(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128432
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】X線診断装置
(51)【国際特許分類】
A61B 6/10 20060101AFI20240913BHJP
A61B 6/40 20240101ALI20240913BHJP
A61B 6/42 20240101ALI20240913BHJP
【FI】
A61B6/10 350
A61B6/00 300D
A61B6/00 300X
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037404
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 洋
(72)【発明者】
【氏名】菅原 佳祐
(72)【発明者】
【氏名】小池 由貴
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA01
4C093EC16
4C093EC28
4C093EC33
4C093EC57
4C093FA54
4C093FA55
(57)【要約】
【課題】X線診断装置において、撮像部の干渉制御を精度よく行うこと。
【解決手段】実施形態に係るX線診断装置は、アーム部と、支持部と、寝台とを備える撮像部と、センサと、ガイド部と、制御部とを備えている。アーム部は、X線管及びX線検出器を保持する。支持部は、当該アーム部を移動可能に支持する。寝台は、被検体を載置する。センサは、物体を検出する。ガイド部は、前記撮像部に設置され、前記センサを沿わせて移動可能とする。制御部は、前記アーム部の移動予定の軌道と、前記センサによって検出された物体の位置とに基づいて、前記アーム部の移動を制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線管及びX線検出器を保持するアーム部と、当該アーム部を移動可能に支持する支持部と、被検体を載置する寝台とを備える撮像部と、
物体を検出するセンサと、
前記撮像部に設置され、前記センサを沿わせて移動可能とするガイド部と、
前記アーム部の移動予定の軌道と、前記センサによって検出された物体の位置とに基づいて、前記アーム部の移動を制御する制御部と、
を備えるX線診断装置。
【請求項2】
前記ガイド部は、前記アーム部に設置される、
請求項1に記載のX線診断装置。
【請求項3】
前記ガイド部は、前記アーム部の側面に設置される、
請求項2に記載のX線診断装置。
【請求項4】
前記ガイド部は、前記支持部に設置される、
請求項1に記載のX線診断装置。
【請求項5】
前記センサは、当該センサの検出面が前記アーム部の側面の外側を向くように設置される、
請求項1に記載のX線診断装置。
【請求項6】
前記撮像部は、天井に設置されたレールに沿って移動する天井台車をさらに備え、
前記支持部は、前記天井台車に支持され、
前記ガイド部は、前記天井台車に設置される、
請求項1に記載のX線診断装置。
【請求項7】
前記寝台は、被検体を載置する天板と、当該天板を保持する寝台本体と備え、
前記ガイド部は、前記天板の下面に設置される、
請求項1に記載のX線診断装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記センサの位置と、前記物体の位置とに基づいて、前記アーム部と前記物体との間の距離を算出し、当該距離に応じて前記アーム部が移動する速度を制御する、
請求項1に記載のX線診断装置。
【請求項9】
前記物体の位置は、前記センサの位置並びに当該センサからの方向及び距離、又は、所定の位置を原点とする3次元座標によって規定される、
請求項1に記載のX線診断装置。
【請求項10】
前記センサは、前記アーム部が停止しているときに、前記ガイド部の一端から他端に移動しながら前記物体を検出し、前記アーム部の移動及び停止の後に、前記ガイド部の他端から一端に移動しながら前記物体を検出し、
前記アーム部は、前記センサが停止しているときに、移動する、
請求項1に記載のX線診断装置。
【請求項11】
前記センサは、光学カメラ、光学式センサ、及び、超音波センサの少なくとも1つである、
請求項1に記載のX線診断装置。
【請求項12】
ユーザによる操作を受け付ける入力部をさらに備え、
