(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128409
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】酵素処理ステビアならびにその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 27/30 20160101AFI20240913BHJP
A23L 27/00 20160101ALI20240913BHJP
【FI】
A23L27/30 Z
A23L27/00 101A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037371
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130812
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100164161
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 彩
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 拓真
(72)【発明者】
【氏名】三原 優子
(72)【発明者】
【氏名】橋本 唯史
(72)【発明者】
【氏名】貞弘 真歩
【テーマコード(参考)】
4B047
【Fターム(参考)】
4B047LB03
4B047LB06
4B047LB08
4B047LB09
4B047LE06
4B047LF02
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4B047LP01
4B047LP07
4B047LP18
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明は、α-グリルコシル化ステビア抽出物からなる高甘味度甘味料とその効率的な製造方法を提供する。
【解決手段】ステビア抽出物とシクロデキストリンにシクロデキストリングルカノトランスフェラーゼを作用させて、吸着樹脂や有機溶媒による精製過程を経ることなしにα-グリルコシル化ステビア抽出物からなる高甘味度甘味料を製造する。菓子、飲料(アルコール飲料を含む)、食品、製品などの甘味剤、風味強化剤及び風味変更剤の成分及び試薬として使用可能な酵素処理ステビア甘味料の提供を目的とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステビア抽出物とシクロデキストリンにシクロデキストリングルカノトランスフェラーゼを作用させて生成する、酵素処理ステビアを含む高甘味度甘味料の製造方法。
【請求項2】
ステビア抽出物とβ-シクロデキストリンにシクロデキストリングルカノトランスフェラーゼを作用させて生成する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
ステビア抽出物とβ-シクロデキストリンとを含む溶液に、シクロデキストリングルカノトランスフェラーゼ作用させてα-グルコシル化ステビア抽出物含有溶液を得る工程において、ステビア抽出物とβ-シクロデキストリンの比率が1:1~10:1である請求項1に記載の高甘味度甘味料の製造方法。
【請求項4】
ステビア抽出物とβ-シクロデキストリンにシクロデキストリングルカノトランスフェラーゼを作用させた生成物を、分離・精製工程を経ずに乾燥工程に供す請求項1または請求項2に記載の高甘味度甘味料製造方法。
【請求項5】
α-グルコシル化ステビオール配糖体を主成分とし、下記(a)、(b)のいずれをも満足する高甘味度甘味料。
(a)α-グルコシル化ステビオール配糖体4種(ステビオサイド、レバウディオサイドA、レバウディオサイドC及びズルコサイドA各々のα-グルコシル化物)及びそれらの未反応のステビオール配糖体4種の合計量として80.0%以上を含む。
(b)α-グルコシル化ステビオール配糖体4種の合計量として65.0%以上を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は酵素処理ステビアの製造方法に関するものであり、デキストリンの代わりにシクロデキストリンを用いた酵素反応により吸着樹脂や有機溶媒による精製過程のない生産性を向上させた製造方法とその製造方法によって生産される酵素処理ステビアに関する。
【背景技術】
【0002】
砂糖は従来から食品の甘味料として広く利用されている。特に炭酸飲料などの清涼飲料水には多量の砂糖が使用されている。しかし、最近の健康志向や低カロリー志向に影響を受けて肥満、糖尿病、虫歯の原因となる砂糖の減量による対応、砂糖の代わりに高甘味度の甘味料が利用される傾向が現れている。このような甘味度の高い甘味料としては、南米パラグアイを原産地とする菊科の多年生植物ステビアから抽出したステビア甘味料が代表的である。
