(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128447
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】紙葉類搬送装置
(51)【国際特許分類】
B65H 5/38 20060101AFI20240913BHJP
B65H 5/06 20060101ALI20240913BHJP
B65H 29/60 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
B65H5/38
B65H5/06 D
B65H29/60 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037426
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000001432
【氏名又は名称】グローリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114306
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 史郎
(74)【代理人】
【識別番号】100148655
【弁理士】
【氏名又は名称】諏訪 淳一
(72)【発明者】
【氏名】西影 研一
【テーマコード(参考)】
3F049
3F053
3F101
【Fターム(参考)】
3F049AA03
3F049DA12
3F049DB13
3F049EA21
3F049LA08
3F049LB04
3F053CA06
3F053CA22
3F053EA06
3F053EB07
3F053LA08
3F053LB04
3F101FA03
3F101FB02
3F101FC05
3F101FE22
3F101LA08
3F101LB04
(57)【要約】
【課題】紙葉類の搬送時に発生する騒音を低減する。
【解決手段】複数の搬送部材によって紙葉類を搬送路に沿って搬送する紙葉類搬送装置に、搬送される紙葉類の搬送方向前部と搬送路に設けられた部材との接触により紙葉類に搬送方向とは異なる方向への抵抗が生ずる場所に、抵抗を受けて変形しようとする紙葉類の紙葉面に対応して、紙葉面の変形を抑制する抑制部材を設ける。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の搬送部材によって紙葉類を搬送路に沿って搬送する紙葉類搬送装置であって、
搬送される紙葉類の搬送方向前部と搬送路に設けられた部材との接触により前記紙葉類に搬送方向とは異なる方向への抵抗が生ずる場所に、前記抵抗を受けて変形しようとする前記紙葉類の紙葉面に対応して設けられた、前記紙葉面の変形を抑制する抑制部材
を備えることを特徴とする紙葉類搬送装置。
【請求項2】
前記抑制部材は、前記搬送部材が紙葉類に接触する位置を節とする紙葉面の変形を抑制する位置に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の紙葉類搬送装置。
【請求項3】
前記抑制部材は、紙葉類を挟持して搬送する挟持搬送部材であり、搬送方向に配列された前記搬送部材の配列線上から外れた位置に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の紙葉類搬送装置。
【請求項4】
前記挟持搬送部材は、前記搬送路の幅方向において、前記搬送部材の両外側に設けられていることを特徴とする請求項3に記載の紙葉類搬送装置。
【請求項5】
前記挟持搬送部材は、前記搬送路の幅方向略中央に設けられていることを特徴とする請求項4に記載の紙葉類搬送装置。
【請求項6】
前記搬送部材は搬送ローラを含み、前記挟持搬送部材は、前記搬送ローラと同一の周速度で回転するローラであることを特徴とする請求項3に記載の紙葉類搬送装置。
【請求項7】
前記抑制部材は、紙葉面の変形を抑制するための凸部が突出形成された、紙葉類の搬送をガイドするガイド部材であり、
前記凸部は、搬送方向に進むにつれて突出高さが徐々に高くなるように形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の紙葉類搬送装置。
【請求項8】
前記凸部は、搬送方向に配列された前記搬送部材の配列線上から外れた位置に形成されていることを特徴とする請求項7に記載の紙葉類搬送装置。
【請求項9】
前記凸部は、前記搬送路の幅方向において、前記搬送部材の両外側に設けられていることを特徴とする請求項8に記載の紙葉類搬送装置。
【請求項10】
前記凸部は、前記搬送路の幅方向略中央に設けられていることを特徴とする請求項9に記載の紙葉類搬送装置。
【請求項11】
前記凸部が形成された前記ガイド部材を第1ガイド部材として、
前記第1ガイド部材と対向配置され、前記凸部の形状に合わせて凹部が形成された第2ガイド部材
をさらに備えることを特徴とする請求項7に記載の紙葉類搬送装置。
【請求項12】
