(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128402
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】調理用シート
(51)【国際特許分類】
A47J 37/00 20060101AFI20240913BHJP
D21H 21/14 20060101ALI20240913BHJP
D21H 11/18 20060101ALI20240913BHJP
D21H 15/02 20060101ALI20240913BHJP
A47J 36/04 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
A47J37/00 C
D21H21/14 Z
D21H11/18
D21H15/02
A47J36/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037360
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三好 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 寛人
【テーマコード(参考)】
4B040
4B055
4L055
【Fターム(参考)】
4B040AA05
4B040AA10
4B040AD01
4B040AE20
4B040JA02
4B040JA15
4B040JA19
4B055AA50
4B055BA13
4B055CA90
4B055CB16
4B055CC43
4B055FA20
4B055FB32
4B055FB54
4B055FC12
4B055FC20
4B055FD10
4B055FE10
4L055AA03
4L055AC06
4L055AF09
4L055AF46
4L055EA04
4L055EA07
4L055EA08
4L055EA10
4L055EA16
4L055FA11
4L055GA30
4L055GA48
(57)【要約】
【課題】天然成分を主原料としつつ、耐油性を備え、水が付着しても破れにくい調理用シートを提供する。
【解決手段】課題は、パルプ繊維と平均繊維径が20~200nmである微細繊維状セルロースとを有し、JAPAN TAPPI No.41に規定されるはつ油度(キット法)が12級以上であり、コッブサイズ度(10秒)が50g/m
2以下である、ことを特徴とする調理用シートによって解決される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルプ繊維と平均繊維径が20~200nmである微細繊維状セルロースとを有し、
JAPAN TAPPI No.41に規定されるはつ油度(キット法)が12級以上であり、
コッブサイズ度(10秒)が50g/m2以下である、
ことを特徴とする調理用シート。
【請求項2】
前記パルプ繊維と前記微細繊維状セルロースの質量比が、固形分基準で50:50~1:99である、
請求項1に記載の調理用シート。
【請求項3】
前記微細繊維状セルロースは、セルロース繊維のヒドロキシ基が化学的に変性された変性微細繊維状セルロースと変性されていない未変性微細繊維状セルロースを有するものであり、
前記変性微細繊維状セルロースと前記未変性微細繊維状セルロースの質量比が、固形分基準で0.1:99.9~10:90である、
請求項1に記載の調理用シート。
【請求項4】
前記変性微細繊維状セルロースの平均繊維径が3~15nmである、
請求項3に記載の調理用シート。
【請求項5】
調理用シートの引裂強さ(縦)が50~300mNである、
請求項1に記載の調理用シート。
【請求項6】
シートの一方の面又は両面に、シリコーン樹脂、フッ素樹脂及び金属箔のいずれか一つ以上が設けられていない、
請求項1に記載の調理用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調理用シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
調理用シートは、一般的に紙等の天然成分からなるシートの表面に耐水及びはつ油加工したものが使用されている。この耐水及びはつ油加工に、例えばシリコーン樹脂等の耐水剤やはつ油剤が使用されることがある。使用後の調理シートは焼却処理されることになるが、焼却される過程で、加工に使用された耐水剤やはつ油は、焼却されにくく、そのままの形状又は微粒子形状の難分解性化学物質として残る。この難分解性化学物質は、焼却設備を汚染したりや排出される環境に負荷を与えたりすることが懸念されていた。
【0003】
例えば、特許文献1は、耐水・耐油性に優れた調理用シートを開示しているが、その効果を発現させるためにセロハンにシリコーン樹脂又はフッ素系樹脂を塗布した調理用シートを提案している。しかしながら、この調理用シートを焼却処理した場合、難分解性化学物質が発生する可能性がある。
【0004】
特許文献2は、イオン性置換基を有する第1のセルロース繊維と繊維幅が1000nm以下の第2のセルロース繊維を含むシートを開示しており、このシートであれば、焼却処理によって難分解性化学物質が発生しにくいと思われる。しかしながら、イオン性置換基を有するセルロース繊維は水分を保持する性質が高く、これをシートの主材料とした場合、過剰な水分保持によりシートの強度が低下するおそれがある。湿潤時の強度が乏しいシートは、調理品を置いたり、包んだりすると破れる場合があり、調理用シートとしては不向きである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11-137442号公報
【特許文献2】特開2019-214806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような背景から、本発明が解決しようとする課題は、天然成分を主原料としつつ、耐油性を備え、水が付着しても破れにくい調理用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための手段として、次の態様を掲げることができる。
(第1の態様)
パルプ繊維と平均繊維径が20~200nmである微細繊維状セルロースとを有し、
JAPAN TAPPI No.41に規定されるはつ油度(キット法)が12級以上であり、
コッブサイズ度(10秒)が50g/m2以下である、
ことを特徴とする調理用シート。
【0008】
この態様の調理用シートは、平均繊維径の異なる繊維である、微細繊維状セルロースとパルプ繊維を有するので、パルプ繊維が分散して形成されたネットワーク構造の空隙に微細繊維状セルロースが入り込んだ構造になっており、従来のパルプ繊維のみからなるシートよりも緻密なシートとなる。また、当該調理用シートは、微細繊維状セルロース繊維が緻密な層を形成しており、コッブサイズ度(10秒)が上記範囲となっているので、油や水が透過しづらく、はつ油度が高くかつ耐水性を有するものとなっている。
【0009】
上記のほか、好ましい態様を次に示す。
(第2の態様)
前記パルプ繊維と前記微細繊維状セルロースの質量比が、固形分基準で50:50~1:99である、
第1の態様の調理用シート。
【0010】
当該質量比であれば、緻密な調理用シートとなり、破れにくいものとなる。
【0011】
(第3の態様)
