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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128510
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】電子部品
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/25 20060101AFI20240913BHJP
   H03H 9/64 20060101ALI20240913BHJP
   H03H 9/72 20060101ALI20240913BHJP
   H03H 9/17 20060101ALI20240913BHJP
   H03H 9/54 20060101ALI20240913BHJP
   H03H 9/70 20060101ALI20240913BHJP
   H01L 23/02 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
H03H9/25 A
H03H9/64 Z
H03H9/72
H03H9/17 F
H03H9/54 Z
H03H9/70
H01L23/02 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037502
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】山内 基
【テーマコード(参考)】
5J097
5J108
【Fターム(参考)】
5J097AA25
5J097BB02
5J097BB11
5J097BB15
5J097EE08
5J097FF04
5J097HA03
5J097HA04
5J097HA07
5J097HA08
5J097JJ04
5J097JJ06
5J097JJ07
5J097KK10
5J108AA07
5J108BB07
5J108BB08
5J108GG03
5J108GG07
5J108KK04
(57)【要約】
【課題】リッドの撓みを低減することが可能な電子部品を提供すること。
【解決手段】弾性波デバイス100は、基板10と、基板10上に設けられる弾性波素子50と、平面視して弾性波素子50を囲んで基板10上に設けられる枠体18と、基板10とで空隙22を挟んで枠体18上に設けられ、空隙22内に弾性波素子50を封止し、金属材料からなり空隙22に露出する第1層32と、絶縁材料または半導体材料からなり第1層32に対して空隙22とは反対側に位置する第2層34と、を含み、第1層32および第2層34の厚さは同じまたは薄い方の厚さが厚い方の厚さの1/10以上であるリッド30とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に設けられる機能素子と、
平面視して前記機能素子を囲んで前記基板上に設けられる枠体と、
前記基板とで空隙を挟んで前記枠体上に設けられ、前記空隙内に前記機能素子を封止し、金属材料からなり前記空隙に露出する第1層と、絶縁材料または半導体材料からなり前記第1層に対して前記空隙とは反対側に位置する第2層と、を含み、前記第1層および前記第2層の厚さは同じまたは薄い方の厚さが厚い方の厚さの1/10以上であるリッドと、を備える電子部品。
【請求項2】
前記第1層のヤング率および前記第2層のヤング率は70GPa以上である、請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記第2層のヤング率は前記第1層のヤング率より大きい、請求項1または2に記載の電子部品。
【請求項4】
前記第2層は前記第1層より厚い、請求項3に記載の電子部品。
【請求項5】
前記第2層は、サファイア、酸化アルミニウム、シリコン、水晶、スピネル、炭化シリコン、DLC、FR4、LTCC、HTCC、ガラス、石英、またはFRPにより形成される、請求項1に記載の電子部品。
【請求項6】
前記第1層は、コバール、42アロイ、ニッケル、ステンレス鋼、銅、洋白、またはジュラルミンにより形成される、請求項5に記載の電子部品。
【請求項7】
前記リッドは、前記第1層と、前記第2層と、前記第1層と前記第2層の間に設けられて前記第1層と前記第2層を接着する接着層と、を含む、請求項5に記載の電子部品。
【請求項8】
前記機能素子は弾性波素子である、請求項1または2に記載の電子部品。
【請求項9】
前記弾性波素子によりフィルタが形成されている、請求項8に記載の電子部品。
【請求項10】
