(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128389
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】院内搬送システム
(51)【国際特許分類】
B65G 1/00 20060101AFI20240913BHJP
G05D 1/43 20240101ALI20240913BHJP
B65G 1/137 20060101ALN20240913BHJP
【FI】
B65G1/00 501C
G05D1/02 H
G05D1/02 T
B65G1/137 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037337
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】524124813
【氏名又は名称】シンフォニアエンジニアリング株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】市村 吉明
(72)【発明者】
【氏名】鶴森 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】水谷 友哉
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 章洋
【テーマコード(参考)】
3F022
3F522
5H301
【Fターム(参考)】
3F022AA10
3F022EE05
3F022LL07
3F022LL14
3F022LL38
3F022MM11
3F522AA06
3F522BB01
3F522CC10
3F522DD02
3F522DD34
3F522EE15
3F522GG03
3F522GG05
3F522GG13
3F522GG46
3F522JJ02
3F522JJ04
3F522KK05
3F522LL09
3F522LL33
3F522LL54
5H301AA02
5H301BB05
5H301BB14
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301DD01
5H301DD07
5H301DD15
5H301GG09
5H301HH01
5H301LL06
5H301LL08
5H301QQ02
(57)【要約】
【課題】多層階の建物で構成される医療施設において、より自律的に物品を搬送することが可能な院内搬送システムを提供する。
【解決手段】院内搬送システム1は、(A)搬送先情報を含む情報タグ20が取り付けられた容器10、(B)容器10を収納可能な搬送棚33と、情報タグ20を取得することが可能な搬送車側情報処理装置34とを有する搬送車3、及び(C)複数階に跨って設けられた昇降路41と、容器10を収納可能な各階のステーション棚431と、情報タグ20を取得することが可能なステーション側情報処理装置432と有する小荷物昇降機4を有する。搬送車3は、搬送先情報に含まれている階情報に基づいて、容器10を搬送先または自己階のステーション棚431へ搬送し、小荷物昇降機4は、搬送先情報に含まれている階情報に基づいて、容器10を搬送先440の存在する階まで搬送する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)搬送物を収納可能に構成され、且つ、収納した前記搬送物の少なくとも搬送先に関する搬送先情報を取得可能な情報が含まれている情報タグが取り付けられた容器と、
(B)駆動装置と、
前記駆動装置により駆動される走行装置と、
前記容器を格納可能に構成された搬送棚と、
前記走行装置または前記搬送棚に配置され、前記搬送棚に格納された前記容器の前記情報タグに含まれている前記搬送先情報を取得する搬送車側情報処理装置と、
前記搬送車側情報処理装置から取得された前記容器の前記搬送先情報に基づいて、自律走行するように前記走行装置を制御する自律走行制御装置と、を備え、多層階の建物の複数階に1台以上配置される搬送車、及び、
(C)前記複数階に跨って設けられてその内部とその外部とを連通させる複数の出入口を前記複数階に有する昇降路と、
前記昇降路の内部を前記複数の出入口の間で昇降可能に構成され、それぞれ前記容器を収容可能な1つまたは複数のかご内収容部を有する容器かご部と、
前記昇降路の前記複数の出入口の外部に配置され、それぞれ前記容器を収容可能であって前記かご内収容部に連通可能に構成される1つまたは複数のステーション棚と、前記容器の前記情報タグに含まれている前記搬送先情報を取得するステーション側情報処理装置と、を有する複数のステーション部と、
前記容器かご部または前記ステーション部の少なくともいずれかに設けられ、前記かご内収容部から前記ステーション棚への前記容器の移載、及び前記ステーション棚から前記かご内収容部への前記容器の移載を行う昇降機移載部と、を備え、前記複数の出入口間で前記容器を搬送する小荷物昇降機、を有していることを特徴とする院内搬送システム。
【請求項2】
前記搬送先情報には、前記搬送先が存在する階に関する階情報が含まれており、
前記搬送車は、
前記搬送棚から前記ステーション棚への前記容器の移載、及び前記ステーション棚から前記搬送棚への前記容器の移載を行う搬送棚移載部を有し、
前記搬送棚に前記容器が収納された場合、前記搬送車側情報処理装置により、当該容器の前記情報タグが有している前記搬送先情報に含まれている前記階情報を取得し、(i)当該容器の前記搬送先が存在する階と、当該搬送車が配置されている階とが異なる場合、前記自律走行制御装置により前記走行装置を制御して、当該搬送車が配置されている階の前記ステーション棚まで自律走行した後、前記搬送棚移載部により、当該搬送車が配置されている階の前記ステーション棚へ当該容器を移載し、(ii)当該容器の前記搬送先が存在する階と、当該搬送車が配置されている階とが同一である場合、前記自律走行制御装置により前記走行装置を制御して、前記容器の前記搬送先まで自律走行し、
前記小荷物昇降機は、
前記ステーション棚に前記容器が移載された場合、前記ステーション側情報処理装置により、当該容器の前記情報タグが有している前記搬送先情報に含まれている前記階情報を取得し、当該容器の前記搬送先が存在する階の前記ステーション棚へ当該容器を移載することを特徴とする請求項1に記載の院内搬送システム。
【請求項3】
前記搬送車は、
当該搬送車が配置されている階の前記ステーション棚に前記容器が収納されている収納状態を検出すると、
前記搬送車移載部により、当該容器を前記ステーション棚から前記搬送棚へ移載し、
前記搬送車側情報処理装置により、移載した当該容器の前記情報タグに含まれている前記搬送先情報を取得し、
前記自律走行制御装置により前記走行装置を制御して、当該搬送先情報に基づいて当該容器の前記搬送先まで自律走行することを特徴とする請求項2に記載の院内搬送システム。
【請求項4】
前記搬送車は、
前記自律走行制御装置により前記走行装置を制御して、当該搬送車が配置されている階で前記搬送棚に収納された前記容器の前記搬送先まで自律走行する際に、前記容器を前記容器の前記搬送先まで搬送できない搬送不能状態が生じた場合、予め決められた待機場所まで自律走行することを特徴とする請求項3に記載の院内搬送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、院内搬送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
