(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128418
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】ポンプおよび吐出装置
(51)【国際特許分類】
F04B 43/12 20060101AFI20240913BHJP
F04C 5/00 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
F04B43/12 A
F04B43/12 Z
F04C5/00 341F
F04C5/00 341Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037385
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】久保田 睦
【テーマコード(参考)】
3H077
【Fターム(参考)】
3H077CC04
3H077EE04
3H077FF15
3H077FF60
(57)【要約】
【課題】占有スペースの大型化および駆動制御の複雑化を抑えつつ脈動を低減できるポンプ、およびこのポンプを用いた吐出装置を提供する。
【解決手段】チューブ12は、液体が流入する流入端12a、および液体が流出する流出端12bを有する。ローラ13は、チューブ12の円弧部12cにおいてチューブ12を押し潰す。支持部材14およびモータ15は、チューブ12の流入端12a側から流出端12b側へ円弧部12cに沿ってローラ13を移動させることで、流入端12aから流出端12bへ液体を送液する。バイパス経路16は、チューブ12の流入端12aと流入端12a側における円弧部12cの端との間に一端16aが接続され、チューブ12の流出端12b側における円弧部12cの端と流出端12bとの間に他端16bが接続されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が流入する流入端および液体が流出する流出端を有するチューブと、
前記チューブの前記流入端と前記流出端との間の一部の区間において前記チューブを押し潰す押圧部と、
前記チューブの前記流入端側から前記流出端側へ前記一部の区間に沿って前記押圧部を移動させることで、前記流入端から前記流出端へ液体を送液する駆動部と、
前記チューブの前記流入端と前記流入端側における前記一部の区間の端との間に一端が接続され、前記チューブの前記流出端側における前記一部の区間の端と前記流出端との間に他端が接続されたバイパス経路と
を備えることを特徴とするポンプ。
【請求項2】
前記バイパス経路に配置され、前記一端から前記他端に向かう方向にのみ液体の流れを許容する逆止弁をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のポンプ。
【請求項3】
前記流入端と、前記チューブと前記バイパス経路の前記一端との接続地点との間において前記チューブに配置され、前記流入端から前記流出端に向かう方向にのみ液体の流れを許容する流入側逆止弁と、
前記チューブと前記バイパス経路の前記他端との接続地点と、前記流出端との間において前記チューブに配置され、前記流入端から前記流出端に向かう方向にのみ液体の流れを許容する流出側逆止弁とをさらに備え、
前記駆動部は、前記チューブの前記流出端側から前記流入端側へ前記一部の区間に沿って前記押圧部を移動させることで、前記チューブおよび前記バイパス経路において液体を循環させることを特徴とする請求項1に記載のポンプ。
【請求項4】
前記チューブおよび前記バイパス経路において循環する液体の温度調整を行う温度調整部をさらに備えることを特徴とする請求項3に記載のポンプ。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のポンプと、
前記ポンプにより送液された液体を吐出する吐出部と
を備えることを特徴とする吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプおよび吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体を吐出する吐出部へ液体を送液するためにチューブポンプを用いた吐出装置が知られている。