前記センサは、前記入力部から当該センサによるスキャンを指示する操作を受け付けた旨を示す信号を受信したときに、移動及び物体の検出を行う、
請求項1に記載のX線診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、X線診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カテーテル治療において、術者は、様々な角度から術部の視野を確保するために、X線管及びX線検出器を保持するCアームを移動させる。Cアームの移動は、水平方向の軸を回転軸とした回転(回転動)や、Cアームの円弧に沿った進退(円弧動)や、するように移動される。Cアームの水平方向および鉛直方向に沿った進退(スライド動)を含む。Cアームの移動時、X線管やX線検出器が寝台や被検体の近くを通るとき、Cアームと、寝台や被検体との干渉を防ぐために、Cアームを減速させる干渉制御が働く。
【0003】
干渉制御は、離散的に設定された干渉ポイントのみにおいて、Cアームと、寝台や被検体との距離を計算し、当該距離を用いて行う。この干渉制御において、Cアームの初期位置によっては、寝台や被検体からかなり離れた位置で減速することがある。
一方、Cアームの近くに、X線診断装置以外の医療機器が置かれている場合、Cアーム移動時にこれらと干渉してしまうという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、X線診断装置において、撮像部の干渉制御を精度よく行うことである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限らない。後述する各実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置付けることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係るX線診断装置は、アーム部と、支持部と、寝台とを備える撮像部と、センサと、ガイド部と、制御部とを備えている。アーム部は、X線管及びX線検出器を保持する。支持部は、当該アーム部を移動可能に支持する。寝台は、被検体を載置する。センサは、物体を検出する。ガイド部は、前記撮像部に設置され、前記センサを沿わせて移動可能とする。制御部は、前記アーム部の移動予定の軌道と、前記センサによって検出された物体の位置とに基づいて、前記アーム部の移動を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係るX線診断装置1の構成を示すブロック図。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係るアーム51及びその周辺の外観を示す斜視図。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係るアーム51及びその周辺の構成を示す側面図。
【
図4】
図4は、第1実施形態に係るセンサ4及びアーム51が移動する様子を示すフローチャート。
【
図5】
図5は、第1実施形態に係るアーム51の内面を示す正面図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態の変形例に係るアーム51及びその周辺の構成を示す側面図。
【
図7】
図7は、第2実施形態に係る天吊り型の撮像部6aの一部分を示す斜視図。
【
図8】
図8は、第2実施形態に係る天井台車8及びその周辺を示す図。
【
図9】
図9は、第3実施形態に係る寝台装置40の構成を示す側面図。
【
図10】
図10は、第4実施形態に係るアーム51及びその周辺の構成を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、X線診断装置の実施形態について詳細に説明する。
【0009】
〔第1実施形態〕
第1実施形態は、撮像部6のアーム51にセンサ4を備えるX線診断装置の構成に関する。
図1は、第1実施形態に係るX線診断装置1の構成を示すブロック図である。X線診断装置1は、主として循環器用であることが想定されるが、バリウム検査用のX線テレビ診断装置、その他の各種X線診断装置であってもよい。
図1に示すように、X線診断装置1は、センサ4と、ガイドレール5と、撮像部6と、コンソール11とを備えている。
【0010】
センサ4は、物体B(
図3参照)を検出する。センサ4は、カメラ、光学式センサ、超音波センサ等である。センサ4は、カメラ、光学式センサ、及び、超音波センサの少なくとも1つであってもよいし、それらの2個又は3個を含んでいてもよい。