病院等において、薬剤や検体等の物品が載置された台車を搬送先まで自律走行させる技術が開示されている。例えば、特許文献1では、上位コントローラが搬送指令を走行台車に送信することで、走行台車を目標位置まで自律走行させる院内搬送システムが開示されている。かかる院内搬送システムでは、走行台車は病院内を無軌道で自律走行できるため、医療従事者等の搬送業務が軽減されることに加え、専用レールの敷設等の大規模な設置工事を行うことなく、既存の病院に容易に導入できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、病院等の医療施設は多層階の建物で構成されており、患者や病院スタッフが異なる階への移動のために、エレベータが設置されている。特許文献1には、患者や病院スタッフが乗る既存のエレベータを使用し、走行台車が異なる階へ物品を搬送する技術が開示されている。特許文献1では、走行台車が異なる階へ物品を搬送する場合、上位コントローラが、エレベータの呼び出し、ドアの開閉指示、目的階への昇降指示等の、走行台車とエレベータとを協調させる制御を行う。しかしながら、物品を搬送する走行台車を管理する病院内のシステムと、患者等の病院スタッフ以外の者が利用するエレベータを管理する病院外のシステムとが、上位コントローラを介して連携することには、病院内のシステムで保管している情報が、エレベータを管理する病院外のシステムを介して漏洩する等、情報セキュリティ上のリスクが懸念される。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するものであり、多層階の建物で構成される医療施設において、より自律的に物品を搬送することが可能な院内搬送システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の院内搬送システムは、(A)搬送物を収納可能に構成され、且つ、収納した前記搬送物の少なくとも搬送先に関する搬送先情報を取得可能な情報が含まれている情報タグが取り付けられた容器と、(B)駆動装置と、前記駆動装置により駆動される走行装置と、前記容器を格納可能に構成された搬送棚と、前記走行装置または前記搬送棚に配置され、前記搬送棚に格納された前記容器の前記情報タグに含まれている前記搬送先情報を取得する搬送車側情報処理装置と、前記搬送車側情報処理装置から取得された前記容器の前記搬送先情報に基づいて、自律走行するように前記走行装置を制御する自律走行制御装置と、を備え、多層階の建物の複数階に1台以上配置される搬送車、及び、(C)前記複数階に跨って設けられてその内部とその外部とを連通させる複数の出入口を前記複数階に有する昇降路と、前記昇降路の内部を前記複数の出入口の間で昇降可能に構成され、それぞれ前記容器を収容可能な1つまたは複数のかご内収容部を有する容器かご部と、前記昇降路の前記複数の出入口の外部に配置され、それぞれ前記容器を収容可能であって前記かご内収容部に連通可能に構成される1つまたは複数のステーション棚と、前記容器の前記情報タグに含まれている前記搬送先情報を取得するステーション側情報処理装置と、を有する複数のステーション部と、前記容器かご部または前記ステーション部の少なくともいずれかに設けられ、前記かご内収容部から前記ステーション棚への前記容器の移載、及び前記ステーション棚から前記かご内収容部への前記容器の移載を行う昇降機移載部と、を備え、前記複数の出入口間で前記容器を搬送する小荷物昇降機、を有していることを特徴とする。
【0007】
この構成によると、多層階の建物の複数階にステーション棚が配置される。ステーション棚は、多層階の建物の複数階で配置されていればよく、建物の全ての階に配置されていても配置されていなくてもよい。搬送車は、ステーション棚が配置される複数階に1台以上配置される。搬送車に備えられている搬送車側情報処理装置は、搬送物が収納されている容器に取り付けられた情報タグに含まれている搬送先情報を取得する。一方、小荷物昇降機は、複数階に配置されているステーション部に備えられているステーション側情報処理装置により、搬送物が収納されている容器に取り付けられた情報タグに含まれている搬送先情報を取得する。これにより、上位コントローラを介することなく、搬送車と小荷物昇降機とが相互に連携して容器を搬送することができるため、多層階の建物で構成される医療施設において、より自律的に物品を搬送することができる。
【0008】
また、本発明の院内搬送システムは、以下の構成を有してよい。
前記搬送先情報には、前記搬送先が存在する階に関する階情報が含まれており、前記搬送車は、前記搬送棚から前記ステーション棚への前記容器の移載、及び前記ステーション棚から前記搬送棚への前記容器の移載を行う搬送棚移載部を有し、前記搬送棚に前記容器が収納された場合、前記搬送車側情報処理装置により、当該容器の前記情報タグが有している前記搬送先情報に含まれている前記階情報を取得し、(i)当該容器の前記搬送先が存在する階と、当該搬送車が配置されている階とが異なる場合、前記自律走行制御装置により前記走行装置を制御して、当該搬送車が配置されている階の前記ステーション棚まで自律走行した後、前記搬送棚移載部により、当該搬送車が配置されている階の前記ステーション棚へ当該容器を移載し、(ii)当該容器の前記搬送先が存在する階と、当該搬送車が配置されている階とが同一である場合、前記自律走行制御装置により前記走行装置を制御して、前記容器の前記搬送先まで自律走行し、前記小荷物昇降機は、前記ステーション棚に前記容器が移載された場合、前記ステーション側情報処理装置により、当該容器の前記情報タグが有している前記搬送先情報に含まれている前記階情報を取得し、当該容器の前記搬送先が存在する階の前記ステーション棚へ当該容器を移載する。
【0009】
この構成によると、搬送車に備えられている自律走行制御装置は、搬送先情報に含まれている階情報に基づいて、搬送先の存在する階と、搬送車が配置されている階とが同一であるか否かを判断する。搬送先の存在する階と、搬送車が配置されている階とが同じ場合、搬送車は、自律走行制御装置により走行装置を制御して、容器の搬送先まで自律走行する。搬送先の存在する階と、搬送車が配置されている階とが異なっている場合、搬送車は、自律走行制御装置により走行装置を制御して、ステーション棚まで自律走行し、容器を搬送棚からステーション棚に移載する。なお、「自律走行制御装置により走行装置を制御して、ステーション棚まで自律走行する」搬送車は、予めステーション棚まで自動走行してステーション棚に待機している搬送車を含む。一方、小荷物昇降機は、容器が移載されたステーション棚に設けられているステーション側情報処理装置により、容器に取り付けられている情報タグを取得することで、容器を昇降機移載部によりステーション棚からかご内収容部へ移載し、当該かご内収容部を搬送先が存在する階まで昇降させる。そして、小荷物昇降機は、昇降機移載部により容器をかご内収容部から搬送先が存在する階のステーション棚へ移載する。これにより、搬送車は、容器を搬送先へ搬送するために、小荷物昇降機を使用する必要があるか否かの判断を容易に行うことができるため、多層階の建物で構成される医療施設において、より効率的に物品を搬送することができる。
【0010】
また、本発明の院内搬送システムは、以下の構成を有してよい。
前記搬送車は、当該搬送車が配置されている階の前記ステーション棚に前記容器が収納されている収納状態を検出すると、前記搬送車移載部により、当該容器を前記ステーション棚から前記搬送棚へ移載し、前記搬送車側情報処理装置により、移載した当該容器の前記情報タグに含まれている前記搬送先情報を取得し、前記自律走行制御装置により前記走行装置を制御して、当該搬送先情報に基づいて当該容器の前記搬送先まで自律走行する。
【0011】
この構成によると、搬送車は、ステーション棚にトレイが収納されている収納状態を検出すると、搬送棚移載部により、ステーション棚へ移載されたトレイを搬送棚へ移載し、自律走行制御装置により走行装置を制御して、搬送先まで自律走行する。収納状態の検出方法としては、搬送車に設けられているカメラで撮影した情報に基づいて、搬送車移載部が検出してもよいし、ステーション棚またはステーション棚に収納されている容器に取り付けられている情報タグから発信される信号を搬送車移載部が受信してもよい。これにより、より自律的に物品を搬送先まで搬送することができる。
【0012】
また、本発明の院内搬送システムは、以下の構成を有してよい。
前記搬送車は、前記自律走行制御装置により前記走行装置を制御して、当該搬送車が配置されている階で前記搬送棚に収納された前記容器の前記搬送先まで自律走行する際に、前記容器を前記容器の前記搬送先まで搬送できない搬送不能状態が生じた場合、予め決められた待機場所まで自律走行する。
【0013】
この構成によると、搬送先までの経路上に障害物が存在する、搬送先で所定時間経過しても容器が受け取られない、情報タグまたは搬送車側情報処理装置の不具合によって搬送先情報が削除された等、何らかの理由により搬送車が容器を搬送先まで搬送できない搬送不能状態が生じた場合、搬送車は、自律走行制御装置により走行装置を制御して、ナースステーション等の予め決められた待機場所まで自律走行する。これにより、容器の搬送先を特定できない搬送車が搬送不能状態となることを防止することができる。
