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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128456
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】電源制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20240913BHJP
【FI】
H02M3/28 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037440
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 夏輝
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA02
5H730AS01
5H730BB43
5H730BB57
5H730DD04
5H730EE02
5H730EE07
5H730FD01
5H730FD51
5H730FD61
5H730FF02
5H730FG01
5H730XX02
5H730XX15
5H730XX22
5H730XX35
(57)【要約】
【課題】スイッチング周波数へのジッタの付与条件を適正化する。
【解決手段】トランス(TR)を用いて一次側の入力電圧(VIN)から二次側の出力電圧(VOUT)を生成する絶縁型DC/DCコンバータ(1)に用いられる電源制御装置(10)であって、トランスの一次側巻線(W1)に対して直列に接続されたスイッチング素子(M1)と、スイッチング素子をスイッチング駆動するスイッチング制御回路(100)と、を備え、スイッチング周波数に対してジッタを付与可能に構成される。スイッチング制御回路が電流不連続モードにてスイッチング駆動を行うときには、ジッタの付与を停止する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次側巻線及び二次側巻線を有するトランスを用いて一次側回路における入力電圧から二次側回路における出力電圧を生成する絶縁型DC/DCコンバータに用いられる電源制御装置であって、
前記一次側巻線に対して直列に接続されたスイッチング素子と、
電流連続モード又は電流不連続モードを動作モードとして前記スイッチング素子のスイッチング駆動を行うことで前記一次側回路から前記二次側回路に電力を伝達させるよう構成されたスイッチング制御回路と、
前記スイッチング素子のスイッチング周波数に対してジッタを付与可能に構成されたジッタ付与回路と、
前記ジッタ付与回路の制御を通じて前記スイッチング周波数に対する前記ジッタの付与有無を制御するよう構成されたジッタ制御回路と、を備え、
前記ジッタ制御回路は、前記電流不連続モードにおいて前記スイッチング周波数に対する前記ジッタの付与を停止する
、電源制御装置。
【請求項2】
前記電流連続モードにおける前記スイッチング周波数は、前記電流不連続モードにおける前記スイッチング周波数よりも高く、
前記ジッタ制御回路は、前記スイッチング周波数を検出する周波数検出回路を有し、前記スイッチング周波数の検出結果に基づき、前記スイッチング周波数に対する前記ジッタの付与有無を制御する
、請求項1に記載の電源制御装置。
【請求項3】
前記ジッタ制御回路は、前記周波数検出回路にて検出された前記スイッチング周波数に基づき前記動作モードが前記電流連続モード及び前記電流不連続モードの何れであるかを判定し、前記動作モードが前記電流連続モードであると判定したときには前記スイッチング周波数に対して前記ジッタを付与し、前記動作モードが前記電流不連続モードであると判定したときには前記スイッチング周波数に対する前記ジッタの付与を停止する
、請求項2に記載の電源制御装置。
【請求項4】
前記ジッタ制御回路は、前記二次側巻線に生じる電圧に基づき前記動作モードが前記電流連続モード及び前記電流不連続モードの何れであるかを判定し、前記動作モードが前記電流連続モードであると判定したときには前記スイッチング周波数に対して前記ジッタを付与し、前記動作モードが前記電流不連続モードであると判定したときには前記スイッチング周波数に対する前記ジッタの付与を停止する
、請求項1に記載の電源制御装置。
【請求項5】
前記ジッタ制御回路は、前記二次側巻線に生じる前記電圧に応じた対比用電圧を所定の閾電圧と比較することで、前記対比用電圧が前記閾電圧より高い状態から前記対比用電圧が前記閾電圧より低い状態へと変化する特定遷移を検出し、前記スイッチング素子のスイッチング駆動における1周期内に前記特定遷移が複数回検出されたときに前記動作モードが前記電流不連続モードであると判定し、前記1周期内において前記複数回の前記特定遷移が非検出であるときに前記動作モードが前記電流連続モードであると判定する
、請求項4に記載の電源制御装置。
【請求項6】
前記ジッタ制御回路は、前記スイッチング素子のオン期間において前記スイッチング素子に流れるスイッチ電流に基づき前記動作モードが前記電流連続モード及び前記電流不連続モードの何れであるかを判定し、前記動作モードが前記電流連続モードであると判定したときには前記スイッチング周波数に対して前記ジッタを付与し、前記動作モードが前記電流不連続モードであると判定したときには前記スイッチング周波数に対する前記ジッタの付与を停止する
、請求項1に記載の電源制御装置。
【請求項7】
前記ジッタ制御回路は、前記スイッチ電流と所定の閾電流との大小関係を判定する回路を有して、前記スイッチング素子がターンオンしてから前記スイッチ電流が前記閾電流に達するまでの時間を計測し、計測した時間が所定時間以上であるときには前記動作モードが前記電流不連続モードであると判定し、計測した時間が前記所定時間未満であるときには前記動作モードが前記電流連続モードであると判定する
、請求項6に記載の電源制御装置。
【請求項8】
前記ジッタ制御回路は、前記スイッチング素子のオン期間において前記スイッチング素子に流れるスイッチ電流が所定の閾電流に達するか否かを判定し、前記スイッチ電流が前記閾電流に達するときには前記スイッチング周波数に対して前記ジッタを付与し、前記スイッチ電流が前記閾電流に未達のときには前記スイッチング周波数に対する前記ジッタの付与を停止し、
前記電流不連続モードにおいて前記スイッチ電流のピークは前記閾電流より低い
、請求項1に記載の電源制御装置。
【請求項9】
前記電流連続モードにおいて、前記出力電圧を受ける負荷の消費電力の増減に連動して前記スイッチ電流が増減し、
前記ジッタ制御回路は、前記電流連続モードにおいて前記スイッチ電流が前記閾電流に達するときには前記スイッチング周波数に対して前記ジッタを付与し、前記電流連続モードにおいても前記スイッチ電流が前記閾電流に未達のときには前記スイッチング周波数に対する前記ジッタの付与を停止する
、請求項8に記載の電源制御装置。
【請求項10】
前記スイッチング制御回路は、前記スイッチ電流を所定の保護電流以下に制限するよう構成された過電流保護回路を有し、
前記ジッタ制御回路は、前記保護電流を基準に前記保護電流より小さな電流を前記閾電流に設定する
、請求項8に記載の電源制御装置。
【請求項11】
前記ジッタ付与回路は、前記スイッチング周波数に付与する前記ジッタの量を変更可能に構成され、
前記ジッタ制御回路は、前記ジッタ付与回路を用いて前記スイッチング周波数に前記ジッタを付与するとき、前記スイッチング素子のオン期間にて前記スイッチング素子に流れるスイッチ電流に応じて前記ジッタの量を可変設定する
、請求項1~5の何れかに記載の電源制御装置。
【請求項12】
前記ジッタ付与回路は、前記スイッチング周波数に付与する前記ジッタの量を変更可能に構成され、
前記ジッタ制御回路は、前記ジッタ付与回路を用いて前記スイッチング周波数に前記ジッタを付与するとき、前記スイッチ電流に応じて前記ジッタの量を可変設定する
、請求項6~10の何れかに記載の電源制御装置。
【請求項13】
前記スイッチング制御回路は、前記スイッチング素子のオフ期間において前記スイッチング素子と前記一次側巻線との接続ノードに生じるスイッチ電圧と、前記入力電圧と、の差電圧に基づき、制御電圧を生成するよう構成された制御電圧生成回路を有し、前記制御電圧に基づき前記スイッチング素子のオン、オフを制御するとともに前記スイッチング周波数を制御する
、請求項1~10の何れかに記載の電源制御装置。
【請求項14】
前記スイッチング制御回路は、前記スイッチング素子のオフ期間において所定電位から単調に上昇するスロープ電圧を生成するよう構成されたスロープ電圧生成回路を有して、前記制御電圧を前記スロープ電圧と比較することで前記スイッチング素子のターンオンタイミングを決定し、前記スイッチング素子のスイッチング駆動における各周期において前記スイッチング素子のオン時間に所定のコンスタントオン時間を設定し、
前記ジッタ付与回路は、前記スイッチング素子のオフ期間における前記スロープ電圧の傾きを変動させることにより前記スイッチング周波数へ前記ジッタを付与する
、請求項13に記載の電源制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電源制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トランスを用いて一次側の入力電圧から二次側において出力電圧を生成する絶縁型DC/DCコンバータが広く利用される。絶縁型DC/DCコンバータにおいて、トランスの一次側巻線に対し直列にスイッチングトランジスタを設け、スイッチングトランジスタをスイッチング駆動する方式が多く採用される。スイッチングトランジスタのスイッチング駆動を担う装置が多数開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-61819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スイッチングトランジスタのスイッチング駆動を担う装置において、スイッチング周波数にジッタ(揺らぎ)を付与する方式が検討される。ジッタの付与によりスペクトラム拡散の作用が得られ、放射ノイズのピークレベル低減を図ることができる。但し、無条件でジッタの付与を行うことはDC/DCコンバータの特性劣化に繋がり得る。ジッタの付与条件の適正化が望まれる。
【0005】
本開示は、スイッチング周波数へのジッタの付与条件の適正化に寄与する電源制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る電源制御装置は、一次側巻線及び二次側巻線を有するトランスを用いて一次側回路における入力電圧から二次側回路における出力電圧を生成する絶縁型DC/DCコンバータに用いられる電源制御装置であって、前記一次側巻線に対して直列に接続されたスイッチング素子と、電流連続モード又は電流不連続モードを動作モードとして前記スイッチング素子のスイッチング駆動を行うことで前記一次側回路から前記二次側回路に電力を伝達させるよう構成されたスイッチング制御回路と、前記スイッチング素子のスイッチング周波数に対してジッタを付与可能に構成されたジッタ付与回路と、前記ジッタ付与回路の制御を通じて前記スイッチング周波数に対する前記ジッタの付与有無を制御するよう構成されたジッタ制御回路と、を備え、前記ジッタ制御回路は、前記電流不連続モードにおいて前記スイッチング周波数に対する前記ジッタの付与を停止する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、スイッチング周波数へのジッタの付与条件の適正化に寄与する電源制御装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本開示の実施形態に係る負荷駆動システムの概略全体構成図である。
図2図2は、本開示の実施形態に係る電源制御装置の外観斜視図である。
図3図3は、本開示の実施形態に係り、DC/DCコンバータの内部構成図を含む、負荷駆動システムの全体構成図である。
図4図4は、本開示の実施形態に係るDC/DCコンバータのタイミングチャートである。
図5図5は、本開示の実施形態に係り、電流連続モードにおける一次側電流及び二次側電流の波形図である。
図6図6は、本開示の実施形態に係り、電流不連続モードにおける一次側電流及び二次側電流の波形図である。
図7図7は、本開示の実施形態に係り、出力電力とスイッチング周波数との関係図である(但しスイッチング周波数へのジッタの付与が無いと仮定)。
図8図8は、本開示の実施形態に係り、出力電力の変動に対する応答を示すタイミングチャートである。
図9図9は、図3の電流源121の内部回路及び周辺回路を示す図である。
図10図10は、本開示の実施形態に係り、スイッチング周波数へのジッタの付与方法を示す図である。
図11図11は、本開示の実施形態に係り、スイッチング周波数に対して常時ジッタが付与された場合における、出力電力とスイッチング周波数との関係図である
