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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024012841
(43)【公開日】2024-01-31
(54)【発明の名称】水和固化体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/08 20060101AFI20240124BHJP
   C04B 18/14 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
C04B28/08
C04B18/14 A
C04B18/14 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022114598
(22)【出願日】2022-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100168985
【弁理士】
【氏名又は名称】蜂谷 浩久
(72)【発明者】
【氏名】松永 久宏
(72)【発明者】
【氏名】井上 陽太郎
(72)【発明者】
【氏名】永田 風彦
【テーマコード(参考)】
4G112
【Fターム(参考)】
4G112PA29
4G112PD01
4G112PD03
(57)【要約】
【課題】耐久性に優れる水和固化体を得る。
【解決手段】製鋼スラグを含む骨材と、高炉スラグ微粉末を含む結合材と、水とを含有する組成物を混練し、硬化させることにより、水和固化体を得て、上記製鋼スラグは、細骨材である製鋼スラグ細骨材を含み、上記製鋼スラグ細骨材は、JIS K 0058-1:2005「スラグ類の化学物質試験方法-第1部:溶出量試験方法」に記載された「利用有姿による試験」を実施することにより得られる検液中のカルシウムイオン濃度が30mg/L以上であり、上記製鋼スラグ細骨材の配合量が、800kg/m以上である、水和固化体の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
製鋼スラグを含む骨材と、高炉スラグ微粉末を含む結合材と、水とを含有する組成物を混練し、硬化させることにより、水和固化体を得て、
前記製鋼スラグは、細骨材である製鋼スラグ細骨材を含み、
前記製鋼スラグ細骨材は、JIS K 0058-1:2005「スラグ類の化学物質試験方法-第1部:溶出量試験方法」に記載された「利用有姿による試験」を実施することにより得られる検液中のカルシウムイオン濃度が30mg/L以上であり、
前記製鋼スラグ細骨材の配合量が、800kg/m以上である、水和固化体の製造方法。
【請求項2】
前記製鋼スラグ細骨材の前記高炉スラグ微粉末に対する質量比が、2.0以上である、請求項1に記載の水和固化体の製造方法。
【請求項3】
前記結合材が、更に、セメントを含む、請求項1に記載の水和固化体の製造方法。
【請求項4】
前記結合材が、更に、セメントを含む、請求項2に記載の水和固化体の製造方法。
【請求項5】
得られた前記水和固化体を、2000kg/個以下に破砕にする、請求項1~4のいずれか1項に記載の水和固化体の製造方法。
【請求項6】
得られた前記水和固化体を、粒径53mm以下に破砕する、請求項1~4のいずれか1項に記載の水和固化体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水和固化体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリートやモルタルなどの水和固化体が知られている。
水和固化体は、一般的には、天然砕石や山砂などの粒度の異なる骨材(細骨材および粗骨材)と、セメントなどの水和反応によって硬化する結合材と、水とを含有する組成物を混練し、硬化させて得られる。
このような水和固化体として、製鋼スラグを含有する骨材を用いた水和固化体(以下、「製鋼スラグ水和固化体」ともいう)が知られており(特許文献1)、港湾土木材料、路盤材などに使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-264045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
製鋼スラグを使用した水和固化体は、同じ圧縮強度のコンクリートと比較すると、静弾性係数が小さい場合がある。この場合、水和固化体は、乾燥収縮やクリープ変形が大きくなり、耐久性に劣る。
【0005】
