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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128397
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】冷却器
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/36 20060101AFI20240913BHJP
【FI】
H01L23/36 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037354
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】弁理士法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】讃岐 育孝
(72)【発明者】
【氏名】中村 淳
(72)【発明者】
【氏名】内部 銀二
(72)【発明者】
【氏名】藤本 裕地
【テーマコード(参考)】
5F136
【Fターム(参考)】
5F136BA02
5F136CB07
5F136CB08
5F136CB11
5F136DA27
5F136FA02
5F136FA03
(57)【要約】
【課題】発熱体の熱を流路の断面方向に拡散させながら、効率的に放熱できる冷却器を提供する。
【解決手段】冷却器1は、発熱体に接触する第1面FSと第1面FSとは反対側の第2面SSとを含む冷却板10と、冷媒FLが流通する複数の流路Pが形成された流路部24とを具備し、流路部24の複数の流路Pに直交する断面において、第1領域R1における1以上の流路Pの占有率は、第2領域R2における1以上の流路Pの占有率より低く、第1領域R1は、第2領域R2よりも、発熱体の近傍に位置する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱体に接触する第1面と前記第1面とは反対側の第2面とを含む冷却板と、
冷媒が流通する複数の流路が形成された流路部とを具備し、
前記流路部の前記複数の流路に直交する断面において、第1領域における1以上の流路の占有率は、第2領域における1以上の流路の占有率より低く、
前記第1領域は、前記第2領域よりも、前記発熱体の近傍に位置する冷却器。
【請求項2】
前記第1領域における前記複数の流路に含まれる第1流路の断面積は、前記第2領域における前記複数の流路に含まれる第2流路の断面積よりも小さい、
請求項1に記載の冷却器。
【請求項3】
前記第1領域における単位面積当たりの前記複数の流路の本数は、前記第2領域における単位面積当たりの前記複数の流路の本数よりも少ない、
請求項1に記載の冷却器。
【請求項4】
前記流路部の前記流路に直交する断面において、
前記複数の流路の配列が、前記第2面に平行であり、
各配列は、前記第2面からの距離が異なり、
前記配列間の距離は互いに等しい、
請求項1に記載の冷却器。
【請求項5】
複数の前記発熱体が前記冷却板において第1方向に配列し、
複数の前記流路部が、前記第1方向に配列する、
請求項1に記載の冷却器。
【請求項6】
前記流路部は、
前記第2面に外壁面が対向した状態で当該第2面に沿って積層された複数の流路板を備え、
前記複数の流路板の各々には、開口部が形成され、
前記複数の流路板にわたり前記開口部が連通することで冷媒の流路が形成される、
請求項1に記載の冷却器。
【請求項7】
前記複数の流路板の各々には、前記開口部を含む複数の開口部が形成され、
前記複数の開口部の各々が前記複数の流路板にわたり連通することで、互いに並行する複数の流路が形成される、
請求項6に記載の冷却器。
【請求項8】
前記複数の流路板の各々には、当該流路板の表面に平行な第1方向及び第2方向にわたり前記複数の開口部が形成される、
請求項7に記載の冷却器。
【請求項9】
前記複数の流路板の各々は、長尺状の板状部材であり、
前記複数の流路板の各々において長辺に対応する前記外壁面が前記第2面に対向し、
前記複数の流路板の積層の厚さは、前記各流路板の長辺の長さを下回る、
請求項6に記載の冷却器。
【請求項10】
前記複数の流路板の厚さが、互いに一致する、請求項6に記載の冷却器。
【請求項11】
前記複数の流路内には突起部が設けられている、
請求項1に記載の冷却器。
【請求項12】
