(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128414
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】カバー装置およびスプリンクラーヘッド
(51)【国際特許分類】
A62C 37/12 20060101AFI20240913BHJP
【FI】
A62C37/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037378
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青山 脩
【テーマコード(参考)】
2E189
【Fターム(参考)】
2E189CC09
2E189CD01
(57)【要約】
【課題】火災が生じた際には、早期に消火することが重要である。そのためには、スプリンクラーヘッド本体を覆うカバー部が早期に除去されて、スプリンクラーヘッド本体が早い段階で室内に向けて露出することが望ましい。本発明は、火災が生じた際に、早期にカバー部が除去される、カバー装置およびスプリンクラーヘッドを提供することを課題とする。
【解決手段】本発明のカバー装置は、スプリンクラーヘッド本体を覆うカバー部を有したカバー装置であって、火災の熱気流により前記スプリンクラーヘッド本体から前記カバー部が離脱し、前記カバー部の外表面に複数の吸熱凹凸を有している、ことを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スプリンクラーヘッド本体を覆うカバー部を有したカバー装置であって、
火災の熱気流により前記スプリンクラーヘッド本体から前記カバー部が離脱し、
前記カバー部の外表面に複数の吸熱凹凸を有している、
ことを特徴とするカバー装置。
【請求項2】
前記吸熱凹凸は、前記カバー部の外表面の中心領域に設けられていない、
ことを特徴とする請求項1に記載されたカバー装置。
【請求項3】
前記スプリンクラーヘッド本体を、請求項1または2に記載された前記カバー装置で覆った、
ことを特徴とするスプリンクラーヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天井等に設置されるスプリンクラーヘッドのカバー装置およびスプリンクラーヘッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
スプリンクラーは、天井等にスプリンクラーヘッドを設置して、室内に消火水を散布する。スプリンクラーヘッド本体は、熱を収集する複数枚の板状のヒートコレクターなどの構造が露出するなどしており、室内の天井等に設置した際にデザインの観点等から隠したい場合がある。そのような場合には、スプリンクラーヘッド本体にカバーを被せることにより、このようなスプリンクラーヘッド本体を見えなくすることができる。また、カバーによって、スプリンクラーヘッド本体に外的衝撃が加わって散水してしまうことを抑止できる。
【0003】
特許文献1には、ヒートコレクターがカバープレートにより隠されたスプリンクラーヘッドが記載されている。特許文献1のスプリンクラーヘッドでは、火災が発生するとカバープレートが熱を吸収して低融点合金が融解し、カバープレートが落下する。カバープレートが落下することにより、ヒートコレクターが露出する。そして、露出したヒートコレクターが吸収した熱により、スプリンクラーヘッド本体の感熱分解部が分解・落下すると、弁体が開いて消火水を散布する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
火災が生じた際には、早期に消火することが重要である。そのためには、スプリンクラーヘッド本体を覆うカバー部が早期に除去されて、スプリンクラーヘッド本体が早い段階で室内に向けて露出することが望ましい。本発明は、火災が生じた際に、早期にカバー部が除去される、カバー装置およびスプリンクラーヘッドを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態におけるカバー装置は、スプリンクラーヘッド本体を覆うカバー部を有したカバー装置であって、火災の熱気流により前記スプリンクラーヘッド本体から前記カバー部が離脱し、前記カバー部の外表面に複数の吸熱凹凸を有している、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、カバー部からの火災時の熱気流の剥離が少なくなると共に、熱を吸収するカバー部の受熱面積が大きくなり、火災の熱をカバー部が効果的に吸収して、カバー部を高感度で離脱させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】スプリンクラーヘッド本体にカバー装置を取り付ける直前を示す側面図。
