(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128458
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】電動車両システム及びそれを備えた電気自動車
(51)【国際特許分類】
B60L 58/24 20190101AFI20240913BHJP
B60L 58/40 20190101ALI20240913BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20240913BHJP
H01M 10/633 20140101ALI20240913BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20240913BHJP
H01M 10/615 20140101ALI20240913BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20240913BHJP
H01M 8/0432 20160101ALI20240913BHJP
H01M 8/043 20160101ALI20240913BHJP
H01M 8/04858 20160101ALI20240913BHJP
H01M 8/04537 20160101ALI20240913BHJP
H01M 8/04313 20160101ALI20240913BHJP
H01M 8/00 20160101ALI20240913BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
B60L58/24
B60L58/40
H01M10/625
H01M10/633
H01M10/613
H01M10/615
H01M8/04 Z
H01M8/0432
H01M8/043
H01M8/04858
H01M8/04537
H01M8/04313
H01M8/00 Z
H02J7/00 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037443
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167380
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100187827
【弁理士】
【氏名又は名称】赤塚 雅則
(74)【代理人】
【識別番号】100161746
【弁理士】
【氏名又は名称】地代 信幸
(72)【発明者】
【氏名】水下 佳紀
(72)【発明者】
【氏名】竹井 力
(72)【発明者】
【氏名】山浦 潔
【テーマコード(参考)】
5G503
5H031
5H125
5H127
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503AA05
5G503BA01
5G503BB02
5G503CA11
5G503CB06
5G503CB11
5G503DA08
5G503DB03
5G503EA01
5G503EA08
5G503FA06
5H031CC09
5H125AA01
5H125AC07
5H125AC12
5H125AC22
5H125BC19
5H125BD01
5H125EE25
5H125EE36
5H125EE37
5H125FF27
5H127AB04
5H127AB29
5H127AC09
5H127AC15
5H127BA02
5H127BB02
5H127DA05
5H127DB47
5H127DB49
5H127DB53
5H127DB99
5H127DC42
5H127DC96
5H127FF04
(57)【要約】
【課題】二次電池により駆動する電動車両において、無駄なエネルギー消費を抑制し、充電時間を短縮して利便性を向上させる。
【解決手段】燃料電池31及び二次電池22と、外部電源から二次電池22へ充電する外部充電インターフェース21と、二次電池22の温度を取得する二次電池温度取得部と、二次電池22の温度を調整する二次電池温度調整システム25と、充電を行う際に、前記二次電池の温度が所定の条件外であるときに、前記燃料電池が稼働中であった場合に、燃料電池31の稼働を継続して二次電池温度調整システム25への電力供給を行うように制御する制御部51と、を有する電動車両システム。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される燃料電池及び二次電池と、