前記流路部を収容する収容空間と、前記収容空間に冷媒を供給するための供給管と、前記収容空間から冷媒を排出するための排出管とを含む筐体を具備し、
前記冷却板は、前記筐体に固定されることで前記収容空間を閉塞する
請求項1の冷却器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばパワー半導体モジュール等の発熱体を冷却するために、冷媒を用いた冷却器が用いられる。発熱体をより効率的に冷却するため、冷却器は、多穴管を備えることがある。しかし、多穴管を備える冷却器は、冷媒の流路が多数に分流されるため、冷媒の流速が低くなり、放熱性能が低くなる。
【0003】
例えば、特許文献1は、放熱性能を高めるため、多穴管を、冷媒の流れ方向に蛇行させる構成を有する冷却器を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許5423637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
多穴管を用いた冷却器において、とりわけ多穴管の肉厚が薄く流路幅が大きい場合、発熱体の熱は、専ら発熱体直下の流路によってしか伝達されなかった。この結果、効率的な放熱が困難であった。
【0006】
そこで、本発明は、発熱体の熱を流路の断面方向に拡散させながら、効率的に放熱できる冷却器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る冷却器は、発熱体に接触する第1面と前記第1面とは反対側の第2面とを含む冷却板と、冷媒が流通する複数の流路が形成された流路部とを具備し、前記流路部の前記複数の流路に直交する断面において、第1領域における1以上の流路の占有率は、第2領域における1以上の流路の占有率より低く、前記第1領域は、前記第2領域よりも、前記発熱体の近傍に位置する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る冷却器1、及び冷却器1を含む半導体装置5の斜視図。
図2】ウォータージャケット20の構成を示す図。
図3】流路部24の断面図。
図4】流路部24の断面図。
図5】流路部24の断面図。
図6】第1実施形態の比較例に係る冷却器と、第1実施形態の実施例に係る冷却器の熱抵抗比を示すグラフ。
図7】流路部24Aの断面図。
図8】ウォータージャケット20Bの構成を示す図。
図9】ウォータージャケット20Bの構成を示す図。
図10】ウォータージャケット20Cの構成を示す図。
図11】ウォータージャケット20Cの構成を示す図。
図12】流路部24Cの断面図。
図13】変形例1における流路P11の形状の例を示す図。
図14】変形例2における流路P11の形状の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態に係る冷却装置について図面を参照して説明する。なお、各図において、各部の寸法及び縮尺は、実際のものと適宜に異ならせてある。また、以下に述べる実施形態は、好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本開示の範囲は、以下の説明において特に本開示を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0010】
1:第1実施形態
以下、図1図7を参照することにより、第1実施形態に係る冷却器について説明する。
【0011】
1-1:第1実施形態の構成
図1は、第1実施形態に係る冷却器1、及び冷却器1を含む半導体装置5の斜視図である。冷却器1は、冷却板10と、ウォータージャケット20とを備える。冷却板10は、ウォータージャケット20に載置される。載置の方法は、例えば、接着剤を用いた接着によるものでもよく、溶接によるものでもよい。
【0012】
冷却板10は、金属、とりわけ銅やアルミニウムなどの熱伝導率の比較的高い金属により構成されることが好適である。あるいは、冷却板10は、クラッド材により構成されてもよい。冷却板10がクラッド材により構成される場合、銅とアルミニウムとを圧延により一体成型したクラッド材であることが好適である。
【0013】
冷却器1の内部には、冷却板10に接する発熱体を冷却することを目的に、粘性を有する液体の冷媒FLが流通する。冷媒FLを冷却器1に供給するための供給管71がウォータージャケット20に接続される。また、発熱体を冷却した後の冷媒FLを冷却器1から排出するための排出管72が、ウォータージャケット20に接続される。冷媒FLは図示しないポンプにより、冷却器1に供給される。
