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特開2024-128514血圧測定装置、制御方法、制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128514
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】血圧測定装置、制御方法、制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/022 20060101AFI20240913BHJP
【FI】
A61B5/022 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037507
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】503246015
【氏名又は名称】オムロンヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】中脇 望
(72)【発明者】
【氏名】久保 誠雄
(72)【発明者】
【氏名】福田 泰士
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 一騎
(72)【発明者】
【氏名】樋口 裕哉
【テーマコード(参考)】
4C017
【Fターム(参考)】
4C017AA08
4C017AA09
4C017AB01
4C017AC01
4C017AD01
4C017AD11
4C017BB12
4C017BC01
4C017BC11
4C017BC23
4C017BD05
4C017CC01
4C017CC08
4C017DD14
4C017DD17
4C017DE01
4C017DE05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】情報端末において測定情報を短時間で確認可能な血圧測定装置とその制御方法及び制御プログラムを提供する。
【解決手段】血圧測定装置100は、通信部15と、プロセッサ11と、圧力センサ32と、カフ20の圧力を調整する調整機構50と、を有し、プロセッサ11は、調整機構50を制御してカフ20の圧力を変動させながら圧力センサ32の出力を取得し、当該出力に基づいて血圧情報を導出する本処理と、調整機構50を制御してカフ20の圧力を閾値以下まで減少させる後処理と、を含む測定処理を行い、スマートフォン200と近距離無線通信の接続を確立し、第1処理で得られた情報を通信部15からスマートフォン200に送信する送信処理を行い、上記測定処理の終了タイミング(時刻T4)よりも前のタイミング(時刻T3)で上記送信処理を開始する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
近距離無線通信部と、プロセッサと、測定用センサと、カフの圧力を調整する調整機構と、を有する血圧測定装置であって、
前記プロセッサは、
前記調整機構を制御して前記カフの圧力を変動させながら前記測定用センサの出力を取得し、当該出力に基づいて血圧情報を導出する第1処理と、前記調整機構を制御して前記カフの圧力を閾値以下まで減少させる第2処理と、を含む測定処理を行い、
情報端末と近距離無線通信の接続を確立し、前記第1処理で得られた情報を前記近距離無線通信部から前記情報端末に送信する送信処理を行い、
前記測定処理の終了タイミングよりも前のタイミングで前記送信処理を開始する、血圧測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の血圧測定装置であって、
前記プロセッサは、前記第1処理が終了してから前記第2処理が終了するまでの期間に前記送信処理を開始する、血圧測定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の血圧測定装置であって、
前記プロセッサは、前記第1処理を終了したタイミングで前記送信処理を開始する、血圧測定装置。
【請求項4】
請求項1に記載の血圧測定装置であって、
前記プロセッサは、前記第1処理において取得した前記測定用センサの出力が、前記血圧情報の導出に必要な条件を満たしたことを契機として、前記送信処理を開始する、血圧測定装置。
【請求項5】
請求項4に記載の血圧測定装置であって、
