(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024012843
(43)【公開日】2024-01-31
(54)【発明の名称】包装材及び包装袋
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20240124BHJP
C09D 133/04 20060101ALI20240124BHJP
C09D 123/08 20060101ALI20240124BHJP
C09D 179/04 20060101ALI20240124BHJP
C09D 101/08 20060101ALI20240124BHJP
C09D 101/06 20060101ALI20240124BHJP
C09D 129/04 20060101ALI20240124BHJP
B32B 27/10 20060101ALI20240124BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
B32B27/00 H
C09D133/04
C09D123/08
C09D179/04
C09D101/08
C09D101/06
C09D129/04
B32B27/10
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022114600
(22)【出願日】2022-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(72)【発明者】
【氏名】和泉 敦
(72)【発明者】
【氏名】佐井 哲哉
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
4J038
【Fターム(参考)】
3E086AD01
3E086BA04
3E086BB05
3E086BB51
3E086CA01
3E086CA28
3E086DA06
4F100AA19C
4F100AA20C
4F100AB10C
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4F100AJ06A
4F100AK04D
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4F100AK21C
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4F100AK69J
4F100AT00
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4F100DG10B
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4F100EH66C
4F100GB15
4F100JD01
4F100JD03
4F100JL123
4F100JL12D
4F100JL16
4F100JN02
4J038BA021
4J038CB051
4J038CC012
4J038CE021
4J038CE031
4J038CG141
4J038DH001
4J038NA27
4J038PB04
4J038PC08
(57)【要約】
【課題】本発明は、ヒートシール性、リサイクル性、耐ブロッキング性、及び酸素バリア性に優れた包装材を提供することを目的とする。
【解決手段】ヒートシール層、バリア層、紙基材、及び表面保護層を有する包装材であって、前記ヒートシール層が、アクリル樹脂及び/又はエチレン-酢酸ビニル共重合樹脂を含み、かつ、前記ヒートシール層の塗工量が、1~18g/m2であり、前記表面保護層が、セルロース系樹脂(a)を含む、包装材。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒートシール層、バリア層、紙基材、及び表面保護層を有する包装材であって、
前記ヒートシール層が、アクリル樹脂及び/又はエチレン-酢酸ビニル共重合樹脂を含み、かつ、前記ヒートシール層の塗工量が、1~18g/m2であり、
前記表面保護層が、セルロース系樹脂(a)を含む、包装材。
【請求項2】
表面保護層のガラス転移温度Tg(A)が、ヒートシール層のガラス転移温度Tg(B)よりも大きく、Tg(A)とTg(B)との差が、10℃以上である、請求項1に記載の包装材。
【請求項3】
表面保護層が、更に、ポリアミド樹脂を含む、請求項1に記載の包装材。
【請求項4】
セルロース系樹脂(a)とポリアミド樹脂との質量比率が、99:1~15:85である、請求項3に記載の包装材。
【請求項5】
表面保護層が、更に、炭化水素ワックスを含む、請求項1に記載の包装材。
【請求項6】
炭化水素ワックスのJISK2207で規定された25℃における硬度(針入度)が、0.5~12である、請求項5に記載の包装材。
【請求項7】
バリア層が、紙基材に対して、ヒートシール層と対向して配置される、請求項1に記載の包装材。
【請求項8】
バリア層が、ビニルアルコール樹脂及び/又はエチレン-ビニルアルコール共重合樹脂を含む、請求項1に記載の包装材。
【請求項9】
表面保護層の塗工量が、1.5~12g/m2である、請求項1に記載の包装材。
【請求項10】
包装材全量中の紙基材含有量が、50質量%以上である、請求項1に記載の包装材。
【請求項11】
請求項1~10いずれかに記載の包装材から形成された包装袋。
【請求項12】
ヒートシール層、バリア層、紙基材、及び表面保護層を有する包装材の製造方法であって、
バリア層を有する紙基材の一方の面上に、アクリル樹脂及び/又はエチレン-酢酸ビニル共重合樹脂を含むヒートシール剤を塗工して、塗工量が1~18g/m2のヒートシール層を形成する工程と
バリア層を有する紙基材の他方の面上に、セルロース樹脂を含むオーバーコート剤を塗工して表面保護層を形成する工程とを含む、包装材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は包装材及び包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、商品パッケージその他の包装物には装飾や表面保護のために印刷が施されているのが一般的である。また、印刷物の意匠性、美粧性、高級感等の印刷品質は、そのでき如何によって、消費者の購入意欲を促進させるものであり、産業上の価値は大きい。
【0003】
一般的に、パッケージの構成には主にプラスチックフィルムが用いられ、透明であるため中身を視認できる使用方法もあり、特にラミネート包装材が用いられることが多かった。例えば、特許文献1においては、基材、印刷層、接着剤層及びシーラント層からなるラミネート包装材であって、印刷層及び接着剤層にバイオマス樹脂が使用された発明が記載されている。しかし、そもそもラミネート型包装材は、石油由来プラスチックフィルムの使用量が多い。そのため、環境対応、カーボンニュートラルであり、更にプラスチックの使用量を削減可能な包装材が望まれており、技術開発がなされている。
【0004】
例えば、特許文献2には、表面保護層、印刷層、紙基材層、樹脂層を順次有する包装材料であり、樹脂層にポリエチレン樹脂を含む包装材料に関する発明が記載されている。しかしながら、上記樹脂層は、ヒートシール性を確保するためにポリエチレンに厚みを持たせる必要があるため、包装材質量の約半分をポリエチレンが占めてしまう。リサイクル性の観点から、包装材中の紙含有量は多い方が好ましいが、上記発明において、ヒートシール層を低塗布量化した場合は、ヒートシール性に課題があると推察される。また、紙基材上へポリエチレンを加熱溶融塗工する際、ポリエチレンは紙基材の一部を取り込んだ状態で固化する。ポリエチレンは、アルカリ耐性及び耐水性に優れるため、古紙回収工程において溶解しないため、リサイクル性に課題がある。上記課題解決に加え、包装材に求められる耐ブロッキング性、酸素バリア性を向上させる必要がある。
【0005】
従って、ヒートシール性及びリサイクル性に優れた包装材として満足できるものは未だ見出されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018-051796号公報
【特許文献2】特開2020-55171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ヒートシール性、及びリサイクル性に優れた包装材を提供することを目的とする。さらに、紙基材を用いた包装材に実用性を付与するためには、上記課題解決に加え、包装材に求められる耐ブロッキング性、酸素バリア性を満たす必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は前記課題に対して鋭意研究を重ねた結果、以下に記載の包装材を用いることで上記課題を解決することを見出し、本発明を成すに至った。
【0009】
すなわち本発明は、ヒートシール層、バリア層、紙基材、及び表面保護層を有する包装材であって、
前記ヒートシール層が、アクリル樹脂及び/又はエチレン-酢酸ビニル共重合樹脂を含み、かつ、前記ヒートシール層の塗工量が、1~18g/m2であり、
前記表面保護層が、セルロース系樹脂(a)を含む、包装材に関する。
【0010】
また、本発明は、表面保護層のガラス転移温度Tg(A)が、ヒートシール層のガラス転移温度Tg(B)よりも大きく、Tg(A)とTg(B)との差が、10℃以上である、上記包装材に関する。
【0011】
また、本発明は、表面保護層が、更に、ポリアミド樹脂を含む、上記包装材に関する。
【0012】
また、本発明は、セルロース系樹脂(a)とポリアミド樹脂との質量比率が、99:1~15:85である、上記包装材に関する。
【0013】
また、本発明は、表面保護層が、更に、炭化水素ワックスを含む、上記包装材に関する。
【0014】
また、本発明は、炭化水素ワックスのJISK2207で規定された25℃における硬度(針入度)が、0.5~12である、上記包装材に関する。
【0015】
また、本発明は、バリア層が、紙基材に対して、ヒートシール層と対向して配置される、上記包装材に関する。
【0016】
また、本発明は、バリア層が、ビニルアルコール樹脂及び/又はエチレン-ビニルアルコール共重合樹脂を含む、上記包装材に関する。
【0017】
また、本発明は、表面保護層の塗工量が、1.5~12g/m2である、上記包装材に関する。
【0018】
また、本発明は、包装材全量中の紙基材含有量が、50質量%以上である、上記包装材に関する。
【0019】
また、本発明は、上記包装材から形成された包装袋に関する。
【0020】
また、本発明は、ヒートシール層、バリア層、紙基材、及び表面保護層を有する包装材の製造方法であって、
バリア層を有する紙基材の一方の面上に、アクリル樹脂及び/又はエチレン-酢酸ビニル共重合樹脂を含むヒートシール剤を塗工して、塗工量が1~18g/m2のヒートシール層を形成する工程と
バリア層を有する紙基材の他方の面上に、セルロース樹脂を含むオーバーコート剤を塗工して表面保護層を形成する工程とを含む、包装材の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0021】
本発明により、ヒートシール性、リサイクル性、耐ブロッキング性、及び酸素バリア性に優れた包装材を提供することが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の例であり、本発明はその要旨を超えない限りこれらの内容に限定されない。
【0023】
なお、以下の説明において「部」は特に断らない限り「質量部」、「%」は「質量%」を示す。また、包装材を「積層体」と記載する場合があるが同義である。
また、「印刷インキ」とは、印刷層を形成するための顔料その他の着色剤を含有するインキをいう。「オーバーコート剤」とは、表面保護層を形成するための、顔料その他の着色剤を含有しないコート剤をいうが、意図せず混入した僅かな着色剤等を排除するものではない。
【0024】
[包装材]
ヒートシール層、バリア層、紙基材、及び表面保護層を有する包装材であって、前記ヒートシール層が、アクリル樹脂及び/又はエチレン-酢酸ビニル共重合樹脂を含み、かつ、前記ヒートシール層の塗工量が、1~18g/m2であり、前記表面保護層が、セルロース系樹脂(a)を含む、包装材に関する。
【0025】
[ヒートシール層]
本発明におけるヒートシール層は、アクリル樹脂、及び/又はエチレン-酢酸ビニル共重合樹脂を含み、紙基材の表面保護層を具備した面とは反対側に位置する。ヒートシール層の塗工量は、1~18g/m2であり、3~12g/m2であることが好ましい。上記範囲である場合、ヒートシール性及び耐ブロッキング性が良好となる。
【0026】