【0003】
チューブポンプは、その原理上、脈動が発生する。このため、チューブポンプを用いた吐出装置では、チューブポンプの脈動による吐出量のバラつきが生じる。
【0004】
これに関し、特許文献1には、2つのチューブポンプを、チューブを押圧するローラの位相を互いにずらして連結し、それぞれの脈動を打ち消し合うように各チューブポンプを駆動させることで、脈動の影響を低減する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術では、チューブポンプおよびその駆動回路が2セット分必要となるため、占有スペースの大型化および駆動制御の複雑化を招く。
【0007】
本発明は上記に鑑みてなされたもので、占有スペースの大型化および駆動制御の複雑化を抑えつつ脈動を低減できるポンプ、およびこのポンプを用いた吐出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、液体が流入する流入端および液体が流出する流出端を有するチューブと、前記チューブの前記流入端と前記流出端との間の一部の区間において前記チューブを押し潰す押圧部と、前記チューブの前記流入端側から前記流出端側へ前記一部の区間に沿って前記押圧部を移動させることで、前記流入端から前記流出端へ液体を送液する駆動部と、前記チューブの前記流入端と前記流入端側における前記一部の区間の端との間に一端が接続され、前記チューブの前記流出端側における前記一部の区間の端と前記流出端との間に他端が接続されたバイパス経路とを備えることを特徴とするポンプが提供される。
【0009】
本発明の他の態様によれば、上記本発明のポンプと、前記ポンプにより送液された液体を吐出する吐出部とを備えることを特徴とする吐出装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、占有スペースの大型化および駆動制御の複雑化を抑えつつ脈動を低減できるポンプ、およびこのポンプを用いた吐出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施の形態に係る吐出装置の概略構成図である。
【
図2】
図1に示す吐出装置のポンプの概略構成図である。
【
図3】
図2に示すポンプの逆止弁の概略構成図であり、(a)は、閉状態における図、(b)は、開状態における図である。
【
図4】(a)~(d)は、吐出部に液体を送液する際のポンプの動作の説明図である。
【
図5】(a)は、ローラがチューブを押し潰している状態の説明図である。(b)は、ローラがチューブから離れる際に負圧が発生することの説明図である。
【
図7】(a)~(d)は、ポンプにおいて液体を循環させる動作の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一もしくは同等の部位や構成要素には、同一もしくは同等の符号を付している。
【0013】
以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0014】
図1は、本発明の実施の形態に係る吐出装置の概略構成図である。
図2は、
図1に示す吐出装置のポンプの概略構成図である。
図3は、
図2に示すポンプの逆止弁の概略構成図であり、
図3(a)は、閉状態における図、
図3(b)は、開状態における図である。
【0015】
図1に示すように、本実施の形態に係る吐出装置1は、吐出部2と、液体貯蔵部3と、送液チューブ4A,4Bと、ポンプ5と、ワークテーブル6と、XYZステージ7と、制御部8とを備える。
【0016】
吐出部2は、ワークテーブル6に載置されたワーク9に接着剤等の液体を吐出する。
【0017】
液体貯蔵部3は、吐出部2が吐出する液体を貯蔵している。
【0018】
送液チューブ4Aは、液体貯蔵部3とポンプ5とを接続する。送液チューブ4Aの一端は液体貯蔵部3に接続され、他端は後述するポンプ5の継手18Aを介してチューブ12の流入端12aに接続されている。
【0019】
送液チューブ4Bは、ポンプ5と吐出部2とを接続する。送液チューブ4Bの一端は後述するポンプ5の継手18Bを介してチューブ12の流出端12bに接続され、他端は吐出部2に接続されている。