前記凹部は、前記凸部が形成された領域と前記凸部が形成されていない領域とで前記第1ガイド部材と前記第2ガイド部材の隙間が同じになる形状で形成されていることを特徴とする請求項11に記載の紙葉類搬送装置。
【請求項13】
前記抵抗が生ずる場所は、前記紙葉類の搬送方向前部が、搬送方向を変換するガイド部材に接触する場所であることを特徴とする請求項1~11のいずれか1項に記載の紙葉類搬送装置。
【請求項14】
前記抵抗が生ずる場所は、前記紙葉類の搬送方向前部が、搬送路が複数の分岐搬送路に分岐する分岐部で前記分岐搬送路を選択的に切り換える分岐レバーに接触する場所であることを特徴とする請求項1~11のいずれか1項に記載の紙葉類搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、紙葉類を搬送する紙葉類搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紙幣処理装置、複写機等の紙葉類処理装置が利用されている。これらの紙葉類処理装置は、搬送路に沿って紙葉類を搬送する紙葉類搬送装置である。搬送路は、紙葉類を所定の搬送方向へ案内するガイド板を利用して、紙葉類の搬送方向を変えるように形成されることが多い。搬送方向を変える際、紙葉類が、搬送路に設けられた部材に衝突して音が発生する。特許文献1~3には、このような衝突音を低減するための騒音低減技術が開示されている。
【0003】
特許文献1には、紙葉類の搬送方向を変える際に、紙葉類がガイド板を叩いて発生する騒音の低減技術が開示されている。ガイド板を揺動可能にすることで、ガイド板への紙葉類の当たりが和らいで騒音が低減する。特許文献2には、紙葉類の搬送方向を変える際に、紙葉類が、搬送用のローラに衝突して発生する騒音の低減技術が開示されている。紙葉類の搬送方向前縁が、対向配置された2つのローラに衝突することなく、ローラの間に円滑に入るガイド板形状とすることで、騒音が低減する。特許文献3には、紙葉類の搬送方向を変える領域で、ガイド板にリブを設けて騒音を低減する技術が開示されている。リブを設けて紙葉類とガイド板の間の摩擦を減らすことで、紙葉類とガイド板の衝突が和らいで騒音が低減することが期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7-315622号公報
【特許文献2】特許第5193874号公報
【特許文献3】特開平9-297869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、紙葉類の処理時間を短縮するために、紙葉類搬送装置における紙葉類の搬送速度が高速化している。搬送速度の高速化に伴って騒音が増大する一方で、紙葉類搬送装置を利用する店舗や事務所では環境改善のための静音化が進められており、上記従来技術だけでは、十分な騒音低減効果を得られない場合があった。
【0006】
本開示は、上記従来の課題に鑑みてなされたもので、その目的の1つは、紙葉類の搬送時に発生する騒音を低減可能な紙葉類搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る紙葉類搬送装置は、複数の搬送部材によって紙葉類を搬送路に沿って搬送する紙葉類搬送装置であって、搬送される紙葉類の搬送方向前部と搬送路に設けられた部材との接触により前記紙葉類に搬送方向とは異なる方向への抵抗が生ずる場所に、前記抵抗を受けて変形しようとする前記紙葉類の紙葉面に対応して設けられた、前記紙葉面の変形を抑制する抑制部材を備える。
【0008】
上記構成において、前記抑制部材は、前記搬送部材が紙葉類に接触する位置を節とする紙葉面の変形を抑制する位置に設けられていてもよい。
【0009】
上記構成において、前記抑制部材は、紙葉類を挟持して搬送する挟持搬送部材であり、搬送方向に配列された前記搬送部材の配列線上から外れた位置に設けられていてもよい。
【0010】
上記構成において、前記挟持搬送部材は、前記搬送路の幅方向において、前記搬送部材の両外側に設けられていてもよい。
【0011】
上記構成において、前記挟持搬送部材は、前記搬送路の幅方向略中央に設けられていてもよい。
【0012】
上記構成において、前記搬送部材は搬送ローラを含み、前記挟持搬送部材は、前記搬送ローラと同一の周速度で回転するローラであってもよい。
【0013】
上記構成において、前記抑制部材は、紙葉面の変形を抑制するための凸部が突出形成された、紙葉類の搬送をガイドするガイド部材であり、前記凸部は、搬送方向に進むにつれて突出高さが徐々に高くなるように形成されていてもよい。
【0014】
上記構成において、前記凸部は、搬送方向に配列された前記搬送部材の配列線上から外れた位置に形成されていてもよい。
【0015】
上記構成において、前記凸部は、前記搬送路の幅方向において、前記搬送部材の両外側に設けられていてもよい。
【0016】
上記構成において、前記凸部は、前記搬送路の幅方向略中央に設けられていてもよい。
【0017】
