(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128400
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】キャップ及び容器
(51)【国際特許分類】
B65D 51/18 20060101AFI20240913BHJP
【FI】
B65D51/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037358
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000228442
【氏名又は名称】日本クロージャー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塚本 龍一
【テーマコード(参考)】
3E084
【Fターム(参考)】
3E084AA03
3E084AA12
3E084AB06
3E084BA03
3E084CA01
3E084DA01
3E084DB14
3E084FA09
3E084FD02
3E084GA08
3E084GB12
3E084KB10
3E084LA12
3E084LA17
3E084LB02
3E084LB07
3E084LC01
3E084LD01
(57)【要約】
【課題】着脱性の向上を図ったキャップ及び容器を提供する。
【解決手段】胴体部220の下方には下端に向かうにつれて拡径する拡径部223が形成され、かつ拡径部223の内周面には、口部500の外周面に設けられた環状突起522に係合可能な係合突起223aが設けられると共に、キャップ本体200に対して外キャップ100が下方にスライドする際、筒状部120の内周面における第3面123が拡径部223の外周面を摺動することで拡径部223が内方に変形することを特徴とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体の口部に取り付けられる円筒状の胴体部と、前記口部を塞ぐシール部と、を有するキャップ本体と、
前記胴体部の外周を覆い上下方向にスライド可能な筒状部を有する外キャップと、
を備えるキャップであって、
前記胴体部の下方には下端に向かうにつれて拡径する拡径部が形成され、かつ前記拡径部の内周面には、前記口部の外周面に設けられた被係合突起に係合可能な係合突起が設けられると共に、
前記キャップ本体に対して前記外キャップが下方にスライドする際、前記筒状部の内周面における操作部が前記拡径部の外周面を摺動することで前記拡径部が内方に変形する、
ことを特徴とするキャップ。
【請求項2】
前記拡径部は、周方向にそれぞれ間隔を空け、かつ全周に亘って複数設けられていることを特徴とする請求項1に記載のキャップ。
【請求項3】
前記拡径部が内方に変形していない状態における前記係合突起の最小内径は、前記被係合突起の最大外径以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のキャップ。
【請求項4】
前記筒状部の内周面と前記胴体部の外周面には、前記操作部の前記拡径部から離れる方向への一定距離以上の移動を規制するストッパ構造が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のキャップ。
【請求項5】
前記筒状部の内周面には、前記操作部の上方に、段差面を介して前記操作部の内周面よりも内径の大きな大径面が設けられると共に、
前記胴体部の外周面において前記拡径部よりも上方で径方向外側に突出する突出部と、前記段差面とによって、前記ストッパ構造が構成されることを特徴とする請求項4に記載のキャップ。
【請求項6】
前記キャップ本体が前記口部に取り付けられる過程で、前記シール部が前記口部の口を塞いだ後に、前記係合突起は前記被係合突起に係合が完了する位置に移動することを特徴とする請求項1または2に記載のキャップ。
【請求項7】
前記キャップ本体に対して前記外キャップをスライドさせるのに必要な力が、前記シール部が前記口部を塞ぐ際に発生する摺動抵抗よりも大きいことを特徴とする請求項1または2に記載のキャップ。
【請求項8】
口部を有する容器本体と、
前記口部に対して着脱自在なキャップと、
を備える容器であって、
前記キャップは、
前記口部に取り付けられる円筒状の胴体部と、前記口部を塞ぐシール部と、を有するキャップ本体と、
前記胴体部の外周を覆い上下方向にスライド可能な筒状部を有する外キャップと、
を備え、
前記胴体部の下方には下端に向かうにつれて拡径する拡径部が形成され、かつ前記拡径部の内周面には、前記口部の外周面に設けられた被係合突起に係合可能な係合突起が設けられると共に、
