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特開2024-128460建築物又は土木構造物の管理支援システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128460
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】建築物又は土木構造物の管理支援システム
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/43 20240101AFI20240913BHJP
【FI】
G05D1/02 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037445
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】505466295
【氏名又は名称】株式会社イクシス
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】山崎 文敬
(72)【発明者】
【氏名】狩野 高志
【テーマコード(参考)】
5H301
【Fターム(参考)】
5H301AA02
5H301BB14
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301EE07
5H301FF11
5H301GG09
(57)【要約】
【課題】建築工事や土木工事の構内を巡回する巡回ロボットに所望の映像を適切に撮影させて、遠隔制御によって必要な情報を収集することができる管理支援システムを提供する。
【解決手段】巡回ロボットが所定数のマーカを検出するまで、遠隔制御装置は、カメラが撮影した映像と共に、巡回ロボットの遠隔操作をユーザに要求する表示を表示手段に表示し、巡回ロボットが所定数のマーカを検出した後に、遠隔制御装置は、カメラによって撮影された映像に対して、図面データによって表される構造物を拡張現実で表した拡張現実映像を表示手段に表示する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数箇所のそれぞれにマーカが設置されている建築物又は土木構造物の管理を支援する建築物又は土木構造物の管理支援システムであって、
前記建築物又は前記土木構造物の図面データを記憶している記憶装置と、
カメラと加速度センサを搭載しており、前記建築物又は前記土木構造物の構内を走行して巡回する巡回ロボットと、
前記巡回ロボットを遠隔制御する遠隔制御装置と、
を備え、
前記図面データには、前記移動通信端末が前記建築物又は前記土木構造物の構内を移動する前に、前記建築物又は前記土木構造物に配置されているマーカの少なくとも一部について、当該マーカに相当する図面マーカの位置情報が登録されており、
前記遠隔制御装置は、
ユーザの操作を受け付ける操作受付手段と、
前記カメラが撮影した映像を表示する表示手段と、
を有しており、
前記巡回ロボットは、
前記記憶装置に記憶されている前記図面データと、前記カメラが撮影した映像と、前記加速度センサが検知した自機の運動情報と、に基づいて自己位置を認識して走行可能であり、
前記カメラが撮影した映像に基づいて、自機の周辺に存在するマーカを検出可能であり、
前記巡回ロボットが所定数のマーカを検出するまで、前記遠隔制御装置は、前記カメラが撮影した映像と共に、前記巡回ロボットの遠隔操作をユーザに要求する表示を前記表示手段に表示し、
前記巡回ロボットが前記所定数のマーカを検出した後に、前記遠隔制御装置は、前記カメラによって撮影された映像に対して、前記図面データによって表される構造物を拡張現実で表した拡張現実映像を前記表示手段に表示する、
ことを特徴とする建築物又は土木構造物の管理支援システム。
【請求項2】
前記遠隔制御装置が、前記図面データに登録されている第一の図面マーカを指定する遠隔操作を受け付けた場合、前記巡回ロボットは、前記第一の図面マーカの位置情報に基づいて自己位置から前記第一の図面マーカに相当するマーカまでの移動経路を自律的に求めて走行する、
請求項1に記載の建築物又は土木構造物の管理支援システム。
【請求項3】
前記巡回ロボットは、自律的に求めた前記第一の図面マーカに相当するマーカまでの移動経路を走行して検出したマーカの位置情報が、前記図面データに登録されている前記第一の図面マーカの位置情報と相違する場合、前記図面データを更新して前記第一の図面マーカの位置情報を修正させる、
請求項2に記載の建築物又は土木構造物の管理支援システム。