前記プロセッサは、前記第1処理において、前記条件が満たされたタイミングと、前記血圧情報の導出を完了したタイミングの間の期間に、前記送信処理を開始する、血圧測定装置。
【請求項6】
請求項5に記載の血圧測定装置であって、
前記プロセッサは、前記第1処理において前記条件が満たされたタイミングで前記送信処理を開始する、血圧測定装置。
【請求項7】
近距離無線通信部と、測定用センサと、カフの圧力を調整する調整機構と、を有する血圧測定装置の制御方法であって、
前記調整機構を制御して前記カフの圧力を変動させながら前記測定用センサの出力を取得し、当該出力に基づいて血圧情報を導出する第1処理と、前記調整機構を制御して前記カフの圧力を閾値以下まで減少させる第2処理と、を含む測定処理を行い、
情報端末と近距離無線通信の接続を確立し、前記第1処理で得られた情報を前記近距離無線通信部から前記情報端末に送信する送信処理を行い、
前記測定処理の終了タイミングよりも前のタイミングで前記送信処理を開始する、ステップをプロセッサが実行する制御方法。
【請求項8】
近距離無線通信部と、測定用センサと、カフの圧力を調整する調整機構と、を有する血圧測定装置の制御プログラムであって、
前記調整機構を制御して前記カフの圧力を変動させながら前記測定用センサの出力を取得し、当該出力に基づいて血圧情報を導出する第1処理と、前記調整機構を制御して前記カフの圧力を閾値以下まで減少させる第2処理と、を含む測定処理を行い、
情報端末と近距離無線通信の接続を確立し、前記第1処理で得られた情報を前記近距離無線通信部から前記情報端末に送信する送信処理を行い、
前記測定処理の終了タイミングよりも前のタイミングで前記送信処理を開始する、ステップをプロセッサに実行させる制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血圧測定装置、制御方法、及び制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
血圧測定装置で測定した情報の記録及び分析を行う場合には、測定情報を、情報端末に都度ユーザが入力するのではなく、血圧測定装置と情報端末とを通信可能に接続し、情報端末が自動的に測定情報を取得できるようになっていることが望ましい。具体的には、例えば、Bluetooth(登録商標)等の近距離無線通信によって、血圧測定装置からの測定情報を情報端末が受信する方法等が考えられる。
【0003】
特許文献1には、生体情報計測ユニットと、無線通信ユニットと、を備え、無線通信ユニットが、生体情報計測ユニットにより生成された血圧データ及び不規則脈波の発生状況を表すデータと、その計測時刻を含む生体情報を、その都度あるいは一定時間分蓄積した後、無線通信ネットワークを介して疾患発症リスク予測装置へ送信するウエアラブル端末が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-115614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
血圧測定装置から情報端末に送信する情報量が多くなると、情報の送信に時間がかかる。情報の送信に時間がかかると、例えば、血圧測定装置では測定が完了して血圧情報の表示がされているにもかかわらず、血圧測定装置と接続された情報端末では、測定結果をしばらく確認できないといったことが起こり得る。なお、血圧測定装置から情報端末に送信する情報量が少ない場合でも、同様に情報の送信に時間がかかると、情報端末において測定結果をしばらく確認できないといったことが起こり得る。
【0006】
本発明の目的は、情報端末において測定情報を短時間で確認可能な血圧測定装置、制御方法、及び制御プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の技術は以下の通りである。なお、括弧内には、以降の実施形態において対応する構成要素等を示しているが、これに限定されるものではない。
【0008】
(1) 近距離無線通信部(通信部15)と、プロセッサ(プロセッサ11)と、測定用センサ(圧力センサ32)と、カフ(カフ20)の圧力を調整する調整機構(調整機構50)と、を有する血圧測定装置(血圧測定装置100)であって、
前記プロセッサは、