図12図12は、本開示の実施形態に属する第1実施例に係り、ジッタ制御回路の構成図である。
図13図13は、本開示の実施形態に属する第1実施例に係り、DCMにおける幾つかの信号波形等を示す図である。
図14図14は、本開示の実施形態に属する第1実施例に係り、CCMにおける幾つかの信号波形等を示す図である。
図15図15は、本開示の実施形態に属する第2実施例に係り、ジッタ制御回路とその周辺回路の構成図である。
図16図16は、本開示の実施形態に属する第2実施例に係り、DCMにおける幾つかの信号波形等を示す図である。
図17図17は、本開示の実施形態に属する第3実施例に係り、ジッタ制御回路とその周辺回路の構成図である。
図18図18は、本開示の実施形態に属する第3実施例に係り、DCMにおける幾つかの信号波形等を示す図である。
図19図19は、本開示の実施形態に属する第3実施例に係り、CCMにおける幾つかの信号波形等を示す図である。
図20図20は、本開示の実施形態に属する第4実施例に係り、ジッタ制御回路とその周辺回路の構成図である。
図21図21は、本開示の実施形態に属する第4実施例に係り、DCMにおける幾つかの信号波形等を示す図である。
図22図22は、本開示の実施形態に属する第4実施例に係り、CCMにおける幾つかの信号波形等を示す図である。
図23図23は、本開示の実施形態に属する第4実施例に係り、CCMにおける幾つかの信号波形等を示す図である。
図24図24は、本開示の実施形態に属する第5実施例に係り、ジッタ制御回路とその周辺回路の構成図である。
図25図25は、本開示の実施形態に属する第5実施例に係り、ジッタ量の可変設定方法を説明するための図である。
図26図26は、本開示の実施形態に属する第5実施例に係り、ジッタ量の可変設定方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態の例を、図面を参照して具体的に説明する。参照される各図において、同一の部分には同一の符号を付し、同一の部分に関する重複する説明を原則として省略する。尚、本明細書では、記述の簡略化上、情報、信号、物理量、機能部、回路、素子又は部品等を参照する記号又は符号を記すことによって、該記号又は符号に対応する情報、信号、物理量、機能部、回路、素子又は部品等の名称を省略又は略記することがある。例えば、後述の“110”によって参照される制御電圧生成回路110は(図3参照)、制御電圧生成回路110と表記されることもあるし、回路110と略記されることもあり得るが、それらは全て同じものを指す。
【0010】
まず、本開示の実施形態の記述にて用いられる幾つかの用語について説明を設ける。レベルとは電位のレベルを指し、任意の注目した信号又は電圧についてハイレベルはローレベルよりも高い電位を有する。任意の注目した信号又は電圧において、ローレベルからハイレベルへの切り替わりをアップエッジと称し、ハイレベルからローレベルへの切り替わりをダウンエッジと称する。アップエッジをライジングエッジに読み替えて良い。ダウンエッジをフォーリングエッジに読み替えて良い。
【0011】
MOSFETを含むFET(電界効果トランジスタ)として構成された任意のトランジスタについて、オン状態とは、当該トランジスタのドレイン及びソース間が導通している状態を指し、オフ状態とは、当該トランジスタのドレイン及びソース間が非導通となっている状態(遮断状態)を指す。FETに分類されないトランジスタについても同様である。MOSFETは、特に記述無き限り、エンハンスメント型のMOSFETであると解される。MOSFETは“metal-oxide-semiconductor field-effect transistor”の略称である。また、特に記述なき限り、任意のMOSFETにおいて、バックゲートはソースに短絡されていると考えて良い。
【0012】
以下、任意のトランジスタについて、オン状態、オフ状態を、単に、オン、オフと表現することもある。任意のトランジスタについて、オフ状態からオン状態への切り替わりをターンオンと表現し、オン状態からオフ状態への切り替わりをターンオフと表現する。また、任意のトランジスタについて、トランジスタがオン状態となっている期間をオン期間と称し、トランジスタがオフ状態となっている期間をオフ期間と称する。
【0013】
ハイレベル又はローレベルの信号レベルをとる任意の信号について、当該信号のレベルがハイレベルとなる期間をハイレベル期間と称し、当該信号のレベルがローレベルとなる期間をローレベル期間と称する。ハイレベル又はローレベルの電圧レベルをとる任意の電圧についても同様である。
【0014】
任意の回路素子、配線、ノードなど、回路を形成する複数の部位間についての接続とは、特に記述なき限り、電気的な接続を指すと解して良い。
【0015】
対比されるべき任意の2つの電圧が電圧v1及びv2であるとした場合、“v1>v2”は電圧v1が電圧v2よりも高いことを表し、“v1<v2”は電圧v1が電圧v2よりも低いことを表す。電圧以外の物理量を含む他の式についても同様である。
【0016】
図1は本開示の実施形態に係る負荷駆動システムの全体構成図である。図1の負荷駆動システムは、電圧源VSと、絶縁型DC/DCコンバータであるDC/DCコンバータ1と、出力コンデンサCOUTと、負荷LDと、を備える。出力コンデンサCOUTはDC/DCコンバータ1の構成要素に含まれると解しても構わない。
【0017】
図1の負荷駆動システムは一次側回路と二次側回路とを備える。一次側回路と二次側回路とは互いに電気的に絶縁される。本明細書において、絶縁とは直流の信号及び電力の伝達が遮断されていることを意味する。電圧源VSは一次側回路に配置され、出力コンデンサCOUT及び負荷LDは二次側回路に配置される。DC/DCコンバータ1は一次側回路と二次側回路に亘って配置される。
【0018】
一次側回路におけるグランドは“GND1”にて参照され、二次側回路におけるグランドは“GND2”にて参照される。一次側回路における任意の電圧又は信号は、グランドGND1を基準とする電圧又は信号であって、グランドGND1から見た電位を有する。二次側回路における任意の電圧又は信号は、グランドGND2を基準とする電圧又は信号であって、グランドGND2から見た電位を有する。一次側回路及び二次側回路の夫々において、グランドは0V(ゼロボルト)の基準電位を有する基準導電部(所定電位点)を指す又は基準電位そのものを指す。但し、グランドGND1とグランドGND2は互いに絶縁されているため、互いに異なる電位を有し得る。基準導電部は金属等の導体にて形成される。配線WR1L及びWR1Hは一次側回路に設けられ、配線WR2L及びWR2Hは二次側回路に設けられる。
【0019】
電圧源VSは配線WR1L及びWR1H間に接続され、配線WR1Lの電位を基準に入力電圧VINを配線WR1Hに対して出力する。配線WR1LはグランドGND1に接続される。入力電圧VINは正の直流電圧である。故に、グランドGND1の電位よりも入力電圧VINだけ高い電位が配線WR1Hに加わる。電圧源VSはバッテリ等の直流電圧源であって良い。或いは、交流電圧を整流及び平滑化する回路にて電圧源VSが構成されても良い。
【0020】
DC/DCコンバータ1は一次側において配線WR1L及びWR1Hに接続され、二次側において配線WR2L及びWR2Hに接続される。DC/DCコンバータ1は入力電圧VINを、スイッチング方式にて電力変換(直流-直流変換)することで出力電圧VOUTを生成する。入力電圧VINは一次側回路における電圧であって、出力電圧VOUTは二次側回路における電圧である。このため、入力電圧VINは一次側電圧と称され且つ出力電圧VOUTを二次側電圧と称され得る。DC/DCコンバータ1は配線WR2Lの電位を基準に出力電圧VOUTを配線WR2Hに対して出力する。配線WR2LはグランドGND2に接続される。グランドGND2の電位よりも出力電圧VOUTだけ高い電位が配線WR2Hに加わる。過渡状態を除き、出力電圧VOUTは正の直流電圧である。出力コンデンサCOUTの一端は配線WR2Lに接続され(従ってグランドGND2に接続され)、出力コンデンサCOUTの他端は配線WR2Hに接続される。
【0021】
負荷LDはDC/DCコンバータ1の負荷であり、配線WR2L及びWR2Hに接続される。負荷LDは出力電圧VOUTを受け、出力電圧VOUTに基づいて駆動する任意の負荷である。例えば、負荷LDは、マイクロコンピュータ、DSP(Digital Signal Processor)、照明機器、アナログ回路又はデジタル回路を含む。負荷LDは、DC/DCコンバータ1とは異なる電源回路を含みうる。DC/DCコンバータ1から負荷LDに供給される電流を出力電流IOUTと称する。出力電流IOUTは負荷LDの消費電流であり、配線WR2Hから負荷LDを通じ配線WR2Lに向けて流れる。
【0022】
図2はDC/DCコンバータ1に設けられる電源制御装置10の外観斜視図である。図3は、DC/DCコンバータ1の内部構成図を含む、負荷覆道システムの全体構成図である。電源制御装置10は、半導体基板上に形成された半導体集積回路を有する半導体チップと、半導体チップを収容する筐体(パッケージ)と、筐体から電源制御装置10の外部に対して露出する複数の外部端子と、を備えた電子部品である。半導体チップを樹脂にて構成された筐体(パッケージ)内に封入することで電源制御装置10が形成される。尚、図2に示される電源制御装置10の外部端子の数及び電源制御装置10の筐体の種類は例示に過ぎず、それらを任意に設計可能である。図3には、電源制御装置10に設けられる外部端子の一部として、電源入力端子IN、スイッチ端子SW及びグランド端子GNDと、出力電圧設定端子FB及びREFと、が示される。これら以外の外部端子も電源制御装置10に設けられ得る。
【0023】
DC/DCコンバータ1には、電源制御装置10に加えて、抵抗RFB及びRREFと、トランスTRと、整流ダイオードDが設けられる。上述したように、出力コンデンサCOUTもDC/DCコンバータ1の構成要素に含まれると解され得る。トランスTRは一次側巻線W1及び二次側巻線W2を有する。一次側巻線W1、電源制御装置10並びに抵抗RFB及びRREFは電圧源VSと共に一次側回路に設けられる。二次側巻線W2及び整流ダイオードDは出力コンデンサCOUT及び負荷LDと共に二次側回路に設けられる。
【0024】
まず図3に示される構成の内、電源制御装置10の外部構成、及び、電源制御装置10の外部と電源制御装置10との接続関係を説明する。
【0025】
電源入力端子INは配線WR1Hに接続されて入力電圧VINを受ける。グランド端子GNDはグランドGND1に接続される。電源制御装置10内の各回路はグランドGND1の電位を基準に、入力電圧VINに基づいて駆動する。抵抗RREFの第1端は出力電圧設定端子REFに接続され、抵抗RREFの第2端はグランドGND1に接続される。尚、
出力電圧設定端子REFにおける電圧を端子電圧VREFと称する。
【0026】
トランスTRにおいて、一次側巻線W1と二次側巻線W2とは電気的に絶縁されつつ互いに逆極性にて磁気結合される。一次側巻線W1の第1端は配線WR1Hに接続されて入力電圧VINを受ける。一次側巻線W1の第2端はスイッチ端子SWに接続されると共に抵抗RFBの第1端に接続される。抵抗RFBの第2端は出力電圧設定端子FBに接続される。一次側巻線W1の第1端から一次側巻線W1の第2端に向けて流れる電流を一次側電流と称し、記号“I”にて参照する。一次側電流Iは、後述のスイッチングトランジスタM1のオン期間において、電圧源VSから配線WR1H、一次側巻線W1及びスイッチングトランジスタM1を通じ、グランドGND1に向けて流れる。また、一次側巻線W1の第2端から抵抗RFBを通じ端子FBに向けて流れる電流を記号“IFB”にて参照する。加えて、スイッチ端子SWにおける電圧をスイッチ電圧と称し、記号“VSW”にて参照する。
【0027】
二次側巻線W2の第1端は整流ダイオードDのアノードに接続される。二次側巻線W2の第2端は配線WR2Lに接続される(従ってグランドGND2に接続される)。整流ダイオードDのカソードは配線WR2Hに接続される。上述したように出力コンデンサCOUTは配線WR2H及びWR2L間に設けられる。二次側巻線W1の第2端から二次側巻線W2の第1端に向けて流れる電流を二次側電流と称し、記号“I”にて参照する。二次側電流Iは整流ダイオードDの順方向に流れ、整流ダイオードDを通じて出力コンデンサCOUTの充電に供される。
【0028】
次に電源制御装置10の内部構成を説明する。電源制御装置10には、スイッチングトランジスタM1、スイッチング制御回路100、ジッタ付与回路200及びジッタ制御回路300が設けられる。電源制御装置10には、これら以外の様々な機能回路(内部電源回路、短絡保護回路、低電圧保護回路など)が設けられるが、図3に示される構成について詳細に説明する。
【0029】