【0011】
ガイドレール5は、撮像部6の何処かに設置され、センサ4を沿わせて移動可能とする。ガイドレール5は、ガイド部の一例である。第1実施形態において、ガイドレール5は、アーム51に設置される。
【0012】
撮像部6は、制御部110による制御の下、被検体Pを撮像して当該被検体PのX線画像を取得する。撮像部6は、X線発生部10と、X線検出部20と、アーム51と、支持部52と、寝台装置40と、高電圧発生部50と、機構制御回路60と、機構部70と、画像処理部80とを備えている。
【0013】
撮像部6のX線発生部10は、X線管2と、X線照射野絞り12とを備える。X線管2は、制御部110の制御に従って、被検体Pに対してX線を照射する。X線管2は、X線を発生する真空管であり、陰極(フィラメント)より放出された熱電子を陽極と陰極の間に印加させた高電圧によって加速させてタングステン陽極に衝突させX線を発生させる。
【0014】
X線照射野絞り12は、制御部110の制御に従って絞りをスライドさせ、X線管2から照射されたX線に対してX線錘(コーンビーム)を形成する。X線照射野絞り12は、X線管2と被検体Pとの間に位置し、X線管2から照射されたX線ビームを、被検体Pの関心領域に対して選択的に照射されるように絞り込む。
【0015】
X線検出部20は、制御部110の制御に従って、被検体Pを透過したX線を2次元的に検出する。X線検出部20は、X線検出器(平面検出器、FPD:Flat Panel Detector)3と、ゲートドライバ22と、画像データ生成部23とを備える。
X線検出器3は、微小な素子を列方向及びライン方向に2次元的に配列して構成されたX線検出器の一例である。
【0016】
ゲートドライバ22は、X線検出器3から電荷を取り出すために設置される。画像データ生成部23は、X線検出部20から出力されたX線透過像の生データ(又は表面線量データ)を基に、X線透過像の画像データを生成する。
【0017】
画像データ生成部23は、電荷・電圧変換回路と、A/D(Analog to Digital)変換回路と、パラレル・シリアル変換回路(全て図示省略)とを備える。電荷・電圧変換回路は、X線検出器3から読み出された電荷を電圧に変換する。A/D変換回路は、電荷電圧変換回路の出力をデジタル信号に変換する。パラレル・シリアル変換回路は、X線検出器3からライン単位でパラレルに読み出されるデジタル変換された画像データをシリアルな信号に変換する。
【0018】
アーム51は、X線発生部10とX線検出部20とを一体として保持する。アーム51は、アーム部の一例である。なお、X線発生部10とX線検出部20とを一体として保持するアームは、「C」形状のいわゆるCアームに限定されるものではない。例えば、X線発生部10とX線検出部20とを一体として保持するアームは、「Ω」形状のいわゆるΩアームであってもよい。
【0019】
支持部52は、アーム51を移動可能に支持する。アーム51の移動には、アーム51の支持軸回転による移動、円弧動による移動、及び、スライドによる移動が含まれる。
【0020】
寝台装置40は、寝台本体41と、天板42とを備える。寝台装置40は、寝台の一例である。寝台本体41は、天板42を保持し、天板42を移動(例えば、スライド動、ローリング)させる各動力部を備える。天板42は、被検体Pを載置する。
高電圧発生部50は、制御部110の制御により、X線発生部10のX線管2に高電圧電力を供給する。
機構制御回路60は、制御部110の制御により、機構部70に電気を供給してアーム51の回転を行わせたり、天板42のスライドを行わせたりする動力回路である。
【0021】
機構部70は、アーム移動機構71と、天板スライド機構72と、センサ移動検出機構73を備える。アーム移動機構71は、機構制御回路60を介した制御部110の制御によって、アーム移動機構71を構成する各動力部を動作させる。それにより、アーム移動機構71は、X線発生部10とX線検出部20とを保持するアーム51を、アーム51の円弧方向への回転を行わせたり、アーム51の支点を中心とする回転を行わせたりする。
【0022】
天板スライド機構72は、機構制御回路60を介した制御部110の制御によって、天板42を保持する寝台本体41を構成する各動力部を動作させる。それにより、天板スライド機構72は、寝台本体41を被検体Pの左右方向、鉛直方向、及び、体軸方向にスライドさせることができる。
