(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128453
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】モータ制御装置、モータ駆動装置、モータシステム、及び電気機器
(51)【国際特許分類】
H02P 21/22 20160101AFI20240913BHJP
【FI】
H02P21/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037437
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 望人
【テーマコード(参考)】
5H505
【Fターム(参考)】
5H505AA01
5H505AA05
5H505AA09
5H505DD08
5H505EE41
5H505EE49
5H505GG04
5H505HB01
5H505JJ24
5H505LL22
5H505LL41
(57)【要約】
【課題】ベクトル制御の対象がIPMモータである場合であっても、外部での複雑な制御を必要とせずにモータを高効率で回転させることができるモータ制御装置を提供する。
【解決手段】モータ制御装置(201)は、算出部(23)と、制御部(5、6)と、を備える。前記算出部は、磁束成分電流及びトルク成分電流を合成した合成電流の位相目標値と、前記合成電流の大きさ目標値に対応する設定値と、に基づき、前記磁束成分電流の大きさ目標値及び前記トルク成分電流の大きさ目標値を算出するように構成されている。前記制御部は、前記算出部の算出結果を用いてベクトル制御を行うように構成されている。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁束成分電流及びトルク成分電流を合成した合成電流の位相目標値と、前記合成電流の大きさ目標値に対応する設定値と、に基づき、前記磁束成分電流の大きさ目標値及び前記トルク成分電流の大きさ目標値を算出するように構成された算出部と、
前記算出部の算出結果を用いてベクトル制御を行うように構成された制御部と、
を備える、モータ制御装置。
【請求項2】
前記磁束成分電流の大きさ目標値と前記磁束成分電流の検出値との差に基づくPI制御を行うように構成された第1PI制御部と、
前記第1PI制御部の出力と前記トルク成分電流の大きさ目標値とを合成するように構成された合成部と、
前記設定値と前記合成部の出力との差に基づくPI制御を行うように構成された第2PI制御部と、
を備え、
前記算出部は、前記第2PI制御部の出力を受け取るように構成されている、請求項1に記載のモータ制御装置。
【請求項3】
前記磁束成分電流の大きさ目標値と前記磁束成分電流の検出値との差に基づくPI制御を行うように構成された第1PI制御部と、
前記トルク成分電流の大きさ目標値と前記トルク成分電流の検出値との差に基づくPI制御を行うように構成された第3PI制御部と、
を備える、請求項1に記載のモータ制御装置。
【請求項4】
前記位相目標値は、45°以上135°以下である、請求項1に記載のモータ制御装置。
【請求項5】
直流電圧を交流電圧に変換するように構成されたインバータ部と、
前記インバータ部をスイッチング制御するように構成された請求項1~4のいずれか一項に記載のモータ制御装置と、
を備える、モータ駆動装置。
【請求項6】
モータと、
前記モータを駆動するように構成された請求項5に記載のモータ駆動装置と、
を備える、モータシステム。
【請求項7】
