配設工程及び樹脂板矯正工程)。すなわち、一対の矯正部材19及び樹脂板11を、一対の支持部材18の各ブラケット42に取り付ける。これにより、一対の矯正部材19によって、樹脂板11の曲率が窓ガラスと同様の曲率になるように、樹脂板11が湾曲される。また、一対の支持部材18によって、樹脂板11のウインドレギュレータ15に対する位置関係が窓ガラスと同様になるように、樹脂板11が配設される。なお、レール部材41に固定されたブラケット42に、矯正部材19及び樹脂板11を取り付ける構成であってもよいし、レール部材41から取り外されたブラケット42に、矯正部材19及び樹脂板11を取り付けた後、ブラケット42をレール部材41に固定する構成であってもよい。
【0025】
ウインドレギュレータ15及び樹脂板11をウインドレギュレータ試験装置1に取り付けたら、樹脂板11に静電気を帯電させる(S3)(静電気帯電工程)。本実施形態では、化繊繊維のタオル等で樹脂板11を擦ることで、樹脂板11に強い静電気を発生させた後、静電気センサー21の検出値が所定の範囲まで下がるのを待つことで、所定の範囲の静電気量を樹脂板11に帯電させた状態にする。すなわち、樹脂板11に帯電される静電気量が、実際の車両用ドアの窓ガラスに帯電すると推定される静電気量となるように調整する。
【0026】
樹脂板11に所定の範囲の静電気量を帯電させた状態にしたら、制御部22によって、ウインドレギュレータ15の駆動部35を制御して、ウインドレギュレータ15のテスト駆動を行う(S4)(テスト駆動工程)。すなわち、キャリアプレート31の上昇動作とキャリアプレート31の下降動作とからなる往復動作を、所定回数(例えば、50回)実行する。
【0027】
ウインドレギュレータ15のテスト駆動が終了したら、樹脂板11におけるグリスの付着状況(付着の有無及び付着量)を判定する(S5)。グリスの付着状況の判定は、人間が視認で行う構成であってもよいし、樹脂板11を撮像する撮像カメラの撮像結果を画像認識して行う構成であってもよい。
【0028】
(実施形態の作用及び効果)
以上、上記実施形態の構成によれば、実際の窓ガラスを使用せずに、窓ガラスに代えて樹脂板11を用い、樹脂板11を配設させた状態でウインドレギュレータ15の駆動試験を行う構成であるため、窓ガラスの作成に先駆けて、ウインドレギュレータ15の駆動試験を行うことができる。
すなわち、従来の試験方法では、実際の窓ガラスを使用していたため、窓ガラスの作成を待って駆動試験を行う必要があり、窓ガラスの作成に先駆けて、ウインドレギュレータ15の駆動試験を行うことができなかった。ウインドレギュレータ15の開発は、上記駆動試験の結果に基づいて調整や改良等を行う必要があるため、窓ガラスの作成を待って駆動試験を行う必要があると、ウインドレギュレータ15の開発が遅延し、これに伴って各種費用が生じてしまう。
これに対し、上記実施形態の構成では、実際の窓ガラスを使用せずに、窓ガラスに代えて樹脂板11を用い、樹脂板11を配設させた状態でウインドレギュレータ15の駆動試験を行う構成であるため、窓ガラスの作成を待たずに、窓ガラスの作成に先駆けて、ウインドレギュレータ15の駆動試験を行うことができる。これによって、ウインドレギュレータ15の開発を早めることができ、ウインドレギュレータ15の開発に掛かる費用を削減することができる。
【0029】
また、上記実施形態の構成によれば、樹脂板11が透明又は半透明である構成としたことで、前面側から、樹脂板11におけるグリスの付着状態を判定(確認)することができるため、樹脂板11をウインドレギュレータ試験装置1に取り付けた状態のまま、樹脂板11におけるグリスの付着状態を判定することができる。そのため、条件(樹脂板11に帯電させる静電気量や往復動作の回数等)を変えて、駆動試験を続けて行う場合にも、樹脂板11を取り外すことなく、駆動試験を行うことができる。
【0030】
また、上記実施形態の構成によれば、樹脂板11を、キャリアプレート31上に配設するのに代えて、支持部材18に対し固定的に配設することで、ウインドレギュレータ試験装置1において、樹脂板11を昇降自在に支持する構造(例えばガラスラン)を省略することができ、ウインドレギュレータ試験装置1を簡単な構成にすることができる。
