(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024012840
(43)【公開日】2024-01-31
(54)【発明の名称】電池管理装置
(51)【国際特許分類】
G01K 11/322 20210101AFI20240124BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20240124BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20240124BHJP
H01M 10/6554 20140101ALI20240124BHJP
H01M 10/658 20140101ALI20240124BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20240124BHJP
H01M 10/633 20140101ALI20240124BHJP
【FI】
G01K11/322
H01M10/48 301
H01M10/613
H01M10/6554
H01M10/658
H01M10/625
H01M10/633
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022114597
(22)【出願日】2022-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】草野 大志
(72)【発明者】
【氏名】池田 駿介
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 律夫
【テーマコード(参考)】
2F056
5H030
5H031
【Fターム(参考)】
2F056VF02
2F056VF12
5H030AA06
5H030AS06
5H030AS08
5H030FF22
5H031CC09
5H031KK01
5H031KK02
(57)【要約】
【課題】電池セルの異常を適切に検出する。
【解決手段】電池管理装置は、複数の電池セルを有する電池モジュールと、前記電池モジュールを冷却する冷却プレートと、前記電池モジュールと前記冷却プレートとの間に配置される第1光ファイバと、前記冷却プレートと前記第1光ファイバとの間に配置される断熱部材と、前記第1光ファイバに光を入射することに応じて発生する散乱光に基づいて、前記複数の電池セルの温度を検出する温度検出装置と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池セルを有する電池モジュールと、
前記電池モジュールを冷却する冷却プレートと、
前記電池モジュールと前記冷却プレートとの間に配置される第1光ファイバと、
前記冷却プレートと前記第1光ファイバとの間に配置される断熱部材と、
前記第1光ファイバに光を入射することに応じて発生する散乱光に基づいて、前記複数の電池セルの温度を検出する温度検出装置と、
を備える電池管理装置。
【請求項2】
制御装置をさらに備え、
前記制御装置は、
1つまたは複数のプロセッサと、
前記プロセッサに接続される1つまたは複数のメモリと、
を有し、
前記プロセッサは、
前記第1光ファイバを用いて検出される前記電池セルの温度が、所定閾値以上となった場合、所定の第1報知制御を実行すること、
を含む処理を実行する、請求項1に記載の電池管理装置。
【請求項3】
前記冷却プレートにおける前記第1光ファイバが配置される面とは反対側の面に配置される第2光ファイバをさらに備え、
前記温度検出装置は、
前記第2光ファイバに光を入射することに応じて発生する散乱光に基づいて、前記冷却プレートの内部を流通する熱媒体の温度を検出する、請求項1に記載の電池管理装置。
【請求項4】
制御装置をさらに備え、
前記制御装置は、
1つまたは複数のプロセッサと、
前記プロセッサに接続される1つまたは複数のメモリと、
を有し、
前記プロセッサは、
前記第1光ファイバを用いて検出される前記電池セルの温度と、前記第2光ファイバを用いて検出される前記熱媒体の温度との温度差が、所定温度差以上である場合、所定の第2報知制御を実行すること、
を含む処理を実行する、請求項3に記載の電池管理装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、
前記第1光ファイバを用いて検出される前記電池セルの温度が、所定閾値以上となった場合、所定の第1報知制御を実行すること、