スイッチングトランジスタM1はNチャネル型のMOSFETにて構成されたスイッチング素子である。スイッチングトランジスタM1のドレインはスイッチ端子SWに接続される。スイッチングトランジスタM1のソースはグランド端子GNDに接続され、故にグランドGND1に接続される。スイッチングトランジスタM1のチャネルに流れる電流(即ち、スイッチングトランジスタM1のドレイン電流)をスイッチ電流と称し、記号“ISW”にて参照する。スイッチングトランジスタM1のオン期間において一次側電流Iは電流ISW及びIFBの和であるが、“ISW>>IFB”とみなせるため、以下では、適宜、一次側電流Iはスイッチ電流ISWに等しいと考える。尚、スイッチングトランジスタM1を電源制御装置10の外部に設ける変形も可能である。
【0030】
スイッチング制御回路100は、端子IN、FB及びREFに接続され、端子IN、FB及びREFの各電圧に基づきスイッチングトランジスタM1のスイッチング駆動を行う。スイッチングトランジスタM1のスイッチング駆動とは、スイッチングトランジスタM1を交互にオン、オフに制御することを指す。スイッチング制御回路100はスイッチングトランジスタM1のスイッチング駆動を行うことで一次側回路から二次側回路に電力を伝達し、これによって入力電圧VINに基づく出力電圧VOUTを二次側回路に発生させる。但し、詳細には上記電力の伝達は、DC/DCコンバータ1内に設けられる他の構成要素(電源制御装置10以外の構成要素であって、トランスTR及び整流ダイオードDを含む)との協働により実現される。
【0031】
スイッチングトランジスタM1のオン期間において一次側電流Iが流れることで一次側巻線W1にエネルギが蓄積される。その後、蓄積されたエネルギがスイッチングトランジスタM1のオフ期間にて二次側巻線W2から放出されることにより(詳細には、上記蓄積されたエネルギに基づく二次側電流IがスイッチングトランジスタM1のオフ期間にて整流ダイオードDを通じて流れることにより)出力コンデンサCOUTが充電される。スイッチングトランジスタM1のオン、オフの切り替えを繰り返すことで所望の出力電圧VOUTが得られる。
【0032】
スイッチング制御回路100は、制御電圧生成回路110と、スロープ電圧生成回路120と、コンパレータ130と、制御ロジック140と、ドライバ150と、過電流保護回路160と、を備える。
【0033】
制御電圧生成回路110は、端子IN、FB及びREFに接続され、端子IN、FB及びREFの各電圧に基づき制御電圧VREFSを生成する。制御電圧VREFSの生成方法については後述される。
【0034】
スロープ電圧生成回路120は電流源121、コンデンサ122及びトランジスタ123を有し、三角波状の電圧であるスロープ電圧VSLPを生成する。トランジスタ123は任意の種類のトランジスタであって良いが、ここではNチャネル型のMOSFETにてトランジスタ123が構成されているものとする。電流源121は、正の内部電源電圧が加わる端子からノード124に向けて電流Iaを供給する。電流Iaは基本的には定電流であるが、ジッタ付与回路200によって電流Iaの値は変動し得る。ノード124はコンデンサ122の一端及びトランジスタ123のドレインに接続される。コンデンサ122の他端及びトランジスタ123のソースはグランドに接続される。ノード124における電圧がスロープ電圧VSLPである。
【0035】
コンパレータ130の非反転入力端子に対して制御電圧VREFSが入力される一方、コンパレータ130の反転入力端子に対してスロープ電圧VSLPが入力される。コンパレータ130は、制御電圧VREFSとスロープ電圧VSLPを比較し、それらの比較結果を表す比較結果信号SCMPを生成及び出力する。信号SCMP並びに後述の信号SCNT、SDRV及びSOCPはハイレベル又はローレベルの信号レベルを持つ。コンパレータ130は、“VREFS>VSLP”の成立時においてハイレベルの比較結果信号SCMPを生成及び出力し、“VREFS<VSLP”の成立時においてローレベルの比較結果信号SCMPを生成及び出力する。“VREFS=VSLP”の成立時において比較結果信号SCMPはハイレベル又はローレベルを有する。
【0036】
制御ロジック140に対してコンパレータ130からの比較結果信号SCMPが入力される。制御ロジック140は比較結果信号SCMPに基づく制御信号SCNTを生成する。また、過電流保護回路160からの過電流保護信号SOCPも制御ロジック140に入力される。比較結果信号SCMPと制御信号SCNTとの関係、及び、過電流保護信号SOCPと制御信号SCNTとの関係については後述される。制御信号SCNTは、ドライバ150に供給されると共にトランジスタ123のゲートにも供給される。制御信号SCNTのハイレベル期間においてトランジスタ123はオンに制御され、制御信号SCNTのローレベル期間においてトランジスタ123はオフに制御される。トランジスタ123のオン期間では、トランジスタ123を通じてノード124とグランドGND1との間が短絡されるのでスロープ電圧VSLPは0Vである。トランジスタ123のオフ期間においては、電流Iaによりコンデンサ122が充電されることでスロープ電圧VLPが単調上昇する。
【0037】
ドライバ150は、スイッチングトランジスタM1のゲートに接続され、制御ロジック140からの制御信号SCNTに応じた駆動信号SDRVをスイッチングトランジスタM1のゲートに供給する。ハイレベルの駆動信号SDRVの電位はスイッチングトランジスタM1のゲート閾電圧よりも十分に高い。ローレベルの駆動信号SDRVの電位は実質的にグランドGND1の電位と一致し、スイッチングトランジスタM1のゲート閾電圧よりも十分に低い。ドライバ150は、制御信号SCNTのハイレベル期間においてハイレベルの駆動信号SDRVをスイッチングトランジスタM1のゲートに供給することでスイッチングトランジスタM1をオンに制御し、制御信号SCNTのローレベル期間においてローレベルの駆動信号SDRVをスイッチングトランジスタM1のゲートに供給することでスイッチングトランジスタM1をオフに制御する。
【0038】
過電流保護回路160はスイッチ電流ISWと所定の保護電流IOCPとの大小関係を検出し、その検出結果を示す過電流保護信号SOCPを生成及び出力する。過電流保護回路160は、“ISW>IOCP”の成立時においてハイレベルの過電流保護信号SOCPを生成及び出力し、“ISW<IOCP”の成立時においてローレベルの過電流保護信号SOCPを生成及び出力する。“ISW=IOCP”の成立時において過電流保護信号SOCPはハイレベル又はローレベルを有する。本実施形態では特に記述なき限り、過電流保護信号SOCPはローレベルに維持されると考える。
【0039】
スイッチングトランジスタM1のスイッチング周波数を記号“fSW”にて参照する。ジッタ付与回路200はスイッチングトランジスタM1のスイッチング周波数fSWに対してジッタを付与する機能を持つが、ジッタ付与回路200及びジッタ制御回路300の詳細については後述するものとし、まずスイッチング周波数fSWに対してジッタが付与されていないことを前提にスイッチング制御回路100によるスイッチング制御方法を説明する。
【0040】
スイッチングトランジスタM1がオフであるとき、スイッチ電圧VSWは一次側のフライバック電圧だけ入力電圧VINより高くなる。即ち、スイッチングトランジスタM1のオフ期間におけるスイッチ電圧VSWを、VSW[OFF]にて表すと、下記式(1)が成立する。ここで、Nは一次側巻線W1の巻き数を表し、Nは二次側巻線W2の巻き数を表す。Vは整流ダイオードDの順方向電圧を表す。スイッチングトランジスタM1のオフ期間における一次側のフライバック電圧Vorは、Vor=(N/N)×(VOUT+V)である。
【0041】
【数1】
【0042】
一方、制御電圧生成回路110は、入力電圧VINと同じ電圧値を有する電圧が端子FBに印加されるよう動作する。このため、電流IFBは下記式(2)を満たす。尚、以下に示す各式において、“RFB”は抵抗RFBの値を表し、“RREF”は抵抗RREFの値を表す。また、制御電圧生成回路110は、端子FBに流入する電流IFB(式(2)を満たす電流IFB)を抵抗RREFに供給する。このため端子REFに発生する端子電圧VREFは下記式(3)を満たす。
【0043】
【数2】
【0044】
式(3)を式(1)及び(2)を用いて変形すると、式(4)が得られる。但し、式(4)はスイッチングトランジスタM1のオフ期間においてのみ成立する式であり、スイッチングトランジスタM1のオン期間において端子電圧VREFは実質的に0Vである。
【0045】
【数3】
【0046】
式(4)から分かるように、スイッチングトランジスタM1のオフ期間における端子電圧VREFは出力電圧VOUTの情報を含む。このため、端子電圧VREFに基づきトランジスタM1をスイッチング駆動すれば出力電圧VOUTを所望の電圧にて安定化させることができる。制御電圧生成回路110では、スイッチングトランジスタM1のオフ期間における端子電圧VREFをサンプリングすることで制御電圧VREFSを生成する。このため、制御電圧VREFSは、スイッチングトランジスタM1のオフ期間における端子電圧VREFの値を有するとみなすことができる。
【0047】
基本的にスイッチングトランジスタM1が電流連続モードにて駆動されるようDC/DCコンバータ1が設計される。スイッチング制御回路100では、電流連続モードにおいて制御電圧VREFSが所定の内部設定電圧VINTREFと一致するように帰還制御を行うことができる。一方で、式(4)における端子電圧VREFを制御電圧VREFSとみなすことができるので当該帰還制御により出力電圧VOUTは下記式(5)を満たすよう安定化される。式(5)の右辺で示される電圧を目標電圧VTGと称する。即ち、目標電圧VTGは式(6)にて表される。内部設定電圧VINTREFは正の直流電圧値(例えば数100mV)を有する。
【0048】
【数4】
【0049】
図4にDC/DCコンバータ1のタイミングチャートを示す。図4では、電流連続モードにてスイッチングトランジスタM1がスイッチング駆動され且つ出力電圧VOUTが目標電圧TG近辺にて安定化された状態が想定されている。図4において波形611~615は、夫々、出力電圧VOUT、スイッチ電圧VSW、端子電圧VREF、制御電圧VREFS、スロープ電圧VSLPの波形である。図4において波形616~618は、夫々、信号SCMP、SCNT、SDRVの波形である。図4において波形619はスイッチングトランジスタM1の状態を示す波形である。
【0050】
図4を参照し、時刻tA1の直前時刻を起点にDC/DCコンバータ1の動作を説明する。時間の進行につれて、時刻tA1、tA2、tA3、tA4、tA5、tA6が、この順番で訪れるものとする。尚、ここでは、説明の簡略化のため、制御信号SCNTの信号レベル変化からスイッチングトランジスタM1の状態変化との間における遅延を無視する。また、スイッチングトランジスタM1がスイッチングされる周期をスイッチング周期と称する。スイッチング周期の長さはスイッチングトランジスタM1のスイッチング周波数fSWの逆数に等しい。
【0051】
時刻tA1の直前では制御信号SCNTがハイレベルを有しているため、スイッチングトランジスタM1がオン状態にあり、故にスイッチ電圧VSWは略0Vである(概ねグランドGND1の電位に等しい)。制御信号SCNTのハイレベル期間ではトランジスタ123がオン状態にある(図3参照)。このため、時刻tA1の直前においてスロープ電圧VSLPは0Vである(即ちグランドGND1の電位に等しい)。
【0052】
時刻tA1にて制御信号SCNTにダウンエッジが発生し、制御信号SCNTのダウンエッジに応答して駆動信号SDRVにダウンエッジが発生する。このため、時刻tA1にてスイッチングトランジスタM1がターンオフされる。スイッチングトランジスタM1のターンオフに伴ってスイッチ電圧VSWが急峻に上昇し、リンギングを経て上記式(1)を満たす電圧となる。上述したように、制御電圧生成回路110は、端子FBに流入する電流IFB(式(2)を満たす電流IFB)を抵抗RREFに供給するため、端子電圧VREFの波形とスイッチ電圧VSWの波形とは相似の関係にある。
【0053】
制御電圧生成回路110は端子電圧VREFをサンプリングして保持する機能を持つ。スイッチングトランジスタM1がターンオフされてから所定時間ΔT1が経過するまでは、回路110は前回保持した端子電圧VREFにて制御電圧VREFSを維持する。スイッチングトランジスタM1のターンオフに伴って発生するスイッチ電圧VSWのリンギングの影響を排除するためである。スイッチングトランジスタM1がターンオフされてから所定時間ΔT1が経過すると、回路110は端子電圧VREFのサンプリングを開始し、サンプリングした端子電圧VREFを制御電圧VREFSに設定する。スイッチングトランジスタM1がターンオフされてから所定時間ΔT2が経過した時点にて、回路110は端子電圧VREFのサンプリングを終了し、その時点における端子電圧VREFを保持する。以後、次回のサンプリングが開始されるまで、回路110は保持した端子電圧VREFを制御電圧VREFSに設定する(即ち、保持した端子電圧VREFにて制御電圧VREFSを維持する)。図4において斜線領域は上記のサンプリングが行われるサンプリング期間を表している。所定時間ΔT2は所定時間ΔT1より長い。スイッチングトランジスタM1のオフ期間の長さの最小値として想定される最小オン時間よりも所定時間ΔT2が短くなるよう、所定時間ΔT2が設定される。