ヒートシール層が含む樹脂として、アクリル樹脂、及び/又はエチレン-酢酸ビニル共重合樹脂の他に、ウレタン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等を含んでも良い。これらは単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
ヒートシール層の樹脂の含有量は、ヒートシール層100質量%中、80~100質量%であることが好ましく、90~100質量%であることがより好ましい。上記範囲である場合、ヒートシール性が良好となる。
【0028】
<アクリル樹脂>
アクリル樹脂とは、アクリルモノマー由来の構成単位を含む樹脂である。アクリル樹脂はカルボキシル基その他の酸性基を有していることが好ましい。アクリル樹脂の酸価は、20~120mgKOH/gであることが好ましく、30~100mgKOH/gであることがより好ましく、40~80mgKOH/gであることが特に好ましい。アクリル樹脂の酸価が20mgKOH/g以上である場合、リサイクル性が良好となり、120mgKOH/g以下である場合、耐ブロッキング性が良好となる。アクリル樹脂のガラス転移温度は、-40~90℃であることが好ましく、-30~70℃であることがより好ましく、-20~50℃であることが特に好ましい。アクリル樹脂のガラス転移温度が上記範囲である場合、耐ブロッキング性及びヒートシール性が良好となる。また、アクリル樹脂はアクリルモノマーの単独重合体や、アクリルモノマーと酸性モノマーからなる共重合体、エチレンとアクリルモノマーからなる共重合体などが好適に挙げられる。
【0029】
前記(メタ)アクリルモノマーを含む不飽和二重結合を有するモノマーとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のアルキルエステル化合物、
N-メチロール(メタ)アクリルアミド等の少なくとも1個のN-置換メチロール基を含有する(メタ)アクリル酸アミド誘導体、
ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリート、ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジプロピルアミノプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のアミノアルキルエステル、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のグリコール類の(メタ)アクリル酸のモノ又はジエステル類、
スチレン、α-メチルスチレン等のスチレン誘導体、
2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル化合物、
アクリル酸、メタクリル酸、
マレイン酸、イタコン酸等の酸基を有するビニル化合物が挙げられる。
ヒートシール性の面から、アクリル樹脂は、カルボキシル基及び/又は水酸基を有するものが好ましく、アクリル樹脂が水酸基を有する場合、アクリル樹脂を構成するモノマーとして(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル化合物を含有するものが好ましい。
【0030】
アクリル樹脂は、市販品を用いてもよく、例えば、BASF社製 JONCRYL PDX7356、PDX-7326、PDX-7430、星光PMC社製 PE-1126、JE-1113、KE1148等を使用することができる。
【0031】
<エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂>
エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂は、エチレンと酢酸ビニルからなる共重合体である。エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂中の酢酸ビニル含有量は、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂100質量%中、5~50質量%であることが好ましく、10~40質量%であることがより好ましく、20~30質量%であることが特に好ましく。エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂の最低造膜温度は、40~120℃であることが好ましく、60~100℃であることがより好ましい。酢酸ビニル含有量、及び最低造膜温度が上記範囲である場合、ヒートシール性が良好となる。エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂のガラス転移温度は、-60~20℃であることが好ましく、-25~5℃であることがより好ましい。
【0032】
上記エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂は例えば、ジャパンコーティングレジン社製 アクアテックスECシリーズ、住友化学工業社製 スミカフレックスS-201HQ、S-305、S-305HQ、S-400HQ、S-401HQ、S-408HQE、S-450HQ、S-455HQ、S-456HQ、S-460HQ、S-467HQ、S-470HQ、S-480HQ、S-510HQ、S-520HQ、S-752、S-755を使用することができる。
【0033】
《酸価の測定》
本願において酸価は、樹脂固形分1g中に含有する酸性基を中和するのに必要とする水酸化カリウムのmg数であり、JISK0070に準拠して測定される。
【0034】
《ガラス転移温度の測定》
本願においてガラス転移温度は、島津製作所社製DTG-60Aを用いた、熱重量・示差熱同時測定(TG-DTA)により測定した。詳細には、窒素雰囲気下、測定温度範囲-100~200℃、昇温速度1℃/分の条件において、ベースラインシフトにおける変曲点の温度をガラス転移温度とした。
【0035】
《重量平均分子量の測定》
本願において重量平均分子量(Mw)は、例えば、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定することができる。
水性樹脂の場合は、ポリエチレングリコールを標準物質に用いた換算分子量として求めることができ、測定器としてはGPC装置:昭和電工社製 Shodex GPC-401などが挙げられ、カラムとしては、昭和電工社製Shodex OHpak LB-805などが挙げられる。検出器としては例えば、RI(示差屈折計)などが挙げられ、測定温度は、カラム温度が20~50℃であることが好ましい。溶離液としては0.1規定のNaNO3水溶液が挙げられ、流速は0.2~5mL/分である。
油性樹脂の場合は、ポリエチレングリコールを標準物質に用いた換算分子量として求めることができ、測定器としては、GPC装置:昭和電工社製 Shodex GPC-104等が挙げられ、カラムとしては、昭和電工社製Shodex LF-404等が挙げられる。検出器としては、RI(示差屈折計)等が挙げられ、測定温度は、カラム温度が20~50℃であることが好ましい。溶離液としてはテトラヒロドフラン等が挙げられ、流速は0.2~5mL/分である。
【0036】
《最低造膜温度の測定》
本願において、JIS K 6828-1:2003に準拠し、テスター産業社製 TP-801MFTテスターで測定した温度を最低造膜温度とした。
【0037】
<添加剤>
ヒートシール層は、更に、消泡剤、乳化剤、防腐剤、可塑剤、アマイドワックス、炭化水素ワックス、及びキレート架橋剤等の任意の添加剤を含むことができ、消泡剤及び又は乳化剤を含むことが好ましい。
【0038】
《消泡剤》
本願において、ヒートシール層の平滑性向上の観点から、消泡剤を含むことが好ましい。消泡剤を含む場合、ヒートシール強度が良好となる。消泡剤は、シリコン系消泡剤及び非シリコン系消泡剤が挙げられ、消泡性の観点から、シリコン系消泡剤が好ましい。ヒートシール層中の消泡剤の含有量は、ヒートシール層100質量%中、0.01~1質量%であることが好ましく、0.05~0.5質量%であることがより好ましく、0.1~0.3質量%であることが特に好ましい。
【0039】
《乳化剤》
本願において、水への溶解性の観点から、乳化剤を含むことが好ましい。乳化剤を含む場合、リサイクル性が良好となる。乳化剤は、ビニルアルコール樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤等が挙げられ、リサイクル性の観点より、ビニルアルコール樹脂及びカチオン系界面活性剤が好ましい。ヒートシール層中の乳化剤の含有量は、ヒートシール層100質量%中、0.01~1質量%であることが好ましく、0.05~0.5質量%であることがより好ましく、0.1~0.3質量%であることが特に好ましい。
【0040】
消泡剤は、市販品を用いてもよく、例えば、BYK社製 BYK-024、BYK-025、BYK-028等を使用することができる。
【0041】
<ヒートシール剤>
本願における、ヒートシール剤は、アクリル樹脂、及び/又はエチレン-酢酸ビニル共重合樹脂を含み、更に、溶剤を含む。また、上述の添加剤を含んでも良い。ヒートシール剤は、環境負荷の観点から、水性であることが好ましい。
【0042】
<ヒートシール層の形成>
ヒートシール層は、例えば、表面保護層と反対側の紙基材面上に、ヒートシール剤を用いて印刷した後、揮発成分を乾燥して除去することによって形成することができる。印刷方法としてはグラビア印刷方式やフレキソ印刷方式が好適である。例えば、グラビア印刷では、必要に応じて適した粘度及び濃度にまで希釈溶剤で希釈され、単独で又は混合されて各印刷ユニットに供給された後、塗布され、オーブンによる乾燥によって被膜を定着させることでヒートシール層を得ることができる。
【0043】
(グラビア印刷)
《グラビア版》
グラビア印刷において、グラビア版は金属製の円筒状のものであり、彫刻又は腐蝕・レーザーによって各色の凹部を形成する。彫刻とレーザーの使用に制限はなく、柄に合わせて任意に設定が可能である。線数としては80線~250線のものが適宜使用され、線数の大きいものほど目の細かい印刷が可能である。
【0044】
《グラビア印刷機》
グラビア印刷機においては、一つの印刷ユニットが、上記グラビア版及びドクターブレードを備えている。印刷ユニットは多数あり、各ユニットはオーブン乾燥ユニットを有する。印刷は輪転により行われ、巻取印刷方式である。版の種類やドクターブレードの種類は適宜選択され、仕様に応じたものが選定できる。
【0045】
[バリア層を有する紙基材](以下、バリア性紙基材ともいう)
本願において、バリア性紙基材は、ヒートシール層側にバリア層を有する紙基材、表面保護層側にバリア層を有する紙基材、及び紙基材がバリア性樹脂を含むものを指し、ヒートシール側にバリア層を有する紙基材が好ましい。上記の場合、ヒートシール層形成時に、紙へのヒートシール剤染み込みを抑制できるため、ヒートシール性が良好となる。なお、包装材全量中の紙基材含有量が、50質量%以上であることが好ましい。
なお、紙基材がバリア性樹脂を含む形態は、紙基材中にバリア層が浸透している状態で、バリア層は、平らな層を形成していないが、紙基材とは別に連続相として存在し、バリア層として確認できる。
【0046】
<バリア層>
バリア層は、光、磁気、各種気体など、バリアすべき対象が包装材を透過するのを制御するために存在し、バリア成分を含む。
バリア層は、前記バリア成分を、蒸着法や、ラミネート法、Tダイキャスト法、液状にして塗工・乾燥等によって形成することができる。バリア成分として、バリア性樹脂、例えば、アルミニウム、シリカ、アルミナ、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂、バリアナイロン樹脂(MXD)等、あるいは、アルミニウム、シリカ、及びアルミナ等の金属化合物などが挙げられるが、水性ヒートシール剤との親和性の観点から、ポリビニルアルコール樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂を含むことが好ましい。バリア層がポリビニルアルコール樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂である場合、水性ヒートシール剤塗工時のはじきが抑制されるため、ヒートシール強度が良好となる。バリア層は、単層構成でも複層構成でもよく、1つの層中に2種以上の化合物を含んでも良い。
【0047】
《ポリビニルアルコール樹脂》