を含む処理を実行し、
前記第2報知制御では、前記第1報知制御よりも、緊急度あるいは重要度が高い報知内容を示す報知が実行される、請求項4に記載の電池管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、複数の単電池の側面に光ファイバを延在し、光ファイバに光を入射することに応じて生じるラマン散乱光に基づいて、複数の単電池の温度を検出する技術が開示されている。特許文献1の技術では、単電池の温度が他の単電池の温度より相対的に高温である場合、その単電池が故障していると判定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では、集合して配置された複数の単電池(電池セル)のうち外周に位置する単電池の側面の光ファイバが、外傷を受け易い。光ファイバが外傷を受けると、単電池の温度を適切に検出することができなくなるおそれがある。また、特許文献1の技術では、複数の単電池の間に位置する光ファイバが、光ファイバを間に挟む複数の単電池のそれぞれの温度の影響を受ける。そうすると、光ファイバを間に挟む複数の単電池のいずれの単電池に異常が生じているかが不明確となる。
【0005】
そこで、本発明は、電池セルの異常を適切に検出することが可能な電池管理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一実施形態に係る電池管理装置は、
複数の電池セルを有する電池モジュールと、
前記電池モジュールを冷却する冷却プレートと、
前記電池モジュールと前記冷却プレートとの間に配置される第1光ファイバと、
前記冷却プレートと前記第1光ファイバとの間に配置される断熱部材と、
前記第1光ファイバに光を入射することに応じて発生する散乱光に基づいて、前記複数の電池セルの温度を検出する温度検出装置と、
を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、電池セルの異常を適切に検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本実施形態にかかる電池管理装置1の構成を示す概略図である。
【
図2】
図2は、冷却プレートおよび電池モジュールにおける、
図1の左右方向の断面図である。
【
図3】
図3は、冷却プレートおよび電池モジュールにおける、
図1の上下方向の断面図である。
【
図4】
図4は、電池管理部の動作の一例を説明する図である。
【
図5】
図5は、電池管理部の動作の他の例を説明する図である。
【
図6】
図6は、電池管理部の動作の流れを説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す具体的な寸法、材料、数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0010】
図1は、本実施形態にかかる電池管理装置1の構成を示す概略図である。電池管理装置1は、例えば、車両2に適用される。車両2は、例えば、駆動源としてモータジェネレータを備える電気自動車である。なお、車両2は、駆動源としてモータジェネレータとエンジンとを備えるハイブリッド電気自動車であってもよい。
【0011】
電池管理装置1は、電池パック10、電池モジュール12、電池セル14、冷却プレート16、第1光ファイバ18、第2光ファイバ20、温度検出装置22、断熱部材24、制御装置26および報知装置28を備える。
【0012】
電池パック10は、中空の箱状に形成され、車両2に搭載される。電池パック10には、複数の電池モジュール12が収容される。
図1では、電池パック10の内部に10個の電池モジュール12が収容される例を示している。なお、電池パック10の内部の電池モジュール12の数は、例示した数に限らず、1つであってもよいし、任意の複数であってもよい。
【0013】
図1の例では、電池パック10の上方から電池パック10を見たとき、電池モジュール12は、5行2列の行列状に配置されている。なお、電池モジュール12の配置は、この例に限らず、電池モジュール12が電池パック10に適切に収容可能な任意の配置とされてもよい。以後、説明の便宜のため、
図1中の左側の列の電池モジュール12を、第1列電池モジュールという場合があり、
図1中の右側の列の電池モジュール12を、第2列電池モジュールという場合がある。
【0014】