センサ移動検出機構73は、機構制御回路60を介した制御部110の制御によって、センサ4にガイドレール5に沿った移動及び物体Bの検出を行わせる。
【0023】
画像処理部80は、画像メモリ81と、画像演算回路82とを備える。画像メモリ81は、制御部110の制御によって、画像データ生成部23からライン単位又はフレーム単位で順次出力される画像データを記憶する。
【0024】
画像演算回路82は、制御部110の制御によって、画像メモリ81に記憶された画像データに対して画像処理を施し、画像処理後の画像データを画像メモリ81に記憶させる。画像処理としては、X線透過像の画像データの拡大/階調/空間ファイルタ処理、時系列に蓄積された画像データの最小値/最大値トレース処理、サブトラクション処理、ノイズを除去するための加算処理等が挙げられる。
【0025】
コンソール11は、医用画像処理装置の一例である。コンソール11は、ディスプレイ90と、入力インターフェース100と、制御部110とを備えている。なお、制御部110は、撮像部6、例えば、アーム51に備わっていてもよい。
【0026】
ディスプレイ90は、制御部110による制御の下、画像処理部80によって処理されたX線透過像の画像データに、制御部110から提供されたX線照射条件等のテキスト・図形情報を合成させて表示する。
【0027】
入力インターフェース100は、術者による操作を受け付けて、被検体Pの患者情報や、被検体Pの観察対象部位に対して最適なX線照射条件等に応じた信号、センサ4によるスキャンを指示する旨を示す信号等を制御部110に送信する。入力インターフェース100は、入力部の一例である。術者は、ユーザの一例である。
【0028】
これに対して、センサ4は、入力インターフェース100から、制御部110、機構制御回路60、及び、機構部70を介して、信号を受信する。センサ4は、例えば、入力インターフェース100から当該センサ4によるスキャンを指示する旨を示す信号を受信したときに、撮像部6の移動及び物体の検出を行う。
【0029】
制御部110は、処理回路111と、メインメモリ112とを備える。制御部110は、入力インターフェース100から入力される操作者の指示に従って、X線診断装置1の全体の制御を行う。制御部110は、例えば、アーム51の移動予定の軌道と、センサ4によって検出された物体Bの位置とに基づいて、アーム51の移動を制御する。制御部110は、センサ移動検出機構73から物体Bの位置を取得する。制御部110は、アーム移動機構71を介して、アーム51の移動予定の軌道を取得しつつ、物体Bの位置と合わせて、アーム51の移動を制御する。
【0030】
処理回路111は、専用又は汎用のCPU(Central Processing Unit)又はMPU(Micro Processor Unit)の他、特定用途向け集積回路(ASIC)、及び、プログラマブル論理医用デバイス等の処理回路を意味する。処理回路111は、メインメモリ112に記憶された、又は、処理回路111内に直接組み込まれたプログラムを読み出し実行することで後述する機能を実現する。なお、処理回路111は、表示制御部及び制御部の一例である。また、プログラムは、医用画像処理プログラムの一例である。
【0031】
メインメモリ112は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等によって構成される。メインメモリ112は、処理回路111において用いられる各種処理プログラム(アプリケーションプログラムの他、OS(Operating System)等も含まれる)や、プログラムの実行に必要なデータを記憶する。
【0032】
図2は、第1実施形態に係るX線診断装置1のアーム51及びその周辺の外観を示す斜視図である。
図2に示すように、スタンド53には略水平な回転軸まわりに回転自在に支持部52が支持される。支持部52には、スライド回転自在にアーム51が支持される。アーム51の一端にはX線発生部10が搭載され、アーム51の他端には、X線検出部20が搭載される。
【0033】
ガイドレール5がアーム51の内面(X方向側の面)に設置されている。ガイドレール5は、アーム51の内面に沿って湾曲するように設置される。センサ4は、ガイドレール5に従って移動可能に設置される。センサ4は、モータを備えており、当該モータの回転によりガイドレール5に沿って移動する。
【0034】