上記ポリビニアルコール樹脂を、例えば、溶液とし、当該溶液の塗工・乾燥によって、紙基材上へ積層することで、バリア層を形成することができる。上記ポリビニルアルコールのケン化度は40~100モル%が好ましい。上記ポリビニルアルコール樹脂の塗工量は、1~24g/m2であることが好ましく、3~12g/m2であることがより好ましい。ケン化度及び塗工量について、上記範囲である場合、バリア性が良好となる。
【0048】
上記ポリビニルアルコール樹脂は、例えば、クラレポバールLM-20SO(クラレ社製)、ゴーセノールNM-14(日本合成化学工業製)などを例示することができる。
【0049】
《エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂》 上記エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂を、例えば、溶液とし、当該溶液の塗工・乾燥によって、紙基材上へ積層することで、バリア層を形成することができる。上記エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂のエチレン含有量は、25~50モル%であることが好ましい。上記エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂の塗工量は、1~20g/m2であることが好ましく、3~10g/m2であることがより好ましい。エチレン含有量及び塗工量について、上記範囲である場合、バリア性が良好となる。
【0050】
上記エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂は、例えば、エバールEP-F101(クラレ社製)、ソアノールD2908(日本合成化学工業社製)などを例示することができる。
【0051】
上記バリア層は更に易接着層を有していてもよい。易接着層としては、ポリウレタン樹脂層、アクリル樹脂層、ポリエステル樹脂およびポリビニルアルコールからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、水性である前記樹脂を含むことがより好ましい。易接着層は印刷その他の公知の方法により形成できる。
【0052】
《液状にして塗工・乾燥する法》
バリア成分を、揮発成分中に溶解または分散させ、液状にして塗工・乾燥する法としては、例えば、基材上に、印刷機などで塗工した後、揮発成分を除去することによって形成することができる。塗工方法としてはグラビア印刷方式、フレキソ印刷方式等公知の印刷方式が挙げられる。例えば、必要に応じてグラビア印刷に適した粘度及び濃度にまで希釈溶剤で希釈され、単独で又は混合されて各印刷ユニットに供給された後、塗布され、オーブンによる乾燥によって被膜を定着させることでバリア層を得ることができる。
【0053】
《蒸着法》
上記蒸着法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、およびイオンプレ-ティング法等の物理気相成長法(PhysicalVaporDeposition法、PVD法)、あるいは、プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、および光化学気相成長法等の化学気相成長法(ChemicalVaporDeposition法、CVD法)等を好適に挙げることができる。
【0054】
(真空蒸着法)
真空蒸着法は、アルミニウム、シリカ、及びアルミナ等の金属化合物を、高周波誘導加熱、直接通電加熱、又はエレクトロンビーム加熱等により、1200~1500℃、10-1~10-2Pa程度の条件下で蒸着させる方法である。被蒸着物は、真空蒸着前に、表面へのコロナ放電処理等による密着性向上処理を行うことができる。
【0055】
(スパッタリング法)
スパッタリング法は、アルミニウム、シリカ、及びアルミナ等の金属化合物を、10-1~10-2Pa程度の条件下で、Ar等の不活性ガスを導入し、電圧負荷することで実施される。
【0056】
<バリア性樹脂>
紙基材に含まれるバリア性樹脂は、例えば、セロハン、ポリビニルアルコール樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂、パラフィン樹脂、アクリル樹脂、ロジン樹脂及びエポキシ樹脂等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0057】
<紙基材>
紙基材は、特に制限されず、公知のものを用いることができる。このような紙基材としては、例えば、中質紙、上質紙、新聞用紙、各種コート紙、裏打ち紙、含浸紙、ボール紙やアート紙、キャスト紙、クラフト紙、コートボール、アイボリー紙、カード紙、カップ原紙、キャスト紙、遮光紙、及びこれらの表面処理された紙基材が挙げられる。
なお、紙基材の坪量は、好ましくは50~150g/m2、より好ましくは55~120g/m2、更に好ましくは60~90g/m2である。
【0058】
[表面保護層]
本願において表面保護層は、セルロース系樹脂(a)を含み、紙基材のヒートシール層を具備した面の反対側に位置する。表面保護層はセルロース系樹脂(a)を含むオーバーコート剤により形成することができ、形成方法は、グラビア印刷方式、フレキソ印刷方式等、公知の印刷方式から適宜選択でき、好ましくはグラビア印刷方式である。オーバーコート剤の粘度は、印刷適性等の観点から、20~200mPa・sであることが好ましい。本願において「オーバーコート剤」は、顔料等の着色剤を含有しないものを表すが、意図せず混入した僅かな着色剤を含むものを排除するものではない。
表面保護層の塗工量は、1.5~12g/m2であることが好ましく、より好ましくは3~8.4g/m2である。表面保護層の塗工量が1.5g/m2以上である場合、表面保護層の均一性が向上するため、光沢、耐熱性、及び耐ブロッキング性が良好となり、塗工量が12g/m2以下である場合、表面保護層内の残留溶剤量が減少するため、耐ブロッキング性が良好となる。
【0059】
<セルロース系樹脂(a)>
セルロース系樹脂(a)としては、木材繊維や綿花等、非可食性植物由来のセルロース樹脂のエステル化やニトロ化により得られる樹脂であり、例えば、酢酸セルロース樹脂、セルロースアセテートブチレート樹脂、セル酢酸セルロース樹脂、セルロースアセテートブチレート樹脂、セルロースアセテートプロピオネート樹脂、ニトロセルロース樹脂等が挙げられ、耐熱性及び光沢の観点から、ニトロセルロース樹脂が好ましい。これらは単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0060】
セルロース系樹脂(a)は、JIS K 6703-1995に準拠して測定した粘度が、以下の(1)~(3)の少なくても1つを満たすことが好ましい。上記粘度は、セルロース系樹脂(a)のイソプロパノール溶液中を、鋼球が落下する時間(鋼球落下時間(秒))である。
(1)溶液濃度12.2質量%における粘度が、1.5~16秒である。
(2)溶液濃度20質量%における粘度が、3~40秒である。
(3)溶液濃度25質量%における粘度が、0.1~22秒である。
中でも、セルロース系樹脂(a)の粘度は、上記(3)を満たすことが好ましい。上記(3)において、溶液濃度25質量%における粘度は、好ましくは0.3~15秒であり、より好ましくは0.5~9秒である。粘度が上記範囲であると、表面保護層の耐熱性及び耐ブロッキング性が良好となる。
【0061】
セルロース系樹脂(a)の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは5,000~200,000であり、より好ましくは8,000~100,000、さらに好ましくは10,000~80,000である。上記範囲である場合、耐熱性及び耐ブロッキング性が良好となる。
また、セルロース系樹脂(a)のガラス転移温度は90℃~200℃であることが好ましく、115~180℃であることがより好ましく、140~160℃であることが特に好ましい。上記範囲である場合、耐熱性及び耐ブロッキング性が良好となる。
【0062】
セルロース系樹脂(a)がニトロセルロース樹脂である場合、ニトロセルロース樹脂の窒素分は、ニトロセルロース樹脂の全固形分中、10~13質量%であることが好ましく、より好ましくは10.7~12.2質量%である。上記範囲である場合、耐熱性及び耐ブロッキング性が良好となる。
【0063】
ニトロセルロース樹脂の重量平均分子量は、好ましくは3,000~40,000、より好ましくは4,000~25,000であることが好ましく、5,000~15,000であることがより好ましい。上記範囲である場合、耐ブロッキング性が良好となる。
ニトロセルロース樹脂の市販品として、例えば、NOBEL社製(DHX3-5、DHX5-10、DHX8-13)が挙げられる。
【0064】
耐ブロッキング性の観点から、表面保護層は、セルロース系樹脂(a)に加えて、更にポリアミド樹脂、可塑剤、アマイドワックス及び/又は炭化水素ワックスを含有することが好ましい。
【0065】
<ポリアミド樹脂>
本発明の表面保護層は、上述のように、耐ブロッキング性を向上させる観点から、セルロース系樹脂(a)に加えて、更にポリアミド樹脂を含有することが好ましい。
ポリアミド樹脂は特に制限されないが、有機溶剤に可溶な熱可塑性ポリアミドであることが好ましく、多塩基酸と多価アミンとの重縮合物が好適に用いられる。
中でも、重合脂肪酸を含有する酸成分と、脂肪族及び/又は芳香族ポリアミンの反応物を含むポリアミド樹脂が好ましく、一級及び二級モノアミンを一部含有するものがより好ましい。
【0066】
ポリアミド樹脂のガラス転移温度は、20~80℃であることが好ましく、30~70℃であることがより好ましく、40~60℃であることが特に好ましい。上記範囲である場合、光沢及び耐熱性が向上する。ポリアミド樹脂の重量平均分子量は、2,000~70,000の範囲であることが好ましく、5,000~30,000であることがより好ましい。重量平均分子量が2,000以上の場合、耐熱性及び耐ブロッキング性が向上する。重量平均分子量が50,000以下の場合、光沢が良好となる。
ポリアミド樹脂は、軟化点が80~140℃であることが好ましく、90~120℃であることがより好ましい。軟化点が80℃以上の場合、耐熱性及び耐ブロッキング性が良好となる。軟化点が140℃以下の場合、光沢が向上する。なお、軟化点はJIS K 2207(環球法)に準拠して測定することができる。
【0067】
ポリアミド樹脂の原料で使用される多塩基酸としては、例えば、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、スベリン酸、グルタル酸、フマル酸、ピメリン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、テレフタル酸、1、4-シクロヘキシルジカルボン酸、トリメリット酸、重合脂肪酸が挙げられる。中でも、重合脂肪酸が好ましい。
ポリアミド樹脂は、重合脂肪酸に由来する構造を有することが好ましく、重合脂肪酸に由来する構造を、ポリアミド樹脂中に50質量%以上含有することが好ましい。
ここで、重合脂肪酸とは、不飽和脂肪酸の環化反応等により得られるもので、一塩基性脂肪酸、二量化重合脂肪酸、三量化重合脂肪酸等を含むものである。重合脂肪酸を使用する場合、不飽和脂肪酸を含む一塩基性脂肪酸あるいは、そのエステル重合によって得られたものが好ましく、炭素数が16~22の不飽和脂肪酸又はそのエステルの重合により得られるものが好ましい。重合脂肪酸は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の割合で併用してもよい。
なお、重合脂肪酸を構成する脂肪酸は、大豆油、パーム油、米糠油等天然油に由来するものが好ましく、オレイン酸及びリノール酸がより好ましい。
その他塩基酸には、モノカルボン酸を併用することもできる。併用されるモノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、安息香酸、シクロヘキサンカルボン酸等が挙げられる。
【0068】
その他アミンとしては、例えば、ポリアミン、一級又は二級モノアミンを挙げることができる。
上記ポリアミンとしては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、メチルアミノプロピルアミン等の脂肪族ジアミン;ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等の脂肪族ポリアミン;シクロヘキシレンジアミン、イソホロンジアミン等の脂環族ポリアミン;キシリレンジアミン等の芳香脂肪族ポリアミン;フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン等の芳香族ポリアミンを挙げることができる。