電池モジュール12は、複数の電池セル14を有する。電池セル14は、例えば、リチウムイオン電池などの充放電が可能な二次電池である。
図1では、1つの電池モジュール12が5つの電池セル14を有する例を示している。なお、1つの電池モジュール12に含まれる電池セル14の数は、例示した数に限らず、任意の複数であってもよい。
【0015】
1つの電池モジュール12における複数の電池セル14は、電気的に直列に接続されている。すなわち、直列接続された複数の電池セル14は、組電池を構成している。なお、電池モジュール12は、組電池の電圧および電流を検出するセンサなどを含んでもよい。
【0016】
電池セル14は、例えば、平板状に形成され、水平方向に積層されるように並べられる。
図1の例では、電池パック10の上方から電池パック10を見たとき、電池セル14は、列方向に積層されるように配置されている。
【0017】
冷却プレート16は、平板状に形成され、電池モジュール12の下方に位置する。複数の電池モジュール12は、冷却プレート16の一部に接触している。冷却プレート16の内部には、熱媒体が流通する熱媒体流路30が形成されている。熱媒体は、例えば、水などの冷媒である。熱媒体流路30は、熱媒体が電池モジュール12の下方を流通するように形成される。
【0018】
例えば、熱媒体流路30は、電池モジュール12の列ごとに形成されており、1つの列の電池モジュール12の全てに亘って形成されている。
図1の例では、熱媒体流路30として第1列熱媒体流路30aおよび第2列熱媒体流路30bが形成されている。第1列熱媒体流路30aは、
図1中、第1列電池モジュールにおける最上段の電池モジュール12から最下段の電池モジュール12に亘って連続して形成されている。第2列熱媒体流路30bは、
図1中、第2列電池モジュールにおける最上段の電池モジュール12から最下段の電池モジュール12に亘って連続して形成されている。第1列熱媒体流路30aにおける左右方向の幅は、第1列電池モジュールの左右方向の幅以上となっている。第2列熱媒体流路30bにおける左右方向の幅は、第2列電池モジュールの左右方向の幅以上となっている。第1列熱媒体流路30aと第2列熱媒体流路30bは、それぞれの最上段の電池モジュール12側で繋がっているとともに、それぞれの最下段の電池モジュール12側で繋がっている。
【0019】
冷却プレート16には、熱媒体入口32および熱媒体出口34が形成される。熱媒体入口32および熱媒体出口34はそれぞれ、冷却プレート16の内部の熱媒体流路30に連通している。また、熱媒体入口32および熱媒体出口34はそれぞれ、所定の熱交換器に繋がっている。所定の熱交換器は、例えば、ラジエタなどであり、熱媒体を冷却する。熱媒体は、所定の熱交換器と冷却プレート16との間を循環する。
【0020】
熱媒体は、熱媒体入口32を通じて冷却プレート16の内部の熱媒体流路30に送入される。冷却プレート16の内部に送入された熱媒体は、第1列熱媒体流路30aおよび第2列熱媒体流路30bに分流し、第1列熱媒体流路30aおよび第2列熱媒体流路30bのそれぞれを流通する。第1列熱媒体流路30aおよび第2列熱媒体流路30bをそれぞれ流通した熱媒体は、合流して、熱媒体出口34を通じて冷却プレート16の外部に送出される。
【0021】
第1光ファイバ18および第2光ファイバ20は、冷却プレート16の表面に沿って配置される。第1光ファイバ18および第2光ファイバ20は、それらの長手方向に沿って、複数の電池モジュール12および複数の電池セル14を網羅するように蛇行して配置される。
【0022】
例えば、第1光ファイバ18および第2光ファイバ20は、第2列電池モジュールの右寄りを最上段の電池モジュール12から最下段の電池モジュール12まで延びている。第1光ファイバ18および第2光ファイバ20は、第2列電池モジュールの最下段の電池モジュール12において第2列電池モジュールの左寄りに曲がり、第2列電池モジュールの左寄りを最上段の電池モジュール12まで延びている。第1光ファイバ18および第2光ファイバ20は、第2列電池モジュールから第1列電池モジュールの右寄りに曲がり、第1列電池モジュールの右寄りを最上段の電池モジュール12から最下段の電池モジュール12まで延びている。第1光ファイバ18および第2光ファイバ20は、第1列電池モジュールの最下段の電池モジュール12において第1列電池モジュールの左寄りに曲がり、第1列電池モジュールの左寄りを最上段の電池モジュール12まで延びている。