外部電源から前記二次電池へ充電する外部充電インターフェースと、
前記二次電池の温度を取得する二次電池温度取得部と、
前記二次電池の温度を調整する二次電池温度調整システムと、
前記充電を行う際に、前記二次電池の温度が所定の条件外であるときに、前記燃料電池が稼働中であった場合に、前記燃料電池の稼働を継続して前記二次電池温度調整システムへの電力供給を行うように制御する制御部と、
を有する電動車両システム。
【請求項2】
前記燃料電池の温度を取得する燃料電池温度取得部をさらに有し、
前記制御部は、
前記充電を行う際に、前記二次電池の温度が所定の条件外であるときに、前記燃料電池が稼働中でなかった場合に、前記燃料電池の温度が所定の値以上であったとき、前記燃料電池を再稼働させて前記二次電池温度調整システムへの電力供給を行うように制御する、
請求項1に記載の電動車両システム。
【請求項3】
請求項2に記載の電動車両システムにおいて、
前記制御部は、
前記充電を行う際に、前記二次電池の温度が所定の条件外であるときに、前記燃料電池が稼働中でなかった場合に、前記燃料電池の温度が所定の値以上でなかったとき、下記の(1)~(3)のうち少なくともいずれか1つの条件を満たす場合に、前記燃料電池を再稼働させて前記二次電池温度調整システムへの電力供給を行うように制御する、電動車両システム。
(1)前記燃料電池の電圧が所定の値以上である。
(2)前記燃料電池の劣化度が所定の値以下である。
(3)前記二次電池の充電開始から充電終了までの推定される予想充電時間が所定の値以上である。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の電動車両システムを搭載した、電気自動車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、燃料電池と二次電池の両方を備えた電気自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、電動車両に備えられる駆動用の二次電池は、外部電源によって充電可能となっている。二次電池には主にリチウムイオン電池が用いられている。容量が大きいことから充電時間は長くなりやすく、短縮を求めるユーザの要望は強い。
【0003】
充電の際に二次電池の温度が過度に低温になると、劣化促進が起こるとともに、入出力可能電力が低下してしまう。一方で、急速充電の際などに二次電池の温度が過度に高温になっても劣化促進が起きる。また、特に高温では溶媒やセパレータなどが変性をおこすおそれもあり、安全性の観点から入出力可能電力を制限する。いずれにしても入出力可能電力が低下すると、それによって充電時間は長く延びることになる。これを防ぐために、電動車両の中には、二次電池を加熱するヒーターや冷却器を作動させて、好適な出力が発揮できる温度に調整する温度調整システムを搭載したものが提案されている。
【0004】
この温度調整システムのうち、一般に用いられている通常温度調整システムは、
図5に示すような構成となる。燃料電池31と外部電源(外部充電インターフェース21)により二次電池22を充電し、二次電池22によりモーター41を駆動させる電気自動車を例に示す。二次電池22と燃料電池31は制御部(図中「ECU」)51から指示を出す。外部電源21による二次電池22の充電中に、制御部51は二次電池22の温度を監視し続け、所定温度以下または所定温度以上になった場合に、二次電池22自体から二次電池温度調整システム25に電力を供給して、ヒーター26で二次電池22自身を加熱したり、逆に冷却器27で二次電池22自身を冷却したりして、温度を所定の範囲内に保ち、入出力可能電力の低下を防ぐ。
【0005】
