(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128474
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】染毛料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/362 20060101AFI20240913BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20240913BHJP
A61Q 5/06 20060101ALI20240913BHJP
A61K 8/36 20060101ALI20240913BHJP
A61K 8/46 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
A61K8/362
A61K8/34
A61Q5/06
A61K8/36
A61K8/46
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037462
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112335
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英介
(74)【代理人】
【識別番号】100101144
【弁理士】
【氏名又は名称】神田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100101694
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 明茂
(74)【代理人】
【識別番号】100124774
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 信幸
(72)【発明者】
【氏名】山崎 祐一
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB051
4C083AC062
4C083AC101
4C083AC102
4C083AC291
4C083AC292
4C083AC302
4C083AC692
4C083AC732
4C083AC792
4C083AD092
4C083BB53
4C083CC36
4C083DD23
4C083DD27
4C083EE06
4C083EE07
4C083EE10
4C083EE26
4C083FF05
(57)【要約】
【課題】一時着色料としての使用を繰り返すことにより徐々に毛髪が染色していく累積染毛性のヘアマニキュアタイプの染毛料であって、一時着色性、累積染毛性、低刺激性及び乾燥性を高度に両立した染毛料を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明の染毛料は、水溶性染料の少なくとも1種0.1~3質量%と、染毛助剤3~20質量%と、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロパノール、イソブタノールから選ばれる1種又は2種以上の低級アルコール20~70質量%と、水5~70質量%と、下記式(I)で表される酸の電離度に関するパラメータが0.15以下となる酸を1種以上含有することを特徴とする。
式(I):水に酸を10mmol/Lを添加した場合の酸のn段階目の電離度(酸1種);(α1+・・+αn)/n
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性染料の少なくとも1種0.1~3質量%と、染毛助剤3~20質量%と、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロパノール、イソブタノールから選ばれる1種又は2種以上の低級アルコール20~70質量%と、水5~70質量%と、下記式(I)で表される酸の電離度に関するパラメータが0.15以下となる酸を1種以上含有することを特徴とする染毛料。
式(I):水に酸を10mmol/Lを添加した場合の酸のn段階目の電離度(酸1種);(α1+・・+αn)/n
【請求項2】
前記酸がコハク酸単独、またはコハク酸と上記式(I)で表される酸の電離度に関するパラメータが0.15以下となる酸を1種以上含有することを特徴とする請求項1記載の染毛料。
【請求項3】
前記水溶性染料が酸性染料であることを特徴とする請求項1又は2に記載の染毛料。
【請求項4】