【0023】
図2は、冷却プレート16および電池モジュール12における、
図1の左右方向の断面図である。
図3は、冷却プレート16および電池モジュール12における、
図1の上下方向の断面図である。
【0024】
図2および
図3で示すように、冷却プレート16には、第1溝40および第2溝42が形成される。第1溝40は、冷却プレート16における電池モジュール12側の表面に形成され、当該表面よりも窪んでいる。第1溝40は、電池セル14の下方に位置するように形成される。
【0025】
第2溝42は、冷却プレート16における電池モジュール12側の面とは反対側の面である裏面に形成され、当該裏面よりも窪んでいる。第2溝42は、第1溝40の下方に位置するように形成される。第1溝40と第2溝42との間には、熱媒体流路30が存在する。第1溝40は、第2溝42よりも大きい。
【0026】
第1溝40には、断熱部材24および第1光ファイバ18が収容されている。断熱部材24および第1光ファイバ18は、断熱部材24が第1光ファイバ18よりも相対的に冷却プレート16側に位置するように収容される。すなわち、第1光ファイバ18は、電池モジュール12と冷却プレート16との間に配置され、断熱部材24は、冷却プレート16と第1光ファイバ18との間に配置される。第1光ファイバ18は、電池モジュール12の電池セル14に接触するように配置される。
【0027】
第1溝40に第1光ファイバ18が収容されることから、第1溝40は、第1光ファイバ18の長手方向に沿って延びている。つまり、第1溝40は、第1光ファイバ18を延在させる経路に沿って形成される。
【0028】
断熱部材24は、冷却プレート16の熱媒体流路30を流通する熱媒体の熱が第1光ファイバ18に伝達されることを抑制する。断熱部材24は、例えば、ウレタンフォームなど、熱媒体の熱を第1光ファイバ18に伝達されることを適切に抑制可能な任意の材料により成形されてもよい。
【0029】
第2溝42には、第2光ファイバ20が収容されている。すなわち、第2光ファイバ20は、冷却プレート16における第1光ファイバ18が配置される面とは反対側の面に配置される。
【0030】
第2溝42に第2光ファイバ20が収容されることから、第2溝42は、第2光ファイバ20の長手方向に沿って延びている。つまり、第2溝42は、第2光ファイバ20を延在させる経路に沿って形成される。
【0031】
図1で示すように、第1光ファイバ18および第2光ファイバ20は、温度検出装置22に接続されている。温度検出装置22は、第1光ファイバ18および第2光ファイバ20に光を入射することができる構成となっている。
【0032】
第1光ファイバ18の入射端から光が入射されると、第1光ファイバ18の長手方向の各位置において、散乱光が生じ、散乱光の一部は、第1光ファイバ18の入射端に戻ってくる。温度検出装置22は、第1光ファイバ18の入射端に戻ってくる後方散乱光を検出することができる構成となっている。
【0033】
第2光ファイバ20の入射端から光が入射されると、第2光ファイバ20の長手方向の各位置において、散乱光が生じ、散乱光の一部は、第2光ファイバ20の入射端に戻ってくる。温度検出装置22は、第2光ファイバ20の入射端に戻ってくる後方散乱光を検出することができる構成となっている。
【0034】
温度検出装置22は、第1光ファイバ18に光を入射することに応じて発生する散乱光に基づいて、複数の電池セル14の温度を検出することができる構成となっている。
【0035】
例えば、温度検出装置22は、後方散乱光の一種であるブリルアン散乱光を検出することができる。ブリルアン散乱光の周波数は、そのブリルアン散乱光が発生した第1光ファイバ18の長手方向の位置における温度に依存する。例えば、温度が高い位置で発生したブリルアン散乱光の周波数は、入射光の周波数に対する周波数差が大きくなる。このため、温度検出装置22は、第1光ファイバ18の入射光の周波数に対するブリルアン散乱光の周波数の周波数差を温度に換算することによって、当該ブリルアン散乱光が発生した位置での温度を特定することができる。
【0036】
また、温度検出装置22は、第1光ファイバ18に入射光を入射してからブリルアン散乱光を受光するまでの時間から、ブリルアン散乱光が発生した位置を特定することができる。
【0037】
また、第1光ファイバ18は、