一方、電動車両の中には、特許文献1に示すような、二次電池とともに燃料電池(FC)を備えたものが提供されつつある。本願時点における燃料電池の一般的な推奨稼働温度は80℃ほどである。ただし、燃料電池は常時稼働しているわけではなく、駐車して二次電池を外部電源により充電している際や、二次電池のみで電動車両を走らせている際には、燃料の消費を抑えるために燃料電池を停止する。特に外部電源により充電している際に燃料電池の運転を停止すると、燃料電池の温度は徐々に低下していく。温度が下がり過ぎた燃料電池は、次回稼働時に再び暖気する必要がある。また、燃料電池は稼働する際に水を生成するため、氷点下環境下においてその生成した水がガス流路内に残留していると、凍結してガス流路を塞いでしまうおそれがある。このため燃料電池を停止する際には、内部に残存する燃料ガスとともに、経路内に残存する水をブロワーなどで排出しなければならない場合がある。この排出にも別途エネルギーを消費してしまう。
【0006】
さらに、氷点下環境で燃料電池を起動する際には、ガス経路が凍結しているか否かの判定をして、凍結していると判断された場合には解凍のための昇温処理を行う。昇温処理としては、燃料電池のカソードガス空燃比を低下させて発電するといった、燃料電池の発熱量が放熱量を上回る条件で発電して暖気する方法や、別途外部のヒーターにより加熱する方法などが採られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の電動車両システムでは、充電の際に二次電池温度が所定の範囲外となったときに、二次電池自身から電力を供給してヒーターや冷却器などの温度調整システムを作動させるため、充電された電力の一部を消費しながら充電を行うことになり、その分だけ充電時間が長期化してしまう。
【0009】
また、外部充電の際にはいったん車両を電源オフとし、燃料電池の運転も停止するため、燃料電池の温度は大気温まで低下していく。すると次回の車両駆動時には燃料電池の暖気が必要となり、暖気のために二次電池に充電した電力を消費してしまう。
【0010】
さらに、氷点下環境においては、車両を電源オフする際に、燃料電池が凍結することを防ぐために内部に残留する生成水と残存燃料ガスを排気しなければならず、この排気のための装置の駆動にも二次電池に蓄えた電力を消費してしまう。一方で、氷点下環境で車両を駆動開始する際に、燃料電池へのガス経路が凍結していると診断された場合には、通常の燃料電池の暖気処理だけではなく、ガス経路の解凍のための昇温処理が必要となる。このような昇温処理はさらに余分に二次電池の電力を消耗してしまう。
【0011】
そこでこの発明の課題は、二次電池により駆動する電動車両において、無駄なエネルギー消費を抑制し、充電時間を短縮して利便性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明は、
車両に搭載される燃料電池及び二次電池と、
外部電源から前記二次電池へ充電する外部充電インターフェースと、
前記二次電池の温度を取得する二次電池温度取得部と、
前記二次電池の温度を調整する二次電池温度調整システムと、
前記充電を行う際に、前記二次電池の温度が所定の条件外であるときに、前記燃料電池が稼働中であった場合に、前記燃料電池の稼働を継続して前記二次電池温度調整システムへの電力供給を行うように制御する制御部と、
を有する電動車両システムにより、上記の課題を解決したのである。
【0013】
前記二次電池温度調整システムとしては、加熱するヒーターと冷却する冷却器との両方を備えているとよい。すなわち、充電開始の際に燃料電池が稼働中であれば、昇温処理の必要なく燃料電池を稼働し続けることができる。この燃料電池からの電力供給で、前記二次電池温度調整システムを作動させることで、充電される二次電池自身からのエネルギー消費を抑えて、充電時間の長期化を回避しながら、前記二次電池を適温の範囲に調整し続けることができる。このとき、稼働中の燃料電池の電源を落とすことなく、そのまま稼働し続ければよいので、燃料電池自体の昇温に必要なエネルギーを消費せずに済む。
【0014】
また、この発明にかかる電動車両システムは、
前記燃料電池の温度を取得する燃料電池温度取得部をさらに有し、
前記制御部は、
前記充電を行う際に、前記二次電池の温度が所定の条件外であるときに、前記燃料電池が稼働中でなかった場合に、前記燃料電池の温度が所定の値以上であったとき、前記燃料電池を再稼働させて前記二次電池温度調整システムへの電力供給を行うように制御する、
構成を採用できる。