前記キャップ本体に対して前記外キャップが下方にスライドする際、前記筒状部の内周面における操作部が前記拡径部の外周面を摺動することで前記拡径部が内方に変形するよ
うに構成されることを特徴とする容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャップ及び容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、容器本体に対して着脱自在なキャップが備えられた容器においては、ネジ式のキャップが主流であった。近年、例えば、歯磨き粉やペースト調味料を入れるラミネートチューブなどの容器においては、ヒンジ式のキャップや、キャップ側面を押し込みながら引き抜いたり押し込んだりする方式の使用性に優れたキャップが増えてきている。
【0003】
しかしながら、このような方式のキャップであっても、キャップを着脱する際においては、指先の力が結構必要であったり、細かい動作が必要であったりするため、手指が不自由の方にとっては、使用し難い場合もある。従って、より一層使用性を高めることが望まれており、未だ改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5390825号公報
【特許文献2】特許第6319788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、着脱性の向上を図ったキャップ及び容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
【0007】
すなわち、本発明のキャップは、
容器本体の口部に取り付けられる円筒状の胴体部と、前記口部を塞ぐシール部と、を有するキャップ本体と、
前記胴体部の外周を覆い上下方向にスライド可能な筒状部を有する外キャップと、
を備えるキャップであって、
前記胴体部の下方には下端に向かうにつれて拡径する拡径部が形成され、かつ前記拡径部の内周面には、前記口部の外周面に設けられた被係合突起に係合可能な係合突起が設けられると共に、
前記キャップ本体に対して前記外キャップが下方にスライドする際、前記筒状部の内周面における操作部が前記拡径部の外周面を摺動することで前記拡径部が内方に変形する、
ことを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、外キャップを上下にスライドさせる動作によって、キャップ本体に設けられた係合突起を、容器本体の口部に設けられた被係合突起に対して係合させたり、係合を解除させたりすることができる。また、係合突起は胴体部の下方に設けられた拡径部の内周面に設けられている。そして、外キャップにおける筒状部の内周面(操作部)が拡径部の外周面に摺動することで、拡径部が撓むように変形し、係合突起による係合と、その解除が行われる。従って、拡径部を撓ませたり、拡径部を元の状態に戻したりするのに必要な力を弱く設定することができる。
【0009】
前記拡径部は、周方向にそれぞれ間隔を空け、かつ全周に亘って複数設けられていると
よい。
【0010】
これにより、キャップ本体は、容器本体の口部に対して、全周に亘って、係合突起により係合される。従って、十分な係合力が得られる。
【0011】
前記拡径部が内方に変形していない状態における前記係合突起の最小内径は、前記被係合突起の最大外径以上であるとよい。
【0012】
これにより、係合突起が被係合突起を通過する際には、係合突起と被係合突起は接しないか、接したとしても摺動抵抗は殆ど発生しない。
【0013】
前記筒状部の内周面と前記胴体部の外周面には、前記操作部の前記拡径部から離れる方向への一定距離以上の移動を規制するストッパ構造が設けられているとよい。
【0014】
これにより、外キャップの外周面を押し込まなくても、外キャップを容器本体から引き抜くだけで、外キャップと共にキャップ本体も容器本体から引き抜くことができる。
【0015】
前記筒状部の内周面には、前記操作部の上方に、段差面を介して前記操作部の内周面よりも内径の大きな大径面が設けられると共に、
前記胴体部の外周面において前記拡径部よりも上方で径方向外側に突出する突出部と、前記段差面とによって、前記ストッパ構造が構成されるとよい。
【0016】
前記キャップ本体が前記口部に取り付けられる過程で、前記シール部が前記口部の口を塞いだ後に、前記係合突起は前記被係合突起に係合が完了する位置に移動するとよい。
【0017】