上記構成において、前記凸部が形成された前記ガイド部材を第1ガイド部材として、前記第1ガイド部材と対向配置され、前記凸部の形状に合わせて凹部が形成された第2ガイド部材をさらに備えていてもよい。
【0018】
上記構成において、前記凹部は、前記凸部が形成された領域と前記凸部が形成されていない領域とで前記第1ガイド部材と前記第2ガイド部材の隙間が同じになる形状で形成されていてもよい。
【0019】
上記構成において、前記抵抗が生ずる場所は、前記紙葉類の搬送方向前部が、搬送方向を変換するガイド部材に接触する場所であってもよい。
【0020】
上記構成において、前記抵抗が生ずる場所は、前記紙葉類の搬送方向前部が、搬送路が複数の分岐搬送路に分岐する分岐部で前記分岐搬送路を選択的に切り換える分岐レバーに接触する場所であってもよい。
【発明の効果】
【0021】
本開示に係る紙葉類搬送装置によれば、紙葉類の搬送時に発生する騒音を低減することができる。紙葉類の紙葉面が騒音源となる場所に紙葉面の変形及び振動を抑制する抑制部材を設けることで騒音を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る紙葉類搬送装置の騒音低減方法を説明するための模式図である。
【
図2】
図2は、紙幣処理装置の構成例を説明するための図である。
【
図3】
図3は、抑制部材の例を説明するための図である。
【
図4】
図4は、抑制部材を設ける場所の例を説明するための斜視図である。
【
図5】
図5は、紙幣の変形を説明するための図である。
【
図8】
図8は、騒音対策のさらに別の例を示す図である。
【
図9】
図9は、抑制部材に対応して設けられた部材を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照しながら、本開示に係る紙葉類搬送装置の実施の形態について説明する。まず、紙葉類搬送装置による騒音の低減方法について説明した後、具体的な騒音対策について説明する。
【0024】
図1は、紙葉類搬送装置による騒音の低減方法を説明するための模式図である。
図1に矢印で示すように、紙葉類搬送装置は、搬送路に沿った所定の搬送方向へ紙葉類100を搬送する。
図1では図示を省略しているが、紙葉類搬送装置は、ローラ、ベルト、ガイド部材等を利用して紙葉類100を搬送する。例えば、ローラ又はベルトによって紙葉類100に搬送力が付与されて、ガイド部材によって紙葉類100の搬送位置の規制や搬送方向の変換が行われる。
【0025】
図1(a)に示すように、所定の搬送方向への搬送力が付与された紙葉類100にとって、搬送路に設けられたローラ、ガイド部材等の部材が、障害物200となる場合がある。紙葉類100の搬送方向前部がローラに衝突する場合、このローラが障害物200となって、紙葉類100に、搬送方向とは異なる方向への抵抗が作用する。ガイド部材を利用して紙葉類100の搬送方向を変える際に紙葉類100の搬送方向前部がガイド部材に衝突する場合、このガイド部材が障害物200となって、紙葉類100に、搬送方向とは異なる方向への抵抗が作用する。
【0026】
紙葉類100に対して障害物200による抵抗が生ずるときに騒音が発生する。従来、
図1(b)に示すように紙葉類100が障害物200と衝突して発生する衝突音301を、騒音源として、騒音対策が行われていた。具体的には、ローラやガイド部材の位置、形状等を変更して、紙葉類100との衝突を和らげることで衝突音301を小さくしていた。
【0027】
紙葉類100に抵抗が生ずる際に発生する騒音を解析したところ、紙葉面が変形して発生する変形音302が、主要な騒音源となる場合があることが分かった。例えば、
図1(b)に模式的に示したように、紙葉類100が障害物200と衝突する場所で発生する衝突音301よりも、衝突により紙葉類100が変形する領域100aで発生する変形音302の方が、音響放射パワーが大きい場合がある。なお、本実施形態では、衝突音301と区別するために便宜的に変形音302と記載するが、この記載が騒音の種類を限定するものではない。変形音302には、紙葉類100がばたついて発生する音、すなわち紙葉面の振動によって発生する音が含まれる。
【0028】
図1(b)に示す状況下においても、紙葉類100と障害物200との衝突を和らげる従来の騒音対策によって騒音を低減できるが、衝突音301が小さくなる一方で、主要な騒音源である変形音302が残ってしまうと、騒音を十分に低減できない。
【0029】
本実施形態に係る紙葉類搬送装置では、障害物200による抵抗が生ずる場所に、抵抗を受けて変形しようとする紙葉類100の紙葉面に対応して抑制部材250を設けて騒音を低減する。例えば、
図1(b)に示す変形音302の騒音源となる領域100aで紙葉面の変形及び振動を抑制するため、
図1(c)に示すように、この領域100aに対応して抑制部材250を設けることによって、変形音302を低減することができる。
【0030】