【
図2】天井に設置したスプリンクラーヘッドの側面図。
【
図3】スプリンクラーヘッドからカバー部が離脱した際の側面図。
【
図5】本発明の実施形態のカバー部における気流を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態におけるスプリンクラーヘッドは、スプリンクラーヘッド本体1とカバー装置2を有する。カバー装置2はスプリンクラーヘッド本体1に取り付けられる。
図1に、スプリンクラーヘッド本体1にカバー装置2を取り付ける直前を示す側面図を示す。
図1では、天井板Cのみ断面で記載している。
図1において、スプリンクラーヘッド本体1は、天井板Cに開けた略円形の穴Hから室内を臨む形で設置されている。スプリンクラーヘッド本体1は、消火水を供給する給水配管3に固定されており、給水配管3が天井裏に固定されている。実施形態において、消火水は水道水を使用する。火災の熱を感知するスプリンクラーヘッド本体1のヒートコレクター11は、天井板Cよりも下方に突出して設置される。ヒートコレクター11により、火災による熱気流から熱を吸収する。ヒートコレクター11の中心には半田12が設けられている。ヒートコレクター11を介して半田12が加熱されると、半田12が融解してスプリンクラーヘッド本体1の先端が落下する。そして、消火水の散水が行われる。また、
図1に示すように、スプリンクラーヘッド本体1の一部はネジ状部13となっている。
【0010】
図1のスプリンクラーヘッド本体1の下方には、実施形態における取り付け前のカバー装置2を図示している。カバー装置2では、装置ベース21の下方にカバー部22が取り付けられている。また、装置ベース21の上方からは、導線23が延びている。装置ベース21は、円筒状の取付部211の下方に環状に拡がるフランジ212が設けられている。
【0011】
また、カバー部22の外表面には複数の窪みが設けられている。これらの窪みは、吸熱のために設けられた吸熱凹凸221である。複数の吸熱凹凸221は、カバー部22の外表面の全体にわたって設けられている。ただし、カバー部22の外表面の中心領域CAの内側は、後述する半田25で固定しているため、中心領域CAには吸熱凹凸221は設けられていない。カバー部22は、熱伝達性が高い金属製のプレートを湾曲させたものであり、周囲の全体に窪みを有したボウル状に形成されている。
【0012】
上記のカバー装置2を、スプリンクラーヘッド本体1に取り付けることにより、スプリンクラーヘッドが形成される。カバー装置2を取り付ける際には、
図1に示した導線23を天井板Cの上方から導出した配線に繋いだ後に穴Hから天井板Cの上側に押し込む。そして、カバー装置2の筒状の取付部211も穴Hから差し入れて、取付部211の内側にスプリンクラーヘッド本体1を嵌める。スプリンクラーヘッド本体1の外周の一部はネジ状部13となっており、取付部211の内側は、スプリンクラーヘッド本体1の外周に取り付けた際に落下しない構造となっている。そして、カバー装置2を上方に押し込んだ後にカバー装置2を回転して微調整し、天井板Cの下面とフランジ212の上面の隙間をなくして取り付けを行う。このようにして、スプリンクラーヘッド本体1は室内側からカバー装置2に覆われ、ヒートコレクター11は、カバー部22により覆われる。
【0013】
図2に天井に設置したスプリンクラーヘッドの側面図を示す。スプリンクラーヘッド本体1へカバー装置2を取り付けて、スプリンクラーヘッドの天井への取り付けが終了した状態である。
図2においても、天井板Cのみ断面で記載している。カバー装置2は、筒状の取付部211の内側にスプリンクラーヘッド本体1を保持しており、スプリンクラーヘッド本体1は、天井裏に固定された給水配管3に繋がっているため、スプリンクラーヘッドは落下せずに保持される。スプリンクラーヘッド本体1と天井板Cの穴Hはカバー装置2により覆われている。天井板Cの下方の室内から見て、カバー装置2は、環状のフランジ212とその内側で下方に突出したカバー部22のみが見えている。スプリンクラーヘッド本体1はカバー装置2に覆われており、見えない。