前記調整機構を制御して前記カフの圧力を変動させながら前記測定用センサの出力を取得し、当該出力に基づいて血圧情報(最高血圧、最低血圧、平均血圧値、脈拍、又はAI(Augmentation Index)値等)を導出する第1処理(本処理)と、前記調整機構を制御して前記カフの圧力を閾値以下まで減少させる第2処理(後処理)と、を含む測定処理を行い、
情報端末(スマートフォン200)と近距離無線通信の接続を確立し、前記第1処理で得られた情報(血圧情報や血圧情報の導出過程で得られる脈波データ)を前記近距離無線通信部から前記情報端末に送信する送信処理を行い、
前記測定処理の終了タイミング(時刻T4)よりも前のタイミング(時刻T3)で前記送信処理を開始する、血圧測定装置。
【0009】
(1)によれば、測定処理が終了する前に送信処理が開始されるため、例えば、測定処理が終了してから送信処理が開始される場合と比べると、第1処理で得られた情報が情報端末に送信完了されるまでの時間を短縮できる。これにより、測定処理が終了してから、短時間で、情報端末において血圧情報等を確認可能となり、ユーザの満足度を向上させることができる。
【0010】
(2) (1)に記載の血圧測定装置であって、
前記プロセッサは、前記第1処理が終了してから前記第2処理が終了するまでの期間(時刻T3と時刻T4の間)に前記送信処理を開始する、血圧測定装置。
【0011】
(2)によれば、血圧情報の測定精度に影響を与え得る処理(脈波データ取得処理)を含む第1処理が行われる期間には送信処理が開始されないため、送信処理が血圧情報の測定精度に影響を与えるのを防ぐことができ、血圧情報の測定精度を高めることができる。
【0012】
(3) (2)に記載の血圧測定装置であって、
前記プロセッサは、前記第1処理を終了したタイミング(時刻T3)で前記送信処理を開始する、血圧測定装置。
【0013】
(3)によれば、情報端末に対して情報をより早期に送信することができる。
【0014】
(4) (1)に記載の血圧測定装置であって、
前記プロセッサは、前記第1処理において取得した前記測定用センサの出力が、前記血圧情報の導出に必要な条件を満たしたことを契機として、前記送信処理を開始する、血圧測定装置。
【0015】
(4)によれば、血圧情報の導出に必要な条件が満たされた状態で送信処理が開始されるため、送信処理が血圧情報の測定精度に影響を与えるのを防ぐことができ、血圧情報の測定精度を高めることができる。また、第1処理の際中に送信処理が開始されるため、情報の送信完了までの時間をより短縮できる。
【0016】
(5) (4)に記載の血圧測定装置であって、
前記プロセッサは、前記第1処理において、前記条件が満たされたタイミング(時刻T2)と、前記血圧情報の導出を完了したタイミング(時刻T3)の間の期間に、前記送信処理を開始する、血圧測定装置。
【0017】
(5)によれば、血圧情報の導出に必要な条件が満たされた状態で送信処理が開始されるため、送信処理が血圧情報の測定精度に影響を与えるのを防ぐことができ、血圧情報の測定精度を高めることができる。また、第1処理の際中に送信処理が開始されるため、情報の送信完了までの時間をより短縮できる。
【0018】
(6) (5)に記載の血圧測定装置であって、
前記プロセッサは、前記第1処理において前記条件が満たされたタイミング(時刻T2)で前記送信処理を開始する、血圧測定装置。
【0019】
(6)によれば、情報の送信完了までの時間をより短縮できる。
【0020】
(7)
近距離無線通信部と、測定用センサと、カフの圧力を調整する調整機構と、を有する血圧測定装置の制御方法であって、
前記調整機構を制御して前記カフの圧力を変動させながら前記測定用センサの出力を取得し、当該出力に基づいて血圧情報を導出する第1処理と、前記調整機構を制御して前記カフの圧力を閾値以下まで減少させる第2処理と、を含む測定処理を行い、
情報端末と近距離無線通信の接続を確立し、前記第1処理で得られた情報を前記近距離無線通信部から前記情報端末に送信する送信処理を行い、
前記測定処理の終了タイミングよりも前のタイミングで前記送信処理を開始する、ステップをプロセッサが実行する制御方法。
【0021】
(8)
近距離無線通信部と、測定用センサと、カフの圧力を調整する調整機構と、を有する血圧測定装置の制御プログラムであって、
前記調整機構を制御して前記カフの圧力を変動させながら前記測定用センサの出力を取得し、当該出力に基づいて血圧情報を導出する第1処理と、前記調整機構を制御して前記カフの圧力を閾値以下まで減少させる第2処理と、を含む測定処理を行い、