これにより、キャップ本体が容器本体の口部に取り付けられたものの、シール部によるシールが不完全な状態になってしまうことを抑制することができる。
【0018】
前記キャップ本体に対して前記外キャップをスライドさせるのに必要な力が、前記シール部が前記口部を塞ぐ際に発生する摺動抵抗よりも大きいとよい。
【0019】
このような構成を採用することで、キャップ本体が口部に取り付けられる過程で、シール部が口部の口を塞いだ後に、係合突起を被係合突起に係合させることができる。
【0020】
本発明の容器は、
口部を有する容器本体と、
前記口部に対して着脱自在なキャップと、
を備える容器であって、
前記キャップは、
前記口部に取り付けられる円筒状の胴体部と、前記口部を塞ぐシール部と、を有するキャップ本体と、
前記胴体部の外周を覆い上下方向にスライド可能な筒状部を有する外キャップと、
を備え、
前記胴体部の下方には下端に向かうにつれて拡径する拡径部が形成され、かつ前記拡径部の内周面には、前記口部の外周面に設けられた被係合突起に係合可能な係合突起が設けられると共に、
前記キャップ本体に対して前記外キャップが下方にスライドする際、前記筒状部の内周面における操作部が前記拡径部の外周面を摺動することで前記拡径部が内方に変形するように構成されることを特徴とする。
【0021】
なお、上記各構成は、可能な限り組み合わせて採用し得る。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明によれば、容器本体に対するキャップの着脱性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は本発明の実施例1に係る外キャップの概略構成図である。
【
図2】
図2は本発明の実施例1に係るキャップ本体の概略構成図である。
【
図3】
図3は本発明の実施例1に係るキャップの容器本体への着脱動作説明図である。
【
図4】
図4は本発明の実施例1に係るキャップの容器本体への着脱動作説明図である。
【
図5】
図5は本発明の実施例1に係るキャップの容器本体への着脱動作説明図である。
【
図6】
図6は本発明の実施例1に係るキャップの容器本体への着脱動作説明図である。
【
図7】
図7は本発明の実施例1に係る外キャップの一部の機能を説明する図である。
【
図8】
図8は本発明の実施例2に係るキャップの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0025】
(実施例1)
図1~
図7を参照して、本発明の実施例1に係るキャップ及び容器について説明する。
図1は本発明の実施例1に係る外キャップの概略構成図であり、(a)は外キャップの平面図、(b)は外キャップの模式的断面図((a)中のA1-A1断面図、(c)中のA2-A2断面図)、(c)は外キャップの底面図である。
図2は本発明の実施例1に係るキャップ本体の概略構成図であり、(a)はキャップ本体の平面図、(b)はキャップ本体の模式的断面図((a)中のB1-B1断面図、(c)中のB2-B2断面図)、(c)はキャップ本体の底面図である。
図3~
図6は本発明の実施例1に係るキャップの容器本体への着脱動作説明図であり、各部材については模式的断面図にて示している。
図7は本発明の実施例1に係る外キャップの一部の機能を説明する図である。
【0026】
以下の説明においては、「上」は容器本体にキャップを装着した状態で容器本体に対してキャップを上に向けた状態における鉛直方向の上を意味し、「下」は容器本体にキャップを装着した状態で容器本体に対してキャップを上に向けた状態における鉛直方向の下を意味する。
【0027】
本実施例においては、歯磨き粉やペースト調味料を入れるラミネートチューブなどの容器を例にして説明する。ただし、本発明は、そのような容器に限らず、ペットボトルやガラス容器や金属容器など、各種の容器に適用可能である。
【0028】
<容器>
容器は、容器本体50とキャップ10とにより構成される。まず、容器本体50について、
図3~
図6を参照して説明する。なお、これらの図においては、容器本体50につい
ては、その一部のみを示している。容器本体50は、胴部51と、肩部52と、口部500とを備えている。なお、口部500は、胴部51の上部の肩部52よりも絞られた部分であって、先端に口(開口)を有する首の部分に相当する。
【0029】