【0054】
時刻tA2は時刻tA1よりも所定時間ΔT1だけ後の時刻であり、時刻tA3は時刻tA1よりも所定時間ΔT2だけ後の時刻である。このため、時刻tA1から時刻tA2の直前までは、回路110が前回保持した端子電圧VREFにて制御電圧VREFSが維持される。時刻tA2及びtA3間では、時刻tA2及びtA3における端子電圧VREFがそのまま制御電圧VREFSに設定される。そして、回路110により時刻tA3における端子電圧VREFが保持され、時刻tA3以降、次回のサンプリングが開始される後述の時刻tA6まで、回路110は時刻tA3における端子電圧VREFにて制御電圧VREFSを維持する。図4では、保持される制御電圧VREFSが上記の内部設定電圧VINTREFと一致する状況が想定されている。
【0055】
一方、時刻tA1における制御信号SCNTのダウンエッジに伴い、時刻tA1からスロープ電圧VSLPが上昇を開始する。時刻tA3よりも後の時刻tA4において“VSLP<VREFS”の状態から“VSLP>VREFS”の状態に切り替わる。この切り替わりに応答して、比較結果信号SCMPにダウンエッジが発生する。制御ロジック140は比較結果信号SCMPのダウンエッジに応答して制御信号SCNTにアップエッジを生じさせる。従って、時刻tA4にて制御信号SCNTにアップエッジが生じる。制御信号SCNTのアップエッジに応答して駆動信号SDRVにアップエッジが発生する。このため、時刻tA4にてスイッチングトランジスタM1がターンオンされる。スイッチングトランジスタM1のターンオンに伴ってスイッチ電圧VSWが急峻に低下し、連動して端子電圧VREFも急峻に低下する。
【0056】
また、時刻tA4における制御信号SCNTのアップエッジに伴い、トランジスタ123がターンオンするのでスロープ電圧VSLPは0Vへと急峻に低下する。スロープ電圧VSLPの低下に伴って“VSLP<VREFS”の状態に戻るため、比較結果信号SCMPにアップエッジが生じる。結果、各スイッチング周期において比較結果信号SCMPのローレベル期間の長さは微小である。
【0057】
時刻tA4から所定のオン時間TONが経過すると、制御ロジック140は制御信号SCNTにダウンエッジを発生させる。時刻tA5は時刻tA4からオン時間TONだけ後の時刻である。時刻tA5における制御信号SCNTのダウンエッジに応答して駆動信号SDRVにダウンエッジが発生する。このため、時刻tA5にてスイッチングトランジスタM1がターンオフされる。時刻tA6は時刻tA5から所定時間ΔT1だけ後の時刻である。
【0058】
各スイッチング周期においてスイッチングトランジスタM1がオン状態とされる時間はオン時間TONであり、スイッチングトランジスタM1がオフ状態とされる時間はオフ時間TOFFである。時刻tA1から時刻tA5までの期間に関しては、時刻tA1及びtA4間の長さがオフ時間TOFFであり、時刻tA4及びtA5間の長さがオン時間TONである。
【0059】
制御ロジック140において、予め定められた固定時間(所定のコンスタントオン時間)がオン時間TONに設定される。これに対し、オフ時間TOFFは制御電圧VREFSに応じて変動し得る。ここで、“VREFS=VINTREF”であるときのオフ時間TOFFを、特に基準オフ時間と称する。基準オフ時間と固定されたオン時間TONとの和は、基準スイッチング周波数fの逆数に等しい。
【0060】
基準スイッチング周波数fは電源制御装置10の仕様において定められた周波数であり、電流連続モードにおいて二次側出力電力PWOUTが一定に保持されているとき、スイッチング周波数fSWは基準スイッチング周波数fに等しい(但し、スイッチング周波数fSWに対してジッタが付与されていないと仮定)。“VREFS=VINTREF”が成立するときにおいてオフ時間TOFFとオン時間TONとの和が時間(1/f)と等しくなるよう、電流源121は内部設定電圧VINTREFに応じた電流Iaを発生させれば良い。
【0061】
二次側出力電力PWOUTは出力電圧VOUTと出力電流IOUTの積で表され、負荷LDの消費電力に相当する。二次側出力電力PWOUTは、以下、単に出力電力PWOUTと表記され得る。出力電圧VOUTが安定化されることを想定すれば、出力電力PWOUTの増大、減少は、出力電流IOUTの増大、減少を意味する。
【0062】
図5に電流連続モードにおける一次側電流I及び二次側電流Iの波形を示す。図6に電流不連続モードにおける一次側電流I及び二次側電流Iの波形を示す。以下、電流連続モード(Continuous Current Mode)はCCMと略記されることがあり、電流不連続モード(Discontinuous Current Mode)はDCMと略記されることがある。各スイッチング周期はスイッチングトランジスタM1のターンオンから始まると考える。各スイッチング周期では、スイッチングトランジスタM1のオン期間において一次側電流Iが増大してゆき、その後、スイッチングトランジスタM1がターンオフされると二次側電流Iが発生する。スイッチングトランジスタM1のオフ期間において二次側電流Iは徐々に減少してゆく。電流連続モードでは、スイッチングトランジスタM1のオフ期間において二次側電流Iがゼロにまで減少する前に、スイッチングトランジスタM1がターンオンされる(即ち次のスイッチング周期が始まる)。電流不連続モードでは、スイッチングトランジスタM1のオフ期間において二次側電流Iがゼロにまで減少した後に、スイッチングトランジスタM1がターンオンされる(即ち次のスイッチング周期が始まる)。
【0063】
スイッチング制御回路100の動作モードにはCCMとDCMがある。即ち、スイッチング制御回路100は、CCMを動作モードとして用いてスイッチングトランジスタM1のスイッチング駆動を行うことができ、またDCMを動作モードとして用いてスイッチングトランジスタM1のスイッチング駆動を行うことができる。スイッチング制御回路100は、負荷が比較的重いときに(即ち出力電力PWOUTが比較的大きいときに)CCMを動作モードとして用い、負荷が比較的軽いときに(即ち出力電力PWOUTが比較的小さいときに)DCMを動作モードとして用いる。
【0064】
CCMにおいて出力電力PWOUTが一定電力に維持され且つ出力電圧VOUTが目標電圧VTGと一致する状態を、第1平衡状態と称する。
【0065】
第1平衡状態を起点に、出力電力PWOUTが一定電力から増大したときの挙動を説明する。CCMにおいて出力電力PWOUTが一定電力から増大すると、一時的に出力電圧VOUTが目標電圧VTGより低くなる。出力電圧VOUTの低下は制御電圧VREFSの低下を通じてオフ時間TOFFの減少をもたらす。オフ時間TOFFの減少は、一次側電流Iの平均電流及び二次側電流Iの平均電流の増大をもたらし、出力電圧VOUTが上昇する。そして、再び出力電圧VOUTが目標電圧VTGと一致する状態に戻る。第1平衡状態を起点に出力電力PWOUTが増大した後に、再び“VOUT=VTG”にて安定化した状態を第2平衡状態と称する。第2平衡状態における一次側電流Iの平均電流及び二次側電流Iの平均電流は、第1平衡状態におけるそれらよりも大きくなる。
【0066】
第1平衡状態を起点に、出力電力PWOUTが一定電力から減少したときの挙動を説明する。CCMにおいて出力電力PWOUTが一定電力から減少すると、一時的に出力電圧VOUTが目標電圧VTGより高くなる。出力電圧VOUTの上昇は制御電圧VREFSの上昇を通じてオフ時間TOFFの増大をもたらす。オフ時間TOFFの増大は、一次側電流Iの平均電流及び二次側電流Iの平均電流の減少をもたらし、出力電圧VOUTが低下する。そして、再び出力電圧VOUTが目標電圧VTGと一致する状態に戻る。第1平衡状態を起点に出力電力PWOUTが減少した後に、再び“VOUT=VTG” にて安定化した状態を第3平衡状態と称する。第3平衡状態における一次側電流Iの平均電流及び二次側電流Iの平均電流は、第1平衡状態におけるそれらよりも小さくなる。
【0067】
図7に、出力電力PWOUTとスイッチング周波数fSWとの関係を示す。但し、図7では、スイッチング周波数fSWへのジッタの付与が無いと仮定している。動作モードがCCMである限りは、出力電力PWOUTが変動しても過渡応答を経て“VREFS=VINTREF”の状態に戻る。このため、動作モードがCCMであるとき、過渡応答時を無視し且つスイッチング周波数fSWへのジッタの付与が無いと仮定すれば、出力電力PWOUTに依存せずスイッチング周波数fSWは基準スイッチング周波数fと一致する。出力電力PWOUTが或る境界電力PWBより高いとき、動作モードはCCMである。出力電力PWOUTが境界電力PWBを下回ると、動作モードはDCMとなる。
【0068】
上述の第3平衡状態を起点に更に出力電力PWOUTが一定量以上低下すると、動作モードがCCMからDCMに移行する。これについて説明を加える。第3平衡状態を起点に更に出力電力PWOUTが一定量以上低下すると、出力電圧VOUTが目標電圧VTGより高くなる。出力電圧VOUTの上昇は制御電圧VREFSの上昇を通じてオフ時間TOFFの増大をもたらす。ここにおけるオフ時間TOFFの増大は、スイッチングトランジスタM1のオフ期間中における“I=0”をもたらし、CCMからDCMに移行する。DCMにおいてもオン時間TONに対応する電力が一次側から二次側に伝達されるため、DCMでは“VOUT>VTG”の状態が継続し得る。
【0069】
DCMではオン時間TONが不変のままオフ時間TOFFがCCMよりも増大するため、DCMでのスイッチング周波数fSWは基準スイッチング周波数fより低くなる。DCMにおいて出力電力PWOUTが減少するほど制御電圧VREFSの上昇を通じてスイッチング周波数fSWが低下する。尚、動作モードがDCMとされる状態から出力電力PWOUTが必要量以上増大すると、出力電圧VOUTの低下を通じて制御電圧VREFSが低下し、スイッチング周波数fSWの上昇及び一次側から二次側への電力伝達量の増大を伴ってCCMに戻る。
【0070】
図8は出力電力PWOUTの変動に対する応答を示すタイミングチャートである。図8において、期間631~633における動作モードはCCMである。期間631は上述の第1平衡状態に対応する。期間631及び632の境界において出力電流IOUTの増大により出力電力PWOUTが増大する。期間632及び633は出力電力PWOUTの増大に伴う過渡応答期間である。期間632にて一時的にスイッチング周波数fSWが高まることで一次側電流Iの平均電流が高まってゆく。その後、期間633にてスイッチング周波数fSWが徐々に基準スイッチング周波数fへと戻っていく。更にその後、出力電流IOUTの低下により出力電力PWOUTが低下し、動作モードがCCMからDCMに移行する様子が図8に示される。
【0071】
[ジッタの付与について]
ここまでの説明は、スイッチング周波数fSWに対してジッタが付与されていないことを前提としている。以下では、ジッタの付与も考慮した説明を行う。尚、本明細書において、ジッタの付与とは、特に記述なき限り、スイッチング周波数fSWに対するジッタの付与を意味する。
【0072】
図9に、図3に示される電流源121の内部回路と、その周辺回路と、を示す。電流源121は、オペアンプ121a、トランジスタ121b、121d及び121e、並びに、抵抗121cを備える。トランジスタ121bはNチャネル型のMOSFETであり、トランジスタ121d及び121eはPチャネル型のMOSFETである。
【0073】
オペアンプ121aの非反転入力端子に電圧Vaが印加される。オペアンプ121aの出力端子はトランジスタ121bのゲートに接続される。オペアンプ121aの反転入力端子はトランジスタ121bのソースに接続されると共に抵抗121cを介してグランドGND1に接続される。トランジスタ121bのドレインは、トランジスタ121dのゲート及びドレイン並びにトランジスタ121eのゲートに接続される。トランジスタ121d及び121eの各ソースに対し内部電源電圧VREGが印加される。電源制御装置1に設けられた図示されない内部電源回路は入力電圧VINに基づき内部電源電圧VREGを生成する。内部電源電圧VREGは所定の正の直流電圧である。トランジスタ121eのドレインはノード124に接続される。
【0074】