請求項6に記載のモータシステムを備える、電気機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書中に開示されている発明は、モータ制御装置、モータ駆動装置、モータシステム、及び電気機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ベクトル制御を行うモータ制御回路が種々開発されている(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ベクトル制御を行うモータ制御回路では、ベクトル制御の対象がIPM(Interior Permanent Magnet)モータである場合であっても、外部での複雑な制御を必要とせずにモータを高効率で回転させることができることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示に係るモータ制御装置は、磁束成分電流及びトルク成分電流を合成した合成電流の位相目標値と、前記合成電流の大きさ目標値に対応する設定値と、に基づき、前記磁束成分電流の大きさ目標値及び前記トルク成分電流の大きさ目標値を算出するように構成された算出部と、前記算出部の算出結果を用いてベクトル制御を行うように構成された制御部と、を備える。
【0006】
本開示に係るモータ駆動装置は、直流電圧を交流電圧に変換するように構成されたインバータ部と、前記インバータ部をスイッチング制御するように構成された上記モータ制御装置と、を備える。
【0007】
本開示のモータシステムは、モータと、前記モータを駆動するように構成された上記モータ駆動装置と、を備える。
【0008】
本開示の電気機器は、上記モータシステムを備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、ベクトル制御の対象がIPMモータである場合であっても、外部での複雑な制御を必要とせずにモータを高効率で回転させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、比較例に係るモータシステムの概略構成を示す図である。
【
図2】
図2は、SPM(Surface Permanent Magnet)モータの概略断面図である。
【
図4】
図4は、SPMモータのマグネットトルクを示す図である。
【
図5】
図5は、IPMモータの合成トルクを示す図である。
【
図6】
図6は、IPMモータにおけるマグネットトルク、リラクタンストルク、及び合成トルクの関係を示す図である。
【
図7】
図7は、第1実施形態に係るモータシステムの概略構成を示す図である。
【
図8】
図8は、第1実施形態の変形例に係るモータシステムの概略構成を示す図である。
【
図9】
図9は、第2実施形態に係るモータシステムの概略構成を示す図である。
【
図10】
図10は、空気調和機の一構成例を示す外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<比較例>
図1は、比較例(=後出の実施形態と対比される一般的な構成)に係るモータシステムの概略構成を示す図である。比較例に係るモータシステムSYS0は、マイクロコンピュータ100と、モータ駆動装置300と、モータ400と、ホールセンサ500と、を備える。
【0012】
モータ駆動装置300は、モータ制御装置200と、ゲートドライバ部7と、インバータ部8と、シャント抵抗9と、ADC(Analog Digital Converter)10と、を備える。
【0013】
モータ制御装置200は、減算器1及び3と、PI(Proportional Integral)制御部2及び4と、固定座標変換部5と、二相変調/三相変調部6と、相分離部11と、回転座標変換部12と、ホール周期測定部13と、速度変換部14と、セレクタ15と、加算器16~18と、を備える。
【0014】
本比較例において、マイクロコンピュータ100は、磁束成分電流Idの大きさ目標値IdT及びトルク成分電流Iqの大きさ目標値IqTをモータ制御装置200に供給する。
【0015】
減算器1は、磁束成分電流Idの大きさ目標値IdTと磁束成分電流の検出値Idmとの差IdTERRを算出する。PI制御部2は、磁束成分電流Idの大きさ目標値IdTと磁束成分電流の検出値Idmとの差IdTERRに基づくPI制御を行い、d軸電圧Vdを出力する。
【0016】
減算器3は、トルク成分電流Iqの大きさ目標値IqTとトルク成分電流の検出値Iqmとの差IqTERRを算出する。PI制御部4は、トルク成分電流Iqの大きさ目標値IqTとトルク成分電流の検出値Iqmとの差IqTERRに基づくPI制御を行い、q軸電圧Vqを出力する。
【0017】
