(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128443
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】ウェットティシュー製品
(51)【国際特許分類】
A47K 7/00 20060101AFI20240913BHJP
B65D 83/08 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
A47K7/00 E
B65D83/08 B
A47K7/00 H
A47K7/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037420
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 光
【テーマコード(参考)】
3E014
【Fターム(参考)】
3E014LB01
(57)【要約】
【課題】大容量でシートが乾きにくく、収納容器内のシートの残り枚数に関わらず、全般的に取り出し口にシートが詰まりにくい、ウェットティシュー製品を提供する。
【解決手段】不織布のシートを巻き取って薬液を含浸させた、ウェットティシューのロール体と、ロール体を収納する容器本体と、容器本体の開口部を閉塞するように着脱自在に取り付けられる蓋体とを備えた収納容器とを含む、ウェットティシュー製品であって、シートは、流れ方向における略等間隔において、幅方向にミシン目を施されており、ロール体の周長に対する、シートのミシン目間の長さであるシート長の比率が80%以上135%以下であり、薬液の含浸倍率が200%以上350%以下であり、ロール体に含まれるシートの枚数は、50枚以上130枚以下であり、50℃の環境下で7日間経過後の重量減量率が20%以下である、ウェットティシュー製品を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布のシートを巻き取って薬液を含浸させた、ウェットティシューのロール体と、
上端部に開口部を有し、前記ロール体を収納する容器本体と、前記容器本体の開口部を閉塞するように着脱自在に取り付けられる蓋体とを備えた収納容器とを含む、ウェットティシュー製品であって、
前記シートは、流れ方向における略等間隔において、幅方向にミシン目を施されており、
前記ロール体の周長に対する、前記シートのミシン目間の長さであるシート長の比率が80%以上135%以下であり、
前記シートにおける前記薬液の含浸倍率が200%以上350%以下であり、
前記ロール体に含まれる前記シートの枚数は、50枚以上130枚以下であり、
前記シートにおける、50℃の環境下で7日間経過後の重量減量率が20%以下であることを特徴とする、ウェットティシュー製品。
【請求項2】
前記シートに含まれる木質原料の含有率が30%以上80%以下であることを特徴とする、請求項1に記載のウェットティシュー製品。
【請求項3】
前記シートから含浸した前記薬液を圧搾したとき、搾り液のアルコール濃度が5重量%以上70重量%以下であることを特徴とする、請求項1に記載のウェットティシュー製品。
【請求項4】
前記シートの絶乾状態における坪量は40g/m2以上65g/m2以下であることを特徴とする、請求項1に記載のウェットティシュー製品。
【請求項5】
前記シートにおける、前記薬液の含浸の均一性(1枚ごとの前記含浸倍率の相対標準偏差)は、20%以下であることを特徴とする、請求項1に記載のウェットティシュー製品。
【請求項6】
前記シートに、KES圧縮試験機によって0.5gf/cm2の荷重をかけた際の前記シートの厚みT0が、500μm以上950μm以下であることを特徴とする、請求項1に記載のウェットティシュー製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不織布のシートに薬液を含浸させたウェットティシュー製品に関する。
【背景技術】
【0002】
ウェットティシューは、手指の清拭や机などの清掃に用いられ、手指を拭くためには程よい柔らかさが、物を拭くためには程よい強度が求められる。
【0003】
ウェットティシューには様々な形状があり、ミシン目を挿入しながらロール状に巻き取ったシートを、プラスティックのボトルとキャップ(場合によりエラストマーなどの取り出し中栓を有する)に封入した、所謂ボトルタイプのウェットティシューがある。
【0004】
ボトルタイプのウェットティシューはシートをロール状に巻き取っているため、コンパクトで大容量の製品にすることができる。また、ボトル内のウェットティシューは外気に晒されず、取り出してから初めて外気に触れるため、乾きにくいというメリットもある。