【0015】
前記充電の際に、燃料電池が稼働中でなかったとしても、燃料電池の稼働終了から長時間経っていない場合には、それなりの温度を維持していることが多い。この温度が所定の値以上であれば、燃料電池の稼働に必要な昇温のためのエネルギー消費を許容して、燃料電池からの電力供給で前記二次電池温度調整システムを作動させることで、全体としてはエネルギー効率がよく、二次電池に充電される電力の消費も抑えて充電時間の長期化を回避できる。
【0016】
さらに、この発明にかかる電動車両システムは、
前記制御部は、
前記充電を行う際に、前記二次電池の温度が所定の条件外であるときに、前記燃料電池が稼働中でなかった場合に、前記燃料電池の温度が所定の値以上でなかったとき、下記の(1)~(3)のうち少なくともいずれか1つの条件を満たす場合に、前記燃料電池を再稼働させて前記二次電池温度調整システムへの電力供給を行うように制御する、構成を採用できる。
(1)前記燃料電池の電圧が所定の値以上である。
(2)前記燃料電池の劣化度が所定の値以下である。
(3)前記二次電池の充電開始から充電終了までの推定される予想充電時間が所定の値以上である。
【0017】
すなわち、前記燃料電池の温度が低下している場合でも、燃料電池の電圧がまだ十分高く稼働までの燃料供給などが省エネルギーで済む場合や、燃料電池が劣化しておらず十分な出力を発揮できる場合や、充電までの想定される予測時間が短時間で済むような場合には、二次電池自身による二次電池温度調整システムの作動ではなく、燃料電池による二次電池温度調整システムの作動の方が、エネルギー効率やその他総合的な視点から見て好ましい場合があり、これらの条件のいずれかを満たす場合には、燃料電池からの電力供給で二次電池温度調整システムを駆動させることで、充電時間の長期化を防ぐ方がよい。
【発明の効果】
【0018】
この発明にかかる電動車両システムを搭載した電気自動車では、二次電池の充電時に二次電池の温度調整に必要な電力を適当な条件下にある燃料電池が供給することで、燃料電池の昇温などに要するエネルギーを抑制しながら、二次電池の充電に要する時間を短縮することができ、省エネルギーで利便性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】この発明にかかる電気自動車に組み込む電動車両システムの実施形態例の概要図
【
図2】この発明にかかる電動車両システムの実施形態例の機能ブロック図
【
図3】この発明にかかる電動車両システムの機能フロー例図
【
図4】この発明にかかる電動車両システムの第二の機能フロー例図
【
図5】従来の電動車両システムの実施形態例である機能ブロック図
【発明を実施するための形態】
【0020】
この発明の実施形態を
図1に示す電気自動車の例を用いて説明する。この発明は、二次電池22と燃料電池31(図中、「FC31」と表記する。)とを有する、電気自動車11に搭載される電動車両システムである。電気自動車11は二次電池22には燃料電池31による充電だけでなく、外部電源からの外部充電が可能であるように、外部充電インターフェース21を有するプラグインハイブリッド車(PHEV)である。また、図示しないものの、二次電池22は外部へ給電する外部給電も可能であってもよい。ここでは、二次電池22から電力が供給されてモーター41が駆動されることで、電気自動車11が走行する実施形態を例に説明する。
【0021】
この発明にかかる電動車両システムの
図1の実施形態例について、さらに詳細な機能ブロック図を
図2に示す。この発明にかかる電動車両システムでは、外部充電インターフェース21から二次電池22に電力(I1)を供給して充電する。また、燃料電池31で生じさせた電力(I2)も適宜二次電池22に供給して充電する。これらの二次電池に蓄えられた電力(I3)により、モーター41を駆動して電気自動車11を走行させる。
【0022】
この発明にかかる電動車両システムは、二次電池22の温度を調整(H/C)する二次電池温度調整システム25を有する。二次電池温度調整システム25としては、二次電池22を加熱するヒーター26と、二次電池22を冷却する冷却器27との両方を有していることが望ましい。適正な温度範囲より高温であるときは冷却し、適正な温度範囲より低温であるときは加熱して、二次電池22の入出力可能電力が低下しすぎないようにするためである。