固定座標変換部5は、回転座標であるd軸電圧Vd及びq軸電圧Vqそれぞれを、モータ400のロータの回転角度、より詳細には加算器18の出力に基づいて、固定座標であるα軸電圧Vα及びβ軸電圧Vβそれぞれに逆座標変換する。さらに、固定座標変換部5は、二相のα軸電圧Vα及びβ軸電圧Vβを、三相の電圧Vu、Vv、及びVwに変換する。
【0018】
二相変調/三相変調部6は、二相変調制御モードにおいてU相、V相、及びW相の3相のうち2相に対応するスイッチング素子をスイッチング制御し、三相変調制御モードにおいてU相、V相、及びW相の3相全てに対応するスイッチング素子をスイッチング制御する。
【0019】
二相変調/三相変調部6から出力される6個のゲート信号それぞれは、ゲートドライバ部7によって増幅されてゲート駆動信号となる。
【0020】
ゲートドライバ部7から出力される6個のゲート駆動信号は、インバータ部8のスイッチング素子を駆動する。インバータ部8は、スイッチング素子のスイッチングによって直流電圧を三相の交流電圧に変換し、三相の交流電圧をモータ400に供給する。モータ400は、インバータ部8から出力される三相の交流電圧によって駆動する。モータ400は、三相ブラシレスモータである。
【0021】
シャント抵抗9は、インバータ部8を流れる電流を検出する。シャント抵抗9による検出結果であるシャント抵抗9の第1端に印加されるアナログ電圧は、ADC10によってデジタル電圧に変換される。
【0022】
相分離部11は、ADC10から出力されるデジタル電圧を相分離して、三相の電流Iu、Iv、及びIwを生成する。
【0023】
回転座標変換部12は、三相の電流Iu、Iv、及びIwを固定座標である二相の電流Iα及びIβに変換する。さらに、回転座標変換部12は、固定座標である電流Iα及びIβそれぞれを、モータ400のロータの回転角度、より詳細には加算器17の出力に基づいて、回転座標であるトルク成分電流の検出値Iqm及び磁束成分電流の検出値Idmそれぞれに座標変換する。
【0024】
ホール周期測定部13は、ホールセンサ500から出力されるホール信号の周期を測定する。速度変換部14は、ホール周期測定部13の測定結果を、モータ400のロータの回転速度に対応する角度(単位時間あたりに増加する角度)に変換する。
【0025】
セレクタ15は、それぞれ60°ずつ異なる回転角度のいずれか一つを、モータ400のロータの回転方向及びホールセンサ500から出力されるホール信号に基づいて選択して加算器16に出力する。
【0026】
加算器16は、速度変換部14の出力とセレクタ15の出力とを加算して位相θを生成する。加算器17は、位相θと位相遅れPHASE DELAYとを加算した結果を回転座標変換部12に出力する。加算器17は、位相θと位相オフセットPHASE OFFSETとを加算した結果を固定座標変換部5に出力する。
【0027】
図2は、SPMモータの概略断面図である。SPMモータは、ロータR1の表面に永久磁石が貼り付けられた構造である。SPMモータは、永久磁石がロータR1の表面に露出しているため、有効磁束が大きく、トルクリプルが小さいという利点を有する。しかしながら、SPMモータは、永久磁石がロータR1から剥がれやすいため、高速回転には不向きである。
【0028】
図3は、IPMモータの概略断面図である。IPMモータは、ロータR1の内部に永久磁石が埋め込まれた構造である。IPMモータは、永久磁石がロータR1から剥がれないため、高速回転に向いている。IPMモータは、永久磁石によるマグネットトルクと、リラクタンストルクとの合成トルクが得られる構造である。IPMモータでは、永久磁石の形状及び配置に自由度があり、高価な永久磁石の量を減らしてもモータ出力の低下を回避することが可能であるため、コストダウンを図ることができる。
【0029】
図4は、SPMモータのマグネットトルクを示す図である。
図4では、マグネットトルクが大きい場合と小さい場合との両方が描写されている。SPMモータでは、マグネットトルクしか影響しないため、合成電流と磁束成分電流とのなす角度θ
Rが90°であるときに最適トルクになる。
【0030】
