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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128403
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】二次電池セルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20240913BHJP
   H01M 50/186 20210101ALI20240913BHJP
   H01M 50/193 20210101ALI20240913BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240913BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALI20240913BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01M50/186
H01M50/193
H01M10/052
H01M10/0585
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037361
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】519100310
【氏名又は名称】APB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003236
【氏名又は名称】弁理士法人杉浦特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100123973
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 拓真
(74)【代理人】
【識別番号】100082762
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 正知
(74)【代理人】
【識別番号】100160440
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】堀江 英明
【テーマコード(参考)】
5H011
5H028
5H029
【Fターム(参考)】
5H011AA09
5H011FF00
5H011GG01
5H011GG04
5H011HH02
5H011JJ00
5H011JJ12
5H011JJ25
5H028AA07
5H028BB01
5H028CC01
5H028EE06
5H028EE10
5H029AJ14
5H029AK03
5H029AL08
5H029BJ04
5H029BJ12
5H029CJ00
5H029CJ02
5H029CJ28
5H029DJ03
5H029EJ12
5H029HJ12
(57)【要約】
【課題】枠体を無くしたことで、生産性の向上や製造の効率化を図ることができる二次電池セルの製造方法を提供する。
【解決手段】正極集電体と、正極組成物層と、セパレータと、負極組成物層と、負極集電体とが順に積層されている積層体を備える二次電池セルの製造方法であって、前記積層体を形成する形成工程と、前記積層体の積層方向に交差する方向における前記積層体の端部に封止材料を付着する付着工程と、前記積層体の積層方向に交差する方向における前記積層体の端部に付着した前記封止材料を硬化する硬化工程と、を備える二次電池セルの製造方法。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極集電体と、正極組成物層と、セパレータと、負極組成物層と、負極集電体とが順に積層されている積層体を備える二次電池セルの製造方法であって、
前記積層体を形成する形成工程と、
前記積層体の積層方向に交差する方向における前記積層体の端部に封止材料を付着する付着工程と、
前記積層体の積層方向に交差する方向における前記積層体の端部に付着した前記封止材料を硬化する硬化工程と、
を備える二次電池セルの製造方法。
【請求項2】
前記封止材料は、樹脂を含み、
前記樹脂は、化学反応型接着剤を含む、
請求項1に記載の二次電池セルの製造方法。
【請求項3】
前記封止材料は、樹脂を含み、
前記樹脂は、熱溶融型接着剤を含む、
請求項1に記載の二次電池セルの製造方法。
【請求項4】
前記硬化は、前記封止材料を、水分を含んだ空気に当てることにより行われる、