情報端末と近距離無線通信の接続を確立し、前記第1処理で得られた情報を前記近距離無線通信部から前記情報端末に送信する送信処理を行い、
前記測定処理の終了タイミングよりも前のタイミングで前記送信処理を開始する、ステップをプロセッサに実行させる制御プログラム。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、情報端末において測定結果を短時間で確認可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、管理システムの概略構成を示す模式図である。
図2図2は、血圧情報の測定時のプロセッサ11の処理内容を説明するためのタイミングチャートである。
図3図3は、血圧情報の測定時のプロセッサ11の処理内容の変形例を説明するためのタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(本開示の血圧測定装置及び情報端末の概要)
本開示における血圧測定装置と情報端末は、近距離無線通信によって通信可能である。カフの圧力を調整する調整機構と、測定用センサと、を含む血圧測定装置のプロセッサは、血圧情報の測定操作を検知すると、上記調整機構を制御して上記カフの圧力を変動させながら上記測定用センサの出力を取得し、当該出力に基づいて血圧情報を導出する第1処理と、上記調整機構を制御して上記カフの圧力を閾値以下まで減少させる第2処理と、を含む測定処理を行い、情報端末と近距離無線通信の接続を確立し、上記第1処理で得られた情報を上記近距離無線通信部から上記情報端末に送信する送信処理を行う。プロセッサは、上記測定処理の終了タイミングよりも前のタイミングで上記送信処理を開始する。これにより、測定処理が終了する前に送信処理が開始されるため、例えば、測定処理が終了してから送信処理が開始される場合と比べると、第1処理で得られた情報が情報端末に送信完了されるまでの時間を短縮でき、ユーザの満足度を向上させることができる。
【0025】
以下、本開示の血圧測定装置及び情報端末を含む管理システムの構成例について説明する。
【0026】
(システム構成)
図1は、管理システムの概略構成を示す模式図である。管理システムは、血圧測定装置100と、情報端末の一例であるスマートフォン200と、を備え、血圧測定装置100とスマートフォン200は近距離無線通信によって通信可能な構成となっている。情報端末は、スマートフォンに限らず、パーソナルコンピュータ又はタブレット端末等であってもよい。近距離無線通信の方式は特に限定されないが、例えば、Wi-Fi、ANT、Bluetooth(登録商標)、又は赤外線通信等の方法を採用することができる。以下では、近距離無線通信の方式をBluetooth(登録商標)として説明する。血圧測定装置100とスマートフォン200を共に所有する所有者のことを以下ではユーザと記載する。
【0027】
(血圧測定装置)
血圧測定装置100は、ユーザ(被測定者)の血圧情報を測定するものであり、本体部10と、ユーザの測定部位(例えば上腕)に巻き付け可能なカフ20と、本体部10とカフ20を接続するエアチューブ31と、を備える。「血圧情報」とは、循環器系の特徴を示す情報であり、脈波、及び脈波より算出可能な指標、例えば、最高血圧、最低血圧、平均血圧値、脈拍、AI(Augmentation Index)値等を含む。以下では、血圧情報が最高血圧と最低血圧であるものとして説明する。
【0028】
本体部10は、エアチューブ31に接続されるエア系30と、エア系30に接続された発振回路33と、カフ20の圧力を調整する調整機構50と、プロセッサ11と、表示部12と、記憶部13と、操作部14と、通信部15と、電源16とを、備える。
【0029】
エア系30は、カフ20に設けられた空気袋21内の圧力(カフ圧)を検出するための圧力センサ32と、カフ圧を加圧するために、空気袋21に空気を供給するためのポンプ51と、空気袋21の空気を排出又は封入するために開閉される弁52と、を含む。圧力センサ32は、血圧情報の測定に用いられる測定用センサの1つである。
【0030】
圧力センサ32は、一例として静電容量形の圧力センサであり、カフ圧により容量値が変化する。発振回路33は、圧力センサ32に接続されており、圧力センサ32の容量値に応じた発振周波数の信号をプロセッサ11に出力する。プロセッサ11は、発振回路33から得られる信号を圧力に変換しカフ圧を検出する。