したがって、モータ400がSPMモータである場合、マイクロコンピュータ100は、磁束成分電流Idの大きさ目標値IdTを零に設定し、トルク成分電流Iqの大きさ目標値IqTのみを細かく制御する。これにより、モータシステムSYS0では、SPMモータが高効率で回転する。
【0031】
図5は、IPMモータの合成トルクを示す図である。
図5では、合成トルクが大きい場合と小さい場合との両方が描写されている。IPMモータでは、マグネットトルクに加えリラクタンストルクも影響するため、合成電流と磁束成分電流とのなす角度θ
Rが90°でないときに最適トルクになる。例えば、合成電流と磁束成分電流とのなす角度θ
Rが120°程度であれば、
図6に示すように合成トルクが最大になるため、最適トルクになる。
【0032】
したがって、モータ400がIPMモータである場合、マイクロコンピュータ100は、磁束成分電流Idの大きさ目標値IdTとトルク成分電流Iqの大きさ目標値IqTの両方を細かく制御する。これにより、モータシステムSYS0では、IPMモータが高効率で回転する。つまり、モータシステムSYS0は、マイクロコンピュータ100が複雑な制御を行わなければ、IPMモータを高効率で回転させることができなかった。
【0033】
<第1実施形態>
図7は、第1実施形態に係るモータシステムの概略構成を示す図である。本実施形態に係るモータシステムSYS1は、マイクロコンピュータ100と、モータ駆動装置301と、モータ400と、ホールセンサ500と、を備える。
【0034】
図7において、
図1と同一の部分には同一の符号が付されている。本実施形態において、比較例と同様の部分については適宜説明が省略される。
【0035】
モータ駆動装置301は、モータ制御装置201と、ゲートドライバ部7と、インバータ部8と、シャント抵抗9と、ADC10と、を備える。
【0036】
モータ制御装置201は、モータ制御装置200から減算器3及びPI制御部4が取り除かれ、減算器21、PI制御部22、算出部23、及び合成部24が追加された構成である。
【0037】
本実施形態では、マイクロコンピュータ100は、磁束成分電流Id及びトルク成分電流Iqを合成した合成電流の位相目標値(合成電流と磁束成分電流とのなす角度の目標値)θRと、合成電流の大きさ目標値に対応する設定値VSPと、をモータ制御装置201に供給する。なお、設定値VSPは、例えばデューティ値で表されてもよく、電圧値で表されてもよい。
【0038】
減算器21は、設定値VSPと合成部24の出力との差を算出する。PI制御部22は、設定値VSPと合成部24の出力との差に基づくPI制御を行い、合成電流の大きさ目標値IRを出力する。
【0039】
算出部23は、合成電流の位相目標値θRと設定値VSPとに基づき、磁束成分電流Idの大きさ目標値IdT及びトルク成分電流Iqの大きさ目標値IqTを算出する。より詳細には、算出部23は、合成電流の位相目標値θRと合成電流の大きさ目標値IRとに基づき、磁束成分電流Idの大きさ目標値IdT及びトルク成分電流Iqの大きさ目標値IqTを算出する。つまり、算出部23は、下記の式に基づき、磁束成分電流Idの大きさ目標値IdT及びトルク成分電流Iqの大きさ目標値IqTを算出する。
IdT=IR×cosθR
IqT=IR×sinθR
【0040】
トルク成分電流Iqの大きさ目標値IqTは、電圧値で表されるため、q軸電圧Vqと言い換えることができる。
【0041】
合成部24は、d軸電圧Vdとq軸電圧Vqとを合成する。より詳細には、合成部24は、d軸電圧Vdとq軸電圧Vqの二乗和の平方根を算出する。
【0042】
モータ400がSPMモータである場合、マイクロコンピュータ100は、合成電流の位相目標値θRを90°に設定し、設定値VSPのみを細かく制御する。これにより、モータシステムSYS1では、磁束成分電流Idが零になるような制御が実行され、SPMモータが高効率で回転する。
【0043】
一方、モータ400がIPMモータである場合、マイクロコンピュータ100は、合成電流の位相目標値θRを120°程度に設定し、設定値VSPのみを細かく制御する。これにより、モータシステムSYS1では、設定値VSPを細かく制御するだけで間接的に磁束成分電流Id及びトルク成分電流Iqを細かく制御することができ、IPMモータが高効率で回転する。つまり、モータシステムSYS1は、マイクロコンピュータ100が複雑な制御を行わなくても、IPMモータを高効率で回転させることができる。