【0014】
なお、以降の説明では、相互に直交するX軸、Y軸及びZ軸を想定する。X軸、Y軸及びZ軸は、以降の説明で例示される全図において共通である。図1に例示される通り、任意の地点からみてX軸に沿う一方向をX1方向と表記し、X1方向と反対の方向をX2方向と表記する。X軸方向は、X1方向及びX2方向の両方向を含む方向である。同様に、任意の地点からY軸に沿って相互に反対の方向をY1方向及びY2方向と表記する。Y軸方向は、Y1方向及びY2方向の両方向を含む方向である。また、任意の地点からZ軸に沿って相互に反対の方向をZ1方向及びZ2方向と表記する。Z軸方向は、Z1方向及びZ2方向の両方向を含む方向である。
【0015】
図1において、冷却器1に冷媒FLが供給され、冷却器1から冷媒FLが排出される方向をY軸方向とする。また、冷却器1のウォータージャケット20の底面を水平面に設置することを仮定した場合に、当該水平面においてY軸に直交する方向をX軸方向とする。更に、X軸、及びY軸に直交する方向であって、冷却板10とウォータージャケット20との載置方向をZ軸方向とする。
【0016】
冷却器1においては、発熱体が冷却される。発熱体は、冷却器1による冷却の対象となる物体である。第1実施形態の発熱体は、複数の半導体モジュール50A~50Cである。ここで「半導体モジュール」とは、半導体素子(例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)又はMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)等のスイッチング素子を含む半導体チップ)を樹脂ケースに収容した半導体モジュールである。半導体装置5は、冷却器1と半導体モジュール50A~50Cとを備える。3個の半導体モジュール50A~50Cが、それぞれ3個の領域40A~40Cにおいて、冷却板10に接する。3個の領域40A~40Cは、冷却板10のZ1方向に位置する表面である第1面FSに含まれる。
【0017】
冷媒FLは、Y2方向から、供給管71を経由して、ウォータージャケット20に供給される。供給された冷媒FLは、冷却板10の領域40A~40Cに接する半導体モジュール50A~50Cを冷却する。半導体モジュール50A~50Cを冷却した後の冷媒FLは、ウォータージャケット20から、排出管72を経由してY1方向へと排出される。
【0018】
図2は、ウォータージャケット20の構成を示す図である。図2に示されるように、ウォータージャケット20は、筐体21を備える。筐体21には、収容空間23が設けられる。図2に示される例において、収容空間23は、直方体の形状を有する。また、ウォータージャケット20は、流路部24を備える。流路部24は、押出成型等により製造されることが好適である。流路部24のZ1方向に位置する外壁面は、冷却板10のZ2方向に位置する表面である第2面SSに対向する。流路部24のZ1方向に位置する外壁面は、冷却板10に接合する。流路部24と冷却板10との接合方法は、ろう付けであることが好適である。とりわけ上記のように、冷却板10が銅とアルミニウムからなるクラッド材を用いて製造される場合、第1面FSを銅とし、第2面SSをアルミニウムとすることで、流路部24と冷却板10とを、ろう付けすることが可能となる。この場合、冷却板10内において、銅部分の厚さが相対的に薄く、アルミニウム部分の厚さが相対的に厚いクラッド材を用いることが好適である。例えば、銅部分の厚さが10%前後であり、残部がアルミニウムを用いて製造された一般的なクラッド材を用いることが可能である。あるいは、銅部分の厚さとアルミニウム部分の厚さとを等しい厚さとしてもよい。この場合、銅の熱拡散性の高さを生かすことが可能となる。
【0019】
また、冷却板10が筐体21に固定されることで、収容空間23は閉塞される。流路部24は、収容空間23内に設置される。
【0020】
流路部24は金属製であることが好適である。また、流路部24は、アルミニウム製であることが更に好適である。しかし、流路部24は金属製又はアルミニウム製でなくてもよい。
【0021】
図3は、図2に示されるA-A線を通り、XZ平面に平行な平面で切断した流路部24の断面図である。図4は、図2に示されるB-B線を通り、XY平面に平行な平面で切断した流路部24の断面図である。図5は、図1の断面Cにおける冷却器1の断面図である。図5は、図2に示されるC-C線を通り、YZ平面に平行な平面で切断した流路部24の断面図を含む。