本実施例においては、口部500の内周面510は円柱面により構成されている。なお、内周面510が口(開口)に相当する。そして、口部500の外周面520には、上方(口部500の先端側)の円柱面521よりも外径が大きな被係合突起としての環状突起522が設けられている。本実施例に係る環状突起522の外周面は、口部500の上端(先端)側から胴部51に向かって拡径するテーパ面と、上端側から胴部51に向かって縮径するテーパ面とを連続的に有しており、環状突起522の断面形状は三角形状である。この環状突起522の下方には環状溝523が設けられる。なお、本実施例においては、被係合突起が環状突起により構成される場合を示したが、本発明における被係合突起は環状突起に限らず、周方向に断続的に設けられる突起により構成することもできる。
【0030】
<キャップ>
容器本体50の口部500に対して着脱自在に構成されるキャップ10について、詳細に説明する。本実施例においては、押し込む動作によりキャップ10が口部500に取り付けられ、引き抜く動作によってキャップ10が口部500から取り外されるように構成されている。このキャップ10は、外キャップ100と、キャップ本体200とから構成される。
【0031】
キャップ本体200は、天板部210と、口部500に取り付けられる円筒状の胴体部220とを備えている。天板部210は、下方に向けて突出するように構成されるシール部211と、シール部211よりも径方向外側に設けられる円筒状突起212とを備えている。シール部211は、口部500の内周面510に対して嵌合可能な円筒部211aと、円筒部211aの下端を塞ぐ閉塞部211bとから構成される。円筒状突起212は、容器本体50の口部500の先端に突き当たることで、容器本体50に対するキャップ本体200の位置決めを行う役割を担っている。なお、天板部210の下面で位置決めが可能であれば、円筒状突起212を設けない構成を採用することもできる。また、円筒状突起212によって、シール機能を発揮させることもできる。
【0032】
胴体部220は、外周面が円柱面で構成される円筒部221と、突出部222と、拡径部223とを備えている。拡径部223は、胴体部220の下方において、下端に向かうにつれて拡径するように構成されている。この拡径部223の内周面には、容器本体50の口部500の外周面に設けられた環状突起522に係合可能な係合突起223aが設けられている。円筒部221の内周面は、内径の小さな小径面221aと、小径面221aよりも下方に設けられ、小径面221aよりも内径が大きな大径面221bとを有する段差付きの面により構成されている。これにより、円筒部221は、肉厚が拡径部223側において薄くなるように構成され、円筒部221の全体では剛性を維持しつつ、拡径部223が撓み易いように構成されている。本実施例においては、拡径部223は、周方向にそれぞれ間隔を空け、かつ全周に亘って複数設けられている。突出部222は、本実施例では円環状となっており、胴体部220の外周面において拡径部223よりも上方で径方向外側に突出するように構成されている。ただし、本発明においては、突出部は周方向に断続的に付与されているものでもよい。なお、キャップ本体200は、拡径部223が適度な可撓性を持つことができるような樹脂材料(例えば、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP))により構成される。
【0033】
外キャップ100は、天板部110と、キャップ本体200における胴体部220の外周を覆い上下方向にスライド可能な筒状部120とを備えている。筒状部120の内周面には、キャップ本体200の突出部222の外周面との間に隙間が形成される第1面12
1と、突出部222の外周面が摺動する第2面122とを備えている。また、筒状部120の内周面には、第2面122を介して第1面121とは反対側に第2面122よりも内径の小さな第3面123も備えている。更に、筒状部120の内周面には、第3面123を介して第2面122とは反対側に第3面123よりも径が大きな第4面124も備えている。なお、第3面123は、キャップ本体200における拡径部223を操作する操作部としての役割を担っており、
図1及び
図2に記載の後述する拡径部223の最大外径D23よりも小径となっている。
【0034】
第1面121と第2面122との間、第2面122と第3面123との間、第3面123と第4面124との間には、いずれもテーパ面により構成される第1段差面121a、第2段差面122a、及び第3段差面123aがそれぞれ設けられている。なお、外キャップ100は、成形可能な各種樹脂材料等により構成される。本実施例では、第1段差面及び第2段差面はテーパ面(断面で見ると直線となる曲面)であるが、断面で見ると曲線となるような湾曲面であったり、第1面、第2面に対して垂直な面であってもよい。第3段差面は、テーパ面であるが、断面で見ると曲線となるような湾曲面であってもよい。