請求項2又は3に記載の二次電池セルの製造方法。
【請求項5】
前記化学反応型接着剤は、紫外線硬化型接着剤を含み、
前記硬化は、前記封止材料に、紫外線を照射することにより行われる、
請求項2に記載の二次電池セルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池セルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォン、パーソナルコンピューター、電気自動車、ハイブリッド自動車、載置用蓄電用途など様々な技術分野で、繰り返し充放電可能なリチウムイオン二次電池などの二次電池が多用されている。例えば、リチウムイオン二次電池は、正極と、負極とがセパレータを介して対向するように積層された電池セルを有する。
【0003】
係る二次電池用電極の製造方法において、電極活物質などの電極組成物を供給する際に使用される枠体を電極集電体上に載置すること又は形成することが知られている。例えば、連続的に搬送される電極集電体上に、予め用意した枠体を供給(設置)する枠体供給装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。また、基台の上に枠体を形成し、その枠体の内側に電極活物質層を配置するリチウムイオン電池の製造方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された枠体は、電極集電体の大きさや電極組成物層の大きさや厚みに適したものとなるよう予め用意されている必要があった。また、特許文献2に開示された枠体を形成する際には、位置決めや厚み、形成位置を高精度に管理する必要があり、製造時間に大きく関係していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-089019号公報
【特許文献2】特開2019-207750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上のような従来技術の課題を解決する為になされたものである。すなわち本発明の目的は、枠体を無くしたことで、生産性の向上や製造の効率化を図ることができる二次電池セルの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、正極集電体と、正極組成物層と、セパレータと、負極組成物層と、負極集電体とが順に積層されている積層体を備える二次電池セルの製造方法であって、前記積層体を形成する形成工程と、前記積層体の積層方向に交差する方向における前記積層体の端部に封止材料を付着する付着工程と、前記積層体の積層方向に交差する方向における前記積層体の端部に付着した前記封止材料を硬化する硬化工程と、を備える二次電池セルの製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、枠体を無くしたことで、生産性の向上や製造の効率化を図ることができる二次電池セルの製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態である二次電池セルを模式的に示した断面図である。
図2】本発明の実施形態の一例に係る二次電池セルの製造装置を模式的に示した断面図である。
図3】本発明の実施形態の一例に係るセパレータ載置装置及び積層装置を模式的に示した俯瞰図である。
図4】本発明の実施形態の一例に係る封止装置を模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態(本実施形態)を説明する。なお、図中、同様の部材には同一の符号を用いる。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張される場合があり、実際の比率とは異なる場合がある。また、以下、平面視とは、二次電池セルの積層方向から対象物が見られることを表す。
【0011】
<二次電池>
本実施形態の二次電池セルの製造方法によって得られる二次電池について説明する。二次電池は、二次電池セル(以下、単に電池セルとも呼ぶ)を複数個組み合わせてモジュール化した組電池の形態などで使用される。二次電池は、例えば、リチウムイオン二次電池である。以下、本実施形態にかかる二次電池は、リチウムイオン二次電池として構成する例を説明する。
【0012】
<電池セル>