なお、ガイドレール5iが支持部52の内面(X方向側の面)に設置されていてもよい。この場合、ガイドレール5iは、支持部52の内面に沿って湾曲するように設置される。センサ4iは、ガイドレール5iに従って移動可能に設置される。センサ4iは、モータを備えており、当該モータの回転によりガイドレール5iに沿って移動する。
【0035】
図3は、第1実施形態に係るX線診断装置1のアーム51及びその周辺の構成を示す側面図である。
図3に示すように、センサ4は、XZ平面に平行な面においてビームを送信し、物体Bとの間の距離を測定している。センサ4のホームポジションは、ガイドレール5の一端である。物体Bは、アーム回転中心点を挟んでセンサ4から反対側に位置する。また、物体Bは、アーム51の円弧動の軌道T上、すなわち、アーム51が中心点の周りを回転する軌道上に位置する。
【0036】
センサ4は、アーム51が停止しているときに、ホームポジションであるガイドレール5の一端から他端に移動しながら、一定間隔ごとの位置から、当該センサ4と物体Bとの間の距離を測定する(物体Bを検出する)。そして、センサ4は、アーム51の移動及び停止の後に、ガイドレール5の他端から一端に移動しながら、物体Bを検出する。
【0037】
アーム51を移動させると、周囲との位置関係は変化するので、アーム51が停止した状態で、センサ4はスキャンする。一方で、アーム51は、センサ4が停止しているときに、移動する。
【0038】
図4は、第1実施形態に係るセンサ4及びアーム51が移動する様子を示すフローチャートである。なお、センサ4及びアーム51の移動は、制御部110による制御の下で行われる。
ステップST1で、センサ4は、ホームポジションである、ガイドレール5の第1端に位置する。
【0039】
ステップST2で、制御部110は、アーム51が所定時間以内に移動する予定があるか否かを判定する。アーム51が移動する予定がある場合(ステップST2のYES)、制御部110は、センサ4にステップST3の処理を行わせる。アーム51が移動する予定がない場合(ステップST2のNO)、制御部110は、処理を終了する。
【0040】
ステップST3で、センサ4は、ガイドレール5の第1端から第2端までを移動しながら、物体Bを検出する。そのとき検出された物体Bに関するデータは、制御部110のメインメモリ112に記憶される。これは、アーム51を移動させて、被検体Pを検査する前に、アーム51と、周囲の対象物との間の距離を把握するために、制御部110は、センサ4が1回スキャンした物体Bに関するデータ(周囲の対象物の位置等)を取得する。
【0041】
ステップST4で、アーム51は、ステップST3で検出された物体Bに関するデータに従って、移動する。アーム51の移動後の停止状態において、制御部110は、撮像部6の動作を制御して被検体Pに対するX線撮影を行う。ここで、X線撮影は、単純撮影及び透視撮影に大別される。単純撮影は、比較的高い管電流にてX線を照射する撮影であり、主に、CR(Computed Radiography)画像を収集する1ショット撮影を意味するが、動画撮影に利用される場合もある。一方で、透視撮影は、比較的低い管電流にてX線を照射する撮影であり、主に、動画撮影を意味する。また、透視撮影は、連続透視及びパルス透視に大別される。パルス透視とは、連続透視と異なり、X線のパルスが断続的に繰り返し照射される透視方法を意味する。パルス透視によれば、連続透視に比べ、透視画像の連続性(フレームレート)がやや劣るが被検体Pに対する被ばく線量を抑えることができる。本明細書において、X線撮影は、単純撮影及び透視撮影のいずれでも構わない。
【0042】
ステップST5で、制御部110は、アーム51が所定時間以内に移動する予定があるか否かを判定する。アーム51が移動する予定がある場合(ステップST5のYES)、制御部110は、センサ4にステップST6の処理を行わせる。アーム51が移動する予定がない場合(ステップST5のNO)、制御部110は、処理を終了する。
【0043】
ステップST6で、センサ4は、ガイドレール5の第2端から第1端までを移動しながら、物体Bを検出する。そのとき検出された物体Bに関するデータは、制御部110のメインメモリ112に記憶される。
【0044】
ステップST7で、アーム51は、ステップST6で検出された物体Bに関するデータに従って、移動する。アーム51の移動後の停止状態において、制御部110は、撮像部6の動作を制御して被検体Pに対するX線撮影を行う。その後、ステップST2の判定が行われる。