【0031】
調整機構50は、プロセッサ11から与えられる制御信号に基づいてカフ圧を調整する機構である。調整機構50は、エア系30の一部であるポンプ51及び弁52に加えて、ポンプ駆動回路53と弁駆動回路54とを備える。ポンプ駆動回路53は、プロセッサ11から与えられる制御信号に基づいてポンプ51を駆動する。弁駆動回路54は、プロセッサ11から与えられる制御信号に基づいて弁52の開閉制御を行う。調整機構50は、図示した構成に限定されるものではない。
【0032】
表示部12は、例えば有機EL(electro-luminescence)ディスプレイ又は液晶ディスプレイ等によって構成され、測定された血圧情報等を表示する。
【0033】
記憶部13は、RAM(Random Access Memory)等のワークメモリの他、例えばフラッシュメモリ等の非一時的な記憶媒体を含んで構成される。この記憶媒体には、測定された血圧情報等の各種の情報が記憶される。また、この記憶媒体には、プロセッサ11が実行する制御プログラムが記憶される。
【0034】
操作部14は、ユーザからの入力を受け付けるボタン又はタッチパネル等の入力手段であり、ユーザから、電源のON/OFF、血圧情報の測定開始、及び項目の選択等の各種操作を受け付ける。操作部14には、例えば、血圧情報の測定開始を指示するための測定開始ボタンが含まれる。
【0035】
通信部15は、近距離無線通信を行うための通信インタフェースであり、通信用アンテナと各種回路とを含む。
【0036】
プロセッサ11は、本体部10の各部を統括制御する。プロセッサ11は、ソフトウエア(プログラム)を実行して各種機能を果たす汎用的なプロセッサであるCPU(Central Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device:PLD)、又は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等である。プロセッサ11は、1つのプロセッサで構成されてもよいし、同種または異種の2つ以上のプロセッサの組み合せ(例えば、複数のFPGAや、CPUとFPGAの組み合わせ)で構成されてもよい。プロセッサ11のハードウエア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路(circuitry)である。
【0037】
プロセッサ11は、操作部14に含まれる測定開始ボタンの押圧を検出すると、測定開始の指示を受け付け、カフ20を加圧し、適切なカフ圧下で得られる圧力センサ32の出力に基づいて、血圧情報を導出する。プロセッサ11は、導出した血圧情報を表示部12に表示させる。また、プロセッサ11は、導出した血圧情報と、この血圧情報の導出過程で得られた脈波振幅等の他情報と、を含む測定データを、通信部15からスマートフォン200に送信する。
【0038】
(情報端末)
スマートフォン200は、プロセッサ201と、通信部202と、記憶部203と、操作部204と、表示部205と、を備える。
【0039】
通信部202は、近距離無線通信を行うための通信インタフェースであり、通信用アンテナと各種回路とを含む。
【0040】
記憶部203は、RAM等のワークメモリの他、例えばフラッシュメモリ等の非一時的な記憶媒体を含んで構成される。
【0041】
操作部204は、ユーザからの入力を受け付けるボタン又はタッチパネル等の入力手段であり、ユーザからの各種操作を受け付ける。
【0042】
表示部205は、例えば有機ELディスプレイ又は液晶ディスプレイ等によって構成される。
【0043】
プロセッサ201は、スマートフォン200の各部を統括制御する。プロセッサ201は、通信部202を介して血圧測定装置100から測定データを受信すると、この測定データを記憶部203に記憶する。プロセッサ201は、記憶部203に記憶した測定データを表示部205に表示する制御を行う。これにより、ユーザは、血圧測定装置100で測定して得られた測定データの詳細をスマートフォン200で確認したり、複数回の測定データの時系列変化等をスマートフォン200で確認したりできるようになる。
【0044】
(血圧情報の測定方法)
