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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128513
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】サーミスタ素子および電磁波センサ
(51)【国際特許分類】
   G01J 1/02 20060101AFI20240913BHJP
   H01C 7/04 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
G01J1/02 C
G01J1/02 Q
H01C7/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037506
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【弁理士】
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】小久保 眞生子
(72)【発明者】
【氏名】原 晋治
(72)【発明者】
【氏名】太田 尚城
(72)【発明者】
【氏名】青木 進
【テーマコード(参考)】
2G065
5E034
【Fターム(参考)】
2G065AB02
2G065AB03
2G065BA12
2G065BA32
2G065BA34
5E034BA09
5E034BB08
5E034BC02
5E034DA07
5E034DB01
5E034DB17
5E034DC01
(57)【要約】
【課題】測定精度の良好な電磁波センサが得られるサーミスタ素子、およびこれを備える電磁波センサを提供する。
【解決手段】スピネル型結晶構造を有する酸化物からなるサーミスタ膜と、サーミスタ膜の第1面に接触して設けられた第1面側電極と、サーミスタ膜の第2面に接触して設けられた第2面側電極とを備え、第1面側電極は、第1電極と、前記第1電極と平面視で離間して配置された第2電極とからなり、第1電極の少なくとも一部および第2電極の少なくとも一部は、平面視で第2面側電極と重なるように配置され、サーミスタ膜は、平面視で前記第1電極および前記第2面側電極と重なる領域と、平面視で前記第2電極および前記第2面側電極と重なる領域とからなる第1領域よりも、平面視で前記第1電極と前記第2電極との間に位置する第2領域の酸素濃度が高いサーミスタ素子とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピネル型結晶構造を有する酸化物からなるサーミスタ膜と、
前記サーミスタ膜の第1面に接触して設けられた第1面側電極と、
前記サーミスタ膜の第2面に接触して設けられた第2面側電極とを備え、
前記第1面側電極は、第1電極と、前記第1電極と平面視で離間して配置された第2電極とからなり、前記第1電極の少なくとも一部および前記第2電極の少なくとも一部は、平面視で前記第2面側電極と重なるように配置され、
前記サーミスタ膜は、平面視で前記第1電極および前記第2面側電極と重なる領域と、平面視で前記第2電極および前記第2面側電極と重なる領域とからなる第1領域よりも、平面視で前記第1電極と前記第2電極との間に位置する第2領域の酸素濃度が高いことを特徴とする、サーミスタ素子。
【請求項2】
請求項1に記載のサーミスタ素子を備えることを特徴とする、電磁波センサ。
【請求項3】
前記サーミスタ素子を複数備え、前記複数のサーミスタ素子はアレイ状に配列されていることを特徴とする、請求項2に記載の電磁波センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーミスタ素子および電磁波センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、サーミスタ素子などの電磁波検出部を備える電磁波センサがある。このような電磁波センサに備えられるサーミスタ素子として、サーミスタ素子に入射した赤外線がサーミスタ膜又はサーミスタ膜の周辺の材料に吸収されることによって、サーミスタ膜の温度が変化し、それに応じてサーミスタ膜の電気抵抗が変化するものがある。
【0003】
サーミスタ素子を用いた電磁波センサとしては、例えば、特許文献1に記載のものがある。特許文献1には、アレイ状に配列されているサーミスタ素子を備える電磁波センサが記載されている。特許文献1には、サーミスタ膜と、サーミスタ膜の一方の面に接触して設けられた一対の第1の電極と、前記サーミスタ膜の他方の面に接触して設けられた第2の電極とを備えるサーミスタ素子が記載されている。特許文献1には、サーミスタ膜の面直方向に電流が流れるCPP(Current-Perpendicular-to-Plane)構造を有するサーミスタ素子が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-126582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、サーミスタ膜の面直方向に電流が流れるCPP構造を有するサーミスタ素子を用いた従来の電磁波センサでは、測定精度をより一層向上させることが要求されている。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、測定精度の良好な電磁波センサが得られるサーミスタ素子、およびこれを備える電磁波センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、以下の手段を提供する。
本発明の一態様に係るサーミスタ素子は、スピネル型結晶構造を有する酸化物からなるサーミスタ膜と、前記サーミスタ膜の第1面に接触して設けられた第1面側電極と、前記サーミスタ膜の第2面に接触して設けられた第2面側電極とを備え、前記第1面側電極は、第1電極と、前記第1電極と平面視で離間して配置された第2電極とからなり、前記第1電極の少なくとも一部および前記第2電極の少なくとも一部は、平面視で前記第2面側電極と重なるように配置され、前記サーミスタ膜は、平面視で前記第1電極および前記第2面側電極と重なる領域と、平面視で前記第2電極および前記第2面側電極と重なる領域とからなる第1領域よりも、平面視で前記第1電極と前記第2電極との間に位置する第2領域の酸素濃度が高いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のサーミスタ素子は、スピネル型結晶構造を有する酸化物からなり、平面視で第1電極および第2面側電極と重なる領域と、平面視で第2電極および第2面側電極と重なる領域とからなる第1領域よりも、平面視で第1電極と第2電極との間に位置する第2領域の酸素濃度が高いサーミスタ膜を備える。したがって、本発明のサーミスタ素子においては、サーミスタ膜の第2領域内を面内方向に電流が流れにくくなる。このため、本発明のサーミスタ素子を備える電磁波センサは、サーミスタ素子のサーミスタ膜内を面内方向に流れる電流成分による測定精度の低下が生じにくく、測定精度が良好なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る電磁波センサの構成を示す平面図である。
図2図1に示す電磁波センサの構成を示す分解斜視図である。
図3図1に示す電磁波センサの一部を拡大して示した平面図であり、サーミスタ素子の第1面側電極が配置されている層の平面図である。