【0022】
図3図5に示されるように、流路部24には、冷媒FLが流通する複数の流路Pが形成される。流路Pの各々は、Y軸方向に延在する。図3に示される流路Pに直交する断面において、複数の流路Pの配列は、第2面SSに並行する4列となっている。また、各配列は第2面SSからの距離が異なり、各配列間の距離は等しい。
【0023】
図3図5に示される例においては、流路部24において、発熱体である複数の半導体モジュール50A~50Cの近傍の第1領域R1には、流路P12~P14,P18~P20,及びP24~P26が配置される。一方、流路部24において、第1領域R1に比較して、複数の半導体モジュール50A~50Cよりも遠方に位置する第2領域R2には、流路P11,P15~P17,P21~23,P27,P39,P59,及びP79が配置される。第1領域R1における流路P12~P14,P18~P20,及びP24~P26の各々は、「第1流路」の一例である。一方、第2領域R2における流路P11,P15~P17,P21~23,P27,P39,P59,及びP79の各々は、「第2流路」の一例である。第1流路の各々の断面積は、第2流路の各々の断面積よりも小さい。一例として、第1流路と第2流路の断面が円形である場合、第1流路の直径は1.0mmであり、第2流路の直径は1.4mmであることが好適である。
【0024】
従って、第1領域R1における流路P12~P14,P18~P20,及びP24~P26の占有率は、第2領域R2における流路P11,P15~P17,P21~23,P27,P39,P59,及びP79の占有率よりも低い。ここで、「占有率」とは、流路部24の断面の単位面積あたり、1以上の流路Pが占有する断面積の割合のことである。
【0025】
第1領域R1における流路P12~P14,P18~P20,及びP24~P26の占有率は、第2領域R2における流路P11,P15~P17,P21~23,P27,P39,P59,及びP79の占有率よりも低いため、発熱体の熱は、流路部24内における流路P以外の金属部分を経由して、発熱体の近傍に位置する第1領域R1よりも遠方の、第2領域R2にまで拡散される。また、冷却板10内においても、発熱体との接触部からより遠方に、発熱体の熱が拡散される。この結果、効率的な放熱が可能となる。
【0026】
図6は、第1実施形態の比較例に係る冷却器と、第1実施形態の実施例に係る冷却器の熱抵抗比を示すグラフである。比較例1は、流路部24として銅製の流路部を用いると共に、本実施形態のような多穴管の代わりに、ピンフィンが備わる冷却器である。比較例2は、流路部24としてアルミニウム製の流路部を用いると共に、本実施形態のような多穴管の代わりに、平板フィンが備わる冷却器である。実施例1は、本実施形態に係る冷却器1であると共に、冷却板10がアルミニウム製の冷却器である。実施例2は、本実施形態に係る冷却器1であると共に、冷却板10がクラッド材の冷却器である。なお、ここで「熱抵抗比」とは、比較例1に係る冷却器の熱抵抗値を100%とした場合の、他の冷却器の熱抵抗値の比率のことである。また熱抵抗値は、その値が低いほど熱が伝達されやすい、すなわち放熱しやすいことを示す。
【0027】
比較例1に示されるような銅製のピンフィン式の冷却器は、熱伝導率が高い銅が用いられているため、熱抵抗値が低いものの、材料費が効果であった。一方、比較例2に示されるようなアルミニウム製の平板フィン式の冷却器は、比較例1に示される銅製の冷却器に比較して、低コストで製造できる一方、熱抵抗値が高かった。比較例に係る冷却器としての、ピンフィン又は平板フィンを用いた冷却器では、水やクーラント等の冷媒と当該フィンとの接液面積、及び流路の断面積が、放熱性能と圧力損失に影響する。比較例においては、放熱性能と圧力損失の許容範囲内で、ピンフィン又は平板フィンの形状と数が定まる。フィンを長くし、接液面積を増加させると、放熱性能は増加するものの、フィンの先端に対してはあまり熱が伝達せず、冷媒とフィンの先端とで温度差が発生しない。このため、冷却性能が十分得られないことが問題となる。また、フィンを用いた場合、放熱体から離れた場所への熱拡散ができない。この結果、流路部全体での熱抵抗が上がり、冷却性能が低下するという問題がある。
【0028】