前記フィルタによりマルチプレクサが形成されている、請求項9に記載の電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
基板上にフリップチップ実装されたデバイスチップの周りに封止金属部を設け、デバイスチップに形成された機能素子をデバイスチップと基板との間の空隙に封止することが知られている(例えば特許文献1)。また、基板上に形成された機能素子を囲むように枠体を設け、枠体上にリッドを設けることで、基板とリッドとの間の空隙に機能素子を封止することが知られている(例えば特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-74418号公報
【特許文献2】特開2009-278562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
機能素子で発生した熱をリッドに放熱させる点から、リッドを金属材料により形成することが考えられる。しかしながら、この場合、リッドに圧力が加わると、リッドが撓んでしまうことがある。リッドが撓むと、リッドが機能素子に近づくことで機能素子の特性が劣化してしまうことがある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、リッドの撓みを低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、基板と、前記基板上に設けられる機能素子と、平面視して前記機能素子を囲んで前記基板上に設けられる枠体と、前記基板とで空隙を挟んで前記枠体上に設けられ、前記空隙内に前記機能素子を封止し、金属材料からなり前記空隙に露出する第1層と、絶縁材料または半導体材料からなり前記第1層に対して前記空隙とは反対側に位置する第2層と、を含み、前記第1層および前記第2層の厚さは同じまたは薄い方の厚さが厚い方の厚さの1/10以上であるリッドと、を備える電子部品である。
【0007】
上記構成において、前記第1層のヤング率および前記第2層のヤング率は70GPa以上である構成とすることができる。
【0008】
上記構成において、前記第2層のヤング率は前記第1層のヤング率より大きい構成とすることができる。
【0009】
上記構成において、前記第2層は前記第1層より厚い構成とすることができる。
【0010】
上記構成において、前記第2層は、サファイア、酸化アルミニウム、シリコン、水晶、スピネル、炭化シリコン、DLC、FR4、LTCC、HTCC、ガラス、石英、またはFRPにより形成される構成とすることができる。
【0011】
上記構成において、前記第1層は、コバール、42アロイ、ニッケル、ステンレス鋼、銅、洋白、またはジュラルミンにより形成される構成とすることができる。
【0012】
上記構成において、前記リッドは、前記第1層と、前記第2層と、前記第1層と前記第2層の間に設けられて前記第1層と前記第2層を接着する接着層と、を含む構成とすることができる。
【0013】
上記構成において、前記機能素子は弾性波素子である構成とすることができる。
【0014】
上記構成において、前記弾性波素子によりフィルタが形成されている構成とすることができる。
【0015】
上記構成において、前記フィルタによりマルチプレクサが形成されている構成とすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、リッドの撓みを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、実施例1に係る弾性波デバイスの断面図である。
図2図2(a)は、実施例1に係る弾性波デバイスの平面図、図2(b)は、図2(a)においてリッドを透視した平面図である。
図3図3は、実施例1における弾性波素子の平面図である。
図4図4(a)は、フィルタの回路図、図4(b)はデュプレクサの回路図である。
図5図5(a)から図5(c)は、実施例1に係る弾性波デバイスの製造方法を示す断面図(その1)である。
図6図6(a)から図6(c)は、実施例1に係る弾性波デバイスの製造方法を示す断面図(その2)である。
図7図7(a)は、比較例1に係る弾性波デバイスの断面図、図7(b)は、比較例2に係る弾性波デバイスの断面図である。
図8図8(a)は、比較例1に係る弾性波デバイスにおいて生じる課題を示す断面図、図8(b)は、比較例2に係る弾性波デバイスにおいて生じる課題を示す断面図である。
図9図9は、実施例1に係る弾性波デバイスの効果を示す断面図である。
図10図10(a)および図10(b)は、シミュレーションに用いたモデルの断面図、図10(c)は、平面図である。