血圧測定装置100のプロセッサ11は、オシロメトリック法に従い血圧情報を算出する。プロセッサ11は、測定開始ボタンの押圧を検出すると、調整機構50を制御して、カフ圧を初期状態から所定値まで増加させる加圧制御を行う。プロセッサ11は、ユーザの最高血圧以上の十分に高い所定値までカフ圧を加圧した後で、カフ圧を一定の速度で減少させる減圧制御を行う。プロセッサ11は、この減圧制御を行っている期間において、発振回路33の出力信号を取得し、この出力信号を圧力値に変換してカフ圧を検出する。
【0045】
プロセッサ11は、検出したカフ圧から、定常的な圧力(カフ20による測定部位への圧迫圧力)と、生体の脈拍に同期して当該圧迫圧力に重畳される圧力成分である脈波データとを、例えばフィルタ処理により検出する。プロセッサ11は、検出した脈波データの振幅値(以下、脈波振幅と記載)を導出し、導出した脈波振幅とその脈波データが得られたときの圧迫圧力との関係を示すデータ(脈波包絡線)を利用して、周知の方法により最高血圧と最低血圧を決定する。なお、プロセッサ11は、加圧制御中にカフ圧を検出して脈波包絡線を生成することも可能である。オシロメトリック法によると、脈波包絡線の形状が、血圧値算出の精度を左右するといえる。
【0046】
本形態の血圧測定装置100では、プロセッサ11が、減圧制御中に検出したカフ圧に基づいて導出した血圧情報(最高血圧と最低血圧)と、その血圧情報の導出過程で得られた脈波データ等の他情報と、の少なくとも一方を含む情報を測定データとし、この測定データをスマートフォン200に送信する制御を行う。近距離無線通信によって測定データを送信する際には、無線電波等の影響によるノイズが圧力センサ32の出力や発振回路33の出力に含まれないようにすることが、血圧情報の導出精度を高めるうえで重要となる。本形態では、プロセッサ11が、測定データの送信タイミングを適切に制御することで、血圧情報の導出精度に影響を与えないようにしている。以下、血圧情報の測定時の動作の詳細について説明する。
【0047】
(測定動作)
図2は、血圧情報の測定時のプロセッサ11の処理内容を説明するためのタイミングチャートである。図2には、血圧情報の測定に関連する測定関連処理と、通信部15による通信に関連する通信関連処理とが示されている。
【0048】
プロセッサ11は、本体部10の電源ON操作を検出すると、通信部15による通信機能を有効化する。通信機能には、通信部15からアドバタイズ信号を送信すること、アドバタイズ信号に応答した外部機器との間で通信部15が接続を確立すること、外部機器との間でペアリングを行うこと、外部機器との間でデータの送受信を行うこと、等が含まれる。なお、本体部10の電源がOFFの状態においても、通信機能は有効化される構成としてもよい。通信機能を無効化する方法としては、通信部15への電力供給を停止する方法や、電力供給は行われるが通信部15を休止状態にする方法等が挙げられる。
【0049】
プロセッサ11は、時刻T1において測定開始ボタンの押圧を検出すると、通信部15による通信機能を無効化する。また、プロセッサ11は、血圧情報の測定のための前処理を開始する。この前処理には、例えば、記憶部13の所定の領域の初期化、空気袋21内の空気の排気、又は、圧力センサ32の補正等が含まれる。
【0050】
プロセッサ11は、前処理を終了すると、本処理を行う。この本処理には、脈波データ取得処理と、血圧情報導出処理と、が含まれる。脈波データ取得処理は、前述した加圧制御及び減圧制御を行うカフ圧調整処理と、減圧制御中に検出されるカフ圧を処理して圧迫圧力、脈波データ、及び脈波振幅を得るデータ取得処理と、を含む。脈波データ取得処理は、血圧情報の導出に必要な条件が満たされた時点で終了することができる。この条件とは、最高血圧と最低血圧を決定できるのに必要な数の脈波振幅(又はそれを取得するための検出カフ圧)が得られることである。
【0051】
血圧情報導出処理は、データ取得処理で得られた脈波振幅と圧迫圧力との関係を示す脈波包絡線に基づいて、最高血圧と最低血圧を決定する処理である。図2の例では、前処理の終了後、時刻T2において脈波データ取得処理が終了し、その後、時刻T3において血圧情報導出処理が終了して、最高血圧と最低血圧が決定された状態になっている。
【0052】