前記微細繊維状セルロースは、セルロース繊維のヒドロキシ基が化学的に変性された変性微細繊維状セルロースと変性されていない未変性微細繊維状セルロースを有するものであり、
前記変性微細繊維状セルロースと前記未変性微細繊維状セルロースの質量比が、固形分基準で0.1:99.9~10:90である、
第1の態様の調理用シート。
【0012】
上記、質量比であれば十分な強度を備えた調理用シートとなる。
【0013】
(第4の態様)
前記変性微細繊維状セルロースの平均繊維径が3~15nmである、
第3の態様の調理用シート。
【0014】
この態様の調理用シートは、平均繊維径の異なる微細繊維状セルロースが含まれているので、より緻密なものとなる。
【0015】
(第5の態様)
調理用シートの引裂強さ(縦)が50~300mNである、
第1の態様の調理用シート。
【0016】
当該引裂強さの範囲であれば、破損し難く一般的な調理の用途に十分に耐え得るものとなる。
【0017】
(第6の態様)
シートの一方の面又は両面に、シリコーン樹脂、フッ素樹脂及び金属箔のいずれか一つ以上が設けられていない、
第1の態様の調理用シート。
【0018】
従来の調理用シートは、シリコーン樹脂やフッ素樹脂、金属箔で表面を加工するものであったが、本態様であれば、これらの加工を行わなくても調理用途として十分に用いることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によると、天然成分を主原料としつつ、耐油性を備え、水が付着しても破れにくい調理用シートとなる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、発明を実施するための形態を説明する。なお、本実施の形態は、本発明の一例である。本発明の範囲は、本実施の形態の範囲に限定されない。
【0022】
本実施形態の調理用シートは、微細繊維状セルロースと当該微細繊維状セルロースよりも平均繊維径が大であるパルプ繊維を有してなる。以下、順に説明する。
【0023】
(パルプ繊維)
本実施形態のパルプ繊維は、平均繊維長が、200~4000μm、好ましくは300~3000μm、より好ましくは400~2000μmである。パルプ繊維の平均繊維長が4000μmを超過すると、パルプ繊維同士の絡み合いが大きくなり、パルプ繊維同士が部分的に過度に凝集するなどして大きな空隙が形成される。その結果、当該空隙を微細繊維状セルロースで十分に埋めることができず、当該空隙が油分や水分の通過孔となることから、本発明の調理用シートとして適しないシートとなってしまうおそれがある。他方、パルプ繊維の平均繊維長が200μm未満だと、パルプ繊維同士の絡み合いが小さいので、パルプ繊維同士の結合が弱く、引裂強度が低下し、使用時に破れやすく取り扱いにくい調理用シートとなってしまうおそれがある。
【0024】
パルプ繊維の平均繊維長は、JIS P8226-2:2011「パルプ光学的自動分析法による繊維長測定方法-第2部:非偏光法」で測定した長さ加重平均繊維長をいう。
【0025】
パルプ繊維の平均繊維径(平均繊維幅。単繊維の直径平均。)は、1~45μm、好ましくは5~35μm、より好ましくは10~30μmである。パルプ繊維の平均繊維径が45μmを超過する繊維は太く、物理的な繊維の絡み合いが少なくなり、低強度の調理用シートになりやすい。また、シートの厚みに対してパルプ繊維の割合が大きくなるため、微細繊維状セルロースの緻密な層が十分に形成されず、耐油性が低下するおそれがある。他方、パルプ繊維の平均繊維径が1μm未満だと、パルプ繊維が解繊されすぎており、物理的な繊維の絡み合いが多くなり、パルプ繊維が適度に分散されず、不均質な調理用シートになるおそれがある。
【0026】
パルプ繊維の平均繊維径は、バルメット社製の繊維分析計「FS5」を使用し測定することができる。
【0027】
パルプ繊維は、未叩解であっても叩解してもよく、フィブリル化率が0~8.0%、好ましくは0~6.5%、より好ましくは0~4.0%である。当該フィブリル化率が8.0%を超過すると、パルプ繊維解繊が過度に進行してしまい、パルプ繊維自体のダメージが増加することにより、引裂強さ等の強度に乏しい調理用シートになるおそれがある。
【0028】
パルプ繊維のフィブリル化率の測定は、後述する微細繊維状セルロースのフィブリル化率の測定と同様の操作手順で測定した値である。
【0029】
パルプ繊維のフィブリル化率は、叩解の方式(例えば、粘状叩解やカッティング叩解等)その他の様々な条件によって調節することができる。具体的には、叩解の方式の他、例えば、叩解に用いる刃の大きさ、形状や角度、ビッカース硬度、クリアランス等の装置特性に関する条件、叩解を行う際の濃度や温度、pH等の工程変数に関する条件によって、フィブリル化率を調節することができる。
【0030】
パルプ繊維は、例えば、ダブルディスクリファイナー、シングルディスクリファイナー、コニカルリファイナー等の叩解機を用いて叩解することができる。叩解の手法としては、パルプ繊維を第1叩解機に供給して、叩解処理されたパルプ繊維を、さらに第2叩解機に供給して叩解処理をして、2回叩解処理されたパルプ繊維を得る手法を挙げることができる。この手法によれば、供給されるパルプ繊維が全体的に叩解がなされる。
【0031】
前述のように叩解処理は、2回又は3回以上行うようにしてもよい。
【0032】
パルプ繊維のカッパー価は、0.5~140であるのが好ましく、1.0~120であるのがより好ましく、3.0~100であるのが特に好ましい。カッパー価は、パルプ繊維中の樹脂分量、主にリグニン量を示す指標であり、この値が高いほど樹脂分量が多いことになる。また、樹脂分はウェブ形成工程において添加剤と結合して塊状化すると、繊維相互の結合を阻害して、シートの強度を低下させるおそれがある。そこで、調理用シートの製造おいては、カッパー価を上記範囲に抑えることで、JIS P3401に規定する引張強さが達成される。
【0033】
本実施形態においてカッパー価とは、パルプ繊維について、JIS-P8211に準じて測定した値をいう。
【0034】
カッパー価が高いパルプ繊維はパルプ製造で発生する廃棄物量が少ないため、環境負荷の低減化が期待できる。また、カッパー価が高いパルプ繊維を用いると、パルプ繊維に含まれる樹脂分が、添加剤(例えば、歩留まり向上剤や紙力増強剤)と同様の機能を発揮するため、添加剤の使用量を低減することができる。ただし、パルプ繊維のカッパー価が上記範囲を超えると、引張強さに乏しい調理用シートになる可能性がある。
【0035】
カッパー価を上記の好ましい範囲に調節し易いパルプ種としては、特に限定されないが、古紙以外の植物由来の広葉樹や針葉樹を原料とする木材パルプが好適である。
【0036】
木材パルプとしては、例えば、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)や広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)等の広葉樹クラフトパルプ(LKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)や針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)等の針葉樹クラフトパルプ(NKP)、サルファイトパルプ(SP)、溶解パルプ等(DP)等の化学パルプ、機械パルプ(TMP)の中から1種又は2種以上を選択して使用することができる。