そこで、本発明は、耐久性に優れる水和固化体を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、下記構成を採用することにより、上記目的が達成されることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の[1]~[5]を提供する。
[1]製鋼スラグを含む骨材と、高炉スラグ微粉末を含む結合材と、水とを含有する組成物を混練し、硬化させることにより、水和固化体を得て、上記製鋼スラグは、細骨材である製鋼スラグ細骨材を含み、上記製鋼スラグ細骨材は、JIS K 0058-1:2005「スラグ類の化学物質試験方法-第1部:溶出量試験方法」に記載された「利用有姿による試験」を実施することにより得られる検液中のカルシウムイオン濃度が30mg/L以上であり、上記製鋼スラグ細骨材の配合量が、800kg/m以上である、水和固化体の製造方法。
[2]上記製鋼スラグ細骨材の上記高炉スラグ微粉末に対する質量比が、2.0以上である、上記[1]に記載の水和固化体の製造方法。
[3]上記結合材が、更に、セメントを含む、上記[1]または[2]に記載の水和固化体の製造方法。
[4]得られた上記水和固化体を、2000kg/個以下に破砕にする、上記[1]~[3]のいずれかに記載の水和固化体の製造方法。
[5]得られた上記水和固化体を、粒径53mm以下に破砕する、上記[1]~[4]のいずれかに記載の水和固化体の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、耐久性に優れる水和固化体が得られる。
耐久性に優れる水和固化体は、例えば、天然石またはコンクリートの代替物として、捨石や路盤材などに使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本発明者らが得た知見]
骨材として製鋼スラグを用いた水和固化体の組織は、高炉スラグ微粉末などの結合材および水から構成されるペースト相と、製鋼スラグから構成される骨材相とに大きく区分される。
【0010】
水和固化体の圧縮強度は、水結合材比(水と結合材との質量比)によって制御でき、一般的に、18~50N/mmの範囲であり、普通コンクリートの強度とほぼ同等である。圧縮強度が大きくなるとともに、静弾性係数も大きくなる。
普通コンクリートの静弾性係数は、圧縮強度が20N/mmのとき約23kN/mm、圧縮強度が35N/mmのとき約30kN/mm、圧縮強度が50N/mmのとき約33kN/mmである。
一方、水和固化体の静弾性係数は、圧縮強度が20N/mmのとき16~22kN/mm、圧縮強度が35N/mmのとき24~30kN/mm、圧縮強度が50N/mmのとき約28~33kN/mmである。
すなわち、水和固化体の静弾性係数は、同じ圧縮強度の普通コンクリートよりも小さいか、同等である。
【0011】
本発明者らは、材齢28日の圧縮強度が約35N/mmである水和固化体(水和固化体Aおよび水和固化体B)および普通コンクリートについて、乾燥収縮およびクリープ変形を調査した。
静弾性係数は、水和固化体Aが24kN/mmであったのに対して、水和固化体Bおよび普通コンクリートが30kN/mmであった。
調査の結果、静弾性係数が小さい水和固化体Aは、静弾性係数が大きい水和固化体Bおよび普通コンクリートよりも、乾燥収縮およびクリープ変形が大きかった。
したがって、水和固化体の静弾性係数を大きくすることができれば、普通コンクリートと同等の耐久性が得られる。
【0012】
従来、水和固化体の静弾性係数の支配因子は不明瞭であり、それを制御できなかった。
そこで、本発明者らは、使用する成分や配合条件が水和固化体の静弾性係数に及ぼす影響について検討した。
その結果、本発明者らは、細骨材相当の製鋼スラグ(概略的には、粒径が5mm以下の製鋼スラグ)のカルシウムイオン溶出量および配合量が、静弾性係数に影響することを見出した。
【0013】
その理由は、明らかではないが、次のように考えられる。
すなわち、細骨材相当の製鋼スラグからカルシウムイオンが、ペースト相(高炉スラグ微粉末および水)に溶け出すことにより、ペースト相とカルシウムイオンとが水和反応する。その結果、骨材相(製鋼スラグ)とペースト相との界面に、強固な遷移帯が形成され、骨材相とペースト相とが強固に接着する。これにより、水和固化体の静弾性係数が向上する。
【0014】
このとき、製鋼スラグの粒径が大きすぎる場合(つまり、製鋼スラグが細骨材ではない場合)、骨材相とペースト相との接触面積が小さいので、カルシウムイオンが多く溶出しても、効果が限定的となる。
また、細骨材相当の製鋼スラグの配合量が少なすぎる場合、骨材相とペースト相との全接触面積が小さくなり、やはり、効果が限定的となる。
【0015】