一級及び二級モノアミンとしては、n-ブチルアミン、オクチルアミン、ジエチルアミン、モノエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン等を挙げることができる。
ポリアミド樹脂は、接着性、耐ブロッキング性、耐油性、耐熱性の観点から、分子内に水酸基を有することが好ましく、一級又は二級モノアミン成分としてアルカノールアミンを用いることが好ましい。
【0069】
ポリアミド樹脂の市販品としては、例えば、ベジケムグリーンシリーズ(築野食品工業社製)、ニューマイドシリーズ(ハリマ化成社製)等を使用することができる。
【0070】
表面保護層における、セルロース系樹脂(a)とポリアミド樹脂との質量比は、99:1~15:85であることが好ましく、50:50~15:85であることがより好ましく、30:70~15:85であることが特に好ましい。上記範囲内であると、光沢、耐熱性、及び耐ブロッキング性に優れる。
【0071】
<その他樹脂>
表面保護層は、本発明の効果を損なわない範囲で、セルロース系樹脂(a)及びポリアミド樹脂以外のその他樹脂を含んでもよい。その他樹脂としては、例えば、ポリ乳酸樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、塩化ビニル-アクリル系共重合樹脂、ロジン系樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン-アクリル樹脂、スチレン樹脂、スチレン-アクリル酸樹脂、スチレン-アリルアルコール樹脂、スチレン-マレイン酸樹脂、無水マレイン酸樹脂、マレイン酸樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、シクロオレフィン樹脂、ダンマル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、テルペン樹脂、フェノール変性テルペン樹脂、ケトン樹脂、環化ゴム、塩化ゴム、ブチラール、ポリアセタール樹脂、シリコーン樹脂及びこれらの変性樹脂を挙げることができる。
【0072】
<添加剤>
表面保護層は、例えば、可塑剤、アマイドワックス、炭化水素ワックス、キレート架橋剤等の任意の添加剤を含むことができ、可塑剤、アマイドワックス、及び/又は炭化水素ワックスを含むことが好ましい。
【0073】
《可塑剤》
本発明の表面保護層は、耐ブロッキング性の観点から、更に可塑剤を含有することが好ましい。
可塑剤としては、表面保護層に含まれる樹脂との相溶性に優れ、また揮発性の低いものが好適に用いられ、例えば、クエン酸エステル、フタル酸エステル、リン酸エステル、トリメット酸エステル、脂肪族二塩基酸エステル、グリコールエーテル、スルホン酸アミド系、及びひまし油より選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましい。
【0074】
クエン酸エステルとしては、クエン酸トリエチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸トリn-ブチル、クエン酸アセチルトリn-ブチル、アセチルクエン酸-2-エチルヘキシル等のクエン酸アセチルトリアルキルが挙げられ、当該アルキル基は、炭素数が2~12であることが好ましく、クエン酸アセチルトリn-ブチル、クエン酸アセチルトリエチルがより好ましい。
フタル酸エステルとしては、フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジウンデシル等のフタル酸ジアルキルが挙げられ、当該アルキル基は、炭素数が2~12であることが好ましく、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシルがより好ましい。
リン酸エステルとしては、リン酸トリクレジル、リン酸トリフェニル、リン酸トリブチル等のリン酸エステル等が挙げられ、リン酸トリブチルが好ましい。
トリメット酸エステルとしては、トリメット酸トリ-2-エチルヘキシル、トリメット酸トリオクチル、トリメット酸トリイソノニル等のトリメリット酸トリアルキルが挙げられ、当該アルキル基は、炭素数が2~12であることが好ましく、トリメット酸トリ-2-エチルヘキシルがより好ましい。
脂肪族二塩基酸エステルとしては、脂肪族二塩基酸エステルに含まれるアルキル基の炭素数が、2~12であることが好ましく、脂肪酸ジアルキルエステルであることがより好ましい。脂肪酸ジアルキルエステルとしては、アジピン酸エステル、セバシン酸エステルが挙げられ、アジピン酸ビス(2-エチルヘキシル)、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジイソデシル、セバシン酸ビス(2-エチルヘキシル)、セバシン酸ジイソノニル、セバシン酸ジイソデシルであることが好ましい。
スルホン酸アミド系としては、N-ブチルベンゼンスルフォン酸アミドやN-エチルトルエンスルフォン酸アミドが挙げられる。
グリコールエーテルとしては、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルが挙げられる。
【0075】
本発明における、表面保護層における可塑剤の含有量は、0.1~15質量%であることが好ましく、3~12質量%であることがより好ましく、5~9質量%であることが特に好ましい。上記範囲である場合、耐ブロッキング性が向上する。
【0076】
《アマイドワックス》
本発明の表面保護層は、耐ブロッキング性の観点から、更にアマイドワックスを含有することが好ましい。
アマイドワックスとは脂肪酸アミドであり、脂肪酸残基とアミド基を有するものが好ましい。脂肪酸アミドは印刷後には表面保護層の表面に配向し、滑り性を発現させて耐ブロッキング性を向上させると考えられる。なお本説明は技術的考察に基づくものであり、発明を何ら限定するものではない。
【0077】
脂肪酸アミドとしては、例えば、モノアミド、置換アミド、ビスアミド、メチロールアミド、及びエステルアミドが好適に挙げられ、モノアミド、置換アミド、及びビスアミドからなる群より選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
【0078】
脂肪酸アミドの融点は、50℃~150℃であることが好ましい。
融点が50℃~150℃のモノアミドとしては、ラウリン酸アミド(融点87℃)、パルミチン酸アミド(融点100℃)、ステアリン酸アミド(融点101℃)、ベヘン酸アミド(融点110℃)、ヒドロキシステアリン酸アミド(融点107℃)、オレイン酸アミド(融点75℃)、エルカ酸アミド(融点81℃)が挙げられる。
融点が50℃~150℃の置換アミドとしては、N-オレイルパルミチン酸アミド(融点68℃)、N-ステアリルステアリン酸アミド(融点95℃)、N-ステアリルオレイン酸アミド(融点67℃)、N-オレイルステアリン酸アミド(融点74℃)、N-ステアリルエルカ酸アミド(融点69℃)が挙げられる。 融点が50℃~150℃のビスアミドとしては、メチレンビスステアリン酸アミド(融点142℃)、エチレンビスステアリン酸アミド(融点145℃)、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド(融点145℃)、エチレンビスベヘン酸アミド(融点142℃)、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド(融点140℃)、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド(融点142℃)、ヘキサメチレンヒドロキシステアリン酸アミド(融点135℃)、エチレンビスオレイン酸アミド(融点119℃)、エチレンビスエルカ酸アミド(融点120℃)、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド(融点110℃)、N,N’-ジステアリルアジピン酸アミド(融点141℃)、N,N’-ジステアリルセバシン酸アミド(融点136℃)、N,N’-ジオレイルアジピン酸アミド(融点118℃)、N,N’-ジオレイルセバシン酸アミド(融点113℃)が挙げられる。
融点が50℃~150℃のメチロールアミドとしては、例えば、メチロールステアリン酸アミド(融点110℃)が挙げられる。
融点が50℃~150℃のエステルアミドとしては、例えば、ステアロアミドエチルステアレート(融点82℃)が挙げられる。
中でも、耐ブロッキング性向上の観点から、分子量が200~800のものが好ましい。更に好ましくは250~700である。
【0079】
脂肪酸アミドを構成する脂肪酸としては、炭素数12~22の飽和脂肪酸及び/又は炭素数16~25の不飽和脂肪酸が好ましく、炭素数16~18の飽和脂肪酸及び/又は炭素数18~22の不飽和脂肪酸がより好ましい。飽和脂肪酸として特に好ましくはラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ヒドロキシステアリン酸であり、不飽和脂肪酸として特に好ましくはオレイン酸、エルカ酸である。
中でも、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、及びエルカ酸からなる群より選ばれる少なくとも一種の脂肪酸からなる脂肪酸アミドが好ましく、パルチミン酸アミド、エルカ酸アミド、及びエチレンビスオレイン酸アミドからなる群より選ばれる少なくとも一種の脂肪酸アミドがより好ましく、エチレンビスオレイン酸アミドが特に好ましい。
【0080】
アマイドワックスの含有量は、好ましくは0.1~22.5質量%であり、より好ましくは0.1~15質量%、更に好ましくは0.1~7.5質量%である。上記範囲である場合、耐ブロッキング性が向上する。
【0081】
《炭化水素ワックス》
表面保護層は、炭化水素ワックスを含むことが好ましい。炭化水素ワックスを含むことで、表面保護層の耐水摩擦性が向上する。
炭化水素ワックスは、硬度(針入度)が0.5~12である炭化水素ワックス粒子であることが好ましい。炭化水素ワックスとしては、例えば、ポリエチレンワックス、フィッシャー・トロプシュ・ワックス、パラフィンワックス、マイクロスタリンワックス、ポリプロピレンワックスが挙げられる。中でもポリエチレンワックスを含む炭化水素ワックスが好ましい。
オーバーコート剤において、炭化水素ワックスは液状でも粒子状でも使用することができ、粒子状であることが好ましい。炭化水素ワックス粒子の平均粒子径は、0.3~10μmであることが好ましく、0.8~7μmであることがより好ましい。表面保護層中の炭化水素ワックス粒子の含有量は、0.1~10質量%であることが好ましく、0.5~7質量%であることがより好ましい。
【0082】
《キレート架橋剤》
表面保護層は、キレート架橋剤を含んでも良い。キレート架橋剤を含むことで、表面保護層の耐熱性が向上する。キレート架橋剤としては、例えば、チタンキレート、ジルコニウムキレートが挙げられる。チタンキレートとしては、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2-エチルヘキシル)チタネート、テトラメチルチタネート、テトラステアリルチタネート等のチタンアルコキシド、トリエタノールアミンチタネート、チタニウムアセチルアセテトナート、チタニウムテトラアセチルアセトナート、テトライソプロポキシチタン、チタニウムエチルアセトアセテテート、チタニウムラクテート、オクチレングリコールチタネート、n-ブチルリン酸エステルチタン、プロパンジオキスチタンビス(エチルアセチルアセテート)等を挙げることができる。ジルコニウムキレートとしては、ジルコニウムプロピオネート、ジルコニウムアセチルアセテート等が挙げられる。耐熱性、耐油性及び耐塩ビブロッキング性の観点から、架橋反応後にアセチルアセトンを発生しないキレート架橋剤であることが好ましい。
【0083】
表面保護層中のキレート架橋剤の含有量は、0.1~10質量%であることが好ましく、0.5~5質量%であることがより好ましい。含有量が0.1質量%以上であると耐熱性、耐油性、耐ブロッキング性が向上し、5質量%以下の場合、オーバーコート剤の貯蔵安定性に優れる。
【0084】
<オーバーコート剤>
オーバーコート剤は、セルロース系樹脂(a)を含み、さらに有機溶剤、及び上述の添加剤を用いることができる。
【0085】
<有機溶剤>