【0037】
リグニン含有量の多い原料パルプとして特に機械パルプを例示することができる。機械パルプの具体例としては、ストーングランドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(PGW)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、サーモグランドパルプ(TGP)、グランドパルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、リファイナーメカニカルパルプ(RMP)、晒サーモメカニカルパルプ(BTMP)等を示すことができ、これらの中から1種又は2種以上を選択して使用することができる。
【0038】
本実施形態の調理用シートに用いられるパルプ繊維として、化学パルプも好ましい。化学パルプは相対的に高強度であるので、化学パルプを有する調理用シートも強度に優れたものとなる。また、白色系統の調理用シートを製造する観点からは、白色パルプが好ましく、例えば、広葉樹晒クラフトパルプや針葉樹晒クラフトパルプを挙げることができる。
【0039】
パルプ繊維として、リグニンを所定濃度含有するパルプ繊維とそれ以外のパルプ繊維(例えば、広葉樹晒クラフトパルプや針葉樹晒クラフトパルプ)を含有させることで、白色系統から茶色系統の色彩の調理用シートを得ることができる。
【0040】
パルプ繊維のフリーネスは、300~750ccとするのが好ましく、350~700ccとするのがより好ましく、400~650ccとするのが特に好ましい。当該フリーネスを上記範囲にすることで、パルプ繊維同士やパルプ繊維と微細繊維状セルロースが適度に絡み合い、均質なシートを形成しやすくなる。また、シート形成における脱水性を調整することができ、脱水基材を通して脱水する際に発生する微細繊維状セルロースの抜けや脱水の偏りによるシートの不均質化を抑制することができる。
【0041】
本形態において、フリーネスとは、JIS P8121に規定されるカナダ標準形ろ水度試験機を用いて測定した値をいう。
【0042】
(微細繊維状セルロース)
本形実施態の微細繊維状セルロースについて、詳細に説明する。微細繊維状セルロースは、セルロース繊維の水素結合点を多く有する。セルロース繊維相互が水素結合して、緻密な三次元ネットワーク構造を形成することによって、相対的に大きな空隙の少ない調理用シートを得ることができる。微細繊維状セルロースは、原料パルプを解繊(微細化)することで得ることができ、化学処理、機械処理等公知の処理手法で製造することができる。原料となるセルロース繊維としては、植物由来の繊維、動物由来の繊維、微生物由来の繊維等の中から1種又は2種以上を選択して使用することができる。ただし、植物繊維であるパルプ繊維(原料パルプ)を使用するのが、経済的コストがかからず好ましい。
【0043】
微細繊維状セルロースの原料パルプとしては、例えば、広葉樹、針葉樹等を原料とする木材パルプ、ワラ・バガス・綿・麻・じん皮繊維等を原料とする非木材パルプ、回収古紙、損紙等を原料とする古紙パルプ(DIP)等の中から1種又は2種以上を選択して使用することができる。古紙パルブ以外のパルプは、古紙パルプよりもセルロース繊維の純度が高く、セルロース繊維以外の夾雑物が少ないので好ましい。セルロース繊維の純度が高いパルプから得られた微細繊維状セルロースは、流動性や被膜形成性に優れる。
【0044】
なお、以上の各種原料パルプの形態は、特に限定されないが、例えば、セルロース系パウダーなどといわれる粉砕物の形態であってもよい。近年ではオーガニック成分含有の自然環境に配慮した商品が増加している傾向にあるため、特に、古紙以外の植物由来の広葉樹や針葉樹を原料とする木材パルプを原料パルプとするのが好適である。
【0045】
木材パルプとしては、例えば、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)や広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)等の広葉樹クラフトパルプ(LKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)や針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)等の針葉樹クラフトパルプ(NKP)、サルファイトパルプ(SP)、溶解パルプ等(DP)等の化学パルプ、機械パルプ(TMP)の中から1種又は2種以上を選択して使用することができる。
【0046】
化学パルプは、リグニン含有量が少なく、かつ純度が相対的に高いため、解繊が容易である。純度が高いと、解繊したときに繊維径及び繊維長の統計的分散が小さい、すなわち繊維径及び繊維長のばらつきが小さい微細繊維状セルロースとなり、均質な調理用シートとなるので好ましい。
【0047】
機械パルプとしては、例えば、ストーングランドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(PGW)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、サーモグランドパルプ(TGP)、グランドパルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、リファイナーメカニカルパルプ(RMP)、晒サーモメカニカルパルプ(BTMP)等の中から1種又は2種以上を選択して使用することができる。
【0048】
微細繊維状セルロースの解繊に先立って、化学的な手法によって微細繊維状セルロース(原料パルプ)を処理することもできる。化学的手法による前処理としては、例えば、酸による多糖の加水分解(酸処理)、酵素による多糖の加水分解(酵素処理)、アルカリによる多糖の膨潤(アルカリ処理)、酸化剤による多糖の酸化やTEMPO触媒による酸化(酸化処理)、還元剤による多糖の還元(還元処理)、リンオキソ酸によるエステル化(化学的処理)等を例示することができる。
【0049】
解繊に先立って上記に掲げる前処理を施すと、解繊し易くなり、微細繊維状セルロースが均質性に優れるものとなる。具体的には、前処理をすることにより、パルプが持つヘミセルロースやセルロースの非晶領域が分解され、微細繊維状セルロースへの解繊に要するエネルギーを低減することができ、解繊されたセルロース繊維の均一性や分散性を向上することができる。セルロース繊維の分散性は、例えば、調理用シートにおける微細繊維状セルロースの分布に直結し、調理用シートの均質性の向上に資する。ただし、前処理は、微細繊維状セルロースのアスペクト比を低下させるため、過度の前処理は避けるのが好ましい。
【0050】
なお、化学的な変性処理(化学修飾処理)を原料パルプに施して解繊すると、平均繊維径の相対的に小さい微細繊維状セルロースが生成される。本実施形態の調理用シートは、微細繊維状セルロースを有するものであるが、その微細繊維状セルロースは、化学的な変性処理がなされていないものであってもよいし、化学的な変性処理がなされているものであってもよい。
【0051】