図1で示すように、第1光ファイバ18の長手方向において、複数の電池モジュール12および複数の電池セル14を網羅するように延びている。これにより、複数の電池セル14のそれぞれは、第1光ファイバ18の入射端からの距離に対応付けられる。第1光ファイバ18の入射端からの距離は、第1光ファイバ18に入射光を入射してからブリルアン散乱光を受光するまでの時間に対応付けられる。また、第1光ファイバ18は電池セル14に接触するように配置されるため、第1光ファイバ18の長手方向の各位置における温度は、電池セル14の温度に依存する。
【0038】
すなわち、温度検出装置22は、第1光ファイバ18に入射光を入射してからブリルアン散乱光を受光するまでの時間から、温度の検出対象となる電池セル14を特定し、そのときのブリルアン散乱光の周波数から、特定した電池セル14の温度を検出することができる。
【0039】
温度検出装置22は、第1光ファイバ18を使用して、電池パック10に収容される電池セル14のそれぞれについて、電池セル14の温度を検出することができる。このため、電池管理装置1では、電池モジュール12または電池セル14ごとに熱電対を複数設ける態様と比べ、電池セル14の温度を検出するためのコストの上昇を抑制することができる。
【0040】
また、
図2で示すように、第1光ファイバ18は、電池モジュール12と冷却プレート16との間に配置されている。このため、電池管理装置1では、第1光ファイバ18の外傷を防止することができる。また、電池管理装置1では、電池セル14の温度を検出するための部材を配置するスペースの増加を抑制することができる。
【0041】
また、
図2で示すように、第1光ファイバ18と冷却プレート16との間に、断熱部材24が配置されている。これにより、冷却プレート16の内部の熱媒体の熱が第1光ファイバ18に伝達され難く、電池セル14の温度が第1光ファイバ18に伝達され易い。このため、電池管理装置1では、断熱部材24により熱媒体の熱の影響を抑えつつ、第1光ファイバ18を用いて電池セル14の温度を精度よく検出することができる。
【0042】
温度検出装置22は、第2光ファイバ20に光を入射することに応じて発生する散乱光に基づいて、冷却プレート16の内部を流通する熱媒体の温度を検出することができる構成となっている。
【0043】
例えば、温度検出装置22は、第2光ファイバ20の入射端に戻ってくるブリルアン散乱光を受光することができる。温度検出装置22は、第2光ファイバ20に入射光を入射してからブリルアン散乱光を受光するまでの時間から、ブリルアン散乱光が発生した位置を特定することができる。
【0044】
また、第2光ファイバ20は、
図2で示すように、冷却プレート16に接触して配置される。このため、第2光ファイバ20の温度は、冷却プレート16の内部の熱媒体流路30を流通する熱媒体の温度に依存する。
【0045】
また、第2光ファイバ20は、冷却プレート16を間に挟んで第1光ファイバ18と並行して配置されている。これにより、第2光ファイバ20の長手方向の距離と、第1光ファイバ18の長手方向の距離とを対応付けることができる。
【0046】
これらから、温度検出装置22は、第2光ファイバ20に入射光を入射することで受光するブリルアン散乱光の周波数から、冷却プレート16の内部の熱媒体の温度を検出することができる。また、温度検出装置22は、第2光ファイバ20に入射光を入射してからブリルアン散乱光を受光するまでの時間から、検出した熱媒体の温度が、複数の電池セル14のいずれに対応する位置での熱媒体の温度であるかを特定することができる。
【0047】
温度検出装置22は、電池セル14の温度と、当該電池セル14に対応する位置での熱媒体の温度とを関連付けて、電池セル14ごとに所定の記憶装置に記憶してもよい。
【0048】
電池管理装置1では、電池セル14の温度を検出するための第1光ファイバ18とは別に、熱媒体の温度を検出するための第2光ファイバ20が設けられるため、熱媒体の温度を精度よく検出することができる。
【0049】
また、第2光ファイバ20は、第1列熱媒体流路30aおよび第2列熱媒体流路30bに沿って延びている。このため、電池管理装置1では、熱媒体の温度の分布を、熱媒体の移動の影響を抑制しつつ、精度よく検出することができる。
【0050】
ここでは、電池セル14の温度を検出するための第1光ファイバ18と、熱媒体の温度を検出するための第2光ファイバ20との両方を有する構成について説明していた。しかし、少なくとも、電池セル14の温度を検出するための第1光ファイバ18を有していればよく、熱媒体の温度を検出するための第2光ファイバ20を省略してもよい。