【0005】
そのようなボトルタイプのウェットティシューは、シートをロールの中心から取り出して、ボトルの取り出し口に挿入して引き出して使用する。
【0006】
ウェットティシューの収納容器の文献として、例えば特許文献1には、シート体の長手方向に所定の間隔でミシン目が形成されたウェットティシューのロール体を収納する容器本体と、該容器本体の上面に取り付けられ該容器本体に嵌着される蓋体とを備えたウェットティシュー収納容器であって、上記蓋体は、上記蓋体の上面に位置される取出部と、上記蓋体の上面にヒンジを介して上記取出部を開閉可能に設けられる小蓋と、上記取出部の下面に設けられる貫通孔と、上記貫通孔に取り付けられ、上記ウェットティシューと係合するために設けられる係合孔を有するゴム状弾性体からなる口栓とを備え、上記取出部は、上記蓋体の上面に対して傾斜していることを特徴とするウェットティシュー収納容器が開示されている。
【0007】
また、ウェットティシューの収納容器の取り出し口の文献として、特許文献2には、ウェットティシュー容器の蓋材の取出口部に嵌着するパッキンであって、ゴム弾性を有する楕円状の円板で、中央位置に、外周の形状に相似する楕円状の取出孔を設け、該楕円状の取出孔の短軸線上の一方外側に、取出孔に連通して外周に至り上面から下面に至る所定幅のスリット状切欠きを設け、楕円状の取出孔の短軸線上の他方外側に、スリット状切欠きと対向させて取出孔に連通し上面から下面に至る窪み状切欠きを設け、下面の周縁部から中央上方へ、中央部に所定肉厚をもたせて漸次薄肉にし、かつ、蓋材の取出口部に嵌着したときに、スリット状切欠きと窪み状切欠きが潰れて隙間がなくなって、楕円状の取出孔が縮径して円形状の取出孔になることを特徴とする易着脱及び切断ウェットティシュー用パッキンが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2016-216116号公報
【特許文献2】特開2008-074457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ボトルタイプのウェットティシューは、乾燥状態において所定の間隔でミシン目を挿入したシートを巻き取ってロール状にした後、薬液を含浸させたウェットロール体を容器に封入して製造される。
このため、シートを1枚ごとに薬液を含浸させてから積層するタイプの製品に比べ、薬液がシートに拡散しにくいため、防菌、防カビのために薬液の含浸倍率(不織布重量に対する薬液重量の比)を高くする必要がある。
【0010】
しかしながら、含浸倍率が高い場合には、ボトル内のシートの残り枚数が少なくなったときに、自立できなくなったロール体においてシート同士が絡んだり、シート同士が張りついたりしてしまい、そのような状態のまま持ち上がって取り出し口に詰まってしまう問題があった。
【0011】
一方で、含浸率を低くすると、カビや菌の繁殖の懸念や、開封してから使い終わるまでにシートが乾いてしまう等の問題がある。
【0012】
このように、ボトルタイプのウェットティシュー製品において、容量と乾きにくさ、残り枚数が少なくなったときの取り出し性を全て満たすことは困難であった。
【0013】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、大容量でシートが乾きにくく、収納容器内のシートの残り枚数に関わらず、全般的に取り出し口にシートが詰まりにくい、ウェットティシュー製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
発明者は鋭意検討を行い、不織布のシートを巻き取って薬液を含浸させた、ウェットティシューのロール体と、上端部に開口部を有し、ロール体を収納する容器本体と、容器本体の開口部を閉塞するように着脱自在に取り付けられる蓋体とを備えた収納容器とを含む、ウェットティシュー製品において、シートの流れ方向における略等間隔において、幅方向にミシン目を施し、かつ、ロール体の周長に対するシートのシート長の比率、シートの薬液の含浸倍率、ロール体に含まれるシートの枚数、及びシートにおける50℃の環境下で7日間経過後の重量減量率を、いずれも所定の数値範囲内に規定することで、大容量でシートが乾きにくく、収納容器内のシートの残り枚数に関わらず、全般的に取り出し口にシートが詰まりにくい、ウェットティシュー製品とすることができ、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下のものを提供する。