図1(c)は例示であって、抑制部材250を限定するものではない。抑制部材250の大きさ、形状及び配置位置は、特に限定されず、障害物200による抵抗に起因する紙葉類100の変形に合わせて決定される。抑制部材250は、紙葉類100に搬送力を付与する搬送部材が紙葉面に接触する位置を節として、変形又は振動する紙葉面の位置に対応して設けられる。例えば、搬送部材が紙葉類を挟持する位置を節とする紙葉面の変形又は振動で、振幅が最大となる腹の位置又はその近傍に、抑制部材250が設けられる。抑制部材250は、紙葉面の振幅を抑える大きさ及び形状で設ければよい。紙葉面1カ所の対策で、抑制部材250が1つ設けられてもよいし複数設けられてもよい。各抑制部材250が1つの部材で構成されてもよいし複数の部材で構成されてもよい。紙葉面の変形速度又は振動速度によって、発生する騒音のレベルが異なるため、速度が大きい場所への騒音対策として抑制部材250を設ければよい。例えば、紙葉面の変形又は振動の速度が小さい領域と大きい領域とがある場合は、速度が大きい領域に抑制部材250を設ければよい。
【0031】
次に、本実施形態に係る紙葉類搬送装置の具体例を説明する。紙葉類搬送装置の例を示した後、騒音対策について説明する。紙葉類搬送装置は、紙幣処理装置、小切手処理装置、帳票処理装置、投票用紙分類装置、複写機等の紙葉類処理装置を含む。紙葉類搬送装置の種類は特に限定されないが、紙幣処理装置を例に説明を続ける。
【0032】
図2は、紙幣処理装置(紙葉類搬送装置)1の構成例を説明するための図である。
図2(a)は紙幣処理装置1の外観図である。
図2(b)は紙幣処理装置1の内部構成を示す断面模式図である。
【0033】
紙幣処理装置1は、入金部10に受けた複数枚の紙幣を1枚ずつ装置内に取り込んで、搬送路31に沿って搬送する。搬送する各紙幣の種類を識別部40で識別した後、開口部を有する複数の集積部60へ紙幣を種類別に集積しながら、集積部60の集積対象外の紙幣をリジェクト部50に集積する。例えば、集積部60に紙幣が金種別に集積されて、それ以外の金種の紙幣、識別できない紙幣等がリジェクト部50に集積される。
【0034】
入金部10には、複数のローラ21~23を含む繰出ゲートが設けられている。繰出ゲートによって、入金部10の紙幣が1枚ずつに分離されて装置内へ繰り出される。キッカローラ21は、
図2(b)に矢印で示すように反時計回りに回転しながら、入金部10に載置された複数枚の紙幣を、一番下にある紙幣から順に装置内の搬送路31へ向けて蹴り出す。キッカローラ21の外周の一部にゴム等の高摩擦材が設けられている。キッカローラ21が回転すると所定の時間間隔で高摩擦材が一番下の紙幣の下面に接触して、この紙幣が装置内へ蹴り出される。キッカローラ21の蹴出方向下流に逆転ローラ22及び繰出ローラ23が配置されている。繰出ローラ23が、キッカローラ21と同様に、紙幣下面側で反時計回りに回転しながら、キッカローラ21が蹴り出した一番下の紙幣下面に搬送力を付与して、この紙幣をそのまま蹴出方向へと繰り出す。逆転ローラ22は、キッカローラ21が蹴り出した紙幣によって、他の紙幣が連れ出されないように、キッカローラ21が蹴り出した紙幣の上面z側で反時計回りに回転する。逆転ローラ22は、一番下の紙幣が連れ出そうとする紙幣を、蹴出方向と逆方向、すなわち入金部10へ戻すはたらきをする。
【0035】
こうして、入金部10の紙幣が1枚ずつ装置内の搬送路31へ繰り出される。搬送路31へ繰り出された紙幣は搬送ローラ32(32a、32b)によって搬送される。
図2(b)には1組の搬送ローラ32のみを示しているが、搬送路31に沿って複数の搬送ローラ32が配置される。
【0036】
例えば、モータ等の駆動部によって回転駆動される駆動ローラ32aと、駆動ローラ32aと共に回転するピンチローラ32bとの間を紙幣が通過することで、紙幣に搬送力が付与される。ピンチローラ32bは、搬送路31を挟んで駆動ローラ32aと対向配置されている。ピンチローラ32bは、駆動部による駆動力を直接受けてはいない。ピンチローラ32bは、ピンチローラ32bの外周面が駆動ローラ32aの外周面と接触するように付勢されており、この付勢によって、ピンチローラ32bが駆動ローラ32aと同じ周速度で回転する。
【0037】
搬送路31には、紙幣の搬送方向を変更するためのガイド部材であるガイド板33(33a、33b)が設けられている。対向配置された2枚のガイド板33a、33bの間に搬送路31が形成される。紙幣は、この搬送路31に沿って搬送される。すなわち、搬送ローラ32によって搬送される紙幣は、該紙幣の一方の面側に設けられたガイド板33aと他方の面側に設けられたガイド板33bとの間を搬送される。ガイド板33(33a、33b)が、搬送路31の幅方向における紙幣の搬送位置の規制に利用される場合もある。
【0038】
紙幣処理装置1は、
図2(b)に示すように、入金部10から左方向へ繰り出された紙幣の搬送方向をガイド板33によって変更しながら、リジェクト部50又は集積部60まで搬送する。搬送路31が複数の方向へ分岐する分岐部には、分岐レバー34が配置されている。分岐レバー34は、ソレノイド等の駆動部によって揺動可能に設けられている。紙幣処理装置1は、分岐レバー34の揺動を制御して、複数に分かれた分岐搬送路を選択的に切り換えることで、紙幣の搬送先を変更する。