【0035】
<各構成部材の寸法>
各構成部材の寸法関係について詳細に説明する。
図1に示すように、外キャップ100において、第1面121の内径をD11、第2面122の内径をD12、第3面123の内径をD13、第4面124の内径をD14、第3面123の軸方向の距離(高さ方向の距離)をL11とする。
【0036】
図2に示すように、キャップ本体200において、胴体部220における円筒部221の外径をD21、突出部222の最大外径をD22、拡径部223の最大外径をD23、シール部211における円筒部211aの外径をD24とする。また、胴体部220の内周面における小径面221aの内径をD25、胴体部220の内周面における大径面221bの内径をD26、係合突起223aの最小内径をD27とする。更に、胴体部220における円筒部221の軸方向の距離(高さ方向の距離)をL21、円筒状突起212の下端から係合突起223aの上端までの軸方向の距離(高さ方向の距離)をL22とする。
【0037】
図3に示すように、容器本体50において、口部500の内周面510の内径をD51、口部500の外周面520における円柱面521の外径をD52、口部500の外周面520における環状突起522の最大外径をD53とする。
【0038】
以上の各寸法においては、本実施形態ではD11>D22>D12>D13>D21,D14>D23>D13,D24>D51,D25>D52,D26≧D53,D27≧D53,L21>L11,L22>L51を満たすように構成されている。これらの寸法関係を満たす意義については、以下に説明する着脱動作の中で適宜説明する。
【0039】
<キャップの容器本体への着脱動作>
図3~
図6を参照して、キャップ10の容器本体50に対する着脱動作について説明する。まず、キャップ10を閉じる動作について説明する。
【0040】
キャップ10においては、外キャップ100の内側に、予め、キャップ本体200が嵌合されている。上記のように、本実施形態ではD22>D12>D13>D21,D14>D23>D13,L21>L11を満たす。これにより、外キャップ100とキャップ本体200は、筒状部120の内周面における操作部としての第3面123が、突出部222と拡径部223との間に嵌った状態が維持される(
図3参照)。この状態で、キャップ10を容器本体50の口部500に嵌めていくと、まず、キャップ本体200のシール
部211が、容器本体50における口部500の内周面510に嵌る。なお、キャップ本体200は、円筒状突起212が容器本体50における口部500の先端に突き当たる位置まで移動する(
図4参照)。以上の動作により、シール部211によって口部500の口が塞がれる。
【0041】
ここで、上記のように、L22>L51を満たす。これにより、円筒状突起212が容器本体50における口部500の先端に突き当たる位置までキャップ本体200が移動する過程において、係合突起223aは環状突起522を通り過ぎる(
図4参照)。また、本実施例においては、拡径部223が内方に変形していない状態における係合突起223aの最小内径は、環状突起522の最大外径以上となるように構成されている。つまり、上記の通り、D27≧D53を満たす。従って、上記の移動の過程において、係合突起223aは環状突起522に対して接しないか、接したとしても摺動抵抗は殆ど発生しない。
【0042】
更にキャップ10が押し込まれると、キャップ本体200に対して外キャップ100がスライドし始める(
図5中の矢印SC参照)。また、筒状部120の内周面における操作部としての第3面123(特に、第3面123と第3段差面123aとの境界部付近)により、拡径部223は内側に向かって押し込まれる。これにより、拡径部223が撓み始める(
図5中の矢印RC参照)。その後、更にキャップ10が押し込まれると、外キャップ100は、その天板部110がキャップ本体200の天板部210に突き当たる位置までスライドする。また、第3面123によって、拡径部223は係合突起223aによる環状突起522への係合が完了する位置まで撓んだ状態となる(
図6参照)。
【0043】
このように、キャップ本体200に対して外キャップ100が下方にスライドする際、筒状部120の内周面における拡径部223の最大外径よりも小径である第3面123が拡径部223の外周面を摺動することで拡径部223が内方に変形する。
【0044】