オペアンプ121aは、抵抗121cの両端間電圧が電圧Vaと一致するようにトランジスタ121bのゲート電位を制御する。抵抗121cの両端間電圧は、トランジスタ121bのドレイン電流が抵抗121cに流れることで発生する抵抗121cでの電圧降下である。トランジスタ121bのドレイン電流はトランジスタ121dのドレイン電流と一致する。トランジスタ121d及び121eによりカレントミラー回路が形成されるため、トランジスタ121dのドレイン電流に比例するドレイン電流がトランジスタ121eに発生する。トランジスタ121eのドレイン電流がノード124に向けて供給される電流Iaである。
【0075】
ジッタ付与回路200は電圧Vaを生成してオペアンプ121aの非反転入力端子に供給する。ジッタ付与回路200が動作するとき、ジッタ付与回路200により動作Vaが変動される。後述されるように、ジッタ制御回路300の制御の下、ジッタ付与回路200の動作は停止することがある。以下の説明において、ジッタ付与状態とはジッタ付与回路200が動作することで電圧Vaが変動する状態を指し、ジッタ付与状態では電圧Vaの変動によりスイッチング周波数fSWにジッタ(揺らぎ)が付与される。一方、ジッタ付与回路200の動作が停止している状態をジッタ停止状態と称する。ジッタ停止状態では電圧Vaが固定される。
【0076】
電圧Vaが上昇すれば電流Iaが増大する。電流Iaの増大は、スイッチングトランジスタM1のオフ期間におけるスロープ電圧VSLPの傾きを増大させる。CCMにおいて、スロープ電圧VSLPの傾きの増大はオフ時間TOFFの減少を通じてスイッチング周波数fSWを上昇させる(DCMでも同様)。逆に、電圧Vaが低下すれば電流Iaが減少する。電流Iaの減少は、スイッチングトランジスタM1のオフ期間におけるスロープ電圧VSLPの傾きを減少させる。CCMにおいて、スロープ電圧VSLPの傾きの減少はオフ時間TOFFの増大を通じてスイッチング周波数fSWを低下させる(DCMでも同様)。
【0077】
図10に、CCMにおけるジッタ付与状態において、電圧Va、電流Ia及びスイッチング周波数fSWが変動する様子を示す。ジッタ付与状態において、ジッタ付与回路200は9つの電圧V[1]~V[9]の何れかを電圧Vaに設定する。この結果、電流源121にて電流I[1]~I[9]の何れかが電流Iaに設定される。すると、CCMにおけるジッタ付与状態において、スイッチング周波数fSWは9つの周波数f[1]~f[9]の何れかに設定される。任意の整数iに関して、電圧V[i]が電圧Vaに設定されるとき、電流I[i]が電流Iaに設定され、周波数f[i]がスイッチング周波数fSWに設定される。尚、周波数f[i]がスイッチング周波数fSWに設定されるとは、スイッチング周波数fSWの目標が周波数f[i]に設定されることを意味し、過渡応答時などにおいて、ずれが発生することもある。
【0078】
任意の整数iに関して、“V[i]>V[i+1]”、“I[i]>I[i+1]”且つ“f[i]>f[i+1]”が成立する。任意の整数iに関して周波数f[i]は周波数f[i+1]よりもステップ量Δfだけ高い。例えば、周波数f[1]、f[5]、f[9]は、夫々、381kHz、363kHz、345kHzである。この場合、任意の整数iに関して周波数f[i]は周波数f[i+1]よりも4.5kHzだけ高い(即ち、ステップ量Δfは4.5kHzである)。周波数f[5]は基準スイッチング周波数fと一致する。このため、CCMで、ジッタ付与状態において、スイッチング周波数fSWは周波数(f+4・Δf)から周波数(f-4・Δf)までの範囲で変動する。
【0079】
ジッタ付与状態において、ジッタ付与回路200は第1~第9単位期間を設ける。第i単位期間は電圧V[i]が電圧Vaに設定される期間である。ジッタ付与状態において、ジッタ付与回路200はサイクル動作を実行する。サイクル動作では、第5単位期間から出発して、第4、第3、第2、第1単位期間をこの順番で設け、その後、第2、第3、第4、第5、第6、第7、第8、第9単位期間をこの順番で設け、更にその後、第8、第7、第6単位期間をこの順番で設けてから第5単位期間に戻る。つまり、サイクル動作において、ジッタ付与回路200は、電圧V[5]が電圧Vaに設定される状態から、電圧Vaを電圧V[5]から電圧V[1]に向けて段階的に上昇させてゆき、その後、電圧Vaを電圧V[1]から電圧V[9]に向けて段階的に低下させ、更にその後、電圧Vaを電圧V[9]から電圧V[5]に向けて段階的に上昇させる。各単位期間は所定の単位時間TSTEP分の長さを有する。単位時間TSTEPは例えば500μ秒であり、この場合、1回分のサイクル動作は8ミリ秒の長さを持つ。
【0080】
ジッタ付与状態において、ジッタ付与回路200は上述のサイクル動作を繰り返す。このため、CCMにおいてジッタ付与回路200が動作しているとき、スイッチング周波数fSWは周波数f[1]から周波数f[9]までの周波数範囲で繰り返し上下動する。これにより、スイッチング周波数fSWに関してスペクトラム拡散の作用が得られ、DC/DCコンバータ1(電源制御装置10)の放射ノイズにおいてピークレベルの低減が図られる。
【0081】
ジッタ付与回路200は例えば内部電源電圧VREGを複数の分圧抵抗で分圧し、分圧により得られた電圧を電圧Vaとして出力する回路であって良い。この際、ジッタ付与回路200は、図10に示す電圧Vaのステップ変化が得られるよう、分圧比(即ち内部電源電圧VREGと電圧Vaとの比)を単位時間TSTEPが経過するごとに変更する。ラダー抵抗器を有するDAコンバータを用いてジッタ付与回路200が形成されて良い。
【0082】
ジッタ停止状態では、所定の固定電圧が電圧Vaとしてオペアンプ121の非反転入力端子に供給される。ここにおける固定電圧は電圧V[5]である。従ってCCMにてジッタ付与回路200の動作が停止している場合、過渡応答を無視すれば、“fSW=f[5]”で維持される。ジッタ停止状態において、オペアンプ121の非反転入力端子に対し、ジッタ付与回路200から電圧V[5]が供給されても良いし、図示されない他の回路から電圧V[5]が供給されても良い。尚、ジッタ付与状態にてスイッチング周波数fSWが9段階で可変設定される例を挙げたが、ジッタ付与状態におけるスイッチング周波数fSWの変更の段階数は9以外でも良い。
【0083】
図11に、仮想構成における出力電力PWOUTとスイッチング周波数fSWとの関係を示す。仮想構成では、動作モードがCCM及びDCMの何れであるかに関係なく、常にスイッチング周波数fSWに対してジッタが付与される。図11において斜線領域は、仮想構成におけるスイッチング周波数fSWの変動範囲を表す。
【0084】
ジッタの付与によりノイズのピークレベルを低減させる効果が得られるが、スイッチング周波数fSWを意図的に変動させる分、出力電圧VOUTに幾分のリプルが発生する。CCMであれば、意図した通りにスイッチング周波数fSWを変動させることができ、生じる出力電圧VOUTのリプルも許容できる程度に小さい。
【0085】
一方、DCMは、出力電力PWOUTに応じてスイッチング周波数fSWが比較的大きく変動する動作モードであるため、DCMにおいてジッタを意図的に付与すると、スイッチング周波数fSWが不安定となりやすい。またDCMでは、スイッチングトランジスタM1のオフ期間にて“I=0”となった後、スイッチ電圧VSWが振動する。この振動の影響を受けて制御電圧VREFSが適正電圧からずれることもあり、そのようなずれもスイッチング周波数fSWの不安定化に繋がる。特に、動作モードがDCMからCCMに遷移するタイミング周辺において、ジッタが継続付与されているとスイッチン周波数fSWが過度に不安定となり、出力電圧VOUTに大きなリプルを招きうる。CCMからDCMに遷移するタイミング周辺についても同様である。
【0086】
これを考慮し、電源制御装置10には、ジッタ付与回路200の動作を制御するためのジッタ制御回路300が設けられる。ジッタ制御回路300は、ジッタ付与回路200の制御(動作制御)を通じてスイッチング周波巣fSWに対するジッタの付与有無を制御する。即ち、ジッタ制御回路300は、所定の指標に従って、ジッタ付与回路200の状態をジッタ付与状態又はジッタ停止状態に切り替え設定する。特にジッタ制御回路300は、DCMにおいてジッタ付与回路200の状態をジッタ停止状態に設定することでスイッチング周波数fSWに対するジッタの付与を停止する。これにより、スイッチン周波数fSWが過度に不安定となることが抑制され、結果、出力電圧VOUTのリプル低減が図られる。尚、ここでは、ジッタ付与回路200とは別にジッタ制御回路300が設けられると考えるが、ジッタ制御回路300の内部にジッタ付与回路200が設けられると解しても良い。
【0087】
以下、複数の実施例の中で、幾つかの具体的な動作例、応用技術、変形技術等を説明する。本実施形態にて上述した事項は、特に記述無き限り且つ矛盾無き限り、以下の各実施例に適用される。各実施例において、上述の事項と矛盾する事項がある場合には、各実施例での記載が優先されて良い。また矛盾無き限り、以下に示す複数の実施例の内、任意の実施例に記載した事項を、他の任意の実施例に適用することもできる(即ち複数の実施例の内の任意の2以上の実施例を組み合わせることも可能である)。
【0088】
<<第1実施例>>
第1実施例を説明する。図7等から理解されるよう、動作モードがCCMであるときのスイッチング周波数fSWは動作モードがDCMであるときのスイッチング周波数fSWよりも高い。
【0089】
これを考慮し、第1実施例に係るジッタ制御回路300はスイッチング周波数fSWを検出する周波数検出回路を有し、スイッチング周波数fSWの検出結果に基づきスイッチング周波数fSWに対するジッタの付与有無を制御する。
【0090】
より具体的には、第1実施例に係るジッタ制御回路300は、周波数検出回路にて検出されたスイッチング周波数fSWに基づき、動作モードがCCM及びDCMの何れであるかを判定する。そして、動作モードがCCMであると判定したとき、回路300は回路200の状態をジッタ付与状態に設定することでスイッチング周波数fSWにジッタを付与する。動作モードがDCMであると判定したとき、回路300は回路200の状態をジッタ停止状態に設定することでスイッチング周波数fSWに対するジッタの付与を停止する。
【0091】
図12に周波数検出回路310を有するジッタ制御回路300_1を示す。ジッタ制御回路300_1は図3のジッタ制御回路300の例である。周波数検出回路310は、コンデンサ311、トランジスタ312、定電流源313及びコンパレータ314を有する。トランジスタ312はNチャネル型のMOSFETである。
【0092】
コンデンサ311の一端及びトランジスタ312のドレインはノード315に接続される。コンデンサ311の他端及びトランジスタ312のソースはグランドGND1に接続される。トランジスタ312のゲートに制御信号SCNTが入力される。定電流源313は、内部電源電圧VREGが加わる端子からノード315に向けて定電流を供給する。ノード315における電圧を電圧V315と称する。電圧V315はコンパレータ314の非反転入力端子に供給される。コンパレータ314の反転入力端子には所定の閾電圧VTH1が供給される。閾電圧VTH1は所定の正の直流電圧値を有する。コンパレータ314は、電圧V315と閾電圧VTH1を比較し、比較結果に基づく信号SCMP1を出力する。“V315>VTH1”の成立時において信号SCMP1はハイレベルを有し、“V315<VTH1”の成立時において信号SCMP1はローレベルを有する。“V315=VTH1”の成立時において信号SCMP1はハイレベル又はローレベルを有する。
【0093】
ジッタ制御回路300_1にはジッタ用のイネーブル回路318が設けられる。イネーブル回路318は信号SCMP1に基づき“1”又は“0”の値を持つイネーブルSEN1を生成し、ジッタ付与回路200に与える。“1”のイネーブルSEN1はジッタの付与を許可又は指示する信号であり、“0”のイネーブルSEN1はジッタの付与を禁止する信号である。故に、ジッタ付与回路200はイネーブルSEN1が“1”の値を持つ期間においてジッタ付与状態に設定され、イネーブルSEN1が“0”の値を持つ期間においてジッタ停止状態に設定される。
【0094】
図13にDCMにおける幾つかの信号波形を示す。図14にCCMにおける幾つかの信号波形を示す。制御信号SCNTのハイレベル期間においてはトランジスタ312がオンとなるため、電圧V315は実質的に0Vであり、故に信号SCMP1はローレベルを持つ。制御信号SCNTのローレベル期間においてはトランジスタ312がオフとなるため、定電流源313からの定電流により電圧V315が単調に上昇する。DCMにおいてはオフ時間TOFFが比較的長いため、各スイッチング周期において信号SCMP1のハイレベル期間が発生する。これに対し、CCMにおいてはオフ時間TOFFが比較的短いため、各スイッチング周期において信号SCMP1はローレベルに維持される。
【0095】
