(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128449
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】セル収容部材
(51)【国際特許分類】
H01M 50/593 20210101AFI20240913BHJP
H01M 50/293 20210101ALI20240913BHJP
H01M 50/209 20210101ALI20240913BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20240913BHJP
H01M 10/6554 20140101ALI20240913BHJP
H01M 10/6551 20140101ALI20240913BHJP
H01M 50/588 20210101ALI20240913BHJP
H01M 10/658 20140101ALI20240913BHJP
H01M 50/249 20210101ALI20240913BHJP
H01M 50/291 20210101ALI20240913BHJP
H01M 50/289 20210101ALI20240913BHJP
H01M 10/647 20140101ALI20240913BHJP
H01M 10/6556 20140101ALI20240913BHJP
H01M 10/6567 20140101ALI20240913BHJP
H01M 10/625 20140101ALN20240913BHJP
【FI】
H01M50/593
H01M50/293
H01M50/209
H01M10/613
H01M10/6554
H01M10/6551
H01M50/588
H01M10/658
H01M50/249
H01M50/291
H01M50/289 101
H01M10/647
H01M10/6556
H01M10/6567
H01M10/625
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037432
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115646
【弁理士】
【氏名又は名称】東口 倫昭
(74)【代理人】
【識別番号】100115657
【弁理士】
【氏名又は名称】進藤 素子
(74)【代理人】
【識別番号】100196759
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 雪
(72)【発明者】
【氏名】日比野 委茂
(72)【発明者】
【氏名】中西 茂雄
【テーマコード(参考)】
5H031
5H040
5H043
【Fターム(参考)】
5H031KK01
5H040AS07
5H040AT02
5H040AY08
5H040NN03
5H043AA04
5H043AA13
5H043CA04
(57)【要約】
【課題】セルの変形によらず、セル間セパレータの絶縁性、断熱性を安定的に確保可能なセル収容部材を提供することを課題とする。
【解決手段】セル収容部材1には、二次電池用の複数のセル80の積層体8が収容される。セル収容部材1は、積層体8が収容される内部空間20を有する筐体2と、内部空間20に配置され、積層方向に隣り合う任意の一対のセル80間に介在し、絶縁性、断熱性を有するセル間セパレータ3と、セル間セパレータ3に配置され、積層方向隣りのセル80に弾接し、セル間セパレータ3よりもセル80の変形に追従して弾性変形しやすい弾性部材4と、を備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池用の複数のセルの積層体が収容されるセル収容部材であって、
前記積層体の延在方向を積層方向として、
前記積層体が収容される内部空間を有する筐体と、
前記内部空間に配置され、前記積層方向に隣り合う任意の一対の前記セル間に介在し、絶縁性、断熱性を有するセル間セパレータと、
前記セル間セパレータに配置され、前記積層方向隣りの前記セルに弾接し、前記セル間セパレータよりも前記セルの変形に追従して弾性変形しやすい弾性部材と、
を備えるセル収容部材。
【請求項2】
前記セルは角型のセルであり、
車載用バッテリーモジュールに用いられる請求項1に記載のセル収容部材。
【請求項3】
前記積層方向から見て、前記弾性部材は、前記セル間セパレータの内側に配置される請求項1に記載のセル収容部材。
【請求項4】
前記積層方向に対して交差する方向を並置方向として、
前記内部空間には、前記並置方向に並ぶ複数の前記積層体が収容され、
さらに、前記内部空間に配置され、隣り合う任意の一対の前記積層体間に介在し、絶縁性、断熱性を有する層間セパレータを備える請求項1に記載のセル収容部材。
【請求項5】
前記セル間セパレータは、セル間セパレータ側スリットを有し、
前記層間セパレータは、層間セパレータ側スリットを有し、
前記セル間セパレータ側スリットと前記層間セパレータ側スリットとが互いに嵌合することにより、前記セル間セパレータと前記層間セパレータとが交差状に組み付けられる請求項4に記載のセル収容部材。
【請求項6】
前記積層方向および前記並置方向を含む平面に対して交差する方向をセル挿脱方向として、
前記筐体は、一体物であって、前記セル挿脱方向に延在する筒壁部と、前記筒壁部の前記セル挿脱方向一端を封止する底壁部と、前記筒壁部の前記セル挿脱方向他端に開設される開口部と、を有する請求項4に記載のセル収容部材。
【請求項7】
前記筒壁部は、前記積層方向に延在し、前記並置方向に所定間隔だけ離間して並ぶ一対の第一壁を有し、
前記第一壁の内面は、前記セル間セパレータおよび前記弾性部材のうち、少なくとも前記セル間セパレータの外縁が差し込まれる第一ガイド溝を有する請求項6に記載のセル収容部材。
【請求項8】
前記筒壁部は、前記並置方向に延在し、前記積層方向に所定間隔だけ離間して並ぶ一対の第二壁を有し、