また、キャップ本体200が口部500に取り付けられる過程で、シール部211が口部500の口を塞いだ後に、係合突起223aは環状突起522に係合が完了する位置に移動する。これを実現するために、本実施例においては、キャップ本体200に対して外キャップ100をスライドさせるのに必要な力が、シール部211が口部500を塞ぐ際に発生する摺動抵抗よりも大きくなるように構成されている。この点について、より具体的に説明する。本実施例においては、D24>D51を満たすことにより、シール部211が口部500の内周面510に対して密着することでシール性が発揮される一方で、シール部211を内周面510に嵌める際に摺動抵抗が発生する。また、D22>D12及びD23>D13を満たすことにより、キャップ本体200に対して外キャップ100をスライドさせる際には、突出部222の外周面と第2面122の内周面との間に摺動抵抗が発生し、かつ、第3面123により拡径部223を撓ませる力が必要となる。本実施例では、突出部222の外周面と第2面122の内周面との間に生じる摺動抵抗と拡径部223を撓ませるのに必要な力の合計がシール部211と内周面510との間に生じる摺動抵抗よりも大きくなるように設定されている。これにより、シール部211が口部500の口を塞いだ後に、係合突起223aを環状突起522に対して係合させることができる。なお、本実施例では突出部222の外周面と第2面の122の内周面との間に生じる摩擦抵抗によりシール部211が口部500の口を塞いだ後に係合突起223aを環状突起522に対して係合させることとしたが、D21>D13とすることで摩擦抵抗を生じさせてもよく、第3段差面123aの内面と拡径部223の外面による摩擦抵抗によるものでもよい。
【0045】
また、本実施例においては、上記の通り、外キャップ100における筒状部120の内周面には、容器本体50の突出部222の外周面との間に隙間が形成される第1面121
と、突出部222の外周面が摺動する第2面122とを有している。つまり、D11>D22>D12を満たす。そして、外キャップ100がキャップ本体200に対して胴体部220の下端側に向けてスライドする過程で、係合突起223aによる環状突起522への係合がなされた後に、突出部222は第2面122に対向する位置から第1面121に対向する位置に移動する(
図5及び
図6参照)。これにより、外キャップ100を押し込む過程で、突出部222が、第2面122に対して摺動した状態から第1面121に対向する位置に移動することで摺動抵抗がなくなる。これにより、ユーザーは、キャップ10を閉める動作の際に、感触により、キャップ10が閉じられた感覚を得ることができる。以上のように、キャップ10を押し込む動作のみによって、キャップ10を閉じることができる。なお、閉じた感覚を得るため、例えば第2面122と第1段差面121aの境界に摺動に影響しない程度の突片(図示しない)を設け、突出部222が乗り越え時にクリック感を得るようにしてもよい。
【0046】
次に、キャップ10を開く動作について説明する。キャップ10を開く場合、ユーザーはキャップ10を容器本体50から引き抜けばよい。これにより、
図6に示す状態から、外キャップ100がキャップ本体200に対してスライドし(
図5中の矢印SO参照)、かつ、拡径部223が弾性復元力によって元の状態に戻っていく(
図5中の矢印RO参照)。
【0047】
ここで、本実施例においては、筒状部120の内周面と胴体部220の外周面には、第3面123の拡径部223から離れる方向への一定距離以上の移動を規制するストッパ構造が設けられている。より具体的には、筒状部120の内周面には、第3面123の上方に、第2段差面122aを介して第3面123の内周面よりも内径の大きな大径面である第2面122が設けられている。そして、胴体部220の外周面に設けられた環状の突出部222と、第2段差面122aとによって、上記のストッパ構造が構成されている。このストッパ構造によって、一定距離だけ外キャップ100がキャップ本体200に対してスライドした後に、外キャップ100と共にキャップ本体200も容器本体50から引き抜かれる。つまり、
図4に示す状態から
図3に示す状態となる。
【0048】
<本実施例に係るキャップ及び容器の優れた点>
本実施例によれば、外キャップ100を上下にスライドさせる動作によって、キャップ本体200に設けられた係合突起223aを、容器本体50の口部500に設けられた環状突起522に対して係合させたり、係合を解除させたりすることができる。そして、外キャップ100を上下にスライドさせる動作の際においては、外キャップ100の側面を径方向に押し込み、変形させることによりキャップと容器本体とを嵌合したり嵌合を解除したりする必要はない。
【0049】