【0044】
最適トルクを得るための合成電流の位相目標値θRの値は、IPMモータの具体的な構造次第で変わるが、45°以上135°以下の範囲内で設定されるとよい。
【0045】
モータシステムSYS1は、モータシステムSYS0のPI制御部4の代わりに、PI制御部22を備える構成であるため、PI制御に関する部分の簡略化も実現できている。
【0046】
<第1実施形態の変形例>
図8は、第1実施形態の変形例に係るモータシステムの概略構成を示す図である。第1実施形態の変形例に係るモータシステムSYS1’は、マイクロコンピュータ100が位相目標値θ
Rをモータ制御装置201に供給していない点でモータシステムSYS1と異なる。モータシステムSYS1’では、抵抗600及び700によって構成される分圧回路から出力される分圧の値が位相目標値θ
Rになる。抵抗600及び700の各抵抗値は、モータ400の選定に応じて設定される。
【0047】
また、モータシステムSYS1において、マイクロコンピュータ100の起動直後にのみマイクロコンピュータ100が位相目標値θRをモータ制御装置201に供給し、モータ制御装置201が位相目標値θRを記憶するレジスタを備える構成であってもよい。
【0048】
<第2実施形態>
図9は、第2実施形態に係るモータシステムの概略構成を示す図である。本実施形態の変形例に係るモータシステムSYS2は、マイクロコンピュータ100と、モータ駆動装置302と、モータ400と、ホールセンサ500と、を備える。
【0049】
図9において、
図1と同一の部分には同一の符号が付されている。本実施形態において、比較例と同様の部分については適宜説明が省略される。
【0050】
モータ駆動装置302は、モータ制御装置202と、ゲートドライバ部7と、インバータ部8と、シャント抵抗9と、ADC10と、を備える。
【0051】
モータ制御装置202は、モータ制御装置200に算出部23が追加された構成である。
【0052】
モータシステムSYS2は、モータシステムSYS1と同様に、マイクロコンピュータ100が複雑な制御を行わなくても、IPMモータを高効率で回転させることができる。
【0053】
また、モータシステムSYS1からモータシステムSYS1’への変形と同様の変形をモータシステムSYS2に対して行うことができる。
【0054】
<モータシステムの適用例>
図10は、空気調和機の一構成例を示す外観図である。本構成例の空気調和機Yは、室内機Y1と、室外機Y2と、これらを連結する配管Y3と、を有する。なお、室内機Y1は、主として、蒸発器及び室内ファンを内蔵しており、室外機Y2は、主として、圧縮機、凝縮器、膨張弁、及び室外ファンを内蔵している。
【0055】
本構成例の空気調和機Yは、例えば上述したモータシステムSYS1を2つ備える。2つの上述したモータシステムSYS1の一方は、室内ファンのインペラを回転させるファンモータとして用いられる。また、2つの上述したモータシステムSYS1の他方は、室外ファンのインペラを回転させるファンモータとして用いられる。2つの上述したモータシステムSYS1で用いられるマイクロコンピュータ100は、2つの上述したモータシステムSYS1それぞれで別個のマイクロコンピュータであってもよく、2つの上述したモータシステムSYS1で共通のマイクロコンピュータであってもよい。
【0056】
空気調和機Yの冷房運転時には、まず、室外機Y2の圧縮機で冷媒を圧縮して高温高圧の気体とした後、室外機Y2の凝縮器で放熱して冷媒を液化させる。その際、放熱を促すために室外ファンを回して凝縮器に風が当てられるので、室外機Y2からは熱風が吹き出す。次に、液化された冷媒を室外機Y2の膨張弁で減圧して低温低圧の液体とした後、配管Y3を介して室内機Y1に送り、室内機Y1の蒸発器で気化させる。その際、蒸発器は冷媒の気化熱によって低温となるので、室内ファンを回して蒸発器に風を当てることにより、室内機Y1から室内に向けて冷風が送り出される。気化された冷媒は、再び配管Y3を介して室外機Y2に送られた後、上記と同様の熱交換処理が繰り返される。