本発明は、以上の知見に基づいてなされたものである。
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。
【0016】
[水和固化体の製造方法]
本実施形態の水和固化体の製造方法(以下、「本製造方法」ともいう)は、概略的には、製鋼スラグを含む骨材と、高炉スラグ微粉末を含む結合材と、水とを含有する組成物を混練し、硬化させることにより、水和固化体を得る方法である。
以下、本製造方法を詳細に説明する。
【0017】
〈骨材〉
まず、本製造方法において使用する骨材について説明する。
【0018】
《製鋼スラグ》
骨材は、製鋼スラグを含む。
製鋼スラグとしては、例えば、転炉、電気炉、混銑車などで発生するスラグ(例えば、転炉脱炭スラグ);溶銑予備処理スラグ;ステンレス精錬の際に発生する、T.Cr含有量が0.5質量%以上であるスラグ;等が挙げられる。エージング処理された製鋼スラグも使用でき、例えば、水浸膨張比が0.5%以下のものが好適に挙げられる。コスト高にはなるが、製鋼スラグの一部として、風砕処理された製鋼スラグを使用してもよい。
【0019】
(製鋼スラグ細骨材)
製鋼スラグの少なくとも一部は、細骨材である。
細骨材は、JIS A 0203:2014「コンクリート用語」に記載されるとおり、10mm網ふるいを全部通り、5mm網ふるいを質量で85%以上通る骨材である。
以下、細骨材である製鋼スラグを、「製鋼スラグ細骨材」と呼ぶ場合ある。
【0020】
((カルシウムイオン濃度))
まず、以下では、「JIS K 0058-1:2005「スラグ類の化学物質試験方法-第1部:溶出量試験方法」に記載された「利用有姿による試験」を実施することにより得られる検液中のカルシウムイオン濃度」を、単に、「カルシウムイオン濃度」と呼ぶ場合がある。
【0021】
本製造方法において使用する製鋼スラグ細骨材は、カルシウムイオン濃度が30mg/L以上である。このような製鋼スラグ細骨材は、カルシウムイオン溶出量が多い。このため、上述したように、得られる水和固化体は、静弾性係数の圧縮強度に対する比(静弾性係数/圧縮強度)が向上し、耐久性に優れる。
【0022】
なお、細骨材である製鋼スラグは、2種以上を併用してもよい。
この場合、例えば、カルシウムイオン濃度が30mg/L以上のものと、カルシウムイオン濃度が30mg/L未満のものとを混合し、その混合物のカルシウムイオン濃度が30mg/L以上であれば、その混合物は、本製造方法において使用する製鋼スラグ細骨材に該当するものとする。
【0023】
得られる水和固化体の耐久性がより優れるという理由から、製鋼スラグ細骨材のカルシウムイオン濃度は、50mg/L以上が好ましく、70mg/L以上がより好ましく、90mg/L以上が更に好ましく、110mg/L以上が特に好ましく、130mg/L以上が最も好ましい。
【0024】
一方、得られる水和固化体からアルカリ成分が溶出することを低減する観点から、製鋼スラグ細骨材のカルシウムイオン濃度は、900mg/L以下が好ましく、700mg/L以下がより好ましく、500mg/L以下が更に好ましい。
【0025】
((配合量))
製鋼スラグ細骨材の配合量は、800kg/m以上である。これにより、上述したように、得られる水和固化体は、静弾性係数の圧縮強度に対する比(静弾性係数/圧縮強度)が向上し、耐久性に優れる。
得られる水和固化体の耐久性がより優れるという理由から、製鋼スラグ細骨材の配合量は、2000kg/m以下が好ましく、1500kg/m以下がより好ましく、1000kg/m以下が更に好ましい。
【0026】
骨材相(製鋼スラグ)とペースト相との界面に強固な遷移帯を形成する観点から、製鋼スラグ細骨材の配合量は、900kg/m以上が好ましく、1000kg/m以上がより好ましく、1100kg/m以上が更に好ましく、1200kg/m以上が特に好ましい。
【0027】
(製鋼スラグ粗骨材)
本製造方法においては、製鋼スラグとして、細骨材(製鋼スラグ細骨材)だけでなく、粗骨材を使用してもよい。
粗骨材は、JIS A 0203:2014「コンクリート用語」に記載されるとおり、5mm網ふるいに質量で85%以上とどまる骨材である。
以下、粗骨材である製鋼スラグを、「製鋼スラグ粗骨材」と呼ぶ場合ある。
製鋼スラグ粗骨材の配合量は、50kg/m以上が好ましく、150kg/m以上がより好ましく、300kg/m以上が更に好ましく、700kg/m以上が特に好ましい。
一方、製鋼スラグ粗骨材の配合量は、1400kg/m以下が好ましく、1200kg/m以下がより好ましい。
【0028】
(表乾密度)
本製造方法において、使用する製鋼スラグの表乾密度は、2.8g/cm以上が好ましく、3.0g/cm以上がより好ましい。