【0039】
紙葉類搬送装置は、繰出ゲートに設けられたローラ21~23と、搬送路31に設けられた搬送ローラ32と、ガイド板33と、分岐レバー34とを含む。紙葉類搬送装置は、搬送ローラ32や分岐レバー34を駆動するモータ、ソレノイド等の駆動部と、駆動部を制御する制御部とを含んでいてもよい。入金部10、識別部40、リジェクト部50、集積部60等の構成部は、紙葉類の処理内容に応じて変わるもので、紙葉類搬送装置が、これらの構成部を含んでいなくてもよいし、これら以外の構成部を含んでいてもよい。
【0040】
紙幣の搬送方向前部が接触する部材が、
図1で説明した障害物200に相当する。入金部10から装置内の搬送路31に繰り出されて搬送される紙幣の搬送方向前縁又は前縁周辺の紙幣面が接触する部材が、紙幣に対して、搬送方向とは異なる方向への抵抗を生じさせる障害物200となり得る。
【0041】
繰出ゲートに設けられた逆転ローラ22及び繰出ローラ23が障害物200となる場合がある。搬送路31に設けられた搬送ローラ32が障害物200となる場合がある。例えば、紙幣の搬送方向を変換した直後は、紙幣の搬送方向前端の搬送方向が定まっておらず、紙幣前部が、方向変換直後の位置に配置された駆動ローラ32aとピンチローラ32bの接点以外の部分に衝突して、搬送ローラ32が障害物200となる可能性がある。
【0042】
ガイド板33が紙幣の搬送方向を変更する領域では、ガイド板33が障害物200となる。分岐部において、紙幣が分岐レバー34に接触して分岐搬送路へ搬送される場合は、分岐レバー34が障害物200となる。
【0043】
紙葉類搬送装置は、これらの障害物200がある場所に、上述したように、紙幣面の変形及び振動を抑制する抑制部材250を有し、抑制部材250によって騒音を低減する。以下、ガイド板33を例に、騒音対策の具体例を説明する。
【0044】
図3は、抑制部材の例を説明するための図である。
図3(a)に示す位置102に、
図3(b)に示す抑制部材251、又は
図3(c)に示す抑制部材252が設けられる。
図3~
図10には、各構成部の関係が分かるように、X、Y、Zの直交する座標軸を示している。
【0045】
図3(a)に矢印で示すように上方から搬送されてきた紙幣は、駆動ローラ32a及びピンチローラ32bを含む複数の搬送ローラ32によって、下方(Z軸負方向)へ搬送された後、搬送方向を略90度変更されて右方向(X軸正方向)へ搬送される。
図3は例示であって、搬送方向の変更角度を限定するものではない。搬送方向の変更によって紙幣に抵抗が生じて紙幣面から変形音が生ずる場所であれば、搬送方向の変更角度は特に限定されない。
【0046】
図3(a)に示すように、紙幣は、2枚のガイド板33a、33bの間に形成された搬送路31を搬送される。紙幣の搬送方向は、ガイド板33a、33bの形状に沿って変更される。
図3(a)の一点鎖線は、対向配置された2つのガイド板33a、33bの隙間の中心線を結ぶ位置を示している。駆動ローラ32aとピンチローラ32bは、この一点鎖線上で外周面を接触する位置関係で配置されている。紙幣は、一点鎖線で示す線上を搬送される。
【0047】
例えば、搬送方向が90度変更される角部近傍で、ガイド板33が、下方へ搬送される紙幣の搬送方向前端(下端)に対する障害物200となり、紙幣に抵抗が生じて紙幣面の変形や振動が生ずる。
図3(a)に示す領域102で紙幣面が変形又は振動する場合に、この位置に抑制部材251又は抑制部材252が設けられる。
【0048】
図3(b)は、抑制部材251の例を示す図である。この抑制部材251(251a、251b)は、対向配置された2つのローラ251a、251bを含む。搬送ローラ32の回転軸と平行な2本の軸それぞれにローラ251a、251bを設けて、2つのローラ251a、251bを対向配置する。2つのローラ251a、251bは、一点鎖線で示す紙幣の搬送位置で接触するように配置される。
【0049】
紙幣詰まりを生じさせることなく紙幣が円滑に搬送されるように、2つのローラ251a、251bは、紙幣を搬送する方向へ、搬送ローラ32と同じ周速度で回転駆動される。例えば、搬送ローラ32と同様に、2つのローラ251a、251bのうちいずれか一方をモータ等の駆動部によって回転駆動し、他方を、回転駆動されるローラに付勢して同じ周速度で回転させればよい。2つのローラ251a、251bがそれぞれ回転駆動される態様であってもよい。2つのローラ251a、251bの回転駆動が、搬送ローラ32を回転駆動する駆動部によって行われる態様であってもよい。紙幣通過時に、2つのローラ251a、251bの間で紙幣面が挟持されることで、紙幣面の変形及び振動が抑制されて騒音が低減する。
【0050】