【0015】
(1)本発明の第1の態様は、不織布のシートを巻き取って薬液を含浸させた、ウェットティシューのロール体と、上端部に開口部を有し、前記ロール体を収納する容器本体と、前記容器本体の開口部を閉塞するように着脱自在に取り付けられる蓋体とを備えた収納容器とを含む、ウェットティシュー製品であって、前記シートは、流れ方向における略等間隔において、幅方向にミシン目を施されており、前記ロール体の周長に対する、前記シートのミシン目間の長さであるシート長の比率が80%以上135%以下であり、前記シートにおける前記薬液の含浸倍率が200%以上350%以下であり、前記ロール体に含まれる前記シートの枚数は、50枚以上130枚以下であり、前記シートにおける、50℃の環境下で7日間経過後の重量減量率が20%以下であることを特徴とする、ウェットティシュー製品である。
【0016】
(2)本発明の第2の態様は、(1)に記載のウェットティシュー製品であって、前記シートに含まれる木質原料の含有率が30%以上80%以下であることを特徴とするものである。
【0017】
(3)本発明の第3の態様は、(1)に記載のウェットティシュー製品であって、前記シートから含浸した前記薬液を圧搾したとき、搾り液のアルコール濃度が5重量%以上70重量%以下であることを特徴とするものである。
【0018】
(4)本発明の第4の態様は、(1)に記載のウェットティシュー製品であって、前記シートの絶乾状態における坪量は40g/m2以上65g/m2以下であることを特徴とするものである。
【0019】
(5)本発明の第5の態様は、(1)に記載のウェットティシュー製品であって、前記シートにおける、前記薬液の含浸の均一性(1枚ごとの前記含浸倍率の相対標準偏差)は、20%以下であることを特徴とするものである。
【0020】
(6)本発明の第6の態様は、(1)に記載のウェットティシュー製品であって、前記シートに、KES圧縮試験機によって0.5gf/cm2の荷重をかけた際の前記シートの厚みT0が、500μm以上950μm以下であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、大容量でシートが乾きにくく、収納容器内のシートの残り枚数に関わらず、全般的に取り出し口にシートが詰まりにくい、ウェットティシュー製品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態に係るウェットティシュー製品の全体を示す斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るウェットティシューロール体の全体を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
【0024】
<ウェットティシュー収納容器>
本発明の一実施形態に係るウェットティシュー製品1は、
図1及び
図2に示すように、不織布のシート10x(以下、ウェットティシュー10xとも称する)を巻き取って薬液を含浸させた、ウェットティシューロール体10(以下、単にロール体10とも称する)と、上端部に開口部を有し、ロール体10を収納する容器本体21と、容器本体21の開口部を閉塞するように着脱自在に取り付けられる蓋体22とを備えたウェットティシュー収納容器20(以下、単に収納容器20とも称する)とを含むものである。
【0025】
(容器本体)
ウェットティシュー収納容器20の容器本体21は、ロール体10を収納できる大きさであれば、形状は特に限定されないが、持ち運びのしやすさの観点から、
図1に示すように、高さ方向の中央部に、上端部及び下端部のそれぞれから連続的に直径が小さくなるくびれ部が形成されている(いわゆるウェストシェイプ形状である)ことが好ましい。
【0026】
(蓋体)
収納容器20の蓋体22において、取り出し口の材質や形状は限定されないが、例えば
図1に示すように、貫通孔221と、貫通孔221の近傍に設けられた導入孔222と、貫通孔221と導入孔222とを連通する誘導路223と、貫通孔221、導入孔222、誘導路223を開閉自在に覆う小蓋224と、を備えていてもよい。
また、蓋体22は、貫通孔221を閉塞するように取り付けられ、シート10xを引き出す引き出し孔225を有した、エラストマーからなる中栓226を備えることが好ましい。中栓226を備えることで、取り出し時に後述するシート10xのミシン目10cを切り取りやすくなり、取り出し性が適正化しやすい。
【0027】
<ウェットティシュー>
(ロール体)
本発明の一実施形態に係るウェットティシューロール体10は、