【0003】
しかし、甘味主成分であるステビオサイドの甘味質は、砂糖に比べて、苦みがある、甘味の立ち上がりが遅い、あとひきがある、水溶液への溶解性が低い等の欠点を有している。
【0004】
このうちの一つがデキストリンを用いたシクロデキストリングルカノトランスフェラーゼ酵素反応後、反応液を多孔性吸着樹脂(XAD-7、HP-20)などに通して未反応のデキストリンを流出させ、吸着した未反応のステビオール配糖体およびα-グルコシル化されたステビオール配糖体成分のみを得る方法である。
【0005】
酵素を使用して糖付加率を高めて苦味成分となる未反応ステビオール配糖体成分を最小限に抑えると同時に、未反応デキストリンは吸着樹脂を介して除去され、ステビオール配糖体成分を高めて甘味を改善させてきた。
【0006】
例えば、特許文献1ではα-グルコシル化ステビア抽出物の製造によって味質が向上することが報告されているが、吸着樹脂を用いた精製工程を実施し、このように吸着樹脂を使用する場合、吸着、洗浄時に発生する廃水の量が多く、吸着された製品を溶出するために有機溶媒が使用される欠点がある。
【0007】
また特許文献2では、ステビア甘味料およびその製造方法を提示しているが、高価なγ-シクロデキストリンを使用しており、ステビア抽出物とγ-シクロデキストリンを1:1.8の重量比で混合使用する。またHP-20吸着樹脂を用いて製造するため廃水の発生が多く、有機溶媒を使用しなければならない欠点がある。
【0008】
非特許文献1は、α、β-シクロデキストリン、デンプンを用いると開示されており、製品収率が45%でデンプン使用時には50~80%でグリコシルステビオシドがより多く製造されるとあるが、澱粉の場合は水への溶解が悪く、α、β-アミラーゼまたはグルコアミラーゼ酵素を用いてデンプンを分解した後、糖転移反応をしなければならない煩わしさがある。しかもα、β-アミラーゼまたはグルコアミラーゼ酵素を使用せずに製造する場合、脱着工程で吸着樹脂に未反応のデンプンが溜まってカラムが詰まることがあり、吸着や洗浄時に発生する廃水量が多く、有機溶媒を使用して溶出する必要があり、製造された製品を水に溶解して長期保管すると懸濁や沈殿が発生する欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平09-107913
【特許文献2】特許第2798433号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】FOOD Chemistry(Volume 159、15 September 2014、Pages 151-156)ではTransglycosylation specificity of glycosyl donors in Transglycosylation of stevioside catalysed by CGTase.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明は、ステビア抽出物の糖転移反応(glycosylation)物質としてシクロデキストリンを用い、多孔性の吸着樹脂を用いた精製過程を行うことなくα-グルコシル化ステビア抽出物を製造する方法とこの製造方法によって、菓子、飲料(アルコール飲料を含む)、食品、製品などの甘味剤、風味強化剤及び風味変更剤の成分及び試薬として使用可能な酵素処理ステビア甘味料の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題に対して鋭意検討した結果、糖転移反応物質としてシクロデキストリンを用いることで、その後の樹脂精製を行うことなく、α-グルコシル化ステビア抽出物を効率的に得ることができ、かかる知見に基づいてさらに研究を進めることによって本発明を完成するに至った。
【0013】
[1]ステビア抽出物とシクロデキストリンにシクロデキストリングルカノトランスフェラーゼを作用させて生成する、酵素処理ステビアを含む高甘味度甘味料の製造方法。
[2]ステビア抽出物とβ-シクロデキストリンにシクロデキストリングルカノトランスフェラーゼを作用させて生成する、請求項1に記載の製造方法。
[3]ステビア抽出物とβ-シクロデキストリンとを含む溶液に、シクロデキストリングルカノトランスフェラーゼ作用させてα-グリルコシル化ステビア抽出物含有溶液を得る工程において、ステビア抽出物とβ-シクロデキストリンの比率が1:1~10:1である請求項1に記載の高甘味度甘味料の製造方法。