イネーブル回路318は“SEN1=0”の状態において、第1切替条件が成立すれば動作モードがCCMであると判定して(動作モードがDCMからCCMに切り替わったと判定して)イネーブルSEN1の値を“0”から“1”の値に切り替える。所定の判定時間TDET1A以上継続して信号SCMP1がローレベルに維持されるとき、第1切替条件が成立する。イネーブル回路318は“SEN1=0”の状態において、第1切替条件が不成立であれば動作モードがDCMであると判定してイネーブルSEN1の値を“0”で維持する。
【0096】
イネーブル回路318は“SEN1=1”の状態において、信号SCMP1のアップエッジの発生有無を監視することで第2切替条件の成否を判断し、第2切替条件が成立すれば動作モードがDCMであると判定して(動作モードがCCMからDCMに切り替わったと判定して)イネーブルSEN1の値を“1”から“0”の値に切り替える。例えば、信号SCMP1にアップエッジが1回でも発生すれば第2切替条件が成立する。或いは例えば、所定の判定時間TDET1B内において信号SCMP1にアップエッジがNTH1回以上発生したとき、第2切替条件が成立するようにしても良い。イネーブル回路318は“SEN1=1”の状態において、第2切替条件が不成立であれば動作モードがCCMであると判定してイネーブルSEN1の値を“1”で維持する。
【0097】
判定時間TDET1A及びTDET1Bは基準スイッチング周波数fの逆数よりも十分に長く、例えば、基準スイッチング周波数fの数倍~数100倍である。判定時間TDET1A及びTDET1Bの一致、不一致は問わない。NTH1は2以上の任意の整数を表す。尚、イネーブル信号SEN1の初期値は“0”である。
【0098】
周波数検出回路310は、閾電圧VTH1に基づく所定周波数と比べてスイッチング周波数fSWが高いか低いかを検出する回路である、即ちスイッチング周波数fSWを2段階に分類して検出する回路である。
【0099】
周波数検出回路310において、スイッチング周波数fSWを3段階以上に分類して検出し、その検出結果に基づきイネーブル信号SEN1の値を設定しても良い。例えば、以下の変形方法が採用されて良い。当該変形方法に係る周波数検出回路310は、制御信号SCNTに基づきスイッチング周波数fSWと所定の上側周波数及び所定の下側周波数の夫々との高低関係を検出する。上側周波数は下側周波数よりも高い。例えば、上側周波数は基準スイッチング周波数fより高く、下側周波数は基準スイッチング周波数fより低い。そして、“SEN1=0”の状態において、スイッチング周波数fSWが上側周波数よりも高いことが検出されたとき、イネーブル回路318は動作モードがCCMであると判定して(動作モードがDCMからCCMに切り替わったと判定して)イネーブルSEN1の値を“0”から“1”の値に切り替える。“SEN1=1”の状態において、スイッチング周波数fSWが下側周波数よりも低いことが検出されたとき、イネーブル回路318は動作モードがDCMであると判定して(動作モードがCCMからDCMに切り替わったと判定して)イネーブルSEN1の値を“1”から“0”の値に切り替える。
【0100】
<<第2実施例>>
第2実施例を説明する。DCMにおいては、スイッチングトランジスタM1のオフ期間にて二次側電流Iがゼロにまで低下した後、整流ダイオードDのアノードの電圧が自由共振により振動する。このような振動はCCMでは発生しない。このため、第2実施例では、当該振動の有無を検出することで動作モードがCCM及びDCMの何れであるかを判定する。
【0101】
図15に第2実施例に係るDC/DCコンバータ1の一部回路図を示す。第2実施例では、図15のジッタ制御回路300_2がジッタ制御回路300として用いられる。第2実施例では、電源制御装置10の外部端子として端子ZTが設けられ、且つ、DC/DCコンバータ1に分圧抵抗R2A及びR2Bが設けられる。分圧抵抗R2Aの第1端は整流ダイオードDのアノード(従って二次側巻線W2の第1端)に接続される。分圧抵抗R2Aの第2端は端子ZTに接続されると共に分圧抵抗R2Bの第1端に接続される。分圧抵抗R2Bの第2端はグランドGND1に接続される。端子ZTにおける電圧を、端子電圧VZT(対比用電圧)と称する。
【0102】
ジッタ制御回路300_2は、1以上のコンパレータにて構成される電圧比較回路321と、イネーブル回路322と、を備える。電圧比較回路321は端子ZTに接続されて端子電圧VZTを受ける。グランドGND1の電位を基準に、分圧抵抗R2A及びR2Bにより整流ダイオードDのアノードの電圧が分圧され、当該分圧により端子電圧VZTが得られる。電圧比較回路321は、端子電圧VZTを所定の閾電圧と比較し、それらの比較結果に応じたボトム検出信号SBTMをイネーブル回路322に出力する。
【0103】
ここでは、電圧比較回路321において2つの閾電圧VZTH及びVZTLが用いられることを想定する。閾電圧VZTH及びVZTLはグランドGND1の電位よりも高い正の直流電圧であり、“VZTH>VZTL”が成立する。電圧比較回路321は、原則としてボトム検出信号SBTMをローレベルに維持し、以下のボトム検出条件の成立時において所定の微小時間だけボトム検出信号SBTMをハイレベルとする。ボトム検出条件の成立のたびに微小時間だけボトム検出信号SBTMがハイレベルとされる。
【0104】
図16にジッタ制御回路300_2の動作に関わるタイミングチャートを示す。図16では、DCMにてDC/DCコンバータ1が動作しているときのスイッチングトランジスタM1の状態と幾つかの信号波形が示される。
【0105】
電圧比較回路321は端子電圧VZTと閾電圧VZTH及びVZTLの夫々との高低関係を検出する機能を持つ。電圧比較回路321は、“VZT>VZTH”の成立後に“VZT<VZTL”が成立したときにボトム検出条件が成立したと判断する。図16の例では、1スイッチング周期におけるスイッチングトランジスタM1のオフ期間中にボトム検出条件が3回成立し、ボトム検出条件が成立するたびにボトム検出信号SBTMが微小時間だけハイレベルとされる。
【0106】
イネーブル回路322は、ボトム検出信号SBTMに基づき“1”又は“0”の値を持つイネーブルSEN2を生成し、ジッタ付与回路200に与える。“1”のイネーブルSEN2はジッタの付与を許可又は指示する信号であり、“0”のイネーブルSEN2はジッタの付与を禁止する信号である。故に、ジッタ付与回路200はイネーブルSEN2が“1”の値を持つ期間においてジッタ付与状態に設定され、イネーブルSEN2が“0”の値を持つ期間においてジッタ停止状態に設定される。尚、イネーブル信号SEN2の初期値は“0”である(但し“1”でも良い)。
【0107】
イネーブル回路322は、1スイッチング周期におけるスイッチングトランジスタM1のオフ期間中に(即ち、制御信号SCNTにダウンエッジが生じた後、制御信号SCNTに次のアップエッジが生じるまでに)、ボトム検出信号SBTMに発生したアップエッジの回数(又はダウンエッジの回数)をカウントする。イネーブル回路322は制御信号SCNTに基づき(又は駆動信号SDRVに基づき)、現時点がスイッチングトランジスタM1のオフ期間に属するかを判定できる。
【0108】
そして、イネーブル回路322は、カウントされた回数が2以上であれば、動作モードがDCMであると判定してイネーブル信号SEN2に“0”の値を設定する。“SEN2=0”とされることでスイッチング周波数fSWに対するジッタの付与が停止される。イネーブル回路322は、カウントされた回数が1以下であれば、動作モードがCCMであると判定してイネーブル信号SEN2に“1”の値を設定する。“SEN2=1”とされることでスイッチング周波数fSWに対してジッタが付与される。動作モードがCCMであるときには上述の自由振動は発生しないので、カウントされる回数が2以上になることは無いからである。
【0109】
ここでは、ノイズ等に起因する誤検出を抑制すべく、2つの閾電圧VZTH及びVZTLを用いる方法を説明した。しかしながら、端子電圧VZTと閾電圧VZTLのみとの比較に基づきボトム検出信号SBTMを生成する変形方法が採用されても良い。当該変形方法に係る電圧比較回路321は、“VZT>VZTL”の状態から“VZT<VZTL”の状態に遷移したときにボトム検出条件が成立したと判断する。
【0110】
<<第3実施例>>
第3実施例を説明する。スイッチングトランジスタM1のターンオン後、DCMにおいてはスイッチ電流ISWがゼロから上昇開始するのに対し、CCMにおいてはスイッチ電流ISWがゼロより大きい状態から上昇開始する。第3実施例では、この相違を利用して動作モードがCCM及びDCMの何れであるかを判定する。
【0111】
図17に第3実施例に係るDC/DCコンバータ1の一部回路図を示す。第3実施例では、図17のジッタ制御回路300_3がジッタ制御回路300として用いられる。ジッタ制御回路300_3は、電流検出回路331、コンパレータ332及びイネーブル回路333を備える。
【0112】
電流検出回路331はスイッチ電流ISWを検出し、スイッチ電流ISWの検出値を表す電圧Vを出力する。コンパレータ332は、電圧Vを所定の閾電圧VTH3と比較し、比較結果に応じた信号SCMP3を生成及び出力する。閾電圧VTH3は正の所定電圧値を有する。コンパレータ332は、“V>VTH3”の成立時においてハイレベルの信号SCMP3を出力し、“V<VTH3”の成立時においてローレベルの信号SCMP3を出力し、“V=VTH3”の成立時においてハイレベル又はローレベルの信号SCMP3を出力する。
【0113】
イネーブル回路333は、信号SCMP3に基づき“1”又は“0”の値を持つイネーブルSEN3を生成し、ジッタ付与回路200に与える。“1”のイネーブルSEN3はジッタの付与を許可又は指示する信号であり、“0”のイネーブルSEN3はジッタの付与を禁止する信号である。故に、ジッタ付与回路200はイネーブルSEN3が“1”の値を持つ期間においてジッタ付与状態に設定され、イネーブルSEN3が“0”の値を持つ期間においてジッタ停止状態に設定される。尚、イネーブル信号SEN3の初期値は“0”である(但し“1”でも良い)。
【0114】
図18及び図19にジッタ制御回路300_3の動作に関わるタイミングチャートを示す。図18では、DCMにてDC/DCコンバータ1が動作しているときの幾つかの信号波形が示される。図19では、CCMにてDC/DCコンバータ1が動作しているときの幾つかの信号波形が示される。
【0115】
電圧Vの値は正の比例係数にてスイッチ電流ISWの値(検出値)に比例する。“V=VTH3”であるとき、スイッチ電流ISWの値は所定の閾電流ITH3の値と一致すものとする。そうすると、電流検出回路331及びコンパレータ332によりスイッチ電流ISWと閾電流ITH3との大小関係を判定する回路が形成される、と言える。“ISW>ITH3”の成立時において信号SCMP3はハイレベルを有し、“ISW<ITH3”の成立時において信号SCMP3はローレベルを有し、“ISW=ITH3”の成立時において信号SCMP3はハイレベル又はローレベルを有する。
【0116】
イネーブル回路333に対して信号SCMP3及び制御信号SCNTが入力される。イネーブル回路333は、各スイッチング周期において制御信号SCNTにアップエッジが生じてから信号SCMP3にアップエッジが生じるまでの時間TD3を計測し、計測時間TD3を所定時間TTH3と比較する。時間TD3は、スイッチングトランジスタM1がターンオンしてからスイッチ電流ISWが閾電流ITH3に達するまでの時間に相当する。
【0117】
イネーブル回路333は、計測時間TD3が所定時間TTH3以上であるときには動作モードがDCMであると判定してイネーブル信号SEN3に“0”の値を設定する。“SEN3=0”とされることでスイッチング周波数fSWに対するジッタの付与が停止される。イネーブル回路333は、計測時間TD3が所定時間TTH3未満であるときには動作モードがCCMであると判定してイネーブル信号SEN3に“1”の値を設定する。“SEN3=1”とされることでスイッチング周波数fSWに対してジッタが付与される。
【0118】
DCMに対応する図18では“TD3>TTH3”である状況が示される。CCMに対応する図19では、計測時間TD3が微小であるが故に計測時間TD3の図示が省略されている。
【0119】
<<第4実施例>>
第4実施例を説明する。スイッチ電流ISWのピーク値は、DCMにおいて相対的に低く、CCMにおいて相対的に高い。第4実施例では、これを考慮してジッタの付与有無を決定する。
【0120】
図20に第4実施例に係るDC/DCコンバータ1の一部回路図を示す。第4実施例では、図20のジッタ制御回路300_4がジッタ制御回路300として用いられる。ジッタ制御回路300_4は、電流検出回路341、コンパレータ342及びイネーブル回路343を備える。
【0121】