【発明の効果】
【0014】
以上の説明に述べたように、本発明によれば、搬送車と小荷物昇降機が上位コントローラを介することなく、相互に連携しながら物品を搬送することができる。即ち、上位コントローラを介する場合と比べて、多層階の建物で構成される医療施設において、より自律的に物品を搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態の院内搬送システムの全体概要図である。
【
図3】本実施形態のトレイに取り付けられている電子モジュールの電気的構成を示すブロック図である。
【
図5】本実施形態の搬送車の電気的構成を示すブロック図である。
【
図6】本実施形態の小荷物昇降機の構成を示す概略斜視図である。
【
図7】本実施形態の搬送車が、搬送棚にトレイが収納されてから、搬送先またはステーション棚へトレイを搬送するまで自律的に行われる処理の手順を説明するフローチャートである。
【
図8】本実施形態の小荷物昇降機が、搬送車によりステーション棚へ収納されたトレイを検知してから、トレイを搬送先の階のステーション棚へ移載するまで自律的に行われる処理の手順を説明するフローチャートである。
【
図9】本実施形態のトレイが、小荷物昇降機によりステーション棚に配置されてから、搬送車により搬送先へ搬送するまで自律的に行われる処理の手順を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態を説明する。
本実施形態の院内搬送システム1は、病院等の多層階で構成される医療施設において、搬送車と小荷物昇降機とが連携して、搬送車の搬送棚に配置された容器を、自律的に搬送先まで搬送するものである。「自律的に」とは、病院スタッフ等の人間の操作を経ずに、院内搬送システム1が有する搬送車3、トレイ(容器)10、および、小荷物昇降機4の間で処理が行われる状態を意味する。
【0017】
ここで、
図1を参照しつつ、院内搬送システム1の概略構成について説明する。
図1の矢印(水平方向および鉛直方向を示す矢印は除く)は、搬送車3が、トレイ(容器)10に取り付けられている情報タグ20に含まれている情報に基づいて、トレイ10を小荷物昇降機4のステーション棚431または搬送先440へ搬送するまでの流れを示すものである。
図1に示すように、院内搬送システム1は、電子モジュール2が取り付けられているトレイ10、搬送車3、及び小荷物昇降機4を有している。電子モジュール2、搬送車3、及び小荷物昇降機4には、通信手段が備えられており、赤外線通信、TCP(Transmission Control Protocol)/IP(Internet Protocol)通信等により、相互に通信可能であることに加え、院内システム等の上位システムに接続し、予め定められた権限の範囲内で、電子カルテ等の情報を参照/更新することが可能に構成されている。
【0018】
トレイ10は、搬送物を収納可能に構成されている。搬送物として、アンプル、バイアル、輸液等の薬剤、処方せん、患者に投与する薬剤に関する情報が記載されているラベル等が挙げられる。トレイ10には、電子モジュール2が取り付けられている。電子モジュール2には、情報タグ20が含まれている。情報タグ20には、搬送物の少なくとも搬送先440に関する搬送先情報が含まれている。搬送先情報として、搬送先440の位置に関する情報、搬送先440の患者に関する情報等が挙げられる。なお、搬送先情報は、搬送先440に関する情報を取得可能なID情報であってもよい。具体的に、院内搬送システム1には、搬送先440に関する情報を記憶している記憶部が備えられており、搬送先440に関する情報を参照するためのID情報に基づいて当該記憶部を参照することにより、当該ID情報に対応付けられた搬送先440に関する情報が取得されるように構成されていてもよい。また、情報タグ20には、搬送物の搬送先情報の他にも、搬送物の内容、搬送依頼者、搬送希望時間、緊急度、ステータス等に関する情報が含まれていてもよい。以後の説明において、情報タグ20に含まれている情報を、「情報タグ関連情報」と称することがある。以後の説明において、「トレイ10に付されている情報タグ20」は、「トレイ10に取り付けられている電子モジュール2に含まれている情報タグ20」を含意する。また、「情報タグ20が取り付けられたトレイ10」は、「情報タグ20が含まれている電子モジュール2が取り付けられたトレイ10」を含意する。
【0019】
搬送先情報には、搬送先440が存在する階に関する階情報が含まれている。階情報を参照することで、搬送車3及び小荷物昇降機4は、トレイ10の搬送先440が何階に存在しているのかを判断することができる。
【0020】
搬送先情報は、病院スタッフが操作するスマートフォンやタブレット等の端末8や、注射薬自動払出装置9等から送信される信号によって、電子モジュール2に記憶される。例えば、病院スタッフは、専用のアプリケーションがインストールされている端末8を操作することにより、搬送先情報を設定し、赤外線通信等により、搬送先情報を電子モジュール2に送信する。搬送先情報を受信した電子モジュール2は、搬送先情報を情報タグ20に含まれる情報として記憶する。また、注射薬自動払出装置9は、処方せんに含まれている情報に基づいて、薬剤を自動的にピックアップし、トレイ10へ払い出す装置である。注射薬自動払出装置9は、薬剤をトレイ10へ払い出す際に、当該薬剤に関する搬送先情報を赤外線通信等により電子モジュール2に送信する。搬送先情報を受信した電子モジュール2は、搬送先情報を情報タグ20に含まれる情報として記憶する。なお、院内搬送システム1に注射薬自動払出装置9は含まれない。例えば、全て又は一部の薬剤は、注射薬自動払出装置9を用いず、病院スタッフによりトレイ10に収容されてもよい。
【0021】
搬送車3は、多層階の建物の複数階に1台以上配置されている。なお、
図1に示す中段の階の搬送車3は記載を省略している。後述するように、搬送車3は、モータ(駆動装置)31、走行装置32、搬送棚33、搬送車側情報処理装置34、及び自律走行制御装置36等を備えている(
図4及び
図5参照)。搬送車3は、病院スタッフ等によって、トレイ10が搬送棚33に収納されたことを検出すると、搬送車3が有する通信手段を介して、搬送車側情報処理装置34が、トレイ10に付されている電子モジュール2と通信することで、情報タグ20に含まれる情報タグ関連情報を取得する。そして、搬送車3は、取得した情報タグ関連情報に含まれている搬送先情報に基づき、自律走行制御装置36により走行装置31を制御して、水平方向へ自律走行する。また、搬送車3は、搬送棚移載部35を備えている。搬送棚移載部35は、搬送棚33から後述するステーション棚431へのトレイ10の移載、及びステーション棚431から搬送棚33へのトレイ10の移載を行う。
【0022】
小荷物昇降機4は、建物の複数階に跨って配置されており、鉛直方向へトレイ10を搬送する。小荷物昇降機4は、昇降路41と、荷物かご部42と、ステーション部43と、昇降機移載部44と、を備えている。昇降路41は、複数階に跨って設けられてその内部とその外部とを連通させる複数の出入口411を複数階に有する。ステーション部43は、トレイ10を収容可能なステーション棚431を有している。荷物かご部42は、昇降路41の内部を複数の出入口の間で昇降可能に構成され、それぞれトレイ10を収容可能な複数のかご内収容部421を有する。小荷物昇降機4の構成については、後述する。
【0023】
搬送車3の搬送棚33にトレイ10が配置されると、搬送車3は、搬送車側情報処理装置34により、トレイ10に付されている情報タグ20を取得し、情報タグ関連情報に含まれている搬送先情報を取得する。次いで、搬送車3は、搬送先情報に含まれている階情報に基づいて、トレイ10の搬送先440が存在する階と、搬送車3が配置されている階とが異なるか否かを判定する。トレイ10の搬送先440が存在する階と、搬送車3が配置されている階とが異なる場合、搬送車3は、自律走行制御装置36により走行装置32を制御して、搬送車3が配置されている階のステーション棚431まで自律走行する。その後、搬送車3は、搬送棚移載部35により、当該ステーション棚431へトレイ10を移載する。