【0051】
図1で示すように、制御装置26は、1つまたは複数のプロセッサ50と、プロセッサ50に接続される1つまたは複数のメモリ52とを備える。メモリ52は、プログラム等が格納されたROMおよびワークエリアとしてのRAMを含む。プロセッサ50は、メモリ52に含まれるプログラムと協働して、電池管理部60としても機能する。
【0052】
図4は、電池管理部60の動作の一例を説明する図である。電池管理部60は、温度検出装置22により検出された電池セル14の温度および熱媒体の温度を取得する。ここでの熱媒体の温度は、電池セル14の温度に関連付けられた熱媒体の温度であるとする。
図4の実線T1は、電池セル14の温度の時間推移の一例を示す。
図4の一点鎖線T2は、熱媒体の温度の時間推移の一例を示す。
【0053】
電池セル14が熱媒体により適正に冷却されている場合、電池セル14の温度は、大凡一定に維持される。ここで、時点TM1において、電池セル14に何らかの異常が生じ、時点TM1以降、電池セル14の温度が徐々に上昇したとする。この場合、熱媒体が冷却すべき熱量が増加することで、熱媒体の温度は、時点TM1より遅れた時点TM2以降、電池セルの温度上昇に追従して徐々に上昇する。
【0054】
図4の「ΔT」は、電池セル14の温度と熱媒体の温度と温度差を示す。
図4の例では、時点TM2以降の温度差は、時点TM2以前の温度差と比べ、それほど大きくは増加していない。また、時点TM2以降の温度差は、大凡一定となっている。
【0055】
電池管理部60は、電池セル14の温度が所定閾値以上となった場合、所定の第1報知を報知装置28に行わせる所定の第1報知制御を実行する。報知装置28は、例えば、警告灯を表示する表示装置であってもよいし、警告音を出力するスピーカなどであってもよい。
【0056】
所定閾値は、例えば、冷却プレート16の冷却能力の限界値である冷却限界値以下に設定される。
図4の「Tc」は、冷却限界値の一例を示しており、「Tth」は、所定閾値の一例を示している。
【0057】
第1報知は、例えば、電池セル14の温度が比較的高くなっており、電池セル14に異常の疑いがあることを示す報知である。すなわち、電池管理部60は、電池セル14に異常の疑いがあることを、報知装置28により車両2の搭乗者に報知する。
【0058】
これにより、電池管理装置1は、車両2の搭乗者に、電池セル14に異常の疑いがあることを認識させることができる。その結果、車両2の搭乗者は、第1報知を受けて、車両2の検査および修理の検討に資することができる。
【0059】
図5は、電池管理部60の動作の他の例を説明する図である。
図5の実線T11は、電池セル14の温度の時間推移の一例を示し、一点鎖線T12は熱媒体の温度の時間推移の一例を示す。ここでの熱媒体の温度は、電池セル14の温度に関連付けられた熱媒体の温度であるとする。
【0060】
例えば、時点TM11において、電池セル14の内部のセパレータが損傷するなどにより、電池セル14の熱暴走が生じたとする。熱暴走は、電池セル14の内部短絡などにより、電池セル14の熱の発生が止まらない状態になることを意味する。
【0061】
図5の例では、時点TM11以降、電池セル14の温度が急激に上昇したとする。この場合、熱媒体の温度は、時点TM11より遅れた時点TM12以降、電池セル14の温度上昇の影響により徐々に上昇する。ここで、熱媒体は、急激に温度が上昇する電池セル14を冷却しようとするが、熱媒体の熱容量などの影響により、電池セル14の急激な温度上昇を十分に抑制することができないことがある。
【0062】
そうすると、
図5で示すように、熱媒体の温度の時間推移は、電池セル14の温度の時間推移より緩やかになり、電池セル14の温度と熱媒体の温度との温度差「ΔT」が、時間の経過とともに拡大していく。
【0063】
そこで、電池管理部60は、電池セル14の温度と、当該電池セル14の温度に関連付けられた熱媒体の温度との温度差を導出する。電池管理部60は、温度差が所定温度差以上である場合、所定の第2報知を報知装置28に行わせる所定の第2報知制御を実行する。
【0064】