図11図11(a)から図11(c)は、シミュレーション結果を示す図である。
図12図12は、実施例1の変形例に係る弾性波デバイスの断面図である。
図13図13は、実施例2に係る弾性波デバイスの断面図である。
図14図14(a)は、実施例3に係る弾性波デバイスの断面図、図14(b)は、実施例3における弾性波素子の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照し、本発明の実施例について、電子部品として弾性波デバイスの場合を例に説明する。
【実施例0019】
図1は、実施例1に係る弾性波デバイスの断面図である。図2(a)は、実施例1に係る弾性波デバイスの平面図、図2(b)は、図2(a)においてリッドを透視した平面図である。図1では、図の明瞭化のために、実施例1に係る弾性波デバイスの断面を模式的に図示している(以下の同様な図においても同じ)。図2(b)では、図の明瞭化のために、枠体18および配線20にハッチングを付している。図1図2(a)、および図2(b)に示すように、実施例1に係る弾性波デバイス100は、基板10の上面に圧電層12が接合されている。
【0020】
基板10は、例えばサファイア基板、アルミナ基板、スピネル基板、石英基板、水晶基板、炭化シリコン基板、またはシリコン基板であり、その厚さは50μm~300μmである。基板10の線膨張係数は圧電層12の線膨張係数より小さい。これにより、弾性波素子50の周波数温度依存性を小さくできる。
【0021】
圧電層12は、例えば単結晶タンタル酸リチウム層または単結晶ニオブ酸リチウム層であり、その厚さは0.5μm~30μmである。圧電層12の厚さは、例えば弾性波素子50が励振する主モードの弾性波(例えば弾性表面波)の波長より小さい。基板10と圧電層12との間に酸化シリコン、酸化アルミニウム、および/または窒化アルミニウム等の絶縁層を設けてもよい。このように、圧電層12は基板10に直接または間接的に接合されている。
【0022】
圧電層12の上面に、1または複数の弾性波素子50が設けられている。図3は、実施例1における弾性波素子50の平面図である。図3に示すように、弾性波素子50は弾性表面波共振子である。圧電層12の上面にIDT(Interdigital Transducer)51と反射器52が設けられている。IDT51は、対向する一対の櫛型電極53を有する。櫛型電極53は、複数の電極指54と、複数の電極指54が接続するバスバー55と、を有する。反射器52は、IDT51の両側に設けられている。複数の電極指54が圧電層12に弾性表面波を励振する。一対の櫛型電極53のうち一方の櫛型電極53の電極指54のピッチがほぼ弾性波の波長λとなる。複数の電極指54のピッチDの2倍がほぼ弾性波の波長λとなる。IDT51および反射器52は、例えばアルミニウム、銅、またはモリブデン等の金属膜により形成される。圧電層12の上面にIDT51および反射器52を覆う保護膜または温度補償膜が設けられていてもよい。櫛型電極53はダミー電極指を有していてもよい。
【0023】
図1図2(a)、および図2(b)に示すように、基板10の下面に端子14が設けられている。端子14は、弾性波素子50を外部と電気的に接続するためのフットパッドである。基板10を貫通するビア配線16が設けられている。弾性波素子50は配線20およびビア配線16を介して端子14に電気的に接続される。端子14、ビア配線16、および配線20は、例えばチタン、銅、アルミニウム、白金、ニッケル、および/または金等を含む金属層である。端子14、ビア配線16、および配線20は、単層の金属層の場合でもよいし、複数層が積層された積層金属層の場合でもよい。
【0024】
基板10の周縁領域には圧電層12は設けられていない。平面視において、圧電層12および弾性波素子50を囲むように基板10上に枠体18が設けられている。枠体18は圧電層12から離れて基板10上に設けられている。枠体18は、例えば銅、コバール、金、アルミニウム、および/またはタングステンを含む金属層である。枠体18は、単層の場合でもよいし、複数層が積層されている場合でもよい。枠体18の高さは例えば15μm~30μm程度であり、幅は例えば10μm~40μm程度である。
【0025】
枠体18上に、基板10との間に空隙22が形成されるようにリッド30が設けられている。弾性波素子50は、枠体18とリッド30により空隙22に封止されている。リッド30は、空隙22に露出する第1層32と、第1層32に対して空隙22とは反対側に位置する第2層34と、を備える。
【0026】