電池セルについて説明する。図1は、電池セル1を模式的に示した断面図である。図1に示すように、電池セル1は、全体として直方体形状であり、積層体2と、封止部40とを備える。積層体2は、正極5と、負極6と、セパレータ30とを備える。正極5は、平板状の正極集電体10と、正極集電体10の図中下面(表面)に配置された平板状の正極組成物層20とを備える。負極6は、平板状の負極集電体11と、負極集電体11の図中上面(表面)に配置された平板状の負極組成物層21とを備える。積層体2は、正極組成物層20と負極組成物層21とがセパレータ30を介して対向するように配置される。
【0013】
正極集電体10は、平面視で長方形状であり、樹脂製の集電体(樹脂集電体)である。正極集電体10は、樹脂と導電性フィラーを含み、さらに樹脂集電体用分散剤を含む場合がある。なお、正極集電体10の表面が金属メッキされる場合もある。樹脂の材料としては、ポリプロピレン(PP)などが挙げられる。正極集電体10の周縁は、平面視で正極組成物層20の周縁に対して突出している。正極集電体10は、正極組成物層20側となる第1面と、それとは反対側となる第2面とを有する。
【0014】
負極集電体11は、平面視で長方形状であり、樹脂製の集電体(樹脂集電体)である。負極集電体11は、樹脂と導電性フィラーを含み、さらに樹脂集電体用分散剤を含む場合がある。なお、負極集電体11の表面が金属メッキされる場合もある。樹脂の材料としては、ポリプロピレン(PP)などが挙げられる。負極集電体11の周縁は、平面視で負極組成物層21の周縁に対して突出している。負極集電体11は、負極組成物層21側となる第1面と、それとは反対側となる第2面とを有する。なお、以下、正極集電体10及び負極集電体11は、単に集電体とも称する。
【0015】
正極組成物層20は、平面視で長方形状であり、正極活物質を含む。正極活物質としては、例えば、リチウムと遷移金属との複合酸化物などが挙げられる。正極組成物層20は、正極活物質以外に、被覆用樹脂、金属やカーボンなどの導電助剤、電解質塩を含有する電解液などを含むことができる。正極活物質は、被覆用樹脂及び導電助剤を含む被覆材で被覆されていても良い。また、正極組成物層20は、炭素繊維などの導電性繊維を含んでいても良く、含んでいなくても良い。
【0016】
負極組成物層21は、平面視で長方形状であり、負極活物質を含む。負極活物質としては、例えば、ハードカーボンなどが挙げられる。負極組成物層21は、負極活物質以外に、被覆用樹脂、金属やカーボンなどの導電助剤、電解質塩を含有する電解液などを含むことができる。負極活物質は、被覆用樹脂及び導電助剤を含む被覆材で被覆されていても良い。また、負極組成物層21は、炭素繊維などの導電性繊維を含んでいても良く、含んでいなくても良い。
【0017】
セパレータ30は、平面視で長方形状であり、例えば、電解液又はゲルポリマー電解質などを吸収保持するポリマーや繊維からなる多孔性シートが挙げられる。不織布セパレータなどであっても良い。セパレータ30のサイズは、平面視で正極組成物層20のサイズよりも大きい。セパレータ30の周縁は、平面視で正極組成物層20の周縁に対して突出している。セパレータ30は、正極組成物層20側となる第1面と、負極組成物層21側となる第2面とを有する。
【0018】
電池セル1は、積層体2の積層方向に交差する方向における積層体2の端部(周縁)に、封止部40を備える。封止部40は、封止部40Aと、封止部40Bとを備える。なお、封止部40は、図1の紙面に向かって前後方向にもあるが、図示を省略する。
【0019】
封止部40Aは、正極組成物層20の厚さ方向に交差する方向における正極組成物層20の端部に設けられている。本実施形態において、正極組成物層20の端部とは、正極組成物層20の端面(側面)を表す。封止部40Aは、正極組成物層20から外部への漏液を抑制可能に構成されている。封止部40Aの内周面は、正極組成物層20の端部に接着されていても良い。封止部40Aの高さ方向の両端部は、セパレータ30の第1面と正極集電体10の第1面に接着されていても良い。
【0020】
封止部40Bは、負極組成物層21の厚さ方向に交差する方向における負極組成物層21の端部に設けられている。本実施形態において、負極組成物層21の端部とは、正極組成物層20の端面(側面)を表す。封止部40Bは、負極組成物層20からの外部への漏液を抑制可能に構成されている。封止部40Bの内周面は、負極組成物層21の端部に接着されていても良い。封止部40Bの高さ方向の両端部は、セパレータ30の第2面と負極集電体11の第1面に接着されていても良い。なお、封止部40A、40Bは、平面視で閉ループ状を有していることが好ましい。
【0021】