特に、本実施形態の調理用シートを構成する微細繊維状セルロースは、化学的に変性がなされたものと、当該変性がなされていないものとが混在するものであってもよい。化学的な変性がなされた変性微細繊維状セルロース(以下、「変性微細繊維状セルロース」ともいう。)は、化学的な変性がなされていない未変性微細繊維状セルロース(以下、「未変性微細繊維状セルロース」ともいう。)と比較して、平均繊維径が短く、高い分散性を有する。そのため、調理用シートを構成する微細繊維状セルロースの一部が、化学的な変性がなされた変性微細繊維状セルロースであると、微細繊維状セルロースが適度に分散され、均質な調理用シートとなる。また、耐油性については、化学的な変性がなされた変性微細繊維状セルロースの方が、未変性微細繊維状セルロースよりも緻密な層を形成しやすいため、高くなる可能性がある。他方、化学的な変性がなされた変性微細繊維状セルロースは未変性微細繊維状セルロースと比較して水との親和性が高く水分と接触した際に膨潤するため、過度に配合すると耐水性が低下する恐れがある。
【0052】
調理用シートに含まれる微細繊維状セルロースが、化学的な変性がなされた変性微細繊維状セルロースと、未変性微細繊維状セルロースとの両方を含むものである場合、例えば前記変性微細繊維状セルロースと前記未変性微細繊維状セルロースの質量比が、固形分基準で0.1:99.9~10:90であると、調理用シートにおけるパルプ繊維間で形成された空隙に、未変性微細繊維状セルロースが入り込み易くなるので、強度の調節を容易に行うことができ好ましい。
【0053】
変性微細繊維状セルロースは、平均繊維径が3~15nmのものがよい。この場合、調理用シートは、パルプ繊維と未変性微細繊維状セルロースと変性微細繊維状セルロースを有し、すなわち、3段階の異なる平均繊維径を有するので、繊維間で形成される空隙が相対的に小さいものとなり、緻密なシートとなる。
【0054】
微細繊維状セルロースの化学的な変性処理の一例として、リンオキソ酸によるエステル化処理について、詳細に説明する。原料パルプをリンオキソ酸によるエステル化(化学的修飾)を施す処理を行うと、原料パルプを微細化して製造される微細繊維状セルロースは、アスペクト比が大きく強度に優れ、光透過度が高いものとなる。リンオキソ酸によるエステル化は、特開2019-199671号公報に掲げる手法で行うことができる。リンオキソ酸によりエステル化された微細繊維状セルロースの一例を次記に示す。セルロース繊維のヒドロキシ基の一部が、下記構造式(1)に示す官能基で置換されてリンオキソ酸でエステル化されており、構造式(1)に示す官能基の導入量が、セルロース繊維1gあたり0.5mmоl以上、好ましくはセルロース繊維1gあたり1.0mmоl以上、より好ましくはセルロース繊維1gあたり1.5mmоl以上であると、解繊が容易であり、統計的分散が小さい微細繊維状セルロースとなり好ましい。
〔構造式(1)〕
【化1】
構造式(1)において、a,b,m,nは自然数である。
A1,A2,・・・,AnおよびA’のうちの少なくとも1つはOであり、残りはR、OR、NHR、及び、なしのいずれかである。Rは、水素原子、飽和-直鎖状炭化水素基、飽和-分岐鎖状炭化水素基、飽和-環状炭化水素基、不飽和-直鎖状炭化水素基、不飽和-分岐鎖状炭化水素基、芳香族基、及びこれらの誘導基のいずれかである。αは有機物又は無機物からなる陽イオンである。この微細繊維状セルロースは光透過度及び粘度が極めて高いものである。
【0055】
リンオキソ酸によるエステル化の反応は、セルロース繊維に、リンオキソ酸類及びリンオキソ酸金属塩類の少なくともいずれか一方を含む添加物からなるpH3.0未満の溶液を添加し、加熱し、解繊することで進行する。
【0056】
添加物としては、例えば、リン酸、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ピロリン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム、リン酸二水素リチウム、リン酸三リチウム、リン酸水素二リチウム、ピロリン酸リチウム、ポリリン酸リチウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三カリウム、ピロリン酸カリウム、ポリリン酸カリウム、亜リン酸、亜リン酸水素ナトリウム、亜リン酸水素アンモニウム、亜リン酸水素カリウム、亜リン酸二水素ナトリウム、亜リン酸ナトリウム、亜リン酸リチウム、亜リン酸カリウム、亜リン酸マグネシウム、亜リン酸カルシウム、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリフェニル、ピロ亜リン酸等の亜リン酸化合物等を使用することができる。これらの添加物は、それぞれを単独で又は複数を組み合わせて使用することができる。
【0057】
セルロース繊維の全部又は一部に化学的な変性処理を施す手法の一例として、特に亜リン酸を導入してエステル化する手法を挙げることができる。この手法でセルロース繊維をエステル化して解繊することで、次記の構造式(2)がセルロース繊維に導入された、亜リン酸エステル化微細繊維状セルロースを得ることができる。
【0058】
〔構造式(2)〕
【化2】
αは、なし、R、及びNHRのいずれかである。Rは、水素原子、飽和-直鎖状炭化水素基、飽和-分岐鎖状炭化水素基、飽和-環状炭化水素基、不飽和-直鎖状炭化水素基、不飽和-分岐鎖状炭化水素基、芳香族基、及びこれらの誘導基のいずれかである。βは有機物又は無機物からなる陽イオンである。
【0059】
亜リン酸が導入されてエステル化されたセルロース繊維は、エステル基中のO原子が電子(例えば、不対電子)を複数有し、マイナスに帯電して極性を帯びている。このO原子を有するセルロース繊維は、相互に電気的に反発し合い、結果、解繊され易いものとなる。また、解繊された亜リン酸エステル化された微細繊維状セルロースは、相互に反発し合い、分散液中において分散性に優れたものとなる。さらに、分散液の媒体がプロトン性媒体であれば、水素結合等の相互作用により、この亜リン酸エステル化された微細繊維状セルロースが高い分散性を有するものとなる。
【0060】
この亜リン酸エステル化された変性微細繊維状セルロースのスラリーと化学的な変性がされていない未変性微細繊維状セルロースとパルプ繊維スラリーとの混合スラリーは、亜リン酸エステル化された変性微細繊維状セルロースの優れた分散性の作用により、パルプ繊維も分散された状態が維持されるので、当該混合スラリーを原料として製造された調理用シートは、局所的な密度差の少ない良質なものとなる。
【0061】
次に前処理の一例として酵素処理について説明する。酵素処理に使用する酵素としては、セルラーゼ系酵素及びヘミセルラーゼ系酵素の少なくともいずれか一方を使用するのが好ましく、両方を併用するのがより好ましい。これらの酵素を使用すると、セルロース繊維の解繊がより容易になる。なお、セルラーゼ系酵素は、水共存下でセルロースの分解を惹き起こす。また、ヘミセルラーゼ系酵素は、水共存下でヘミセルロースの分解を惹き起こす。
【0062】
セルラーゼ系酵素としては、例えば、トリコデルマ(Trichoderma、糸状菌)属、アクレモニウム(Acremonium、糸状菌)属、アスペルギルス(Aspergillus、糸状菌)属、ファネロケエテ(Phanerochaete、担子菌)属、トラメテス(Trametes、担子菌)属、フーミコラ(Humicola、糸状菌)属、バチルス(Bacillus、細菌)属、スエヒロタケ(Schizophyllum、担子菌)属、ストレプトミセス(Streptomyces、細菌)属、シュードモナス(Pseudomonas、細菌)属などが産生する酵素を使用することができる。これらのセルラーゼ系酵素は、試薬や市販品として購入可能である。市販品としては、例えば、セルロイシンT2(エイチピィアイ社製)、メイセラ-ゼ(明治製菓社製)、ノボザイム188(ノボザイム社製)、マルティフェクトCX10L(ジェネンコア社製)、セルラーゼ系酵素GC220(ジェネンコア社製)等を例示することができる。