前記第二壁の内面は、前記層間セパレータの外縁が差し込まれる第二ガイド溝を有する請求項6に記載のセル収容部材。
【請求項9】
さらに、前記底壁部に配置され、前記セルを冷却する冷却部材を備える請求項6に記載のセル収容部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば車載用バッテリーモジュールなどに用いられるセル収容部材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ハイブリッド車や電気自動車などの駆動源として用いられる電源装置が開示されている。電源装置は、一対のエンドプレートと、一対の締結部材と、複数の二次電池セルと、複数のセパレータと、を備えている。一対のエンドプレートと一対の締結部材とは、合体して矩形状の枠体を構成している。複数の二次電池セルと複数のセパレータとは、当該枠体の内部に収容されている。二次電池セルとセパレータとは交互に積層されている。すなわち、積層方向に隣り合う一対の二次電池セルの間には、可撓性部材製のセパレータが介在している。
【0003】
セパレータは、隣り合う一対の二次電池セル間の絶縁を確保し、短絡を抑制するため、絶縁性を有している。また、セパレータは、隣り合う一対の二次電池セル間の伝熱を抑制し、熱暴走の連鎖を抑制するため、断熱性を有している。また、セパレータは、二次電池セルの変形(膨張、収縮)を吸収するため、可撓性を有している。このように、セパレータは、絶縁性、断熱性、可撓性を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2018/207608号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、同文献の電源装置の場合、二次電池セルの変形に伴い、セパレータの絶縁性、断熱性が変化しやすい。例えば、二次電池セルが膨張すると、当該二次電池セルの隣りのセパレータは、その分、弾性的に収縮する。当該収縮により、セパレータは、二次電池セルの膨張を吸収することができる。ところが、セパレータが収縮すると、その分、当該セパレータを挟んで隣り合う一対の二次電池セル間の距離が短くなってしまう。
【0006】
ここで、前述したように、当該セパレータは、可撓性のみならず、絶縁性、断熱性も有している。このため、セパレータが収縮すると、隣り合う一対の二次電池セル間の絶縁距離、伝熱距離が短くなってしまう。したがって、絶縁性、断熱性が低下してしまう。このように、同文献の電源装置の場合、二次電池セルの変形に伴い、セパレータの絶縁性、断熱性が変化しやすい。そこで、本開示は、セルの変形によらず、セル間セパレータの絶縁性、断熱性を安定的に確保可能なセル収容部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)上記課題を解決するため、本開示のセル収容部材は、二次電池用の複数のセルの積層体が収容されるセル収容部材であって、前記積層体の延在方向を積層方向として、前記積層体が収容される内部空間を有する筐体と、前記内部空間に配置され、前記積層方向に隣り合う任意の一対の前記セル間に介在し、絶縁性、断熱性を有するセル間セパレータと、前記セル間セパレータに配置され、前記積層方向隣りの前記セルに弾接し、前記セル間セパレータよりも前記セルの変形に追従して弾性変形しやすい弾性部材と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本開示のセル収容部材によると、セル間セパレータに、セル間セパレータとは別体の弾性部材が配置されている。セル間セパレータは、絶縁性および断熱性を有している。他方、弾性部材は、セルの変形に追従して弾性変形可能な、弾性を有している。このように、セル間セパレータと弾性部材とは、各々、機能を分担している。このため、セルの変形に追従して弾性部材が弾性変形しても、セル間セパレータの変形を抑制することができる。したがって、弾性部材が弾性変形しても、セル間セパレータの積層方向厚さ、つまり絶縁距離、伝熱距離が変化するのを抑制することができる。このように、本開示のセル収容部材によると、セルの変形によらず、セル間セパレータの絶縁性、断熱性を安定的に確保することができる。
【0009】
(2)上記構成において、前記セルは角型のセルである構成としてもよい。上記いずれかの構成において、セル収容部材は車載用バッテリーモジュールに用いられる構成としてもよい。
【0010】
(3)上記いずれかの構成において、前記積層方向から見て、前記弾性部材は、前記セル間セパレータの内側に配置される構成としてもよい。セルが積層方向に膨張する際、弾性部材は積層方向に収縮する。弾性部材の種類によっては、当該収縮に応じて、弾性部材が、積層方向から見て、外側(積層方向に対して交差する方向)に膨出する場合がある。本構成によると、弾性部材が、セル間セパレータから外側に膨出するのを抑制することができる。
【0011】
(4)上記いずれかの構成において、前記積層方向に対して交差する方向を並置方向として、前記内部空間に、前記並置方向に並ぶ複数の前記積層体が収容される構成としてもよい。当該構成において、さらに、前記内部空間に配置され、隣り合う任意の一対の前記積層体間に介在し、絶縁性、断熱性を有する層間セパレータを備える構成としてもよい。本構成によると、隣り合う任意の一対の積層体間において、絶縁性、断熱性を安定的に確保することができる。
【0012】
(5)上記いずれかの構成において、前記セル間セパレータは、セル間セパレータ側スリットを有する構成としてもよい。上記いずれかの構成(層間セパレータを備える構成)において、前記層間セパレータは、層間セパレータ側スリットを有する構成としてもよい。
【0013】