封止部40は、硬化された封止材料により形成されている。封止材料は、例えば、樹脂を含む。封止材料は、公知の添加剤をさらに含んでも良い。上記樹脂は、例えば、接着剤を含む。上記接着剤としては、例えば、化学反応型接着剤及び熱溶融型接着剤の少なくとも1種が挙げられる。化学反応型接着剤としては、例えば、湿気硬化型接着剤及び紫外線硬化型接着剤の少なくとも1種が挙げられる。熱溶融型接着剤としては、例えば、ホットメルト接着剤が挙げられる。ホットメルト接着剤は、湿気硬化型ホットメルト接着剤であってもよい。湿気硬化型接着剤として、例えば、シアノアクリレート系接着剤が挙げられる。シアノアクリレート系接着剤は、いわゆる瞬間接着剤であっても良い。
【0022】
しかしながら、電池セル1の各部材の材料は、上記材料に限定されるものではなく、種々の材料が用いられる。
【0023】
<二次電池セルの製造方法及び製造装置>
本実施形態の二次電池セルの製造装置の一例について、図2乃至図4を参照しながら、説明する。
【0024】
<製造装置>
図2は、二次電池セルの製造装置を模式的に示した断面図である。図2に示すように、例えば、二次電池セルの製造装置1000は、正極製造装置100と、負極製造装置200と、セパレータ載置装置300と、積層装置400と、封止装置500とを備える。
【0025】
正極製造装置100は、正極組成物120供給用のホッパー110と、調整用のスキージ130と、除去用のマスク層140とを備える。また、正極製造装置100は、マスク層140載置用のローラ170と、マスク層140剥離用のローラ180と、加圧用のロールプレス160a及び160bと、複数の正極集電体移動用のローラ190とを備える。また、負極製造装置200は、負極組成物220供給用のホッパー210と、調整用のスキージ230と、除去用のマスク層240とを備える。また、負極製造装置200は、マスク層140載置用のローラ270と、マスク層140剥離用のローラ280と、加圧用のロールプレス260a及び260bと、複数の負極集電体移動用のローラ290とを備える。
【0026】
図3は、セパレータ載置装置300及び積層装置400を模式的に示した俯瞰図である。セパレータ載置装置300は、セパレータ30を載置する機能を備える。また、積層装置400は、正極5と負極6とを互いに向かい合わせに貼合する機能を備える。
【0027】
図4は、封止装置500を模式的に示した断面図である。封止装置500は、封止材料を付着させる付着装置510及び511と、付着した封止材料を硬化させる硬化装置520及び521とを備える。
【0028】
付着装置510及び511は、接着剤が充填された容器(不図示)と、容器からノズルまでの流路(不図示)と、付着装置510及び511の先端部分としてのノズルとを備える。また、付着装置510及び511は、容器から接着剤を押し出すための押出機構、流路を開閉するためのレバーやエアシリンダーなどを備えても良い。また、付着装置510及び511は、シーリング(コーキング)ガンなどを備えたものであっても良い。
【0029】
硬化装置520及び521は、風を送り出す送風機構(不図示)と、その先端部分としてノズルとを備える。
【0030】
<製造方法>
本実施形態の二次電池セルの製造方法の一例について、図2乃至図4を参照しながら、説明する。
【0031】
本実施形態は、正極集電体と、正極組成物層と、セパレータと、負極組成物層と、負極集電体とが順に積層されている積層体を備える二次電池セルの製造方法であって、前記積層体を形成する形成工程と、前記積層体の積層方向に交差する方向における前記積層体の端部に封止材料を付着する付着工程と、前記積層体の積層方向に交差する方向における前記積層体の端部に付着した前記封止材料を硬化する硬化工程と、を備えることを特徴とする。付着工程及び硬化工程は、封止工程に備えられる。以下では、形成工程、封止工程における付着工程、封止工程における硬化工程の順に説明する。
【0032】
<形成工程>
形成工程は、正極を製造する正極製造工程と、負極を製造する負極製造工程と、セパレータを載置するセパレータ載置工程と、正極と負極とを互いに向かい合わせに貼合して積層体とする積層工程とを備える。
【0033】
正極製造工程では、正極活物質と電解液を含む湿潤粉体からなる正極組成物が正極集電体10上に供給され、供給された正極組成物が加圧されて正極組成物層20を得ることで、正極5を製造する。
【0034】
正極製造工程の一例について、図2を参照しながら説明する。図2は、正極製造装置100による正極製造工程及び負極製造装置200による負極製造工程の一例を模式的に示す断面図でもある。
【0035】