【0045】
これにより、センサ4と周囲の対象物との距離、当該対象物の大きさを正確に把握することができる。センサ4が移動しながら物体Bを検出することにより、干渉制御に必要なセンサ4の個数を減らすことができる。センサ4が移動するとともに、アーム51を移動させることにより、物体Bの3次元座標における位置を検出することができる。
【0046】
また、センサ4は、ビームを送信する向きを変更可能とする首振り機構を備えていてもよい。これにより、様々な角度でビームを送信可能なので、センサ4と、物体Bとの間の距離を精度よく測定することができる。
【0047】
また、被検体Pの術部に対する視野を変更するために、術者は、アーム51を移動させることがある。その後術者がアーム51の移動を停止させたときに、センサ4が再度、物体Bとの距離を測定してもよい。これにより、センサ4がガイドレール5に沿って移動可能な範囲(アーム51の、水平な支持軸からの角度θ)と、アーム51が円弧動するときの回転角度の範囲とを合わせた、広い範囲の各位置から、センサ4と、物体Bとの間の距離を測定することができる。
【0048】
物体Bの位置を特定する方法の一例を説明する。前提として、物体Bの位置を検出したときの、所定の位置を原点とする3次元座標(以下、所定座標という)におけるセンサ4の位置は、当該センサ4のガイドレール5における位置、アーム51の位置、角度等により特定可能である。物体Bの、センサ4から見た位置(センサ4から物体Bの相対位置、すなわち、センサ4の位置を原点とする3次元座標における物体Bの位置)は、ビームの送信方向の角度、及び、ビームの送信時間に応じた距離により、特定可能である。さらに、所定座標におけるセンサ4の位置と、センサ4から物体Bの相対位置とにより、所定座標における物体Bの位置を求めることができる。
【0049】
コンソール11の制御部110は、センサ4の位置と、物体Bの位置とに基づいて、アーム51と物体Bとの間の距離を算出し、当該距離に応じてアーム51が移動する速度を制御する。例えば、物体Bの位置が分かれば、制御部110は、当該物体Bの位置が、アーム51が今後移動する軌道Tに含まれるか否かを判定することができる。そして、物体Bの位置が軌道Tに含まれる場合、アーム51が物体Bに所定の距離まで接近したときには、制御部110は、移動するアーム51を減速させるように制御する。
【0050】
図5は、第1実施形態に係るアーム51の内面を示す正面図である。
図5(A)に示すように、アーム51の内面には、1組のセンサ4及びガイドレール5が設置されている。
【0051】
図5(B)に示すように、アーム51aの内面には、2組の、センサ4a及びガイドレール5aと、センサ4b及びガイドレール5bとが設置されている。このように、ガイドレールは、複数本が取り付けられていてもよい。また、センサ4a及び4bとして、カメラ、光学式センサ、及び、超音波センサの何れか2つ、又は、そのうちの1つが取り付けられていてもよい。ガイドレールが3本以上取り付けられている場合には、カメラ、光学式センサ、及び、超音波センサのそれぞれが1つ以上取り付けられていてもよい。
【0052】
複数のガイドレール5が設置されることにより、1つのセンサ4が故障しても、他のセンサ4が稼働するので、問題ない。次に、異なる位置から物体Bを検出するので、精度の向上が図れる。そして、左右方向の画角を大きくすることができる。また、スキャン時間を短くすることができる。例えば、2つのガイドレール5が設置されていれば、2つのセンサ4が半分の範囲ずつスキャンすればよいので、スキャン時間を短くすることができる。さらに、2つの同じ種類のセンサ4が同じ物体Bを同時に検出することにより、物体Bを立体視することができる。
【0053】
図6は、第1実施形態の変形例に係るアーム51及びその周辺の構成を示す側面図である。
図6に示すように、アーム51の側面に、2本のガイドレール5c及び5dが取り付けられている。ガイドレール5cは、アーム51の側面の内周線に沿って湾曲するように設置される。ガイドレール5dは、アーム51の側面の外周線に沿って湾曲するように設置される。
【0054】
そして、センサ4cは、ガイドレール5cに従って移動可能に設置される。センサ4cは、モータを備えており、当該モータの回転によりガイドレール5cに沿って移動する。センサ4dは、ガイドレール5dに従って移動可能に設置される。センサ4dは、モータを備えており、当該モータの回転によりガイドレール5dに沿って移動する。