電流検出回路341はスイッチ電流ISWを検出し、スイッチ電流ISWの検出値を表す電圧Vを出力する。電流検出回路341は図17の電流検出回路331と同じものである。コンパレータ342は、電圧Vを所定の閾電圧VTH4と比較し、比較結果に応じた信号SCMP4を生成及び出力する。閾電圧VTH4は正の所定電圧値を有する。コンパレータ342は、“V>VTH4”の成立時においてハイレベルの信号SCMP4を出力し、“V<VTH4”の成立時においてローレベルの信号SCMP4を出力し、“V=VTH4”の成立時においてハイレベル又はローレベルの信号SCMP4を出力する。
【0122】
イネーブル回路343は、信号SCMP4に基づき“1”又は“0”の値を持つイネーブルSEN4を生成し、ジッタ付与回路200に与える。“1”のイネーブルSEN4はジッタの付与を許可又は指示する信号であり、“0”のイネーブルSEN4はジッタの付与を禁止する信号である。故に、ジッタ付与回路200はイネーブルSEN4が“1”の値を持つ期間においてジッタ付与状態に設定され、イネーブルSEN4が“0”の値を持つ期間においてジッタ停止状態に設定される。尚、イネーブル信号SEN4の初期値は“0”である(但し“1”でも良い)。
【0123】
図21及び図22にジッタ制御回路300_4の動作に関わるタイミングチャートを示す。図21では、DCMにてDC/DCコンバータ1が動作しているときの幾つかの信号波形が示される。図22では、CCMにてDC/DCコンバータ1が動作しているときの幾つかの信号波形が示される。
【0124】
電圧Vの値は正の比例係数にてスイッチ電流ISWの値(検出値)に比例する。“V=VTH4”であるとき、スイッチ電流ISWの値は所定の閾電流ITH4の値と一致すものとする。そうすると、電流検出回路341及びコンパレータ342によりスイッチ電流ISWと閾電流ITH4との大小関係を判定する回路が形成される、と言える。“ISW>ITH4”の成立時において信号SCMP4はハイレベルを有し、“ISW<ITH4”の成立時において信号SCMP4はローレベルを有し、“ISW=ITH4”の成立時において信号SCMP4はハイレベル又はローレベルを有する。
【0125】
イネーブル回路343に対して信号SCMP4及び制御信号SCNTが入力される。イネーブル回路343は、信号SCMP4及びSCNTに基づき、スイッチングトランジスタM1のオン期間においてスイッチ電流ISWが閾電流ITH4に達するかを判定する。
【0126】
イネーブル回路343は、制御信号SCNTのハイレベル期間において、信号SCMP4がハイレベルとなる期間が存在するとき、スイッチングトランジスタM1のオン期間においてスイッチ電流ISWが閾電流ITH4に達したと判定し、イネーブル信号SEN4に“1”の値を設定する。“SEN4=1”とされることでスイッチング周波数fSWに対してジッタが付与される。イネーブル回路343は、制御信号SCNTのハイレベル期間において、信号SCMP4がハイレベルとなる期間が存在しないとき、スイッチングトランジスタM1のオン期間においてスイッチ電流ISWが閾電流ITH4に達しないと判定し、イネーブル信号SEN4に“0”の値を設定する。“SEN4=0”とされることでスイッチング周波数fSWに対するジッタの付与が停止される。
【0127】
動作モードがDCMであるとき、図21に示す如く、スイッチ電流ISWのピークは閾電流ITH4よりも低い。CCMに対応する図22の例では、スイッチ電流ISWのピークが閾電流ITH4よりも高い。但し、動作モードがCCMであっても、図23に示す如く、スイッチ電流ISWのピークが閾電流ITH4より低くなる場合もある。尚、スイッチ電流ISWのピークが閾電流ITH4よりも低い、高いとは、詳細には、スイッチ電流ISWのピーク値(最大値)が閾電流ITH4の値よりも低い、高いことを意味する。
【0128】
CCMにおいて、スイッチ電流ISWのピークが閾電流ITH4に達するか否かは出力電力PWOUT(負荷LDの消費電力)に依存する。動作モードがCCMであるとき、スイッチングトランジスタM1のオン期間におけるスイッチ電流ISWの平均電流及びピークは、出力電力PWOUTの増大につれて増大し、出力電力PWOUTの減少につれて減少する。ジッタ制御回路300_4は、動作モードがCCMであるときにおいてスイッチ電流ISWが閾電流ITH4に達するならばイネーブル信号SEN4に“1”の値を設定し、動作モードがCCMであってもスイッチ電流ISWが閾電流ITH4に達しないならばイネーブル信号SEN4に“0”の値を設定することになる。
【0129】
ところで、上述したように、過電流保護回路160はスイッチ電流ISWと所定の保護電流IOCPとの大小関係を検出し、その検出結果を示す過電流保護信号SOCPを生成及び出力する。“ISW>IOCP”の成立によってハイレベルの過電流保護信号SOCPが生成及び出力される。過電流保護信号SOCPは制御ロジック140に入力される。制御ロジック140は制御信号SCNTにアップエッジを生じさせた後、オン時間TONが経過していなかったとしても、ハイレベルの過電流保護信号SOCPを受けると、即時に、制御信号SCNTをローレベルに切り替えることでスイッチングトランジスタM1をターンオフさせる。このため、スイッチング制御回路100によりスイッチ電流ISWは保護電流IOCP以下に制限される(但し、制御の遅延により保護電流IOCPを多少超えることもあり得る)。ジッタ制御回路300_4は、保護電流IOCPを基準に保護電流IOCPより小さな電流を閾電流ITH4に設定する。例えば、ジッタ制御回路300_4は閾電流ITH4を保護電流IOCPのk倍に設定して良い。係数kは“0<k<1”を満たす所定値(例えば0.3又は0.5)を持つ。電流検出回路341は過電流保護回路160とジッタ制御回路300_4とで共用される回路であって良く、この場合、過電流保護回路160は保護電流IOCPと比較されるスイッチ電流ISWを、電流検出回路341を用いて検出する。
【0130】
閾電流ITH4を設定するための設定端子(不図示)を電源制御装置10の外部端子に含めておき、設定端子への入力電圧に応じて又は設定端子及びグランドGND1間に接続される設定用抵抗の値に応じて、ジッタ制御回路300_4は閾電流ITH4を可変設定しても良い。或いは、電源制御装置10の外部回路(不図示)から電源制御装置10に供給される設定情報に基づき、ジッタ制御回路300_4にて閾電流ITH4を可変設定しても良い。
【0131】
<<第5実施例>>
第5実施例を説明する。ジッタの付与有無を切り替えたとき、ジッタの付与の内容によっては、出力電圧VOUTのリプルが急激に悪化するおそれがある。これを考慮し、第5実施例では、付与するジッタの量を出力電力VOUTに応じて調整する。第5実施例に示す方法は第1~第4実施例の何れに対しても適用できる。図24に第5実施例に係るジッタ付与回路200及びジッタ制御回路300を示す。第5実施例に示されるイネーブル信号SENは第1~第4実施例に示したイネーブル信号SEN1~SEN4の何れかを指す。第5実施例が第i実施例と組み合わされるとき、第5実施例に係るイネーブル信号SENはイネーブル信号SENiを指す(ここにおけるiは1、2、3又は4)。
【0132】
第5実施例に係るジッタ付与回路200は、ジッタ付与状態においてスイッチング周波数fSWに付与するジッタの量(以下、単にジッタ量と称する)を変更可能に構成される。ジッタ量はジッタ付与状態におけるスイッチング周波数fSWの変動範囲の大きさである。図10を参照して説明したように、ジッタ付与状態におけるジッタの付与によりスイッチング周波数fSWは周波数(f+4・Δf)から周波数(f-4・Δf)までの範囲内で変動するので、ジッタ量は“8・Δf”で表される。第5実施例に係るジッタ付与回路200はステップ量Δfを変更可能に構成され、ステップ量Δfの変更を通じてジッタ量を変更する。
【0133】
第5実施例において、ジッタ制御回路300は、図24に示す如くイネーブル信号SENに加えてジッタ量指定信号SJAをジッタ付与回路200に供給することでジッタ量を可変設定する。ジッタ量指定信号SJAによりジッタ量が指定される。ジッタ付与回路200は、“SEN=1”であるとき、ジッタ量指定信号SJAでの指定内容に従うジッタ量のジッタをスイッチング周波数fSWに付与する。
【0134】
第5実施例におけるジッタ制御回路300には電流検出回路351及びジッタ量指定回路352が設けられる。電流検出回路351は第3実施例における電流検出回路331又は第4実施例における電流検出回路341と同じものであり(図17又は図20参照)、スイッチ電流ISWを検出してスイッチ電流ISWの検出値を表す電圧Vを出力する。
【0135】
ジッタ量指定回路352は電圧Vに基づきスイッチ電流ISWのピーク値(最大値)を特定し、スイッチ電流ISWのピーク値に応じてジッタ量指定信号SJAを生成する。この際、スイッチ電流ISWのピーク値の増大につれてジッタ量(ここではステップ量Δf)が増加するよう、ジッタ量指定信号SJAを生成する。
【0136】
具体的には例えば、ジッタ制御回路300は、スイッチングトランジスタM1のオン期間においてスイッチ電流ISWを閾電流ITH5H及びITH5Lの夫々と比較する。閾電流ITH5H及びITH5Lは“IOCP>ITH5H>ITH5L>0”を満たす所定電流値を持つ(図25及び図26参照)。実際には、電圧Vを閾電流ITH5Hに対応する第1閾電圧と比較するコンパレータ、及び、電圧Vを閾電流ITH5Bに対応する第2閾電圧と比較するコンパレータをジッタ制御回路300に設けておけば良い。そして、ジッタ制御回路300は、スイッチングトランジスタM1のオン期間においてスイッチ電流ISWが閾電流ITH5Lに達することを条件に“1”の値をイネーブル信号SENに設定する。閾電流ITH5Lは第4実施例における閾電流ITH4に相当する。
【0137】
“1”の値がイネーブル信号SENに設定されるとき、ジッタ量指定回路352はスイッチングトランジスタM1のオン期間においてスイッチ電流ISWが閾電流ITH5Hに達するかを判定する。そして、ジッタ量指定回路352は、図25に示す如くスイッチ電流ISWが閾電流ITH5Aに達さないならばステップ量Δfが所定量Δfとなるように、図26に示す如くスイッチ電流ISWが閾電流ITH5Hに達するならばステップ量Δfが所定量Δfとなるように、ジッタ量指定信号SJAを生成する。ここで、所定量Δf及びΔfは、周波数を単位として持つ量であって“Δf>Δf>0”を満たす。例えば、所定量Δfは5.0kHzであり、所定量Δfは2.5kHzである。これにより、“SEN=1”であっても、出力電力PWOUTが比較的小さい状態ではジッタ量が比較的小さくなり、出力電力PWOUTが比較的大きい状態ではジッタ量が比較的大きくなる。結果、ジッタの付与有無が切り替えられる近辺においては、付与され得るジッタ量が小さくなるため、出力電圧VOUTのリプルの急激な悪化が抑制される。
【0138】
ジッタ制御回路300は、保護電流IOCPを基準に保護電流IOCPより小さな2つの電流を閾電流ITH5H及びITH5Lに設定する。例えば、ジッタ制御回路300は“ITH5H=k×IOCP”及び“ITH5L=k×IOCP”に従って閾電流ITH5H及びITH5Lを設定して良い。係数k及びkは“1>k>k>0”を満たす所定値を持ち、例えば“(k,k)=(0.5,0.3)”である。電流検出回路351は過電流保護回路160とジッタ制御回路300とで共用される回路であって良く、この場合、過電流保護回路160は保護電流IOCPと比較されるスイッチ電流ISWを、電流検出回路351を用いて検出する。
【0139】
閾電流ITH5H及びITH5Lを設定するための設定端子(不図示)を電源制御装置10の外部端子に含めておき、設定端子への入力電圧に応じて又は設定端子及びグランドGND1間に接続される設定用抵抗の値に応じて、ジッタ制御回路300は閾電流ITH5H及びITH5Lを可変設定しても良い。或いは、電源制御装置10の外部回路(不図示)から電源制御装置10に供給される設定情報に基づき、ジッタ制御回路300にて閾電流ITH5H及びITH5Lを可変設定しても良い。
【0140】
ステップ量Δfの変更の変更によりジッタ量を変更する方法を説明したが、以下の変形方法が採用されても良い。変形方法においてステップ量Δfは一定に固定される。変形方法に係るジッタ付与回路200は、ジッタ付与状態におけるジッタの付与によりスイッチング周波数fSWを周波数(f+m・Δf)から周波数(f-m・Δf)までの範囲内で、ステップ量Δfごとに変動させる。変形方法に係るジッタ量指定回路352は、図25に示す如くスイッチ電流ISWが閾電流ITH5Aに達さないならば“m=m”となるように、図26に示す如くスイッチ電流ISWが閾電流ITH5Hに達するならば“m=m”となるように、ジッタ量指定信号SJAを生成する。ここで、m及びmは“m>m”を満たす自然数であり、例えば“(m,m)=(4,2)”である。
【0141】