図3(c)は、別の抑制部材252の例を示す図である。この例では、ガイド板33bが抑制部材252として機能する。ただし、紙幣面の変形を抑制するための凸部252aが形成された領域を抑制部材252とみなす態様であってもよいし、凸部252aを抑制部材とみなす態様であってもよい。具体的には、例えば、ガイド板33bが複数に分割され、そのうち1つが、表面の一部領域に凸部252aが形成された抑制部材252であってもよいし、凸部252aのみからなる抑制部材252であってもよい。ガイド板33bに加えて、抑制部材252が設けられる態様であってもよい。以下、
図3(c)に示すようにガイド板33bに凸部252aが形成された場合を例に、ガイド板33bと区別するため、凸部252aが形成されたガイド板33bの一部領域を、抑制部材252と記載する。
【0051】
抑制部材252は、搬送路31を形成するガイド板33bの表面から搬送路31側(X軸正方向側)へ突出した凸部252aを含む。紙幣面が
図3(c)の左側(X軸負方向側)へ膨らむように変形する場合に、この変形を抑えるため、左側のガイド板33bに、右側のガイド板33aに向けて突出した凸部252aを形成して抑制部材252とする。
【0052】
凸部252aが、搬送される紙幣に対して新たな障害物となって騒音が発生することを避けるため、凸部252aは、一点鎖線で示す搬送路31の高さ方向(X軸方向)中心を超えない高さで形成される。具体的には、ガイド板33b表面からの凸部252aの突出高さ(h2)は、高さh1の搬送路31の中心を越えない範囲に設定される(h2<(h1/2))。
【0053】
図3(c)に示すように、凸部252aの側面形状は、紙幣が搬送されてくる搬送方向上流側(Z軸正方向側)のガイド板33bの表面から、搬送方向(Z軸負方向)へ進むにつれて、突出高さが徐々に高くなる形状になっている。
【0054】
凸部252aの側面形状は、搬送方向上流側から搬送方向(Z軸負方向)へ進むにつれて搬送路31内へ向けて徐々に突出した後、同一高さで搬送方向へしばらく続く形状になっている。すなわち、凸部252aの頂部は、搬送方向と平行、かつ、搬送方向に幅のある形状となっている。搬送方向下流側(Z軸負方向側)の凸部252aの側面形状は特に限定されない。例えば、搬送路31の高さ方向(X軸方向)の軸に対して、搬送方向上流側の側面形状と対称な側面形状とすればよい。
【0055】
抑制部材252が、紙幣面が変形する側(X軸負方向側)で、搬送路31を狭める形状を有することで、紙幣の通過時に、変形しようとする紙幣面が抑制部材252の凸部252aによって押さえられ、紙幣面の変形及び振動が抑制されて騒音が低減する。
【0056】
図3(c)に示すように、凸部252aが形成された領域で紙幣詰まりが生じないように、ガイド板33aと対向配置されたガイド板33bに凹部253が形成されている。すなわち、搬送路31を形成する一方のガイド板33bに抑制部材252の凸部252aが形成され、他方のガイド板33aに凸部252aに対応する凹部253が形成される。
【0057】
凹部253は、凸部252aと同じ側面形状を有する。凹部253は、凸部252aが形成された領域におけるガイド板33bとガイド板33aとの隙間を、凸部252aの搬送方向上流側におけるガイド板33bとガイド板33aの隙間と同じにする形状で形成される。すなわち、凹部253は、凸部252aが形成された領域と、凸部が形成されていない領域とで、ガイド板33bとガイド板33aの隙間が同じになる形状で形成されている。
【0058】
図4は、
図3(a)に示す構成の一部を示す斜視図である。
図3(a)に示した構成について、紙幣101の搬送状態を示しながら説明するため、
図4では、内側のガイド板33aの図示を省略している。
【0059】
搬送ローラ32を構成する駆動ローラ32a及びピンチローラ32bは、搬送路幅方向(Y軸方向)に複数設けられている。平行に設けられた4本の軸132それぞれに2つずつ駆動ローラ32aが設けられている。各駆動ローラ32aは、
図4で図示を省略したガイド板33aの貫通穴から外周面を搬送路31内へ露出した状態で軸支されている。ピンチローラ32bは、駆動ローラ32aに対応して、軸132と平行に設けられた4本の軸にそれぞれ2つずつ設けられている。各ピンチローラ32bは、ガイド板33bに形成された貫通穴から外周面を搬送路31内に露出し、外周面が、駆動ローラ32aの外周面と接触するように付勢された状態で軸支されている。
【0060】
図5は、紙幣101の変形について説明するための図である。
図5(a)以降の図では、
図4に示した軸132の図示を省略している。上方から搬送されてきた紙幣101に抵抗が生じて、
図5(a)に斜線で示した紙幣面の一部領域101aが背面側(X軸負方向側)へ変形する。
図5(b)は、
図5(a)をX軸正方向側から見た図を示している。
図5(b)に示す領域102で、紙幣面の背面側への変形を抑えることで紙幣面の変形及び振動に起因する騒音を低減することができる。このため、
図3で説明したように、この領域102に抑制部材251又は抑制部材252が配置される。
【0061】
図6は、
図3(b)に対応している。
