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  • 特開-流体継手 図1
  • 特開-流体継手 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128426
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】流体継手
(51)【国際特許分類】
   F16H 41/24 20060101AFI20240913BHJP
【FI】
F16H41/24 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037398
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000149033
【氏名又は名称】株式会社エクセディ
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】岸原 啓介
(72)【発明者】
【氏名】松田 哲
(72)【発明者】
【氏名】山田 剛史
(57)【要約】
【課題】カバーの入隅部におけるクラックの発生を抑制する。
【解決手段】カバーは、入隅部、第1フィレット面、及び第2フィレット面を有する。入隅部は、円板部と円筒部とによって構成される。入隅部は、周方向に延びる。第1フィレット面は、入隅部において周方向に延びる。第2フィレット面は、入隅部において第1フィレット面に対して径方向外側に配置される。第2フィレット面は、第1フィレット面に沿って周方向に延びる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円板部、及び前記円板部の外周端部から軸方向に延びる円筒部、を有するカバーと、
前記円筒部に固定されるインペラと、
前記インペラと対向して配置されるタービンと、
を備え、
前記カバーは、
前記円板部と前記円筒部とによって構成され、周方向に延びる入隅部と、
前記入隅部において周方向に延びる第1フィレット面と、
前記入隅部において前記第1フィレット面に対して径方向外側に配置され前記第1フィレット面に沿って周方向に延びる第2フィレット面と、
を有する、
流体継手。
【請求項2】
前記第2フィレット面は、前記円筒部の内周面に対して径方向外側に配置される、
請求項1に記載の流体継手。
【請求項3】
回転軸を含む切断面において、前記第1フィレット面と前記第2フィレット面とは、前記第1フィレット面と前記第2フィレット面との共通接線によって連結されている、
請求項1に記載の流体継手。
【請求項4】
前記カバーは、前記第1フィレット面と前記第2フィレット面とを連結する円錐台面を有する、
請求項1に記載の流体継手。
【請求項5】
前記第1フィレット面の曲率半径は、前記第2フィレット面の曲率半径と略同じである、
請求項1に記載の流体継手。
【請求項6】
前記カバーと前記タービンとの間において軸方向に移動可能に配置されるロックアップピストンをさらに備え、
前記第1フィレット面及び前記第2フィレット面は、前記ロックアップピストンと対向する、
請求項1に記載の流体継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体継手に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トルクコンバータなどの流体継手は、カバー、インペラ、タービンを有している(例えば、特許文献1参照)。カバーは、円板部及び円筒部を有している。円筒部は、円板部の外周端部から軸方向に延びている。トルクコンバータ内には、インペラとタービンとの間でトルク伝達するための作動油が充填されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2023-016754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
トルクコンバータが回転すると、円板部と円筒部との交差部に形成される入隅部に作動油による内圧が集中し、入隅部にクラックが生じるおそれがある。
【0005】