【0055】
センサ4c及び4dは、Y方向の逆方向(
図6紙面の奥から手前に向かう方向)にビームを送信する。換言すれば、センサ4c及び4dは、当該センサの検出面がアーム51の側面の外側を向くように設置される。なお、センサ4c及び4dは、ビームを送信する向きを変更可能とする首振り機構を備えていてもよい。また、センサ4及びガイドレール5がアーム51の両側面に1組又は2組ずつ設置されていてもよい。これにより、Y方向として
図6紙面の手前から奥に向かう方向と、Y方向の逆方向として
図6紙面の奥から手前に向かう方向とをチェックすることができる。
【0056】
〔第2実施形態〕
第2実施形態は、撮像部6aの天井台車8にセンサ4eを備えるX線診断装置1の構成に関する。
図7は、第2実施形態に係る天吊り型の撮像部6aの一部分を示す斜視図である。
図7に示すように、X線診断装置1の撮像部6aは、アーム51、支持部52、アーム54、レール7、及び、天井台車8を備えている。
【0057】
レール7は、検査室の天井(図示せず)に設置されている。天井台車8は、レール7の長手方向に沿って移動可能である。アーム54の上端は、天井台車8に支持される。支持部52は、アーム54の下端に設けられ、アーム51を当該アーム51の円弧形状に沿うようにスライド可能に支持し、アーム51を円弧形状の半径を軸に回転可能に保持する。アーム51は、両端にX線管2及びX線検出器3を有する。なお、アーム54及び支持部52は、支持部の一例であってもよい。
【0058】
図8(A)は、第2実施形態に係る天井台車8及びその周辺を示す側面図である。
図7及び
図8(A)に示すように、ガイドレール5eは、天井台車8の下面に設置されている。センサ4eは、ガイドレール5eに従って移動可能に設置される。センサ4eは、モータを備えており、当該モータの回転によりガイドレール5eに沿って移動する。
【0059】
図8(B)は、第2実施形態に係る天井台車8の下面を示す下面図である。
図8(B)に示すように、ガイドレール5eは、天井台車8の下面の略周囲に設置されている。センサ4eは、ガイドレール5eに従って天井台車8の下面の略周囲を移動する。センサ4eは、天井台車8が停止しているときに、移動する。一方、天井台車8は、センサ4eが停止しているときに、移動する。センサ4eは、Z方向(鉛直下方向)にビームを送信し、物体Bとの間の距離を測定している。
【0060】
これにより、天井台車8の下面に存在する物体Bを検出することができる。さらに、センサ4eがガイドレール5eに沿って移動可能な範囲と、天井台車8がレール7に沿って移動する範囲とを合わせた、広い範囲の各位置から、センサ4eと、物体Bとの間の距離を測定することができる。
なお、センサ4eは、ビームを送信する向きを変更可能とする首振り機構を備えていてもよい。
また、第2実施形態においても、X線診断装置1の動作は、
図4のフローチャートで説明した動作と同等であるので説明を省略する。
【0061】
〔第3実施形態〕
第3実施形態は、撮像部6の天板42の下面にセンサ4fを備えるX線診断装置1の構成に関する。
図9は、第3実施形態に係る寝台装置40の構成を示す側面図である。
図9に示すように、寝台装置40は、寝台本体41と、天板42とを備える。天板42は、寝台本体41上を長手方向に水平移動する。
【0062】
ガイドレール5fは、天板42の下面のうち、寝台本体41とは重ならない部分に長手方向に設置されている。センサ4fは、ガイドレール5fに従って移動可能に設置される。センサ4fは、モータを備えており、当該モータの回転によりガイドレール5fに沿って移動する。センサ4fは、天板42が停止しているときに、移動する。一方、天板42は、センサ4fが停止しているときに、移動する。
【0063】
これにより、センサ4fがガイドレール5fに沿って移動可能な範囲と、天板42が移動する範囲とを合わせた、広い範囲の各位置から、センサ4fと、物体Bとの間の距離を測定することができる。
【0064】
センサ4fは、Z方向にビームを送信し、物体Bとの間の距離を測定している。これにより、アーム51に設置されたセンサ4では検出できない、天板42の鉛直下方向に存在する物体B、例えば、アーム51のX線管2を検出することができる。さらに、検査のときには被検体P及び寝台装置40をブルーシートで覆うので、術者は天板42の下が死角となり見えないが、術者の足を検出することができる。さらに、アーム51が術者の足に当たらないようにすることができる。すなわち、人(術者)と物(アーム51)との位置関係の把握に用いることができる。