また、係合突起223aは胴体部220の下方に設けられた拡径部223の内周面に設けられている。そして、外キャップ100における筒状部120の内周面(第3面123)が拡径部223の外周面に摺動することで、拡径部223が撓むように変形し、係合突起223aによる係合と、その解除が行われる。従って、拡径部223を撓ませたり、拡径部223を元の状態に戻したりするのに必要な力を弱く設定することができる。すなわち、外キャップ100を下方にスライドさせるだけで、予め拡径している拡径部223の外周面を、外キャップ100の内周面が摺動することで拡径部223を内方に撓ませることができる。そのため、スライドさせるのに必要な力を弱く設定することができる。そして、このスライド動作によって、係合突起223aを環状突起522に対して係合させることができる。また、外キャップ100を上方にスライドさせることで、拡径部223は弾性復元力によって元の状態に戻るので、スライドさせるのに必要な力を弱く設定することができる。そして、このスライド動作によって、係合突起223aの環状突起522への係合を解除することができる。
【0050】
また、本実施例においては、拡径部223は、周方向にそれぞれ間隔を空け、かつ全周に亘って複数設けられている。これにより、キャップ本体200は、容器本体50の口部500に対して、全周に亘って、係合突起223aにより係合される。従って、十分な係合力が得られる。
【0051】
また、本実施例においては、拡径部223が内方に変形していない状態における係合突起223aの最小内径は、環状突起522の最大外径以上となるように設定されている。つまり、D27≧D53を満たす。これにより、係合突起223aが環状突起522を通過する際には、係合突起223aと環状突起522は接しないか、接したとしても摺動抵抗は殆ど発生しない。従って、キャップ10を閉じたり開いたりする際の力を弱くすることができる。なお、D53の方がD27よりも多少大きくても、係合突起223aが環状突起522を通過する際の摺動抵抗を小さくすることができる。従って、キャップ10を開け閉めするのに必要な力を弱く抑えられるのであれば、D53>D27となるように設定しても構わない。
【0052】
また、本実施例においては、筒状部120の内周面と胴体部220の外周面には、操作部である第3面123の拡径部223から離れる方向への一定距離以上の移動を規制するストッパ構造が設けられている。これにより、外キャップ100の外周面を径方向に押し込まなくても、外キャップ100を容器本体50から引き抜くだけで、外キャップ100と共にキャップ本体200も容器本体から引き抜くことができる。
【0053】
なお、本実施例においては、環状の突出部222と、第2段差面122aとによって、上記のストッパ構造が構成されている。ただし、操作部である第3面123の拡径部223から離れる方向への一定距離以上の移動を規制するストッパ構造については、実施例に示した構造に限らず、他の構造を採用することもできる。
【0054】
更に、本実施例においては、キャップ本体200が口部500に取り付けられる過程で、シール部211が口部500の口を塞いだ後に、係合突起223aは環状突起522に係合が完了する位置に移動するように構成されている。これにより、キャップ本体200が容器本体50の口部500に取り付けられたものの、シール部211によるシールが不完全な状態になってしまうことを抑制することができる。
【0055】
なお、本実施例においては、D24>D51を満たすため、シール性を高くすることができる。ただし、内容物が歯磨き粉のように腐敗しないような物の場合には、シール性は低くても構わないため、D51≧D24となるようにしてもよい。これにより、より確実に、シール部211が口部500の口を塞いだ後に、係合突起223aを環状突起522に係合させることができる。
【0056】
また、本実施例においては、シール部211は、口部500の内周面510に対して嵌合可能な円筒部211aと、円筒部211aの下端を塞ぐ閉塞部211bとから構成される。これにより、内容物が粘性の高いものであっても、閉塞部211bの表面に内容物が付着する程度で済むため、キャップ10側に付着してしまう内容物の量を少なくすることができる。
【0057】
ここで、本実施例に係る外キャップ100において、第3面123よりも下方に、第3面123よりも径が大きな第4面124、及び第3段差面123aを有する部分を設けた意義について説明する。
【0058】
キャップ10を開けた状態においては、拡径部223は、第3段差面123a及び第4