本発明の課題は、カバーの入隅部におけるクラックの発生を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1態様に係る流体継手は、カバー、インペラ、及びタービンを備える。カバーは、円板部及び円筒部を有する。円筒部は、円板部の外周端部から軸方向に延びる。インペラは、円筒部に固定される。タービンは、インペラと対向して配置される。カバーは、入隅部、第1フィレット面、及び第2フィレット面を有する。入隅部は、円板部と円筒部とによって構成される。入隅部は、周方向に延びる。第1フィレット面は、入隅部において周方向に延びる。第2フィレット面は、入隅部において第1フィレット面に対して径方向外側に配置される。第2フィレット面は、第1フィレット面に沿って周方向に延びる。
【0007】
この構成によれば、入隅部に、第1フィレット面及び第2フィレット面の2つのフィレット面を形成しているため、入隅部に作用する内圧を、第1フィレット面と第2フィレット面とのそれぞれに分散させることができる。この結果、カバーの入隅部におけるクラックの発生を抑制することができる。
【0008】
第2態様に係る流体継手は、第1態様に係る流体継手において、次のように構成される。第2フィレット面は、円筒部の内周面に対して径方向外側に配置される。
【0009】
第3態様に係る流体継手は、第1又は第2態様に係る流体継手において、次のように構成される。回転軸を含む切断面において、第1フィレット面と第2フィレット面とは、第1フィレット面と第2フィレット面との共通接線によって連結されている。
【0010】
第4態様に係る流体継手は、第1から第3態様のいずれかに係る流体継手において、次のように構成される。カバーは、第1フィレット面と第2フィレット面とを連結する円錐台面を有する。
【0011】
第5態様に係る流体継手は、第1から第4態様のいずれかに係る流体継手において、次のように構成される。第1フィレット面の曲率半径は、第2フィレット面の曲率半径と略同じである。
【0012】
第6態様に係る流体継手は、第1から第5態様のいずれかに係る流体継手において、ロックアップピストンをさらに備える。ロックアップピストンは、カバーとタービンとの間において軸方向に移動可能に配置される。第1フィレット面及び第2フィレット面は、ロックアップピストンと対向する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、カバーの入隅部におけるクラックの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】トルクコンバータの断面図。
図2図1の拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[全体構成]
図1は、本実施形態に係るトルクコンバータ100(流体継手の一例)の断面図である。詳細には、図1は、回転軸Oを含むトルクコンバータ100の切断面を示す断面図である。以下の説明において、「軸方向」とは、トルクコンバータ100の回転軸Oが延びる方向を意味する。また、「径方向」とは、回転軸Oを中心とした円の径方向を意味し、「周方向」とは、回転軸Oを中心とした円の周方向を意味する。なお、図示していないが、図1の左側にはエンジンが配置されており、図1の右側にはトランスミッションが配置されている。
【0016】
トルクコンバータ100は、回転軸Oを中心に回転可能である。トルクコンバータ100は、カバー2、インペラ3、タービン4、ステータ5、出力ハブ6、ロックアップピストン7、及びダンパ装置8を備えている。カバー2とインペラ3とによって、トルクコンバータ100の外殻が構成されている。トルクコンバータ100内には作動油が充填されている。
【0017】
[カバー]
カバー2は、エンジンからのトルクが入力される。カバー2は、第1円板部21と、第1円筒部22とを有している。第1円筒部22は、第1円板部21の外周端部から軸方向に延びている。詳細には、第1円筒部22は、第1円板部21からインペラ3に向かって軸方向に延びている。すなわち、第1円筒部22は、軸方向第1側に延びている。
【0018】
図2図1の拡大図である。なお、図2では、カバー2のみを示している。図2に示すように、カバー2は、入隅部23、第1フィレット面24、及び第2フィレット面25を有している。入隅部23は、第1円板部21と第1円筒部22とによって構成されている。すなわち、入隅部23は、第1円板部21と第1円筒部22との交差領域に配置されている。入隅部23は、環状であって、周方向に延びている。
【0019】
第1フィレット面24は、入隅部23に配置されている。第1フィレット面24は、環状であって、周方向に延びている。第1フィレット面24は、図2に示すような断面図において、円弧状である。第1フィレット面24は、径方向内側を向くとともに、軸方向第1側を向いている。