【0024】
また、ステーション部43は、トレイ10に付されている情報タグ20を取得するステーション側情報処理装置432を備えている。ステーション棚431にトレイ10が収納されると、小荷物昇降機4は、ステーション側情報処理装置432により、トレイ10に付されている情報タグ20を取得し、情報タグ関連情報を取得する。なお、小荷物昇降機4が情報タグ関連情報を取得する方法は、これに限定されない。例えば、搬送車3の搬送車側情報処理装置34が、情報タグ20から取得した情報タグ関連情報を小荷物昇降機4のステーション側情報処理装置432へ送信することにより、小荷物昇降機4のステーション側情報処理装置432が情報タグ関連情報を取得するように構成されていてもよい。
【0025】
その後、小荷物昇降機4は、昇降機移載部44により、トレイ10をステーション棚431からかご内収容部421へ移載する。そして、小荷物昇降機4は、情報タグ関連情報に含まれている階情報に基づいて、トレイ10が収納されている荷物かご部42を、搬送先440が存在する階まで昇降路41内を昇降させる。荷物かご部42が搬送先440の存在する階に到着した後、小荷物昇降機4は、昇降機移載部44により、トレイ10をかご内収容部421からステーション棚431へ移載する。この、トレイ10がかご内収容部421からステーション棚431へ移載された状態を、「収納状態」と称する。
【0026】
搬送先440が存在する階に配置されている搬送車3が収納状態を検出すると、当該搬送車3は、搬送棚移載部35により、ステーション棚431に収納されているトレイ10を搬送棚33へ移載する。そして、搬送車3は、搬送車3が有する通信手段を介して、搬送車側情報処理装置34が、トレイ10に付されている電子モジュール2と通信することで、情報タグ20に含まれる情報タグ関連情報から搬送先情報を取得する。次いで、搬送車3は、搬送先情報に基づき、自律走行制御装置36により走行装置32を制御して、トレイ10の搬送先440まで自律走行する。
【0027】
収納状態の検出方法は特に限定されないが、例えば、次の方法が挙げられる。搬送車3は、当該搬送車3が配置されている階のステーション棚431を定期的に巡回する。その後、搬送車3に備えられているカメラでステーション棚431を撮影し、その撮影した画像にトレイ10が含まれているか否かで収納状態の判定を行ってもよい。他にも、ステーション棚431に収納されているトレイ10に取り付けられている電子モジュール2と、搬送車3の搬送車側情報処理装置34との赤外線通信が開始されたか否かで収納状態の判定を行ってもよい。この場合、ステーション棚431に収納されているトレイ10が、小荷物昇降機4に搬送されることを待っている状態か、或いは、搬送車3に搬送されることを待っている状態かを示すステータスが、情報タグ関連情報に含まれていることが望ましい。そして、トレイ10がステーション棚431に移載される際、トレイ10を移載した搬送車3または小荷物昇降機4が、ステータスの更新を要求する信号を、トレイ10に取り付けられている電子モジュールへ送信するように構成されていることが望ましい。
【0028】
また、搬送車3は、ステーション棚431にトレイ10が収納されているか否かを確認するために、定期的にステーション棚431を巡回するが、これに限定されず、小荷物昇降機4が搬送車3を呼び出すように構成されていてもよい。具体的な構成は、次の通りである。搬送車3には、搬送車3の位置情報を発信するビーコンが備えられている。小荷物昇降機4は、搬送車3のビーコンが発信する位置情報を受信することで、各階における搬送車3とステーション部43との距離である搬送車距離情報を算出し、記憶部に記憶する。そして、トレイ10をステーション棚431に移載する際、小荷物昇降機4は、搬送車距離情報に基づいて、当該ステーション棚431と同一の階に配置されている搬送車3の内、最も当該ステーション棚431から近い位置に配置されている搬送車3に対して、トレイ10の搬送を依頼するトレイ搬送要求を送信する。トレイ搬送要求を受信した搬送車3は、自律走行制御装置36により走行装置32を制御して、ステーション棚431まで自律走行する。その後、搬送車3は、搬送棚移載部35により、当該ステーション棚431に収納されているトレイ10を搬送棚33に移載する。
【0029】
トレイ10をステーション棚431から搬送棚33に移載した搬送車3は、搬送車3が有する通信手段を介して、搬送車側情報処理装置34が、トレイ10に付されている電子モジュール2と通信することで、情報タグ20に含まれる情報タグ関連情報を取得する。そして、搬送車3は、情報タグ関連情報に含まれている搬送先情報に基づいて、自律走行制御装置36により走行装置32を制御し、トレイ10の搬送先440まで自律走行する。搬送先440としては、指定の病室、指定の病院スタッフ、指定の病院内の施設(例えば、薬剤部門やナースステーション)等が挙げられる。搬送先440を病院スタッフとする場合、病院スタッフが携帯する端末8の位置情報等が搬送先440として設定される。
【0030】
なお、搬送先440までの経路上に障害物が存在する、搬送先440で所定時間経過しても容器が受け取られない、電子モジュール2または搬送車側情報処理装置34の不具合によって搬送先情報が削除された等、何らかの理由により搬送車3がトレイ10を搬送先440まで搬送できない状態(以下、「搬送不能状態」と称する。)が生じる場合がある。このような搬送不能状態が生じた場合、搬送車3は、ナースステーション等の予め決められた待機場所まで自律走行するように構成されていてもよい。また、搬送不能状態が生じた場合、搬送車3は、搬送不能状態であることを、搬送依頼者等の責任者へ通知するように構成されていてもよい。通知の方法としては、電子メール、SMS(Short Message Service)、プッシュ通知等が挙げられるが、特に限定されない。
【0031】
図2は、トレイ10の構成概要図である。トレイ10は、
図2に示すように、注射薬等の搬送物を収納可能な収容空間101を有している。トレイ10には、電子モジュール2が取り付けられている。電子モジュール2は、トレイ10の外面に取り付けられている。トレイ10において、電子モジュール2が取り付けられている面を「正面」とし、電子モジュール2が取り付けられている面とは反対側の面を「背面」とする。電子モジュール2は、トレイ10に収納した搬送物の少なくとも搬送先440に関する搬送先情報が含まれている情報タグ20を有している。
【0032】
図3は、電子モジュール2の電気構成図である。電子モジュール2は、
図3に示すように、通信部21、ディスプレイ22、記憶部23、及び制御回路24を有している。制御回路24は、通信部21、ディスプレイ22、及び記憶部23と電気的に接続されている。記憶部23には、情報タグ20が含まれている。
【0033】
通信部21は、赤外線信号を受信する機能および赤外線信号を送信する機能を有している。
図2に示すように、通信部21は、電子モジュール2の側面に設けられている。通信部21は、病院スタッフが操作する端末8や注射薬自動払出装置9から赤外線通信により送信される搬送先情報等を受信する。通信部21が受信した搬送先情報等は、情報タグ20に含まれる情報として、記憶部23に記憶される。また、通信部21は、搬送車3の搬送車側情報処理装置34から送信された情報タグ関連情報の送信を要求する赤外線信号を受信したとき、制御回路24の制御により、情報タグ20から情報タグ関連情報を取得し、搬送車3の搬送車側情報処理装置34に情報タグ関連情報を含む赤外線信号を送信する。
【0034】
ディスプレイ22は、
図2に示すように、電子モジュール2の正面に設けられている。ディスプレイ22は、制御回路24の制御により、情報タグ20に含まれている情報タグ関連情報(トレイ10に収納された物品の搬送先440、物品の内容、患者名、搬送依頼者等)を表示する。
【0035】