【0065】
なお、センサ4fは、ビームを送信する向きを任意の方向に変更可能とする首振り機構を備えていてもよい。例えば、センサ4fは、X方向にビームを送信してもよい。これにより、検査のために被検体Pを載せた天板42が移動する方向に物体B、例えば、何等かの障害物が存在するか否かを判断することができる。そして、アーム51だけでなく、天板42の移動に関しても、干渉制御を行うことができる。すなわち、物体Bの位置が天板42の予定軌道に含まれる場合、天板42が物体Bに所定の距離まで接近したときには、制御部110は、移動する天板42を減速させるように制御してもよい。
また、第3実施形態においても、X線診断装置1の動作は、
図4のフローチャートで説明した動作と同等であるので説明を省略する。
【0066】
〔第4実施形態〕
第4実施形態は、撮像部6のX線管2、X線検出器3にセンサ4g、4hを備えるX線診断装置1の構成に関する。
図10(A)は、第4実施形態に係るアーム51及びその周辺の構成を示す側面図である。
図10(B)は、第4実施形態に係るX線管2の上面を示す上面図である。
図10(C)は、第4実施形態に係るX線検出器3の下面を示す下面図である。
【0067】
図10(A)及び(B)に示すように、ガイドレール5gは、X線管2の外側面を囲むように設置されている。センサ4gは、ガイドレール5gに従って移動可能に設置される。センサ4gは、モータを備えており、当該モータの回転によりガイドレール5gに沿って移動する。センサ4gは、X線管2からX線検出器3へ向かう方向にビームを送信し、物体Bとの間の距離を測定している。これにより、例えば、検査のために被検体を載せた天板42をアーム51に接近させる前に、センサ4gと、X線検出器3との間に存在する物体Bを検出することができる。
【0068】
図10(A)及び(C)に示すように、ガイドレール5hは、X線検出器3の外側面を囲むように設置されている。センサ4hは、ガイドレール5hに従って移動可能に設置される。センサ4hは、モータを備えており、当該モータの回転によりガイドレール5hに沿って移動する。センサ4hは、X線検出器3からX線管2へ向かう方向にビームを送信し、物体Bとの間の距離を測定している。これにより、例えば、検査のために被検体を載せた天板42をアーム51に接近させる前に、センサ4hと、X線管2との間に存在する物体Bを検出することができる。
【0069】
なお、X線管2の絞りカバーのスリットを通して、センサ4gが物体Bを検出してもよい。この場合、X線管2の絞りカバーの内部において、センサ4gが移動する。X線検出器3のカバーのスリットを通して、センサ4hが物体Bを検出してもよい。この場合、X線検出器3のカバーの内部において、センサ4hが移動する。
【0070】
また、センサ4gは、X線管2の絞りカバーのスリットに従って移動可能に設置されてもよい。センサ4hは、X線検出器3のカバーのスリットに従って移動可能に設置されてもよい。
そして、X線管2に設置されたセンサ4gと、X線検出器3に設置されたセンサ4hとは、両方があってもよいし、何れか一方があってもよい。
【0071】
さらに、センサ4g、4hは、X線管2と、X線検出器3との間にある物体B(又は、被検体P)を検出するものであるが、X線管2と、X線検出器3との間の距離を測定してもよい。X線管2と、X線検出器3とは、時間経過に伴って近付いたり、離れたりするが、上記距離を測定することにより、焦点-フィルム間距離であるSID(Source Image receptor Distance)を調整することができる。
また、第4実施形態においても、X線診断装置1の動作は、
図4のフローチャートで説明した動作と同等であるので説明を省略する。
【0072】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、X線診断装置において、撮像部の干渉制御を精度よく行うことができる。
【0073】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0074】
1…X線診断装置
2…X線管
3…X線検出器
4…センサ
5…ガイドレール
6…撮像部
7…レール
8…天井台車
40…寝台装置
41…寝台本体
42…天板
51…アーム
52…支持部
100…入力インターフェース
110…制御部
B…物体
P…被検体