一方、実施例1に係る冷却器1では、フィンではなく多穴管を用いると共に、発熱体直下の流路の断面積を、それ以外の箇所の流路の断面積よりも小さくすることにより、放熱体で発せられる熱が、流路以外の金属部分を伝導して、発熱体から遠方まで拡散する。このため、流路部24全体での熱抵抗が下がり、冷却性能が向上する。この結果、実施例1に係る冷却器1は、流路部24の材料として銅よりもコストの低いアルミニウムを用いながら、銅を用いた比較例1に係る冷却器と同等の熱抵抗値を示す。実施例2に係る冷却器1では、冷却板10としてクラッド材を用いることにより、冷却板10内においても、発熱体との接触部からより遠方に、発熱体の熱が拡散される。この結果、実施例1に係る冷却器1に比較して、冷却性能が更に向上する。
【0029】
1-2:第1実施形態が奏する効果
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0030】
本実施形態に係る冷却器1は、発熱体に接触する第1面FSと第1面FSとは反対側の第2面SSとを含む冷却板10と、冷媒FLが流通する複数の流路Pが形成された流路部24とを具備する。流路部24の複数の流路Pに直交する断面において、第1領域R1における1以上の流路Pの占有率は、第2領域R2における1以上の流路Pの占有率より低い。第1領域R1は、第2領域R2よりも、発熱体の近傍に位置する。
【0031】
この構成によれば、発熱体の熱を流路Pの断面方向に拡散させながら、効率的に放熱できる。
【0032】
また、本実施形態に係る冷却器1において、第1領域R1における複数の流路Pに含まれる第1流路の断面積は、第2領域R2における複数の流路Pに含まれる第2流路の断面積よりも小さい。
【0033】
この構成によれば、発熱体近傍の流路Pの断面積を、それよりも遠方の流路Pの断面積よりも小さくすることで、発熱体の熱を流路Pの断面方向に拡散させやすくなる。
【0034】
また、本実施形態に係る冷却器1において、流路部24の流路Pに直交する断面において、複数の流路Pの配列が、第2面SSに平行である。各配列は、第2面SSからの距離が異なる。配列間の距離は互いに等しい。
【0035】
この構成によれば、流路Pが配列される複数の配列の間の距離を互いに等しくすることで、流路Pの断面方向において、より均一に放熱しやすくなる。
【0036】
また、本実施形態に係る冷却器1は、流路部24を収容する収容空間23と、収容空間23に冷媒FLを供給するための供給管71と、収容空間23から冷媒FLを排出するための排出管72とを含む筐体21を具備する。冷却板10は、筐体21に固定されることで収容空間23を閉塞する。
【0037】
この構成によれば、冷却板10が、収容空間23を閉塞するための蓋部として利用される。流路部24が収容空間23に収容された状態で冷却板10を筐体21に固定する簡便な工程により、収容空間23を密閉できる。
【0038】
2:第2実施形態
以下、図7を参照することにより、第2実施形態に係る冷却器1Aについて説明する。なお、以下では説明の簡略化のため、第2実施形態に係る冷却器1Aが備える構成要素のうち、第1実施形態に係る冷却器1と同一の構成要素については、同一の符号を用いると共に、その機能の説明を省略することがある。
【0039】
第2実施形態に係る冷却器1A、及び冷却器1Aを含む半導体装置5Aの斜視図は、図1に示される第1実施形態に係る冷却器1、及び冷却器1を含む半導体装置5の斜視図と同様である。
【0040】
図7は、図2に示されるA-A線を通り、XZ平面に平行な平面で切断した流路部24Aの断面図である。図7は、第1実施形態に係る図3に対応する。なお、説明の簡略化のため、第2実施形態の説明では、第1実施形態に係る図4及び図5に対応する図は省略する。
【0041】
図7に示されるように、第2実施形態では、第1実施形態と異なり、第1領域R1における第1流路の各々の断面積と、第2領域R2における第2流路の各々の断面積とは、互いに等しい。しかし、第1領域R1における単位面積当たりの第1流路の本数は、第2領域R2における単位面積当たりの第2流路の本数よりも少ない。図7図2と比較すると、第1実施形態に係る流路部24では、各々の第1領域R1に3本の流路Pが配置されていた。一方で、第2実施形態に係る流路部24Aでは、各々の第1領域R1に1本の流路Pのみが配置される。すなわち、第2実施形態に係る流路部24Aでの第1領域R1における単位面積当たりの流路Pの本数は、第1実施形態に係る流路部24での第1領域R1における単位面積当たりの流路Pの本数より少ない。第1実施形態に係る流路部24において、第1領域R1における単位面積当たりの流路Pの本数と、第2領域R2における単位面積当たりの流路Pの本数とは互いに等しい。従って、第2実施形態に係る流路部24Aにおいて、第1領域R1における単位面積当たりの流路Pの本数は、第2領域R2における単位面積当たりの流路Pの本数より少ない。