第1層32は金属材料により形成されている。例えば、第1層32は、コバール、42アロイ、またはステンレス鋼等の鉄合金、ニッケル、銅、洋白、またはジュラルミン等のアルミニウム合金により形成されている。コバールは鉄にニッケルとコバルトが配合した合金、42アロイは鉄にニッケルを配合した合金、ステンレス鋼は鉄にクロムが配合した合金である。洋白は、銅と亜鉛とニッケルから構成される合金である。ジュラルミンは、アルミニウムに銅、マグネシウム、マンガンを配合した合金である。金属材料からなる第1層32が空隙22に露出することで、弾性波素子50から発生した熱を第1層32に放熱させることができる。
【0027】
第2層34は絶縁材料または半導体材料により形成されている。例えば、第2層34は、サファイア、アルミナ、スピネル、石英、水晶、炭化シリコン、シリコン、ガラス、DLC(Diamond-Like Carbon)、FR4(Flame Retardant Type 4)、LTCC(Low Temperature Co-Fired Ceramics)、HTCC(High Temperature Co-Fired Ceramics)、またはFRP(Fiber Reinforced Plastics)により形成されている。サファイアは単結晶のAlであり、アルミナは多結晶のAl基板である。スピネルは単結晶または多結晶のMgAlである。石英はアモルファスSiOであり、水晶は単結晶SiOである。
【0028】
表1は、第1層32の材料とそのヤング率を示す。表2は、第2層34の材料とそのヤング率を示す。
【表1】
【表2】
【0029】
リッド30の剛性を高くする点から、第1層32と第2層34のヤング率は共に70GPa以上である場合が好ましく、100GPa以上である場合がより好ましい。第2層34は第1層32より外側に配置されることから、第2層34のヤング率は第1層32のヤング率より高い場合が好ましい。
【0030】
リッド30の厚さT1は例えば30μm~150μmである。第1層32の厚さT2と第2層34の厚さT3は、同じでもよいし、異なってもよい。第1層32と第2層34はどちらが厚い場合でもよい。第2層34のヤング率が第1層32のヤング率より高い場合、第2層34は第1層32のより厚い場合が好ましい。第1層32と第2層34の厚さが異なる場合、薄い方の層の厚さは厚い方の層の厚さの1/10以上となっている。
【0031】
第1層32と第2層34は、平面視において同じ大きさおよび同じ形状をしている。すなわち、リッド30の側面は、第1層32の側面と第2層34の側面により形成された平面である。
【0032】
枠体18は、グランド用の端子14に基板10を貫通するビア配線16を介して電気的に接続されている。これにより、枠体18にグランド電位を供給することで、枠体18およびリッド30にシールド効果を付与することができる。また、弾性波素子50から発生した熱はリッド30の第1層32に放熱されるため、枠体18がビア配線16を介して端子14に接続されることで、第1層32に放熱された熱は端子14にまで伝わるようになり放熱効果が向上する。なお、枠体18およびリッド30は基板10上では弾性波素子50に電気的に接続されていない。
【0033】
圧電層12の上面に形成された複数の弾性波素子50によってフィルタ70が形成されている。すなわち、入力用の端子14と出力用の端子14との間に直列に接続された直列共振器S1~S4と、並列に接続された並列共振器P1~P3とが、弾性波素子50によって形成されている。図4(a)は、フィルタ70の回路図である。図4(a)に示すように、フィルタ70は、入力端子Tinと出力端子Toutとの間に1または複数の直列共振器S1~S4が直列に接続され、1または複数の並列共振器P1~P3が並列に接続されている。直列共振器S1~S4および並列共振器P1~P3が弾性波素子50である。直列共振器および並列共振器の個数等は適宜設定できる。フィルタとしてラダー型フィルタを例に説明したが、フィルタは多重モード型フィルタであってもよい。
【0034】
また、複数の弾性波素子50によって形成されるフィルタによりデュプレクサが形成されてもよい。図4(b)はデュプレクサの回路図である。図4(b)に示すように、デュプレクサ80は、共通端子Antと送信端子Txとの間に送信フィルタ82が接続されている。共通端子Antと受信端子Rxとの間に受信フィルタ84が接続されている。送信フィルタ82は、送信端子Txから入力された高周波信号のうち送信帯域の信号を送信信号として共通端子Antに通過させ、他の周波数の信号を抑圧する。受信フィルタ84は、共通端子Antから入力された高周波信号のうち受信帯域の信号を受信信号として受信端子Rxに通過させ、他の周波数の信号を抑圧する。送信フィルタ82および受信フィルタ84の少なくとも一方をフィルタ70とすることができる。なお、マルチプレクサとしてデュプレクサを例に示したがトリプレクサまたはクワッドプレクサであってもよい。