図4図1に示す電磁波センサの一部を拡大して示した断面図であり、図3中に示す線分A-Aの断面図である。
図5図1に示す電磁波センサに備えられたサーミスタ素子の製造工程を順に説明するための断面図である。
図6図1に示す電磁波センサに備えられたサーミスタ素子の製造工程を順に説明するための断面図である。
図7図1に示す電磁波センサに備えられたサーミスタ素子の製造工程を順に説明するための断面図である。
図8図1に示す電磁波センサに備えられたサーミスタ素子の製造工程を順に説明するための断面図である。
図9図1に示す電磁波センサに備えられたサーミスタ素子の製造工程を順に説明するための断面図である。
図10図1に示す電磁波センサに備えられたサーミスタ素子の製造工程を順に説明するための断面図である。
図11図1に示す電磁波センサに備えられたサーミスタ素子の製造工程を順に説明するための断面図である。
図12図1に示す電磁波センサに備えられたサーミスタ素子の製造工程を順に説明するための断面図である。
図13】実施例1のサーミスタ素子4の第1領域5aを含む断面の厚み方向の位置と各元素濃度との関係を示したグラフである。
図14】実施例1のサーミスタ素子4の第2領域5bを含む断面の厚み方向の位置と各元素濃度との関係を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決し、サーミスタ膜の第1面に接触して設けられ、互いに離間して設けられた第1電極および第2電極と、サーミスタ膜の第2面に接触して設けられた第2面側電極とを備えるサーミスタ素子について、これを備える電磁波センサの測定精度を向上させるべく、鋭意検討を重ねた。
【0010】
その結果、サーミスタ膜を介して、第1電極と第2電極との間をサーミスタ膜の面内方向に流れる電流成分が、サーミスタ素子を備える電磁波センサの測定精度を低下させる一因であることが分かった。
【0011】
そこで、本発明者は、サーミスタ膜の電気抵抗および材料に着目し、検討を重ねた。その結果、サーミスタ素子のサーミスタ膜として、スピネル型結晶構造を有する酸化物からなり、平面視で第1電極および第2面側電極と重なる領域と、平面視で第2電極および第2面側電極と重なる領域とからなる第1領域よりも、平面視で第1電極と第2電極との間に位置する第2領域の酸素濃度が高いものとすればよいことを見出し、本発明を想到した。
【0012】
このようなサーミスタ素子では、サーミスタ膜の電気抵抗率が第1領域よりも第2領域が高く、第1電極と第2電極との間をサーミスタ膜の面内方向に電流が流れにくいと推定される。その結果、このサーミスタ素子を備える電磁波センサは、第1電極と第2電極との間をサーミスタ膜の面内方向に流れる電流成分による測定精度の低下が生じにくく、測定精度が良好なものとなると推定される。
【0013】
本発明は以下の態様を含む。
[1] スピネル型結晶構造を有する酸化物からなるサーミスタ膜と、
前記サーミスタ膜の第1面に接触して設けられた第1面側電極と、
前記サーミスタ膜の第2面に接触して設けられた第2面側電極とを備え、
前記第1面側電極は、第1電極と、前記第1電極と平面視で離間して配置された第2電極とからなり、前記第1電極の少なくとも一部および前記第2電極の少なくとも一部は、平面視で前記第2面側電極と重なるように配置され、
前記サーミスタ膜は、平面視で前記第1電極および前記第2面側電極と重なる領域と、平面視で前記第2電極および前記第2面側電極と重なる領域とからなる第1領域よりも、平面視で前記第1電極と前記第2電極との間に位置する第2領域の酸素濃度が高いことを特徴とする、サーミスタ素子。
【0014】
[2] [1]に記載のサーミスタ素子を備えることを特徴とする、電磁波センサ。
[3] 前記サーミスタ素子を複数備え、前記複数のサーミスタ素子はアレイ状に配列されていることを特徴とする、[2]に記載の電磁波センサ。
【0015】
以下、本実施形態のサーミスタ素子および電磁波センサについて、図面を適宜参照しながら詳細に説明する。以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合がある。したがって、各構成要素の寸法比率などは実際とは異なっていることがある。以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であり、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0016】
〔電磁波センサ〕
本実施形態の電磁波センサは、測定対象から放出される電磁波を検出する。本実施形態の電磁波センサによって検出する電磁波としては、例えば、赤外線、テラヘルツ波などが挙げられる。本実施形態の電磁波センサは、具体的には、例えば、波長が0.75μm以上、1000μm以下である赤外線(以下、「赤外線IR」という場合がある。)を検出するものであってもよい。赤外線IRは、遠赤外線であってもよいし、中赤外線であってもよいし、近赤外線であってもよい。また、赤外線IRは、波長8~14μmの長波長赤外線であってもよい。また、本実施形態の電磁波センサは、例えば、波長が30μm以上、3mm以下のテラヘルツ波を検出するものであってもよい。
【0017】
以下、本実施形態の電磁波センサの一例として、測定対象から放出される赤外線IRを検出する電磁波センサを例に挙げて説明する。本実施形態の電磁波センサは、測定対象から放出される赤外線IRを検出し、測定対象の温度分布を二次元的に検出(撮像)する赤外線撮像素子(赤外線イメージセンサ)であってもよい。赤外線イメージセンサは、赤外線カメラとして、屋内および/または屋外の暗視などに好ましく利用できる。赤外線イメージセンサは、非接触式の温度センサとして、人および物の温度測定などにも好ましく利用できる。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態に係る電磁波センサの構成を示す平面図である。図2は、図1に示す電磁波センサの構成を示す分解斜視図である。図3は、図1に示す電磁波センサの一部を拡大して示した平面図であり、サーミスタ素子の第1面側電極が配置されている層の平面図である。図4は、図1に示す電磁波センサの一部を拡大して示した断面図であり、図3中に示す線分A-Aの断面図である。図5図12は、図1に示す電磁波センサに備えられたサーミスタ素子の製造工程を順に説明するための断面図である。
【0019】
図1図12では、XYZ直交座標系を設定する。図1図12では、X軸方向を電磁波センサの特定の面内における第1の方向Xとし、Y軸方向を電磁波センサの特定の面内において第1の方向Xと直交する第2の方向Yとし、Z軸方向を電磁波センサの特定の面内に対して直交する第3の方向Zとして、それぞれ示す。
【0020】
本実施形態の電磁波センサ1は、図2に示すように、互いに対向して配置された第1の基板2および第2の基板3と、第1の基板2と第2の基板3との間に配置された複数のサーミスタ素子4とを備えている。サーミスタ素子4は、領域E毎に1つ設けられている。領域Eは、図1および図2に示すように、平面視において、複数の第1のリード配線9aと複数の第2のリード配線9bとによって区画された領域である。
【0021】
図2に示すように、第1の基板2および第2の基板3は、互いに対向する面の周囲をシール材(図示せず。)により封止することによって、その間に密閉された内部空間Kを構成している。内部空間Kは、高真空に減圧されている。これにより、本実施形態の電磁波センサ1では、内部空間Kでの対流による熱の影響が抑制され、サーミスタ素子4に対して測定対象から放出される赤外線IR以外の熱による影響が排除されている。