【請求項4】
前記巡回ロボットは、走行中に検出したマーカに相当する前記図面マーカが、前記図面データに登録されていない場合、前記図面データを更新して、検出したマーカに相当する第二の図面マーカに係る情報を登録させる、
請求項1から3のいずれか一項に記載の建築物又は土木構造物の管理支援システム。
【請求項5】
前記第二の図面マーカの登録の元になったマーカを計数して前記所定数に達する場合、前記遠隔制御装置は、前記拡張現実映像を前記表示手段に表示する、
請求項4に記載の建築物又は土木構造物の管理支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物又は土木構造物の管理支援支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
建築物又は土木構造物の施工現場において、現場作業の負担軽減や安全性の確保などの観点から、リモート(遠隔制御)によって情報収集するニーズが高まっている。
上記のような背景を鑑みて、種々の管理システムの提案が相次いでいる(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1には、建設現場において、適切な情報を効率良く収集することを目的として、自立移動可能な巡回ロボットを巡回させて、建築現場の画像を撮影させ、遠隔地(現場事務所)から巡回ロボットの周囲環境をリアルタイムで閲覧することなどが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-197147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に係るシステムにおいて、巡回ロボットは、地図上に定められたノードをターゲットとして自立移動するが、建築現場は工事の進捗に伴って環境が変化するため、同文献の発明は、巡回ロボットの移動精度(ノードとして定めた位置に正確に到達する精度)の観点から未だ改善の余地がある。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みなされたものであり、建築工事や土木工事の構内を巡回する巡回ロボットに所望の映像を適切に撮影させて、遠隔制御によって必要な情報を収集することができる管理支援システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、複数箇所のそれぞれにマーカが設置されている建築物又は土木構造物の管理を支援する建築物又は土木構造物の管理支援システムであって、前記建築物又は前記土木構造物の図面データを記憶している記憶装置と、カメラと加速度センサを搭載しており、前記建築物又は前記土木構造物の構内を走行して巡回する巡回ロボットと、前記巡回ロボットを遠隔制御する遠隔制御装置と、を備え、前記図面データには、前記移動通信端末が前記建築物又は前記土木構造物の構内を移動する前に、前記建築物又は前記土木構造物に配置されているマーカの少なくとも一部について、当該マーカに相当する図面マーカの位置情報が登録されており、前記遠隔制御装置は、ユーザの操作を受け付ける操作受付手段と、前記カメラが撮影した映像を表示する表示手段と、を有しており、前記巡回ロボットは、前記記憶装置に記憶されている前記図面データと、前記カメラが撮影した映像と、前記加速度センサが検知した自機の運動情報と、に基づいて自己位置を認識して走行可能であり、前記カメラが撮影した映像に基づいて、自機の周辺に存在するマーカを検出可能であり、前記巡回ロボットが所定数のマーカを検出するまで、前記遠隔制御装置は、前記カメラが撮影した映像と共に、前記巡回ロボットの遠隔操作をユーザに要求する表示を前記表示手段に表示し、前記巡回ロボットが前記所定数のマーカを検出した後に、前記遠隔制御装置は、前記カメラによって撮影された映像に対して、前記図面データによって表される構造物を拡張現実で表した拡張現実映像を前記表示手段に表示する、ことを特徴とする建築物又は土木構造物の管理支援システムが提供される。
【0008】
上記発明によれば、管理対象である建築物又は土木構造物の構内に予め複数個のマーカを設置し、基準となる数(所定数)のマーカを検出するまでユーザに遠隔制御を要求し、所定数のマーカを検出した後は、検出したマーカが登録されている図面データによって表される構造物を拡張現実(AR:Augemented Reality)表示した映像を、遠隔制御装置の表示手段に表示させることができる。