前記セル間セパレータがセル間セパレータ側スリットを有し、かつ前記層間セパレータが層間セパレータ側スリットを有する構成において、前記セル間セパレータ側スリットと前記層間セパレータ側スリットとが互いに嵌合することにより、前記セル間セパレータと前記層間セパレータとが交差状に組み付けられる構成としてもよい。本構成によると、セル間セパレータと層間セパレータとを簡単かつ堅実に組み付けることができる。また、セル間セパレータと層間セパレータとを簡単かつ堅実に位置決めすることができる。
【0014】
(6)上記いずれかの構成において、前記筐体は、一体物である構成としてもよい。本構成によると、筐体が複数の部材(例えば、特許文献1の電源装置における、一対のエンドプレート、一対の締結部材)の複合物である場合と比較して、部品点数を削減することができる。
【0015】
当該構成において、前記積層方向および前記並置方向を含む平面に対して交差する方向をセル挿脱方向として、前記筐体は、前記セル挿脱方向に延在する筒壁部と、前記筒壁部の前記セル挿脱方向一端を封止する底壁部と、前記筒壁部の前記セル挿脱方向他端に開設される開口部と、を有する構成としてもよい。本構成によると、筐体が、有底筒状(有底箱状)を呈している。このため、開口部を介して、簡単に、内部空間に対してセル、セル間セパレータ、弾性部材等を挿脱することができる。
【0016】
(7)上記いずれかの構成(筒壁部を備える構成)において、前記筒壁部は、前記積層方向に延在し、前記並置方向に所定間隔だけ離間して並ぶ一対の第一壁を有し、前記第一壁の内面は、前記セル間セパレータおよび前記弾性部材のうち、少なくとも前記セル間セパレータの外縁が差し込まれる第一ガイド溝を有する構成としてもよい。本構成によると、セル間セパレータを、第一壁つまり筐体に、簡単かつ堅実に組み付けることができる。また、筐体に対してセル間セパレータを簡単かつ堅実に位置決めすることができる。
【0017】
(8)上記いずれかの構成(筒壁部、層間セパレータを備える構成)において、前記筒壁部は、前記並置方向に延在し、前記積層方向に所定間隔だけ離間して並ぶ一対の第二壁を有し、前記第二壁の内面は、前記層間セパレータの外縁が差し込まれる第二ガイド溝を有する構成としてもよい。本構成によると、層間セパレータを、第二壁つまり筐体に、簡単かつ堅実に組み付けることができる。また、筐体に対して層間セパレータを簡単かつ堅実に位置決めすることができる。
【0018】
(9)上記いずれかの構成(底壁部を備える構成)において、さらに、前記底壁部に配置され、前記セルを冷却する冷却部材を備える構成としてもよい。本構成によると、セルを冷却することができる。
【発明の効果】
【0019】
本開示のセル収容部材によると、セルの変形によらず、セル間セパレータの絶縁性、断熱性を安定的に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、第一実施形態のセル収容部材を備える車載用バッテリーモジュールの斜視図である。
【
図2】
図2は、同車載用バッテリーモジュールの分解斜視図である。
【
図3】
図3は、同セル収容部材の分解斜視図である。
【
図4】
図4は、同セル収容部材のセル間セパレータと層間セパレータとの分解斜視図である。
【
図5】
図5は、同車載用バッテリーモジュールの上面図である。
【
図9】
図9は、第二実施形態のセル収容部材の積層方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本開示のセル収容部材の実施の形態について説明する。以降の図において、前後方向は本開示の「積層方向」に、左右方向は本開示の「並置方向」に、上下方向は本開示の「セル挿脱方向」に、各々対応する。
【0022】
<第一実施形態>
図1に、本実施形態のセル収容部材を備える車載用バッテリーモジュールの斜視図を示す。
図2に、同車載用バッテリーモジュールの分解斜視図を示す。
図3に、同セル収容部材の分解斜視図を示す。
図4に、同セル収容部材のセル間セパレータと層間セパレータとの分解斜視図を示す。
図5に、同車載用バッテリーモジュールの上面図を示す。
図6に、
図5のVI-VI方向断面図を示す。
図7に、
図5のVII-VII方向断面図を示す。
図8に、
図7の枠VIII内の拡大図を示す。
【0023】
[セル収容部材の構成]
まず、本実施形態のセル収容部材の構成について説明する。
図1、
図2に示すように、本実施形態のセル収容部材1は、車載用バッテリーモジュール9に組み込まれている。セル収容部材1には、二つの積層体8が収容されている。
【0024】
(積層体8)
二つの積層体8は、左右方向に並んでいる。積層体8は、前後方向に延在している。
図2、
図5に示すように、積層体8は、リチウムイオン二次電池用の複数のセル80を備えている。複数のセル80は、前後方向に積層されている。セル80は、上側から見て、左右方向に長い矩形状(扁平状)を呈している。すなわち、セル80は角型セルである。セル80の上面には、端子(正極端子、負極端子)800と、ガス排出弁(図略)と、が配置されている。前後方向に隣り合うセル80の端子800同士は、バスバー(図略)により、電気的に接続(直列接続、並列接続)されている。
【0025】
(セル収容部材1)
セル収容部材1は、筐体2と、複数のセル間セパレータ3と、複数の弾性部材4と、層間セパレータ5と、二つの冷却部材6と、を備えている。
【0026】
(筐体2)
図3に示すように、筐体2は、樹脂製の一体物である。筐体2は、有底筒状(上側に開口する直方体箱状)を呈している。筐体2は、内部空間20と、筒壁部21と、底壁部22と、開口部23と、を備えている。内部空間20は、筐体2の内部に区画されている。内部空間20には、二つの積層体8が収容されている。
【0027】
筒壁部21は、上下方向に延在する(筒軸が上下方向を向く)角筒状を呈している。筒壁部21は、上側から見て、前後方向に長い矩形枠状を呈している。筒壁部21は、二つの第一壁210と、二つの第二壁211と、を備えている。
【0028】