【0022】
本実施形態の電磁波センサ1は、上述した密閉された減圧された内部空間Kを有する構成に限定されるものではない。本実施形態の電磁波センサ1は、大気圧のまま密閉された内部空間Kを有する構成であってもよいし、開放された内部空間Kを有する構成であってもよい。
【0023】
第1の基板2および第2の基板3は、特定の波長の電磁波に対して透過性を有する基板からなる。特定の波長の電磁波が、例えば、赤外線IRである場合、第1の基板2および第2の基板3としては、例えば、シリコン基板を用いることができ、ゲルマニウム基板などを用いてもよい。
【0024】
電磁波センサ1に備えられている複数のサーミスタ素子4は、互いに同じ大きさで形成されている。図1および図2に示すように、複数のサーミスタ素子4は、第1の基板2および第2の基板3と平行な面内(以下、「特定の面内」という。)にアレイ状に配列されている。
【0025】
複数のサーミスタ素子4は、それぞれが図1および図2に示す領域E毎に設けられることによって、特定の面内において互いに交差(本実施形態では直交)する第1の方向Xと第2の方向Yとにマトリックス状に並んで配置されている。各サーミスタ素子4は、第1の方向Xを行方向とし、第2の方向Yを列方向として、第1の方向Xに一定の間隔で並んで配置されると共に、第2の方向Yに一定の間隔で並んで配置されている。
上記サーミスタ素子4の行列数(言い換えると、領域Eの行列数)としては、例えば、640行×480列であってもよいし、1024行×768列であってもよい。上記サーミスタ素子4の行列数は、これらの行列数に必ずしも限定されるものではなく、適宜変更できる。
【0026】
〔サーミスタ素子〕
サーミスタ素子4は、図4に示すように、温度検知素子としてのサーミスタ膜5と、サーミスタ膜5の一方の面(第1面)に接触して設けられた第1面側電極6と、サーミスタ膜5の他方の面(第2面)に接触して設けられた第2面側電極6cとを備える。
【0027】
第1面側電極6は、第1電極6aと第2電極6bとからなる一対の電極である。図3および図4に示すように、第1電極6aと第2電極6bとは、平面視で離間して配置されている。第1電極6aの少なくとも一部(本実施形態では全部)および第2電極6bの少なくとも一部(本実施形態では全部)は、図3および図4に示すように、平面視で第2面側電極6cおよびサーミスタ膜5と重なるように配置されている。本実施形態における第1電極6aおよび第2電極6bは、略同形である。
【0028】
また、本実施形態における第2面側電極6cは、例えば、図3および図4に示すように、平面視でサーミスタ膜5と同形とすることができる。
【0029】
本実施形態の電磁波センサ1に備えられているサーミスタ素子4は、図4に示すように、サーミスタ膜5を挟むように第1面側電極6(第1電極6aおよび第2電極6b)と第2面側電極6cとが設けられ、サーミスタ膜5の面直方向に電流が流れるCPP(Current-Perpendicular-to-Plane)構造を有している。具体的には、サーミスタ素子4は、第1面側電極6の第1電極6aから第2面側電極6cに向けてサーミスタ膜5の面直方向に電流を流すと共に、第2面側電極6cから第2電極6bに向けてサーミスタ膜5の面直方向に電流を流すことが可能となっている。
【0030】
図4に示すように、第1面側電極6である第1電極6aおよび第2電極6bのサーミスタ膜5と反対側には、それぞれ配線層21a、21bが接触している。本実施形態では、第1電極6aおよび第2電極6bのサーミスタ膜5および配線層21a、21bと接触していない部分は、第2絶縁膜7b(絶縁膜)によって覆われている。第2絶縁膜7bは、図3および図4に示すように、平面視で第1面側電極6の第1電極6aと第2電極6bとの間にも配置されている。このことにより、第2絶縁膜7bは、サーミスタ膜5の一方の面(第1面)のうち、第1面側電極6(第1電極6aおよび第2電極6b)と接触していない部分に接触している。
【0031】
本実施形態に備えられている第2絶縁膜7bには、図3および図4に示すように、平面視で、第1電極6aの略中央部および第2電極6bの略中央部と重なる位置に、それぞれ第2絶縁膜7bを貫通する円形形状の開口部20a、20bが設けられている。また、本実施形態に備えられている第1電極6aおよび第2電極6bは、図3および図4に示すように、開口部20a、20bと平面視で重なる領域内に位置する部分と、開口部20a、20bと平面視で重なる領域外に位置する部分とに連続して形成されている。これにより、第1電極6aおよび第2電極6bは、それぞれサーミスタ膜5側が凹状で配線層21a、21b側が凸状である凹凸部を有する形状とされている。その結果、第1電極6aおよび第2電極6bは、凹凸部を有さない場合と比較して、サーミスタ膜5と接触している面積が広いものとされている。
【0032】
本実施形態では、図3および図4に示すように、第1電極6aおよび第2電極6bのサーミスタ膜5側の面の全面が、サーミスタ膜5の一方の面と接触しているとともに、第2面側電極6cのサーミスタ膜5側の面の全面が、サーミスタ膜5の他方の面と接触している。したがって、サーミスタ膜5および第2面側電極6cは、図4に示すように、第1電極6aおよび第2電極6bの凹凸部内の形状に沿う、2つの凹凸部を有している。
【0033】
図4に示すように、配線層21a、21bおよび第2絶縁膜7bのサーミスタ膜5と反対側には、配線層21a、21bおよび第2絶縁膜7bを覆うように、絶縁層7aが配置されている。
【0034】
また、第2面側電極6cのサーミスタ膜5と反対側には、第2面側電極6cに接触して第3絶縁膜7cが設けられている。本実施形態では、図4に示すように、第3絶縁膜7cは、第2面側電極6cおよびサーミスタ膜5の側面を被覆するとともに、第2絶縁膜7bのサーミスタ膜5側の面と接触している。
【0035】
サーミスタ膜5は、スピネル型結晶構造を有する酸化物からなり、平面視で第1電極6aおよび第2面側電極6cと重なる領域と、平面視で第2電極6bおよび第2面側電極6cと重なる領域とからなる第1領域5aよりも、平面視で第1電極6aと第2電極6bとの間に位置する第2領域5bの酸素濃度が高いものである。
【0036】
第2領域5bの酸素濃度は、第1領域5aの酸素濃度の1倍超であればよく、1.2倍以上であることが好ましく、1.5倍以上であることがより好ましい。サーミスタ膜5の第2領域5bと第1領域5aとの酸素濃度比が大きいほど、第1領域5aと第2領域5bとの電気抵抗率の差が大きくなり、第1領域5a内を電流が面直方向に流れやすくなり、第2領域5b内を面内方向に電流が流れにくくなる。その結果、サーミスタ膜5内を面内方向に流れる電流成分による測定精度の低下が生じにくく、測定精度が良好なものとなる。
また、第2領域5bの酸素濃度は、後述する製造方法を用いて効率よく製造できるため、第1領域5aの酸素濃度の2倍以下であることが好ましく、1.8倍以下であることがより好ましい。
【0037】
第1領域5aの酸素濃度は、厚み方向に略均一であることが好ましい。本実施形態では、サーミスタ膜5を厚み方向に、一方の面(第1面)に近い領域、他方の面(第2面)に近い領域および厚み方向の中央部を含む領域の3つの領域に3等分した際に、3つの領域のどの領域においても、第2領域5bの酸素濃度は、第1領域5aの酸素濃度よりも高い。より一層、第1領域5aが面直方向に電流が流れやすいものとなり、第2領域6c内を電流が面内方向に流れにくいものとなるためである。