オーバーコート剤に用いることができる有機溶剤としては、例えば、メチルシクロへキサン、エチルシクロへキサン等の炭化水素系;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン等のケトン系;酢酸エチル、酢酸nプロピル、酢酸ブチル等のエステル系;メタノ-ル、エタノ-ル、プロパノ-ル、イソプロパノ-ル(IPA)、ブタノ-ル等のアルコ-ル系;の非芳香族系有機溶剤が挙げられる。有機溶剤は、印刷後の皮膜に残留する溶剤量低減等を考慮して適宜選択すればよく、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。有機溶剤の含有量は、オーバーコート剤100質量%中、30~95質量%であることが好ましく、50~90質量%であることがより好ましく、70~85質量%であることが特に好ましい。
【0086】
印刷時の網点再現性を向上させるために、グリコールエーテル系の溶剤を使用するのが好ましい。グリコールエーテル系の溶剤の溶剤としては、特に制限されないが、例えば、エチレングリコール系エーテル、プロピレングリコール系エーテルが挙げられる。
中でも、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルが好ましく、より好ましくはジエチレングリコールモノエチルエーテルである。グリコールエーテル系の溶剤は、有機溶剤100質量%中、5~25質量%であることが好ましく、5~15質量%であることが特に好ましい。
<表面保護層の形成>
表面保護層は、ヒートシール層がある面と反対側の紙基材上に、オーバーコート剤を用いて印刷した後、揮発成分を除去することによって形成することができる。また、ヒートシール層がある面と反対側の紙基材上に印刷層がある場合は、印刷層上に、印刷層がない場合と同様に表面保護層を形成することができる。印刷方法としてはグラビア印刷方式やフレキソ印刷方式が好適である。例えば、グラビア印刷では、必要に応じて適した粘度及び濃度にまで希釈溶剤で希釈され、単独で又は混合されて各印刷ユニットに供給された後、塗布され、オーブンによる乾燥によって被膜を定着させることで表面保護層を得ることができる。
【0087】
包装材は、表面保護層側の紙基材上に、更に、印刷インキを塗工してなる印刷層を有しても良い。また、本出願において、「印刷インキ」は顔料等の着色剤を含有するものを表す。
【0088】
[印刷層]
本発明における印刷層は、顔料及びバインダー樹脂を含む層であり、後述する印刷インキを用いて、紙基材のヒートシール層を具備した面とは反対の面に印刷することで形成できる。印刷層は、印刷インキを用いて形成され、印刷方法は、グラビア印刷方式、フレキソ印刷方式等、公知の印刷方式から適宜選択でき、好ましくはグラビア印刷である。印刷層の塗工量は、0.1~12g/m2であることが好ましく、0.3~7.2g/m2であることがより好ましく、0.5~3.6g/m2であることが特に好ましい。上記範囲である場合、光沢が良好となる。
本明細書において「印刷層」とは、単一の印刷層だけでなく、複数の印刷層が積層した層も含み、色相の異なる印刷層を任意に組み合わせることができる。
【0089】
<顔料>
顔料としては、例えば、有機顔料、無機顔料が挙げられる。
《有機顔料》
有機顔料としては、有機化合物、有機金属錯体が挙げられ、例えば、溶性アゾ系、不溶性アゾ系、アゾ系、フタロシアニン系、ハロゲン化フタロシアニン系、アントラキノン系、アンサンスロン系、ジアンスラキノニル系、アンスラピリミジン系、ペリレン系、ペリノン系、キナクリドン系、チオインジゴ系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、アゾメチンアゾ系、フラバンスロン系、ジケトピロロピロール系、イソインドリン系、インダンスロン系、カーボンブラック系が挙げられる。
また、例えば、カーミン6B、レーキレッドC、パーマネントレッド2B、ジスアゾイエロー、ピラゾロンオレンジ、カーミンFB、クロモフタルイエロー、クロモフタルレッド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ジオキサジンバイオレット、キナクリドンマゼンタ、キナクリドンレッド、インダンスロンブルー、ピリミジンイエロー、チオインジゴボルドー、チオインジゴマゼンタ、ペリレンレッド、ペリノンオレンジ、イソインドリノンイエロー、アニリンブラック、ジケトピロロピロールレッド、昼光蛍光顔料が挙げられる。
【0090】
有機顔料の色相としては、黒色顔料、藍色顔料、緑色顔料、赤色顔料、紫色顔料、黄色顔料、橙色顔料、及び茶色顔料からなる群より選ばれる少なくとも一種が好ましい。さらには、黒色顔料、藍色顔料、赤色顔料、及び黄色顔料からなる群より選ばれる少なくとも一種がより好ましい。
【0091】
有機顔料の具体例を、カラーインデックス(Colour Index International、略称C.I.)のC.I.ナンバーで示す。
好ましくは、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド48:2、C.I.ピグメントレッド48:3、C.I.ピグメントレッド146、C.I.ピグメントレッド242、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントオレンジ38、C.I.ピグメントオレンジ13、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー139、C.I.ピグメントレッド185、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントバイオレット37、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:1、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー15:6、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントオレンジ34、C.I.ピグメントオレンジ64、C.I.ピグメントブラック7であり、一種又は二種以上を使用することが好ましい。
【0092】
《無機顔料》
無機顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、シリカ、アルミニウム粒子、マイカ(雲母)、ブロンズ粉、クロムバーミリオン、黄鉛、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、群青、紺青、ベンガラ、黄色酸化鉄、鉄黒、酸化チタン、酸化亜鉛が挙げられ、カオリン、クレー、炭酸マグネシウム等アルミニウムはリーフィングタイプ又はノンリーフィングタイプがあるが、ノンリーフィングタイプが好ましい。
【0093】
<バインダー樹脂>
バインダー樹脂としては、特に制限されず、印刷インキに使用する公知の樹脂から適宜選択できる。このようなバインダー樹脂としては、例えば、ポリ乳酸樹脂、ウレタン樹脂、セルロース系樹脂(a’1)、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、塩化ビニル-アクリル系共重合樹脂、ひまし油系樹脂、ロジン系樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、アクリル樹脂、ウレタン-アクリル樹脂、スチレン樹脂、スチレン-アクリル酸樹脂、スチレン-アリルアルコール共重合樹脂、スチレン-マレイン酸共重合樹脂、無水マレイン酸樹脂、マレイン酸樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、シクロオレフィン樹脂、ダンマル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、テルペン樹脂、フェノール変性テルペン樹脂、ケトン樹脂、環化ゴム、塩化ゴム、ブチラール、ポリアセタール樹脂、シリコーン樹脂及びこれらの変性樹脂が挙げられ、1種を単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
印刷層は、バインダー樹脂としてセルロース系樹脂(a’1)を含むことが好ましく、セルロース系樹脂(a’1)と、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂、スチレン-マレイン酸共重合樹脂、スチレン-アリルアルコール共重合樹脂、及びアクリル樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種とを含むことがより好ましく、セルロース系樹脂(a’1)と、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂、及びスチレン-マレイン酸樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種とを含むことが更に好ましく、セルロース系樹脂(a’1)と、ウレタン樹脂とを含むことが特に好ましい。
【0094】
バインダー樹脂中のセルロース系樹脂(a’1)の比率は、バインダー樹脂100質量%
中、30~99質量%であることが好ましく、50~99質量%であることが好ましく、80~99質量%であることが特に好ましい。上記範囲である場合、耐熱性及び耐ブロッキングが良好となる。
【0095】
<セルロース系樹脂(a’1)>
セルロース系樹脂(a’1)及びその好適な態様としては、上述の[表面保護層]で説明した(セルロース系樹脂(a))の項の記載を援用することができる。
【0096】
<ウレタン樹脂>
ウレタン樹脂は、重量平均分子量が10,000~100,000のものが好ましく、より好ましくは20,000~80,000である。ガラス転移温度は0℃以下であることが好ましく、より好ましくは-60~0℃、更に好ましくは-40~-5℃である。上記範囲である場合、耐熱性が良好となる。
また、ウレタン樹脂は、アミン価及び/又は水酸基価を有するものが好ましく、アミン価は、セルロース系樹脂(a’1)との混合時の褐色変化を鑑み、0~10mgKOH/gであることが好ましく、0~5mgKOH/gであることがより好ましく、0~3mgKOH/gであることが特に好ましい。水酸基価は0.5~30mgKOH/gであることが好ましく、より好ましくは1~20mgKOH/gである。上記範囲であると、耐熱性が良好となる。
【0097】
上記アミン価は、樹脂1g中に含有するアミノ基を中和するのに必要とする塩酸の当量と同量の水酸化カリウムのmg数である。アミン価の測定方法は、下記の通りである。
[アミン価の測定方法]
試料を5~10g精秤(S試料の固形分質量g))する。精秤した試料にトルエン25mL及びn-ブタノール25mLを加え充分溶解させる。これに、メタノール30mLを加え、0.1mol/L塩酸水溶液(力価:f)で電位差滴定を行なう。この時の滴定量(AmL)を用い次の(式1)によりアミン価を求めることができる。
【0098】
(式1)
アミン価=(A×f×0.1×56.108)/S [mgKOH/g]
【0099】
上記水酸基価は、樹脂中の水酸基を過剰のアセチル化試薬にてアセチル化し、残存する酸をアルカリで逆滴定して算出した樹脂1g中の水酸基量を、水酸化カリウムのmg数に換算した値で、JIS K0070に準拠する。
【0100】
ウレタン樹脂は、ポリエーテルポリオール及び/又はポリエステルポリオール由来の構成単位を含むものが好ましく、その含有量の合計は、ウレタン樹脂固形分100質量%中、10~50質量%であることが好ましく、より好ましくは10~60質量%であり、更に好ましくは5~80質量%である。上記範囲である場合、耐熱性が良好となる。
ウレタン樹脂は、限定されるものではないが、例えば、ポリオールと、ポリイソシアネートとを反応させてなる末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーに、鎖延長剤としてポリアミンを反応させて得られるウレタン樹脂が挙げられる。
【0101】
上記ポリオールとしては、例えば、各種公知のポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等を用いることができ、それぞれ1種又は2種以上を併用してもよい。
上記ポリエステルポリオールとしては、例えば、飽和又は不飽和の低分子ポリオールと多価カルボン酸あるいはこれらの無水物を脱水縮合又は重合させて得られるポリエステルポリオール;環状エステル化合物、例えばポリカプロラクトン、ポリバレロラクトン、ポリ(β-メチル-γ-バレロラクトン)等のラクトン類を開環重合して得られるポリエステルポリオール;が挙げられる。