前記水又は低級アルコールに溶解する樹脂を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の染毛料。
【請求項5】
染毛料のpHが3~5であることを特徴とする請求項1又は2に記載の染毛料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一時着色料としての使用を繰り返すことにより徐々に毛髪が染色していく累積染毛性のヘアマニキュアタイプの染毛料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、一般に汎用される、永久染毛料(酸化染毛料)や半永久染毛料(酸性染料)は、使用時の染毛操作が複雑で、且つ面倒であり、周囲や衣服、被施術者の皮膚が染色されてしまうなどの大きな欠点を有している。
そのため、一般的には、理美容院で施術してもらうか、若しくは汚れても直ぐに洗い流せるように入浴時に自己施術しなくてならないなど、使用者に過大な負担を強いるものであった。
【0003】
これらの負担を軽減し、1回で染まる量は少なくても簡便に繰り返し使用することで累積的に染毛できるヘアマニキュアとして、例えば、少なくとも染毛料を収容する貯留部を備え、塗布体が毛細管力を備える芯体である塗布具に収容される染毛料であって、水溶性染料(黒色401号を除く)の少なくとも1種0.1~3質量%と、両性アクリル樹脂0.03~2.4質量%と、染毛助剤2~20質量%と、低級アルコール20~80質量%とを含有し、粘度を2.6~15mPa・sに、かつ、pHを2~5に調整してなることを特徴とする染毛料(本願出願人の特許文献1参照)を提案している。
この染毛料は、従来にない優れた一時着色性、累積染毛性、乾燥性等を有するものであるが、近年、市場では着色性、累積染毛性、乾燥性の機能を損なうこと無く、更に使用者の肌への負担を低減した染毛料が求められている。
【0004】
一方、酸性染料や、特定の酸などを用いた染毛料として、例えば、
(1)(a)成分としてシクロヘキシルグリセリルエーテル、n-ヘキシルグリセリルエーテルなどの一般式(1)で表される化合物、(b)成分としてベンジルアルコール、ベンジルグリコール又はこれらの混合物、(c)成分として酸性染料、を含む染毛剤組成物であって、染毛剤組成物中の(a)成分と(b)成分の含有量の質量比が10:90~90:10であり、クエン酸等のpH調整剤でpHを2.0~4.0としてなる染毛剤組成物(特許文献2参照)、
(2)(A1)コハク酸、シュウ酸、フマル酸、又はフタル酸などの一般式(1)に示す特定のジカルボン酸、(A2)リン酸、(B)ベンジルアルコールなどの一般式(2)に示す芳香族アルコール又はそのエチレングリコール若しくはポリエチレングリコール付加物を含有する染毛料組成物(特許文献3参照)、
(3)ジカルボン酸とチオール類とからなる複合体を有効成分とする毛髪処理用組成物であり、前記ジカルボン酸が、ムコン酸、アジピン酸、オクテン二酸及び化粧品として許容可能なそれらの塩からなる群から選ばれる一又は複数であり、前記チオール類が、アミノチオール類、及び化粧品として許容可能なそれらの塩からなる群から選ばれる一又は複数である、毛髪処理用組成物(特許文献4参照)が知られている。
【0005】
しかしながら、上記特許文献2の染毛剤組成物は、肌の染まりの抑制を目的とするものであり、使用する酸は染毛剤組成物のpHを2.0~4.0の範囲に調整するための酸であり、酸の限定はなく、クエン酸、グリコール酸、レブリン酸などであり、一時着色性、累積染毛性、低刺激性及び乾燥性を高度に両立した染毛料を提供するものでなく、本発明とは技術思想(構成及びその作用効果)が相違するものである。
上記特許文献3の染毛料組成物は、染毛力をより向上させるために、電離度の高いリン酸を必須成分として用いるものであり、一時着色性、累積染毛性、低刺激性及び乾燥性を高度に両立した染毛料を提供するものでなく、本発明とは技術思想(構成及びその作用効果)が相違するものである。