第2報知は、例えば、冷却プレート16による電池モジュール12の冷却が有効に作用していないことを示す特定の報知である。「冷却が有効に作用していない」は、電池セル14の温度が急激に上昇することで、熱媒体による電池セル14の冷却が間に合っていない、という意味を含む。なお、「冷却が有効に作用していない」は、熱媒体自体の冷却に不具合が生じた結果、熱媒体による電池セル14の冷却が不能になって、電池セル14の温度が急激に上昇するという場合を含んでもよい。
【0065】
所定温度差は、
図5で示す、温度差「ΔT」が時間の経過とともに拡大していく態様と、
図4で示す、時間が経過しても温度差「ΔT」が大凡一定である態様とを区別可能な任意の値に設定される。
【0066】
第2報知は、例えば、即時に退避を行うことを警告する報知内容など、第1報知よりも緊急度あるいは重要度が高いことを示す報知内容とする。すなわち、電池管理部60は、冷却プレート16による電池モジュール12の冷却が有効に作用していないことを、報知装置28により車両2の搭乗者に報知する。
【0067】
これにより、電池管理装置1は、緊急度あるいは重要度が高い異常が生じていることを、車両2の搭乗者に早期に認識させることができる。その結果、車両2の搭乗者は、第2報知を受けて、車両2から即時に退避して安全を確保することができる。
【0068】
図6は、電池管理部60の動作の流れを説明するフローチャートである。電池管理部60は、所定周期で訪れる所定の割込みタイミングが到来するごとに、
図6の一連の処理を繰り返し実行する。
【0069】
所定の割込みタイミングが到来すると、電池管理部60は、温度検出装置22に電池セル14の温度および熱媒体の温度の検出を実行させ、温度検出装置22により検出された電池セル14の温度および熱媒体の温度を取得する(S10)。この際、電池管理部60は、電池セル14すべてについて、電池セル14の温度と、それに対応する熱媒体の温度とを取得する。
【0070】
次に、電池管理部60は、取得した電池セル14の温度が所定閾値以上であるか否かを判定する(S11)。この際、電池管理部60は、電池セル14すべてについて、ステップS11の判定を行う。
【0071】
いずれかの電池セル14において、電池セル14の温度が所定閾値以上である場合(S11におけるYES)、電池管理部60は、第1報知を報知装置28に実行させ(S12)、ステップS13の処理に進む。この際、電池管理部60は、第1報知の報知内容に、電池セル14の温度が所定閾値以上である電池セル14を特定した内容を含んでもよい。
【0072】
電池セル14すべてにおいて、電池セル14の温度が所定閾値未満である場合(S11におけるNO)、電池管理部60は、そのままステップS13の処理に進む。
【0073】
ステップS13において、電池管理部60は、電池セル14の温度から熱媒体の温度を減算して温度差を導出する(S13)。この際、電池管理部60は、電池セル14の温度と、その電池セル14に対応する熱媒体の温度とから温度差を導出する。また、電池管理部60は、電池セル14すべてについて、温度差を導出する。
【0074】
次に、電池管理部60は、温度差が所定温度差以上であるか否かを判定する(S14)。この際、電池管理部60は、電池セル14ごとの複数の温度差すべてについて、ステップS14の判定を行う。
【0075】
いずれかの温度差において、温度差が所定温度差以上である場合(S14におけるYES)、電池管理部60は、第2報知を報知装置28に実行させ(S15)、一連の処理を終了する。この際、電池管理部60は、第2報知の報知内容に、温度差が所定温度差以上である電池セル14を特定した内容を含んでもよい。
【0076】
複数の温度差のすべてにおいて、温度差が所定温度差未満である場合(S14におけるNO)、電池管理部60は、そのまま一連の処理を終了する。
【0077】
ここでは、温度差に応じて第2報知を実行させる態様を説明していた。しかし、第2光ファイバ20を省略した場合、温度差を導出すること、および、温度差に応じて第2報知を実行させることを省略してもよい。
【0078】
また、上記のフローチャートでは、ステップS11の電池セル14の温度が所定閾値以上であるかの判定がYESであるかNOであるかに拘わらず、毎回、ステップS14の温度差が所定温度差以上であるかの判定が行われていた。しかし、電池管理部60は、電池セル14の温度が所定閾値以上である場合(ステップS11におけるYES)に限り、ステップS13以降の処理を行い、電池セル14の温度が所定閾値未満である場合(ステップS11におけるNO)、そのまま一連の処理を終了してもよい。つまり、電池セル14の温度が所定閾値以上になった場合にのみ、温度差が所定温度差以上であるかの判定を行ってもよい。この態様によれば、温度差が所定温度差以上であるかの判定を毎回行う態様と比べ、処理負荷を低減することができる。