【0042】
従って、第1領域R1における流路P13,P19,及びP25の占有率は、第2領域R2における流路P11,P15~P17,P21~23,P27,P39,P59,及びP79の占有率よりも低い。
【0043】
第1領域R1における流路P13,P19,及びP25の占有率は、第2領域R2における流路P11,P15~P17,P21~23,P27,P39,P59,及びP79の占有率よりも低いため、発熱体の熱は、流路部24A内における流路P以外の金属部分を経由して、発熱体の近傍に位置する第1領域R1よりも遠方の、第2領域R2にまで拡散される。また、冷却板10内においても、発熱体との接触部からより遠方に、発熱体の熱が拡散される。この結果、効率的な放熱が可能となる。
【0044】
2-2:第2実施形態が奏する効果
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0045】
本実施形態に係る冷却器1Aにおいて、第1領域R1における単位面積当たりの複数の流路の本数は、第2領域R2における単位面積当たりの複数の流路の本数よりも少ない。
【0046】
この構成によれば、発熱体近傍の流路Pの本数を、それよりも遠方の流路Pの本数よりも少なくすることで、発熱体の熱を流路Pの断面方向に拡散させやすくなる。
【0047】
3:第3実施形態
以下、図8及び図9を参照することにより、第3実施形態に係る冷却器1Bについて説明する。なお、以下では説明の簡略化のため、第3実施形態に係る冷却器1Bが備える構成要素のうち、第1実施形態に係る冷却器1及び第2実施形態に係る冷却器1Aと同一の構成要素については、同一の符号を用いると共に、その機能の説明を省略することがある。
【0048】
第3実施形態に係る冷却器1B、及び冷却器1Bを含む半導体装置5Bの斜視図は、図1に示される第1実施形態に係る冷却器1、及び冷却器1を含む半導体装置5の斜視図と同様である。
【0049】
図8及び図9は、ウォータージャケット20Bの構成を示す図である。第1実施形態に係るウォータージャケット20は、単一の部材である流路部24を備える。一方、第2実施形態に係るウォータージャケット20Bは、単一の部材である流路部24の代わりに、3つの流路部24B-1~24B-3を備える。図2図8とを比較すると、単一の部材である流路部24が、3つの流路部24B-1~24B-3の総体に対応する。すなわち、流路部24が、X軸方向に3分割された各部材が、流路部24B-1~24B-3に対応する。
【0050】
第1実施形態と同様に、本実施形態において、複数の発熱体である半導体モジュール50A~50Cが、冷却板10において、X軸方向に配列する。X軸方向は、「第1方向」の一例である。図9に示されるように、複数の流路部24B-1~24B-3は、半導体モジュール50A~50Cと同様に、X軸方向に配列する。複数の流路部24B-1~24B-3は、複数の半導体モジュール50A~50Cと一対一に対応する。
【0051】
3-2:第3実施形態が奏する効果
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0052】
本実施形態に係る冷却器1Bにおいて、複数の発熱体である半導体モジュール50A~50Cが、冷却板10においてX軸方向に配列する。複数の流路部24B-1~24B-3は、複数の半導体モジュール50A~50Cと同様に、X軸方向に配列する。
【0053】
この構成によれば、複数のブロックを組み合わせて、流路部24B-1~24B-3の総体を構成することにより、従来の冷却器に比較して高い放熱性能を有する冷却器1Bを簡便に製造できる。
4:第4実施形態
以下、図10図12を参照することにより、第4実施形態に係る冷却器1Cについて説明する。なお、以下では説明の簡略化のため、第4実施形態に係る冷却器1Cが備える構成要素のうち、第1実施形態に係る冷却器1、第2実施形態に係る冷却器1A、及び第3実施形態に係る冷却器1Bと同一の構成要素については、同一の符号を用いると共に、その機能の説明を省略することがある。
【0054】
第4実施形態に係る冷却器1C、及び冷却器1Cを含む半導体装置5Cの斜視図は、図1に示される第1実施形態に係る冷却器1、及び冷却器1を含む半導体装置5の斜視図と同様である。