一方、製鋼スラグの表乾密度は、4.0g/cm以下が好ましく、3.8g/cm以下がより好ましい。
製鋼スラグの表乾密度は、JIS A 1109:2020「細骨材の密度及び吸水率試験方法」およびJIS A 1110:2020「粗骨材の密度及び吸水率試験方法」に記載された方法に準拠して求める。
【0029】
《その他の骨材》
本製造方法においては、その他の骨材を使用してもよく、例えば、天然砕石、山砂、高炉徐冷スラグ、高炉水砕スラグ、コンクリート用再生骨材などが挙げられる。
もっとも、製鋼スラグを有効利用する観点から、骨材中、製鋼スラグが占める体積割合(容積比率)は、50体積%以上が好ましく、75体積%以上がより好ましく、100体積%が更に好ましい。
【0030】
〈結合材〉
結合材は、水和反応によって硬化する成分である。
結合材の配合量は、合計で、250kg/m以上が好ましく、300kg/m以上がより好ましく、350kg/m以上が更に好ましい。
一方、結合材の配合量は、合計で、800kg/m以下が好ましく、700kg/m以下が好ましく、600kg/m以下が好ましい。
【0031】
《高炉スラグ微粉末》
結合材は、少なくとも、高炉スラグ微粉末を含む。
高炉スラグ微粉末としては、例えば、JIS A 6206:2013で規定されるコンクリート用高炉スラグ微粉末が挙げられる。
【0032】
《セメント》
結合材は、更に、セメントを含むことが好ましい。
セメントとしては、例えば、普通ポルトランドセメント、エコセメント、早強セメント、アルミナセメントなどの各種セメントが挙げられる。
これらの各種セメントは、強アルカリ性であることから、高炉スラグ微粉末をアルカリ刺激し、高炉スラグ微粉末の水和反応速度を速くできる。
セメントの配合量は、高炉スラグ微粉末を十分にアルカリ刺激する観点から、高炉スラグ微粉末に対する内割で、5質量%以上が好ましく、7質量%以上がより好ましく10質量%以上が更に好ましい。
一方、セメントの配合量は、多すぎるとアルカリ刺激の効果が飽和して不経済となるから、高炉スラグ微粉末に対する内割で、45質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下が更に好ましい。
【0033】
《その他の結合材》
本製造方法においては、その他の結合材を使用してもよく、例えば、シリカフューム、フライアッシュ等が挙げられる。
シリカフュームとしては、例えば、JIS A 6207:2011で規定されるコンクリート用シリカフュームが挙げられる。
フライアッシュとしては、例えば、石炭火力発電で生じるフライアッシュが挙げられ、JIS A 6201:2015で規定されるコンクリート用フライアッシュ、または、フライアッシュ原粉が好ましい。
【0034】
〈質量比(製鋼スラグ細骨材/高炉スラグ微粉末)〉
次に、製鋼スラグ細骨材の高炉スラグ微粉末に対する質量比(製鋼スラグ細骨材/高炉スラグ微粉末)について説明する。
質量比(製鋼スラグ細骨材/高炉スラグ微粉末)は、1.5以上が好ましく、1.8以上がより好ましく、2.0以上が更に好ましい。
これにより、強固な遷移体が形成されやすくなり、静弾性係数の向上効果が良好となり、得られる水和固化体の耐久性がより優れる。
【0035】
上限については、特に限定されない。
もっとも、製鋼スラグ細骨材に対して、高炉スラグ微粉末が極端に少ないと、水和固化体の強度が発現しにくくなる。このため、質量比(製鋼スラグ細骨材/高炉スラグ微粉末)は、5.0以下が好ましく、3.5以下がより好ましく、2.5以下が更に好ましい。
【0036】
〈水〉
本製造方法において使用する水は、特に限定されない。
ただし、上述した成分を含有する組成物の練り混ぜ性が良好な範囲で、水の配合量は、できる限り少ないことが好ましい。このため、水の配合量は、240kg/m以下が好ましく、210kg/m以下がより好ましく、190kg/m以下が更に好ましい。
【0037】
〈その他の成分〉
本製造方法においては、更に、その他の成分を使用してもよい。
例えば、まだ硬化していない水和固化体のワーカビリティーを確保するため、コンクリートに通常用いられている減水剤などの混和剤を使用してもよい。
混和剤を使用する場合、その配合量は、10kg/m以下が好ましく、7kg/m以下がより好ましい。
【0038】
〈混練および硬化〉
本製造方法においては、上述した成分を含有する組成物を混練し、得られた混練物を硬化させて、水和固化体を得る。
なお、上述した各成分の配合量は、この組成物中の含有量である。
水和固化体を得るに際しての混練、打設、成形、養生などは、通常のコンクリートやモルタルの場合と同様でよい。硬化に関しても特に限定されない。