【0063】
ヘミセルラーゼ系酵素としては、例えば、キシランを分解する酵素であるキシラナーゼ(xylanase)、マンナンを分解する酵素であるマンナーゼ(mannase)、アラバンを分解する酵素であるアラバナーゼ(arabanase)等を使用することができる。また、ペクチンを分解する酵素であるペクチナーゼも使用することができる。
【0064】
酵素処理を行う際のセルロース繊維に対する酵素の添加量は、例えば、セルロース繊維に対する酵素の添加量は、セルロース繊維を100質量%とすると、好ましくは0.1~3質量%と、より好ましくは0.3~2.5質量%、特に好ましくは0.5~2質量%である。
【0065】
酵素としてセルラーゼ系酵素を使用する場合、酵素処理時のpHは、酵素反応の反応性の観点から、弱酸性領域(pH=3.0~6.9)であるのが好ましい。一方、酵素としてヘミセルラーゼ系酵素を使用する場合、酵素処理時のpHは、弱アルカリ性領域(pH=7.1~10.0)であるのが好ましい。
【0066】
酵素処理時の温度は、好ましくは30~70℃、より好ましくは35~65℃、特に好ましくは40~60℃である。
【0067】
次に、アルカリ処理の方法について、説明する。
アルカリ処理の方法としては、例えば、アルカリ溶液中に、セルロース繊維を浸漬する方法が存在する。
【0068】
アルカリ溶液に含まれるアルカリ化合物は、無機アルカリ化合物であっても、有機アルカリ化合物であってもよい。無機アルカリ化合物としては、例えば、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸塩、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のリン酸塩等を例示することができる。また、アルカリ金属の水酸化物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等を例示することができる。アルカリ土類金属の水酸化物としては、例えば、水酸化カルシウム等を例示することができる。アルカリ金属の炭酸塩としては、例えば、炭酸リチウム、炭酸水素リチウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等を例示することができる。アルカリ土類金属の炭酸塩としては、例えば、炭酸カルシウム等を例示することができる。アルカリ金属のリン酸塩としては、例えば、リン酸リチウム、リン酸カリウム、リン酸3ナトリウム、リン酸水素2ナトリウム等を例示することができる。アルカリ土類金属のリン酸塩としては、例えば、リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム等を例示することができる。
【0069】
有機アルカリ化合物としては、例えば、アンモニア、脂肪族アミン、芳香族アミン、脂肪族アンモニウム、芳香族アンモニウム、複素環式化合物及びその水酸化物、炭酸塩、リン酸塩等を例示することができる。具体的には、例えば、例えば、アンモニア、ヒドラジン、メチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、ブチルアミン、ジアミノエタン、ジアミノプロパン、ジアミノブタン、ジアミノペンタン、ジアミノヘキサン、シクロヘキシルアミン、アニリン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ピリジン、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、リン酸水素2アンモニウム等を例示することができる。
【0070】
アルカリ溶液の溶媒は、水及び有機溶媒のいずれであってもよいが、極性溶媒(水、アルコール等の極性有機溶媒)であるのが好ましく、少なくとも水を含む水系溶媒であるのがより好ましい。
【0071】
セルロース繊維を解繊するに先立って、機械処理や化学処理等による予備的な叩解を行ってもよい。予備的な叩解を行う場合は、原料パルプに対して、先ず化学的な変性処理を行い、その後、予備的な叩解を行い、最後に解繊処理を行うとよい。他方、原料パルプに対して、先ず予備的な叩解を行い、その後、解繊を行った後に、化学的な変性処理を行う手法もある。しかしながら、前者の方が、全体として製造にかけるエネルギーが少なくて済むという利点があり、効率的である。
【0072】
セルロース繊維を解繊するにあたっては、当該セルロース繊維をスラリー状にしておくのが好ましい。このスラリーの固形分濃度は、好ましくは0.1~5質量%、より好ましくは1~4質量%、特に好ましくは2~3質量%である。固形分濃度が上記範囲内であれば、効率的に解繊することができる。
【0073】
セルロース繊維の解繊は、例えば、高圧ホモジナイザー、高圧均質化装置等のホモジナイザー、高速回転式ホモジナイザー、グラインダー、摩砕機等の石臼式摩擦機、コニカルリファイナー、ディスクリファイナー等のリファイナー、一軸混練機、多軸混練機、各種バクテリア等の中から1種又は2種以上の手段を選択使用して行うことができる。ただし、セルロース繊維の解繊は、水流、特に高圧水流で微細化する装置・方法を使用して行うのが好ましい。この装置・方法によると、得られる微細繊維状セルロースの寸法均一性、分散均一性が非常に高いものとなる。これに対し、例えば、回転する砥石間で磨砕するグラインダーを使用すると、セルロース繊維を均一に微細化するのが難しく、場合によっては、一部に解れない繊維塊が残ってしまうおそれがある。
【0074】
セルロース繊維の解繊に使用するグラインダーとしては、例えば、増幸産業株式会社のマスコロイダー等が存在する。また、高圧水流で微細化する装置としては、例えば、株式会社スギノマシンのスターバースト(登録商標)や、吉田機械興業株式会社のナノヴェイタ\Nanovater(登録商標)等が存在する。また、セルロース繊維の解繊に使用する高速回転式ホモジナイザーとしては、エムテクニック社製のクレアミックス-11S等が存在する。
【0075】
原料パルプの解繊は、得られる微細繊維状セルロースの各種物性等が、以下に示すような所望の値又は評価となるように行うのが好ましい。
【0076】
微細繊維状セルロース(ただし、変性微細繊維状セルロースを除く。)の平均繊維径(平均繊維幅。単繊維の直径平均。)は、200nm以下、好ましくは20~200nm、より好ましくは20~150nm、特に好ましくは20~100nmである。微細繊維状セルロースの平均繊維径が200nmを上回ると、パルプ繊維相互の絡み合いによって形成される空隙に対して、微細繊維状セルロースが太く、当該空隙に入り込みにくくなり、一部緻密な層を形成できないことから耐油性の低い調理用シートとなるおそれがある。
【0077】
微細繊維状セルロースの平均繊維径は、例えば、原料パルプの選定、前処理、解繊等によって調整することができる。
【0078】
微細繊維状セルロースの平均繊維径の測定方法は、次のとおりである。