【0055】
図10及び図11は、ウォータージャケット20Cの構成を示す図である。図10に示されるように、ウォータージャケット20Cは、筐体21を備える。筐体21には、収容空間23が設けられる。図10に示される例において、収容空間23は、直方体の形状を有する。また、ウォータージャケット20Cは、複数の流路板22A~22Hからなる流路部24Cを備える。複数の流路板22A~22Hの各々は、X軸方向を長手方向とする長尺の板状部材であることが好適である。また、複数の流路板22A~22Hの各々は、プレス加工等により製造されることが好適である。複数の流路板22A~22Hの長辺に対応し、Z1方向に位置する外壁面は、冷却板10のZ2方向に位置する表面である第2面SSに対向する。また、図11に示されるように、複数の流路板22A~22Hは、Y軸方向に積層する。複数の流路板22A~22Hの各々に備わるXZ平面に平行な表面が、互いに隙間なく接する状態で、複数の流路板22A~22Hの各々のZ1方向に位置する外壁面が、冷却板10に接合する。複数の流路板22A~22Hの各々と冷却板10との接合方法は、ろう付けであることが好適である。
【0056】
また、冷却板10が筐体21に固定されることで、収容空間23は閉塞される。複数の流路板22A~22Hが一体となった流路部24Cは、収容空間23内に設置される。流路部24CのY軸方向の厚さは、各流路板22A~22HのX軸方向の長辺の長さを下回ることが好適である。
【0057】
複数の流路板22A~22Hの各々は金属製であることが好適である。しかし、複数の流路板22A~22Hの各々は金属製でなくてもよい。例えば、複数の流路板22A~22Hの各々は、熱伝導率が高く耐水性を有する、セラミックス又はグラファイトであってもよい。また、複数の流路板22A~22Hの板厚は互いに等しいことが好適である。しかし、複数の流路板22A~22Hの板厚は、互いに等しくなくてもよい。複数の流路板22A~22HのY軸方向の厚さは、1mm~2mm程度であることが好適である。しかし、当該厚さは、1mm~2mm程度に限定されない。また、複数の流路板22A~22Hの各々は、単一の部材によって構成されてもよく、複数の部材から構成されてもよい。例えば、複数の流路板22A~22Hの各々は、複数の1mm~2mmよりも薄い金属板を張り合わせることにより製造されてもよい。
【0058】
図11に示されるように、流路板22Aには、複数の開口部221Aが形成されることが好適である。例えば図3に示されるように、流路板22Aには、当該流路板22AのXZ平面に平行な表面において、X軸方向及びZ軸方向にわたり複数の開口部221Aが形成される。なお、X軸方向は「第1方向」の一例である。また、Z軸方向は「第2方向」の一例である。また、この場合、流路板22Aに形成される複数の開口部221Aは、格子状に整列することが好適である。しかし、複数の開口部221Aは、格子状に整列していなくてもよい。また、図11に示される例において、複数の開口部221Aは、X軸方向に17列、Z軸方向に4列並んでいる。しかし、流路板22Aに複数の開口部221Aが格子状に整列する場合、X軸方向の列数、及びZ軸方向の列数は、任意の列数としてよい。複数の開口部221Aの各々は円形である。流路板22B~22Hの各々についても、流路板22Aと同様に、複数の開口部221B~221Hが形成される。複数の流路板22B~22Hと、複数の開口部221B~221Hとは、互いに一対一に対応する。複数の開口部221B~221Hの各々も、複数の開口部221Aと同様に円形である。
【0059】
図12は、図10に示されるB-B線を通り、XY平面に平行な平面で切断した流路部24Cの断面図である。図12に示されるように、開口部221A~221HがY軸方向に連通することにより、冷媒FLの流路P11~P27が形成される。具体的には、流路板22Aには、複数の開口部221Aが形成される。同様に、流路板22B~22Hの各々には、複数の開口部221B~221Hが形成される。複数の開口部221A~221Hの各々が、複数の流路板22A~22Hにわたり連通することで、互いに並行する複数の流路P11~P27が形成される。
【0060】
4-2:第4実施形態が奏する効果
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0061】