図2に示すように、不織布のシート10xを巻き取って薬液を含浸させたものである。
なお、
図2に示すように、シート10xの表面のうち、ロール外側に指向した表面を表面10a(シート10xの表面)と称し、ロール中心部に指向した表面を裏面10b(シート10xの裏面)と称する。また、シート10xの端部をロール体10の最外周の端縁10eと称する。
【0028】
シート10xは、流れ方向における略等間隔において、幅方向にミシン目10cを施されており、ミシン目10cの間を1枚のシート10xとする。なお、シート10xは1プライ又は2プライであることが好ましく、1プライであることがより好ましい。
1枚のシート10xにおけるシート長は、下限値は好ましくは150mm以上であり、より好ましくは180mm以上であり、更に好ましくは200mm以上である。また、上限値は好ましくは300mm以下であり、より好ましくは280mm以下であり、更に好ましくは260mm以下である。
また、1枚のシート10xにおけるシート幅は特に限定されないが、下限値は好ましくは100mm以上であり、より好ましくは120mm以上であり、更に好ましくは130mm以上である。また、上限値は好ましくは180mm以下であり、より好ましくは160mm以下であり、更に好ましくは150mm以下である。
【0029】
さらに、ウェットティシューロール体10の周長は、下限値は好ましくは110mm以上であり、より好ましくは150mm以上であり、更に好ましくは200mm以上である。また、上限値は好ましくは375mm以下であり、より好ましくは340mm以下であり、更に好ましくは300mm以下である。
【0030】
そして、ロール体10の周長に対する、シート10xのシート長の比率が80%以上135%以下である。比率が80%未満であると、シート10x同士が絡まりやすくなり、取り出し口への詰まりが発生する。比率が135%を超えると、ロール体10におけるシート10xの枚数が少なくなり、ウェットティシュー製品1が大容量とはいえなくなる。
なお、ロール体10の周長に対する、シート10xのシート長の比率は85%以上125%以下であることが好ましく、90%以上120%以下であることがより好ましい。
【0031】
ロール体10の周長は、ムラテックKDS株式会社製ダイヤメータールールを用いて測定する。測定は、10個のロール体10を測定し、測定結果を平均して算出する。
シート10xのシート長は、JIS規格の30cm定規(例えば、シンワ測定株式会社製の直尺シルバー、材質ステンレス)を用い、1個のロール体10の巻き終わりから5枚分を測定する。そして、10個のロール体10について測定し、測定結果を平均して算出する。
【0032】
なお、ロール体10の高さは、下限値は好ましくは100mm以上であり、より好ましくは120mm以上であり、更に好ましくは130mm以上である。また、上限値は好ましくは180mm以下であり、より好ましくは160mm以下であり、更に好ましくは150mm以下である。
ロール体10の高さが100mm未満であると、一度に使用するシート10xの枚数が多くなり、大容量とはいえなくなる。ロール体の高さが180mmを超えると、収納容器20内のシート10xの残り枚数が少なくなったときに、自立できなくなったロール体10においてシート10x同士が絡んだり、シート10x同士が貼り付いたりしてしまい、そのような状態のまま持ち上がって、取り出し口に詰まりやすくなる。
ロール体10の高さは、ロール体10の天面部にJIS規格の30cmの定規(例えば、シンワ測定株式会社製の直尺シルバー、材質ステンレス)を置いて、地面からの距離を周長方向で4点測定して平均する。ロール体10の天面が水平でない場合は、最も高い部分を計測する。そして、10個のロール体10について測定し、測定結果を平均して算出する。
【0033】
また、ミシン目10cはカット部と非カット部から形成され、カット部の長さは、下限値は好ましくは8mm以上であり、より好ましくは10mm以上であり、更に好ましくは15mm以上である。また、上限値は好ましくは25mm以下であり、より好ましくは22mm以下であり、更に好ましくは20mm以下である。非カット部の長さは、下限値は好ましくは0.1mm以上であり、より好ましくは0.2mm以上であり、更に好ましくは0.3mm以上である。また、上限値は好ましくは0.8mm以下であり、より好ましくは0.6mm以下であり、更に好ましくは0.4mm以下である。