これにより、遠隔制御装置を操作するユーザは、遠隔地から実際の現場の映像に対して、図面データの情報が付加された拡張現実表示を視認することができ、遠隔制御によって必要な情報を収集することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、建築工事や土木工事の構内を巡回する巡回ロボットに所望の映像を適切に撮影させて、遠隔制御によって必要な情報を収集することができる管理支援システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態における管理支援システムの構成図である。
図2図1に図示されている巡回ロボットの斜視図である。
図3】移動通信端末のタッチパネル、並びに、遠隔制御装置のディスプレイ装置に表示される映像の具体例を示す図である。
図4】移動通信端末のタッチパネル、並びに、遠隔制御装置のディスプレイ装置に表示される映像の具体例を示す図である。
図5】図面マーカに相当するマーカが3つ以上登録されている状態から巡回ロボットが巡回を始める場合のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様の構成要素には同一の符号を付し、適宜に説明を省略する。
【0012】
<管理支援システム100のシステム構成>
先ず、管理支援システム100のシステム構成について説明する。
図1は、本発明の実施形態における管理支援システム100の構成図である。
図2は、図1に図示されている巡回ロボット110の斜視図である。
【0013】
本発明に係る建築物又は土木構造物の管理支援システム(以下、単純に管理支援システム100と称する)は、複数箇所のそれぞれにマーカが設置されている建築物又は土木構造物の管理を支援する。
図1に示すとおり、管理支援システム100は、巡回ロボット110と、遠隔制御装置120と、を備える。
【0014】
巡回ロボット110は、センサ111と、レーザースキャナ112と、移動通信端末113と、を備え、管理対象である建築物又は土木構造物の構内を走行して巡回することができる。
センサ111は、巡回ロボット110の周囲にある対象物までの距離を検知する測距センサであり、赤外線センサ等によって実現される。
レーザースキャナ112は、巡回ロボット110の周囲にレーザーを照射することによって、周囲に存在する対象物の形状を計測して三次元の点群データを取得する。
移動通信端末113は、遠隔制御装置120と通信可能に接続している。そして、移動通信端末113は、タッチパネルを有しており、作業員WKの操作を受け付ける操作受付手段、及び、作業員WKが視認可能に種々のデータの内容を表示する表示手段として機能する。例えば、移動通信端末113は、作業員WKの操作に基づいて生成した制御コマンドを巡回ロボット110に送信したり、作業員WKの操作に基づいて指定した記憶装置122に記憶されているデータファイルを読み込んで表示したり、することができる。
また、移動通信端末113は、不図示のカメラと加速度センサを搭載しており、当該カメラの画角に収まる範囲を撮影することができ、当該加速度センサによって自己の運動情報(移動速度や姿勢など)を検出することができる。
【0015】
巡回ロボット110は、(イ)遠隔制御装置120から遠隔制御されて走行する機能と、(ロ)随行している作業員WKの操作に基づく制御によって走行する機能と、(ハ)巡回自律的に走行する機能と、を備えている。
ここで、「自律的に走行する」とは、巡回ロボット110に搭載されている構成が取得したデータ(移動通信端末113が撮影した撮影データや記憶装置122から受信した図面データ等を含む)に基づいて、自機で走行経路を決定して走行すること、をいう。
なお、図2において、巡回ロボット110は、車輪で走行する態様を図示するが、本発明の実施は、ドローンのように空中移動するロボットに移動通信端末113を搭載して、本発明が実施されてもよい。
【0016】
遠隔制御装置120は、巡回ロボット110を遠隔制御する装置であり、管理サーバ121と、記憶装置122と、ディスプレイ装置123と、を備える。
記憶装置122は、少なくとも管理対象である建築物又は土木構造物の図面データを記憶している。ここで、記憶装置122に記憶されている図面データは、三次元の図面データであることが好ましいが、二次元の図面データであることも許容される。
また、記憶装置122は、巡回ロボット110によって取得された各種データ(カメラによって撮影された映像データ等)を記憶する。
管理サーバ121は、記憶装置122に記憶されている各種データを処理する。また、管理サーバ121は、不図示の操作手段を備え、ユーザ(巡回ロボット110を遠隔制御する者)の操作を受け付けることができる。