【0020】
ポンプ5は、液体貯蔵部3の液体を吐出部2へ送液する。ポンプ5は、チューブポンプからなる。
【0021】
ポンプ5は、フレーム11と、チューブ12と、4つのローラ(押圧部に相当)13と、支持部材14と、モータ15と、バイパス経路16と、逆止弁17A~17Cと、継手18A,18Bと、温度調整部19とを備える。
【0022】
フレーム11は、チューブ12、4つのローラ13、支持部材14、およびバイパス経路16を収容する。フレーム11は、その表面を掘り下げて形成された凹部11aを有し、凹部11aにチューブ12、4つのローラ13、支持部材14、およびバイパス経路16が収容されている。
【0023】
凹部11aは、平面視にて半円の円弧状の支持面11bを有する。支持面11bは、後述するチューブ12の円弧部(一部の区間に相当)12cを形成するためのものである。
【0024】
チューブ12は、ポンプ5が送液する液体の流路を形成する。チューブ12は、ゴム等からなり、可撓性を有する。チューブ12は、液体が流入する流入端12a、および液体が流出する流出端12bを有する。流入端12aは、継手18Aを介して送液チューブ4Aに接続されている。流出端12bは、継手18Bを介して送液チューブ4Bに接続されている。
【0025】
また、チューブ12は、流入端12aと流出端12bとの間の一部において、フレーム11の支持面11bに沿って半円の円弧状に配設された円弧部12cを有する。すなわち、チューブ12は、U字形状に配設されている。
【0026】
ローラ13は、チューブ12の円弧部12cにおいてチューブ12を押し潰す。
【0027】
支持部材14は、4つのローラ13を回転可能に支持する。支持部材14は、回転軸14aを中心に、
図2における反時計回り方向である正転方向、および時計回り方向である逆転方向に回転可能である。支持部材14は、回転軸14aを中心に周方向に90°間隔で配置された4本のアーム14bを有する。各アーム14bの先端にローラ13が配置されている。
【0028】
支持部材14が正転方向に回転することで、チューブ12の流入端12a側から流出端12b側へ円弧部12cに沿ってローラ13がチューブ12を押し潰しつつ移動する。これにより、チューブ12の流入端12aから流出端12bへ液体が送液される。また、支持部材14が逆転方向に回転することで、チューブ12の流出端12b側から流入端12a側へ円弧部12cに沿ってローラ13がチューブ12を押し潰しつつ移動する。これにより、後述するように、チューブ12およびバイパス経路16において液体が循環する。
【0029】
モータ15は、支持部材14を正転方向および逆転方向に回転させる。
【0030】
なお、支持部材14およびモータ15により、チューブ12の円弧部12cに沿ってローラ13を移動させる駆動部が構成される。
【0031】
バイパス経路16は、チューブ12の流入端12a近傍と流出端12b近傍との間の、円弧部12cを経由しない液体の流路を形成する。バイパス経路16の一端16aは、チューブ12の流入端12aと流入端12a側における円弧部12cの端との間に接続され、他端16bは、チューブ12の流出端12b側における円弧部12cの端と流出端12bとの間に接続されている。
【0032】
逆止弁17Aは、バイパス経路16に配置され、一端16aから他端16bに向かう方向にのみ液体の流れを許容し、逆流を防止する。
【0033】
逆止弁17B(流入側逆止弁に相当)は、流入端12aと、チューブ12とバイパス経路16の一端16aとの接続地点との間においてチューブ12に配置されている。逆止弁17Bは、流入端12aから流出端12bに向かう方向にのみ液体の流れを許容し、逆流を防止する。
【0034】
逆止弁17C(流出側逆止弁に相当)は、チューブ12とバイパス経路16の他端16bとの接続地点と、流出端12bとの間においてチューブ12に配置されている。逆止弁17Cは、流入端12aから流出端12bに向かう方向にのみ液体の流れを許容し、逆流を防止する。
【0035】
逆止弁17(17A~17C)は、
図3(a),(b)に示すように、弁筐体21と、弁座22と、弁体23と、バネ24とを備える。
【0036】