【0031】
また、上記実施形態の構成によれば、樹脂板11を矯正する矯正部材19を備えたことで、樹脂板11を、窓ガラスと同様の曲率となるように作成又は加工する必要がなく、樹脂板11の製造コストを削減することができる。より言えば、市販の樹脂板11をそのまま用いることができる。
【0032】
(その他の実施形態について)
以上、本発明の実施形態を説明したが、上記した実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。
【0033】
例えば、上記実施形態においては、所定回数往復動作を実行したとき、樹脂板11にグリスが付着するか否かを試験する構成であったが、樹脂板11にグリスが付着する往復動作の回数を試験する構成であってもよいし、樹脂板11にグリスが付着する静電気量を試験する構成であってもよい。
【0034】
また、上記実施形態においては、樹脂板11を一対の支持部材18に固定的に配設する構成であったが、実際の窓ガラスと同様、樹脂板11をキャリアプレート31上に配設する構成であってもよい。
【0035】
また、上記実施形態においては、矯正部材19によって、扁平状の樹脂板11を湾曲させることで、樹脂板11を窓ガラスと同様の曲率となるように湾曲させる構成であったが、樹脂板11が、予め、窓ガラスと同様の曲率となるように湾曲している構成であってもよい。かかる場合、矯正部材19を省略することができる。
【0036】
また、上記実施形態においては、透明又は半透明の樹脂板11を用いる構成であったが、不透明の樹脂板11を用いる構成であってもよい。
【0037】
また、上記実施形態においては、前面に特段の層を形成していない樹脂板11を用いる構成であったが、樹脂板11の前面に、静電気が生じやすくなる層を形成する構成であってもよい。例えば、実際の窓ガラスは、前面に撥水コーティングがされ、この撥水コーティング層が、静電気が生じやすくなる層として機能する。そのため、樹脂板11にも、同様の撥水コーティングを行う構成であってもよいし、撥水コーティング層と同質のテープ材(シリコンテープやテフロン(登録商標)テープ等)を、樹脂板11の前面に張り付ける構成であってもよい。
【0038】
また、上記実施形態においては、窓ガラスを代替するダミー窓ガラスとして、樹脂板11(樹脂製の板材)を用いる構成であったが、これに限るものではない。すなわち、例えば、ダミー窓ガラスとして、ガラスや金属等の他の材料の板材を用いる構成であっても良い。さらに言えば、ウインドレギュレータ15との離間距離を再現できれば、必ずしも、板材である必要はなく、ダミー窓ガラスとして、板状以外の形状の部材を用いる構成であってもよい。
【0039】
また、上記実施形態においては、ガイドレール32の下端部に駆動部35を配設した下端レール式のウインドレギュレータ15を試験対象とする構成であったが、試験対象とするウインドレギュレータ15は、下端レール式のウインドレギュレータ15に限るものではない。例えば、他のレール式のウインドレギュレータであってもよいし、レールレスのウインドレギュレータであっても良い。また、試験対象とするウインドレギュレータ15は、ワイヤ駆動のウインドレギュレータに限らず、アーム式のウインドレギュレータであってもよい。
【0040】
また、上記実施形態においては、グリスが窓ガラスに付着するか否かの試験に、本発明を適用したが、窓ガラスとウインドレギュレータ15の駆動とに関連する試験であれば、これに限るものではない。例えば、ウインドレギュレータ15の駆動に伴って、ウインドレギュレータ15のキャリアプレート31以外の部品が窓ガラスに接触するか否かの試験を行う試験方法及び試験装置に、本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0041】
1:ウインドレギュレータ試験装置、 11:樹脂板、 12:ベース、 14:サブベース、 15:ウインドレギュレータ、 16:上取付部、 17:下取付部、 18:支持部材、 19:矯正部材、 21:静電気センサー、 22:制御部、 31:キャリアプレート、 32:ガイドレール、 33:上昇側ワイヤ、 34:下降側ワイヤ、 35:駆動部、 41:レール部材、 42:ブラケット