ディスプレイ装置123は、管理サーバ121のユーザインターフェースとして機能し、管理サーバ121によって実行される処理について表示することができる。例えば、ディスプレイ装置123は、移動通信端末113に搭載されているカメラが撮影した映像を表示することができる。なお、ディスプレイ装置123の具体的な表示態様については、後述する。
【0017】
記憶装置122に記憶されている図面データには、その建築物又は土木構造物に配置されているマーカの少なくとも一部について、当該マーカに相当する図面マーカの位置情報が登録されている。
ここでマーカとは、実空間に配置される平板であり、画像認識処理によって検出可能な二次元コードが印字されている。これにより、移動通信端末113は、搭載しているカメラによって撮影している映像にマーカが映り込むと、そのマーカを検出して、そのマーカの二次元コードが表す識別情報を取得できる。以下の説明において、マーカに割り当てられている識別情報とは、そのマーカに印字されている二次元コードが表す識別情報をいう。
【0018】
巡回ロボット110は、移動通信端末113のカメラによって撮影された映像からマーカを検出すると、記憶装置122に記憶されている図面データの中から当該マーカに相当する図面マーカを抽出する。ここで図面マーカとは、管理対象である建築物又は土木構造物の図面データが表す図面空間(データ上の仮想空間)に配置される標識であり、その図面空間における位置情報を有している。
なお、本実施形態において、記憶装置122に記憶されている図面データにおいて、特定のマーカに割り当てられている識別情報が特定の図面マーカに対応付けられている状態を、「マーカに相当する図面マーカ」と表現する場合がある。
巡回ロボット110が上記のような処理をするので、巡回ロボット110が建築物又は土木構造物の構内を巡回する事前に、図面マーカの位置情報に合致するように、当該図面マーカに相当するマーカが現に位置することが好ましい。
しかしながら、実際には、図面マーカの位置情報と厳密に一致させるように、構内にマーカを設置することは困難である。また、構内に設置したマーカに割り当てられている識別情報の全てについて、事前に図面マーカに対応付けて図面データに登録しておくのは、作業負担の観点から実現性に乏しい。
従って、巡回ロボット110は、以下のような機能を備えている。
【0019】
先ず、遠隔制御装置120が、図面データに登録されている図面マーカ(便宜的に、第一の図面マーカと称する)を指定する遠隔操作を受け付けた場合の処理について説明する。
この場合、巡回ロボット110は、遠隔制御装置120からの要求に応じて、第一の図面マーカの位置情報に基づいて自己位置から第一の図面マーカに相当するマーカまでの移動経路を自律的に求めて走行する。
【0020】
次に、巡回ロボット110が、自律的に求めた第一の図面マーカに相当するマーカまでの移動経路を走行して検出したマーカの位置情報が、図面データに登録されている第一の図面マーカの位置情報と相違する場合の処理について説明する。
この場合、巡回ロボット110は、遠隔制御装置120(記憶装置122)に記憶されている図面データを更新して第一の図面マーカの位置情報を修正させる。
【0021】
巡回ロボット110は、走行中に検出したマーカに相当する図面マーカが、設計データに登録されていない場合の処理について説明する。
この場合、巡回ロボット110は、図面データを更新して、検出したマーカに相当する図面マーカ(便宜的に、第二の図面マーカと称する)に係る情報を登録させる。
上記の第二の図面マーカに係る情報の登録は、(イ)検出したマーカに割り当てられている識別情報に対応付けられている図面マーカが図面データに存在しない場合、並びに、(ロ)検出したマーカの検出位置の近傍に位置する図面マーカが存在しなかったとき、又は、検出したマーカの検出位置の近傍に位置する図面マーカに別の識別情報が対応付けられて登録されているとき、に大別される。
前者の場合、巡回ロボット110は、検出したマーカの検出位置の近傍に位置し且つ識別情報に対応付けられていない図面マーカを、当該マーカに相当する図面マーカとして抽出し、当該マーカに割り当てられている識別情報を対応付けるように図面データを更新させる。
後者の場合、巡回ロボット110は、検出したマーカに相当する図面マーカが図面データに登録されていないものと判定する。このとき、巡回ロボット110は、当該マーカに割り当てられている識別情報を対応付けた図面マーカを、当該マーカに相当する図面マーカとして図面データに新たに登録するように図面データを更新する。