上記特許文献4の毛髪処理用組成物は、ジカルボン酸とチオール類とからなる複合体に用いるジカルボン酸として、アジピン酸、ムコン酸オクテン二酸を用いるものであり、しかも、縮毛矯正、染色及び脱色時の髪質改善、ウェーブパーマ及びストレートパーマ時の髪質改善などを発明の目的等とするものであり、本発明とは技術思想(構成及びその作用効果)が相違するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007-302677号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献2】特開2022-134097号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献3】特開2022-139651号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献4】特開2022-159183号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記した従来技術の課題、現状等に鑑み、これを解消するものであり、更に使用者の肌への負担を低減した、一時着色性、累積染毛性、低刺激性及び乾燥性を高度に両立した染毛料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記従来の課題等に鑑み、鋭意検討した結果、各所定量となる水溶性染料の少なくとも1種、染毛助剤、所定の低級アルコール、水及び特定物性の酸1種以上とを含有することにより、上記目的の染毛料を得ることに成功し、本発明を完成するに至ったのである。
【0009】
すなわち、本発明の染毛料は、水溶性染料の少なくとも1種0.1~3質量%と、染毛助剤3~20質量%と、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロパノール、イソブタノールから選ばれる1種又は2種以上の低級アルコール20~70質量%と、水5~70質量%と、下記式(I)で表される酸の電離度に関するパラメータが0.15以下となる酸を1種以上含有することを特徴とする。
式(I):水に酸を10mmol/Lを添加した場合の酸のn段階目の電離度(酸1種);(α1+・・+αn)/n
前記酸がコハク酸単独、またはコハク酸と上記式(I)で表される酸の電離度に関するパラメータが0.15以下となる酸を1種以上含有することが好ましい。
前記水溶性染料が酸性染料であることが好ましい。
前記水又は低級アルコールに溶解する樹脂を含有することが好ましい。
染毛料のpHが3~5であることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、更に使用者の肌への負担を低減し、一時着色性、累積染毛性、低刺激性及び乾燥性を高度に両立した染毛料が提供される。
本発明の目的及び効果は、特に請求項において指摘される構成要素及び組み合わせを用いることによって認識され且つ得られるものである。上述の一般的な説明及び後述の詳細な説明の両方は、例示的及び説明的なものであり、特許請求の範囲に記載されている本発明を制限するものではない。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施形態について詳しく説明する。但し、本発明の技術的範囲は下記で詳述するそれぞれの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。また、本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識(設計事項、自明事項を含む)に基づいて実施することができる。
【0012】
本発明の染毛料は、水溶性染料の少なくとも1種0.1~3質量%と、染毛助剤3~20質量%と、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロパノール、イソブタノールから選ばれる1種又は2種以上の低級アルコール20~70質量%と、水5~70質量%と、下記式(I)で表される酸の電離度に関するパラメータが0.15以下となる酸を1種以上含有することを特徴とするものである。
式(I):水に酸を10mmol/Lを添加した場合の酸のn段階目の電離度(酸1種);(α1+・・+αn)/n
【0013】
本発明で用いる水溶性染料としては、通常一時染毛料や半永久染毛料に用いられている水溶性のものであれば特に限定されない。好ましくは、優れた染毛性の点から、酸性染料、直接染料、HC染料の使用が望ましい。
具体的には、人体に対して有害な作用を示さない医薬品、医薬部外品及び化粧料の着色に使用することが許可されている「医薬品等に使用することができるタール色素を定める省令(昭和四十一年厚生省令第三十号)(令和元年厚生労働省令第二十号による改正)」により定められたものの中から選ばれる染料や、HC染料の中から選ばれる1種又は2種以上の混合物として用いることができる。
【0014】