弁筐体21は、弁座22、弁体23、およびバネ24を収容している。弁筐体21は、弁筐体21内に液体を流入させる流入口21aと、弁筐体21から液体を流出させる流出口21bとを有する。
【0037】
逆止弁17Aの弁筐体21は、流入口21aおよび流出口21bを介してバイパス経路16に連通されている。逆止弁17Aの弁筐体21は、流入口21aがバイパス経路16の一端16a側、流出口21bがバイパス経路16の他端16b側に配置される向きで設置されている。
【0038】
逆止弁17B,17Cの弁筐体21は、流入口21aおよび流出口21bを介してチューブ12に連通されている。逆止弁17B,17Cの弁筐体21は、流入口21aがチューブ12の流入端12a側、流出口21bがチューブ12の流出端12b側に配置される向きで設置されている。
【0039】
弁座22は、弁体23が着座可能な部材である。弁座22は、着座した弁体23により閉じられる弁口22aを有する。
【0040】
弁体23は、弁口22aを開閉する部材である。弁体23は、弁筐体21内において弁座22より流出口21b側に配置されている。
【0041】
バネ24は、弁体23を弁座22に着座する方向に付勢する。
【0042】
逆止弁17は、
図3(a)に示す閉状態では、弁体23が弁座22に着座し、弁口22aを閉じている。この閉状態で流出口21bから液体が流入しても、弁体23が弁座22に着座した状態が維持され、流入口21a側へ液体は流れない。
【0043】
流入口21aから弁筐体21内に液体が流入すると、液体の流入圧で弁体23がバネ24の付勢力に抗して弁座22から離れる方向に移動し、弁口22aが開く。これにより、逆止弁17が
図3(b)に示す開状態となり、流入口21a側から流出口21b側へ液体が流れる。
【0044】
ここで、逆止弁17Aにおいては、後述するように、ローラ13がチューブ12から離れる際にチューブ12内に負圧が発生すると、弁体23が弁座22から離れて弁口22aが開く。逆止弁17Aのバネ24としては、上記の負圧により弁体23が弁座22から離れて弁口22aが開くことができるような弾性力を有するものが用いられている。
【0045】
継手18A,18Bは、それぞれ送液チューブ4A,4Bとチューブ12とを接続する。
【0046】
温度調整部19は、温度調整のための液体の循環中において、チューブ12およびバイパス経路16において循環する液体の温度調整を行う。温度調整部19は、加温装置および冷却装置(いずれも図示せず)を有する。本実施の形態では、温度調整部19は、チューブ12の円弧部12cの近傍に配置されている。
【0047】
ワークテーブル6は、液体の吐出対象物であるワーク9が載置されるテーブルである。ワークテーブル6は、後述するYステージ32に設置されている。
【0048】
XYZステージ7は、吐出部2とワークテーブル6上のワーク9とを、X方向、Y方向、およびZ方向に相対的に移動させる。XYZステージ7は、Xステージ31と、Yステージ32と、Zステージ33とを備える。
【0049】
Xステージ31は、Zステージ33を水平方向であるX方向に移動させる。Yステージ32は、ワークテーブル6をX方向に直交する水平方向であるY方向に移動させる。Zステージ33は、吐出部2を鉛直方向であるZ方向に移動させる。Zステージ33は、Xステージ31に設置されている。
【0050】
制御部8は、吐出装置1の各部の動作を制御する。制御部8は、CPU、RAM、ROM、ハードディスク等を備えて構成される。
【0051】
次に、吐出装置1における液体の吐出時の動作について説明する。
【0052】
吐出装置1において液体を吐出する際、制御部8は、吐出部2に液体を送液するようポンプ5を駆動させる。具体的には、制御部8は、支持部材14を正転方向に回転させる。
【0053】
これにより、チューブ12の流入端12a側から流出端12b側へ円弧部12cに沿ってローラ13がチューブ12を押し潰しつつ移動することで、チューブ12の流入端12aから流出端12bへ液体が送液される。この結果、液体貯蔵部3から吐出部2へ液体が送液される。
【0054】
そして、制御部8は、ワーク9に液体を吐出するよう吐出部2およびXYZステージ7を制御する。
【0055】