【0038】
サーミスタ膜5は、スピネル型結晶構造を有する酸化物からなる。スピネル型結晶構造を有する酸化物からなる膜を、これと接するように酸化物からなる絶縁膜を配置してから、例えば、大気雰囲気中で250℃以上の温度で熱処理すると、絶縁膜から酸素が拡散してスピネル型結晶構造を有する酸化物中の酸素濃度を高くすることができる。
【0039】
スピネル型結晶構造を有する酸化物としては、例えば、スピネル型結晶構造のAサイトおよびBサイトの何れか一方または両方の少なくとも一部に、コバルト(Co)およびマンガン(Mn)からなる母材金属元素、またはニッケル(Ni)およびマンガン(Mn)からなる母材金属元素が位置するものであることが好ましい。これらの母材金属元素は、一般式ABで表されるスピネル型結晶構造のAサイトおよびBサイトの何れにも位置し得る。
【0040】
また、スピネル型結晶構造を有する酸化物は、これらの母材金属元素の他に、例えば、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、鉄(Fe)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)などの遷移金属元素、およびアルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)から選ばれる少なくとも1つの添加元素を含んでいてもよい。上記添加元素は、アルミニウム(Al)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、鉄(Fe)、ジルコニウム(Zr)から選ばれる少なくとも1つを含むことが好ましい。上記添加元素は、一般式ABで表されるスピネル型結晶構造のAサイトおよびBサイトの何れにも位置し得る。これらの添加元素は、スピネル型結晶構造のAサイトおよびBサイトの何れか一方または両方の少なくとも一部に置換固溶していてもよいし、AサイトおよびBサイトに置換固溶せず、AサイトおよびBサイトとは異なる箇所に位置していてもよい。
【0041】
本実施形態では、サーミスタ膜5の厚みは、80nm~300nmの範囲であることが好ましく、100nm~200nmの範囲であることがより好ましい。
【0042】
第1面側電極6である第1電極6aおよび第2電極6b、第2面側電極6cは、いずれも導電膜からなる。第1電極6aおよび第2電極6bは、後述する製造方法を用いてサーミスタ素子4を製造する場合に、第2絶縁膜7bからサーミスタ膜5への酸素の拡散を抑制する酸素拡散抑制層としても機能する。また、第2面側電極6cは、後述する製造方法を用いてサーミスタ素子4を製造する場合に、熱処理時の雰囲気(例えば大気雰囲気)からサーミスタ膜5への酸素の拡散を抑制する酸素拡散抑制層としても機能する。第1電極6aと、第2電極6bと、第2面側電極6cを形成している導電膜は、それぞれ異なるものであってもよいし、一部または全部が同じであってもよい。
【0043】
本実施形態では、第1面側電極6である第1電極6aおよび第2電極6b、第2面側電極6cを形成している導電膜として、例えば、白金(Pt)、金(Au)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、ロジウム(Rh)、オスミウム(Os)、チタン(Ti)、レニウム(Re)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、タンタル(Ta)、クロム(Cr)、ニッケルクロム(NiCr)合金から選ばれる少なくとも1つを含むものを用いることができる。第1電極6a、第2電極6bおよび第2面側電極6cのそれぞれは、複数の導電膜が積層された積層膜でもよい。例えば、第1電極6aおよび第2電極6bのそれぞれを、ニッケルクロム(NiCr)合金の膜と白金(Pt)の膜との2つの導電膜が積層された積層膜とすることができる。
【0044】
本実施形態では、第1電極6a、第2電極6b、第2面側電極6cが、いずれも、白金(Pt)、金(Au)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、ロジウム(Rh)、オスミウム(Os)、レニウム(Re)から選ばれる貴金属(単体貴金属またはこれらの貴金属元素からなる合金)からなる導電膜であることが好ましい。それは、後述するサーミスタ素子4の製造方法における熱処理の際に、変質しにくく、また、サーミスタ膜5との間で変質層を形成しにくいためである。さらに、第1電極6a、第2電極6、第2面側電極6cが、いずれも貴金属からなる導電膜である場合、優れた導電性を有するものとなるため、好ましい。第1電極6a、第2電極6bおよび第2面側電極6cのそれぞれが、複数の導電膜が積層された積層膜である場合、サーミスタ膜5と接する導電膜は貴金属からなるものであることが好ましい。
【0045】
本実施形態では、第1電極6a、第2電極6b、第2面側電極6cの厚みは、いずれも、例えば、7nm~100nmの範囲である。第1電極6a、第2電極6bの厚みは、熱処理時に、第2絶縁膜7bからサーミスタ膜5への酸素の拡散を抑制する酸素拡散抑制層として機能可能な膜厚であることが好ましい。第1電極6a、第2電極6bの厚みは、第1電極6a、第2電極6bの材料および第2絶縁膜7bの材料に応じて適宜決定される。第2面側電極6cの厚みは、熱処理時に、熱処理雰囲気(例えば大気雰囲気)からサーミスタ膜5への酸素の拡散を抑制する酸素拡散抑制層として機能可能な膜厚であることが好ましい。第2面側電極6cの厚みは、第2面側電極6cの材料に応じて適宜決定される。
【0046】
第1絶縁膜7a、第2絶縁膜7b、第3絶縁膜7cの材料は、それぞれ異なるものであってもよいし、一部または全部が同じものであってもよい。第1絶縁膜7a、第2絶縁膜7b、第3絶縁膜7cとしては、それぞれ、例えば、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化ハフニウム、酸化ジルコニウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化タングステン、酸化ビスマス、酸化カルシウム、酸窒化アルミニウム、酸窒化ケイ素、酸化アルミニウムマグネシウム、ホウ化ケイ素、窒化ホウ素、またはサイアロン(ケイ素とアルミニウムとの酸窒化物)などからなるものを用いることができる。
【0047】
本実施形態では、以下に示す理由により、第1絶縁膜7a、第2絶縁膜7b、第3絶縁膜7cのうち、少なくとも第2絶縁膜7bが、酸化物からなるものであることが好ましい。第2絶縁膜7bの一部は、図3および図4に示すように、第1面側電極6の第1電極6aと第2電極6bとの間に位置し、サーミスタ膜5の一方の面(第1面)のうち、平面視で第1電極6aと第2電極6bとの間に位置する部分に接触している。このため、第2絶縁膜7bが酸化物からなるものである場合、後述する製造方法を用いてサーミスタ素子4を製造することにより、第2絶縁膜7bからサーミスタ膜5に酸素を拡散させることができる。したがって、第1領域5aよりも第2領域5bの酸素濃度が高いサーミスタ膜5を有するサーミスタ素子4を容易に製造できる。
【0048】
〔素子周辺構造〕
本実施形態の電磁波センサ1における第1の基板2の一方の面(第2の基板3と対向する面)には、図2に示すように、第1の絶縁体層8と、後述する回路部15と電気的に接続されている配線部9と、各サーミスタ素子4と配線部9との間を電気的に接続する第1の接続部10とが設けられている。