二つの第一壁210は、左右方向に所定間隔だけ離間して並んでいる。第一壁210は、前後方向に長い矩形板状を呈している。第一壁210の内面には、複数の第一ガイド溝210aが凹設されている。複数の第一ガイド溝210aは、前後方向に並置されている。第一ガイド溝210aは、上下方向に延在している。左右一対の第一ガイド溝210a(詳しくは、左側の第一壁210の複数の第一ガイド溝210aおよび右側の第一壁210の複数の第一ガイド溝210aのうち、前後方向の位置が同じ一対の第一ガイド溝210a)には、後述するセル間セパレータ3の左右両縁(外縁)が差し込まれている。
【0029】
二つの第二壁211は、前後方向に所定間隔だけ離間して並んでいる。第二壁211は、左右方向に長い矩形板状を呈している。第二壁211の内面の左右方向中央には、第二ガイド溝211aが凹設されている。第二ガイド溝211aは、上下方向に延在している。前後一対の第二ガイド溝211aには、後述する層間セパレータ5の前後両縁(外縁)が差し込まれている。
【0030】
底壁部22は、筒壁部21の下端(セル挿脱方向一端)を封止している。底壁部22は、前後方向に長い矩形板状を呈している。底壁部22には、二つの取付口220が開設されている。上側から見て、二つの取付口220は、第二ガイド溝211aを挟んで、左右方向に離間して配置されている。取付口220は、上下方向および前後方向に底壁部22を貫通している。
【0031】
開口部23は、筒壁部21の上端(セル挿脱方向他端)に開設されている。後述する積層体8(セル80)、弾性部材4付きのセル間セパレータ3、層間セパレータ5は、開口部23を介して、内部空間20に挿入される。あるいは内部空間20から取り出される。
【0032】
(セル間セパレータ3)
図2、
図3に示すように、複数のセル間セパレータ3は、内部空間20に配置されている。
図5、
図7、
図8に示すように、セル間セパレータ3は、積層体8において、前後方向に隣り合う一対のセル80間に介在している。セル間セパレータ3は、樹脂製であって、左右方向に長い板状を呈している。セル間セパレータ3は、内部空間20の左右方向全長に亘って延在している。セル間セパレータ3は、絶縁性、断熱性を有している。
図4、
図6に示すように、セル間セパレータ3は、セル間セパレータ側スリット30と、左右一対のセル間隔壁部31と、を有している。
【0033】
セル間セパレータ側スリット30は、左右一対のセル間隔壁部31の間(左右方向中央)に配置されている。セル間セパレータ側スリット30は、セル間セパレータ3の下縁に開口している。セル間セパレータ側スリット30は、セル間セパレータ3の上下方向中央まで延在している。
【0034】
(弾性部材4)
図4、
図6、
図7、
図8に示すように、複数の弾性部材4は、各々、セル間セパレータ3のセル間隔壁部31の前面(片面)に配置されている。弾性部材4は、セル間セパレータ3とは別体であり、セル間セパレータ3に固定されている。前側から見て、弾性部材4は、セル間隔壁部31の内側(左右方向内側かつ上下方向内側)に配置されている。弾性部材4は、発泡ゴム製であって、板状を呈している。弾性部材4は、弾性を有している。弾性部材4は、弾性復元力により、自身の前側のセル80に弾接している。すなわち、積層体8がセル収容部材1に収容された状態において、弾性部材4には、所定の弾性エネルギが蓄積されている。弾性部材4は、セル80およびセル間隔壁部31よりも、柔軟である。弾性部材4は、セル間セパレータ3(セル間隔壁部31)よりも、セル80の変形に追従して弾性変形しやすい。
【0035】
(層間セパレータ5)
図2、
図3に示すように、層間セパレータ5は、内部空間20に配置されている。
図5に示すように、層間セパレータ5は、左右一対の積層体8間に介在している。層間セパレータ5は、樹脂製であって、前後方向に長い板状を呈している。層間セパレータ5は、内部空間20の前後方向全長に亘って延在している。層間セパレータ5は、絶縁性、断熱性を有している。
図4に示すように、層間セパレータ5は、複数の層間セパレータ側スリット50を有している。複数の層間セパレータ側スリット50は、所定間隔ずつ離間して、前後方向に並置されている。層間セパレータ側スリット50は、層間セパレータ5の上縁に開口している。層間セパレータ側スリット50は、層間セパレータ5の上下方向中央まで延在している。
【0036】
図3、
図4に示すように、セル間セパレータ側スリット30と層間セパレータ側スリット50とが上下方向から互いに嵌合(噛み合う)することにより、セル間セパレータ3と層間セパレータ5とが交差状に組み付けられている。
図2、
図5に示すように、交差状に組み付けられたセル間セパレータ3および層間セパレータ5により、内部空間20には、前後左右方向に並ぶ複数のセル室200が区画されている。任意のセル室200は、前後方向隣りのセル室200、および左右方向隣りのセル室200から、隔離されている。複数のセル室200には、各々、セル80が収容されている。
【0037】
(冷却部材6)
図3に示すように、二つの冷却部材6は、各々、底壁部22の取付口220に配置されている。冷却部材6は、樹脂製であって、前後方向に長い矩形板状を呈している。
図6、
図7、
図8に示すように、冷却部材6の上面は、セル80の下面に当接している。冷却部材6の内部には、複数の流路60が形成されている。複数の流路60は、左右方向に並んでいる。流路60は、冷却部材6を前後方向に貫通している。流路60には、冷却液Cが流れている。冷却液Cにより、冷却部材6はセル80を冷却している。
図7に示すように、流路60は、車載用バッテリーモジュール9外部の冷却回路7に接続されている。冷却回路7は、ラジエーター70と、ポンプ71と、を備えている。流路60から流出した冷却液Cは、ラジエーター70により冷却される。ラジエーター70から流出した冷却液Cは、ポンプ71により圧送され、流路60に流入する。
【0038】
[セル収容部材の組付方法]
次に、本実施形態のセル収容部材の組付方法について説明する。