正極製造工程において、まず正極集電体10がローラ190によって一方向(矢印方向)に移動される。開口部Aを有するマスク層140がローラ170によって正極集電体10上に載置される。その後、正極組成物120がホッパー110から正極集電体10上及びマスク層140の開口部Aに供給される。供給された正極組成物120の厚さがスキージ130によって調整される。その後、マスク層140がローラ180によって正極集電体10上から剥離される。そして、正極集電体10上に残存する正極組成物120をロールプレス160a及び160bによって加圧し、正極集電体10上に正極組成物層20を得ることで、正極5が製造される。
【0036】
しかしながら、正極5の製造方法は、この方法に限定されるものではなく、種々の方法が用いられる。正極集電体10上に正極組成物120が供給されるとは、正極集電体10の表面に直接供給されるだけでなく、正極集電体10上に配置された別の部材上に供給される場合を含む。また、電解液を含まない正極活物質の乾燥粉体からなる正極組成物120が供給される場合は、正極組成物層20を得た後に、適切な量の電解液を含侵させても良い。
【0037】
負極製造工程では、負極活物質と電解液を含む湿潤粉体からなる負極組成物が負極集電体11上に供給され、供給された負極組成物が加圧されて負極組成物層21を得ることで、負極6を製造する。
【0038】
負極製造工程の一例について、図2を参照しながら説明する。
負極製造工程において、まず負極集電体11がローラ290によって一方向(矢印方向)に移動される。開口部Aを有するマスク層240がローラ270によって負極集電体11上に載置される。その後、負極組成物220がホッパー210から負極集電体11上及びマスク層240の開口部Aに供給される。その後、供給された負極組成物220の厚さがスキージ230によって調整される。その後、マスク層240がローラ280によって負極集電体11上から剥離される。そして、負極集電体11上に残存する負極組成物220をロールプレス260a及び260bによって加圧し、負極集電体11上に負極組成物層21を得ることで、負極6が製造される。
【0039】
しかしながら、負極6の製造方法は、この方法に限定されるものではなく、種々の方法が用いられる。負極集電体11上に負極組成物220が供給されるとは、負極集電体11の表面に直接供給されるだけでなく、負極集電体11上に配置された別の部材上に供給される場合を含む。また、電解液を含まない負極活物質の乾燥粉体からなる正極組成物120が供給される場合は、負極組成物層21を得た後に、適切な量の電解液を含侵させても良い。
【0040】
セパレータ載置工程の一例について、図3を参照しながら説明する。図3は、セパレータ載置装置300によるセパレータ載置工程及び積層装置400による積層工程の一例を模式的に示す俯瞰図でもある。図3には、正極製造工程によって得られた正極5が正極製造装置100から連続的に出力され、正極組成物層20側が見えている様子が表されている。また、図3には、負極製造工程によって得られた負極6が負極製造装置200から連続的に出力され、負極組成物層21側が見えている様子も表されている。セパレータ載置工程において、セパレータ30がセパレータ載置装置300によって負極6の負極組成物層21上に載置される。そのため、図3には、負極組成物層21上にセパレータ30が載置された後は、セパレータ30が見えている様子が表されている。ここで、セパレータ30が負極6上に載置される例を説明したが、セパレータ30が正極5上に載置されても良い。
【0041】
積層工程の一例について、図3を参照しながら説明する。積層工程において、上記の正極5と、セパレータ載置工程によってセパレータ30が載置された負極6とを積層装置400によって互いに向かい合わせになるよう貼合し、積層体2を形成する。本実施形態では、セパレータ30が載置された負極6に対して正極5を天地反転するように180度回転させて貼合するものとする。また、正極5に対してセパレータ30が載置された負極6を天地反転するように180度回転させて貼合しても良い。また、前工程であるセパレータ載置工程でセパレータ30を載置する例について説明したが、セパレータ載置工程がない場合、この積層工程で、正極5と負極6とを貼合する際にセパレータ30を載置しても良い。
【0042】
<封止工程>
封止工程の一例について、図4(S4a~S4c)を参照しながら説明する。
【0043】