【0049】
第1の絶縁体層8は、第1の基板2の一方の面(第2の基板3と対向する面)側に積層された絶縁膜である。第1の絶縁体層8としては、例えば、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化ハフニウム、酸化ジルコニウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化タングステン、酸化ビスマス、酸化カルシウム、酸窒化アルミニウム、酸窒化ケイ素、酸化アルミニウムマグネシウム、ホウ化ケイ素、窒化ホウ素、サイアロン(ケイ素とアルミニウムの酸窒化物)などからなる絶縁膜を1種または2種以上用いることができる。
【0050】
配線部9は、図1および図2に示すように、複数の第1のリード配線9aと、複数の第2のリード配線9bとを有している。複数の第1のリード配線9aは、第1の方向Xに延在し、且つ、第2の方向Yに一定の間隔で並んで設けられている。一方、複数の第2のリード配線9bは、第2の方向Yに延在し、且つ、第1の方向Xに一定の間隔で並んで設けられている。図4に示すように、複数の第1のリード配線9aと複数の第2のリード配線9bとは、第1の絶縁体層8の厚み方向(第3の方向Z)において異なる位置に配置され、図2に示すように、立体的に交差するように配置されている。
第1のリード配線9aおよび第2のリード配線9bは、例えば、銅、金などの導電膜からなる。
【0051】
第1の接続部10は、一対の第1の接続部材11a、11bを有する。一対の第1の接続部材11a、11bは、図3および図4に示すように、一対のアーム部12a、12bと、一対のレッグ部13a、13bとを有する。一対の第1の接続部材11a、11bのレッグ部13a、13bは、平面視略矩形の領域Eの各々における対角線方向の端部にそれぞれ配置されている(図1図4参照)。
【0052】
各アーム部12a、12bは、図4に示すように、それぞれ配線層21a、21bの一部(後述する導体パターン部)と、配線層21a、21bの一方の面を被覆する第1絶縁膜7aと、配線層21a、21bの他方の面を被覆する第2絶縁膜7bと、第2絶縁膜7bの配線層21a、21bと反対側の面を被覆する第3絶縁膜7cとからなる。
【0053】
配線層21a、21bは、図3および図4に示すように、平面視でサーミスタ膜5の周囲に沿って形成された折り曲げ線状の導体パターン部と、平面視でサーミスタ膜5と重なる位置に形成され、第1電極6aまたは第2電極6bと接続された導体部とにより形成されている。
導体パターン部を形成している配線層21a、21bを被覆する第1絶縁膜7a、第2絶縁膜7b、第3絶縁膜7cは、いずれも平面視で、導体パターン部を形成している配線層21a、21bの形状と略同じ形状とされている。
【0054】
配線層21a、21bは、それぞれ、例えば、アルミニウム、タングステン、チタン、タンタル、窒化チタン、窒化タンタル、窒化クロム、および窒化ジルコニウムの中から選ばれる少なくとも1種からなる。
【0055】
レッグ部13aは、第1のリード配線9aとアーム部12aの配線層21aとを電気的に接続するコンタクトプラグとして機能する。また、レッグ部13bは、第2のリード配線9bとアーム部12bの配線層21bとを電気的に接続されるコンタクトプラグとして機能する。各レッグ部13a、13bは、図3および図4に示すように、第3の方向Zに延在して形成された断面円形状の導体ピラーにより形成されている。
各レッグ部13a、13bは、例えば、銅、金、FeCoNi合金またはNiFe合金(パーマロイ)などからなる。
【0056】
図3および図4に示すように、第1の接続部材11aは、第1面側電極6の第1電極6aと電気的に接続された配線層21aと、配線層21aと第1のリード配線9aとの間を電気的に接続するレッグ部13aとを有して、第1電極6aと第1のリード配線9aとの間を電気的に接続している。
第1の接続部材11bは、第2電極6bと電気的に接続された配線層21bと、配線層21bと第2のリード配線9bとの間を電気的に接続するレッグ部13bとを有して、第2電極6bと第2のリード配線9bとの間を電気的に接続している。
【0057】
本実施形態の電磁波センサ1における第2の基板3の一方の面(第1の基板2と対向する面)には、図2に示すように、第2の絶縁体層14と、回路部15と、第2の接続部16と、接続端子17a、17bとが設けられている。
【0058】
第2の絶縁体層14は、第2の基板3の一方の面(第1の基板2と対向する面)側に積層された絶縁膜である。第2の絶縁体層14としては、上記第1の絶縁体層8に使用できる絶縁膜と同じものを用いることができる。第2の絶縁体層14を形成している絶縁膜は、第1の絶縁体層8を形成している絶縁膜と同じであってもよいし、それぞれ異なっていてもよい。
【0059】
回路部15は、サーミスタ素子4から出力される電圧の変化を検出して輝度温度に変換する。回路部15は、第2の絶縁体層14の層内に設けられている。回路部15は、読み出し集積回路(ROIC:Read Out Integrated Circuit)、レギュレータ、A/Dコンバータ(Analog-to-Digital Converter)、マルチプレクサなどからなる。
【0060】
回路部15は、図2に示すように、第2の接続部材18aおよび接続端子17aを介して、複数の第1のリード配線9aと電気的に接続されている。また、回路部15は、第2の接続部材18bおよび接続端子17bを介して、複数の第2のリード配線9bと電気的に接続されている。
【0061】
第2の接続部16は、図2に示すように、複数の第2の接続部材18a、18bを有している。複数の第2の接続部材18a、18bは、第3の方向Zに延在して形成された断面円形状の導体ピラーからなる。複数の第2の接続部材18a、18bは、複数の第1のリード配線9aおよび複数の第2のリード配線9bの各々に対応して設けられている。第2の接続部材18aは、第1のリード配線9aの一端側と接続端子17aとの間を電気的に接続している。第2の接続部材18bは、第2のリード配線9bの一端側と接続端子17bとの間を電気的に接続している。
複数の第2の接続部材18a、18bは、例えば、銅および/または金などの導電材料からなる。
【0062】
接続端子17a、17bは、図2に示すように、第2の絶縁体層14の面上に設けられている。接続端子17a、17bは、複数の第1のリード配線9aおよび複数の第2のリード配線9bの各々に対応している。接続端子17aは、回路部15の周囲を囲む第1の方向Xの一方側の領域に位置して、第2の方向Yに一定の間隔で並んで設けられている。接続端子17bは、回路部15の周囲を囲む第2の方向Yの一方側の領域に位置して、第1の方向Xに一定の間隔で並んで設けられている。接続端子17a、17bは、例えば、銅および/または金などの導電膜からなる。
【0063】
本実施形態の電磁波センサ1に備えられている各サーミスタ素子4は、図1および図2に示すように、平面視において、複数の第1のリード配線9aと複数の第2のリード配線9bとによって区画された領域毎に設けられている。
複数のサーミスタ素子4は、図2および図4に示すように、一対の第1の接続部材11a、11bによって、第3の方向Zに吊り下げられた状態で支持されている。これにより、図4に示すように、サーミスタ素子4と第1の絶縁体層8との間には、空間Gが設けられている。また、図4に示すように、各サーミスタ素子4の有するサーミスタ膜5と、第1の基板2の厚さ方向において対向する領域(平面視で重なる領域)には、第1の基板2とサーミスタ膜5との間で赤外線IRを透過させる窓部Wが存在している。