【0035】
[製造方法]
図5(a)から図6(c)は、実施例1に係る弾性波デバイスの製造方法を示す断面図である。図5(a)から図6(c)で説明する製造方法は多面取りプロセスによる製造方法である。図5(a)に示すように、基板10の上面に例えばレーザ光を照射してビアホールを形成し、ビアホール内に銅等の金属層を例えば電解めっき法を用い形成する。その後、基板10の上面が露出するように金属層を例えばCMP(Chemical Mechanical Polishing)法を用い平坦化する。これにより、基板10にビア配線16が形成される。次いで、基板10の上面に圧電基板を例えば表面活性化法を用い常温接合する。基板10と圧電基板は数nmのアモルファス層を介し直接接合されてもよいし、絶縁層を介し間接的に接合されてもよい。その後、圧電基板の上面を例えばCMP法を用い研磨して所望の厚さの圧電層12とする。
【0036】
図5(b)に示すように、複数の弾性波デバイスそれぞれの圧電層12が互いに分離するように、圧電層12の一部を例えばエッチング法を用いて除去する。これにより、複数の弾性波デバイスそれぞれにおけるビア配線16が露出する。次いで、圧電層12の上面に例えばフォトリソグラフィ法およびエッチング法を用いて弾性波素子50を形成する。弾性波素子50に電気的に接続される配線20を例えばリフトオフ法を用いて形成する。一部の配線20は、圧電層12の上面からビア配線16にまで延在して弾性波素子50とビア配線16とを電気的に接続する。
【0037】
図5(c)に示すように、複数の弾性波デバイスそれぞれの弾性波素子50および圧電層12を囲むように、基板10上に枠体18を形成する。枠体18は例えば電解めっき法により形成する。
【0038】
図6(a)に示すように、第1層32と第2層34が接合されたリッド30を準備し、リッド30を枠体18に接合する。これにより、弾性波素子50は、基板10とリッド30の間の空隙22に封止される。
【0039】
図6(b)に示すように、基板10の下面を例えばCMP法を用い研磨する。これにより、ビア配線16が基板10の下面から露出する。次いで、基板10の下面にビア配線16に接続する端子14を形成する。端子14は例えば電解めっき法により形成する。
【0040】
図6(c)に示すように、リッド30、枠体18、および基板10を、例えばダイシングブレードを用い切断する。これにより、弾性波デバイスが個片化される。以上により、実施例1に係る弾性波デバイスが形成される。
【0041】
[比較例]
図7(a)は、比較例1に係る弾性波デバイスの断面図である。図7(a)に示すように、比較例1に係る弾性波デバイス500では、枠体18上に例えばサファイア等の絶縁層またはシリコン等の半導体層からなるリッド130aが設けられている。その他の構成は実施例1と同じであるため説明を省略する。
【0042】
図7(b)は、比較例2に係る弾性波デバイスの断面図である。図7(b)に示すように、比較例2に係る弾性波デバイス510では、枠体18上に例えばコバール等の金属層からなるリッド130bが設けられている。その他の構成は実施例1と同じであるため説明を省略する。
【0043】
図8(a)は、比較例1に係る弾性波デバイスにおいて生じる課題を示す断面図である。図8(a)に示すように、比較例1に係る弾性波デバイス500を配線基板90上に実装してモールド樹脂92で封止する場合、弾性波デバイス500が実装された配線基板90を樹脂封止装置のキャビティ内に配置して、キャビティ内に樹脂を流し込むことを行う。キャビティ内に樹脂を流し込むときに、弾性波デバイス500に圧力が加わる。図8(a)においては、弾性波デバイス500に加わる圧力を黒矢印で示している。リッド130aがサファイア等の絶縁層またはシリコン等の半導体層である場合、リッド130aは圧力が加わることでヒビ94および/または割れ96等の脆性破壊が生じることがある。この場合、脆性破壊に伴う破壊屑が弾性波素子50や配線20に降りかかり、特性の劣化が生じることがある。また、リッド130aが絶縁層または半導体層である場合、弾性波素子50から発生した熱はリッド130aに放熱され難いため、温度上昇に伴う特性劣化が生じることもある。
【0044】