【0023】
この発明にかかる電動車両システムは、二次電池温度調整システム25を活用するため、二次電池22の温度(t1)を取得する二次電池温度取得部(図示せず)を有する。前記二次電池温度取得部は、二次電池22の電極反応に影響する所定の箇所に取り付けられ、アウトプットされる。
【0024】
この発明にかかる電動車両システムは、燃料電池31の情報を取得する取得部を有することが望ましい。具体的には、燃料電池31が稼働中であるか否かを示す稼働情報(TF)を取得する燃料電池稼働取得部、温度(t2)を取得する燃料電池温度取得部、電圧(e2)を取得する燃料電池電圧取得部、燃料電池の劣化度(D)を取得する燃料電池劣化度取得部を有すると好ましい。取得する手段としては、電圧計や温度計から直接取得したり、それらの値から算出したりする一般的な情報取得手段を採用できる。例えば稼働情報(TF)は、電圧で判断する他に、負荷(電流)の有無、コンプレッサーなどの補器の動きの有無(すなわち空気(燃料)導入の有無である)でも判断できる。
【0025】
この発明にかかる電動車両システムは、二次電池系と燃料電池系とを含む電子的な制御を行う制御部51を有する。この実施形態に示す制御部51では、二次電池22における制御系を担うPHEV-ECU52と、燃料電池31における制御系を担うFC-ECU53を有する。ここで、ECUとはElectronic Control Unitを意味する。これらは半導体演算装置とメモリとを有し、ハンドルやブレーキ、アクセル等の操作装置50から操作による出力要求(c1、c2)を受けて、二次電池22と燃料電池31とを含む各部位へデータや命令を送るとともに、各部位からデータを取得する。
【0026】
PHEV-ECU52は、必要なタイミングで二次電池22へ給電要求c3を送り、二次電池22はその指示に従って、モーター41や二次電池温度調整システム25、さらには図示しないが外部給電のための外部給電インターフェースなどへの電力供給を行う。一方で、PHEV-ECU52は、二次電池22の温度(t1)や二次電池22の電圧(e1)、二次電池22の充電率(SOC:State of Charge)などを取得する。温度(t1)は上記の二次電池温度取得部により得られた値を取得する。電圧(e1)は二次電池22が有する電圧計による値を取得する。充電率(SOC)は、二次電池22から取得した電圧(e1)を用い、予め利用可能に登録してある満充電の際の電圧や二次電池22の充放電特性などを参照して算出することができる。
【0027】
FC-ECU53は、必要なタイミングで燃料電池31へ発電要求(c4)を送り、燃料電池31はその指示に従って発電を行う。この発電によって、二次電池22への給電(I2)と、後述する二次電池温度調整システム25への給電(I5)の他、適宜必要な給電を行ってよい。一方で、FC-ECU53は、燃料電池31の温度(t2)や、燃料電池31が稼働中であるか否か(TF)、燃料電池31の電圧(e2)、劣化度(D)などの情報を燃料電池31から取得する。なお、FC-ECU53が得られた情報から劣化度(D)を算出する形態であってもよい。劣化度(D)を算出する場合、例えば燃料電池が劣化すると電圧が低下することを利用した次のような構成が挙げられる。あらかじめ初期状態においてある一定の負荷(発電電流)における電圧値を取得して、記憶手段(図示せず)に記録しておく。その上で、同じ負荷(発電電流)における電圧値を取得して、初期状態での電圧との差分を算出する。この差分の低下幅を劣化度(D)とすることができる。
【0028】
この発明にかかる電動車両システムでは、さらに、PHEV-ECU52、EC-ECU53のいずれか又は両方である制御部51から、二次電池温度調整システム25へ、二次電池22の温度を好適に調整するための目標となる設定温度(t11、t12)を送る。二次電池22と燃料電池31は、二次電池22を充電する(I1)にあたり、二次電池22の温度を調整する二次電池温度調整システム25を作動させる電力(I5,I6)をそれぞれが下記のような条件下で担う。
【0029】