【0057】
なお、空気調和機Yの暖房運転時には、冷媒の循環方向が逆となり、室内機Y1の蒸発器と室外機Y2の凝縮器の役割が入れ替わるものの、基本的には上記と同様の熱交換処理が行われる。
【0058】
上述したモータシステムSYS1は、空気調和機以外の電気機器に搭載されてもよい。空気調和機以外の電気機器としては、例えば、給湯ポンプ、食洗器、洗濯機などを挙げることができる。
【0059】
<その他>
本開示の実施形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。これまでに説明してきた各種の実施形態は、矛盾のない範囲で適宜組み合わせて実施してもよい。以上の実施形態は、あくまでも、本開示の実施形態の例であって、本開示ないし各構成要件の用語の意義は、以上の実施形態に記載されたものに制限されるものではない。
【0060】
例えば、二相変調/三相変調部6は、二相変調制御モードのみを備える二相変調部に置換されてもよく、三相変調制御モードのみを備える三相変調部に置換されてもよい。
【0061】
<付記>
上述の実施形態にて具体的構成例が示された本開示について付記を設ける。
【0062】
本開示のモータ制御装置(201、202)は、磁束成分電流及びトルク成分電流を合成した合成電流の位相目標値と、前記合成電流の大きさ目標値に対応する設定値と、に基づき、前記磁束成分電流の大きさ目標値及び前記トルク成分電流の大きさ目標値を算出するように構成された算出部(23)と、前記算出部の算出結果を用いてベクトル制御を行うように構成された制御部(5、6)と、を備える構成(第1の構成)である。
【0063】
上記第1の構成のモータ制御装置において、前記磁束成分電流の大きさ目標値と前記磁束成分電流の検出値との差に基づくPI制御を行うように構成された第1PI制御部(2)と、前記第1PI制御部の出力と前記トルク成分電流の大きさ目標値とを合成するように構成された合成部(24)と、前記設定値と前記合成部の出力との差に基づくPI制御を行うように構成された第2PI制御部(22)と、を備え、前記算出部は、前記第2PI制御部の出力を受け取るように構成されている構成(第2の構成)であってもよい。
【0064】
上記第1の構成のモータ制御装置において、前記磁束成分電流の大きさ目標値と前記磁束成分電流の検出値との差に基づくPI制御を行うように構成された第1PI制御部(2)と、前記トルク成分電流の大きさ目標値と前記トルク成分電流の検出値との差に基づくPI制御を行うように構成された第3PI制御部(4)と、を備える構成(第3の構成)であってもよい。
【0065】
上記第1~第3いずれかの構成のモータ制御装置において、前記位相目標値は、45°以上135°以下である構成(第4の構成)であってもよい。
【0066】
本開示のモータ駆動装置(301、302)は、直流電圧を交流電圧に変換するように構成されたインバータ部(8)と、前記インバータ部をスイッチング制御するように構成された上記第1~第4いずれかの構成のモータ制御装置と、を備える構成(第5の構成)である。
【0067】
本開示のモータシステム(SYS1、SYS2)は、モータ(400)と、前記モータを駆動するように構成された上記第5の構成のモータ駆動装置と、を備える構成(第6の構成)である。
【0068】
本開示の電気機器(Y)は、上記第6の構成のモータシステムを備える構成(第7の構成)である。
【符号の説明】
【0069】
1、3、21 減算器
2、4、22 PI制御部
5 固定座標変換部
6 二相変調/三相変調部
7 ゲートドライバ部
8 インバータ部
9 シャント抵抗
10 ADC
11 相分離部
12 回転座標変換部
13 ホール周期測定部
14 速度変換部
15 セレクタ
16、17、18 加算器
23 算出部
24 合成部
100 マイクロコンピュータ
200、201、202 モータ制御装置
300、301、302 モータ駆動装置
400 モータ
500 ホールセンサ
600、700 抵抗
R1 ロータ
SYS0、SYS1、SYS1’、SYS1 モータシステム
Y 空気調和機
Y1 室内機
Y2 室外機
Y3 配管