図8(b)は、比較例2に係る弾性波デバイスにおいて生じる課題を示す断面図である。図8(b)に示すように、比較例2に係る弾性波デバイス510では、リッド130bがコバール等の金属層であるため、弾性波素子50から発生した熱はリッド130bに放熱されやすく、かつ、脆性破壊は生じ難くなる。しかしながら、リッド130bが金属層である場合は展延性が高くなるため、モールド樹脂92を形成する際にリッド130bに圧力(黒矢印)が加わると、リッド130bに撓みが生じることがある。リッド130bが撓んだ場合、リッド130bは弾性波素子50や配線20に近づき、リッド130bと弾性波素子50および配線20との間の静電容量が大きくなり、特性の劣化が生じることがある。
【0045】
図9は、実施例1に係る弾性波デバイスの効果を示す断面図である。図9に示すように、弾性波デバイス100では、リッド30は、金属材料からなり空隙22に露出する第1層32と、絶縁材料または半導体材料からなり第1層32に対して空隙22とは反対側の第2層34と、を備える。第1層32と第2層34は、厚さが同じか、または、薄い方の厚さが厚い方の厚さの1/10以上となっている。金属材料からなる第1層32が空隙22に露出することで、弾性波素子50から発生した熱は第1層32に放熱されやすくなる。第1層32に対して空隙22とは反対側に絶縁材料または半導体材料からなる第2層34が設けられていることで、モールド樹脂92を形成する際にリッド30に圧力(黒矢印)が加わった場合でも、リッド30に撓みが生じることが抑制される。また、第2層34の下に金属材料からなる第1層32が設けられていることで、第2層34にヒビおよび割れ等の脆性破壊が生じ難くなる。仮に、第2層34に脆性破壊が生じたとしても、第1層32があるために破壊屑が弾性波素子50および配線20に降りかかることが抑制される。これらのことから、実施例1に係る弾性波デバイス100では、特性の劣化が生じ難くなる。
【0046】
[シミュレーション]
実施例1におけるリッド30および比較例2におけるリッド130bの上面に圧力を加えたときの撓み量についてシミュレーションをした。図10(a)は、シミュレーションに用いたモデルA、Bの断面図、図10(b)は、シミュレーションに用いたモデルCの断面図、図10(c)は、モデルA、B、Cの平面図である。図10(a)に示すように、モデルA、Bは、比較例2に対応し、枠体18上にリッド130bが接合層24によって接合されている。図10(b)に示すように、モデルCは、実施例1に対応し、枠体18上にリッド30が接合層24によって接合されている。図10(a)から図10(c)に示すように、モデルA、B、C共に、空隙22内において基板10とリッド30、130bとの間に複数の柱部98が設けられている。柱部98の一端は基板10に接触し、他端は接合層24によってリッド30、130bに接合している。
【0047】
シミュレーション条件は以下である。
モデルA、B、Cの共通条件
基板10:厚さ75μmのサファイア基板
枠体18:厚さが21μmの銅(Cu)層
柱部98:厚さが21μmの銅(Cu)層
接合層24:厚さが2.5μmのニッケル(Ni)層と厚さが5μmの金錫(AuSn)層
リッド30、130bの上面に加えた圧力:6MPa(樹脂モールドでの圧力を想定)
モデルAの条件
リッド130b:厚さが30μmのコバール層
モデルBの条件
リッド130b:厚さが60μmのコバール層
モデルCの条件
リッド30:コバールからなる厚さが30μmの第1層32とサファイアからなる厚さが30μmの第2層34の積層構造
【0048】
表3は、シミュレーションに用いた各材料のヤング率、線膨張係数、およびポアソン比を示す表である。
【表3】
【0049】
図11(a)から図11(c)は、モデルA、B、Cのシミュレーション結果を示す図である。図11(a)から図11(c)は、圧力を加える前のリッド30、130bの下面を基準位置(基準値0)とし、圧力を加えた後のリッド30、130bの下面の基準位置からの変位量をリッドの撓み量として負の値で示した等高線図である。図11(a)に示すように、厚さが30μmのコバール層をリッド130bに用いたモデルAでは、リッド130bの撓みが大きく、最大撓み量は-17.3μmであった。図11(b)に示すように、厚さが60μmのコバール層をリッド130bに用いたモデルBでは、モデルAに比べてリッド130bの撓みは抑えられ、最大撓み量は-5.89μmであった。図11(c)に示すように、コバールからなる厚さが30μmの第1層32とサファイアからなる厚さが30μmの第2層34とを備えるリッド30を用いたモデルCでは、リッド30の撓みが更に抑えられ、最大撓み量は-3.75μmであった。
【0050】