封止工程は、積層体2の積層方向に交差する方向における積層体2の端部を、封止材料で封止して封止部40を形成する。より具体的には、封止工程は、積層体2の積層方向に交差する方向における積層体2の端部に封止材料を付着させる付着工程と、その付着させた封止材料を硬化させる硬化工程とを備える。付着させる封止材料に応じて、封止工程及び封止装置の実施形態が異なるため、封止材料として、まず接着剤(例えば、湿気硬化型接着剤)を採用した場合を述べる。
【0044】
<付着工程>
S4aは、付着工程を示す。付着工程は、積層体2の積層方向に交差する方向における積層体2の端部にノズルを接近させ、その端部にノズルから接着剤を吐出し、所定量の接着剤を付着させる。より具体的には、正極組成物層20の厚さ方向に交差する方向における正極組成物層20の端部に、付着装置510のノズルを接近させる。そして、正極組成物層20の端部にノズルから接着剤を吐出し、正極組成物層20の端部に所定量の接着剤を付着させる。同様に、負極組成物層21の厚さ方向に交差する方向における負極組成物層21の端部に、付着装置511のノズルを接近させ。そして、負極組成物層21の端部にノズルから接着剤を吐出し、負極組成物層21の端部に所定量の接着剤を付着させる。接着剤にシアノアクリレート系接着剤などの湿気硬化型接着剤を採用した場合、付着工程は、ドライエアの雰囲気中で行われても良い。ドライエアの雰囲気中で行われるようにすることで、湿気硬化型接着剤の意図しない硬化を抑制する。
【0045】
<硬化工程>
S4bは、硬化工程を示す。硬化工程は、積層体2の積層方向に交差する方向における積層体2の端部にノズルを接近させ、その端部にノズルから所定流量のエアを吹き出す。より具体的には、正極組成物層20の厚さ方向に交差する方向における正極組成物層20の端部に、硬化装置520のノズルを接近させる。そして、正極組成物層20の端部にノズルから所定流量のエアを吹き出す。同様に、負極組成物層21の厚さ方向に交差する方向における負極組成物層21の端部に硬化装置521のノズルを接近させる。そして、負極組成物層21の端部に向けて、ノズルから所定流量のエアを吹き出す。接着剤にシアノアクリレート系接着剤などの湿気硬化型接着剤を採用した場合、エアとして水分を含むエア(ウエットエア)を用いることが好ましい。ウエットエアを用いることで、湿気硬化型接着剤の反応を促進し、接着剤の硬化時間を短縮することができる。
【0046】
S4cは、硬化工程後の状態を示す。積層体2の積層方向に交差する方向における積層体2の端部に付着させた接着剤が硬化した状態を示している。
【0047】
なお、S4aやS4bでは、積層体2の積層方向に交差する方向における積層体2の端部(右側)の様子を図示したが、その端部の全周(全辺)に亘って付着工程及び硬化工程を行っている。そのため、付着工程及び硬化工程は、積層体2の積層方向に交差する方向における積層体2の端部の1辺に対して行ってから、次の1辺を行うように順次遷移しても良い。また、積層体2の積層方向に交差する方向における積層体2の端部の全周(全辺)に対して同時に行っても良い。
【0048】
また、硬化工程では、送風装置によって風を送り出していたが、例えば、水分を含んだ空気中にそのまま曝しておくこととしても良い。空気中にそのまま曝しておくだけでも、結果的に硬化させる効果は得られるため、そのようにしても良い。したがって、空気中にそのまま曝しておくことは、硬化工程の一つの実施例と言える。一方で、風を送り出したほうが硬化する速度が増すため、より効果的とも言え、生産性や生産効率の向上が見込める。
【0049】
次に封止材料として、熱溶融型接着剤(例えば、ホットメルト接着剤)を採用した場合を述べる。上記接着剤を採用した場合との差分のみを述べる。ホットメルト接着剤(ホットボンド)は、常温では固体となるため、熱をかけて融かすことで接着可能になり、冷やすことで硬化可能になる接着剤である。そのため、付着装置510及び511は、ホットメルト接着剤を熱により融かす加熱装置(不図示)を備える。また、硬化装置520及び521は、ホットメルト接着剤を冷やすための冷風を送り出す送冷風機構などの冷却装置(不図示)を備える。
【0050】
付着工程では、加熱装置によってホットメルト接着剤を融かし、付着可能な状態(液体状乃至半固体状)にする。その場合に、積層体2の積層方向に交差する方向における積層体2の端部にノズルを接近させ、その端部に向けて、ノズルからホットメルト接着剤を所定量付着させる。硬化工程では、積層体2の積層方向に交差する方向における積層体2の端部にノズルを接近させ、その端部に付着させた接着剤に向けて、冷却装置で生成された冷たいエアをノズルから所定の流速で吹き出す。吹き出すエアはホットメルト接着剤を硬化できる程度に冷たいエアである。
【0051】