まず、電気自動車11がキーオンになっており、走行/停止を行っている状況では、二次電池温度調整システム25を作動させる電力は二次電池22から行う。このとき、二次電池温度調整システム25自体の温度(t3)もPHEV-ECU52に送信され、適切な温度となるように調整する。このように、二次電池22からの電力供給により作動する温度調整システムを「通常温度調整システム」と呼称する。
【0030】
次に、電気自動車11がキーオフになる状況での処理を、
図3に示すフロー例を用いて説明する。まずキーオフにあたり(S101)、一定期間の待ち時間を設け、外部充電を行うか否かを判定する(S102)。外部充電を行わない場合(S102→No)はそのまま燃料電池31を停止する(S103)。キーオフ後、所定の待ち時間の間に外部充電が実施される場合(S102→Yes→S105)、制御部51(PHEV-ECU52)は二次電池22の温度t1を取得して判定する。二次電池22の温度が下限a℃から上限b℃の間にあれば(S105→Yes)、温度調整の必要はないため、そのまま外部充電を継続する(S106)。なお、a及びbの温度範囲は搭載する二次電池の種類にもよるが、0℃~50℃であると好ましく、10℃~40℃であるとより好ましい。
【0031】
外部充電が完了するまでは(S121→No→S105)、定期的にこの温度の判定を行う。温度が低すぎても高すぎても出力電力が低下してしまうためである。気温が高い場合だけでなく、充電に伴う発熱によっても温度が上限を超えてしまう場合がある。一方、気温が低すぎる場合は充電に伴う発熱があってもなお温度が下限を下回ってしまう場合がある。このため、充電中は定期的に判定を行う。ただし、この段階では燃料電池31による二次電池温度調整システム25の作動がされておらず(S122→No)、燃料電池31を稼働させておくメリットが小さいため、燃料電池31を停止して(S123)、以降の温度判定のサイクルを繰り返す(S105)。なお、S122、S123の代わりに、キーオフから所定の時間が経過しているか否かの判定をし、所定の時間を経過していなければ燃料電池31の稼働を継続するような判定としてもよい。
【0032】
二次電池22の温度t1が、a≦t1≦bの範囲外であるとき(S105→No)、二次電池温度調整システム25を起動させなければならない。このとき、燃料電池31が稼働中か否か(TF)を、制御部51(FC-ECU53)が判定する(S111)。これは充電直後の最初のS105判定だけではなく、充電開始後の何度目のS105判定でも同様としてよい。この段階で燃料電池31がまだ稼働中であれば(S111→Yes)、燃料電池31の稼働をそのまま継続し、二次電池温度調整システム25へ燃料電池31から電力(t5)を供給する(S112)。これにより、燃料電池31が稼働させるために昇温するといったエネルギー消費をすることなく、かつ、充電しようとする二次電池22から充電している電力を消費して充電時間を長引かせることもなく、二次電池22の温度をヒーター26又は冷却器27によって適正な温度範囲になるように調整させることができる。外部充電が完了するまでは、この温度の判定を繰り返し、二次電池22の温度が上記の範囲外である間は(S105→No)、燃料電池31の稼働を続ける(S111→Yes→S112)。二次電池22の温度が上記の範囲内に戻ったら(S105→Yes)、燃料電池31の稼働を終了して(S122→No→S123)充電を続ける(S105→S106)。外部充電が完了したら(S121→Yes)、燃料電池31が稼働中(TF)であればそれを停止し(S131→Yes→S132)、そうでなくても(S131→No)、制御部51は一連のフローを終了する(S133)。
【0033】
また、この発明にかかる電動車両システムは、上記のフローの応用形態として、充電中に二次電池22の温度t1が上記の範囲外であるとき、かつ燃料電池31が稼働中でなかった場合も(S111→No)、二次電池22からの電力(I6)により二次電池温度調整システム25を起動する通常温度調整システムではなく、
図3のフローに準じて燃料電池31からの電力(I5)により二次電池温度調整システム25を起動することが好ましい場合がある。その場合のフローを、
図4を用いて説明する。
【0034】