このシミュレーション結果から、コバールの単体からなるリッド130bを用いる場合に比べて、コバールからなる第1層32とサファイアからなる第2層34との積層構造であるリッド30を用いることで、リッド30の撓みを効果的に低減できることが分かる。
【0051】
[変形例]
図12は、実施例1の変形例に係る弾性波デバイスの断面図である。図12に示すように実施例1の変形例に係る弾性波デバイス110では、枠体18とリッド30は、はんだ等の接合層24により接合されている。第1層32と第2層34は接着層36により接合されている。接着層36は、例えばエポキシ系接着剤等の樹脂部材であってもよいし、はんだ等の金属部材であってもよい。接着層36の厚さT4は、第1層32の厚さT2および第2層34の厚さT3に比べて十分薄く、例えば1/50以下である。リッド30の第1層32の側面および枠体18の側面に保護膜26が設けられている。保護膜26は、例えばニッケルなどの金属膜であり、弾性波デバイス110を配線基板に実装するときのリフローの熱で接合層24が外に漏れることを抑制するために設けられている。なお、保護膜26は絶縁膜である場合でもよい。その他の構成は実施例1と同じであるため説明を省略する。
【0052】
以上のように、実施例1およびその変形例によれば、図1および図12のように、リッド30は、金属材料からなり空隙22に露出する第1層32と、絶縁材料または半導体材料からなり第1層32に対して空隙22とは反対側に位置する第2層34と、を含む。第1層32と第2層34は、厚さが同じかまたは薄い方の厚さが厚い方の厚さの1/10以上となっている。このようなリッド30を用いることで、図9および図11(c)に示したように、リッド30に圧力が加わった場合でも、リッド30の撓みを低減することができる。よって、リッド30が弾性波素子50および配線20に近づくことが抑制され、特性の劣化が抑えられる。第1層32と第2層34の厚さが異なる場合、リッド30の撓みの低減および/または放熱性の確保の点から、薄い方の厚さは厚い方の厚さの1/5以上である場合が好ましく、1/3以上である場合がより好ましく、1/2以上である場合が更に好ましい。
【0053】
リッド30は、第1層32のヤング率および第2層34のヤング率が共に70GPa以上であることが好ましい。これにより、リッド30の剛性が高まるため、リッド30に圧力が加わった場合でも、リッド30の撓みを低減できる。
【0054】
また、リッド30は、第2層34のヤング率が第1層32のヤング率より大きい場合が好ましい。これは、第2層34は第1層32に対して空隙22とは反対側に位置することから、リッド30の上面に加わる圧力は第2層34の上面に加わるためである。第2層34のヤング率は、第1層32のヤング率の1.2倍以上が好ましく、1.5倍以上がより好ましく、2.0倍以上が更に好ましい。例えば、第2層34のヤング率は、150GPa以上が好ましく、200GPa以上がより好ましく、250Ga以上が更に好ましい。
【0055】
第2層34のヤング率が第1層32のヤング率より大きい場合、リッド30の剛性を高める点から、第2層34の厚さT3は第1層32の厚さT2より大きい場合が好ましい。第2層34の厚さT3は、第1層32の厚さT2の1.5倍以上が好ましく、1.8倍以上が好ましく、2.0倍以上が更に好ましい。
【0056】
リッド30の第2層34は、リッド30の剛性を高める点から、サファイア、アルミナ、スピネル、石英、水晶、炭化シリコン、シリコン、ガラス、DLC、FR4、LTCC、HTCC、またはFRPにより形成される場合が好ましい。特に、第2層34は、ヤング率の大きな、サファイア、アルミナ、シリコン、スピネル、炭化シリコン、DLC、FR4、LTCC、HTCCにより形成される場合がより好ましく、この中でも、サファイア、アルミナ、スピネル、DLC、炭化シリコン、HTCCにより形成されることが更に好ましい。第2層34は、熱膨張を考慮して基板10と同じ材料により形成されてもよい。なお、第2層34が上記材料により形成されるとは、意図するまたは意図しない不純物を含んでいてもよい。
【0057】
リッド30の第1層32は、放熱性、気密性、および剛性の点から、コバール、42アロイ、ニッケル、ステンレス鋼、銅、洋白、ジュラルミンにより形成される場合が好ましい。なお、第1層32が上記材料により形成されるとは、意図するまたは意図しない不純物を含んでいてもよい。
【0058】
実施例1の変形例では、リッド30は、第1層32と第2層34とがその間に設けられた接着層36によって接着されている。これにより、第1層32と第2層34が強固に固定されたリッド30が得られる。