なお、本実施形態では、情報タグ20は、電子モジュール2に備えられている記憶部23に含まれているが、これに限定されない。例えば、情報タグ20は、ラベルシールに印刷されたバーコードやQRコード(登録商標)として構成されていてもよい。この場合、病院スタッフが操作する端末8や注射薬自動払出装置9からの要求により、情報タグ20を含んだバーコードやQRコード(登録商標)が印字されたラベルシールが印刷装置から出力されて、トレイ10の外面に取り付けられる。そして、搬送車3の搬送者側情報処理装置34は、バーコードリーダーとして、ラベルシールに印字されているバーコードやQRコード(登録商標)から情報タグ20を読み取ることで、情報タグ関連情報を取得する。
【0036】
図4、
図5は、それぞれ、搬送車3の斜視図、搬送車3の電気構成図である。
図4及び
図5に示すように、搬送車3は、モータ(駆動装置)31と、モータ31により駆動される走行装置32と、を有している。走行装置32は、タイヤ37、サスペンション(不図示)等を含む。タイヤ37は、走行装置32の下部に複数(本実施形態では4つ)設けられている。また、搬送車3は、モータ31に電力を供給するバッテリ(不図示)を有している。搬送車3は、自律走行制御装置36により走行装置32を制御することで、自律走行する。
【0037】
搬送車3は、搬送棚33と、搬送車側情報処理装置34と、搬送棚移載部35と、自律走行制御装置36と、を有している。また、搬送車3には、自律走行する際に、自己位置や走行路を検知するためのカメラ38やセンサ39が備えられている。
【0038】
搬送棚33は、走行装置32の上側に設けられている。搬送棚33はトレイ10を収納可能に構成されている。また、搬送棚33の表面には、搬送棚移載部35が設けられている。搬送棚移載部35は、例えばベルトコンベア状になっており、搬送棚33の載置面を構成するように左右方向に見て輪状になった搬送面がモータにより前後方向へ回転することで、搬送棚33に収納されているトレイ10を前後方向へ移動させる。なお、本実施形態では、搬送車3は2個の搬送棚33を備えているが、搬送車3が備えている搬送棚33の個数は限定されない。また、搬送棚移載部35は、主にトレイ10を搬送棚33からステーション棚431へ移載するために使用されるが、これに限定されず、病室やナースステーション等に配置されている物置台や搬送台へ移載可能なように構成されていてもよい。
【0039】
搬送車側情報処理装置34は、搬送棚33に収納されたトレイ10に取り付けられた電子モジュール2の通信部21と対向するように、搬送棚33の前方に設けられている。搬送車側情報処理装置34は、赤外線信号を送信する機能および赤外線信号を受信する機能を有している。搬送車側情報処理装置34は、電子モジュール2の通信部21に情報の送信を要求する赤外線信号を送信可能である。また、搬送車側情報処理装置34は、通信部21から送信された情報タグ関連情報を含む赤外線信号を受信可能である。
【0040】
搬送車側情報処理装置34は、搬送棚33にトレイ10が配置されたことが検知されたときに、当該トレイ10の電子モジュール2に情報の送信を要求する赤外線信号を発信する。搬送棚33にトレイ10が配置されたことを検知する方法として、搬送車3に備えられているカメラ38が搬送棚33に配置されたトレイ10を撮影したか否かに基づいて判定する方法が挙げられる。他には、各搬送棚33には、搬送棚33に掛かる鉛直過重を計測する過重計測部が備えられており、過重計測部が計測している過重が所定の値を超えたか否かに基づいて判定する方法が挙げられる。また、搬送車側情報処理装置34は、搬送棚33にトレイ10が配置される前から、常時又は定周期(数秒間隔等)に情報の送信を要求する赤外線信号を発信するようにしてもよい。この場合、搬送棚33にトレイ10が収納されると、当該トレイ10の電子モジュール2は、搬送車側情報処理装置34から送信された情報の送信を要求する赤外線信号を受信する。情報の送信を要求する赤外線信号を受信した電子モジュール2の通信部21は、搬送車3の搬送車側情報処理装置34に情報タグ関連情報を含む赤外線信号を送信する。搬送車側情報処理装置34は、受信した赤外線信号から、トレイ10が収納されたことを検知するとともに、情報タグ関連情報を取得する。
【0041】
自律走行制御装置36は、
図5に示すように、CPU(Central Processing Unit)361及び記憶部362等を有している。記憶部361は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)およびEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)等を含んでいる。記憶部362は、搬送車側情報処理装置34が電子モジュール2から取得した情報タグ関連情報を記憶する。また、記憶部362は、後述する経路データを記憶する。さらに、記憶部362は、地図データを記憶する。地図データは、搬送車3が走行する病院の地図に関するデータである。
【0042】
自律走行制御装置36には、カメラ38がさらに接続されている。自律走行制御装置36は、記憶部362に記憶されている地図データおよびカメラ38により撮影された画像から、自己位置を検出する。
【0043】
自律走行制御装置36は、記憶部362に記憶されている地図データ及び情報タグ関連情報に含まれている搬送先情報に基づいて、搬送棚33に配置されているトレイ10を搬送先440まで搬送するための経路を生成する。この際、自律走行制御装置36は、搬送先情報に含まれている階情報に基づいて、搬送先440が存在する階と搬送車3が配置されている階とが異なるか否かを判定する。搬送先440が存在する階と搬送車3が配置されている階とが異なる場合、自律走行制御装置36は、搬送先440として、搬送車3が配置されている階のステーション棚431を設定する。自律走行制御装置36は、薬剤部門から、トレイ10の搬送先440を経由して、薬剤部門に戻る経路を生成する。なお、搬送車3の出発場所及び帰還場所は薬剤部門に限定されず、ナースステーション等であってもよい。また、搬送車3の出発場所と帰還場所とは異なっていてもよい。自律走行制御装置36は、トレイ10を搬送先440まで搬送する最短の経路を生成する。自律走行制御装置36が生成した経路に関する経路データは、記憶部362に記憶される。自律走行制御装置36は、記憶部362に記憶された経路データに基づいて、搬送棚33に配置されているトレイ10の搬送先440まで自律走行するように走行装置32を制御する。
【0044】
図6は、本実施形態の小荷物昇降機4の構成を示す概略斜視図である。以下において、
図6に矢印で表した鉛直方向、水平方向及び搬出入方向を基準として説明する。
【0045】
小荷物昇降機4は、複数階の間で物品を搬送するためのものであって、例えば、多層階の病院内に設けられる。小荷物昇降機4は、昇降路41と、荷物かご部42と、ステーション部43と、制御部(不図示)と、を有している。
【0046】
昇降路41は、建物の複数階にわたって鉛直方向に延びている。昇降路41は、
図1に示すように、その内部と外部とを連通させる複数の出入口411を有している。複数の出入口411は、多層階の建物のそれぞれの階に対応する位置に設けられている。なお、出入口411は、多層階の建物の複数階に設けられていればよく、建物の全ての階に対応する位置に設けられていてもよいし、建物の少なくとも2つの階に対応する位置に設けられていて、建物の全ての階に対応する位置に設けられていなくてもよい。また、昇降路41は、
図1に示すように、建物のそれぞれの階の複数の出入口411に対応する位置に扉412を有している。扉412は、1枚の板状部材からなり、鉛直方向上側に移動することで出入口411を開放させ、鉛直方向下側に移動することで出入口411を閉鎖させる。制御部によって扉の移動を自動で制御することで、複数の出入口411を開閉可能である。出入口411は、昇降機移載部44によってかご内収容部421からステーション棚431へトレイ10が移載されるとき、及び、ステーション棚431からかご内収容部421へトレイ10が移載されるとき、開いた状態となる。
【0047】
荷物かご部42は、昇降路41の内部に設置されている。荷物かご部42は、不図示の駆動装置によって、昇降路41の内部を複数の出入口411の間で鉛直方向に昇降可能に構成されている。駆動装置は、例えば、牽引ロープと巻上機とを含み、荷物かご部42に取り付けられた牽引ロープが昇降路41の上部に設置された巻上機によって巻き取られることで荷物かご部42が上昇し、牽引ロープが巻上機によって送り出されることで荷物かご部42が下降する。