【0064】
本実施形態の電磁波センサ1では、測定対象から放出された赤外線IRが第1の基板2側から窓部Wを通してサーミスタ素子4に入射する。サーミスタ素子4に入射した赤外線IRは、サーミスタ膜5の近傍に形成された第1絶縁膜7a、第2絶縁膜7b、第3絶縁膜7c、並びにサーミスタ膜5に吸収される。このことによって、サーミスタ膜5の温度が変化して電気抵抗が変化し、第1面側電極6である第1電極6aと第2電極6bとの間の出力電圧が変化する。したがって、本実施形態の電磁波センサ1では、サーミスタ素子4がボロメータ素子として機能する。
【0065】
本実施形態の電磁波センサ1は、測定対象から放出される赤外線IRを、複数のサーミスタ素子4により平面的に検出する。さらに、本実施形態の電磁波センサ1では、各サーミスタ素子4から出力される電気信号(電圧信号)を輝度温度に変換することによって、測定対象の温度分布(温度画像)を二次元的に検出(撮像)することが可能である。サーミスタ素子4において、サーミスタ膜5に定電圧を印加する場合、サーミスタ膜5の温度変化に対して、サーミスタ膜5に流れる電流の変化を検出して輝度温度に変換することも可能である。
【0066】
〔電磁波センサの製造方法〕
次に、本実施形態の電磁波センサ1の製造方法を説明する。本実施形態の電磁波センサ1は、例えば、以下に示す製造方法により製造できる。
まず、公知の方法により、第1の基板2上に第1の絶縁体層8、配線部9、レッグ部13a、13bなどの上述した各部材を形成する。その後、第1の基板2の第1の絶縁体層8側の面に、以下に示す方法により、サーミスタ素子4を形成する。
【0067】
図5図12は、図1に示す電磁波センサに備えられたサーミスタ素子の製造工程を順に説明するための断面図である。本実施形態においては、例えば、サーミスタ素子4を形成している各部材を、第1絶縁膜7a側に配置されている部材から順に第3絶縁膜7cまで形成する場合を例に挙げて説明する。
【0068】
初めに、上述した各部材が形成された第1の基板2の第1の絶縁体層8側の面に、レジストなどからなる公知の有機材料層30を形成する。次に、図5に示すように、有機材料層30の上に、例えば、酸化アルミニウム(Al)からなる第1絶縁膜7aを全面に亘って成膜する。
【0069】
次に、図5に示す第1絶縁膜7aの上に、例えば、チタン(Ti)からなる導電膜を全面に亘って成膜する。その後、フォトリソグラフィ技術を用いて導電膜をパターニングする。このことにより、図6に示すように、所定のパターン形状を有する配線層21a、21bを形成する。
【0070】
次に、図7に示すように、配線層21a、21bの上に、例えば、酸化アルミニウム(Al)からなる第2絶縁膜7bを全面に亘って成膜する。
次に、フォトリソグラフィ技術を用いて第2絶縁膜7bをパターニングする。このことにより、図8に示すように、配線層21a、21bの上に、それぞれ第2絶縁膜7bを貫通する開口部20a、20bを形成する。
【0071】
次に、開口部20a、20bを有する第2絶縁膜7bの上に、例えば、白金(Pt)からなる導電膜53を全面に亘って成膜し、開口部20a、20b内に、導電膜53を埋め込む。その後、フォトリソグラフィ技術を用いて導電膜53をパターニングする。このことにより、図9に示すように、第1電極6aと第2電極6bとからなる第1面側電極6を形成する。
【0072】
本実施形態において、白金(Pt)からなる第1面側電極6を形成する場合、第1面側電極6の膜厚は、20nm以上60nm以下であることが好ましい。白金(Pt)からなる第1面側電極6の膜厚が20nm以上であると、第1面側電極6が、第2絶縁膜7bからサーミスタ膜5への酸素の拡散を抑制する酸素拡散抑制層として効果的に機能する。また、白金(Pt)からなる第1面側電極6の膜厚が60nm以下であると、第1面側電極6を形成するために、導電膜53をパターニングするプロセスが容易であり、好ましい。
【0073】
次に、図10に示すように、第1面側電極6が設けられている第2絶縁膜7bの上に、スピネル型結晶構造を有する酸化物からなるサーミスタ材料膜54と、例えば、白金(Pt)からなる導電膜55とを、この順に全面に亘って成膜する。
次に、フォトリソグラフィ技術を用いてサーミスタ材料膜54および導電膜55をパターニングすることにより、図11に示すように、互いに同じ形状にパターニングされた第2面側電極6cおよびサーミスタ膜5を形成する。
【0074】
本実施形態において、白金(Pt)からなる第2面側電極6cを形成する場合、第2面側電極6cの膜厚は、20nm以上60nm以下であることが好ましい。白金(Pt)からなる第2面側電極6cの膜厚が20nm以上であると、第2面側電極6cが、熱処理時に、熱処理雰囲気(例えば大気雰囲気)からサーミスタ膜5への酸素の拡散を抑制する酸素拡散抑制層として効果的に機能する。また、白金(Pt)からなる第2面側電極6cの膜厚が60nm以下であると、第2面側電極6cを形成するために、導電膜55をパターニングするプロセスが容易であり、好ましい。
【0075】
次に、本実施形態では、第2面側電極6cまでの各層が設けられた製造途中のサーミスタ素子に対して、大気雰囲気中で250℃以上の温度で熱処理(アニール)を施す。このことにより、第2絶縁膜7bから、第2絶縁膜7bと接して配置されているサーミスタ膜5に酸素が拡散する。このとき、第1面側電極6(第1電極6a、第2電極6b)と接して配置されているサーミスタ膜5への第2絶縁膜7bからの酸素の拡散は、第1電極6aおよび第2電極6bによって抑制される。また、第2面側電極6cと接して配置されているサーミスタ膜5への大気雰囲気からの酸素の拡散は、第2面側電極6cによって抑制される。その結果、第1領域5aの酸素濃度よりも第2領域5bの酸素濃度が高いサーミスタ膜5となる。
【0076】
上記熱処理における熱処理温度は、例えば、第2絶縁膜7bの材料が酸化アルミニウム(Al)である場合、例えば250℃以上であり、250℃~325℃であることが好ましい。熱処理温度が250℃以上であるので、第2絶縁膜7bから、第2絶縁膜7bと接して配置されているサーミスタ膜5に酸素を拡散させることができる。熱処理温度が325℃以下である場合、有機材料層30の膜減りによる層間剥離が生じにくいため好ましい。
【0077】
上記熱処理における熱処理時間は、例えば、0.5時間~5時間とすることができ、1時間~3時間とすることが好ましい。上記熱処理における熱処理時間は、サーミスタ素子4となる各部材の材料、第2絶縁膜7bの材料、サーミスタ膜5の材料および厚みなどに応じて適宜決定できる。
【0078】
本実施形態では、上記熱処理における雰囲気が大気雰囲気であるため、第2面側電極6cによって、大気雰囲気からサーミスタ膜5に酸素が拡散することを抑制できる。これに対し、例えば、上記熱処理を酸素雰囲気中で行う場合、第2面側電極6cによって酸素雰囲気からサーミスタ膜5への酸素の拡散を防止する効果が十分に得られず、サーミスタ膜5全体の酸素濃度が高くなる可能性がある。
【0079】
次に、図12に示すように、第2面側電極6cの上に、例えば、二酸化ケイ素(SiO)からなる絶縁膜を全面に亘って成膜し、第2面側電極6cの上、および第2面側電極6cおよびサーミスタ膜5の側面を被覆する第3絶縁膜7cを形成する。その後、パターニングすることにより、サーミスタ素子4およびアーム部12a、12bを図4に示すような所定の形状に形成する。