図3に示すように、筐体2の底壁部22の取付口220には、予め冷却部材6が固定されている。また、セル間セパレータ3には、予め弾性部材4が固定されている。
【0039】
まず、筐体2の内部空間20に層間セパレータ5を挿入する。具体的には、層間セパレータ5の前後両縁を、各々、第二ガイド溝211aに差し込む。次に、筐体2の内部空間20に複数のセル間セパレータ3を挿入する。具体的には、セル間セパレータ3の左右両縁を、各々、第一ガイド溝210aに差し込む。並びに、セル間セパレータ側スリット30と層間セパレータ側スリット50とを互いに嵌合させる。このようにして、セル収容部材1を組み付ける。その後、
図2に示すように、複数のセル80を、各々、セル室200に挿入する。
【0040】
[作用効果]
次に、本実施形態のセル収容部材の作用効果について説明する。
図8に示すように、セル間セパレータ3には、セル間セパレータ3とは別体の弾性部材4が配置されている。セル間セパレータ3は、絶縁性および断熱性を有している。他方、弾性部材4は、セル80およびセル間セパレータ3よりも柔軟である。また、弾性部材4は、セル80の変形に追従して弾性変形可能な、弾性を有している。このように、セル間セパレータ3と弾性部材4とは、各々、機能を分担している。
【0041】
例えば、
図8に一点鎖線Lで示すように、セル80は、充電や劣化などにより、前後方向に膨張する場合がある。この場合、弾性部材4は、セル80の膨張の分だけ、前後方向に収縮可能である。当該収縮により、弾性部材4は、セル80の膨張を吸収することができる。また、セル80の膨張は弾性部材4により吸収されるため、セル80が膨張しても、セル間セパレータ3(セル間隔壁部31)の前後方向の厚さTは変わらない。したがって、絶縁距離、伝熱距離が短くなるのを抑制することができる。
【0042】
反対に、セル80が前後方向に収縮する場合、弾性部材4は、セル80の収縮の分だけ、自身の弾性復元力により、前後方向に膨張可能である。当該膨張により、弾性部材4は、セル80の収縮を吸収することができる。また、セル80の収縮は弾性部材4により吸収されるため、セル80が収縮しても、セル間セパレータ3(セル間隔壁部31)の前後方向の厚さTは変わらない。したがって、絶縁距離、伝熱距離が長くなるのを抑制することができる。
【0043】
このように、本実施形態のセル収容部材1によると、セル80の変形に追従して弾性部材4が弾性変形しても、セル間セパレータ3の変形を抑制することができる。したがって、弾性部材4が弾性変形しても、セル間セパレータ3の前後方向の厚さT、つまり絶縁距離、伝熱距離が変化するのを抑制することができる。このように、本実施形態のセル収容部材1によると、セル80の変形によらず、セル間セパレータ3の絶縁性、断熱性を安定的に確保することができる。
【0044】
弾性部材4は、発泡ゴム製である。このため、弾性部材4が繊維製(例えば、編物、織物など。ただし、この場合であっても、本開示の「弾性部材」の概念に含まれる。)の場合と比較して、塑性変形、粘性変形しにくく、弾性復元力が大きい。したがって、積層体8に対する前後方向の拘束力が低下しにくい。
【0045】
弾性部材4は、セル80の外面の変形に追従して変形可能である。このため、セル80の一部だけが膨張した場合であっても、弾性部材4が当該変形を吸収することができる。したがって、セル間セパレータ3やセル80に局所的に荷重が加わりにくい。
【0046】
図1、
図2に示すように、内部空間20には、左右方向に並ぶ二つの積層体8が収容されている。また、二つの積層体8の間には、絶縁性、断熱性を有する層間セパレータ5が配置されている。このため、隣り合う二つの積層体8間において、絶縁性、断熱性を確保することができる。
【0047】
図1、
図2に示すように、セル80は角型セルである。また、内部空間20は、直方体状を呈している。このため、複数のセル80を、内部空間20に密集して配置することができる。したがって、スペース効率が高くなる。
【0048】
図4に示すように、セル間セパレータ3は、セル間セパレータ側スリット30を備えている。層間セパレータ5は、層間セパレータ側スリット50を備えている。セル間セパレータ側スリット30と層間セパレータ側スリット50とが互いに嵌合することにより、セル間セパレータ3と層間セパレータ5とは、交差状に組み付けられている。このため、セル間セパレータ3と層間セパレータ5とを簡単かつ堅実に組み付けることができる。また、セル間セパレータ3と層間セパレータ5とを簡単かつ堅実に位置決めすることができる。また、
図4に示すように、セル間セパレータ側スリット30の上端底と、層間セパレータ側スリット50の下端底と、は互いに当接している。このため、セル間セパレータ3と層間セパレータ5とを、隙間無く組み付けることができる。また、セル間セパレータ3と層間セパレータ5との間に隙間が無いため、隙間を介してのセル80間の伝熱を抑制することができる。
【0049】
図6に示すように、セル間セパレータ3の左右両縁は、左右一対の第一ガイド溝210aに差し込まれている。このため、セル間セパレータ3を、第一壁210つまり筐体2に、簡単かつ堅実に組み付けることができる。また、筐体2に対してセル間セパレータ3を簡単かつ堅実に位置決めすることができる。また、第一ガイド溝210aとセル間セパレータ3との間に隙間が無いため、隙間を介してのセル80間の伝熱を抑制することができる。
【0050】
図5に示すように、層間セパレータ5の前後両縁は、前後一対の第二ガイド溝211aに差し込まれている。このため、層間セパレータ5を、第二壁211つまり筐体2に、簡単かつ堅実に組み付けることができる。また、筐体2に対して層間セパレータ5を簡単かつ堅実に位置決めすることができる。また、第二ガイド溝211aと層間セパレータ5との間に隙間が無いため、隙間を介してのセル80間の伝熱を抑制することができる。
【0051】