本実施形態に係る冷却器1Cにおいて、流路部24Cは、第2面SSに外壁面が対向した状態で当該第2面SSに沿って積層された複数の流路板22A~22Hを備える。複数の流路板22A~22Hの各々には、開口部221A~221Hが形成される。複数の流路板22A~22Hにわたり開口部221A~221Hが連通することで冷媒FLの流路Pが形成される。
【0062】
この構成によれば、従来の冷却器に比較して高い放熱性能を有しながら、簡便に製造できる冷却器1Cを提供できる。
【0063】
また、本実施形態に係る冷却器1Cにおいて、複数の流路板22A~22Hの各々には、複数の開口部221A~221Hが形成される。複数の開口部221A~221Hの各々が複数の流路板22A~22Hにわたり連通することで、互いに並行する複数の流路Pが形成される。
【0064】
この構成によれば、各流路板22A~22Hにおける複数の開口部221A~221Hの各々が複数の流路板22A~22Hにわたり連通することで複数の流路Pが形成される。従って、冷却板10の広範囲にわたり発熱体を冷却することが可能となる。
【0065】
また、本実施形態に係る冷却器1Cにおいて、複数の流路板22A~22Hの各々には、当該流路板22A~22Hの表面に平行なX軸方向及びZ軸方向にわたり複数の開口部221A~221Hが形成される。
【0066】
この構成によれば、冷却板10の広範囲にわたり発熱体を冷却することが可能である。
【0067】
また、本実施形態に係る冷却器1Cにおいて、複数の流路板22A~22Hの各々は、長尺状の板状部材である。複数の流路板22A~22Hの各々において長辺に対応する外壁面が、冷却板10の第2面SSに対向する。複数の流路板22A~22Hの積層の厚さは、各流路板22A~22Hの長辺の長さを下回る。
【0068】
この構成によれば、複数の流路板22A~22Hの積層の厚さが各流路板22A~22Hの長辺の長さを上回る構成と比較して、必要な流路板22A~22Hの枚数が削減される。従って、冷却器1Cの製造が簡素化される。
【0069】
また、本実施形態に係る冷却器1Cにおいて、複数の流路板22A~22Hの厚さが、互いに一致する。
【0070】
この構成によれば、複数の流路板22A~22Hの厚さを等しくすることにより、冷却器1を簡便に製造できる。
【0071】
5:変形例
本開示は、以上に例示した実施形態に限定されない。具体的な変形の態様を以下に例示する。
【0072】
5-1:変形例1
第1実施形態に係る冷却器1~第4実施形態に係る冷却器1Cにおいて、流路PのXZ平面に平行な断面は、円形であった。しかし、流路PのXZ平面に平行な断面は、円形には限定されない。図13は、変形例1における流路P11の形状の例を示す図である。図13に示されるように、流路P11は、例えば四角形であってもよい。また、図13においては一例として、流路P11の断面の形状を示したが、流路P11以外の流路Pの断面が四角形であってもよい。更に、流路部24~24Cに備わる全ての流路Pの断面が四角形であってもよく、一部の流路Pの断面が四角形であってもよい。
【0073】
5-2:変形例2
図14は、変形例2における流路P11の形状の例を示す図である。図14に示されるように、流路P11は、その内周面に突起部PRを具備してもよい。突起部PRの個数は1つであってもよく、複数であってもよい。また、突起部PRは、Y軸方向に配列される複数のピンフィンであってもよく、Y軸方向に延在する平板フィンであってもよい。また、図14においては一例として、流路P11が突起部PRを具備する態様を示したが、流路P11以外の流路Pが突起部PRを具備してもよい。更に、流路部24~24Cに備わる全ての流路Pが突起部PRを具備してもよく、一部の流路Pが突起部PRを具備してもよい。流路Pが突起部PRを具備することにより、流路Pの内周面の表面積が増加する。この結果、流路Pによってもたらされる冷却性能が向上する。
【符号の説明】
【0074】
1,1A,1B,1C…冷却器、5,5A,5B,5C…含む半導体装置、10…冷却板、20,20B,20B,20C…ウォータージャケット、21…筐体、22A~22H…流路板、23…収容空間、24,24A,24A,24B,24C…流路部、40A,40B,40C…領域、50A,50B,50C…半導体モジュール、71…供給管、72…排出管、221A~221H…開口部、P…流路、R1…第1領域、R2…第2領域
図1
図2
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