【0022】
以上に説明したように、巡回ロボット110は、検出したマーカに割り当てられている識別情報に対応付けられている図面マーカが存在しないとき、既存の図面マーカから当該マーカに相当するものと推定される図面マーカを特定したり、新規の図面マーカを追加したり、適切に記憶装置122に記憶されている図面データを更新することができる。従って、事前準備に係る作業コストを軽減することができる。
【0023】
巡回ロボット110は、上記のように記憶装置122に記憶されている図面データを更新しながら、移動通信端末113のカメラが撮影した映像の中から、自機の周辺に存在するマーカを検出し、検出したマーカに相当する図面マーカの位置情報を参照して、自己位置を推定する。
さらに、巡回ロボット110は、上記の処理に加えて、移動通信端末113の加速度センサが検知した自機の運動情報も加味することによって、正確に自己位置を認識することができる。
【0024】
巡回ロボット110は、求めた自己位置に基づいて、管理対象である建築物又は土木構造物の構内の走行経路を、遠隔制御によって又は自律的に決定して、その構内を巡回する。
そして、巡回ロボット110は、移動通信端末113のカメラによって撮影された映像空間と図面データが表す図面空間とを照合して、移動通信端末113のタッチパネルに表示すると共に、当該タッチパネルに表示しているものと同様の映像データを遠隔制御装置120に送信する。
【0025】
<移動通信端末113及び遠隔制御装置120に表示される映像について>
図3及び図4は、移動通信端末113のタッチパネル、並びに、遠隔制御装置120のディスプレイ装置123に表示される映像の具体例を示す図である。
図3及び図4には、本発明の説明に必要な要素に限って描いているが、当然ながら、実際には、移動通信端末113のカメラによって撮影された物体や、不図示の情報などが含まれ得る。
なお、本実施形態において、遠隔制御装置120のディスプレイ装置123に表示される映像と、移動通信端末113のタッチパネルに表示される映像は同じであることを前提として説明するが、必ずしもこの態様に限らない。例えば、ディスプレイ装置123には、後述する拡張表示がなされた映像が表示されるが、移動通信端末113のタッチパネルには拡張表示がなされない映像が表示される態様によって、本発明が実施されてもよい。
【0026】
図3(a)は、管理支援システム100に関するアプリケーションソフトを起動した直後において、移動通信端末113及びディスプレイ装置123に表示される映像の一具体例である。
当該映像の中央部には、巡回ロボットの遠隔操作をユーザに要求する表示がなされる。より具体的には、マーカの撮影をユーザに要求する文字情報と、そのマーカを検出する為に必要な遠隔操作を説明する文字情報と、が移動通信端末113及びディスプレイ装置123に表示される。
また、当該映像の上部には、アプリケーションソフトを停止させるためのボタンB1が表示される。
更に、当該映像の右下部には、ボタンB2が表示される。ボタンB2の機能については、図3(b)を用いて後述する。
【0027】
図3(b)は、映像空間と図面空間を照合するタイミングにおいて、移動通信端末113及びディスプレイ装置123に表示される映像の一具体例である。
当該映像の中央部には、移動通信端末113のカメラで撮影した映像空間において、マーカを検出可能な範囲を示す枠表示FRが表示される。
図3(b)に図示する状態では、構内に配置されている特定のマーカMKが、枠表示FRの範囲に収まっている。この状態において、ユーザがボタンB2を操作すると、移動通信端末113は、映像上で特定のマーカMKを認識し、記憶装置122に記憶されている図面データを参照し、認識したマーカMKに相当する図面マーカを検索する。
【0028】
図3(c)は、図3(a)及び図3(b)で説明した操作を繰り返して、巡回ロボット110が所定数を検出したタイミングにおいて、移動通信端末113及びディスプレイ装置123に表示される映像の一具体例である。
当該映像の中央部には、ユーザに表示モードの選択を促す表示と、各表示モードに係るボタン(建物全体表示モードに係るボタンB3、配筋表示モードに係るボタンB4、配管表示モードに係るボタンB5)が表示される。
建物全体表示モードは、移動通信端末113のカメラで撮影した映像に対して、図面データが表す三次元の建物(管理支援システム100の管理対象である建築物又は土木構造物)の全体を重畳して拡張現実表示をする。