プロセッサ11は、時刻T3で血圧情報導出処理を終了すると、決定した最高血圧と最低血圧を表示部12に表示させる表示処理を行い、これと並行して、後処理を行う。この後処理は、具体的には、調整機構50を制御してカフ20の圧力を閾値以下まで減少させる排気処理を含む。閾値は例えば大気圧である。つまり、排気処理は、空気袋21に注入した空気の大部分を外部に排出して、測定部位からのカフ20の離脱を可能にするための処理である。
【0053】
この後処理は、血圧情報導出処理が行われる期間に開始することも可能である。つまり、後処理の開始タイミングは、時刻T2と時刻T3の間であってもよい。図2の例では、時刻T3において後処理が開始され、時刻T4において後処理が終了される。
【0054】
以上の前処理と本処理と後処理によって、血圧情報を測定する測定処理が構成される。本処理は第1処理を構成し、後処理は第2処理を構成する。
【0055】
プロセッサ11は、時刻T3で血圧情報導出処理を終了すると、通信機能を有効化して、通信部15とスマートフォン200との接続を確立させる。そして、プロセッサ11は、血圧情報導出処理で決定した最高血圧及び最低血圧を含む血圧情報と、この血圧情報の導出過程で得た脈波データと、の少なくとも一方を含む測定データを、通信部15からスマートフォン200に送信する送信処理を行う。このように、スマートフォン200との接続確立や、その後の測定データのスマートフォン200への送信は、後処理と並行して行われる。
【0056】
(実施形態の効果)
血圧測定装置100によれば、後処理が行われている間に、測定データ送信のための準備や測定データの送信が可能となる。このため、後処理の後に、測定データ送信のための準備や測定データの送信が可能になる構成と比べると、測定データがスマートフォン200に転送完了するタイミングを早めることができる。ユーザは、後処理が終了し、測定部位からカフ20を取外した後、長く待つことなく、スマートフォン200にて測定データの詳細を確認可能となる。この結果、ユーザの満足度を向上させることができる。
【0057】
(変形例)
測定開始ボタンの押圧が検出された後に、初めて通信機能を有効化するタイミングは、図3に示すように、時刻T2としてもよい。時刻T2では、血圧情報の決定に必要な脈波包絡線のデータは取得完了しているため、このタイミングで通信機能を有効化したとしても、血圧情報の導出精度に影響を与えるのを防ぐことができるためである。時刻T2において通信機能を有効化することで、測定データがスマートフォン200に転送完了するタイミングをより早めることができ、好ましい。
【0058】
また、通信機能を有効化するタイミングは、時刻T2に限らず、時刻T2と時刻T3の間の任意のタイミングとしてもよい。この場合でも、図2の動作と比べると、測定データがスマートフォン200に転送完了するタイミングを早めることができる。
【0059】
なお、後処理が開始されてから少し経過したタイミングで、通信機能を有効化してもよい。例えば、時刻T3と時刻T4の間において、通信機能を有効化してもよい。このようにした場合でも、後処理の終了後に通信機能を有効化する場合に比べると、測定データがスマートフォン200に転送完了するタイミングを早めることができる。また、後処理の開始直後は、空気袋21の空気が急激に排出されることになるため、空気がある程度抜けてきたタイミングで通信機能を有効化することで、通信を良好に行うことが可能となる。なお、図2の動作において、後処理の開始タイミングを時刻T2と時刻T3の間にすることでも、後処理の開始直後に通信が開始されるのを防ぐことができる。
【0060】
ここまでは、オシロメトリック法によって血圧情報を導出する例を示したが、プロセッサ11は、コロトコフ音を検出し、検出したコロトコフ音に基づいて血圧情報を導出してもよい。この場合には、圧力センサ32及び発振回路33の代わりに、測定用センサとしてのマイクロフォンが設けられる。プロセッサ11は、減圧制御中にマイクロフォンにより検出される音の振幅値を脈波振幅値の代わりに取得し、その振幅値に基づいて血圧情報を導出すればよい。
【符号の説明】
【0061】
10 本体部
100 血圧測定装置
11,201 プロセッサ
12,205 表示部
13,203 記憶部
14,204 操作部
15,202 通信部
16 電源
20 カフ
21 空気袋
30 エア系
31 エアチューブ
32 圧力センサ
33 発振回路
50 調整機構
51 ポンプ
52 弁
53 ポンプ駆動回路
54 弁駆動回路
200 スマートフォン
図1
図2
図3