ここで、吐出部2に液体を送液する際のポンプ5の動作の詳細を説明する。
【0056】
上述のように、吐出部2に液体を送液する際、ポンプ5において、支持部材14が正転方向に回転する。これにより、
図4(a)~(d)に示すように、チューブ12の流入端12a側から流出端12b側へ円弧部12cに沿ってローラ13がチューブ12を押し潰しつつ移動することで、チューブ12の流入端12aから流出端12bへ液体が送液される。
【0057】
ここで、ローラ13がチューブ12を押し潰している状態では、
図5(a)に示すように、液体を送る方向に正圧が発生している。
【0058】
一方、ローラ13がチューブ12から離れる際には、
図5(b)に示すように、押し潰されていた状態から元の状態に戻るチューブ12の復元力により、液体を送る方向に対して負圧が発生する。
【0059】
すなわち、ローラ13が円弧部12cの流出端12b側の端を通過してチューブ12から離れる際に、当該ローラ13によるチューブ12の押圧が解除され始めると、
図4(c)に示すように、当該ローラ13の流出端12b側近傍において負圧が発生する。
【0060】
このように負圧が発生すると、バイパス経路16の逆止弁17Aが開き、
図4(d)に示すように、バイパス経路16の一端16aから他端16bに向かう方向に液体が流れる。そして、バイパス経路16の他端16bからチューブ12に液体が流入することで、ローラ13がチューブ12から離れる際に発生した負圧が緩和される。また、バイパス経路16の他端16bからチューブ12に流入した液体は、流出端12bから流出する。
【0061】
ここで、本実施の形態とは異なり、バイパス経路16がない構成では、上述の負圧の発生により、流出端12b側から負圧が発生した領域に液体が引き込まれることで、瞬間的に液体の流量が低下する。このため、
図6に示すように液体の流量が周期的に低下する脈動が発生する。
【0062】
これに対し、本実施の形態のポンプ5では、上述のように、バイパス経路16の他端16bからチューブ12に液体が流入することで、負圧が緩和されるとともに、流出端12bへ流れる液体が補充される。これにより、ローラ13がチューブ12から離れる際の負圧の発生による流量の低下が抑制されるので、脈動が低減する。
【0063】
このようにポンプ5における脈動が低減することにより、吐出部2による液体の吐出量のバラつきが低減する。
【0064】
また、本実施の形態とは異なり、バイパス経路16に逆止弁17Aが配置されていない構成では、液体を送液する動作中において、流入端12aと流出端12bとの圧力の瞬間的なバランスによっては、バイパス経路16の他端16bから一端16aへの液体の流れが生じる可能性がある。そして、このような液体の流れが生じることで、ポンプ5が送液する液体の流量が変動するおそれがある。
【0065】
これに対し、本実施の形態では、逆止弁17Aが設けられていることで、バイパス経路16の他端16bから一端16aへの液体の流れが防止されるので、上述のような流量の変動が抑えられる。
【0066】
次に、ポンプ5において液体を循環させる動作について説明する。
【0067】
ポンプ5における液体の循環は、例えば、チューブ12を洗浄する場合、吐出部2に送液する液体の温度調整を行う場合、および、液体の撹拌を行う場合に行われる。
【0068】
ポンプ5における液体の循環を行う際、制御部8は、支持部材14を逆転方向に回転させる。
【0069】
これにより、
図7(a)~(d)に示すように、チューブ12の流出端12b側から流入端12a側へ円弧部12cに沿ってローラ13がチューブ12を押し潰しつつ移動する。これにより、チューブ12の流出端12b側から流入端12a側へ液体が流れる。
【0070】
円弧部12cから流入端12aへ向かって流れる液体は、逆止弁17Bを通過できないため、バイパス経路16に一端16aから流入する。これにより、バイパス経路16の逆止弁17Aが開き、バイパス経路16の一端16aから他端16bに向かう方向に液体が流れる。バイパス経路16の他端16bからチューブ12に流入した液体は、逆止弁17Cにより流出端12b側への進行が妨げられるため、円弧部12c側へ流れる。
【0071】
これにより、
図7に示すように、チューブ12およびバイパス経路16において、