酸性染料の具体例としては、赤色3号(エリスロシン)、赤色102号(ニューコクシン)、橙色205号(オレンジII)、黄色4号(タートラジン)、黄色402号(ポーラエロー5G)、黄色403号の(1)(ナフトールエローS)、緑色3号(ファーストグリーンFCF)、緑色204号(ピラニンコンク)、青色1号(ブリリアントブルーFCF)、青色202号(パテントブルーNA)、紫色401号(アリズロールパープル)、褐色201号(リゾルシンブラウン)、黒色401号(ナフトールブルーブラック)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
直接染料の具体例としては、Direct Black51、Direct Red23、Direct Red80、Direct Violet48、Direct Yellow12、Direct Red81等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
上記HC染料としては、HC青2、HC青5、HC青6、HC青9、HC青10、HC青11、HC青12、HC青13、HC青16、HC橙(オレンジ)1、HC橙2、HC橙3、HC赤1、HC赤3、HC赤7、HC赤10、HC赤11、HC赤13、HC赤14、HC紫1、HC紫2、HC黄2、HC黄4、HC黄5、HC黄6、HC黄9、HC黄10、HC黄11、HC黄12、HC黄13、HC黄14、HC黄等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0015】
これらの水溶性染料の含有量は、染毛料全量に対して、0.1~3質量%(以下、「質量%」を単に「%」という)とすることが必要であり、好ましくは、0.1~1%とすることが望ましい。
この水溶性染料の含有量が0.1%未満であると、染毛効果が十分に発揮されず、また、3%を越えると、皮膚等他への汚染が生じやすくなり、好ましくない。
【0016】
本発明に用いる染毛助剤としては、例えば、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール、フェノキシエタノール、プロピレングリコール、N-メチルピロリドン、グルコン酸ラクトン、レブリン酸、尿素、エチレンカーボネート、N-メチル-2-ピロリドン、α-ケトグルタル酸、γ-ブチロラクトン、プロピオンアミド、n-酢酸アミド等、一般的な酸性染毛料(半永久染毛料)で使用されるものが1種又は2種以上を混合して用いられるが、これらのうち、染毛効果や処方系の安定性より、ベンジルアルコールやフェニルエチルアルコールの使用が好ましい。
また、これらの染毛助剤の含有量は、染毛料全量に対して、3~20%とすることが必要であり、好ましくは、5~15%とすることが望ましい。
この染毛助剤の含有量が3%未満であると、染毛効果が十分に発揮されず、また、20%を越えると、乾燥性が低下し、好ましくない。
【0017】
本発明に用いる低級アルコールとしては、例えば、エチルアルコール(エタノール)、プロパノール、ブタノール、イソプロパノール、イソブタノール等が1種又は2種以上が用いられるが、安全性、乾燥性、匂い等からエチルアルコールが望ましい。
上記低級アルコールの含有量は、染毛料全量に対して、20~70%とすることが必要であり、好ましくは、40~70%とすることが望ましい。
これらの低級アルコールの含有量が20%未満であると、乾燥性が低下し、また、70%を越えると、染毛効果が十分に発揮されないこととなり、好ましくない。
【0018】
本発明に用いる酸は、下記式(I)で表される酸の電離度に関するパラメータが0.15以下となる酸を1種以上を用いるものである。
式(I):水に酸を10mmol/Lを添加した場合の酸のn段階目の電離度(酸1種);(α1+・・+αn)/n
本発明(後述する実施例等を含む)において、上記電離度特性の酸は、中和滴定により求めた酸解離定数(pKa)より算出した値である。すなわち、中和滴定により求めた、pKaから以下の式を用いて、電離定数kaを求め、電離度αを求めた。酸として、コハク酸、乳酸、クエン酸、酢酸、リン酸について電離度αを求めた。
ka=10〔平方根:ルート〕(-pKa)、α=(Ka/c)〔平方根:ルート〕(0.5=1/2)(cの単位は、mol/Lのため値としては0.01を採用)
上記各酸の電離度に関するパラメータ(算出値)は、下記表1のとおりとなる。
【0019】
【0020】
用いることができる酸は、上記式(I)で表される酸の電離度に関するパラメータが0.15以下となるものであれば各種の酸を用いることができ、好ましくは、コハク酸単独(パラメータ:0.05)、乳酸単独(パラメータ:0.11)、クエン酸単独(パラメータ:0.11)、酢酸単独(パラメータ:0.04)、またはコハク酸と式(I)で表される酸の電離度に関するパラメータが0.15以下となる酸を1種以上含有する組み合わせ、例えば、コハク酸と乳酸との混合物、コハク酸とクエン酸との混合物、コハク酸と酢酸との混合物、乳酸とクエン酸との混合物などが挙げられる。