上記飽和又は不飽和の低分子ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3プロパンジオール、2-エチル-2ブチル-1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、3-メチル-1,5ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、1,4-ブチンジオール、1,4-ブチレンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、1,2,6-ヘキサントリオール、1,2,4-ブタントリオール、ソルビトール、ペンタエスリトールが挙げられる。上記多価カルボン酸としては、例えば、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、フマル酸、こはく酸、しゅう酸、マロン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸が挙げられる。
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、酸化メチレン、酸化エチレン、酸化プロピレン、テトラヒドロフランの重合体又は共重合体が挙げられる。
ポリエステルポリオール及びポリエーテルポリオールは、いずれも分岐構造を持つものが好ましい。
【0102】
上記ポリイソシアネートとしては、ウレタン樹脂の製造に一般的に用いられる各種公知の芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート等が挙げられる。これらは3量体となってイソシアヌレート環構造を形成していてもよい。
芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、1,5-ナフチレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、4,4’-ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4’-ジベンジルイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネートが挙げられる。
脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、ブタン-1,4-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートが挙げられる。
脂環族ジイソシアネートとしては、例えば、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、m-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、水素添加された4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート、ダイマー酸のカルボキシル基をイソシアネート基に転化したダイマージイソシアネートが挙げられる。
中でも好ましくはトリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ヘキサメチレンジイソシアネート、及びヘキサメチレンジイソシアネートの3量体からなる群より選ばれる少なくとも一種である。これらのポリイソシアネートは単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
【0103】
鎖延長剤としてのポリアミンとしては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジアミン等が挙げられる。また、ポリアミンとして、2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン等の、分子内に水酸基を有するポリアミンを用いてもよい。これらの鎖伸長剤は単独で、又は2種以上を混合して用いることができるが、特にイソホロンジアミンが好ましい。
【0104】
<ポリアミド樹脂>
ポリアミド樹脂は特に制限されないが、有機溶剤に可溶な熱可塑性ポリアミドであることが好ましく、多塩基酸と多価アミンとの重縮合物が好適に用いられる。
中でも、重合脂肪酸を含有する酸成分と、脂肪族及び/又は芳香族ポリアミンの反応物を含むポリアミド樹脂が好ましく、一級及び二級モノアミンを一部含有するものがより好ましい。
ポリアミド樹脂及びその好適な態様としては、上述の[表面保護層]で説明した<ポリアミド樹脂>の項の記載を援用することができる。
【0105】
<スチレン-マレイン酸共重合樹脂>
スチレン-マレイン酸共重合樹脂は、例えば、スチレンモノマーとマレイン酸モノマーをラジカル共重合させることで得られる。スチレンモノマーとマレイン酸モノマーの固形分質量比率は、スチレンモノマー:マレイン酸モノマー=1:9~6:4であることが好ましく、2:8~5:5であることがより好ましい。
【0106】
スチレン-マレイン酸共重合樹脂の酸価は、150~300mgKOH/gであることが好ましく、215~270mgKOH/gであることがより好ましい。上記範囲である場合、耐熱性に優れる。なお、酸価は、樹脂固形分1g中に含有する酸性基を中和するのに必要とする水酸化カリウムのmg数であり、JIS K 0070に準拠する。
【0107】
スチレン-マレイン酸共重合樹脂のガラス転移温度は、60~125℃が好ましく、70~105℃がより好ましい。重量平均分子量は、6,000~16,000であることが好ましく、より好ましくは10,000~15,000である。ガラス転移温度及び重量平均分子量が上記範囲の場合、耐熱性に優れる。
【0108】
スチレン-マレイン酸共重合樹脂の市販品としては、例えば、XIRANシリーズ(川原油化社製)、アラスターシリーズ(荒川化学社製)が挙げられる。
【0109】
<スチレン-アリルアルコール共重合樹脂>
スチレン-アリルアルコール共重合樹脂は、例えば、スチレンモノマーとアリルアルコールモノマーをラジカル共重合させることで得られる。スチレンモノマーとアリルアルコールモノマーの固形分質量比率は、スチレンモノマー/アリルアルコールモノマー=1/9~6/4であることが好ましく、2/8~5/5であることがより好ましい。
【0110】
スチレン-アリルアルコール共重合樹脂の水酸基価は、150~300mgKOH/gであることが好ましく、180~250mgKOH/gであることが好ましい。上記範囲である場合、耐ブロッキング性に優れる。
【0111】
スチレン-アリルアルコール共重合樹脂のガラス転移温度は、40~100℃が好ましく、50~80℃がより好ましい。重量平均分子量は、1,000~5,000であることが好ましく、2,000~4,000であることがより好ましい。ガラス転移温度及び重量平均分子量が上記範囲の場合、耐熱性に優れる。酸価は、50~300mgKOH/gであることが好ましく、100~200mgKOH/gであることがより好ましい。上記範囲である場合、耐ブロッキング性に優れる。
【0112】
スチレン-アリルアルコール樹脂の市販品としては、例えば、SAAシリーズ(Iyondellbasell社製)が挙げられる。
【0113】
<アクリル樹脂>
印刷層における、アクリル樹脂としては、上述の[ヒートシール層]で説明した<アクリル樹脂>の項の記載を援用することができる。
印刷層における、アクリル樹脂のガラス転移温度は、40~110℃であることが好ましく、60~90℃がより好ましい。重量平均分子量は、5,000~100,000が好ましく、8,000~40,000がより好ましい。ガラス転移温度及び重量平均分子量が上記範囲の場合、耐熱性が良好となる。
【0114】
印刷層における、アクリル樹脂の市販品としては、例えば、ダイヤナールシリーズ(三菱レイヨン社製)、ACRYDICシリーズ(DIC社製)が挙げられる。
【0115】
印刷層に含まれるバインダー樹脂の含有量は、印刷層中、好ましくは20~80質量%、より好ましくは40~60質量%である。上記範囲である場合、耐熱性及び耐ブロッキング性が良好となる。
【0116】
<添加剤>
印刷層は、本発明の効果を損なわない範囲でさらに、顔料分散剤、イソシアネート系硬化剤、キレート架橋剤、炭化水素ワックス、マット化剤、気相法シリカ、湿式法シリカ、有機処理シリカ、アルミナ処理シリカ等の微粉末シリカ、脂肪酸アマイドワックス、消泡剤、レベリング剤、可塑剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、難燃剤等の添加剤を使用することができる。
【0117】
《顔料分散剤》
印刷層は、着色性の観点より、顔料分散剤を含むことが好ましい。顔料分散剤としては、アニオン性、ノニオン性、カチオン性、両イオン性等の界面活性剤を使用することができる。
【0118】
《イソシアネート系硬化剤》
印刷層は、耐熱性の観点より、イソシアネート系硬化剤を含むことが好ましい。イソシアネート系硬化剤としては、ポリイソシアネート及びそれらの変性化合物を利用できる。具体的には、ポリイソシアネートのビウレット体、イソシアヌレート体、アダクト体が好適であり、ポリイソシアネートとしてはジイソシアネートが好ましく、トリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;α,α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香脂肪族ジイソシアネート;が好適に用いられる。
イソシアネート系硬化剤の市販品としては、例えば、24A-100、22A-75、TPA-100、TSA-100、TSS-100、TAE-100、TKA-100、P301-75E、E402-808、E405-70B、AE700-100、D101、D201、A201H(旭化成社製)、マイテックY260A(三菱化学社製)、コロネート CORONATE HX、コロネート CORONATE HL、コロネート
CORONATE L(日本ポリウレタン社製)、デスモデュール N75MPA/X(バイエル社製)が挙げられる。中でも、イソホロンジイソシアネートと、イソホロンジイソシアネートのアダクト体及び/又はイソシアヌレート体が好ましい。
【0119】
《キレート架橋剤》
印刷層は、耐熱性の観点より、キレート架橋剤を含むことが好ましい。キレート架橋剤としては、上述の[オーバーコート剤]で説明した《キレート架橋剤》の項の記載を援用することができる。
キレート架橋剤の含有量は、印刷層中、好ましくは0.1~10質量%、より好ましくは0.5~5質量%である。上記範囲である場合、耐熱性及び耐ブロッキング性に優れる。
【0120】
《炭化水素ワックス》
印刷層は、耐ブロッキング性の観点より、炭化水素ワックスを含むことが好ましい。炭化水素ワックスとしては、上述の[表面保護層]で説明した《炭化水素ワックス》の項の記載を援用することができる。
印刷層において、炭化水素ワックスは液状でも粒子状でも使用することができ、粒子状であることが好ましい。粒子の平均粒子径は、0.3~10μmであることが好ましく、0.8~7μmであることがより好ましい。当該炭化水素ワックス粒子の含有量は、印刷層中、好ましくは0.1~10質量%、より好ましくは0.5~7質量%である。上記範囲である場合、耐ブロッキング性に優れる。
【0121】
《可塑剤》
印刷層は、耐ブロッキング性の観点より、可塑剤を含むことが好ましい。可塑剤は、少ない添加量で、有機溶剤の揮発を促進させる役割を有する。可塑剤としては、上述の[表面保護層]で説明した《可塑剤》の項の記載を援用することができる。
本発明における印刷層は、可塑剤として、ひまし油、グリコールエーテル、脂肪族二塩基酸エステル、及びアセチルクエン酸トリブチルからなる群より選ばれる少なくとも一種の可塑剤を含むことが好ましく、ひまし油がより好ましい。
印刷層中における可塑剤の含有量は、好ましくは0.1~15質量%、より好ましくは5~15質量%、更に好ましくは11~15質量%である。上記範囲である場合、耐ブロッキング性に優れる。
【0122】
<印刷インキ>
印刷インキは、顔料及びバインダー樹脂を含み、さらに有機溶剤及び任意の添加剤を含有してもよい。印刷インキは、顔料分散性及び作業性の観点から、25℃における粘度が50~1,000mPa・sであることが好ましい。
【0123】
<有機溶剤>
印刷インキにおける、有機溶剤及びその好適な態様としては、上述の[表面保護層]で説明した<有機溶剤>の項の記載を援用することができる。
【0124】
<印刷層の形成>
印刷層は、例えば、ヒートシール層と反対側の紙基材面上に、印刷インキを用いて印刷した後、揮発成分を除去することによって形成することができる。印刷方法としてはグラビア印刷やフレキソ印刷方式が好適であり、例えば、グラビア印刷に適した粘度及び濃度にまで希釈溶剤で希釈され、単独で又は混合されて各印刷ユニットに供給された後、塗布され、オーブンによる乾燥によって被膜を定着させることで印刷層を得ることができる。
【0125】