【0020】
第2フィレット面25は、入隅部23に配置されている。第2フィレット面25は、環状であって、周方向に延びている。第2フィレット面25は、図2に示すような断面図において、円弧状である。第2フィレット面25は、径方向内側を向くとともに、軸方向第1側を向いている。
【0021】
第2フィレット面25は、第1フィレット面24に対して径方向外側に配置されている。第2フィレット面25は、第1フィレット面24に沿って延びている。また、第2フィレット面25は、第1フィレット面24と間隔をあけて配置されている。
【0022】
第2フィレット面25は、第1円筒部22の内周面221に対して径方向外側に配置されている。なお、第2フィレット面25の一部は、第1円筒部22の内周面221に対して径方向内側に配置されていてもよい。
【0023】
カバー2は、第1フィレット面24と第2フィレット面25との間に円錐台面26を有している。回転軸Oを含む切断面において、すなわち、図2に示すような切断面において、第1フィレット面24と第2フィレット面25とは、第1フィレット面24と第2フィレット面25との共通接線によって連結されている。円錐台面26は、切断面において、第1フィレット面24と第2フィレット面25との共通接線を構成している。円錐台面26は、円錐台の側面である。円錐台面26の径は、軸方向第1側に向かって徐々に大きくなる。
【0024】
第1フィレット面24の曲率半径は、第2フィレット面25の曲率半径と、略同じである。例えば、第1フィレット面24の曲率半径と第2フィレット面25の曲率半径の差は、1mm以下程度であり、好ましくは、0.5mm以下である。
【0025】
また、切断面における第1フィレット面24の円弧長さと、第2フィレット面25の円弧長さは、略同じである。例えば、第1フィレット面24の円弧長さと、第2フィレット面25の円弧長さとの差は、1mm以下程度であり、好ましくは、0.5mm以下である。
【0026】
第1フィレット面24及び第2フィレット面25は、ロックアップピストン7と対向している。詳細には、第1フィレット面24及び第2フィレット面25は、後述するロックアップピストン7の外隅部73と対向している。
【0027】
[インペラ]
図1に示すように、インペラ3は、カバー2に固定されている。詳細には、インペラ3は、カバー2の第1円筒部22に固定されている。インペラ3は、インペラシェル31、複数のインペラブレード32、及びインペラハブ33を有する。インペラシェル31は、例えば溶接によって、カバー2に固定されている。
【0028】
インペラブレード32はインペラシェル31の内側面に固定されている。インペラハブ33はインペラシェル31の内周端部に溶接などによって固定されている。
【0029】
[タービン]
タービン4は、インペラ3に対向して配置されている。タービン4は、タービンシェル41、及び複数のタービンブレード42を有している。タービンブレード42は、タービンシェル41の内側面に、ろう付けなどによって固定されている。
【0030】
[ステータ]
ステータ5は、タービン4からインペラ3へと戻る作動油を整流するように構成されている。ステータ5は、回転軸O周りに回転可能である。詳細には、ステータ5は、回転不能の固定シャフト(図示省略)に、ワンウェイクラッチ102を介して支持されている。このステータ5は、インペラ3とタービン4との間に配置される。
【0031】
ステータ5は、円板状のステータキャリア51と、その外周面に取り付けられる複数のステータブレード52と、を有している。なお、ステータ5とインペラ3との間には第1スラストベアリング103が配置され、ステータ5と出力ハブ6との間には第2スラストベアリング104が配置されている。
【0032】
[出力ハブ]
出力ハブ6は、タービン4から伝達されたトルクを、トランスミッションの入力シャフト(図示省略)へ出力するように構成されている。タービン4は、この出力ハブ6に取り付けられている。詳細には、タービンシェル41がリベットなどを介して出力ハブ6に取り付けられている。出力ハブ6はスプライン孔611が形成されている。このスプライン孔611に、入力シャフトがスプライン嵌合する。
【0033】
出力ハブ6は、ボス部61とフランジ部62とを有している。ボス部61は、円筒状であり、軸方向に延びている。ボス部61は、スプライン孔611を有している。フランジ部62は、ボス部61の外周面から径方向外側に延びている。フランジ部62は、円環状であり、周方向に延びている。タービンシェル41は、このフランジ部62に取り付けられている。