【0048】
荷物かご部42は、
図6に示すように、それぞれトレイ10を収容可能な1つまたは複数のかご内収容部421を有している。1つまたは複数のかご内収容部421は、荷物かご部42の内部において、例えば、鉛直方向に2段且つ水平方向に2列となるように4つのかご内収容部421が設けられている。
【0049】
本実施形態において、搬送されるトレイ10のサイズは、それぞれのかご内収容部421のサイズよりもやや小さいサイズである。荷物かご部42が、鉛直方向に複数段且つ水平方向に複数列となるようにかご内収容部421を有していることにより、かご内収容部421とほぼ同等のサイズの複数のトレイ10をまとめて搬送することができる。
【0050】
ステーション部43は、
図6に示すように、昇降路41の外部に配置されている。ステーション部43は、複数階建ての建物の少なくとも2つの階に配置される。より詳細には、ステーション部43は、複数階建ての建物のうちの、出入口411及び扉412が設けられた位置に対応する複数の階に配置される。
図1には、3つの階のそれぞれの床面100に配置された3つのステーション部43a、43b、43cを示している。なお、
図6では、床面100の記載を省略している。
【0051】
ステーション部43は、それぞれトレイ10を収容可能であって複数の出入口411に連通するように構成される1つまたは複数のステーション棚431を有している。ステーション棚431は、ステーション部43におけるトレイ10の搬入及び搬出の両方に用いられる。ステーション棚431は、例えば、鉛直方向に複数段且つ水平方向に複数列となるように複数設けられてよい。例えば、ステーション部43は、
図6に示すように、トレイ10を収容可能な4つのステーション棚431を有している。4つのステーション棚431は、ステーション部43において、鉛直方向に2段且つ水平方向に2列となるように設けられている。ステーション部43b、43cは、
図1に示すように、ステーション部43aと同様の構成である。また、上述した複数の出入口411は、それぞれの階においてステーション部43に設けられたステーション棚431の配置される位置に対応する位置に設けられる。
【0052】
また、それぞれのステーション棚431には、ステーション側情報処理装置432が設けられている。ステーション側情報処理装置432は後述する制御部と電気的に接続される。ステーション側情報処理装置432は、常時または定周期に赤外線信号を送信する。ステーション棚431にトレイ10が配置されると、当該トレイ10に取り付けられている電子モジュール2の通信部21がステーション側情報処理装置432からの赤外線信号を受信する。ステーション側情報処理装置432からの赤外線信号を受信した電子モジュール2の通信部21は、赤外線信号をステーション側情報処理装置432へ送信する。当該赤外線信号をステーション側情報処理装置432が受信することにより、小荷物昇降機4は、ステーション棚431にトレイ10が収納されたことを検知する。
【0053】
また、小荷物昇降機4は、
図1に示すように、かご内収容部421からステーション棚431へのトレイ10の移載、及び、ステーション棚431からかご内収容部421へのトレイ10の移載を行う昇降機移載部44を有する。昇降機移載部44は、例えば、コンベヤと、それを駆動するモータを含む。なお、昇降機移載部44は、コンベヤに代えて、ローラやタイミングベルト等を含んでいてもよい。本実施形態において、昇降機移載部44は、ステーション部43及び荷物かご部42に設けられているが、ステーション部43または荷物かご部42の何れか一方に設けられていてもよい。
【0054】
制御部(不図示)は、荷物かご部42の昇降、扉412の移動による出入口411の開閉、昇降機移載部44によるトレイ10の移載、等を制御する。また、ステーション部43の前面等に、オペレータの操作により、荷物かご部42の昇降等の制御を制御部へ指示することが可能なコントローラが設けられていてもよい。
【0055】
図7のフローチャートに基づいて、搬送車3が、搬送棚33にトレイ10が収納されてから、搬送先440またはステーション棚431へトレイ10を搬送するまで自律的に行われる処理の手順を説明する。まず、搬送車3の搬送車側情報処理装置34は、搬送棚33にトレイ10が配置されたか否かを判定する(S1)。搬送車3の搬送車側情報処理装置34が、搬送棚33にトレイ10が配置されたか否かの判定方法は特に限定されないが、例えば、搬送車3に備えられているカメラにより取得した画像に基づいて、搬送車側情報処理装置34が、搬送棚33にトレイ10が配置されたか否かを判定してもよい。また、搬送棚33に設けられている搬送車側情報処理装置34と、トレイ10に取り付けられている電子モジュール2との赤外線通信が開始されたか否かに基づいて判定されてもよい。さらに、搬送棚33に掛かる鉛直方向の過重が所定の値を超えたか否かに基づいて、搬送車側情報処理装置34が、搬送棚33にトレイ10が配置されたか否かを判定してもよい。
【0056】
搬送車3の搬送車側情報処理装置34が、搬送棚33にトレイ10が配置されたと判定すると(S1:YES)、搬送車3の搬送車側情報処理装置34は、トレイ10に取り付けられている電子モジュール2に含まれている情報タグ関連情報を取得する(S2)。具体的には、次の通りである。搬送車側情報処理装置34は、情報タグ関連情報を要求する赤外線信号を電子モジュール2の通信部21に送信する。当該赤外線信号を受信した電子モジュール2は、記憶部に記憶されている情報タグ20に含まれている情報タグ関連情報を取得し、通信部21を介して、赤外線信号により情報タグ関連情報を搬送車側情報処理装置34へ送信する。なお、搬送車3の搬送車側情報処理装置34が、搬送棚33にトレイ10が配置されたと判定するまで、ステップS1の処理を繰り返す(S1:NO)。
【0057】
次いで、搬送車3の搬送車側情報処理装置34は、ステップS2において取得した情報タグ関連情報に含まれている搬送先情報から、階情報を取得する(S3)。続いて、搬送車3の搬送車側情報処理装置34は、ステップS3において取得した階情報に基づいて、搬送先440が存在する階と、搬送車3が配置されている階とが同一であるか否かを判定する(S4)。搬送先440が存在する階と、搬送車3が配置されている階とが同一であると判定する場合(S4:YES)、搬送車3の自律走行制御装置36は、情報タグ関連情報に含まれている搬送先情報、及び地図データ等に基づいて、搬送先440までの経路を生成する。そして、搬送車3の自律走行制御装置36は、生成した経路に基づいて、走行装置32を制御して、搬送先440まで自律走行する(S5)。
【0058】
搬送車3の搬送車側情報処理装置34は、搬送先440が存在する階と、搬送車3が配置されている階とが同一でないと判定する場合(S4:NO)、搬送車3の自律走行制御装置36は、地図データ等に基づいて、搬送車3が配置されている階のステーション棚431までの経路を生成する。そして、搬送車3の自律走行制御装置36は、生成した経路に基づいて、走行装置32を制御して、当該ステーション棚431まで自律走行する。次いで、搬送車3の自律走行制御装置36は、搬送棚移載部35により、トレイ10を搬送棚33からステーション棚431へ移載する(S6)。この際、搬送車3は、搬送車側情報処理装置34が送信する赤外線信号により、トレイ10に付されている情報タグ20に含まれているステータスを、「小荷物昇降機待ち」でることを示す情報に更新することを電子モジュール2へ要求してもよい。なお、このようなトレイ10のステータスの変化は、搬送依頼者や院内システムへ通知されるようにしてもよい。
【0059】
なお、本実施形態の搬送車3は、複数の搬送棚33を備えているため、複数の搬送棚33にトレイ10が配置されることがある。この場合、搬送するトレイ10の順序は特に限定されないが、例えば、先に搬送棚33に収納されたトレイ10から順に搬送するようにしてもよい。また、情報タグ関連情報に含まれている緊急度に基づいて、トレイ10の搬送順序が決定されてもよい。さらに、搬送車3の現在位置から搬送先440までの距離に基づいて、トレイ10の搬送順序が決定されてもよい。
【0060】