なお、用いることができる酸は、上記式(I)で表される酸の電離度に関するパラメータが0.15以下となる酸の1種以上の組み合わせであればよいので、上記特性の各酸単独や、コハク酸と式(I)で表される酸の電離度に関するパラメータが0.15以下となる酸を1種以上含有する組み合わせに限定されず、例えば、コハク酸と乳酸とクエン酸との3種混合物、コハク酸と酢酸と乳酸又はクエン酸との3種混合物などであってもよいものである。
【0021】
本発明において、上記電離度特性の酸に限定したのは、この電離度特性の酸を用いた染毛料であると、本発明者の染毛料の配合特性、その評価の分析(使用者の肌への負担、一時着色性、累積染毛性、乾燥性などの評価)等によれば、一時着色性、累積染毛性及び乾燥性の機能を損なうこと無く、使用者の肌(頭皮)への負担が著しく低減した染毛料が得られることが実証等できたことにより、限定したものであり、上記酸の電離度の関するパラメータが0.15超過のものでは、例えば、リン酸(パラメータ:0.30)、リン酸(パラメータ:0.30)とシュウ酸(パラメータ:1.40)の混合物などでは、本発明の効果を発揮できないものである。
これらの上記電離度特性の酸の(合計)含有量は、染毛性を持たせる点、酸の溶解性、使用者の肌(頭皮)への負担を低減の観点から、染毛料全量に対して、好ましくは、0.5~10%、好ましくは、1~7%とすることが望ましい。
上記電離度特性の酸の含有量が0.5%以上とすることにより、染毛性を高めることができ、一方、10%以下とすることにより、使用者の肌(頭皮)への負担を低減でき、また、酸の溶解性を上げることができる。
【0022】
本発明における染毛料の残部は、水で調整され、例えば、精製水、イオン交換水、純水、蒸留水、超純水等を使用でき、その含有量としては、染毛料全量に対して、5~70%とすることが望ましく、更に好ましくは、5~50%、特に、10~35%とすることが望ましい。
この水の含有量が5%未満であると、頭髪を充分に膨潤させることができず、染毛効果が低下することとなり、また、70%を越えると、乾燥性が低下し、好ましくない。
【0023】
本発明の染毛料において、好ましくは、被膜形成樹脂を含有することが好ましい。
用いることができる被膜形成樹脂は、水または低級アルコールに溶解するものであれば特に限定されず、例えば、ノニオン性モノマー単位及び/又はアニオン性モノマー単位からなるポリマーなどが挙げられる。
ノニオン性モノマーとしては、例えば、スチレン系の芳香族炭化水素、メタクリル酸アルキル系エステル等が挙げられるが、これに限定されるものではない。アニオン系モノマーとしては、例えば、メタクリル酸、アクリル酸、マレイン酸等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、耐水性や風合いを向上させるために、ポリシロキサン単位(例えば、ポリジメチルシロキサン)とのブロック共重合体であっても良い。
好ましくは、ポリジメチルシロキサンとメタクリル酸及び/又はメタクリル酸と炭素数6以下の脂肪族アルコールとのエステルとの共重合体などのアルコール可溶性のシリコーン系樹脂、例えば、アクリレーツジメチコンコポリマーなどが挙げられる。
これらの樹脂は、乾燥性を高める点、質感を損なわない点から、染毛料全量に対して、(固形分量)0.5~50%とすることが望ましく、更に好ましくは、1~30%とすることが望ましい。
【0024】
なお、本発明の染毛料は、本発明の効果や、系の安定性を損なわない範囲でその他の任意成分を適宜含有することができる。例えば、各種界面活性剤、防腐剤、酸化防止剤、還元防止剤、キレート剤、紫外線吸収剤、粘度調整剤、油性成分、シリコーン誘導体、香料、動植物抽出物、公知のポリマー成分等が挙げられる。
【0025】
本発明の染毛料のpHは、2~5に調整することが好ましく、更に好ましくは、3~5、特に、3~4とすることが望ましい。
この染毛料のpHが2未満であると、皮膚への刺激がある場合があり、また、pHが5を越えると、染毛効果が低下することとなり、好ましくない。
本発明において、pHの調整は、上記電離度特性の酸、又はその塩、場合によってはアルカリを用いて行うことができる。
【0026】