まず、固形分濃度0.01~0.1質量%の微細繊維状セルロースの水分散液100mlをテフロン(登録商標)製メンブレンフィルターでろ過し、エタノール100mlで1回、t-ブタノール20mlで3回溶媒置換する。次に、凍結乾燥し、オスミウムコーティングして試料とする。この試料について、構成する繊維の幅に応じて3,000倍~30,000倍のいずれかの倍率で電子顕微鏡SEM画像による観察を行う。具体的には、観察画像に二本の対角線を引き、対角線の交点を通過する直線を任意に三本引く。さらに、この三本の直線と交錯する合計100本の繊維の幅を目視で計測する。そして、計測値の中位径を平均繊維径とする。
【0079】
微細繊維状セルロース(ただし、変性微細繊維状セルロースを除く。)の平均繊維長(単繊維の長さ)は、上限が500μm以下、好ましくは250μm以下、より好ましくは100μm以下であるとよい。微細繊維状セルロースの平均繊維長は、下限が2μm以上、好ましくは10μm以上である。同平均繊維長の上限が500μmを超過する微細繊維状セルロースは、アスペクト比が大きく、繊維相互の絡み合いによる立体的なネットワーク構造が形成しやすい一方で、当該ネットワーク構造が相対的に大きいことからパルプ繊維相互によって形成される空隙に入り込みにくくなるおそれがある。
【0080】
微細繊維状セルロースの平均繊維長は、例えば、原料パルプの選定、前処理、解繊等によって任意に調整することができる。
【0081】
微細繊維状セルロースの平均繊維長の測定方法は、平均繊維径の場合と同様にして、各繊維の長さを目視で計測する。計測値の中位長を平均繊維長とする。
【0082】
微細繊維状セルロース(ただし、変性微細繊維状セルロースを除く。)の保水度は、下限を200%以上、より好ましくは250%以上とするとよい。また、同保水度の上限を400%以下とするとよい。微細繊維状セルロースの保水度が400%を超えると、調理用シートの製造、特に加圧乾燥の工程で乾燥するのに多くの熱量が必要となるので不経済的であり、また、多くの水分を蒸発させることになるので、水分の蒸発の過程で意図しない空隙が製品に発生するおそれがある。他方、同保水度が200%未満である微細繊維状セルロースは、繊維の解繊が不十分であり、所定の強度や耐油性を有した調理用シートにならないおそれがある。
【0083】
微細繊維状セルロースの保水度は、JAPAN TAPPI No.26(2000)に準拠して測定した値である。
【0084】
微細繊維状セルロース(ただし、変性微細繊維状セルロースを除く。)のアスペクト比(軸比ともいう。(繊維長/繊維径))は、好ましくは10~25000、より好ましくは50~12500、特に好ましくは100~5000である。軸比が10未満である微細繊維状セルロースは、微粒子状に近く、三次元ネットワーク構造の強度に乏しく、結果として低強度の調理用シートになる。他方、軸比が25000を超える微細繊維状セルロースは細長く、絡み易いので分散性に乏しいものとなる。
【0085】
微細繊維状セルロース(ただし、変性微細繊維状セルロースを除く。)の結晶化度は、好ましくは50~95、より好ましくは60~90、特に好ましくは65~85である。当該結晶化度が50未満であると、製造される調理用シートの強度が低くなるおそれがある。
【0086】
結晶化度は、JIS K0131:1996の「X線回折分析通則」に準拠して、X線回折法により測定した値である。なお、微細繊維状セルロースは、非晶質部分と結晶質部分とを有しており、結晶化度は微細繊維状セルロース全体における結晶質部分の割合を意味する。
【0087】
微細繊維状セルロース(ただし、変性微細繊維状セルロースを除く。)の擬似粒度分布曲線におけるピーク値は、1つのピークであるのが好ましい。1つのピークである場合、微細繊維状セルロースは、繊維長及び繊維径の均一性が高く、相互に分散性が優れたものとなる。
【0088】
微細繊維状セルロースのピーク値はISO-13320(2009)に準拠して測定する。より詳細には、粒度分布測定装置(株式会社セイシン企業のレーザー回折・散乱式粒度分布測定器)を使用して微細繊維状セルロースの水分散液における体積基準粒度分布を調べる。そして、この分布から微細繊維状セルロースの最頻径を測定する。この最頻径をピーク値とする。
【0089】
上記単一のピークとなる微細繊維状セルロース(ただし、変性微細繊維状セルロースを除く。)の粒径の擬似粒度分布のピーク値は、例えば50μm以下であるのが好ましく、40μm以下であるのがより好ましく、30μm以下であるのが特に好ましい。ピーク値が50μmを超えると、均質な解繊がなされていないおそれがある。
【0090】
微細繊維状セルロースの粒径におけるピーク値、及び擬似粒度分布の中位径は、例えば、原料パルプの選定、前処理、解繊等によって調整することができる。
【0091】
本実施形態の微細繊維状セルロース(ただし、変性微細繊維状セルロースを除く。)は、リグニン含有量が20%以下、好ましくは0.5~20%、より好ましくは0.5~15%、好適には0.5~10%である。微細繊維状セルロースに含まれるリグニンの含有量を変化させることによって、調理用シートの色合いを調節することができる。微細繊維状セルロースにおけるリグニン含有量が20%を超過すると、茶色系統の色合いとなる。他方、当該リグニン含有率が0.5%未満だと調理用シートが白色系統の色合いとなる。
【0092】
微細繊維状セルロースのリグニン含有量は、クラーソンリグニン法(TAPPI T-222 om-83)に準拠して行うことで測定した値である。
【0093】
解繊して得られた微細繊維状セルロースは、水系媒体中に分散させて分散液(スラリー)としておくことができる。水系媒体は、全量が水であるのが特に好ましい(水分散液)。ただし、水系媒体は、一部が水と相溶性を有する他の液体であってもよい。他の液体としては、例えば、炭素数3以下の低級アルコール類等を使用することができる。
【0094】
微細繊維状セルロース(ただし、変性微細繊維状セルロースを除く。)の濃度を1.5質量%(w/w)とした場合における水分散液のB型粘度は、25℃かつ60rpmの条件で50~3,000cP、より好ましくは100~2,000cPとするとよい。当該B型粘度が100cP未満であると粘度が低すぎるため、微細繊維状セルロースが調理用シートの製造過程で使用する樹脂網等を透過し易くなってしまい、調理用シートに占める微細繊維状セルロースの割合を所望の量に調節するのが困難になる。他方、当該B型粘度が3,000cPを超過すると、微細繊維状セルローススラリーとパルプ繊維スラリーを混ぜて混合スラリーとする過程で、パルプ繊維のフロックが十分に解れず、製造過程で得られる中間生成物や最終製造物である調理用シートに、パルプ繊維の凝集物ができてしまい、通気孔となってしまうおそれがある。
【0095】
本形態においてB型粘度は、JIS Z8803:2011の「液体の粘度測定方法」に準拠して測定した値である。B型粘度は分散液を撹拌したときの抵抗トルクであり、高いほど撹拌に必要なエネルギーが多くなることを意味する。
【0096】
微細繊維状セルロース(ただし、変性微細繊維状セルロースを除く。)のパルプ粘度は、好ましくは1~10cps、より好ましくは2~9cps、特に好ましくは3~8cpsである。パルプ粘度は、セルロースを銅エチレンジアミン液に溶解させた後の溶解液の粘度であり、パルプ粘度が大きいほどセルロースの重合度が大きいことを示しており、繊維そのものの強さにも影響し、分散液の状態の粘度そのものに影響する。
【0097】
微細繊維状セルロースのパルプ粘度は、TAPPI T 230に準拠して測定した値である。