セル間セパレータ3は、筐体2(第一ガイド溝210a)、層間セパレータ5(層間セパレータ側スリット50)により、堅実に固定されている。このため、セル間セパレータ3の剛性が高い。また、層間セパレータ5は、筐体2(第二ガイド溝211a)、セル間セパレータ3(セル間セパレータ側スリット30)により、堅実に固定されている。このため、層間セパレータ5の剛性が高い。また、筐体2は、交差状に組み付けられたセル間セパレータ3、層間セパレータ5により、内部空間20側から支持されている。このため、筐体2の剛性が高い。また、複数のセル室200は、交差状に組み付けられたセル間セパレータ3、層間セパレータ5により、互いに隔離されている。このため、セル80間の伝熱を抑制することができる。
【0052】
セル80が前後方向に膨張する際、弾性部材4は積層方向に収縮する。当該収縮に応じて、弾性部材4は、前側から見て、外側(
図6における上下左右方向)に膨出する。この点、前側から見て、弾性部材4は、セル間セパレータ3の内側に配置されている。このため、弾性部材4が、セル間セパレータ3から外側に膨出するのを抑制することができる。
【0053】
セル間セパレータ3は、絶縁性および断熱性を有している。このため、絶縁用のセパレータと断熱用のセパレータとを各々独立して配置する場合と比較して、セル収容部材1の部品点数を削減することができる。また、セル収容部材1の省スペース化を図ることができる。また、セル間セパレータ3が絶縁性を有しているため、セル80の外装材(ケース)が絶縁性を有する必要がない。
【0054】
セル間セパレータ3は、絶縁性、断熱性に加えて、セル室200を区画する機能を有している。すなわち、セル80を位置決めする機能を有している。このため、セル間セパレータ3とは別にセル80の位置決め用の部材を配置する場合と比較して、セル収容部材1の部品点数を削減することができる。また、セル収容部材1の省スペース化を図ることができる。
【0055】
図3に示すように、筐体2は一体物である。このため、筐体2が複数の部材の複合物である場合と比較して、部品点数を削減することができる。筐体2は、有底筒状(有底箱状)を呈している。このため、開口部23を介して、簡単に、内部空間20に対してセル80、弾性部材4付きのセル間セパレータ3、層間セパレータ5を挿脱することができる。
【0056】
図6、
図7、
図8に示すように、底壁部22には、二つの冷却部材6が配置されている。
図8に矢印Yで示すように、セル80の熱は、冷却部材6の壁部を介して、冷却液Cに伝達される。このため、セル80を冷却することができる。また、冷却部材6とセル80とは、他の部材を介さずに、直接接触している。このため、セル80を効果的に冷却することができる。また、セル80の周囲には、セル間セパレータ3、層間セパレータ5が配置されている。セル間セパレータ3および層間セパレータ5は、共に断熱性を有している。このため、セル80の熱を、優先的に冷却部材6に誘導することができる。なお、冷却部材6とセル80との間に、伝熱性の高い弾性体を介在させてもよい。この場合、例えば、25℃における弾性体の熱伝導率が、3W/(m・K)以上であることが望ましい。
【0057】
図3に示すように、本実施形態のセル収容部材1は、筐体2に層間セパレータ5と弾性部材4付きのセル間セパレータ3とを挿入するだけで、組み付けることができる。このため、セル収容部材1の組付作業が簡単である。また、車載用バッテリーモジュール9は、組付後のセル収容部材1のセル室200にセル80を挿入するだけで、組み付けることができる。このため、車載用バッテリーモジュール9の組付作業が簡単である。
【0058】
<第二実施形態>
本実施形態のセル収容部材と、第一実施形態のセル収容部材との相違点は、セル間セパレータの前後方向両面に弾性部材が配置されている点である。ここでは、相違点についてのみ説明する。
【0059】
図9に、本実施形態のセル収容部材の積層方向(前後方向)断面図を示す。なお、
図7と対応する部位については、同じ符号で示す。
図9に示すように、セル間セパレータ3(セル間隔壁部31)の前後方向両面には、弾性部材4が配置されている。本実施形態のセル収容部材と、第一実施形態のセル収容部材とは、構成が共通する部分に関しては、同様の作用効果を有する。本実施形態のセル収容部材1によると、セル80(ただし、積層体8の前後方向両端のセル80を除く)の前後方向両面が、共に弾性部材4に弾接している。このため、セル80の前後方向両面の変形を吸収することができる。
【0060】
<その他>
以上、本開示のセル収容部材の実施の形態について説明した。しかしながら、実施の形態は上記形態に特に限定されるものではない。当業者が行いうる種々の変形的形態、改良的形態で実施することも可能である。
【0061】
[配置、構成について]
上記実施形態においては、積層方向(前後方向)と、並置方向(左右方向)と、セル挿脱方向(上下方向)と、を互いに直交するように設定したが、これらの方向の交差角度は特に限定しない。また、積層方向、並置方向、セル挿脱方向の向きは特に限定しない。例えば、積層方向が上下方向であってもよい。積層方向を、セル80において、最も変形が大きい方向としてもよい。セル80が角型セルやラミネート型セルの場合は、積層方向を、セル80内部における正極層、セパレータ、負極層の積層方向と、一致させてもよい。
【0062】
セル間セパレータ3の配置数は特に限定しない。単一であっても、複数であってもよい。積層体8を構成するセル80の数に応じて増減すればよい。セル間セパレータ3におけるセル間隔壁部31の配置数は特に限定しない。単一であっても、複数であってもよい。並置方向に並ぶセル80の配置数(つまり積層体8の配置数)に応じて増減すればよい。層間セパレータ5の配置数は特に限定しない。単一であっても、複数であってもよい。積層体8の配置数に応じて増減すればよい。
【0063】