燃料電池31が稼働中(TF)でなくても、燃料電池31の温度t2が所定の温度c℃以上であれば、燃料電池31の稼働温度にまで昇温させるために必要なエネルギーは、許容できる程度に少なくてすむ。このため、燃料電池31の温度t2がc℃以上であったら、燃料電池31を再稼働して、二次電池温度調整システム25への電力供給を二次電池22からではなく燃料電池31から行う(S152)。こうすることによって、充電している二次電池22の電力を温度調整のために消費することなく、充電時間が延長されることを防ぎながら、そのために必要な燃料電池31の昇温に要するエネルギーも最小限にとどめて省エネルギーに充電時間を短縮できる。以降は燃料電池31が稼働している状況で、外部充電の完了(S121)まで、上記と同様のフローとなる。なお、この温度c℃は使用する燃料電池にもよるが、現行の一般的な燃料電池では40℃以上程度に設定しておくと好ましい。
【0035】
さらに、この発明にかかる電動車両システムは、上記のフローのさらなる応用形態として、燃料電池31が稼働中でなく(S111→No)、かつ、燃料電池31の温度がc℃未満であった場合でも(S151→No)、二次電池22からの電力(I6)により二次電池温度調整システム25を稼働させるのではなく、燃料電池31を再稼働させて燃料電池31からの電力(I5)により二次電池温度調整システム25を稼働させた方が、充電時間の短縮のメリットを、少ない負担で享受できて好適である場合がある。そのような条件としては、下記の(1)~(3)のうちの少なくとも一つ(S160、S161~S163)を満たすことが挙げられる。少なくとも一つを満たす場合に条件を満たすとしてもよいし、(1)~(3)のうちの任意の複数の条件を同時に満たす場合に条件を満たすとしてもよい。
【0036】
上記の条件の(1)として、燃料電池31の電圧(e2)が所定の値x(V)以上であるか否かが挙げられる(S161)。燃料電池31の温度が下がっていても、電圧が一定以上であれば、まだ燃料等が残っており、再稼働までに必要なエネルギーを十分に節約した上で、二次電池温度調整システム25への電力供給が可能になるためである。
【0037】
上記の条件の(2)として、燃料電池31の劣化度(D)が所定の値G以下であるか否かが挙げられる(S162)。これは、燃料電池の起動回数(すなわち水素/空気ガスの導入と排気)が増加するほど、燃料電池自体の劣化が進行することによる。この段階ではすでに燃料電池が停止しているので、再稼働をさせるとその分だけ起動回数が増加する。劣化度(D)が大きい場合は、充電時間の短縮など、本提案のメリットを無視してでも燃料電池保護を優先する必要がある。一方で、劣化度(D)が所定の値G以下で劣化がそれほど進行していなければ、再稼働までに必要なエネルギーが過度に必要とはならずに、二次電池温度調整システム25への電力供給が可能になる。
【0038】
上記の条件の(3)として、その段階において燃料電池31の推定される予想充電時間が、所定の時間N(min)以上であるか否かが挙げられる。予想充電時間とは、すなわち充電完了までの推定される時間であり、二次電池22の充電率(SOC)と供給する電力量から制御部51が算出して判断するとよい。予想充電時間が短ければ、燃料電池を再稼働してもすぐに充電完了してしまい無駄になってしまう可能性が高いため、通常温度調整システムを利用する方が好ましい。一方で、予想充電時間が十分に長ければ、燃料電池を再稼働して充電しても、燃料電池の起動回数を一回増やした分のデメリットに見合うだけの利用ができると考えられる。
【0039】
上記の(1)~(3)のいずれか、またはこれらの複数の条件を満たさない場合(S160→No)は、二次電池22からの電力(I6)により二次電池温度調整システム25を稼働させる通常温度調整システムを実行する(S171)。これは、その状態から燃料電池31を再稼働させてもエネルギー的ロスが許容できなくなるからである。逆に、これらのいずれか、又は複数の条件を満たす場合は(S160→Yes)、燃料電池31を稼働させることで得られる、充電時間の短縮メリットが大きくなる(S152)。
【符号の説明】
【0040】
11 電気自動車
21 外部充電インターフェース
22 二次電池
25 二次電池温度調整システム
26 ヒーター
27 冷却器
31 燃料電池
41 モーター
50 操作装置
51 制御部
52 PHEV-ECU
53 FC-ECU