また、硬化工程では、冷却装置によって冷風を送り出していたが、例えば、水分を含んだ空気中にそのまま曝しておくこととしても良い。この場合、熱溶融型接着剤としては、湿気硬化型ホットメルト接着剤を用いることが好ましい。また、セパレータ30を構成する材料がポリプロピレン(略称PP)である場合に、ホットメルト接着剤を用いるとセパレータ30を融かしてしまう可能性がある。例えば、ポリプロピレンの融点は160℃であり、ホットメルト接着剤のR&B軟化点は200℃の場合などである。そのため、ホットメルト接着剤を用いる場合、セパレータ30を構成する材料はポリイミド(略称PI)であることが好ましい。
【0052】
次に封止材料として、紫外線硬化型接着剤(例えば、紫外線硬化樹脂)を採用した場合を述べる。同様に、上記接着剤を採用した場合との差分のみを述べる。紫外線硬化樹脂(UV樹脂やUVレジン)は、紫外線を照射する前は液体だが、紫外線を照射した後は、紫外線の光エネルギーに反応して液体から固体に化学的に変化する合成樹脂である。そのため、付着装置510及び511は、紫外線硬化樹脂を付着させるUV付着装置(不図示)を備え、硬化装置520及び521は、紫外線を照射するUV照射装置(不図示)を備える。UV照射装置は、例えば、UVライト(紫外線ランプや紫外線LEDなど)を備える。
【0053】
付着工程では、積層体2の積層方向に交差する方向における積層体2の端部にノズルを接近させ、その端部に向けて、ノズルから紫外線硬化樹脂を所定量付着させる。硬化工程では、積層体2の積層方向に交差する方向における積層体2の端部に向けて、UVライトを用いて紫外線を所定時間照射する。
【0054】
UVライトは、紫外線硬化樹脂が硬化する条件を満たす紫外線照度と照射時間が得られるものであれば良く、その個数や位置は問わない。UVライトの照射方向(照射角度)は、セパレータ30の位置を基準として、セパレータ30に対して平行(0度)乃至交差(90度)の範囲内であれば良い。
【0055】
したがって、このような封止工程を行い、封止部40を形成することによって、従来の枠体を無くせるため、生産性の向上や製造の効率化を図ることができる。
【0056】
<変形例>
また、上記の通り、付着装置510及び511は、それぞれに先端部分として1つのノズルを備えているように説明した。しかしながら、付着装置510と511のいずれか一方のみを備え、1つの付着装置のノズルの先端が二股に分かれた二股形状のノズルのような構造であっても良い。
【0057】
また、上記の通り、硬化装置520及び521は、それぞれに先端部分として1つのノズルを備えているように説明した。しかしながら、硬化装置520と521のいずれか一方のみを備え、1つの硬化装置のノズルの先端が二股に分かれた二股形状のノズルのような構造であっても良い。また、硬化装置520と521のいずれか一方のみを備え、1つの硬化装置のノズルから端部に付着させた接着剤に向けて風を送り出すようにしても良い。
【0058】
また、正極組成物層20の厚さ方向に交差する方向における正極組成物層20の端部と、負極組成物層21の厚さ方向に交差する方向における負極組成物層21の端部とを言わば同時に封止しているが、それぞれを順次封止するようにしても良い。例えば、正極組成物層20の厚さ方向に交差する方向における正極組成物層20の端部に封止材料を付着させた後、負極組成物層21の厚さ方向に交差する方向における負極組成物層21の端部に封止材料を付着させても良い。順番は特に問わない。
【0059】
また、付着工程において正極組成物層20の厚さ方向に交差する方向における正極組成物層20の端部に封止材料を付着させ、硬化工程においてその端部に付着した封止材料を硬化させ、封止部40Aを形成しても良い。その後、付着工程において負極組成物層21の厚さ方向に交差する方向における負極組成物層21の端部に封止材料を付着させ、硬化工程においてその端部に付着した封止材料を硬化させ、封止部40Bを形成しても良い。順番は特に問わない。
【0060】
また、正極集電体10の第1面とは反対側となる第2面は、封止部40を形成しないことが好ましい。正極集電体10の第1面とは反対側となる第2面に封止部40を形成してしまうと、正極集電体10の中央部と端部とで厚みの差が出来てしまう可能性がある。それにより、電池セル1を複数積層したときに正しい位置に積層されず、位置ずれなどの問題が生じるためである。また、負極集電体11の第1面とは反対側となる第2面は、封止部40を形成しないことが好ましい。同様の理由であるため、記載は省略する。
【0061】