【0098】
本実施形態の調理用シートは、パルプ繊維と微細繊維状セルロースの質量比(パルプ繊維の質量:微細繊維状セルロースの質量)が、固形分基準で好ましくは50:50~1:99、より好ましくは40:60~5:95、さらに好ましくは30:70~10:90である。パルプ繊維の質量に対する微細繊維状セルロースの質量が前記質量比の範囲より少ない、つまり、パルプ繊維が多すぎる場合は、調理用シートが緻密なものとなりにくいので、油分が透過し耐油性に乏しいものとなってしまうおそれがある。他方、パルプ繊維の質量に対して微細繊維状セルロースの質量が大き過ぎる場合は、微細繊維状セルロースに対してパルプ繊維が極端に少なく、耐水性に優れるものの、強度に乏しく、破れやすい調理用シートとなるおそれがある。
【0099】
(調理用シート)
本実施形態の調理用シートは、微細繊維状セルロースとパルプ繊維を有するものである。
【0100】
調理用シートを構成する微細繊維状セルロースとパルプ繊維は、調理用シートの用途によって、種々の機械パルプ、化学パルプを原料とすることができる。これらのパルプの中でも、化学パルプを微細繊維状セルロースとパルプ繊維双方の原料とすると、強度の高い調理用シートとなり好ましい。特に、パルプ繊維の原料及び微細繊維状セルロースの原料として、針葉樹晒クラフトパルプ又は広葉樹晒クラフトパルプを用いると、白色又は白色に近い調理用シートになる。
【0101】
本実施形態の調理用シートの物性を次に説明する。
調理用シートは、坪量が好ましくは30~150g/m2、より好ましくは35~120g/m2、さらに好ましくは40~100g/m2である。本実施形態の調理用シートは、パルプ繊維相互で形成される空隙に微細繊維状セルロースが入り込んでいるため、従来のパルプ繊維からなる調理用シートよりも強度が高い。当該坪量が150g/m2を超過すると、調理用シートが硬く、曲げに対する抵抗が強いので、折り曲げ等をして使用するのが困難となる。他方、当該坪量が30g/m2未満だと、シートの厚みに対してパルプ繊維が大きすぎるため、緻密な層が形成されず耐油性に乏しくなるおそれがある。
【0102】
調理用シートの坪量は、JIS P 8124:2011「紙及び板紙-坪量の測定方法」に準拠して測定した値である。
【0103】
調理用シートの厚みは、適宜調節することができるが、好ましくは25~200μm、より好ましくは30~180μm、さらに好ましくは35~150μmである。調理用シートの厚みが200μmを超過すると、熱が伝導しにくく、調理しづらいものとなるおそれがある。また、剛性が高いシートとなり、取り扱いにくいものとなる。他方、当該厚みが25μm未満だと、調理面に敷いたときに皺が寄る等して凹凸が生じやすくなり使いづらいものとなるおそれがある。
【0104】
調理用シートの厚みは、JIS P 8118:2014「紙及び板紙-厚さ,密度及び比容積の試験方法」に準拠して測定した値である。
【0105】
本実施形態の調理用シートに求められる、天然成分を主原料としつつ、耐油性を備え、水が付着しても破れにくいという効果を奏する限り、当該調理用シートの一方の面又は両面にコーティング層を設けてもよい。コーティング層は、例えば澱粉からなるコーティング剤を用いることができる。澱粉は特に限定されず、既知のものを使用することができ、例えばコーンスターチ(とうもろこし)、ばれいしょ澱粉(ジャガイモ)、かんしょ澱粉(サツマイモ)、タピオカ澱粉(キャッサバ)、サゴ澱粉(サゴ椰子)等を挙げることができる。
【0106】
また、本実施形態の調理用シートは、耐油性を備え、水が付着しても破れにくいものとなっているので、シートの一方の面又は両面に、シリコーン樹脂、フッ素樹脂及び金属箔のいずれか一つ以上が設けられていない形態であってもよい。ここで、金属箔とは、例えばアルミニウム箔を挙げることができる。
【0107】
本実施形態の調理用シートのはつ油度は、12以上であるのが好ましい。当該はつ油度が12未満だと、食品の油が浸透してしまい調理シートとして使用できない場合がある。調理用シートのはつ油度は微細繊維状セルロースやパルプ繊維の繊維径や配合量によって調節することができる。
【0108】
仮に、パルプ繊維のみからなるシート(紙)は繊維と繊維の間に相対的に大きな空隙を有し、毛細管現象により油も水も吸収するので、はつ油度が小さくなる傾向にある。他方、パルプ繊維と微細繊維状セルロースを有する調理用シートであれば、パルプ繊維とパルプ繊維の間の空隙を微細繊維状セルロースが埋めることで、シートが緻密化し、水や油は物理的に透過しにくくなる。
【0109】
調理用シートの引裂強さは、引裂強さ(縦)が50mN以上であればよく、好ましくは50~300mN、より好ましくは60~275mN、さらに好ましくは70~250mNである。また、引裂強さ(横)が50mN以上であればよく、好ましくは50~300mN、より好ましくは60~275mN、さらに好ましくは70~250mNである。当該引裂強さ(縦)が50mN未満だと調理をしている最中に破けるおそれがある。他方当引裂強さの上限は特に限定されないが、300mNであれば両手で破ろうと力を加えたときに容易に破れるので使い勝手が良い。
【0110】
引裂強さは、調理用シートにおけるパルプ繊維や樹脂繊維などの粗大繊維の配合率を変えたり、調理用シートの坪量を変えたり、パルプの解繊度合を変えたりすることによって調節することができる。
【0111】
本実施形態の調理用シートは、水が付着しても破けにくいものとなっている。微細繊維状セルロースを含まず、パルプ繊維を主原料とするシートは、水に付着すると、撚れたり破けやすくなったりするので、調理用シートとしての機能を持たせるために耐水性を有する樹脂を塗工する等していた。しかしながら、本実施形態の調理用シートは、そのような樹脂で加工しなくても、耐水性を有するものとなっている。このように、微細繊維状セルロースの含有によって調理用シートの耐水性に差が生じるのは、厳密にはわからないがおよそ次のとおりに説明することができる。
【0112】
パルプ繊維は微細繊維状セルロースと比較して水素結合点が少なく、繊維同士の結合も弱いため、水分子が、パルプ繊維同士の水素結合の間に容易に入り込むことで、強度の低下を発生させる。一方で、微細繊維状セルロースは水素結合点が比較的多く、乾燥した際に強固に結合するため、微細繊維状セルロースの繊維同士の水素結合の間に水分子が入りにくい、又は水素結合に入り込むのに相当程度の時間を要する。また、微細繊維状セルロースでは、繊維同士が一部不可逆的に結合(角質化)しているためと推測される。
【0113】
調理用シートの引裂強さは、JIS P8116:2000「紙-引裂強さ試験方法-エルメンドルフ形引裂試験機法」に準拠して測定した値である。
【0114】
調理用シートは、後述のとおり製造することができるが、製造された調理用シートに対してさらにカレンダー加工を施してもよい。調理する食材によっては、調理用シートの面のすべり性が良い方が好ましい場合がある。カレンダー加工を施せば、調理用シート面のすべり性を調節することができる。調理用シート面のすべり性の度合は、シートの表面粗さの指標であるベック平滑度で表すことができ、調理用シートのベック平滑度は、例えば、0.1~30秒、好ましくは0.3~250秒、より好ましくは0.5~20秒であると、幅広い食材に使用可能である。
【0115】
本実施形態においてベック平滑度は、JIS P8119:1998に準拠して測定した値である。