また、ミシン目10cにおいて、ボンド率(非カット部の長さ÷(カット部の長さ+非カット部の長さ))は、下限値は好ましくは1%以上であり、より好ましくは1.3%以上であり、更に好ましくは1.5%以上である。また、上限値は好ましくは3%以下であり、より好ましくは2.5%以下であり、更に好ましくは2.3%以下である。
また、1枚のシート10x(1つのミシン目10c)当たりの非カット部の数は、下限値は好ましくは5箇所以上であり、より好ましくは6箇所以上であり、更に好ましくは7箇所以上である。また、上限値は好ましくは15箇所以下であり、より好ましくは13箇所以下であり、更に好ましくは11箇所以下である。
【0034】
(シートの材質)
シート10xに用いる不織布は、一般的な合成繊維及びパルプ繊維ウェブを混載したものでもよいし、合成繊維の上にパルプ繊維ウェブを積層した上で、水流交絡して一体化したものでもよい。
合成繊維としては、例えばナイロン、ビニロン、ポリエステル、アクリル、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリスチレンからなる群から選択された1種類以上の合成繊維を含むことが好ましい。
【0035】
パルプ繊維は、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)等、一般的なパルプ繊維(木材パルプ)を用いることができる。その中でも、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)及び広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)を含むことが好ましい。また、パルプ繊維におけるNBKPとLBKPの含有割合は50:50以上100:0以下が好ましく、70:30以上100:0以下がより好ましく、90:10以上100:0以下が更に好ましく、100:0が最も好ましい。
NBKPとしては、例えばラジアータパイン、スラッシュパイン、サザンパイン、ロッジポールパイン、スプルース及びダグラスファーからなる繊維が好ましい。なお、NBKPの代わりにNUKP、LBKPの代わりにLUKPを用いることもできる。
また、その他レーヨン、リヨセル、コットン等、紙製品に用いられる繊維を特に制限なく用いることができる。
【0036】
このとき、シート10xに含まれる木質原料の含有率は、30%以上80%以下であることが好ましい。含有率が30%未満であると薬液が揮発しやすくなり、1枚のシート10xを使い終わるまでに乾いてしまう。含有率が80%を超えると、シート10x同士が張り付きやすくなり、取り出し口への詰まりが発生する。
なお、シート10xに含まれる木質原料の含有率は35%以上75%以下であることがより好ましく、45%以上65%以下であることが更に好ましい。
【0037】
上記の含有率における、シート10xに含まれる木質原料とは、例えばレーヨン、リヨセル、コットン、パルプ等を指す。
シート10xに含まれる木質原料の含有率は、「JIS L 1030-2 繊維製品の混用率試験方法」により測定する。
【0038】
(シートの物性)
シート10xの絶乾状態における坪量は40g/m2以上65g/m2以下であることが好ましい。坪量が40g/m2未満であるとシート10x同士が張り付きやすくなり、取り出し口への詰まりが発生する。坪量が65g/m2を超えるとシート10xが嵩張ってロール体10に含まれるシート10xの枚数が少なくなり、大容量とはいえなくなる。
なお、シート10xの絶乾状態における坪量は45g/m2以上60g/m2以下であることがより好ましく、50g/m2以上55g/m2以下であることが更に好ましい。
シート10xの絶乾状態における坪量は、JIS P 8124に準拠して測定する。
【0039】
そして、シート10xに、KES圧縮試験機によって0.5gf/cm2の荷重をかけた際のシート10xの厚みT0が500μm以上950μm以下であることが好ましい。T0が500μm未満であるとシート10x同士が張り付きやすくなり、取り出し口への詰まりが発生する。T0が950μmを超えるとシート10xが嵩張ってロール体10に含まれるシート10xの枚数が少なくなり、大容量とはいえなくなる。
なお、T0は550μm以上850μm以下であることがより好ましく、600μm以上800μm以下であることが更に好ましい。
【0040】
シートの10xの厚みT0は、KES-G5圧縮試験機(カトーテック株式会社製)を用いて測定する。