【0079】
以上のように、本実施形態の電池管理装置1では、電池モジュール12と冷却プレート16との間に第1光ファイバ18が配置され、冷却プレート16と第1光ファイバ18との間に断熱部材24が配置される。そして、第1光ファイバ18に光を入射することに応じて発生する散乱光に基づいて、複数の電池セル14の温度が検出される。
【0080】
本実施形態の電池管理装置1では、第1光ファイバ18が断熱部材24と電池モジュール12との間に位置するため、第1光ファイバ18が外傷を受けることを防止することができる。その結果、本実施形態の電池管理装置1では、電池セル14の温度が検出できなくなることを防止することができる。また、本実施形態の電池管理装置1では、第1光ファイバ18における電池モジュール12とは反対側に断熱部材24が位置するため、電池セル14以外の他の熱源からの伝熱が遮断される。その結果、本実施形態の電池管理装置1では、電池セル14を特定して当該電池セル14の温度を精度よく検出することができる。
【0081】
したがって、本実施形態の電池管理装置1によれば、電池セル14の異常を適切に検出することが可能となる。
【0082】
また、本実施形態の電池管理装置1では、第1光ファイバ18を用いて検出される電池セル14の温度が、所定閾値以上となった場合、所定の第1報知制御が実行される。
【0083】
これにより、本実施形態の電池管理装置1では、電池セル14に異常の疑いがあることなどを、車両2の搭乗者などに、適切に認識させることが可能となる。
【0084】
また、本実施形態の電池管理装置1では、冷却プレート16における第1光ファイバ18が配置される面とは反対側の面に第2光ファイバ20が配置される。そして、第2光ファイバ20に光を入射することに応じて発生する散乱光に基づいて、冷却プレート16の内部を流通する熱媒体の温度が検出される。
【0085】
これにより、本実施形態の電池管理装置1では、電池モジュール12を冷却する熱媒体の温度を適切に検出することができる。
【0086】
また、本実施形態の電池管理装置1では、第1光ファイバ18を用いて検出される電池セル14の温度と、第2光ファイバ20を用いて検出される熱媒体の温度との温度差が、所定温度差以上である場合、所定の第2報知制御が実行される。
【0087】
これにより、本実施形態の電池管理装置1では、冷却プレート16による電池モジュール12の冷却が有効に作用していないことなどを、車両2の搭乗者などに、適切に認識させることが可能となる。
【0088】
また、本実施形態の電池管理装置1において、第2報知制御では、第1報知制御よりも、緊急度あるいは重要度が高い報知内容を示す報知が実行される。
【0089】
これにより、本実施形態の電池管理装置1では、緊急度あるいは重要度が相対的に高い異常を、車両2の搭乗者などに、明確に区別して認識させることが可能となる。その結果、本実施形態の電池管理装置1では、電池セル14の異常の緊急度あるいは重要度を、車両2の搭乗者に早期に認識させることができ、車両2の搭乗者の安全を適切に確保することが可能となる。
【0090】
なお、上記実施形態では、ブリルアン散乱光に基づいて電池セル14の温度および熱媒体の温度が検出されていた。しかし、電池セル14の温度および熱媒体の温度は、ブリルアン散乱光に基づいて検出される態様に限らない。例えば、光ファイバに光を入射することに応じて発生するラマン散乱光に基づいて、電池セル14の温度および熱媒体の温度を検出してもよい。
【0091】
以上、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0092】
例えば、上記実施形態では、温度検出装置が、第1光ファイバを用いて電池セルの温度を検出し、第2光ファイバを用いて熱媒体の温度を検出していた。しかし、温度検出装置は、第1光ファイバを用いて電池セルに関する歪または圧力を検出してもよいし、第2光ファイバを用いて熱媒体に関する歪または圧力を検出してもよい。
【符号の説明】
【0093】
1 電池管理装置
12 電池モジュール
14 電池セル
16 冷却プレート
18 第1光ファイバ
20 第2光ファイバ
22 温度検出装置
24 断熱部材
26 制御装置
50 プロセッサ
52 メモリ