図8のフローチャートに基づいて、小荷物昇降機4が、搬送車3によりステーション棚431へ収納されているトレイ10を検知してから、当該トレイを搬送先の階のステーション棚431へ移載するまで自律的に行われる処理の手順を説明する。まず、小荷物昇降機4のステーション側情報処理装置432は、搬送車3によりトレイ10が収納されているステーション棚431が存在するか否かを判定する(S11)。小荷物昇降機4のステーション側情報処理装置432が、搬送車3によりトレイ10が収納されているステーション棚431が存在するか否かの判定方法は、特に限定されないが、例えば、ステーション棚431に備えられているカメラから取得した画像に基づいて、ステーション棚431に収納されているトレイ10が存在するか否かを、ステーション側情報処理装置432が判定してもよい。また、ステーション棚431に設けられているステーション側情報処理装置432と、トレイ10に取り付けられている電子モジュール2との赤外線通信が開始されたか否かに基づいて判定されてもよい。また、搬送車側情報処理装置34から送信されたトレイ10をステーション棚431に移載した旨の信号をステーション側情報処理装置432が受信することで、トレイ10が収納されているステーション棚431が存在するか否かを判定してもよい。さらに、ステーション棚431に掛かる鉛直方向の過重が所定の値を超えたか否かに基づいて、ステーション側情報処理装置432が、トレイ10が収納されているステーション棚431が存在するか否かを判定してもよい。
【0061】
ステーション側情報処理装置432は、ステーション棚431にトレイ10が収納されていると判定すると(S11:YES)、トレイ10に取り付けられている電子モジュール2に含まれている情報タグ関連情報を取得する(S12)。具体的には、次の通りである。ステーション側情報処理装置432は、情報タグ関連情報を要求する赤外線信号を電子モジュール2の通信部21に送信する。当該赤外線信号を受信した電子モジュール2は、記憶部に記憶されている情報タグ20に含まれている情報タグ関連情報を取得し、通信部21を介して、赤外線信号により情報タグ関連情報をステーション側情報処理装置432へ送信する。なお、ステーション側情報処理装置432が、トレイ10が収納されているステーション棚431が存在すると判定するまで、ステップS11の処理を繰り返す(S11:NO)。
【0062】
次いで、小荷物昇降機4のステーション側情報処理装置432は、ステップS12において取得した情報タグ関連情報に含まれている階情報を取得する(S13)。そして、小荷物昇降機4の制御部は、昇降機移載部44を制御して、トレイ10をステーション棚431から荷物かご部42に備えられているかご内収容部421へ移載する(S14)。
【0063】
続いて、小荷物昇降機4の制御部は、ステップS13において取得した階情報に基づいて、搬送先440が存在する階まで荷物かご部42を昇降させる(S15)。その後、小荷物昇降機4の制御部は、昇降機移載部44を制御して、トレイ10をかご内収容部421から搬送先440が存在する階のステーション棚431へ移載する(S16)。この際、小荷物昇降機4の制御部は、ステーション側情報処理装置432が送信する赤外線信号により、トレイ10に付されている情報タグ20に含まれているステータスを、「搬送車待ち」であることを示す情報に更新することを電子モジュール2に要求してもよい。
【0064】
図9に基づいて、トレイ10が、小荷物昇降機4によりステーション棚431に収納されてから、搬送車3により搬送先440へ搬送するまで自律的に行われる処理の手順を説明する。まず、搬送車3の自律走行制御装置36は、搬送車3が配置されている階のステーション棚431を定期的に巡回する。そして、搬送車3の搬送車側情報処理装置34は、当該ステーション棚431にトレイ10が収納されている状態(収納状態)であるか否かを判定する(S21)。搬送車3の搬送車側情報処理装置34が、ステーション棚431にトレイ10が収納状態であるか否かの判定方法は特に限定されないが、例えば、搬送車3に備えられているカメラにより取得した画像に基づいて、搬送車側情報処理装置34が、ステーション棚431にトレイ10が収納されているか否かを判定してもよい。また、搬送棚33に設けられている搬送車側情報処理装置34と、トレイ10に取り付けられている電子モジュール2との赤外線通信が開始されたか否かに基づいて判定されてもよい。この際、搬送車3は、電子モジュール2から取得した情報タグ関連情報に含まれているステータスが、「搬送車待ち」であることを示す情報である場合に、収納状態であると判定する。
【0065】
搬送車3の搬送車側情報処理装置34が、ステーション棚431が収納状態であると判定すると(S21:YES)、搬送棚移載部35が、トレイ10をステーション棚431から搬送棚33へ移載する(S22)。なお、搬送車3の搬送車側情報処理装置34が、ステーション棚431が収納状態であると判定するまで、ステップS21の処理を繰り返す(S21:NO)。次いで、ステップS2と同様に、搬送車3の搬送車側情報処理装置34は、トレイ10に取り付けられている電子モジュール2に含まれている情報タグ関連情報を取得する(S23)。次いで、搬送車3の自動走行制御装置36は、情報タグ関連情報に含まれている搬送先情報、及び地図データ等に基づいて、搬送先440までの経路を生成する。そして、搬送車3の自動走行制御装置36は、生成した経路に基づいて、走行装置32を制御して、搬送先440まで自律走行する(S24)。
【0066】
なお、本実施形態のステーション部43は、複数のステーション棚431を備えているため、複数のステーション棚431に複数のトレイ10が収納されていることがある。この場合、搬送車3が搬送するトレイ10の搬送順序は特に限定されない。例えば、先にステーション棚431に収納されたトレイ10から順に搬送するようにしてもよい。また、情報タグ関連情報に含まれている緊急度に基づいて、トレイ10の搬送順序が決定されてもよい。さらに、ステーション棚431から搬送先440までの距離に基づいて、トレイ10の搬送順序が決定されてもよいし、搬送車3の総走行距離が最短となるような配送順序でトレイ10が配送されてもよい。
【0067】
また、搬送先440までの経路上に障害物が存在する、搬送先440で所定時間経過しても容器が受け取られない、電子モジュール2または搬送車側情報処理装置34の不具合によって搬送先情報が削除された等、何らかの理由により、搬送車3がトレイ10を搬送先440まで搬送できない状態である搬送不能状態が生じる場合がある。このような搬送不能状態が生じた場合、搬送車3は、ナースステーション等の予め決められた待機場所まで自律走行するように構成されていてもよい。また、搬送不能状態が生じた場合、搬送車3は、搬送不能状態であることを、搬送依頼者や院内システムへ通知するように構成されていてもよい。さらに、搬送車3が自己位置を取得できなくなる等、予め決められた待機場所まで自律走行できなくなった場合、当該搬送車3の走行装置32を、オペレータが院内システム等を経由して遠隔操作することにより、手動走行させるように構成されていてもよい。なお、このような遠隔操作は、緊急時だけでなく通常時も、搬送車3の走行モードを自動モードから手動モードへ切り換えること等により行えるように構成されていてもよい。
【0068】
なお、搬送車3が搬送先440へ到着すると、受取人がトレイ10をピックアップすることにより、トレイ10が搬送棚33から離脱される。このトレイ10の搬送車3からの離脱をトリガーとして、搬送車側情報処理装置34が、トレイ10の搬送が完了したことを搬送依頼者や院内システムへ通知するように構成されていてもよい。搬送車側情報処理装置34が、トレイ10が搬送車3から離脱されたか否かの判定方法は、特に限定されないが、例えば、搬送車3に備えられているカメラから取得した画像に基づいて、搬送棚33に配置されていたトレイ10が搬送棚33から存在しなくなったか否かを判定してもよい。また、搬送棚33に設けられている搬送車側情報処理装置34と、トレイ10に取り付けられている電子モジュール2との赤外線通信が終了したか否かに基づいて判定されてもよい。さらに、搬送棚33に掛かる鉛直方向の過重が所定の値を下回ったか否かに基づいて、搬送車側情報処理装置34が、搬送棚33に配置されていたトレイ10が搬送棚33から存在しなくなったか否かを判定してもよい。