面124に接しておらず、撓み変形が生じないように構成されている。また、外キャップ100をスライド移動させることにより、拡径部223を撓み変形させる動作において、第4面124及び第3段差面123aは特に関与しない。しかしながら、第4面124及び第3段差面123aを有する部分によって、キャップ10を閉める動作時に、拡径部223が異常変形してしまうことを抑制できる機能が発揮される。この点について、
図7を参照して説明する。
【0059】
図7に示す外キャップ100Xにおいても、天板部110と、筒状部120Xとを備えている。この外キャップ100Xの場合には、筒状部120Xにおいて、上記実施例における第4面124及び第3段差面123aを有する部分が設けられていない点のみが、上記実施例における外キャップ100と異なっている。
【0060】
このような外キャップ100Xにおいても、キャップ10を開け閉めする動作については、上記実施例で示した外キャップ100と同様の機能が発揮される。しかしながら、
図7に示すように、口部500の中心線とキャップの中心線が大きくずれた状態でキャップが閉められると、口部500の先端が拡径部223に突き当たり、拡径部223が大きく変形してしまうおそれがある。これにより、拡径部223が弾性域を越えて塑性変形してしまい、係合と係合解除が適切に行われなくなってしまうおそれがある。これに対し、上記実施例に示す外キャップ100の場合、第4面124及び第3段差面123aを有する部分が設けられることで、拡径部223が口部500の先端によって大きく変形してしまうことはない。これにより、拡径部223が塑性変形してしまうことを抑制することができる。このように、第4面124及び第3段差面123aを有する部分は、拡径部223の変形を抑制する保護部としての機能が発揮される。
【0061】
以上のように、本実施例によれば、弱い力でも、キャップ10を容器本体50に対して押し込んだり引っ張たりするだけで、キャップ10の開け閉めが可能であるので、手指が不自由の方でも、キャップ10の開閉を行うことができる。なお、キャップ10を壁面などに固定する構造を設ければ、片手でも簡単にキャップ10の開閉を行うことができる。キャップ10を壁面などに固定する構造としては、例えばキャップ10の天板部110に吸盤を設けたり、キャップ10の天板部110と壁面にそれぞれ磁石を設けたり、キャップ10の天板部110と壁面にそれぞれフックを設けたりするなどの構造を挙げることができる。
【0062】
(実施例2)
図8には、本発明の実施例2が示されている。本実施例においては、外キャップの構成が実施例1と異なる構成について説明する。その他の構成および作用については実施例1と同一なので、同一の構成部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0063】
図8は本発明の実施例2に係るキャップの概略構成図(模式的断面図)である。本実施例に係るキャップも、実施例1と同様に、外キャップ100Yと、キャップ本体200とにより構成される。キャップ本体200と容器本体50の構成は実施例1と同一であるので、その説明は省略する。
【0064】
本実施例に係る外キャップ100Yは、天板部110Yと、容器本体50における胴体部220の外周を覆い上下方向にスライド可能な筒状部120と、筒状部120と同心的に設けられ、かつ筒状部120よりも径が大きな第2の筒状部130とを備えている。筒状部120の構成については、上記実施例1と同一である。
【0065】
上記実施例1においては、筒状部120によって、口部500付近のみを覆っていたのに対して、本実施例においては、第2の筒状部130によって、肩部52も覆うように構
成されている。
【0066】
以上のように構成される外キャップ100Yを備えるキャップ、及び容器においても、上記実施例1と同様の効果を得ることができることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0067】
10 キャップ
50 容器本体
51 胴部
52 肩部
100,100X,100Y 外キャップ
110,110Y 天板部
120,120X 筒状部
121 第1面
122 第2面
123 第3面(操作部)
124 第4面
121a 第1段差面
122a 第2段差面
123a 第3段差面
130 第2の筒状部
200 キャップ本体
210 天板部
211 シール部
211a 円筒部
211b 閉塞部
212 円筒状突起
220 胴体部
221 円筒部
221a 小径面
221b 大径面
222 突出部
223 拡径部
223a 係合突起
500 口部
510 内周面
520 外周面
521 円柱面
522 環状突起
523 環状溝