図7における時計回り方向に液体が循環する。
【0072】
ここで、チューブ12の洗浄のための液体の循環を行う場合には、循環させる液体として、洗浄液を用いる。チューブ12の洗浄は、例えば、ポンプ5が吐出部2に送液する液体として用いた接着剤等が固化してチューブ12が詰まらないように長期停止前等に行われる。
【0073】
チューブ12の洗浄のための液体の循環を行う場合、洗浄液を貯蔵した液体貯蔵部3を送液チューブ4Aに接続した状態で、制御部8は、支持部材14を正転方向に回転させることで、チューブ12に洗浄液を導入する。
【0074】
次いで、制御部8は、支持部材14を所定時間、逆転方向に回転させる。これにより、チューブ12およびバイパス経路16において洗浄液が循環することで、チューブ12が洗浄される。この後、支持部材14を再び正転方向に回転させることで、洗浄液はポンプ5から排出される。
【0075】
温度調整のための液体の循環を行う場合には、制御部8は、支持部材14を逆転方向に回転させてチューブ12およびバイパス経路16において液体を循環させつつ、温度調整部19を駆動させる。
【0076】
制御部8は、図示しない温度検出部により循環する液体の温度を検出し、液体の温度が目標の温度に到達すると、支持部材14の回転を停止させる。そして、制御部8は、支持部材14を正転方向に回転させることで、温度調整した液体を吐出部2に送液する。
【0077】
上述のように液体を循環させつつ温度調整を行うことで、温度調整部19がチューブ12の一部のみを加熱および冷却するものであっても、チューブ12およびバイパス経路16における循環経路全体の液体の温度調整を行うことができる。
【0078】
撹拌のための液体の循環は、例えば、ポンプ5が吐出部2に送液する液体として、顔料やフィラー等の成分の沈降が生じるおそれがある液体を用いている場合に行われる。
【0079】
この場合において、吐出部2への液体の送液を開始する際に、ポンプ5が停止している期間が所定期間以上である場合、制御部8は、支持部材14を所定時間、逆転方向に回転させる。これにより、チューブ12およびバイパス経路16において液体が循環することで、液体の成分の沈降が生じていた場合でも、それが解消される。そして、制御部8は、支持部材14を正転方向に回転させることで、液体を吐出部2に送液する。
【0080】
以上説明したように、吐出装置1のポンプ5は、チューブ12の流入端12aと流入端12a側における円弧部12cの端との間に一端16aが接続され、チューブ12の流出端12b側における円弧部12cの端と流出端12bとの間に他端16bが接続されたバイパス経路16を備える。このため、支持部材14が正転方向に回転して吐出部2へ液体を送液する動作において、ローラ13がチューブ12から離れる際にチューブ12内に負圧が発生するのに対し、バイパス経路16の他端16bからチューブ12に液体が流入することで、負圧が緩和されるとともに、流出端12bへ流れる液体が補充される。これにより、ローラ13がチューブ12から離れる際の負圧の発生による流量の低下を抑制でき、ポンプ5の脈動を低減できる。
【0081】
また、バイパス経路16を設けても、ポンプ5の占有スペースの大型化は抑えられる。また、吐出部2へ液体を送液するための支持部材14を回転させる制御以外の制御は不要であるため、駆動制御の複雑化は抑えられる。
【0082】
したがって、ポンプ5によれば、占有スペースの大型化および駆動制御の複雑化を抑えつつ脈動を低減できる。
【0083】
また、ポンプ5における脈動が低減することにより、吐出装置1における液体の吐出量のバラつきを低減できる。
【0084】
また、ポンプ5では、バイパス経路16に逆止弁17Aが配置されているので、バイパス経路16の他端16bから一端16aへの液体の流れが防止される。このため、バイパス経路16の他端16bから一端16aへの液体の流れが生じることでポンプ5が送液する液体の流量が変動することを抑えることができる。
【0085】