【0014】
火災が生じると、
図2に矢印で示すように、熱気流HFが上昇して天井板Cの下面に達し、側方へ流れる。そして、熱気流HFはカバー部22の外側を通過する。カバー部22は熱伝達性が高い物質で形成されていており、実施形態では、湾曲した金属製のプレートで形成されている。また、カバー部22には、複数の吸熱凹凸221が設けられている。そのため、カバー部22は吸熱率が高い。カバー部22は、熱気流HFの熱を吸収しやすく、容易に温度が上昇する。
【0015】
カバー部22の中心領域CAの内側は、半田25によって後述する内カバー24に固定されている。そして、温度上昇により半田25が融解すると、カバー装置2の装置ベース21からカバー部22が離脱する。装置ベース21は、取付部211でスプリンクラーヘッド本体1に固定されていることから、この離脱により、スプリンクラーヘッド本体1からカバー部22が離脱する。
【0016】
図3に、スプリンクラーヘッド本体1からカバー部22が離脱した際の側面図を示す。内カバー24の下方の中心部分には半田25が設けられており、内カバー24とカバー部22の間には、スプリング26が設けられている。離脱前の状態では、内カバー24、半田25、スプリング26は、カバー部22の内側に収容されている。さらに離脱前の状態では、内カバー24は半田25によりカバー部22の内側に固定されており、この固定があることにより、内カバー24は図示しない機構により装置ベース21に固定されている。半田25による固定部は凹凸がない方が形成しやすいため、半田25で固定されるカバー部22の中心領域CAには吸熱凹凸221は形成されていない。
【0017】
火災の熱気流HFによるカバー部22の温度上昇により半田25が融解すると、重力とスプリング26の作用により内カバー24からカバー部22が離脱する。この離脱により図示しない機構により内カバー24も装置ベース21から離脱する。そして、
図3に示すように、天井板Cの下方にスプリンクラーヘッド本体1のヒートコレクター11が露出する。
【0018】
また、内カバー24が離脱すると、装置ベース21に設けたスイッチ213がオン状態になる。スイッチ213は導線23に繋がっている。導線23は配線(図示せず)を介して制御盤(図示せず)に接続している。そして、スイッチ213がオン状態になると、導線23と配線を介して制御盤に伝わったオン信号により、水道管に繋がる電動弁(図示せず)が開く。電動弁が開くことにより、給水配管3に消火水を供給する圧力が生じる。なお、本実施形態では、水道の圧力により散水するが、水道の圧力だけで基準の散水が確保できない場合にはポンプを使用してもよい。また、実施形態のシステムは、乾式スプリンクラー設備であるが、乾式に限らず、湿式であってもよい。
【0019】
カバー部22が離脱すると、スプリンクラーヘッド本体1のヒートコレクター11が室内に向けて露出する。そして、スイッチ213がオンになったことにより開いた電動弁によって、給水配管3へは消火水を供給する水道圧力が生じている。この状態で、火災の熱気流HFにより、スプリンクラーヘッド本体1のヒートコレクター11を介して半田12に十分な熱が伝わると、半田12が融解してスプリンクラーヘッド本体1の先端部分が離脱する。そして、スプリンクラーヘッド本体1から消火水が噴霧される。
【0020】
<吸熱凹凸の効果>
次に、吸熱凹凸により効果が生じる状況を模式的に示す。
図4に、従来のカバー部42における気流を示す図を示す。
図4(a)は側面図であり、
図4(b)は下面図である。側面図である
図4(a)では、天井板Cの下面に装置ベース41のフランジ412が密着し、その下にカバー部42が固定されている。
図4におけるカバー部42の中心領域CAは、カバー部42の内面に半田(図示せず)が設けられて内カバー(図示せず)に固定されている。従来のカバー部42はボウル状であるが、実施形態のカバー部22と異なり吸熱凹凸がない。
【0021】
図4に示すように左方から火災による熱気流HFが到達すると、カバー部42を避けて流れる。そして、カバー部42は、熱気流HFから熱を得て高温になり、内側の半田が融けることにより、実施形態の
図3で示したのと同様に装置ベース41から離脱する。
【0022】
熱気流HFがカバー部42に到達した際に、熱気流HFは、
図4の剥離点DPで剥離して剥離気流線DFの外側を流れる。剥離気流線DFの内側では多数の渦Vが生じる。剥離点DPは、カバー部42の表面に沿って連続的に形成されて剥離線DLとなる。