本願における、包装材の積層構成の例として、以下のものを好適に挙げることができる。下記の例において、「/」は各層の境界を意味する。
ヒートシール層/バリア性紙基材/表面保護層
ヒートシール層/バリア性紙基材/印刷層/表面保護層
【0126】
<ヒートシール層に含まれる樹脂と表面保護層に含まれる樹脂とのガラス転移温度の差>
ヒートシール層の低塗布量化にあたり、ヒートシール剤を塗工・乾燥することで、均一な膜を形成することができる。なお、ヒートシール剤に含まれる溶剤がヒートシール層中に残留した場合、ブロッキングが発生しやすくなるが、ヒートシール層に含まれる樹脂のガラス転移温度よりも、表面保護層に含まれる樹脂のガラス転移温度を高くすることで、包装材に耐ブロッキング性を付与することができる。上記ヒートシール層及び表面保護層が、2種以上の樹脂を含む場合を考慮し、以下式にて、ヒートシール層のガラス転移温度Tg(A)、及び表面保護層のガラス転移温度Tg(B)を算出した。
【0127】
【0128】
応力分散の観点から、Tg(A)と、Tg(B)との差が、10~150℃であることが好ましく、30~100℃であることがより好ましく、40~60℃であることが特に好ましい。上記範囲である場合、タック切れ、荷重分散、及び造膜性のバランスが良好となるため、耐ブロッキング性及びヒートシール性が向上する。
【0129】
<包装袋>
本発明における包装材は、所定のサイズにカットされて、ヒートシール層同士を互いに合わせた形で縁部分をヒートシールされて包装袋となる。ヒートシールの温度としては50~250℃であることが好ましく、80~180℃であることがなお好ましい。ヒートシール圧力としては1~5kg/cm2等の条件であればよい。1枚の包装材を折り曲げて縁をヒートシールしたり、2枚以上の包装材をヒートシールしたりすることで包装袋を形成できる。また、包装袋は、中身を包装した後、すべての開口部をヒートシールすることでも包装袋を形成できる。この包装袋は、食品、医薬品等の包装袋として幅広く利用する事ができる。
【実施例0130】
以下、実施例をあげて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、本発明における部及び%は、特に注釈の無い場合、質量部及び質量%を表す。また、「NV.」とは不揮発性分の質量%を表す。
【0131】
<調整例1>ニトロセルロース樹脂溶液NC1の調整
ニトロセルロースnc1(NV.70%(溶剤:イソプロピルアルコール)、重量平均分子量:10,000、溶液濃度25質量%における粘度:2秒、ガラス転移温度:155℃)59.6部を、酢酸エチル33.6部とイソプロピルアルコール33.6部に混合溶解させて、NV.30%のニトロセルロース樹脂溶液(NC1)を得た。
【0132】
<調整例2~4>ニトロセルロース樹脂溶液NC2~4の調整
以下に記載した原料を使用した以外は調整例1と同様の方法で、ニトロセルロース樹脂溶液NC2~5を得た。なお、nc4は、上述の好ましい粘度範囲(1)~(3)をいずれも満たさない。
・(NC2)ニトロセルロースnc2(NV.70%(溶剤:イソプロピルアルコール)、溶液濃度25質量%における粘度:1.2秒、ガラス転移温度:147℃)
・(NC3)ニトロセルロースnc3(NV.70%(溶剤:イソプロピルアルコール)、溶液濃度25質量%における粘度:10秒、ガラス転移温度:161℃)
・(NC4)ニトロセルロースnc4(NV.70%(溶剤:イソプロピルアルコール)、溶液濃度12.2質量%における粘度:20秒、ガラス転移温度:177℃)
【0133】
<調整例5>セルロースアセテートブチレート樹脂溶液CAB1の調整
セルロースアセテートブチレートcab1(巴工業社製、製品名CAB-381-0.1、NV.70%(溶剤:イソプロピルアルコール)、ガラス転移温度:123℃、重量平均分子量20,000、溶液濃度25質量%における粘度:0.1秒)59.6部を、酢酸エチル33.6部とイソプロピルアルコール33.6部に混合溶解させて、NV.30%のセルロースアセテートブチレート樹脂溶液(CAB1)を得た。
【0134】
<調整例6>セルロースアセテートブチレート樹脂溶液CAB2の調整
以下に記載した原料を使用した以外は調整例5と同様の方法で、セルロースアセテートブチレート樹脂溶液CAB6を得た。
・(CAB2)ニトロセルロースcab2(巴工業社製、製品名CAB-551-0.2、NV.70%(溶剤:イソプロピルアルコール)、溶液濃度25質量%における粘度:0.2秒、ガラス転移温度:101℃)
【0135】
<調整例7>ポリアミド樹脂溶液PA1の調整
ポリアミド樹脂pa1(築野食品工業社製、製品名ベジケムグリーン725、NV.100%、ガラス転移温度50℃、重量平均分子量8,000)30部、及びイソプロピルアルコール70部を仕込み、窒素気流下に50℃で2時間溶解し、NV.30%のポリアミド樹脂溶液(PA1)を得た。
【0136】
<調整例8及び9>ポリアミド樹脂溶液PA2及びPA3の調整)
以下に記載した原料を使用した以外は調整例7と同様の方法で、NV.30%のポリアミド樹脂溶液PA2及びPA3を得た。
・(PA2)ポリアミド樹脂pa2(ハリマ化成社製、製品名ニューマイド846、NV.100%、ガラス転移温度55℃)
・(PA3)ポリアミド樹脂pa3(ハリマ化成社製、製品名ニューマイド872、NV.100%、ガラス転移温度49℃)
【0137】
<調整例10>ウレタン樹脂溶液PU1の調整
攪拌機、温度計、還流冷却器及び窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、数平均分子量2,000のポリ(1,2-プロピレングリコール)(水酸基価56.1mgKOH/g)257.86部、イソホロンジイソシアネート18.01部、ジフェニルメタンジイソシアネート20.27部、2-エチルヘキサン酸スズ(II)0.03部、酢酸エチル200部を仕込み、窒素気流下に90℃で3時間反応させ、末端イソシアネートプレポリマーの溶液496.14部を得た。次いでイソホロンジアミン3.86部、イソプロピルアルコール280部、酢酸エチル220部を混合したものを、得られた末端イソシアネートプレポリマーの溶液に室温で徐々に添加し、次に50℃で1時間反応させ、NV.30%、重量平均分子量78,000、ガラス転移温度10℃、アミン価未検出(0.1mgKOH/g未満)のウレタン樹脂溶液(PU1)を得た。
【0138】
上記ウレタン樹脂溶液PU1の重量平均分子量(Mw)は、以下条件にて測定を行った。・標準物質:ポリエチレングリコール
・GPC装置:昭和電工社製 Shodex GPC-104
・カラム:昭和電工社製Shodex LF-404
・検出器:RI(示差屈折計)
・カラム温度:35℃
・溶離液:テトラヒロドフラン
・流速:3mL/分
【0139】
<調整例11>ヒートシール剤HS1の調整
アクリル樹脂エマルジョンAC1(BASF社製 JONCRYL PDX7356、酸価:78mgKOH/g、ガラス転移温度:25℃、NV.=50%) 91.7部、水/イソプロピルアルコール混合溶剤(質量比率1:1) 8.2部、BYK-024(BYK社製、消泡剤) 0.1部となるように添加、撹拌混合してヒートシール剤HS1を得た。
<調整例12~18>ヒートシール剤HS2~8の調整
表1に記載した原料及び配合比を使用した以外は調整例11と同様の方法で、ヒートシール剤HS2~8を得た。なお、使用した原料の性状は以下の通りである。
・アクリル樹脂エマルジョンAC2(星光PMC社製、JE-1113、酸価:42mgKOH/g、ガラス転移温度:-24℃、NV.=50%)
・アクリル樹脂エマルジョンAC3(酸価:108mgKOH/g、ガラス転移温度:56℃、NV.=50%)
・アクリル樹脂エマルジョンAC4(酸価:108mgKOH/g、ガラス転移温度:62℃、NV.=50%)・エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂エマルジョンEVA1(住友化学社製、スミカフレックス S-400HQ、最低造膜温度:0℃、ガラス転移温度:0℃、ビニルアルコール樹脂系乳化剤、NV.=50%)
・エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂エマルジョンEVA2(住友化学社製、スミカフレックス S-410HQ、最低造膜温度:0℃、ガラス転移温度:-18℃、ビニルアルコール樹脂系乳化剤、NV.=50%)
・エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂エマルジョンEVA3(住友化学社製、スミカフレックス S-408HQE、最低造膜温度:0℃、ガラス転移温度:-30℃、ビニルアルコール樹脂系乳化剤、NV.=50%)
【0140】
【0141】
<調整例18>バリアコート剤V1の調整
クラレポバールLM-20SO(クラレ社製、ケン化度=40モル%、NV.=100%)50部、水 25部、イソプロピルアルコール 25部を加え、80℃で加熱攪拌し、バリアコート剤V1を得た。
【0142】
<調整例19>バリアコート剤V2の調整
ソアノールD2908(三菱ケミカル社製、エチレン含有量=29モル%、NV.=100%)50部に、水 25部、イソプロピルアルコール 25部を加え、80℃で加熱攪拌し、バリアコート剤V2を得た。
【0143】
<調整例20>オーバーコート剤X1の製造
ニトロセルロース樹脂溶液NC1を13.5部、ポリアミド樹脂溶液PA1 52.1部、ジエチレングリコールモノブチルエーテル 1.9部、ヘキサメンレンビスオレイン酸アミド 3部、ポリエチレンワックス(溶剤:サクサンエチル NV.=15%。硬度(針入度)=2) 8.3部、酢酸エチル/酢酸プロピル/イソプロパノール混合溶剤(質量比率=1/1/1) 14部、メチルシクロヘキサン/メチルプロピレングリコール混合溶剤(質量比率=1/1) 6.3部、 水 0.9部を攪拌混合し、オーバーコート剤X1を得た。
【0144】
<調整例21~36,比較調整例1>オーバーコート剤X2~18の製造
表2に記載した原料及び配合比を使用した以外は調整例20と同様の方法で、オーバーコート剤X2~18を得た。
【表2】
【0145】
以下実施例にて包装材の製造方法を示す。
【0146】
<ヒートシール層の残留溶剤量評価>
得られた中間積層体における紙/バリア層の構成部分から、10cm角に5枚切り出した。切り出した5枚のサンプルについて、180℃、20分の条件で加熱し、それぞれのサンプルの加熱前後の重量変化量を算出し、5枚のサンプルの重量変化量の平均値を残留溶剤量とした。同様に、紙/バリア層/ヒートシール層の構成部分についても、残留溶剤量を算出し、式5でヒートシール層の残留溶剤量を算出した。
なお、バリア層のない積層体は、式5’でヒートシール層の残留溶剤量を算出した。
(式5)
ヒートシール層の残留溶剤量(mg)=(紙/バリア層/ヒートシール層の5サンプル平均の残留溶剤量)-(紙/バリア層部分の5サンプル平均の残留溶剤量)
(式5’)
(紙/ヒートシール層の5サンプル平均の残留溶剤量)-(塗工前の紙の5サンプル平均の残留溶剤量)
【0147】
<ヒートシール層の塗工量測定>
得られた中間積層体におけるヒートシール層/バリア層/紙の構成部分から、10cm角に5枚切り出し、バリア層/紙の構成部分から、10cm角に5枚切り出した。それぞれのサンプルの重量を測定し、式6でヒートシール層の塗工量を算出した。
(式6)
ヒートシール層の塗工量(mg)=(ヒートシール層/バリア層/紙の5サンプルの平均重量)-(紙/バリア層の5サンプルの平均重量)
【0148】
<バリア層、印刷層及び表面保護層の塗工量測定>
バリア層、印刷層、及び表面保護層において、計算式及びサンプルの切り出し箇所が異なる以外は、<ヒートシール層の塗工量測定>と同様の方法で塗工量を算出した。なお、クラフト紙については、以下のものを用いた。
クラフト紙:未漂白のクラフトパルプを使用したクラフト紙(日本製紙社製、両更クラフトK、坪量70g/m2、原反幅:100cm)
<式7>
バリア層の塗工量(mg)=(紙/バリア層の5サンプルの平均重量)/(クラフト紙の5サンプルの平均重量)
<式8>
印刷層の塗工量(mg)=(バリア層/紙/印刷層の5サンプルの平均重量)/(バリア層/紙の5サンプルの平均重量)
<式9>
表面保護層の塗工量(mg)=(ヒートシール層/バリア層/紙/表面保護層の5サンプルの平均重量)/(ヒートシール層/バリア層/紙/印刷層の5サンプルの平均重量)
【0149】
<実施例1>包装材P1の製造