[4]ステビア抽出物とβ-シクロデキストリンにシクロデキストリングルカノトランスフェラーゼを作用させた生成物を、分離・精製工程を経ずに乾燥工程に供す請求項1または請求項2に記載の高甘味度甘味料製造方法。
[5]α-グルコシル化ステビオール配糖体を主成分とし、下記(a)、(b)のいずれをも満足する高甘味度甘味料。
(a)α-グルコシル化ステビオール配糖体4種(ステビオサイド、レバウディオサイドA、レバウディオサイドC及びズルコサイドA各々のα-グルコシル化物)及びそれらの未反応のステビオール配糖体4種の合計量として80.0%以上を含む。
(b)α-グルコシル化ステビオール配糖体4種の合計量として65.0%以上を含む。
【発明の効果】
【0014】
ステビア抽出物に糖供与体であるシクロデキストリンを混合して酵素反応させるが、吸着樹脂を用いた精製過程なしで糖付加率を向上させた酵素処理ステビア甘味料を製造することができる。 特に糖供与体である糖転移が反応物質として使用されるシクロデキストリンの中でも価格が安いβ-シクロデキストリンを使用すると、価格競争力を確保しながら、ステビア抽出物にα-1,4結合するグルコースが1~15個と低い化合物を生産することで甘味が急速に現れ、味も良質な高甘味度甘味料を製造することができる。
【0015】
また、吸着樹脂による精製過程がないため、酵素反応後すぐに乾燥して製造することができ、工程を簡素化することができる。したがって、従来の排水発生量を大幅に減少させることはもちろん、有機溶媒を使用しないため、効率的に生産できる。
【0016】
上記製造方法により製造された酵素処理ステビア甘味料は、食品及び食品添加物として使用することができ、代表的な食品、食品添加物としては、コーヒー飲料、清涼飲料、ジュース飲料、粉末飲料、乳製品およびアルコール飲料からなる飲料またはキャンディまたはお菓子に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に本発明の詳細を説明する。
なお、特に記載のない場合「AA~BB%」という記載は、「AA%以上~BB%以下」を意味する。
【0018】
<1.酵素処理ステビア>
本発明の酵素処理ステビアは、α-グルコシル化ステビオール配糖体4種(ステビオサイド、レバウディオサイドA、レバウディオサイドC及びズルコサイドA各々)主成分として含む組成物である。
【0019】
本発明において、「α-グルコシル化ステビオール配糖体」の用語は、ステビオール配糖体に対しα-グルコース分子が付加された誘導体を意味する。すなわち、α-グルコシル化ステビオール配糖体は、ステビオール配糖体と対比して、α-グルコース残基の数が増加しているものであればよい。付加されたα-グルコース残基の数は、好ましくは1~20残基程度、より好ましくは1~10残基程度であり、さらに好ましくは1~5残基程度である。甘味質に係る本発明の効果が失われない限り、α-グルコース残基の数が上記の好ましい範囲を上回るα-グルコース残基を有するα-グルコシル化ステビオール配糖体が、本発明のステビオール配糖体組成物中に含まれていてもよい。ステビオール配糖体に対する付加部位は、α-グルコース残基が連続して結合している糖鎖となっていることが好ましいが、本発明の効果が失われない範囲において、または、付加部位の一部にα-グルコース残基の分子数を超えない範囲において、他の糖残基が含まれていてもよい。
【0020】
本発明の酵素処理ステビアは、α-グルコシルステビオール配糖体4種(ステビオサイド、レバウディオサイドA、レバウディオサイドC及びズルコサイドA各々)および未反応のステビオール配糖体4種の合計量として少なくとも80%以上(W/W)を含み、その含有量は好ましくは85%(W/W)以上であり、より好ましくは90%(W/W)以上であり、さらに好ましく95%(W/W)以上である。
【0021】
未反応のステビオール配糖体が少ないほど甘味質は向上する。本発明の酵素処理ステビア中の未反応ステビオール配糖体4種の含有量は、好ましくは30%(W/W)以下であり、より好ましくは25%(W/W)以下であり、さらに好ましくは20%(W/W)以下である。
【0022】
本発明のステビオール配糖体組成物の他の一実施形態としては、α-グルコシル残基量が、好ましくは15%(W/W)以上であり、より好ましくは20%(W/W)以上であり、さらに好ましくは30または35%(W/W)以上である酵素処理ステビアでありうる。本発明の酵素処理ステビアにおいて、α-グルコシル残基量が上記のような値であると、α-グルコシル化ステビオール配糖体4種が十分に含まれており、良質な甘味質を有する。他方、α-グルコシル残基量の上限は、甘味質を保つ観点からすると、好ましくは60%(W/W)以下であり、より好ましくは50%(W/W)以下であり、さらに好ましくは40%(W/W)以下でありうる。
