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特開2024-128515リニア駆動機構およびインクジェットプリンタ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128515
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】リニア駆動機構およびインクジェットプリンタ
(51)【国際特許分類】
   B41J 19/18 20060101AFI20240913BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
B41J19/18 E
B41J2/01 303
B41J2/01 451
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037509
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000137823
【氏名又は名称】株式会社ミマキエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(72)【発明者】
【氏名】村井 厚介
【テーマコード(参考)】
2C056
2C480
【Fターム(参考)】
2C056EA01
2C056EB11
2C056EB35
2C056EB36
2C056EC07
2C056EC37
2C056FA10
2C056HA36
2C480CA01
2C480CA12
2C480CA31
2C480CB02
2C480CB31
2C480CB35
2C480CB39
2C480DA01
2C480EB06
(57)【要約】
【課題】直線的に往復移動する移動体と、移動体を移動可能に支持する支持体と、支持体に対して移動体を直線的に移動させる移動体駆動部とを備えるリニア駆動機構において、原点位置に対する現在位置が特定されていない移動体の停止位置にかかわらず、移動体を低速で移動させても、短時間で移動体の現在位置を特定することが可能なリニア駆動機構を提供する。
【解決手段】このリニア駆動機構では、支持体に対する移動体の位置を検知するための位置検知機構は、支持体に取り付けられる第1リニアスケール14および第2リニアスケール15を備えている。第1リニアスケール14に形成される多数の第1被検知部21のピッチは、第1リニアスケール14の長手方向の一端から他端に向かって次第に広くなっており、第2リニアスケール15に形成される多数の第2被検知部22のピッチは一定になっている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の方向に直線的に往復移動する移動体と、前記移動体を移動可能に支持する支持体と、前記支持体に対して前記移動体を直線的に移動させる移動体駆動部と、前記支持体に対する前記移動体の位置を検知するための位置検知機構とを備え、
前記位置検知機構は、前記支持体に取り付けられる第1リニアスケールおよび第2リニアスケールと、前記移動体に取り付けられる第1センサおよび第2センサと、前記第1センサの出力信号および前記第2センサの出力信号が入力される位置検知部とを備え、
前記移動体の往復移動方向となる前記第1リニアスケールおよび前記第2リニアスケールの長手方向をリニアスケール長手方向とし、前記支持体に対する前記移動体の基準位置を原点位置とすると、
前記第1リニアスケールには、前記第1センサによって検知される多数の第1被検知部が形成され、
前記第2リニアスケールには、前記第2センサによって検知される多数の第2被検知部が形成され、
多数の前記第1被検知部および多数の前記第2被検知部は、前記リニアスケール長手方向に配列され、
前記リニアスケール長手方向における多数の前記第1被検知部のピッチは、前記リニアスケール長手方向の一端から他端に向かって次第に広くなっており、
前記リニアスケール長手方向における多数の前記第2被検知部のピッチは、一定になっており、
前記位置検知部は、前記第1センサの出力信号および前記第2センサの出力信号に基づいて前記原点位置に対する前記移動体の現在位置を検知することを特徴とするリニア駆動機構。
【請求項2】
所定の方向に直線的に往復移動する移動体と、前記移動体を移動可能に支持する支持体と、前記支持体に対して前記移動体を直線的に移動させる移動体駆動部と、前記支持体に対する前記移動体の位置を検知するための位置検知機構とを備え、
前記位置検知機構は、前記支持体に取り付けられる被検知体およびリニアスケールと、前記移動体に取り付けられる第1センサおよび第2センサと、前記第1センサの出力信号および前記第2センサの出力信号が入力される位置検知部とを備え、
前記移動体の往復移動方向となる前記リニアスケールの長手方向をリニアスケール長手方向とし、前記支持体に対する前記移動体の基準位置を原点位置とすると、