2cm2の加圧板と受圧板の間に、薬液を含浸させたシート10xを140mm×200mmの大きさにカットしたサンプルを設置し、0.0020cm/secの速さで加圧板を下降させ、その際に変化する圧力と、その時のサンプルの厚みを測定する。なお、シート10xのシート長及び/又はシート幅が140mm×200mmの大きさに満たないときは、該当するシート長及び/又はシート幅をカットせずにそのままサンプルとして用いる。このとき、厚みT0は圧力が0.5gf/cm2におけるサンプルの厚み(μm)とする。厚みT0の値は、10回の測定を行った平均値として算出した値である。
シート10xにおける厚みT0は後述する不織布の水流交絡の圧力、ワイヤーパターン、組成等、既知の方法で調整することができる。
【0041】
(薬液)
シート10xに含浸させる薬液は、通常ウェットティシューに用いられるアルコール、保湿剤、防腐剤、抗菌剤、安定化剤等を配合すればよい。
このとき、シート10xへの薬液の含浸倍率は200%以上350%以下である。含浸倍率が200%未満であると、1枚のシート10xを使い終わるまでに薬液が揮発して、乾いてしまいやすい。含浸倍率が350%を超えるとシート10x同士が張り付きやすくなり、取り出し口への詰まりが発生する。
【0042】
なお、含浸倍率は220%以上330%以下であることが好ましく、250%以上310%以下であることがより好ましい。
含浸倍率の測定方法は、まずシート10xの面積及び重量を測定し、その後、シート10xをアルコール溶液で洗浄し、絶乾させる。絶乾後、23℃、50%RH環境下で調湿し、シート10xの重量を測定する。そして、シート10x1gに対して含浸された薬液の重量を百分率で求め、含浸倍率とする。
【0043】
また、シート10xにおける、薬液の含浸の均一性(1枚ごとの前記含浸倍率の相対標準偏差)は、20%以下であることが好ましい。均一性が20%を超えると、シート10xの表面でカビや菌が繁殖するおそれがある。なお、薬液の含浸の均一性は18%以下であることがより好ましく、15%以下であることが更に好ましい。
【0044】
シート10xにおける薬液の含浸の均一性は、シート10xの1枚ごとの含浸倍率の相対標準偏差を算出することにより求められる。
なお、シート10xにおける薬液の含浸の均一性は、ロール体10と収納容器20の寸法を適正化することや、含浸液の充填方法(回数、流量、ノズルの形状、含浸倍率等)で調整することができる。
【0045】
さらに、シート10xから含浸した薬液を圧搾したとき、搾り液のアルコール濃度が5重量%以上70重量%以下であることが好ましい。アルコール濃度が5重量%未満であると、シート10x同士が張り付きやすくなり、取り出し口への詰まりが発生する。アルコール濃度が70重量%を超えると、1枚のシート10xを使い終わるまでに薬液が揮発して乾いてしまう。
【0046】
なお、搾り液のアルコール濃度は10重量%以上60重量%以下であることがより好ましく、15重量%以上50重量%以下であることが更に好ましい。
搾り液のアルコール濃度の測定は、薬液を含浸したシート10x(ウェットティシュー10x)を圧搾した搾り液を用いて実施する。アルコール濃度は既知の方法(例えば、日本薬局方のアルコール数測定法:第2法ガスクロマトグラフ法等)で測定することができる。
【0047】
そして、シート10xにおける、50℃の環境下で7日間経過後の重量減量率が20%以下である。重量減量率が20%を超えると、1枚のシート10xを使い終わるまでに薬液が揮発して乾いてしまう。
なお、重量減量率は15%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましい。
【0048】
重量減量率は、以下のように測定する。
まず、収納容器20から1枚目のシート10xを途中まで引き出して取り出し口にセットし、重量を測定する。次に、送風乾燥機(例えばヤマト科学(株)製 DKN912)内にて、設定温度を50℃とし、7日間(168時間)静置後、再度重量を測定する。その後、重量変動が0.1g以下となるまで絶乾させ、含浸液量を算出する。
そして、乾燥前重量(g)-乾燥後重量(g)/含浸液量(g)×100を乾燥減量(%)とする。上記試験を5個のサンプルについて実施し、測定値を平均したものを最終的な重量減量率とする。
【0049】
(ウェットティシュー製品の製造方法)
本実施形態に係るウェットティシュー製品1の製造方法としては、通常のウェットティシュー製品等と同様の工程で製造することができる。具体的には、まずウェットティシューロール体10の製造方法として、(1)不織布の製造、(2)スリット及びミシン目加工、(3)ロール巻き取り加工及び薬液含浸、といった工程によって、ウェットティシューロール体10を得ることができる。このとき、薬液含浸のタイミングはロール巻き取り加工の後であることが好ましい。