【0023】
なお、本発明による効率的に糖付加可能な基質はステビアに限ったものではない。例えばヘスペリジン、イソケルシトリン、核酸、ビタミンCなどにおいてもα-グルコース分子を付加することができうる。
【0024】
また、α-グルコシル残基量は、食品添加物公定書第9版の記載に準じて測定することができる。
【0025】
本発明の酵素処理ステビアには、他の任意成分が含まれていてもよい。例えば、本発明の酵素処理ステビアには、上記ステビオール配糖体4種の他に、ズルコサイドB、Reb-B、Reb-C、Reb-D、Reb-E、Reb-G、Reb-I、Reb-H、Reb-L、Reb-K、Reb-J、Reb-M、Reb-NまたはReb-Oなどの他のステビオール配糖体成分が含まれていてもよい。また、本発明のステビオール配糖体組成物には、さらに他の糖質が含まれていてもよい。他の糖質としては、例えば、グルコース、フラクトース、ガラクトースなどの単糖類、マルトール、イソマルトース、ラクトース、パラチノースなどの二糖類、マルトトリオース、エルロース、ラフィノース、ラクトスクロース、ケストース等の三糖類、ソルビトール、マルチトール、ラクチトール、マルトトリイトール等の糖アルコールなどが挙げられる。さらに、本発明のステビオール配糖体組成物には、糖質以外の甘味料成分が含まれていてもよい。糖質以外の甘味料成分としては、例えば、L-アスパルテル-L-フェニルアラニンメチルエステル(アスパルテーム)、サッカリン、グリチルリチン、スクラロース、アセスルファムK、ネオテーム、アドバンテーム、ラカンカ、ソーマチンなどが挙げられる。本発明のステビオール配糖体組成物中におけるこれらの他の糖質および糖質以外の甘味料成分の含有量は50%(W/W)未満であり、好ましくは30%(W/W)以下であり、より好ましくは20%(W/W)以下であり、さらに好ましくは10、5、または3%(W/W)以下である。本発明の酵素処理ステビアには、さらに一般的に甘味料において用いられる、他の任意成分がさらに配合されていてもよい。
【0026】
本発明の酵素処理ステビアを飲食品に添加する場合、その配合量は、飲食品の種類などの諸条件に応じて適宜調整してよい。本発明の酵素処理ステビアを用いて甘味質を付与するする観点からは、当該飲食品に配合される甘味料全体のうち、80、85、または90%(W/W)以上を本発明の酵素処理ステビアとすることが好ましい実施形態でありうる。あるいは、当該飲食品に配合される甘味料全体のうち酵素処理ステビアの配合量が、50、60、70、75、85、または90%(W/W)以上であることが好ましい実施形態でありうる。
【0027】
本発明の酵素処理ステビアを添加するのに好適な飲食品としては、例えば、果汁入り飲料、野菜飲料、栄養飲料などの酸性飲料、サイダー類、コーラ類、ガラナ、ジンジャーエールなどの炭酸飲料、コーヒー、紅茶、乳飲料、甘酒などの各種飲料、ゼリー、ムース、アイスクリーム、シャーベット、プリン、ヨーグルト等のデザート類、チョコレート、クッキー、ケーキ、チューインガム等の菓子類、ハードキャンディ、ソフトキャンディなどのキャンディ類、水産練り製品、漬物、ドレッシング、醤油、たれなどの塩性食品および調味料等が挙げられる。
【0028】
<2.酵素処理ステビアの製造方法>
本発明の酵素処理ステビアは、ステビア抽出物をα-グルコシル化して、所定の濃度以上のα-グルコシル化ステビオール配糖体を生成することによって得ることができる。一実施形態としては、例えば、β-シクロデキストリンと、ステビア抽出物と、シクロデキストリングルカノトランスフェラーゼとを水溶液中で混合して酵素反応を行い、α-グルコシル化ステビオール配糖体を生成することによって本発明の酵素処理ステビアを製造することができる。
【0029】
糖供与体としては、β-シクロデキストリンを用いるが、一部α-シクロデキストリンやγ-シクロデキストリン、また直鎖状のデキストリンが含まれていても良い。本発明では、上記シクロデキストリンの3種類を全て使用することができるが、比較的価格の安いβ-シクロデキストリンを使用することが好ましく、純度は約98%以上の製品を使用することが好ましい。またステビア抽出物とβ-シクロデキストリンの比率が1:1~10:1が好ましく、より好ましくは10:9~10:2であり、さらに好ましくは10:8~10;3である。
【0030】
シクロデキストリングルカノトランスフェラーゼとしては、好ましくはα-グルコシルトランスフェラーゼが挙げられる。糖供与体がシクロデキストリンである場合、シクロデキストリングルコシルトランスフェラーゼを用いうる。またグルコシルトランスフェラーゼとしては、例えばα1,4結合の形成を触媒するものが好適な酵素として挙げられる。
【0031】