図4に示すように、従来例のカバー部42では、温度が高い熱気流HFが剥離線DLで剥離し、カバー部42の表面は
図4に示す剥離線DLの右側では熱気流HFから熱を得にくい。熱気流HFは剥離線DLに示すように早い段階で剥離してしまうため、カバー部42は熱気流HFから熱を得にくく、温度は上がりにくい。その結果、カバー部42の中心領域CAの内面に設けた半田の融解タイミングは遅くなり、カバー部42は遅いタイミングで離脱する。
【0023】
図5に、本発明の実施形態のカバー部22における気流を示す図を示す。
図5(a)は側面図であり、
図5(b)は下面図である。側面図である
図5(a)では、
図4(a)の従来例と同様に天井板Cの下面に装置ベース21のフランジ212が密着し、その下にカバー部22が固定されている。実施形態のカバー部22には、表面の全体に複数の吸熱凹凸221が設けられている。
図5(b)では、吸熱凹凸221の記載を省略し、吸熱凹凸221のある領域を斜線で示す。吸熱凹凸221は、中心領域CAには設けられていない。カバー部22における中心領域CAの内側は、半田25により内カバー24に固定されている。
【0024】
図5に示す様に左方から火災による熱気流HFが到達すると、カバー部22を避けて流れる。そして、カバー部22は、熱気流HFから熱を得て高温になり、内側の半田25が融けることにより、実施形態の
図3で示したように装置ベース21から離脱する。
【0025】
熱気流HFはカバー部22に到達した後にカバー部22の表面に沿って流れる。このとき、熱気流HFには、
図5に示すように吸熱凹凸221により小さい乱流Tが発生する。そのため、熱気流HFはカバー部22の表面から剥離しにくい。そして、熱気流HFは、
図5に示す剥離点DPで剥離して剥離気流線DFの外側を流れる。剥離気流線DFの内側では多数の渦Vが生じる。剥離点DPはカバー部42の表面に沿って連続的に形成されて剥離線DLとなっている。
【0026】
実施形態のカバー部22においても、
図4に示した従来のカバー部42と同様に温度が高い熱気流HFが剥離線DLで剥離してしまう。しかし、剥離線DLは従来のカバー部42よりも熱気流HFの下流に移動し、カバー部22からの熱気流HFの剥離が少なくなる。カバー部22の表面における剥離線DLの右側で示す熱気流HFから熱を得にくい領域の面積は小さくなって、熱を吸収するカバー部22の受熱面積が大きくなる。そして、カバー部22の表面はより広い範囲で熱気流HFから熱を得て、カバー部22は素早く温度が上昇する。その結果、カバー部22の中心領域CAの内面に設けた半田25は早期に融解し、カバー部22は早いタイミングで離脱する。このように、複数の吸熱凹凸を設けることによって、カバー部22は、火災の熱に対して高感度で離脱することができる。
【0027】
実施形態の吸熱凹凸221は球面状の窪みであるが、吸熱する凹凸であれば、吸熱凹凸は他の形状であってもよい。例えば、球面状の凸部や、溝状や線状に突出した突条であっても良い。また、これらが混ざった凹凸であってもよい。
【0028】
実施形態のスプリンクラーヘッド本体1はヒートコレクター11を有しており、カバー装置2の半田25による熱感知と2重の熱感知をしている。しかし、ヒートコレクターを有さないスプリンクラーヘッド本体であってもよい。この場合には、カバー部が離脱してスイッチ等により離脱を検知すると、水道に繋がる電動弁が開いたことによる消火水の圧力でそのままスプリンクラーヘッド本体から散水するようにするなどしてもよい。実施形態の半田12は感熱装置であるが、半田以外の感熱装置を用いてもよい。また、実施形態と異なる場所に感熱装置を設置してもよい。
【0029】
その他、具体的な構成は実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0030】
CA 中心領域、DP 剥離点、DL 剥離線、HF 熱気流、T 乱流、DF 剥離気流線、V 渦、
C 天井板、H 穴、
1 スプリンクラーヘッド本体、11 ヒートコレクター、12 半田、13 ネジ状部、
2 カバー装置、21 装置ベース、211 取付部、212 フランジ、213 スイッチ、22 カバー部、221 吸熱凹凸、23 導線、24 内カバー、25 半田、26 スプリング、
3 給水配管、
4 カバー装置、41 装置ベース、412 フランジ、42 カバー部