図6(a)に示すように、
図5(b)に示した2つの領域102それぞれに対応する位置に抑制部材251(251a、251b)が設けられる。抑制部材251は、搬送路31の幅方向において、搬送ローラ32とは異なる位置に離間配置されている。具体的には、搬送方向に配列された複数の搬送ローラ32の配列線上から外れた位置に抑制部材251が配置されている。より具体的には、搬送方向に配列された搬送ローラ32の配置領域を結ぶ帯状領域から外れた位置に抑制部材251が配置されている。これにより、搬送ローラ32が紙幣面に接触する位置を節として生ずる紙幣面の変形及び振動を抑制部材251によって抑えることができる。
【0062】
2つの抑制部材251は、搬送路幅方向において、2列に配列された搬送ローラ32の両外側に配置されている。搬送路幅方向に離間配置された2つのローラ251aは、軸351に固定されている。図示しない駆動部によって軸351を回転駆動することにより、各ローラ251aが軸351と共に回転する。各ローラ251aは、搬送ローラ32の駆動ローラ32aと同じ方向へ、駆動ローラ32aと同じ周速度で回転する。ローラ251aの回転に伴って、ローラ251aの外周面に外周面を接するように付勢されたローラ251bも、ローラ251aと同じ周速度で回転する。抑制部材251であるローラ251a、251bと、搬送ローラ32である駆動ローラ32a及びピンチローラ32bとが同じ周速度で回転することで、紙幣101が円滑に搬送される。
図6(a)に示すように上方から搬送されてきた紙幣101が通過する際、搬送ローラ32による挟持位置とは異なる2カ所の位置で、抑制部材251が紙幣101を挟持搬送することで紙幣面の変形が抑制されて騒音が低減する。
【0063】
図6(b)は、
図6(a)に示した軸351上に、さらに抑制部材251を追加した例を示している。この抑制部材251は、搬送路幅方向の略中央の位置に配置されている。この位置は、搬送ローラ32とは異なる位置、具体的には、搬送路幅方向において、2列に配列された搬送ローラ32の間の略中央の位置になっている。
【0064】
抑制部材251の数は特に限定されず、軸351上に、4つ以上の抑制部材251を設ける態様であってもよい。
図6では、抑制部材251を構成する各ローラ251a、251bの搬送路幅方向の厚みが、搬送ローラ32の厚みと略同一である例を示しているが、各ローラ251a、251bの厚みは特に限定されない。例えば、
図6(a)に示す左側(Y軸正方向側)の抑制部材251の左側面から、右側(Y軸負方向側)の抑制部材251の右側面までの寸法を有する、搬送路幅方向に長いローラが利用される態様であってもよい。搬送ローラ32の周速度と、抑制部材251のローラ251a、251bの周速度が同一であれば、抑制部材251のローラ251a、251bの径方向のサイズも特に限定されない。
【0065】
図7は、
図3(c)に対応している。ただし、
図3(c)では、ガイド板33bの厚みを変えずに側面形状を変えることで凸部を形成する例を示したが、
図7は、ガイド板33bの側面形状を変えずに表面に凸部を追加形成して抑制部材252とした例を示している。
【0066】
図7(a)に示す抑制部材252は、
図6(b)に示した3つの抑制部材251に対応する位置に設けられている。抑制部材252は、抑制部材251と同様に、搬送路幅方向において、搬送ローラ32とは異なる位置、具体的には搬送方向に配列された複数の搬送ローラ32の配列線上から外れた位置に配置されている。より具体的には、搬送方向に配列された搬送ローラ32の配置領域を結ぶ帯状領域から外れた位置に抑制部材252が配置されている。3つの抑制部材252のうち1つは、2列の搬送ローラ32の間の略中央位置にあり、残り2つは2列の搬送ローラ32の両外側の位置にある。これにより、搬送ローラ32が紙幣面に接触する位置を節として生ずる紙幣面の変形及び振動を、抑制部材252によって抑えることができる。
【0067】
図7(b)は、
図7(a)の抑制部材252を拡大した図である。抑制部材252の凸部の高さ、すなわちガイド板33bの表面から抑制部材252の凸部の頂部までのX軸方向の寸法は、ガイド板33bに設けられたリブよりも高くなっている。
図7(a)に示すように上方から搬送されてきた紙幣101が通過する際、搬送ローラ32による挟持位置とは異なる複数の位置で、抑制部材252が紙幣101の変形を抑制することによって騒音が低減する。
【0068】
図7(a)には3つの抑制部材252を示しているが、搬送路幅方向略中央には抑制部材252を設けず、
図6(a)に示した抑制部材251に対応する2カ所のみに抑制部材252を設ける態様であってもよい。ガイド板33bの表面に抑制部材252となる凸部を形成する場合、ガイド板33bを抑制部材252とみなすことができる。例えば、樹脂の一体成形によって、抑制部材252を含む形状のガイド板33bが製造される場合、ガイド板33bが、搬送路31を形成する部材であると共に抑制部材252でもある。
【0069】
図8は、