【0039】
〈破砕〉
混練物の硬化後、得られた水和固化体を破砕してもよい。
例えば、水和固化体を、2000kg/個以下に破砕する。これにより、破砕後の水和固化体を、港湾工事で使用される捨石や被覆石の代替物として使用できる。また、2000kg/個以下に破砕することにより、運搬しやすくなる。
また、水和固化体を、53mm以下に破砕してもよい。これにより、破砕後の水和固化体を、道路用路盤材として使用できる。53mm以下に破砕することにより、路盤材として使用する際の締固め性が良好になる。
【実施例0040】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施例に限定されない。
【0041】
〈製鋼スラグA~D〉
以下に説明する発明例1~12および比較例1~4に用いた製鋼スラグA~Dについて、カルシウムイオン濃度を、下記表1に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
上記表1に示すように、製鋼スラグA~Cはカルシウムイオン濃度が30mg/L以上であり、製鋼スラグDはカルシウムイオン濃度が30mg/L未満であった。
なお、製鋼スラグA~Dとしては、溶銑予備処理スラグおよび転炉脱炭スラグの少なくともいずれかを使用した。
【0044】
〈発明例1~12および比較例1~4〉
製鋼スラグ細骨材および製鋼スラグ粗骨材として、製鋼スラグA~Dのいずれかを用いて、水和固化体を作製した。
より詳細には、下記表2に示す成分(骨材、結合材、水および減水剤)を、下記表2に示す配合量で配合した組成物を、ミキサーを用いて練り混ぜて、混練物を得た。
得られた混練物を、直径100mm×高さ200mmの円柱状の型枠に打ち込み、24時間経過後に型枠を取り外し、その後、20℃の水中で養生した。こうして、混練物を硬化させて、水和固化体を得た。
【0045】
製鋼スラグ粗骨材としては、粒径が25mm以下であるものを使用した。
高炉スラグ微粉末としては、JIS A 6206:2013で規定されるコンクリート用高炉スラグ微粉末(高炉スラグ微粉末4000)を使用した。
普通ポルトランドセメントとしては、JIS R 5210:2009で規定される普通ポルトランドセメントを使用した。
【0046】
〈評価〉
材齢28日(養生日数が28日)の水和固化体について、JIS A 1149:2017「コンクリートの静弾性係数試験方法」に記載された方法に従って、圧縮強度(単位:N/mm)および静弾性係数(単位:kN/mm)を測定した。
更に、静弾性係数の圧縮強度に対する比(静弾性係数/圧縮強度)を求めた。比(静弾性係数/圧縮強度)の値が大きいほど、その水和固化体は、耐久性に優れると評価した。
結果を下記表2に示す。
【0047】
【表2】
【0048】
〈評価結果まとめ〉
製鋼スラグ細骨材として製鋼スラグDを使用した比較例1~2の水和固化体は、比(静弾性係数/圧縮強度)が695以下であった。
また、製鋼スラグ細骨材として製鋼スラグA~Cを使用したが、製鋼スラグ細骨材の配合量が800kg/m未満であった比較例3~4の水和固化体は、比(静弾性係数/圧縮強度)が697以下であった。
これに対して、製鋼スラグ細骨材として製鋼スラグA~Cを使用し、かつ、製鋼スラグ細骨材の配合量が800kg/m以上であった発明例1~12の水和固化体は、比(静弾性係数/圧縮強度)が771以上であり、比較例1~4よりも耐久性が良好であった。
【0049】
発明例1~12を対比すると、質量比(製鋼スラグ細骨材/高炉スラグ微粉末)が1.8である発明例11の水和固化体よりも、質量比(製鋼スラグ細骨材/高炉スラグ微粉末)が2.0以上である他の発明例の水和固化体方が、比(静弾性係数/圧縮強度)が大きく、より耐久性が良好でであった。
【0050】
〈大量製造〉
次に、発明例1および4の配合で、水和固化体を、大量に製造した。
【0051】
《発明例1の配合》
材齢2日の水和固化体を、重機を使用して、1000~2000kg/個または50~300kg/個に破砕し、その後、更に養生した。材齢28日の水和固化体を、被覆石および捨石として使用したところ、天然石と同等の耐久性および施工性が認められた。
【0052】
《発明例4の配合》
材齢2日の水和固化体を、重機を使用して、100kg/個以下に破砕し、その後、更に養生した。材齢28日の水和固化体を、ジョークラッシャーを用いて、53mm以下に破砕し、JIS A 5015:2018「道路用鉄鋼スラグ」に規定されるCS-40の粒度範囲に調整した。この破砕物を、道路用路盤材として使用したところ、CS-40または天然石を使用した路盤材と同等の耐久性および施工性が認められた。