また、上記の通り、正極集電体10上に供給された正極組成物を加圧して正極組成物層20を得ることで正極5を製造するように説明した。しかしながら、正極集電体10とは異なる別の部材上に供給された正極組成物を加圧して正極組成物層20を得ても良い。得られた正極組成物層20が正極集電体10上に移載されることで正極5が製造されても良い。また、上記の通り、負極集電体11上に供給された負極組成物を加圧して負極組成物層21を得ることで負極6を製造するように説明した。しかしながら、負極集電体11とは異なる別の部材上に供給された負極組成物を加圧して負極組成物層21を得ても良い。得られた負極組成物層21が負極集電体11上に移載されることで負極6が製造されても良い。
【0062】
また、正極製造工程における正極集電体10が連続する帯状のシートである場合は、必要に応じて所定の大きさや長さとなるように切断する必要がある。切断するタイミングは特に問わないが、本実施形態では、正極5が製造された後(不図示)とする。また、負極製造工程における負極集電体11が連続する帯状のシートである場合は、必要に応じて所定の大きさや長さとなるように切断する必要がある。切断するタイミングは特に問わないが、本実施形態では、負極6が製造された後(不図示)とする。必要に応じて所定の大きさや長さとなるように切断すれば良いが、平面視で集電体が組成物層の周縁に対して突出するように(組成物層に比べて大きくなるように)切断することが好ましい。
【0063】
また、封止材料と、正極集電体10、正極組成物層20、セパレータ30、負極組成物層21、負極集電体11の各部材との接着性が低い場合(接着度合が弱い場合)が想定される。その場合、接着剤と互換性のあるプライマーを適宜選択した上で、封止材料と各部材との接着を促進するためのプライマー層を形成するようにしても良い。プライマー層を形成する工程は、上記付着工程を行う前の工程である。例えば、積層体2の積層方向に交差する方向における積層体2の端部に、刷毛などの塗布手段を接近させ、その端部に向けてプライマーを塗布する。塗布したプライマーによりプライマー層が形成された後、その形成された箇所に対して封止材料を付着させるようにすれば良い。このようにプライマー層を形成した場合は、プライマー層の表面上に封止部40が存在するため、言わば2層構造となる。また、このプライマー層が封止部40に含まれるものであっても良い。
【0064】
また、封止部40を形成したその封止材料によっては、電池セル1の積層方向や積層方向に交差する方向における強度が不足する可能性がある。その場合、封止部40の外縁に補強部材を取り付けるようにしても良い。補強部材は、例えば、プラスチック樹脂製の平面視で長方形状の部材などが挙げられる。上記硬化工程のうち、例えば、封止材料の硬化が完了する前に、その封止材料に補強部材を挿入して取り付ける。そして、積層方向の上下からプレスすることで圧着した後、硬化が完了するようにすれば良い。補強部材を取り付けたことにより、電池セル1の積層方向や積層方向に交差する方向における強度を上げることが可能である。
【0065】
また、上記の通り、セパレータ30の材料を幾つか述べた。例えば、柔軟性の高いセパレータ30などでは、セパレータ30が封止工程中のノズルやノズルから供給されるものを遮ってしまう可能性がある。その場合、例えば、上記付着装置や上記硬化装置などがアームを備え、そのアームでセパレータ30の周縁部を把持し、セパレータ30を平面状に保つようにすれば良い。
【0066】
以上のとおり、説明した実施形態において、本実施形態に係る二次電池を説明した。しかしながら、本実施形態は、その技術思想の範囲内において当業者が適宜に追加、変形、及び省略することができることはいうまでもない。
【0067】
二次電池セルはリチウムイオン電池セルとして説明した。しかしながら、鉛蓄電池セル、ニッケル・水素蓄電池セル、など、他の二次電池セルであっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本実施形態に係る二次電池を、例えば、スマートフォン、タブレット端末、パーソナルコンピューター、ウエアラブルデバイス、カメラ、携帯ゲーム機等の電子機器に用いることにより、軽量化を実現可能にする。
【符号の説明】
【0069】
1 電池セル
2 積層体
5 正極
6 負極
10 正極集電体
11 負極集電体
20 正極組成物層
21 負極組成物層
30 セパレータ
40 封止部
100 正極製造装置
200 負極製造装置
300 セパレータ載置装置
400 積層装置
500 封止装置
510,511 付着装置
520,521 硬化装置
1000 二次電池セルの製造装置
図1
図2
図3
図4