【0069】
また、搬送車3が受取人を承認することで、トレイ10が搬送棚33から離脱容易となるように構成されていてもよい。具体的には、次の通りである。搬送車3がトレイ10を搬送先440まで搬送している間、搬送棚33に配置されているトレイ10は、搬送棚33から離脱困難なロック状態となる。搬送車3が搬送先440に到着すると、受取人は端末8に表示されているバーコード等で表現された識別情報を搬送車側情報処理装置34に取得させる。識別情報には、受取人を識別するための情報等が含まれている。識別情報を取得した搬送車側情報処理装置34は、識別情報から特定される受取人が、トレイ10に付されている情報タグ20から特定される受取人と一致するか否か等の承認処理を行う。搬送車側情報処理装置34は、承認処理の結果、受取人が正当な受取人であると判定すると、トレイ10のロック状態を解除し、トレイ10を搬送棚33から離脱容易な状態にする。なお、トレイ10のロック状態の一例として、トレイ10の一部と搬送棚33の一部とが係合されることで、トレイ10が搬送棚33から物理的に離脱困難となっている状態が挙げられる。他にも、未承認の状態でトレイ10が搬送棚33から離脱されると、搬送車側情報処理装置34が搬送依頼者や院内システムへ通知する、または搬送車3に備えられているスピーカが警報音を発すること等により、異常が報知されるような状態であってもよい。また、端末8の電池切れ等により、承認処理において正常に搬送先情報等の照合が行われない場合、または受取人不在等により所定時間経過しても承認処理が完了しない場合、搬送車側情報処理装置34は搬送不能状態と判断し、自律走行制御装置36は予め決められた待機場所まで走行装置32を自律走行させるように構成されていてもよい。
【0070】
以上のように、本実施形態の院内搬送システム1は、(A)搬送先情報を取得可能な情報が含まれている情報タグ20が取り付けられたトレイ10と、(B)モータ31と、モータ31により駆動される走行装置32と、走行装置32に脱着可能または脱着不能に配置され、トレイ10を配置可能に構成された搬送棚33と、走行装置32または搬送棚33に配置され、搬送棚33に格納されたトレイ10の情報タグ20に含まれている搬送先情報を取得する搬送車側情報処理装置34と、搬送車側情報処理装置34から取得されたトレイ10の搬送先情報に基づいて、自律走行するように走行装置32を制御する自律走行制御装置36と、を備え、多層階の建物の複数階に1台以上配置される搬送車3、及び、(C)複数階に跨って設けられてその内部とその外部とを連通させる複数の出入口411を複数階に有する昇降路41と、昇降路41の内部を複数の出入口411の間で昇降可能に構成され、それぞれトレイ10を収容可能な1つまたは複数のかご内収容部421を有する荷物かご部42と、昇降路41の複数の出入口411の外部に配置され、それぞれトレイ10を収容可能であってかご内収容部421に連通可能に構成される1つまたは複数のステーション棚431と、トレイ10の情報タグ20に含まれている搬送先情報を取得するステーション側情報処理装置432と、を有する複数のステーション部43と、荷物かご部42またはステーション部43の少なくともいずれかに設けられ、かご内収容部421からステーション棚431へのトレイ2の移載、及びステーション棚431からかご内収容部421へのトレイ10の移載を行う昇降機移載部44と、を備え、複数の出入口411間でトレイ10を搬送する小荷物昇降機4、を有している。
したがって、搬送車3は、ステーション棚431が配置される複数階に1台以上配置される。搬送車3に備えられている搬送車側情報処理装置34は、搬送物が収納されているトレイ10に付された情報タグ20に含まれている搬送先情報を取得する。一方、小荷物昇降機4は、複数階に配置されているステーション部43に備えられているステーション側情報処理装置432により、搬送物が収納されているトレイ10に取り付けられた情報タグ20に含まれている搬送先情報を取得する。これにより、上位コントローラを介することなく、搬送車3と小荷物昇降機4とが相互に連携してトレイ10を搬送することができるため、多層階の建物で構成される医療施設において、より自律的に物品を搬送することができる。また、システム障害等で上位コントローラの動作が不安定になっている場合、搬送車3が小荷物昇降機4を利用したいタイミングで小荷物昇降機4が呼び出されない等の連携不良が発生するリスクを低減することができる。
【0071】
また、本実施形態の院内搬送システム1は、搬送先情報には、搬送先440が存在する階に関する階情報が含まれており、搬送車3は、搬送棚33からステーション棚431へのトレイ10の移載、及びステーション棚431から搬送棚33へのトレイ10の移載を行う搬送棚移載部35を有し、搬送棚33にトレイ10が収納された場合、搬送車側情報処理装置34により、トレイ10の情報タグ20が有している搬送先情報に含まれている階情報を取得し、(i)トレイ10の搬送先440が存在する階と、当該搬送車3が配置されている階とが異なる場合、自律走行制御装置36により走行装置32を制御して、当該搬送車3が配置されている階のステーション棚431まで自律走行した後、搬送棚移載部35により、搬送車3が配置されている階のステーション棚431へトレイ10を移載し、(ii)トレイ10の搬送先440が存在する階と、当該搬送車3が配置されている階とが同一である場合、自律走行制御装置36により走行装置32を制御して、トレイ10の搬送先440まで自律走行し、小荷物昇降機4は、ステーション棚431にトレイ10が移載された場合、ステーション側情報処理装置432により、トレイ10の情報タグ20に付された搬送先情報に含まれている階情報を取得し、当該トレイ10の搬送先440が存在する階のステーション棚431へ当該トレイ10を移載する。これにより、搬送車3は、トレイ10を搬送先440へ搬送するために、小荷物昇降機4を使用する必要があるか否かの判断が容易に行うことができるため、多層階の建物で構成される医療施設において、より効率的に物品を搬送することができる。
【0072】
また、本実施形態の院内搬送システム1が備えている搬送車3は、当該搬送車3が配置されている階のステーション棚431にトレイ10が収納されている収納状態を検出すると、搬送車移載部35により、トレイ10をステーション棚431から搬送棚33へ移載し、搬送車側情報処理装置34により、移載した当該トレイ10の情報タグ20に含まれている搬送先情報を取得し、自律走行制御装置36により走行装置32を制御して、当該搬送先情報に基づいて当該トレイ10の搬送先440まで自律走行する。したがって、搬送車3は、ステーション棚431にトレイ10が収納されている収納状態を検出すると、搬送棚移載部35により、ステーション棚431へ移載されたトレイ10を搬送棚33へ移載し、自律走行制御装置36により走行装置32を制御して、搬送先440まで自律走行する。これにより、より自律的に物品を搬送先440まで搬送することができる。
【0073】
また、本実施形態の院内搬送システム1が備えている搬送車3は、自律走行制御装置36により走行装置32を制御して、搬送車3が配置されている階で搬送棚33に収納されたトレイ10の搬送先440まで自律走行する際に、トレイ10を搬送先440まで搬送できない搬送不能状態が生じた場合、予め決められた待機場所まで自律走行する。したがって、搬送車3が搬送不能状態となることを防止することができる。
【0074】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施形態や実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能なものである。
【符号の説明】
【0075】
1 院内搬送システム
3 搬送車
4 小荷物昇降機
10 トレイ(容器)
20 情報タグ
31 モータ(駆動装置)
32 走行装置
33 搬送棚
34 搬送車側情報処理装置
35 搬送棚移載部
36 自律走行制御装置
41 昇降路
42 容器かご部
43 ステーション部
44 昇降機移載部
411 出入口
421 かご内収容部
431 ステーション棚
432 ステーション側情報処理装置
440 搬送先