また、ポンプ5は、流入端12aと、チューブ12とバイパス経路16の一端16aとの接続地点との間においてチューブ12に配置され、流入端12aから流出端12bに向かう方向にのみ液体の流れを許容する逆止弁17Bと、チューブ12とバイパス経路16の他端16bとの接続地点と、流出端12bとの間においてチューブ12に配置され、流入端12aから流出端12bに向かう方向にのみ液体の流れを許容する逆止弁17Cとを備える。そして、支持部材14が反転方向に回転してチューブ12の流出端12b側から流入端12a側へ円弧部12cに沿ってローラ13を移動させることで、チューブ12およびバイパス経路16において液体を循環させる。これにより、チューブ12の洗浄や液体の撹拌を行うことが可能となる。
【0086】
また、ポンプ5は、温度調整部19を備えるので、チューブ12およびバイパス経路16において液体を循環させつつ、温度調整部19を駆動させることで、液体の温度調整が可能である。
【0087】
なお、逆止弁17Aを省略してもよい。また、支持部材14を反転方向に回転させてチューブ12およびバイパス経路16において液体を循環させる動作は行わない場合には、逆止弁17B,17Cも省略してもよい。
【0088】
また、上述した実施の形態では、ポンプ5が4つのローラ13を備える構成を示したが、ローラ13の数はこれに限らない。
【0089】
また、上述した実施の形態では、ポンプ5のローラ13がチューブ12の円弧部12cを押し潰す構成を示したが、これに限らず、チューブの流入端と流出端との間の一部の区間において押圧部がチューブを押し潰すものであればよい。
【0090】
また、上述した実施の形態では、バネ24により弁座22に付勢された弁体23が弁口22aを開閉する逆止弁17を用いたが、他の構造の逆止弁を用いてもよい。
【0091】
本発明は上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【0092】
[付記]
本出願は、以下の発明を開示する。
【0093】
(付記1)
液体が流入する流入端および液体が流出する流出端を有するチューブと、
前記チューブの前記流入端と前記流出端との間の一部の区間において前記チューブを押し潰す押圧部と、
前記チューブの前記流入端側から前記流出端側へ前記一部の区間に沿って前記押圧部を移動させることで、前記流入端から前記流出端へ液体を送液する駆動部と、
前記チューブの前記流入端と前記流入端側における前記一部の区間の端との間に一端が接続され、前記チューブの前記流出端側における前記一部の区間の端と前記流出端との間に他端が接続されたバイパス経路と
を備えることを特徴とするポンプ。
【0094】
(付記2)
前記バイパス経路に配置され、前記一端から前記他端に向かう方向にのみ液体の流れを許容する逆止弁をさらに備えることを特徴とする付記1に記載のポンプ。
【0095】
(付記3)
前記流入端と、前記チューブと前記バイパス経路の前記一端との接続地点との間において前記チューブに配置され、前記流入端から前記流出端に向かう方向にのみ液体の流れを許容する流入側逆止弁と、
前記チューブと前記バイパス経路の前記他端との接続地点と、前記流出端との間において前記チューブに配置され、前記流入端から前記流出端に向かう方向にのみ液体の流れを許容する流出側逆止弁とをさらに備え、
前記駆動部は、前記チューブの前記流出端側から前記流入端側へ前記一部の区間に沿って前記押圧部を移動させることで、前記チューブおよび前記バイパス経路において液体を循環させることを特徴とする付記1または2に記載のポンプ。
【0096】
(付記4)
前記チューブおよび前記バイパス経路において循環する液体の温度調整を行う温度調整部をさらに備えることを特徴とする付記3に記載のポンプ。
【0097】
(付記5)
付記1乃至4のいずれかに記載のポンプと、
前記ポンプにより送液された液体を吐出する吐出部と
を備えることを特徴とする吐出装置。
【符号の説明】
【0098】
1 吐出装置
2 吐出部
3 液体貯蔵部
4A,4B 送液チューブ
5 ポンプ
6 ワークテーブル
7 XYZステージ
8 制御部
11 フレーム
11a 凹部
11b 支持面
12 チューブ
12a 流入端
12b 流出端
12c 円弧部
13 ローラ
14 支持部材
14a 回転軸
14b アーム
15 モータ
16 バイパス経路
16a 一端
16b 他端
17,17A~17C 逆止弁
18A,18B 継手
19 温度調整部