その後、有機材料層30をアッシングにより除去することにより、空間Gを形成する。
以上の工程を経ることにより、上記サーミスタ素子4が得られる。
【0080】
また、公知の方法により、上述した各部材を有する第2の基板3を製造する。
そして、サーミスタ素子4を有する第1の基板2の一方の面(サーミスタ素子4側の面)上に第2の基板3を配置する。その後、公知の方法により、上述した各部材を用いて、第1の基板2と第2の基板3とを電気的に接続するとともに、第1の基板2と第2の基板3の対向面の周囲をシール材(図示せず。)により封止して、その間に密閉された内部空間K(図2参照)を形成する。
以上の工程を経ることにより、本実施形態の電磁波センサ1が得られる。
【0081】
本実施形態のサーミスタ素子4は、スピネル型結晶構造を有する酸化物からなり、平面視で第1電極6aおよび第2面側電極6cと重なる領域と、平面視で第2電極6bおよび第2面側電極6cと重なる領域とからなる第1領域5aよりも、平面視で第1電極6aと第2電極6bとの間に位置する第2領域5bの酸素濃度が高いサーミスタ膜5を備える。したがって、本実施形態のサーミスタ素子4においては、サーミスタ膜5の第2領域6c内を面内方向に電流が流れにくくなる。
【0082】
このため、本実施形態のサーミスタ素子4を備える電磁波センサ1は、サーミスタ素子4のサーミスタ膜5内を面内方向に流れる電流成分による測定精度の低下が生じにくく、測定精度が良好なものとなる。
【0083】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、各実施形態における各構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。
【0084】
例えば、本発明のサーミスタ素子は、上述した複数のサーミスタ素子4をアレイ状に配列した赤外線イメージセンサに適用されたものに必ずしも限定されるものではない。本発明のサーミスタ素子は、サーミスタ素子4を単体で用いた電磁波センサに適用してもよいし、複数のサーミスタ素子4を線状に並べて配列した電磁波センサなどにも適用可能である。
また、本発明のサーミスタ素子は、温度を測定する温度センサとして用いることも可能である。
【0085】
また、上述した実施形態では、第2面側電極6cまでの各層が設けられた製造途中のサーミスタ素子に対して、大気雰囲気中で250℃以上の温度で熱処理(アニール)を施すことにより、スピネル型結晶構造を有する酸化物からなるサーミスタ膜5の第1領域5aよりも第2領域5bの酸素濃度を高くする場合を例に挙げて説明したが、本発明のサーミスタ素子を製造する方法は、第1領域5aよりも第2領域5bの酸素濃度が高い、スピネル型結晶構造を有する酸化物からなるサーミスタ膜5を形成できればよく、上記の方法に限定されるものではない。
【0086】
また、サーミスタ素子4の有するサーミスタ膜5、第1電極6a、第2面側電極6cおよび第2の電極6bの平面形状は、適宜変更可能である。
また、上述した実施形態のサーミスタ素子4において、開口部20a、20bの形状および配置、数については、上述した構成に必ずしも限定されるものではなく、適宜変更可能である。
【実施例0087】
(実施例1)
〔電磁波センサの製造方法〕
以下に示す製造方法により図12に示すサーミスタ素子4を製造した。
シリコン基板からなる第1の基板2上に、第1の絶縁体層8、配線部9、レッグ部13a、13bなどの図4に示す各部材を形成し、第1の絶縁体層8側の面に、レジストからなる有機材料層30を設けた。次に、図5に示すように、有機材料層30の上に、スパッタリング法により、酸化アルミニウム(Al)からなる厚み200nmの第1絶縁膜7aを全面に亘って成膜した。
【0088】
次に、図5に示す第1絶縁膜7aの上に、スパッタリング法により、チタン(Ti)からなる厚み60nmの導電膜を全面に亘って成膜した。その後、フォトリソグラフィ技術を用いて導電膜をパターニングした。このことにより、図6に示すように、所定のパターン形状を有する配線層21a、21bを形成した。
【0089】
次に、図7に示すように、配線層21a、21bの上に、スパッタリング法により、酸化アルミニウム(Al)からなる厚み70nmの第2絶縁膜7bを全面に亘って成膜した。
次に、フォトリソグラフィ技術を用いて第2絶縁膜7bをパターニングした。このことにより、図8に示すように、配線層21a、21bの上に、それぞれ第2絶縁膜7bを貫通する直径1.2μmの円形形状を有する開口部20a、20bを形成した。
【0090】
次に、開口部20a、20bを有する第2絶縁膜7bの上に、スパッタリング法により、白金(Pt)からなる厚み30nmの導電膜53を全面に亘って成膜し、開口部20a、20b内に、導電膜53を埋め込んだ。その後、フォトリソグラフィ技術を用いて導電膜53をパターニングした。このことにより、図9に示すように、第1電極6aと第2電極6bとからなる第1面側電極6を形成した。
【0091】
次に、図10に示すように、第1面側電極6が設けられている第2絶縁膜7bの上に、スパッタリング法により、スピネル型結晶構造を有する酸化物からなる厚み100nmのサーミスタ材料膜54と、白金(Pt)からなる厚み20nmの導電膜55とを、この順に全面に亘って成膜した。
サーミスタ材料膜54としては、母材金属元素がCoとMnであって、添加元素としてNiを含むスピネル型結晶構造を有する酸化物(Co:Mn:Ni=43.7原子%:42.3原子%:14.0原子%)を用いた。
【0092】
次に、フォトリソグラフィ技術を用いてサーミスタ材料膜54および導電膜55をパターニングすることにより、図11に示すように、互いに同じ形状にパターニングされた第2面側電極6cおよびサーミスタ膜5を形成した。
【0093】
次に、第2面側電極6cまでの各層が設けられた製造途中のサーミスタ素子に対して、大気雰囲気中、温度250℃で1時間、熱処理(アニール)を施した。
次に、図12に示すように、第2面側電極6cの上に、スパッタリング法により、酸化アルミニウム(Al)からなる第3絶縁膜7cを全面に亘って成膜した。このことにより、第2面側電極6cの上、および第2面側電極6cおよびサーミスタ膜5の側面を被覆する第3絶縁膜7cを形成した。
その後、有機材料層30をアッシングにより除去した。
以上の工程を経ることにより、実施例1のサーミスタ素子4を得た。
【0094】
このようにして得られたサーミスタ素子4のサーミスタ膜5について、以下に示す方法により、厚み方向の酸素濃度を測定した。
≪酸素濃度の測定≫
Dual Beam FIB(集束イオンビーム(Focus Ion Beam))加工観察装置(商品名:Helios450F1;Thermo Fisher社製)を用いて、サーミスタ素子4を薄膜加工し、試験体を作製した。試験体として、サーミスタ膜5における、平面視で第1電極6aおよび第2面側電極6cと重なる領域と、平面視で第2電極6bおよび第2面側電極6cと重なる領域とからなる第1領域5aの断面、および平面視で第1電極6aと第2電極6bとの間に位置する第2領域5bの断面を観察できるものを作製した。
【0095】