【実施例0059】
図13は、実施例2に係る弾性波デバイスの断面図である。図13に示すように、実施例2に係る弾性波デバイス200では、基板10の下方に、圧電層12aが接合された基板10aが設けられている。圧電層12aの上面には1または複数の弾性波素子50aが設けられている。
【0060】
基板10の下面に端子14は設けられてなく、代わりに、基板10aの下面に端子14が設けられている。端子14は、基板10aを貫通するビア配線16aおよび基板10a上に設けられた配線20aにより弾性波素子50aに接続される。基板10a上に金属柱17が設けられている。金属柱17は、例えば銅または金を含んで形成され、ビア配線16に接合されている。圧電層12上に設けられた弾性波素子50は、配線20、ビア配線16、金属柱17、およびビア配線16aを介して端子14に接続する。
【0061】
基板10aの周縁領域には圧電層12aは設けられてない。平面視において、圧電層12aを囲むように基板10a上に枠体18aが設けられている。枠体18aの下端は基板10aに接合し、上端は接合層24aにより基板10に接合している。圧電層12a上に設けられた弾性波素子50aは、基板10aと基板10との間の空隙22aに枠体18aにより封止されている。基板10とリッド30との間の空隙22内において基板10とリッド30との間に柱部98が設けられている。柱部98は、リッド30の撓みを抑制するために設けられている。その他の構成は実施例1の変形例と同じであるため説明を省略する。
【0062】
実施例2のように、弾性波素子50aが設けられた基板10aが基板10の下方に設けられ、弾性波素子50aを囲む枠体18aが基板10と基板10aとに接合して設けられることで弾性波素子50aが基板10と基板10aとの間の空隙22aに封止されてもよい。
【実施例0063】
図14(a)は、実施例3に係る弾性波デバイスの断面図、図14(b)は、実施例3における弾性波素子の断面図である。図14(a)および図14(b)に示すように、実施例3に係る弾性波デバイス300では、基板10上に設けられた弾性波素子50は圧電薄膜共振子である。弾性波素子50は、基板10上に設けられた圧電層62と、圧電層62を挟む下部電極61および上部電極63と、を備える。下部電極61と基板10との間に空隙64が形成されている。圧電層62の少なくとも一部を挟み下部電極61と上部電極63とが対向する領域が共振領域65である。共振領域65において、下部電極61および上部電極63は圧電層62内に弾性波を励振する。下部電極61および上部電極63は例えばルテニウム膜等を含む金属膜である。圧電層62は例えば窒化アルミニウム層、酸化亜鉛層、単結晶タンタル酸リチウム層、または単結晶ニオブ酸リチウム層である。空隙64の代わりに弾性波を反射する音響反射膜が設けられていてもよい。その他の構成は実施例1の変形例と同じであるため説明を省略する。
【0064】
実施例1およびその変形例、ならびに、実施例2のように、基板10上に弾性表面波共振子である弾性波素子50が設けられる場合でもよいし、実施例3のように、基板10上に圧電薄膜共振子である弾性波素子50が設けられる場合でもよい。また、基板10上に設けられる機能素子は、弾性波素子以外の場合でもよく、MEMS(Micro Electro Mechanical System)素子またはにおいセンサ素子等の場合でもよく、圧電素子以外の場合でもよい。
【0065】
以上、本願発明の実施形態について詳述したが、本願発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本願発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0066】
10、10a…基板、12、12a…圧電層、14…端子、16、16a…ビア配線、17…金属柱、18、18a…枠体、20、20a…配線、22、22a…空隙、24…接合層、26…保護膜、30、130a、130b…リッド、32…第1層、34…第2層、36…接着層、50、50a…弾性波素子、51…IDT、52…反射器、53…櫛型電極、54…電極指、55…バスバー、61…下部電極、62…圧電層、63…上部電極、64…空隙、65…共振領域、70…フィルタ、80…デュプレクサ、82…送信フィルタ、84…受信フィルタ、90…配線基板、92…モールド樹脂、94…ヒビ、96…割れ、98…柱部、100、110、200、300、500、510…弾性波デバイス
図1
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