本発明における染毛料は、上記水溶性染料の少なくとも1種0.1~3質量%と、染毛助剤3~20質量%と、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロパノール、イソブタノールから選ばれる1種又は2種以上の低級アルコール20~70質量%と、水5~70質量%と、上記式(I)で表される酸の電離度に関するパラメータが0.15以下となる酸を1種以上などの各成分を上記各含有量の範囲で配合し均一に撹拌・混合することにより、製造することができる。
【0027】
このように構成される本発明の染毛料では、更に使用者の肌への負担を低減し、一時着色性、累積染毛性、低刺激性及び乾燥性を高度に両立した染毛料が得られることとなる。
本発明の染毛料は、黒髪用一時着色料、白髪用一時着色料などとして好適に用いることができるものである。
【0028】
本発明の染毛料を使用に供するにあたっては、毛髪用塗布具を用いるものであるが、用いる毛髪用塗布具の形状、構造等は特に限定されるものではない。
用いることができる毛髪用塗布具としては、好ましくは、毛髪への塗布性、塗布部位に含ませる液量のコントロール性、衣服、皮膚、家具などの汚損の発生も少ない点、また、使用性の点から、内部に本発明の染毛料の貯留部を有する塗布具本体部と、該塗布具本体部の先端部に設けた塗布部とを備え、上記染毛料貯留部より塗布部に本発明の染毛料を流出させて毛髪に染毛料を塗布する毛髪用塗布具が挙げられる。
例えば、本願出願人の特開2007-302777号公報の
図1~
図3や
図4の各毛髪用塗布具、特開2007-302677号公報の
図1~
図5の毛髪用塗布具を利用することができる。これらの毛髪用塗布具を用いることにより、本発明の染毛料を使用する際には、使用の際の頭皮への汚染を極力回避することができると共に、頭皮近辺の毛髪(生え際)へ簡単に染毛料を塗布することができ、本発明の染毛料の機能・効果等を充分に生かして、毛髪に最適量の染毛料を塗布できるものとなる。
【実施例0029】
次に、実施例及び比較例により、本発明を更に詳述するが、本発明は下記実施例により制限されるものではない。
【0030】
〔実施例1~14及び比較例1~8〕
下記表2に示す配合組成にて汎用のプロペラミキサーにより、均一に攪拌・混合して、各染毛料を得た。
上記で得られた実施例1~14及び比較例1~8の各染毛料について、下記方法により、pH値について測定した。次いで、上記で得られた各染毛料10mlを、下記構成の毛髪用塗布具に充填し、下記方法により、一時着色性、累積染毛性、刺激性、塗布後の乾燥性の評価を行った。
これらの結果を下記表2に示す。
【0031】
(pHの測定方法)
pH(25℃)をガラス電極pH計により常法にて測定した。
【0032】
(毛髪用塗布具の構成)
本願出願人の特開2007-302777号公報の
図1~
図3に記載の毛髪塗布具を用いた。
【0033】
(一時着色性の評価方法)
1gの毛髪毛束(100%白髪)に、得られた各染毛料組成物0.2gを塗布し、乾燥後白髪が隠ぺいされたか否かを下記評価基準で評価した。
評価基準:
◎:白髪が認識出来ないレベルで隠ぺいされている。
○:染毛ムラはあるが、染毛色にほぼ隠ぺいされている。
△:染毛色に染毛されているが、白髪の存在が確認出来る。
×:殆ど着色しない。
【0034】
〔累積染毛性(累積3回)の評価方法〕
1gの毛髪毛束(100%白髪)に、得られた各染毛料組成物0.2gを塗布・乾燥後、 2回洗髪する作業を3回繰り返した後、毛髪毛束の染毛状態を下記評価基準で評価した。
評価基準:
◎:市販の酸化染毛料(ヘアカラー)と同等。
○:市販の酸化染毛料と比較すると、若干染毛性に劣る。
△:市販の酸化染毛料と比較すると、明らかに染毛性が劣っている。
×:殆ど染まっていない
【0035】
(刺激性の評価方法)
試験者(成人女子)10人が各染毛料組成物を収容した毛髪用塗布具を用いて実際に頭髪に使用した際の刺激性を下記評価基準で評価した。
評価基準:
◎:刺激を感じた人が0人
○:刺激を感じた人が1人
△:刺激を感じた人が2人
×:刺激を感じた人が3人以上
【0036】
(乾燥性の評価方法)
10cm、1gの人毛毛束に染毛料0.2gを泡状にすることなく塗布してから、手で 触れても濡れなくなる時間を評価した。
評価基準:
○:3分以内
△:6分未満
×:6分以上
【0037】
【0038】
上記表2の結果から明らかなように、本発明の範囲となる実施例1~14の染毛料は、本発明の範囲外となる比較例1~8の染毛料に較べて、刺激性を少なく、使用者の肌への負担が低減されており、目的の一時着色性、累積染毛性、低刺激性及び乾燥性を高度に両立した染毛料が得られることが確認された。