このようにして得られた試験体について、走査透過型電子顕微鏡(STEM(Scanning Transmission Electron Microscope)(商品名:ARM200F;日本電子社製)を用いて、試験体上を第1面側電極6側から第2面側電極6c側に走査しながらエネルギー分散型X線分析(EDS)(商品名:NSS(NORAN System Seven);Thermo Fisher社製)を行った。このことにより、第1領域5aの断面と第2領域5bの断面における厚み方向の酸素(O)、チタン(Ti)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、コバルト(Co)、白金(Pt)の各元素濃度を測定した。その結果を、図13および図14に示す。
【0096】
図13は、実施例1のサーミスタ素子4の第1領域5aを含む断面の厚み方向の位置と各元素濃度との関係を示したグラフである。図14は、実施例1のサーミスタ素子4の第2領域5bを含む断面の厚み方向の位置と各元素濃度との関係を示したグラフである。
図13および図14における横軸は、第1絶縁膜7aと第3絶縁膜7cとの間の厚み方向の位置であって、第1絶縁膜7a中の任意の位置を0とした時の位置(nm)を示している。また、図13および図14における縦軸は、元素濃度(原子%)を示している。
【0097】
図13および図14における白金(Pt)のピークは、試験体における第1面側電極6および第2面側電極6cの厚み方向の位置を示す。また、チタン(Ti)のピークは、試験体における配線層21a、21bの厚み方向の位置を示す。マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)のピークは、試験体におけるサーミスタ膜5の厚み方向の位置を示す。アルミニウム(Al)のピークは、試験体における第1絶縁膜7a、第2第2絶縁膜7b、第3絶縁膜7cの厚み方向の位置を示す。
【0098】
図13に示すマンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)が検出されている領域の酸素(O)のピークは、第1領域5aにおけるサーミスタ膜5中の酸素濃度を示している。
また、図14に示すマンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)が検出されている領域の酸素(O)のピークは、第2領域5bにおけるサーミスタ膜5中の酸素濃度を示している。
【0099】
図13に示すように、サーミスタ膜5の第1領域5aの酸素濃度は30原子%~40原子%の範囲であった。また、図14に示すように、サーミスタ膜5の第2領域5bの酸素濃度は、50原子%程度で厚み方向に略一定であった。このことから、実施例1のサーミスタ素子4のサーミスタ膜5は、第1領域5aの酸素濃度よりも第2領域5bの酸素濃度が高いものであることが確認できた。また、図13および図14に示すように、サーミスタ膜5を厚み方向に、第2面側電極6cに近い領域、第2面側電極6cから遠い領域および厚み方向の中央部を含む領域の3つの領域に3等分した際に、3つの領域のどの領域においても、第2領域5bの酸素濃度は、第1領域5aの酸素濃度よりも高いことが確認できた。
【0100】
(実験例1)
シリコン基板の上に、酸化アルミニウム(Al)からなる厚み200nmの絶縁膜を全面に亘って成膜し、その上に、スピネル型結晶構造を有する酸化物からなる厚み100nmのサーミスタ材料膜を全面に亘って成膜し、実験例1の積層体を得た。
サーミスタ材料膜としては、母材金属元素がCoとMnであって、添加元素としてNiを含むスピネル型結晶構造を有する酸化物(Co:Mn:Ni=43.7原子%:42.3原子%:14.0原子%)を用いた。
【0101】
(実験例2)
サーミスタ材料膜として、母材金属元素がMnとNiであって、添加元素としてFe、CuおよびZrを含むスピネル型結晶構造を有する酸化物(Mn:Ni:Fe:Cu:Zr=35.1原子%:32.8原子%:24.1原子%:4.9原子%:3.1原子%)を用いたこと以外は、実験例1と同様にして実験例2の積層体を得た。
【0102】
このようにして得られた実験例1および実験例2の積層体のサーミスタ材料膜に対して、それぞれ面内方向に電流を流し、四探針法シート抵抗測定器(商品名:Prometrix RS75;KLA-Tencor社製)を用いて、抵抗率を測定した。その結果を表1に示す。
【0103】
また、実験例1および実験例2の積層体を、それぞれDual Beam FIB(集束イオンビーム(Focus Ion Beam))加工観察装置(商品名:Helios450F1;Thermo Fisher社製)を用いて薄膜加工し、試験体を作製した。
【0104】
得られた試験体について、走査透過型電子顕微鏡(STEM(Scanning Transmission Electron Microscope)(商品名:ARM200F;日本電子社製)を用いて、試験体上を、サーミスタ材料膜の絶縁膜側から表面側に向かって走査しながらエネルギー分散型X線分析(EDS)(商品名:NSS(NORAN System Seven);Thermo Fisher社製)を行った。このことにより、実験例1および実験例2の積層体のサーミスタ材料膜の断面における厚み方向の酸素(O)濃度を測定した。
【0105】
その後、サーミスタ膜5を厚み方向に、絶縁膜に近い領域、絶縁膜から遠い領域(表面に近い領域)および厚み方向の中央部を含む領域の3つの領域に3等分した際の、中央部を含む領域の複数の測定点の酸素(O)濃度の測定結果を用いて、相加平均を算出し、サーミスタ材料膜の平均酸素濃度とした。測定点の厚み方向の間隔は2.4nmとした。その結果を表1に示す。
【0106】
また、実験例1および実験例2の積層体に対して、大気雰囲気中、温度250℃で1時間、熱処理(アニール)を施した。その後、熱処理前と同様にして、実験例1および実験例2の積層体のサーミスタ材料膜に対して面内方向に電流を流し、抵抗率を測定した。その結果を表1に示す。
【0107】
また、熱処理(アニール)後の実験例1および実験例2の積層体から、それぞれ熱処理前と同様の方法により試験体を採取し、熱処理前と同様にして、厚み方向の酸素濃度を測定し、サーミスタ材料膜の平均酸素濃度を算出した。その結果を表1に示す。
【0108】
【表1】
【0109】
表1に示すように、実験例1および実験例2のいずれにおいても、熱処理前のサーミスタ材料膜と比較して、熱処理後のサーミスタ材料膜は、酸素濃度が高いものであった。
また、実験例1および実験例2のいずれにおいても、熱処理前の酸素濃度が相対的に低いサーミスタ材料膜と比較して、熱処理後の酸素濃度が相対的に高いサーミスタ材料膜は、抵抗率の高いものであった。
【符号の説明】
【0110】
1…電磁波センサ 2…第1の基板 3…第2の基板 4…サーミスタ素子 5…サーミスタ膜 5a…第1領域 5b…第2領域 6…第1面側電極 6a…第1電極 6b…第2電極 6c…第2面側電極 7a…第1絶縁膜 7b…第2絶縁膜 7c…第3絶縁膜 8…第1の絶縁体層 9…配線部 9a…第1のリード配線 9b…第2のリード配線 10…第1の接続部 11a、11b…第1の接続部材 12a、12b…アーム部 13a、13b…レッグ部 14…第2の絶縁体層 15…回路部 16…第2の接続部 17a、17b…接続端子 18a、18b…第2の接続部材 20a、20b…開口部、21a、21b…配線層、 30…有機材料層 53、55…導電膜 54…サーミスタ材料膜 E…領域、G…空間 IR…赤外線 K…内部空間 W…窓部。
図1
図2
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図10
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図14