【0034】
[ロックアップピストン]
ロックアップピストン7は、カバー2とタービン4との間において軸方向に移動可能に配置されている。詳細には、ロックアップピストン7は、出力ハブ6上を軸方向に摺動可能に配置されている。より詳細には、ロックアップピストン7は、出力ハブ6のボス部61の外周面上を軸方向に摺動可能に配置されている。また、ロックアップピストン7は、出力ハブ6と相対回転可能である。
【0035】
ロックアップピストン7は、カバー2と摩擦係合するように構成されている。詳細には、ロックアップピストン7は、外周端部において、カバー2と摩擦係合するように構成されている。ロックアップピストン7が左側に移動することによって、ロックアップピストン7はカバー2と摩擦係合する。ロックアップピストン7は、第2円板部71、第2円筒部72、及び出隅部73を有している。
【0036】
第2円板部71の外周端部には摩擦材9が固定されている。第2円板部71は、摩擦材9を介してカバー2の第1円板部21を押圧するように構成されている。このように第2円板部71が摩擦材9を介してカバー2を押圧することによって、ロックアップピストン7がカバー2に摩擦係合する。なお、摩擦材9は、ロックアップピストン7ではなくカバー2に固定されていてもよい。摩擦材9は、環状である。
【0037】
第2円筒部72は、第2円板部71の外周端部から軸方向に延びている。第2円筒部72は、カバー2から遠ざかる方向に延びている。すなわち、第2円筒部72は、軸方向第1側に延びている。第2円筒部72の外周面は、カバー2の第1円筒部22の内周面と間隔をあけて配置されている。
【0038】
出隅部73は、第2円板部71と第2円筒部72とによって構成されている。すなわち、出隅部73は、第2円板部71と第2円筒部72との交差領域に配置されている。出隅部73は、環状であって、周方向に延びている。出隅部73は、入隅部23と対向している。出隅部73は、C面取り加工されている。
【0039】
[ダンパ装置]
ダンパ装置8は、軸方向においてロックアップピストン7とタービン4との間に配置されている。ダンパ装置8は、入力側においてロックアップピストン7と連結している。また、ダンパ装置8は、出力側において出力ハブ6と連結している。ダンパ装置8は、ロックアップピストン7から出力ハブ6にトルクを伝達するように構成されている。ダンパ装置8は、ロックアップピストン7と出力ハブ6とを弾性的に連結している。詳細には、ダンパ装置8は、コイルスプリング81を有しており、コイルスプリング81を介して、ロックアップピストン7と出力ハブ6とを連結している。
【0040】
[動作]
次に、上述したように構成されたトルクコンバータ100の動作について、説明する。作動油を介してインペラ3からタービン4にトルクを伝達するトルクコンバータ作動領域では、ロックアップピストン7は軸方向においてカバー2から離れる側に移動しており、カバー2と摩擦係合していない。すなわち、ロックアップピストン7は、トルクを伝達していない。
【0041】
次に、トルクコンバータ100の回転速度が所定値以上となると、ロックアップピストン7がカバー2側に移動し、ロックアップピストン7とカバー2とが摩擦係合する。この結果、カバー2からのトルクは、ロックアップピストン7及びダンパ装置8を介して出力ハブ6に伝達される。
【0042】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0043】
(a)上記実施形態では、第1フィレット面24の曲率半径は、第2フィレット面25の曲率半径と略同じであったが、第2フィレット面25の曲率半径と異なっていてもよい。また、第1フィレット面24の円弧長さは、第2フィレット面25の円弧長さと異なっていてもよい。
【0044】
(b)上記実施形態では、流体継手としてトルクコンバータ100を例示したが、流体継手はトルクコンバータではなくてもよい。すなわち、流体継手は、ステータ5を有していなくてもよい。また、流体継手は、ロックアップピストン7、又はダンパ装置8を有していなくてもよい。
【0045】
(c)第1フィレット面24と第2フィレット面25とは、直接連結されていてもよい。すなわち、カバー2は、円錐台面26を有していなくてもよい。
【符号の説明】
【0046】
2 :カバー
21 :第1円板部
22 :第1円筒部
23 :入隅部
24 :第1フィレット面
25 :第2フィレット面
26 :円錐台面
3 :インペラ
4 :タービン
7 :ロックアップピストン
図1
図2