配筋表示モードは、移動通信端末113のカメラで撮影した映像に対して、図面データが表す三次元の建物の配筋のみを重畳して拡張現実表示をする。
配管表示モードは、移動通信端末113のカメラで撮影した映像に対して、図面データが表す三次元の建物の配管のみを重畳して拡張現実表示をする。
【0029】
なお、本実施形態における所定数は3として以下説明するが、3以下の自然数によって本発明を実施してもよい。
ただし、所定数は3を超える数である必然性はない。巡回ロボット110が自己位置を推定する基準点は3点(3つのマーカ)で十分だからである。
【0030】
図3(d)は、ユーザが表示モードを選択したタイミングにおいて、移動通信端末113及びディスプレイ装置123に表示される映像の一具体例である。
当該映像には、移動通信端末113によって撮影された映像に含まれる特定のマーカMKが表示されると共に、そのマーカMKに相当する図面マーカDMが、そのマーカMKに重畳するように表示されることによって拡張現実映像として表現される。
【0031】
図4(a)は、巡回ロボット110が所定数のマーカを検出したタイミングより前(すなわち、図3(c)に図示したタイミングより前)における移動通信端末113及びディスプレイ装置123の表示の一具体例である。
図4(b)は、巡回ロボット110が所定数を検出し、表示モードを選択したタイミングより後(すなわち、図3(d)に図示したタイミングより後)における移動通信端末113及びディスプレイ装置123の表示の一具体例である。
【0032】
巡回ロボット110は、図4(a)に示すように、構内を巡回している最中に、カメラによって撮影されている映像からマーカMKが検出されると、上記のような処理を行って、その映像空間と、記憶装置122に記憶されている図面データによって表される図面空間と、の照合を行う。
そして、巡回ロボット110は、図4(b)に示すように、映像空間と図面空間とを照合した結果として、映像に映っているマーカMKに相当する図面マーカDMが、マーカMKに重畳するような位置合わせを行い、図面マーカDMの近くに配置されている構造物OB(図面空間には存在し、実空間には存在しないもの)を拡張現実で表した映像をタッチパネル上に表示する。
このような表示出力を行うことにより、実空間に設計上の構造物が完成した状態を、ユーザに体感させることができる。
【0033】
以上に説明したように、巡回ロボット110は、映像空間上のマーカと図面空間上の図面マーカとを照合しながら移動することができるので、映像空間と図面空間の照合精度を一定程度に保ちながら管理対象となる建築物又は土木構造物の構内を巡回することができる。
【0034】
<巡回ロボット110の巡回によって発見されたマーカの扱いについて>
次に、移動通信端末113の巡回によって発見されたマーカの扱いについて、図5のフローチャートを用いて説明する。
図5は、図面マーカに相当するマーカが所定数(本実施形態では3つ)以上登録されている状態から巡回ロボット110が巡回を始める場合のフローチャートである。
【0035】
なお、上述したように、図面マーカに相当するマーカが2つ以下である状態(当該マーカが0個である状態を含む)であっても、巡回ロボット110(移動通信端末113)は、巡回中に検出したマーカに相当する図面マーカを、図面データを更新して随時追加することができるので、巡回ロボット110による巡回は可能である。
【0036】
巡回ロボット110が最初のマーカを発見したものとする。
このとき、新たに発見したマーカが、図面データに未登録のマーカであるとき、すなわち、巡回の事前に登録したマーカとは別のマーカを発見したとき、巡回ロボット110は、発見したマーカの実空間上の位置を記録するのみで、記憶装置122の図面データを更新しない(ステップS101)。何故ならば、巡回ロボット110は、図面空間上における自己位置を推定するに足る情報がこの時点で十分に揃っておらず、ステップS101で発見したマーカを図面データに登録することができないからである。
また、新たに発見したマーカが、図面データに登録済みのマーカであるとき、すなわち、巡回の事前に登録したマーカと同じであるとき、巡回ロボット110は、記憶装置122に記憶されている図面データを更新せず、発見したマーカに基づく自己位置の推定もしない(ステップS102)。
【0037】
続いて、巡回ロボット110が、ステップS102においてマーカを発見した位置から移動した後に、新たにマーカを発見したものとする。