図7に示す抑制部材252の変形例を示す図である。
図7では、抑制部材252の凸部が、搬送路幅方向の寸法が小さい板状に形成された例を示したが、抑制部材252の凸部の厚みは特に限定されず、
図8に示すように、凸部が搬送路幅方向に長い形状を有していてもよい。
図8に示す例では、搬送方向に配列された搬送ローラ32の配置領域を結ぶ帯状領域には凸部が形成されていないが、この帯状領域を含めて搬送路幅方向全域にわたって凸部が形成されていてもよい。
【0070】
図9は、
図7及び
図8に示す抑制部材252の凸部に対応して設けられた凹部253を示す図である。
図9に示すように、抑制部材252の凸部の位置及び形状に対応して、凹部253が形成されている。
図7に示したように抑制部材252が、搬送路幅方向の厚みが薄い板形状である場合も、凹部253は搬送路幅方向全域にわたって形成される。凹部253は、抑制部材252の凸部が形成された領域を含む搬送路31全域で、搬送路31の高さ、すなわちガイド板33aと33bの隙間が、同じ寸法になるように形成されている。これにより、紙幣101の詰まりを生じさせることなく紙幣101を円滑に搬送できるようになっている。なお、
図9に示す例では、上方から搬送されてきた紙幣101の搬送方向を90度変更した後、右方向に搬送される領域にも、抑制部材252の凸部と、これに対応する凹部253が形成されている。このように、1つのガイド板33bに、搬送方向において異なる位置に複数の抑制部材251、252が設けられる態様であってもよい。
【0071】
図10は、抑制部材251、252の変形例を示す図である。
図10(a)に示すように、抑制部材251を構成する2つのローラ251a、251bが隙間を空けて配置される態様であってもよい。この場合、紙幣面の変形を抑制するため、2つのローラ251a、251bの隙間を、紙幣の厚みよりも僅かに広い隙間に設定すればよい。2つのローラ251a、251bは、ローラの隙間中心が、一点鎖線で示す搬送路31の高さ方向(X軸方向)の中心線上にくるように配置すればよい。抑制部材251が、紙幣に対する新たな障害物にならないよう、
図10(a)に矢印で示すように、各ローラ251a、251bが、紙幣の搬送方向へ自由回転可能な状態とすることが好ましい。各ローラ251a、251bを搬送ローラ32と同じ周速度で回転駆動してもよい。一方向への紙幣面の変形を抑制する場合は、
図3(b)及び
図10(a)に示す例において、2つのローラ251a、251bのうちいずれか一方のみを設ける態様であってもよい。
【0072】
図10(b)に示すように、ガイド板33bに抑制部材252の凸部252aが形成される一方で、ガイド板33bと対向配置されたガイド板33aに凹部253が形成されない態様であってもよい。抑制部材252の凸部252aは、搬送方向上流側(Z軸正方向側)では搬送路31内への突出高さが徐々に変化するように滑らかに形成される一方で、搬送方向下流側(Z軸負方向側)の形状は特に限定されない。例えば、
図10(b)に示すように、凸部252aの突出高さが、最も高い頂部から0(ゼロ)に変化する形状であってもよい。紙幣が両方向に搬送される場合は、搬送方向下流側も、搬送方向上流側に合わせた滑らかな形状とすればよい。
【0073】
本実施形態では、対向配置されたガイド部材であるガイド板33の間に搬送路が形成される例を説明したが、紙葉類搬送装置の構成を、ガイド板33を含む構成に限定するものではない。例えば、多数の搬送ローラ32によって紙葉類の搬送位置が規制されて、ガイド板33を設ける必要がない場所に、上述したように抑制部材251、252を設ける態様であってもよい。例えば、
図3及び
図10に示す例において、ガイド板33a、33bを設けず、ローラ対から成る抑制部材251、又は凸部を形成した抑制部材252が設けられる態様であってもよい。
【0074】
本実施形態では、搬送ローラ32によって紙葉類を搬送する例を説明したが、紙葉類搬送装置の構成を、搬送ローラ32を含む構成に限定するものではない。例えば、ベルトを利用して紙葉類を挟持搬送する紙葉類搬送装置において、ベルトによる挟持領域を節とする紙葉面の変形又は振動を抑制する抑制部材251、252を、上述したように設ける態様であってもよい。
【0075】
上述したように、紙葉類搬送装置は、搬送される紙葉類に抵抗が生じて紙葉面が変形又は振動することで発生する騒音を低減するため、紙葉面の変形及び振動を抑制する抑制部材を有している。紙葉面を騒音源とする対策を行うことで、衝突音のみを騒音源として対策していた従来装置に比べて高い騒音低減効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
以上のように、本開示に係る紙葉類搬送装置は、紙葉類の搬送時に発生する騒音を低減するために有用である。
【符号の説明】
【0077】
1 紙葉類搬送装置
10 入金部
31 搬送路
32 搬送ローラ
33 ガイド板
34 分岐レバー
40 識別部
50 リジェクト部
60 集積部
250、251、252 抑制部材