クラフト紙:未漂白のクラフトパルプを使用したクラフト紙(日本製紙社製、両更クラフトK、坪量70g/m2、原反幅:100cm)に対し、版深50μmのグラビア版を備えたグラビア印刷機を用いて、印刷速度50m/分、インラインオーブン70℃の条件下で、バリアコート剤V1を2度重ね印刷して紙基材全面にバリア層を形成し、次に、バリア層を有する紙基材のバリア層側に対し、版の片側半分に非画像部を有する版深50μmのグラビア版を備えたグラビア印刷機を用いて、印刷速度50m/分、インラインオーブン70℃の条件下で、ヒートシール剤HS1を2度重ね印刷してヒートシール層を形成し、ヒートシール層/バリア層/紙基材の構成である中間積層体p1を得た。中間積層体p1は、紙/バリア層構成の部分と、紙/バリア層/ヒートシール層構成の部分とが混在しており、残留溶剤量評価用のサンプルを得ることができる。中間積層体p1のヒートシール層に含まれる残留溶剤量は1mgであった。
次に、印刷インキ(エコカラーHR23黄、東洋インキ社製、黄インキ、含有樹脂の詳細は後述)及びオーバーコート剤X1を酢酸エチル:イソプロピルアルコール=7:3(質量比)の混合溶剤で希釈し、それぞれザーンカップ#3(離合社製)25℃で15秒になるよう粘度を調整した。
中間積層体p1における、紙基材のヒートシール層の反対面に対し、版深30μmのグラビア版を備えたグラビア印刷機を用いて、印刷速度50m/分、インラインオーブン60℃の条件下で、希釈したエコカラーHR23黄を印刷して紙基材全面に印刷層を形成し、次に、印刷層上に対し、版の片側半分に非画像部を有する版深30μmのグラビア版を備えたグラビア印刷機を用いて、印刷速度50m/分、インラインオーブン60℃の条件下で、オーバーコート剤X1を印刷し、ヒートシール層/バリア層/紙基材/印刷層/表面保護層の構成である包装材P1を得た。なお、表面保護層の塗工において、[包装材の評価]での包装材P1必要分を確保した後は、塗工を終了し、塗工量測定用として、ヒートシール層/バリア層/紙基材/印刷層の構成部分の一部を保管した。
包装材P1における、Tg(A)とTg(B)との差は、46.6℃であった。
【0150】
上記印刷インキエコカラーHR23黄が含む樹脂は以下の通りである。
・ニトロセルロース樹脂溶液NC5(重量平均分子量:11,000、溶液濃度25.0%における粘度:3秒)
・ウレタン樹脂溶液PU2(重量平均分子量:50000、ガラス転移温度:-20℃、アミン価未検出(0.1mgKOH/g未満))
なお、上記NC5とPU2の固形分比率は、NC5:PU2=90:10である。
【0151】
<実施例2~37>包装材P2~37の製造
表3に示したヒートシール剤、紙基材、印刷インキ、オーバーコート剤を使用した以外は、実施例1と同様の手順で、同様の構成を有する包装材P2~37をそれぞれ作製した。
【0152】
<比較例1>包装材P38の製造
クラフト紙:未漂白のクラフトパルプを使用したクラフト紙(日本製紙社製、両更クラフトK、坪量70g/m2、100cm)に対し、紙基材の端から50cmの幅で、樹脂温度330℃、塗工速度80m/分の条件下で、ポリエチレン樹脂(融点:120℃)を熱溶融押出塗工し、ヒートシール層/紙基材の構成である包装材p38を得た。中間積層体p38のヒートシール層に含まれる残留溶剤量は0mgであった。
次に、印刷インキ(エコカラーHR23黄、東洋インキ社製、黄インキ、含有樹脂の詳細は後述)及びオーバーコート剤X1を酢酸エチル:イソプロピルアルコール=7:3(質量比)の混合溶剤で希釈し、それぞれザーンカップ#3(離合社製)25℃で15秒になるよう粘度を調整した。
中間積層体p38における、紙基材のヒートシール層の反対面に対し、版深30μmのグラビア版を備えたグラビア印刷機を用いて、印刷速度50m/分、インラインオーブン60℃の条件下で、希釈したエコカラーHR23黄を印刷して紙基材全面に印刷層を形成し、次に、印刷層上に対し、版の片側半分に非画像部を有する版深30μmのグラビア版を備えたグラビア印刷機を用いて、印刷速度50m/分、インラインオーブン60℃の条件下で、オーバーコート剤X1を印刷し、紙基材/印刷層/表面保護層の構成である中間積層体p38を得た。なお、表面保護層の塗工において、[包装材の評価]での包装材P38必要分を確保した後は、塗工を終了し、塗工量測定用として、ヒートシール層/紙基材/印刷層の構成部分の一部を保管した。
包装材P38における、Tg(A)とTg(B)との差は、196.6℃であった。
【0153】
<比較例2>包装材P39の製造
クラフト紙:未漂白のクラフトパルプを使用したクラフト紙(日本製紙社製、両更クラフトK、坪量70g/m2、100cm)に対し、版深50μmのグラビア版を備えたグラビア印刷機を用いて、印刷速度50m/分、インラインオーブン70℃の条件下で、バリアコート剤V1を2度重ね印刷して紙基材全面にバリア層を形成し、次に、バリア層を有する紙基材のバリア層側に、紙基材の端から50cmの幅で、樹脂温度330℃、塗工速度80m/分の条件下で、ポリエチレン樹脂(融点:120℃)を熱溶融押出塗工し、ヒートシール層/バリア層/紙基材の構成である包装材p39を得た。中間積層体p39は、紙/バリア層構成の部分と、紙/バリア層/ヒートシール層構成の部分とが混在しているため、残留溶剤量評価用のサンプルを得ることができる。中間積層体p39のヒートシール層に含まれる残留溶剤量は0mgであった。
次に、印刷インキ(エコカラーHR23黄、東洋インキ社製、黄インキ、含有樹脂の詳細は後述)及びオーバーコート剤X1を酢酸エチル:イソプロピルアルコール=7:3(質量比)の混合溶剤で希釈し、それぞれザーンカップ#3(離合社製)25℃で15秒になるよう粘度を調整した。
中間積層体p39における、紙基材の表面保護層の反対面に対し、版深30μmのグラビア版を備えたグラビア印刷機を用いて、印刷速度50m/分、インラインオーブン60℃の条件下で、希釈したエコカラーHR23黄を印刷して紙基材全面に印刷層を形成し、次に、印刷層上に対し、版の片側半分に非画像部を有する版深30μmのグラビア版を備えたグラビア印刷機を用いて、印刷速度50m/分、インラインオーブン60℃の条件下で、オーバーコート剤X1を印刷し、紙基材/印刷層/表面保護層の構成である包装材P39を得た。なお、なお、表面保護層の塗工において、[包装材の評価]での包装材P39必要分を確保した後は、塗工を終了し、塗工量測定用として、ヒートシール層/バリア層/紙基材/印刷層の構成部分の一部を保管した。
包装材P39における、Tg(A)とTg(B)との差は、196.6℃であった。
<比較例3~5>包装材P40~42の製造
表4に示したヒートシール剤、紙基材、印刷インキ、オーバーコート剤を使用した以外は、実施例1と同様の手順で、同様の構成を有する包装材P40~42をそれぞれ作製した。
【0154】
【0155】
【0156】
[包装材の評価]
実施例1~37、比較例1~5で得られた包装材P1~42について、以下に記載の評価を行った。結果を表3、表4に示す。なお、残留溶剤量測定のため、包装材の一部分はヒートシール層を有していないが、その部分は以下評価には使用しない。
【0157】
<ヒートシ-ル性評価>
得られた包装材を15mm×100mmの大きさに切り取り、ヒートシール層面同士が重なるように折り曲げ、以下の装置及び条件でヒートシールし、シールされていない両端部を小型引張試験機に固定し、ヒートシール強度を評価した。なお、A、B、Cが実用上問題ない範囲である。
《ヒートシール条件》
装置:テスター産業株式会社製ヒートシールテスター、シール幅:折り曲げ部より
10mm、ヒーター温度:160℃、シール圧力:2kg/cm2、
シール時間:1sec
《ヒートシール強度測定条件》
装置:インテスコ社製 小型引張試験機(モデル;IM-20)、試験片幅:15mm、剥離モード:90°剥離、引張速度:300mm/min
《評価基準》
A.ヒートシール強度が3.5N以上である。
B.ヒートシール強度が2.5N以上、3.5N未満である。
C.ヒートシール強度が1.0N以上、2.5N未満である。
D.ヒートシール強度が1.0N未満である。
【0158】
<リサイクル性>
得られた包装材の3cm角に裁断して、58gを試料として試験に用いた。2Lパルパーに、30℃の温水を1.5L、3.75%の水酸化ナトリウム水溶液を7mL(対紙0.5%)、1.5%に希釈した脱墨剤(花王株式会社製DI-7027)を7mL(対紙0.2%)投入してから試料を加え、3000rpm、20分間撹拌を行った。攪拌開始から2分後に、蓋に付着した試料を少量の水で槽内に洗い流した。離解終了後に試料を150メッシュの金網を用いて625gまで濃縮した。
【0159】
2Lパルパーに常温の精製水1350mLを加え、濃縮した試料と共に1分間再離解し、2Lパルパーから10Lバケツに試料を移し、30℃±2℃の温水を加え、5.4kgに希釈した。その内4.3kgを分取し、J.TAPPI No.39準拠のフローテーターである極東振興(株)製SF-25で、スクリュー回転数1500rpm、空気供給量4L/分の条件で10分間攪拌を行った。
【0160】
フローテーター槽内の試料を回収し、試料に水を加えて総量を8kgに希釈した後、硫酸アルミニウム溶液を加え、pHを5.0~5.6に調整した。その後回転式ドラム乾燥機を用い、表面温度を90℃で4分間乾燥させ、回収パルプを得た。
【0161】
回収パルプについて、以下式にて、パルプ回収率を算出し、以下基準にて評価を行った。なお、A、B、Cが実用上問題ない範囲である。
式6 紙基材質量(g)=70(g/m2)×{(58gの試料の総面積(m2)}
式7 パルプ回収率(質量%)=回収パルプ質量(g)/紙基材質量(g)
《評価基準》
A.パルプ回収率が、95質量%以上である。
B.パルプ回収率が、90質量%以上、95質量%未満である。
C.パルプ回収率が、80質量%以上、90質量%未満である。
D.パルプ回収率が、80質量%未満である。
【0162】
<耐ブロッキング性評価> 得られた包装材を40mm角に2枚切り出し、1枚の包装材片のヒートシール層面と、もう1枚の包装材片の表面保護層面を完全に重ね、温度40℃、湿度80%RH、荷重100N/cm2の環境下で圧着した。24時間静置したのち、2枚重ねた包装材同士を剥離し、印刷層の剥離状態を目視で観察し、下記基準にて評価した。なお、A、B、Cが実用上問題ない範囲である。
《評価基準》
AA.ヒートシール層面への印刷層の転移量が0面積%である
A.ヒートシール層面への印刷層の転移量が0面積%超、5面積%未満である。
B.ヒートシール層面への印刷層の転移量が5面積%以上、10面積%未満である。
C.ヒートシール層面への印刷層の転移量が10面積%以上、30面積%未満である。
D.ヒートシール層面への印刷層の転移量が30面積%以上である。
【0163】
<酸素バリア性評価>
得られた包装材について、JIS K 7126-2:2006に準拠した方法で酸素透過度測定を行い、下記基準にて評価した。なお、A、B、Cが実用上問題ない範囲である。
《評価基準》
A.酸素透過度が100g/m2・24h未満である。
B.酸素透過度が100g/m2・24h以上、1000g/m2・24h未満である。C.酸素透過度が1000g/m2・24h以上、10000g/m2・24h未満である。
D.酸素透過度が10000g/m2・24h以上である。
【0164】
上記結果から、比較例1および2は、ヒートシール層が、溶融塗工ポリエチレン樹脂で形成され、かつ膜厚が5μmであるため、上記ヒートシール層形成方法では、ヒートシール層表面の平滑性が不足し、同時にピンホールも発生するため、本発明で要求されるヒートシール性を満足できなかった。さらに、比較例1および2は、リサイクル性も満たさなかった。
比較例3は、ヒートシール層の塗工量が1g/m2未満であるため、ヒートシール性を満たさず、比較例4は、ヒートシール層の塗工量が18g/m2超過であるため、耐ブロッキング性を満たさなかった。比較例5は、表面保護層にセルロース系樹脂(a)を含まなかったため、耐ブロッキング性を満たさなかった。
一方実施例は、ヒートシール層がアクリル樹脂を含むオーバーコート剤を塗工・乾燥することで形成され、ヒートシール層の塗工量の範囲を満たし、表面保護層にセルロース系樹脂(a)を含むため、ヒートシール性、耐ブロッキング性、及び酸素バリア性が良好である。上記ヒートシール層形成方法では、ヒートシール層の表面の平滑性が高く、ピンホールが発生しないため、ヒートシール性を満足した。特に、ヒートシール層の塗工量5g/m2であり、ヒートシール層に含まれるアクリル樹脂と、表面保護層に含まれるニトロセルロース樹脂のガラス転移温度との差が、46.6℃であり、表面保護層にポリエチレンワックスが含まれており、表面保護層中のニトロセルロース樹脂とポリアミドの質量比率が、21:79であり、バリア層がヒートシール側に位置する実施例1において、優れたヒートシール性、耐ブロッキング性、及び酸素バリア性を有していた。