このとき、新たに発見したマーカが、図面データに未登録のマーカであるとき、すなわち、巡回の事前に登録したマーカとは別のマーカであって、且つ、ステップS102で発見したマーカとは別のマーカを発見したとき、巡回ロボット110は、発見したマーカの実空間上の位置を記録するのみで、記憶装置122の図面データを更新しない(ステップS103)。ステップS101で説明した理由と同様である。
或いは、新たに発見したマーカが、図面データに登録済みのマーカであるとき、すなわち、巡回の事前に登録したマーカと同じであって、且つ、ステップS102で発見したマーカとは別のマーカであるとき、巡回ロボット110は、記憶装置122に記憶されている図面データを更新せず、発見したマーカに基づく自己位置の推定もしない(ステップS104)。
【0038】
続いて、巡回ロボット110が、ステップS104においてマーカを発見した位置から移動した後に、新たにマーカを発見したものとする。
このとき、新たに発見したマーカが、図面データに未登録のマーカであるとき、すなわち、巡回の事前に登録したマーカとは別のマーカであって、且つ、ステップS102及びステップS104で発見したマーカとは別のマーカを発見したとき、巡回ロボット110は、発見したマーカの実空間上の位置を記録するのみで、記憶装置122の図面データを更新しない(ステップS105)。ステップS101で説明した理由と同様である。
或いは、新たに発見したマーカが、図面データに登録済みのマーカであるとき、すなわち、巡回の事前に登録したマーカと同じであって、且つ、ステップS102及びステップS104で発見したマーカとは別のマーカであるとき(ステップS106)、巡回ロボット110は、記憶装置122に記憶されている図面データを更新することなく、それまでに登録したマーカに基づいて自己位置を推定する(ステップS107)。
【0039】
続いて、巡回ロボット110が、ステップS106においてマーカを発見した位置から移動した後に、新たにマーカを発見したものとする。
このとき、新たに発見したマーカが、図面データに登録済みのマーカであるとき(ステップS108)、巡回ロボット110は、記憶装置122に記憶されている図面データを更新することなく、それまでに登録したマーカ(第一の図面マーカに相当するマーカ)に基づいて自己位置を推定する(ステップS110)。
或いは、新たに発見したマーカが、図面データに未登録のマーカであるとき、巡回ロボット110は、発見したマーカの位置に相当する図面マーカ(第二の図面マーカ)を登録するように、記憶装置122に記憶されている図面データを更新する(ステップS109)。
なお、ステップS109において発見したマーカの位置は、ステップS107において求められた巡回ロボット110の自己位置を基準として、当該基準から巡回ロボット110が移動した方向と距離などを用いて算出される。更に、巡回ロボット110は、既に登録されているマーカ(新たに登録した第二の図面マーカに相当するマーカを含む)に基づいて自己位置を推定する(ステップS110)。
上述したステップS110の処理が行われる場合は、検出したマーカが所定数に達する場合に該当する。従って、この場合、遠隔制御装置120は、ディスプレイ装置123に拡張現実映像を表示する。
【0040】
なお、上述したステップS110の処理を行った後に、巡回ロボット110が新たにマーカを発見した場合については、再び、ステップS108又はステップS109の処理に戻る。
【0041】
以上、説明したように、巡回ロボット110は、管理対象である建築物又は土木構造物の構内を巡回するとき、巡回中に発見したマーカを処理する。
発見したマーカが登録済みである場合、巡回ロボット110は、少なくとも発見したマーカを用いて(登録済みのマーカを発見している場合には、発見したマーカも加味して)自己位置を推定する。
発見したマーカが未登録である場合、巡回ロボット110は、記憶装置122に記憶されている図面データを更新して当該マーカを登録し、それ以降の処理において登録済みマーカとして扱う。
【0042】
上記のような特徴を有しているので、管理支援システム100は、状況に応じて、記憶装置122に記憶されている図面データを適切に更新することができる。また、管理支援システム100は、実空間に配置されるマーカを図面データに登録する処理を、巡回ロボット110の巡回に付随して自動的に行うので、作業員WKの作業コストの低減を図ることができる。
【0043】
<変形例>
以上に説明した本発明の実施形態は、本発明の目的と達成する範囲において、種々の変形が可能である。
以下、未だ説明していない本発明の変形例について、言及する。
【0044】