ステビア抽出物原料としては、一般的に入手可能なステビア抽出物を用いうるが、糖質としてレバウディオサイドAまたはステビアサイド成分を高濃度で含むものが好適である。
【0032】
酵素反応は、β-シクロデキストリンと、ステビア抽出物を含む原料と、シクロデキストリングルコシルトランスフェラーゼとを水溶液中で混合して行う。酵素反応の温度、pH条件、反応時間などの諸条件は、酵素反応における一般的な条件設定に従って適宜調整してよい。例えば、α-グルコシル化については、特公平5-22498号公報、特公昭57-18779号公報、および特許第3508127号公報などの文献があり、これらを参照しうる。
【0033】
ステビア抽出物へのα-グルコシル化については、糖付加の位置は限定されず、特に制御しなくてもよい。各ステビア抽出物のDA(ズルコサイドA)、ST(ステビオサイド)、
Reb-C(レバウディオサイドC)、Reb-A(レバウディオサイドA)の含有率を表1に示した。
【0034】
付加する糖鎖の量または長さは、酵素反応の反応時間や温度などによって調整することができる。また、酵素反応により一旦付加した糖鎖を、アミラーゼなどの酵素を用いて切断し、糖鎖の量または長さを調整することもできる。アミラーゼとしては、例えば、α-アミラーゼ、β-アミラーゼ、グルコアミラーゼなどを用いうる。
【実施例0035】
以下に実施例を挙げて本発明について具体的に説明するが、本発明の技術的範囲が下記の実施例に限定されるものではない。
【0036】
<実施例1>
以下のようにして、ステビオサイド中含有抽出物を用いた酵素処理ステビア(実施例1)を調製した。
(1)ステビア抽出物を用いた酵素反応
反応として以下のものを使用した。
・ステビオサイド中含有抽出物
・β-シクロデキストリン(富士フィルム和光製試薬)
・塩化カルシウム(市販品)
・脱イオン水
・サイクロデキストリングルコシルトランスフェラーゼ(株式会社林原製)
(2)糖転移反応
ステビア抽出物2g、β-シクロデキストリン1g、塩化カルシウム2mgを脱イオン水15mlに加熱溶解させ、冷却した。次いで、pHを5.5に調整、60℃まで加熱した後、サイクロデキストリングルコシルトランスフェラーゼ0.01mlを添加し、60℃で18時間反応させた。その後、95℃で30分間加熱し酵素を失活、反応を終了させた。
【0037】
<実施例2>
β-シクロデキストリン(富士フィルム和光製試薬)の代わりにα-シクロデキストリン(富士フィルム和光製試薬)用いた以外は実施例1に従って粉末品を調製した。
【0038】
<実施例3>
β-シクロデキストリン(富士フィルム和光製試薬)の代わりにγ-シクロデキストリン(富士フィルム和光製試薬)用いた以外は実施例1に従って粉末品を調製した。
【0039】
<実施例4>
ステビオサイド中含有抽出物の代わりにステビオサイド高含有抽出物を用いた以外は実施例1に従って粉末品を調製した。
【0040】
<実施例5>
ステビオサイド中含有抽出物の代わりにレバウディオサイドA高含有抽出物を用いた以外は実施例1に従って粉末品を調製した。
【0041】
<比較例1>
β-シクロデキストリンの代わりデキストリン「サンデック#70」(三和澱粉工業株式会社製)を用いた以外は実施例1に従って粉末品を調製した。
【0042】
【表1】
DA ズルコサイドA
ST ステビオサイド
Reb-C レバウディオサイドC
Reb-A レバウディオサイドA
【0043】
<糖付加の程度分析1:平均糖付加数の分析>
高速液体クロマトグラフィーにより分析した。
カラム:RSpak DC-613(株式会社 昭和電工株式会社 製)
溶離液:溶離液A アセトニトリル/水=1/1 (Vol/Vol)
溶離液B アセトニトリル
直線グラジエント:0分 A:B=32:68 → 60分 A:B=100:0
カラム温度:40℃
流速:1ml/min
検出:UV 210nm
【0044】
【表2】
糖付加指標・・・BをAで除した値
A・・・ステビオサイドのピーク面積とレバウディオサイドAのピーク面積の和
B・・・保持時間がレバウディオサイドA以降のピーク面積の和
【0045】
表2に示したようにシクロデキストリンを用いた実施例1~5はデキストリンを用いた比較例1よりも糖付加指標が高く、より多くの糖が付加していた。
【0046】
<糖付加の程度分析2:酵素処理ステビアの食品添加物公定書に準拠した分析>
食品添加物公定書第9版に記載の「α-グルコシルトランスフェラーゼ処理ステビア」
に準拠して実施例1、4、5の分析を行った。
【0047】
【0048】
表3に示したように、実施例1、4、5ともにαグルコシル残基とステビオール配糖体の和である総純度は80%以上、α―グルコシルステビオール配糖体65%以上であり、公定書の含量規格を満たしていた。