セル間セパレータ側スリット30、層間セパレータ側スリット50の向きは特に限定しない。セル間セパレータ側スリット30と層間セパレータ側スリット50とが互いに嵌合可能なように、セル挿脱方向に対向していればよい。例えば、層間セパレータ側スリット50がセル挿脱方向一端側(下側)、セル間セパレータ側スリット30がセル挿脱方向他端側(上側)を向いていてもよい。この場合は、セル収容部材1を組み付ける際、まずセル間セパレータ3を、次に層間セパレータ5を、内部空間20に挿入すればよい。なお、セル間セパレータ側スリット30、層間セパレータ側スリット50の向きによらず、勿論、予め筐体2の外部においてセル間セパレータ3と層間セパレータ5とを組み付けてから、当該組付物を内部空間20に挿入してもよい。
【0064】
セル間セパレータ3と層間セパレータ5との組付方法は特に限定しない。締結具(ボルト、ネジ、クリップなど)を用いて、セル間セパレータ3と層間セパレータ5とを組み付けてもよい。接着(接着剤、両面テープなど)、圧着、溶着などにより、セル間セパレータ3と層間セパレータ5とを組み付けてもよい。セル間セパレータ3と層間セパレータ5とが一体的に形成された、一体物の格子状のセパレータを用いてもよい。筐体2と、セル間セパレータ3および層間セパレータ5のうち少なくとも一方と、が一体化されていてもよい。
【0065】
セル間セパレータ3に対する弾性部材4の配置数は特に限定しない。弾性部材4は、セル間セパレータ3の積層方向両面のうち、少なくとも片面に配置されていればよい。複数のセル間セパレータ3の種類は特に限定しない。複数のセル間セパレータ3のうち少なくとも一つが、弾性部材4付きのセル間セパレータ3であればよい。セル間セパレータ3に対する弾性部材4の大きさは特に限定しない。例えば、セル間セパレータ3の積層方向両面のうち少なくとも一面の全体に、弾性部材4が配置されていてもよい。セル間セパレータ3に対する弾性部材4の固定方法は特に限定しない。接着(接着剤、両面テープなど)、圧着、溶着などにより、セル間セパレータ3に弾性部材4を固定してもよい。弾性部材4を、第二壁211の内面に配置し、積層体8の積層方向両端のセル80に弾接させてもよい。弾性部材4を、層間セパレータ5に配置してもよい。
【0066】
セル間セパレータ3の左右両縁を第一ガイド溝210aに差し込む際、弾性部材4の左右両縁も第一ガイド溝210aに差し込んでもよい。こうすると、第一ガイド溝210aの溝側面とセル間セパレータ3との間で、弾性部材4が圧縮される。このため、第一ガイド溝210aからセル間セパレータ3が脱落しにくくなる。このように、第一ガイド溝210aに差し込まれるのは、セル間セパレータ3および弾性部材4のうち、少なくともセル間セパレータ3であればよい。
【0067】
筐体2の筒壁部21の形状は特に限定しない。角筒状(四角筒状、六角筒状、八角筒状など)、円筒状(真円筒状、楕円筒状など)などであってもよい。セル挿脱方向から見て、筒壁部は無端環状であればよい。底壁部22の形状は特に限定しない。筒壁部21のセル挿脱方向一端を封止できればよい。底壁部22は配置しなくてもよい。この場合、冷却部材6で筒壁部21のセル挿脱方向一端を封止すればよい。全てのセル室200に、セル80が配置されていなくてもよい。
【0068】
冷却部材6の配置数は限定しない。冷却部材6の配置数と、積層体8の配置数と、は同一でも異なっていてもよい。例えば、二つの積層体8に対して、単一の冷却部材6を配置してもよい。流路60の配置数は限定しない。冷却液の種類は限定しない。例えば、車載用バッテリーモジュール9にセル収容部材1が用いられる場合、冷却液は車両用のクーラントであってもよい。冷却部材6の種類は特に限定しない。冷却部材6はヒートパイプやファンを備えていてもよい。冷却部材6は流路60を備えていなくてもよい。
【0069】
セル80の種類は特に限定しない。角型セル、円筒型セル、ラミネート型セルなどであってもよい。二次電池の種類は特に限定しない。リチウムイオン二次電池、リチウムイオンポリマー二次電池、ナトリウムイオン二次電池、ニッケル水素二次電池などであってもよい。
【0070】
セル収容部材1つまりバッテリーモジュールの用途は特に限定しない。例えば、ハイブリッド車、電気自動車などに用いてもよい。また、電動アシスト付き自転車、携帯電話、電動工具、ノートパソコンなどに用いてもよい。
【0071】
[材料について]
冷却部材6の材質は特に限定しない。例えば、PP(ポリプロピレン)などの樹脂、アルミニウム、アルミニウム合金などの金属であってもよい。
【0072】
弾性部材4の材質は特に限定しない。例えば、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)、シリコーン、ブチルゴム、アクリルゴムなどのエラストマー(ゴムを含む)の発泡体であってもよい。弾性部材4の形態は特に限定しない。発泡体、織布、不織布、中空体、中実体などであってもよい。
【0073】
筐体2の材質は特に限定しない。例えば、PPなどの樹脂、鋼、アルミニウム、アルミニウム合金などの金属であってもよい。セル間セパレータ3、層間セパレータ5の材質は特に限定しない。例えば、エポキシなどの樹脂、セラミックスなどであってもよい。
【0074】
セル間セパレータ3の絶縁性は特に限定しない。セル間セパレータ3を挟んで隣り合うセル80間の絶縁を確保できればよい。例えば、25℃における電気抵抗率が、10E+10Ω・m以上であることが望ましい。層間セパレータ5についても同様である。
【0075】
セル間セパレータ3の断熱性は特に限定しない。セル間セパレータ3を挟んで隣り合うセル80間の断熱を確保できればよい。例えば、25℃における熱伝導率が、0.1W/(m・K)以下であることが望ましい。層間セパレータ5についても同様である。
【0076】
筐体2、セル間セパレータ3、層間セパレータ5のうち少なくとも一つとして、以下に示す耐火断熱部材を使用してもよい。当該耐火断熱部材は、セルロース繊維と、無機繊維と、難燃性無機粒子と、耐火性無機粒子と、バインダー樹脂と、を有している。
【0077】
セルロース繊維は、セルロースを原料とした繊維である。セルロース繊維としては、綿、麻などの植物繊維、レーヨン、リヨセル(登録商標)などの再生繊維、アセテートなどの半合成繊維が挙げられる。