図1に図示したシステム構成に含まれる構成要素のうち、一部を省いてもよく、一部を他の構成要素で代替してもよく、図示していない構成要素を追加してもよい。例えば、上記の実施形態では、移動通信端末113に搭載されている不図示の加速度センサを用いて巡回ロボット110の自己位置を求める旨を説明したが、加速度センサが移動通信端末113に搭載されていない態様(加速度センサがセンサ111として巡回ロボット110に搭載されている態様)によって、本発明が実施されてもよい。また、巡回ロボット110に搭載されている各種センサ(移動通信端末113の加速度センサを含む)は、巡回ロボット110の自己位置を推定する以外の処理に用いられてもよい。
また、図1に図示したシステム構成において、一つの構成要素として図示したものを、複数の構成要素によって実現としてもよい。例えば、複数の巡回ロボット110が、遠隔制御装置120に対して通信接続してもよく、記憶装置122に記憶されている同一の図面データを参照できてもよい。
【0045】
図1に図示したシステム構成において、巡回ロボット110及び遠隔制御装置120のうち一方の構成として図示したものを他方の構成としてもよい。例えば、図面データを格納する記憶装置122に相当する構成は、移動通信端末113の中に内蔵されるROM等の記憶手段に代えて、本発明を実施してもよい。
【0046】
本実施形態は以下の技術思想を包含する。
(1)複数箇所のそれぞれにマーカが設置されている建築物又は土木構造物の管理を支援する建築物又は土木構造物の管理支援システムであって、前記建築物又は前記土木構造物の図面データを記憶している記憶装置と、カメラと加速度センサを搭載しており、前記建築物又は前記土木構造物の構内を走行して巡回する巡回ロボットと、前記巡回ロボットを遠隔制御する遠隔制御装置と、を備え、前記図面データには、前記移動通信端末が前記建築物又は前記土木構造物の構内を移動する前に、前記建築物又は前記土木構造物に配置されているマーカの少なくとも一部について、当該マーカに相当する図面マーカの位置情報が登録されており、前記遠隔制御装置は、ユーザの操作を受け付ける操作受付手段と、前記カメラが撮影した映像を表示する表示手段と、を有しており、前記巡回ロボットは、前記記憶装置に記憶されている前記図面データと、前記カメラが撮影した映像と、前記加速度センサが検知した自機の運動情報と、に基づいて自己位置を認識して走行可能であり、前記カメラが撮影した映像に基づいて、自機の周辺に存在するマーカを検出可能であり、前記巡回ロボットが所定数のマーカを検出するまで、前記遠隔制御装置は、前記カメラが撮影した映像と共に、前記巡回ロボットの遠隔操作をユーザに要求する表示を前記表示手段に表示し、前記巡回ロボットが前記所定数のマーカを検出した後に、前記遠隔制御装置は、前記カメラによって撮影された映像に対して、前記図面データによって表される構造物を拡張現実で表した拡張現実映像を前記表示手段に表示する、ことを特徴とする建築物又は土木構造物の管理支援システム。
(2)前記遠隔制御装置が、前記図面データに登録されている第一の図面マーカを指定する遠隔操作を受け付けた場合、前記巡回ロボットは、前記第一の図面マーカの位置情報に基づいて自己位置から前記第一の図面マーカに相当するマーカまでの移動経路を自律的に求めて走行する、(1)に記載の建築物又は土木構造物の管理支援システム。
(3)前記巡回ロボットは、自律的に求めた前記第一の図面マーカに相当するマーカまでの移動経路を走行して検出したマーカの位置情報が、前記図面データに登録されている前記第一の図面マーカの位置情報と相違する場合、前記図面データを更新して前記第一の図面マーカの位置情報を修正させる、(2)に記載の建築物又は土木構造物の管理支援システム。
(4)前記巡回ロボットは、走行中に検出したマーカに相当する前記図面マーカが、前記図面データに登録されていない場合、前記図面データを更新して、検出したマーカに相当する第二の図面マーカの位置情報を登録させる、(1)から(3)のいずれか一つに記載の建築物又は土木構造物の管理支援システム。
(5)前記第二の図面マーカの登録の元になったマーカを計数して前記所定数に達する場合、前記遠隔制御装置は、前記拡張現実映像を前記表示手段に表示する、(4)に記載の建築物又は土木構造物の管理支援システム。
【符号の説明】
【0047】
100 管理支援システム
110 巡回ロボット
111 センサ
112 レーザースキャナ
113 移動通信端末
120 遠隔制御装置
121 管理サーバ
122 記憶装置
123 ディスプレイ装置
WK 作業員
MK マーカ
DM 図面マーカ
OB 構造物
図1
図2
図3
図4
図5