(1)不織布の製造については、一般的な不織布の製造方法であれば特に工程は限定されないが、主に(1-1)ウェブを製造する工程、(1-2)繊維を3次元的に絡合する工程、(1-3)水分を除去(乾燥)し、熱処理により熱融着性バインダー繊維を溶融する工程、等を含むことが好ましい。
【0050】
なお、シート10xが上述した水流交絡によって一体化する場合は、従来知られている合成繊維とパルプ繊維ウェブの水流交絡技術を用いてよく、そのような技術は、例えば特許第6758116号公報に詳細に記載されている。
その後、ウェットティシューロール体10を容器本体21に収納し、蓋体22を閉めることでウェットティシュー製品1となる。
【0051】
また、ロール体10に含まれるシート10xの枚数(すなわち、ウェットティシュー製品1における、収納容器20内に含まれるシート10xの入り枚数)は50枚以上130枚以下である。枚数が50枚未満であると、ウェットティシュー製品1が大容量とはいえなくなる。枚数が130枚を超えると、ロールが固巻きとなるため、シート10x同士が張り付きやすくなり、取り出し口への詰まりが発生する。
なお、ロール体10に含まれるシート10xの枚数は55枚以上120枚以下であることが好ましく、60枚以上100枚以下であることがより好ましい。
【0052】
以上説明したとおり、本実施形態によれば、大容量でシートが乾きにくく、収納容器内のシートの残り枚数に関わらず、全般的に取り出し口にシートが詰まりにくい、ウェットティシュー製品を提供することができる。
【実施例0053】
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【0054】
表1~表3に示す各条件において、実施例1~34及び比較例1~14のそれぞれの、ウェットティシューのロール体を容器本体及び蓋体を備えた収納容器に収納したウェットティシュー製品を作製し、以下の評価を行った。
【0055】
1.交換頻度の少なさ
モニター30名により、ウェットティシュー製品の容量の指標として、ウェットティシューを1ロール使い切ったときにおける、ロール体の交換頻度を4段階で評価した。評価は、交換頻度が少なく、長く使うことができるものを◎、交換頻度が一般的なウェットティシュー製品と同程度であり、実用上問題ないものを○、交換頻度がやや多く、手間がかかるものを△、交換頻度が多く、実用に耐えないものを×とし、一番人数が多かったものを最終的な評価とした。
【0056】
2.シートの乾きにくさ
モニター30名により、ウェットティシューの収納容器から1枚ウェットティシュー(シート)を取り出して使用したときにおける、ウェットティシュー(シート)の乾きにくさを4段階で評価した。評価は、使い終わっても湿り具合が使い始めと変わらず、問題ないものを◎、使い終わってもある程度湿っており、実用上問題ないものを○、使い終わる頃にほとんど乾いてしまっているものを△、使っている途中で乾いてしまい、実用に耐えないものを×とし、一番人数が多かったものを最終的な評価とした。
【0057】
3.シートの取り出し口への詰まりにくさ
モニター30名により、ウェットティシューの最後の数枚の収納容器からの取り出し時における、ウェットティシュー(シート)の取り出しやすさを4段階で評価した。評価は、1ロールを通じて詰まることがほとんどなく、使用上において問題ないものを◎、1ロールを通じて詰まることが概ねなく、実用上問題ないものを○、最後の数枚でつまりが生じる頻度が多く、取り出しにくいものを△、1ロールを通じて詰まりが生じる頻度が多く、実用に耐えないものを×とし、一番人数が多かったものを最終的な評価とした。
【0058】
4.カビや菌の繁殖の抑制
ロールの入り枚数が半分となる部分のシートを検体とし、日本薬局方に準拠した保存効力試験を実施した。菌液は標準真菌混合菌液(Aspergillus brasiliensis゜NBRC 9455、Candida albicans゜NBRC 1594)を用い、測定日は28日後とした。
評価は、菌数が検出下限(10個/0.4g)未満のものを◎、菌数が10個以上、接種した菌数の1%以下のものを○、菌数が10個以上、接種した菌数の1%以上5%以下のものを△、菌数が接種した菌数の5%を超えるものを×とした。
【0059】
表1及び2に、各実施例の条件及び評価結果を示し、表3に、各比較例の条件及び評価結果を示す。
【表1】
【0060】
【0061】
【0062】
以上より、本実施例によれば大容量でシートが乾きにくく、収納容器内のシートの残り枚数に関わらず、全般的に取り出し口にシートが詰まりにくい、ウェットティシュー製品が得られることが確認された。