【0078】
無機繊維は、電気絶縁性、難燃性などを考慮して、ガラス繊維、アルミナ繊維、およびシリカ繊維から選ばれる一種以上であることが望ましい。耐火断熱部材の強度および耐火性を高めるという観点から、無機繊維は比較的太くて長い方が望ましい。例えば、無機繊維の繊維径は1μm以上20μm以下であることが望ましい。また、無機繊維の長さは13mm以上25mm以下であることが望ましい。長さが13mm未満の場合には強度の向上効果が小さくなり、長さが25mmより大きい場合には成形性が低下するおそれがある。
【0079】
無機粒子の保持力と難燃性とのバランスを考慮すると、セルロース繊維の含有質量は、無機繊維の含有質量以下にすることが望ましい。すなわち、セルロース繊維の含有質量は、無機繊維の含有質量と同じ、またはそれよりも少なくすることが望ましい。
【0080】
難燃性無機粒子は、加熱時に自身が分解することにより燃焼を抑制する。難燃性無機粒子としては、無機難燃剤として知られている金属水酸化物、無機リン系難燃剤などの粒子が挙げられる。金属水酸化物としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどが挙げられる。無機リン系難燃剤としては、ポリリン酸アンモニウムなどが挙げられる。なかでも無機リン系難燃剤は、加熱時に炭化被膜からなる不燃層を形成し、燃焼抑制効果が高いため好適である。
【0081】
耐火性無機粒子は、加熱時に燃焼しにくいため、耐火断熱部材の耐火性の向上に寄与する。耐火性無機粒子としては、建築基準法において、加熱開始から20分間、燃焼しないなどの三要件を満たす「不燃材料」に分類される無機材料の粒子が挙げられる。例えば、タルク、マイカ、カオリナイト、シリカ、アルミナなどを用いればよい。
【0082】
バインダー樹脂は、繊維材料(セルロース繊維および無機繊維を含む)同士、繊維材料と無機粒子とを結合できれば、その種類は特に限定されない。バインダー樹脂は、熱可塑性樹脂でも熱硬化性樹脂でもよい。熱可塑性樹脂を用いる場合、その融点が200℃以下であると、比較的低温で溶融させることができ、製造しやすいという利点がある。熱硬化性樹脂を用いると、耐火断熱部材の強度を高める効果が大きい。熱可塑性樹脂としては、ポリビニルアルコール、ナイロン樹脂、フッ素樹脂などが挙げられる。また、熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂などが挙げられる。
【0083】
有機物(セルロース繊維およびバインダー樹脂を含む)の含有質量は、難燃性無機粒子の含有質量の5倍以下であることが望ましい。こうすると、セルロース繊維による粒子保持力およびバインダー樹脂による結合力を確保しつつ、所望の難燃性および断熱性を実現することができる。ここで、無機粒子の保持力や、無機粒子と繊維材料、および繊維材料同士の結合力を高めるという観点から、有機物の含有質量は、耐火断熱部材の全体を100質量%とした場合の40質量%以上であることが望ましい。50質量%以上であるとより好適である。
【0084】
繊維材料により骨格を緻密に形成し、無機粒子の保持力を高め、ひいては耐火断熱部材の強度を高めるという観点から、難燃性無機粒子、耐火性無機粒子、およびバインダー樹脂の合計含有質量は、セルロース繊維および無機繊維の合計含有質量の2/3以下であることが望ましい。ここで「2/3以下」とは、難燃性無機粒子、耐火性無機粒子、およびバインダー樹脂の合計含有質量を、セルロース繊維および無機繊維の合計含有質量で除した場合に、0.67以下であることを意味する。割り切れない場合などは、除した値の小数点第三位を四捨五入して、0.67以下であればよい。
【0085】
耐火断熱部材の厚さ(例えば、筐体2の第一壁210の壁厚、第二壁211の壁厚、セル間セパレータ3の板厚、層間セパレータ5の板厚)は、特に限定されないが、内部空間20へのセル80の収容能力の観点から、5mm以下であることが望ましい。他方、耐火断熱部材の耐火性、断熱性などを考慮すると、厚さは1mm以上であることが望ましい。また、耐火断熱部材は、セルロース繊維、無機繊維、難燃性無機粒子、耐火性無機粒子、バインダー樹脂に加えて、他の成分を含んでいてもよい。
【0086】
上述の耐火断熱部材は、パルプモールド法により製造することができる。パルプモールド法は、分散液準備工程と、中間成形体形成工程と、乾燥工程と、を有している。分散液準備工程においては、水にセルロース繊維、無機繊維、難燃性無機粒子、耐火性無機粒子、およびバインダー樹脂を分散させることにより、分散液を準備する。中間成形体形成工程においては、準備した分散液に抄き型を浸漬し、抄き型を通して分散液を吸引することにより、抄き型の表面に中間成形体を形成する。乾燥工程においては、形成した中間成形体を加熱し乾燥することにより、成形体を作製する。
【0087】
また、上述の耐火断熱部材は、圧縮成形法により製造することができる。圧縮成形法は、スラリー準備工程と、圧縮成形工程と、を有している。スラリー準備工程においては、セルロース繊維、無機繊維、難燃性無機粒子、耐火性無機粒子、およびバインダー樹脂と水とを混合することにより、スラリーを準備する。圧縮成形工程においては、スラリーを成形型に収容し、加熱下で圧縮成形することにより、成形体を作製する。
【符号の説明】
【0088】
1:セル収容部材、2:筐体、20:内部空間、200:セル室、21:筒壁部、210:第一壁、210a:第一ガイド溝、211:第二壁、211a:第二ガイド溝、22:底壁部、220:取付口、23:開口部、3:セル間セパレータ、30:セル間セパレータ側スリット、31:セル間隔壁部、4:弾性部材、5:層間セパレータ、50:層間セパレータ側スリット、6:冷却部材、60:流路、7:冷却回路、70:ラジエーター、71:ポンプ、8:積層体、80:セル、800:端子、9:車載用バッテリーモジュール、C:冷却液、T:厚さ