【0116】
調理用シートの引張強さ(縦)は、例えば、1.0~10.0kN/m、好ましくは1.2~9.0kN/m、より好ましくは1.5~8.0kN/mである。また、引張強さ(縦)を坪量で除して算出された、調理用シートの比引張強さ(縦)は、例えば、25~90N・m/g、好ましくは27~85N・m/g、より好ましくは30~80N・m/gである。本実施形態の調理用シートは、引張強さ(縦)、特に比引張強さ(縦)が前述の範囲であるので、破けにくいものとなっている。
【0117】
「引張強さ(縦)」とは、JIS P8113:「紙及び板紙-引張特性の試験方法」に準拠して測定した値をいう。
【0118】
調理用シートのコッブサイズ度(10秒)は、例えば、50g/m2以下、好ましくは5~48g/m2、より好ましくは10~46g/m2、好適には15~44g/m2である。同コッブサイズ度(10秒)が50g/m2を超過すると、調理用シートが吸水し易く、調理に使用している最中に水を吸って破けやすい。調理用シートのコッブサイズ度(10秒)は、調理用シートに占める微細繊維状セルロース(又は変性処理された微細繊維状セルロース)の割合を変えることで調節することができる。
【0119】
ただし、調理用シートに用いられる微細繊維状セルロースが、例えばセルロースのヒドロキシ基が亜リン酸エステルで置換され変性された微細繊維状セルロースである場合は、コッブサイズ度(10秒)が高い値を示す傾向にある。これは、当該変性微細繊維状セルロース自体が高アスペクト比を有し、セルロース繊維の表面に親水性の官能基が多くあり、水分子の吸着性が高いことによるものと考えられる。
【0120】
本実施形態のコッブサイズ度(10秒)は、JIS P8140:1998「紙及び板紙-吸水度試験方法-コッブ法」に準拠して測定した値である。
【0121】
調理用シートにおける、パルプ繊維の平均繊維径に対する微細繊維状セルロースの平均繊維径の割合((微細繊維状セルロースの平均繊維径)/(パルプ繊維の平均繊維径))は、好ましくは0.00003~0.025、より好ましくは0.0001~0.001、さらに好ましくは0.0003~0.008である。当該割合が0.00003未満であったり、又は0.025を超過したりすると、パルプ繊維が相互に分散して形成されたネットワーク構造の空隙に微細繊維状セルロースが入り込み緻密な層を形成しにくくなり、調理用シートが耐油性に乏しく、水の付着で破れ易いものとなるおそれがある。
【0122】
調理用シートは、後述する方法の他、以下の方法によっても製造することができる。
(1)混合スラリーの調製
パルプ繊維と微細繊維状セルロース(LBKP、水分率97質量%)を水に入れて混合し、スラリーを調製する。スラリー全体の質量に占める、パルプ繊維と微細繊維状セルロースの合計の質量百分率が固形分基準で2質量%となるように調製する。
(2)調理用シートの製造
上記、調製されたスラリーを抄紙機のワイヤーに敷き詰めて載せ、サクションを用いてスラリーを脱水処理し、湿潤シートを得る。得られた湿潤シートをワイヤーから取り外し、シート両面を不織布で挟みこみ、これをロールプレスで加圧して搾水処理をして搾水物を得る。当該搾水物を回転式乾燥機で加熱乾燥処理をして、その後不織布を取り除き調理用シートを得る。加熱乾燥処理は、100℃で4分間行うとよい。
【実施例0123】
次に本発明の実施例を説明する。後述の実施例及び比較例について、パルプ繊維の原料は、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)又は広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)であり、微細繊維状セルロースの原料は、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)である。表中、「未変性CNF」とは、広葉樹晒クラフトパルプを原料として製造した微細繊維状セルロース(平均繊維径80nm)であり、「変性CNF」とは、大王製紙株式会社の製品「エレックス(登録商標)-スター」であり、平均繊維径が3~4nmとなるものである。
【0124】
<実施例1~5、比較例1,2,5,7>
(1)混合スラリーの調製
パルプ繊維と微細繊維状セルロース(LBKP、水分率97質量%)が所定の配合比になるように水に入れて混合し、スラリーを調製した。スラリー全体の質量に占める、パルプ繊維と微細繊維状セルロースの合計の質量百分率が固形分基準で1~2質量%となるように調製した。
(2)調理用シートの製造
上記、調製されたスラリーを金網に敷き詰めて載せ、さらに上から金網をスラリーに被せて、スラリーを2枚の金網で挟み込んだ状態にして、これに対して上下から徐々に圧力を掛けて湿潤シートを得た。得られた湿潤シートを両金網で2MPaの圧力で挟んだ状態のまま、120℃、2分間加圧加熱して乾燥処理をした。両金網を取り除き、調理用シートの実施例1~5、比較例1,2,5,7を得た。
【0125】
<比較例3,4>
(1)混合スラリーの調製
パルプ繊維と微細繊維状セルロース(LBKP、水分率97質量%)が所定の配合比になるように水に入れて混合し、スラリーを調製した。スラリー全体の質量に占める、パルプ繊維と微細繊維状セルロースの合計の質量百分率が固形分基準で1~2質量%となるように調製した。
(2)調理用シートの製造
上記、調製されたスラリーを平面状に拡げた不織布上に、坪量が均一になるように載せ、120℃の乾燥機で4時間乾燥させた。その後、不織布を取り除き、調理用シートの比較例3,4を得た。なお、比較例3,4については、変性CNFの配合率が相対的に高くスラリーの流動性が高まるため、圧力を掛けてする脱水が困難であることから、この方法で製造した。
【0126】
<比較例6>
調理用シートの比較例6は、JIS P 8222:2015「パルプ-試験用手すき紙の調製方法」に準拠して、坪量を変更して製造した。
【0127】
<比較例8>
調理用シートの比較例7は、旭化成ホームプロダクツ株式会社の製品(品名:クッキングシート、材質:シリコーン加工耐油紙)を用いた。
【0128】
上記、実施例及び比較例について、坪量、厚み、密度、はつ油度、耐水性試験、引裂強さ、ベック平滑度、引張強さ、比引張強さ、コッブサイズ度(10秒)を測定した。
【0129】
(耐水性試験)
水が付着した場合における調理用シートの破れやすさを判定する耐水性試験を行った。手順は次のとおりである。上記のとおり製造した調理用シートを15mm×100mmに切り出した試験片シートを水中に3分間含浸させた。その後、水から取り出した試験片の一方の短辺を固定して垂らし、他方の短辺に重りを10秒間ぶら下げた。重りは重量の異なるものをいくつか用意した。判定の基準は次のとおりである。
○:30gの重りで試験片シートが破れなかった。
△:1~20gの重りで試験片シートが破れた。
×:重りを垂らさなくても試験片シートが自重で破れた。
【0130】
はつ油度の測定は、JAPAN TAPPI No.41に規定されるはつ油度(キット法)で行い、測定概要としては、表面張力を調整した試験液をシートに滴下して浸透の程度を測定する。試験液はNo.1~12まであり、試験液No.12が浸透しないシートを、はつ油度(キット値)12級と評価する。この方法では、12級と評価されたシートが最も高いはつ油度を有するといえる。実施例及び比較例のはつ油度の測定は、試験液No.12を用いて行った。
【0131】