また、ここでは、スイッチ電流ISWのピーク値に応じてジッタ量が2段階で可変設定されているが、スイッチ電流ISWのピーク値に応じてジッタ量を3段階以上で可変設定しても良い。
【0142】
<<変形等>>
上述の各事項に対する変形技術又は補足事項等を記述する。
【0143】
任意の信号又は電圧に関して、上述の主旨を損なわない形で、それらのハイレベルとローレベルの関係は上述したものの逆とされ得る。
【0144】
各実施形態に示されたFET(電界効果トランジスタ)のチャネルの種類は例示である。上述の主旨を損なわない形で、任意のFETのチャネルの種類はPチャネル型及びNチャネル型間で変更され得る。
【0145】
不都合が生じない限り、上述の任意のトランジスタは、任意の種類のトランジスタであって良い。例えば、MOSFETとして上述された任意のトランジスタを、不都合が生じない限り、接合型FET、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)又はバイポーラトランジスタに置き換えることも可能である。任意のトランジスタは第1電極、第2電極及び制御電極を有する。FETにおいては、第1及び第2電極の内の一方がドレインで他方がソースであり且つ制御電極がゲートである。IGBTにおいては、第1及び第2電極の内の一方がコレクタで他方がエミッタであり且つ制御電極がゲートである。IGBTに属さないバイポーラトランジスタにおいては、第1及び第2電極の内の一方がコレクタで他方がエミッタであり且つ制御電極がベースである。
【0146】
本開示の実施形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。以上の実施形態は、あくまでも、本開示の実施形態の例であって、本開示ないし各構成要件の用語の意義は、以上の実施形態に記載されたものに制限されるものではない。上述の説明文中に示した具体的な数値は、単なる例示であって、当然の如く、それらを様々な数値に変更することができる。
【0147】
<<付記>>
上述の実施形態にて具体的構成例が示された本開示について付記を設ける。
【0148】
本開示の一側面に係る電源制御装置は、一次側巻線(W1)及び二次側巻線(W2)を有するトランス(TR)を用いて一次側回路における入力電圧(VIN)から二次側回路における出力電圧(VOUT)を生成する絶縁型DC/DCコンバータ(1)に用いられる電源制御装置(10)であって、前記一次側巻線に対して直列に接続されたスイッチング素子(M1)と、電流連続モード又は電流不連続モードを動作モードとして前記スイッチング素子のスイッチング駆動を行うことで前記一次側回路から前記二次側回路に電力を伝達させるよう構成されたスイッチング制御回路(100)と、前記スイッチング素子のスイッチング周波数に対してジッタを付与可能に構成されたジッタ付与回路(200)と、前記ジッタ付与回路の制御を通じて前記スイッチング周波数に対する前記ジッタの付与有無を制御するよう構成されたジッタ制御回路(300)と、を備え、前記ジッタ制御回路は、前記電流不連続モードにおいて前記スイッチング周波数に対する前記ジッタの付与を停止する構成(第1の構成)である。
【0149】
これにより、スイッチン周波数が過度に不安定となることが抑制され、結果、出力電圧のリプル低減が図られる。
【0150】
上記第1の構成に係る電源制御装置において(図12図14参照)、前記電流連続モードにおける前記スイッチング周波数は、前記電流不連続モードにおける前記スイッチング周波数よりも高く、前記ジッタ制御回路(300_1)は、前記スイッチング周波数を検出する周波数検出回路(310)を有し、前記スイッチング周波数の検出結果に基づき、前記スイッチング周波数に対する前記ジッタの付与有無を制御する構成(第2の構成)であっても良い。
【0151】
上記第2の構成に係る電源制御装置において、前記ジッタ制御回路は、前記周波数検出回路にて検出された前記スイッチング周波数に基づき前記動作モードが前記電流連続モード及び前記電流不連続モードの何れであるかを判定し、前記動作モードが前記電流連続モードであると判定したときには前記スイッチング周波数に対して前記ジッタを付与し、前記動作モードが前記電流不連続モードであると判定したときには前記スイッチング周波数に対する前記ジッタの付与を停止する構成(第3の構成)であっても良い。
【0152】
上記第1の構成に係る電源制御装置において(図15及び図16参照)、前記ジッタ制御回路(300_2)は、前記二次側巻線に生じる電圧に基づき前記動作モードが前記電流連続モード及び前記電流不連続モードの何れであるかを判定し、前記動作モードが前記電流連続モードであると判定したときには前記スイッチング周波数に対して前記ジッタを付与し、前記動作モードが前記電流不連続モードであると判定したときには前記スイッチング周波数に対する前記ジッタの付与を停止する構成(第4の構成)であっても良い。
【0153】
上記第4の構成に係る電源制御装置において、前記ジッタ制御回路は、前記二次側巻線に生じる前記電圧に応じた対比用電圧(VZT)を所定の閾電圧(VTHL)と比較することで、前記対比用電圧が前記閾電圧より高い状態から前記対比用電圧が前記閾電圧より低い状態へと変化する特定遷移を検出し、前記スイッチング素子のスイッチング駆動における1周期内に前記特定遷移が複数回検出されたときに前記動作モードが前記電流不連続モードであると判定し、前記1周期内において前記複数回の前記特定遷移が非検出であるときに前記動作モードが前記電流連続モードであると判定する構成(第5の構成)であっても良い。
【0154】
上記第1の構成に係る電源制御装置において(図17図19参照)、前記ジッタ制御回路(300_3)は、前記スイッチング素子のオン期間において前記スイッチング素子に流れるスイッチ電流(ISW)に基づき前記動作モードが前記電流連続モード及び前記電流不連続モードの何れであるかを判定し、前記動作モードが前記電流連続モードであると判定したときには前記スイッチング周波数に対して前記ジッタを付与し、前記動作モードが前記電流不連続モードであると判定したときには前記スイッチング周波数に対する前記ジッタの付与を停止する構成(第6の構成)であっても良い。
【0155】
上記第6の構成に係る電源制御装置において、前記ジッタ制御回路は、前記スイッチ電流と所定の閾電流(ITH3)との大小関係を判定する回路を有して、前記スイッチング素子がターンオンしてから前記スイッチ電流が前記閾電流に達するまでの時間(TD3)を計測し、計測した時間が所定時間(TTH3)以上であるときには前記動作モードが前記電流不連続モードであると判定し、計測した時間が前記所定時間未満であるときには前記動作モードが前記電流連続モードであると判定する構成(第7の構成)であっても良い。
【0156】
上記第1の構成に係る電源制御装置において(図20図22参照)、前記ジッタ制御回路(300_4)は、前記スイッチング素子のオン期間において前記スイッチング素子に流れるスイッチ電流(ISW)が所定の閾電流(ITH4)に達するか否かを判定し、前記スイッチ電流が前記閾電流に達するときには前記スイッチング周波数に対して前記ジッタを付与し、前記スイッチ電流が前記閾電流に未達のときには前記スイッチング周波数に対する前記ジッタの付与を停止し、前記電流不連続モードにおいて前記スイッチ電流のピークは前記閾電流より低い構成(第8の構成)であっても良い。
【0157】
上記第8の構成に係る電源制御装置において、前記電流連続モードにおいて、前記出力電圧を受ける負荷の消費電力の増減に連動して前記スイッチ電流が増減し、前記ジッタ制御回路は、前記電流連続モードにおいて前記スイッチ電流が前記閾電流に達するときには前記スイッチング周波数に対して前記ジッタを付与し、前記電流連続モードにおいても前記スイッチ電流が前記閾電流に未達のときには前記スイッチング周波数に対する前記ジッタの付与を停止する構成(第9の構成)であっても良い。
【0158】
上記第8又は第9の構成に係る電源制御装置において、前記スイッチング制御回路は、前記スイッチ電流を所定の保護電流(IOCP)以下に制限するよう構成された過電流保護回路(160)を有し、前記ジッタ制御回路は、前記保護電流を基準に前記保護電流より小さな電流を前記閾電流に設定する構成(第10の構成)であっても良い。
【0159】
上記第1~第5の構成の何れかに係る電源制御装置において(図24図26参照)、前記ジッタ付与回路は、前記スイッチング周波数に付与する前記ジッタの量を変更可能に構成され、前記ジッタ制御回路は、前記ジッタ付与回路を用いて前記スイッチング周波数に前記ジッタを付与するとき、前記スイッチング素子のオン期間にて前記スイッチング素子に流れるスイッチ電流に応じて前記ジッタの量を可変設定する構成(第11の構成)であっても良い。
【0160】
これにより、負荷の状態に応じた適正なジッタ量を付与することが可能となり、ジッタ量の適正化により出力電圧のリプル悪化が抑制される。
【0161】
上記第6~第10の構成の何れかに係る電源制御装置において(図24図26参照)、前記ジッタ付与回路は、前記スイッチング周波数に付与する前記ジッタの量を変更可能に構成され、前記ジッタ制御回路は、前記ジッタ付与回路を用いて前記スイッチング周波数に前記ジッタを付与するとき、前記スイッチ電流に応じて前記ジッタの量を可変設定する
構成(第12の構成)であっても良い。
【0162】
これにより、負荷の状態に応じた適正なジッタ量を付与することが可能となり、ジッタ量の適正化により出力電圧のリプル悪化が抑制される。
【0163】
上記第1~第12の構成の何れかに係る電源制御装置において、前記スイッチング制御回路は、前記スイッチング素子のオフ期間において前記スイッチング素子と前記一次側巻線との接続ノードに生じるスイッチ電圧(VSW)と、前記入力電圧と、の差電圧に基づき、制御電圧(VREFS)を生成するよう構成された制御電圧生成回路(110)を有し、前記制御電圧に基づき前記スイッチング素子のオン、オフを制御するとともに前記スイッチング周波数を制御する構成(第13の構成)であっても良い。
【0164】
上記第13の構成に係る電源制御装置において、前記スイッチング制御回路は、前記スイッチング素子のオフ期間において所定電位から単調に上昇するスロープ電圧(VSLP)を生成するよう構成されたスロープ電圧生成回路(120)を有して、前記制御電圧を前記スロープ電圧と比較することで前記スイッチング素子のターンオンタイミングを決定し、前記スイッチング素子のスイッチング駆動における各周期において前記スイッチング素子のオン時間(TON)に所定のコンスタントオン時間を設定し、前記ジッタ付与回路は、前記スイッチング素子のオフ期間における前記スロープ電圧の傾きを変動させることにより前記スイッチング周波数へ前記ジッタを付与する構成(第14の構成)であっても良い。尚、スロープ電圧の上昇の起点となる上記所定電位は、図3の構成ではグランドGND1であるが、グランドGND1以外の電位であっても良い。
【符号の説明】
【0165】
1 絶縁型DC/DCコンバータ
VS 電圧源
LD 負荷
OUT 出力コンデンサ
IN 入力電圧
OUT 出力電圧
OUT 出力電流
GND1、GND2 グランド
WR1H、WR1L、WR2H、WR2L 配線
10 電源制御装置
M1 スイッチングトランジスタ
IN 電源入力端子
SW スイッチ端子
GND グランド端子
FB、REF 出力電圧設定端子
FB、RREF 抵抗
TR トランス
W1 一次側巻線
W2 二次側巻線
D 整流ダイオード
100 スイッチング制御回路
110 制御電圧生成回路
120 スロープ電圧生成回路
121 電流源
122 コンデンサ
123 トランジスタ
130 コンパレータ
140 制御ロジック
150 ドライバ
160 過電流保護回路
200 ジッタ付与回路
300 ジッタ制御回路
REF 端子電圧
REFS 制御電圧
SLP スロープ電圧
CMP 比較結果信号
CNT 制御信号
DRV 駆動信号
OCP 過電流保護信号
SW スイッチ電圧
SW スイッチ電圧
一次側電圧
二次側電圧
300_1 ジッタ制御回路
310 周波数検出回路
311 コンデンサ
312 トランジスタ
313 定電流源
314 コンパレータ
318 イネーブル回路
TH1 閾電圧
EN1 イネーブル信号
300_2 ジッタ制御回路
321 電圧比較回路
322 イネーブル回路
2A、R2B 抵抗
ZT 端子電圧
ZTH、VZTL 閾電圧
BTM ボトム検出信号
EN2 イネーブル信号
300_3 ジッタ制御回路
331 電流検出回路
332 コンパレータ
333 イネーブル回路
TH3 閾電圧
EN3 イネーブル信号
300_4 ジッタ制御回路
341 電流検出回路
342 コンパレータ
343 イネーブル回路
TH4 閾電圧
EN4 イネーブル信号
351 電流検出回路
352 ジッタ量指定回路
EN イネーブル信号
JA ジッタ量指定信号
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26