前記被検知体には、前記第1センサによって検知される多数の第1被検知部が形成され、
前記リニアスケールには、前記第2センサによって検知される多数の第2被検知部が形成され、
多数の前記第1被検知部および多数の前記第2被検知部は、前記リニアスケール長手方向に配列され、
前記リニアスケール長手方向における多数の前記第1被検知部のそれぞれの長さは、前記リニアスケール長手方向の一端から他端に向かって次第に長くなっており、
前記リニアスケール長手方向における多数の前記第2被検知部のピッチは、一定になっており、
前記位置検知部は、前記第1センサの出力信号および前記第2センサの出力信号に基づいて前記原点位置に対する前記移動体の現在位置を検知することを特徴とするリニア駆動機構。
【請求項3】
所定の方向に直線的に往復移動する移動体と、前記移動体を移動可能に支持する支持体と、前記支持体に対して前記移動体を直線的に移動させる移動体駆動部と、前記支持体に対する前記移動体の位置を検知するための位置検知機構とを備え、
前記移動体駆動部は、駆動源としてのモータを備え、
前記位置検知機構は、前記支持体に取り付けられるリニアスケールと、前記移動体に取り付けられる第1センサと、前記モータのロータ側に取り付けられるロータリースケールと、前記モータのステータ側に取り付けられる第2センサと、前記第1センサの出力信号および前記第2センサの出力信号が入力される位置検知部とを備え、
前記支持体に対する前記移動体の基準位置を原点位置とすると、
前記リニアスケールには、前記第1センサによって検知される多数の第1被検知部が形成され、
前記ロータリースケールには、前記第2センサによって検知される多数の第2被検知部が形成され、
多数の前記第1被検知部は、前記リニアスケールの長手方向であるリニアスケール長手方向に配列され、
多数の前記第2被検知部は、前記ロータリースケールの周方向であるロータリースケール周方向に配列され、
前記リニアスケール長手方向における多数の前記第1被検知部のピッチは、前記リニアスケール長手方向の一端から他端に向かって次第に広くなっており、
前記ロータリースケール周方向における多数の前記第2被検知部のピッチは、一定になっており、
前記位置検知部は、前記第1センサの出力信号および前記第2センサの出力信号に基づいて前記原点位置に対する前記移動体の現在位置を検知することを特徴とするリニア駆動機構。
【請求項4】
所定の方向に直線的に往復移動する移動体と、前記移動体を移動可能に支持する支持体と、前記支持体に対して前記移動体を直線的に移動させる移動体駆動部と、前記支持体に対する前記移動体の位置を検知するための位置検知機構とを備え、
前記移動体駆動部は、駆動源としてのモータを備え、
前記位置検知機構は、前記支持体に取り付けられるリニアスケールと、前記移動体に取り付けられるセンサと、前記モータの回転速度を検知する速度検知部と、前記センサの出力信号および前記速度検知部の出力信号が入力される位置検知部とを備え、
前記支持体に対する前記移動体の基準位置を原点位置とすると、
前記リニアスケールには、前記センサによって検知される多数の被検知部が形成され、
多数の前記被検知部は、前記リニアスケールの長手方向であるリニアスケール長手方向に配列され、
前記リニアスケール長手方向における多数の前記被検知部のピッチは、前記リニアスケール長手方向の一端から他端に向かって次第に広くなっており、
前記位置検知部は、前記センサの出力信号および前記速度検知部の出力信号に基づいて前記原点位置に対する前記移動体の現在位置を検知することを特徴とするリニア駆動機構。
【請求項5】
請求項1または2記載のリニア駆動機構を備え、
前記移動体は、インクジェットヘッドが搭載されるキャリッジであり、
前記支持体は、前記キャリッジを支持するキャリッジ支持部材であり、
前記移動体駆動部は、前記キャリッジ支持部材に対して前記キャリッジを主走査方向に移動させ、
前記第2センサの検知結果に基づいて前記インクジェットヘッドからのインクの吐出制御を行うことを特徴とするインクジェットプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直線的に往復移動する移動体と移動体を移動させる移動体駆動部とを備えるリニア駆動機構に関する。また、本発明は、かかるリニア駆動機構を備えるインクジェットプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、媒体に向かってインクを吐出するインクジェットヘッドと、インクジェットヘッドが搭載されるキャリッジと、キャリッジを移動可能に支持するYバーと、Yバーに対してキャリッジを主走査方向に移動させる駆動部とを備えるインクジェットプリンタが知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のインクジェットプリンタは、キャリッジに搭載されるインクジェットヘッドの主走査方向における位置を検知するためのリニアエンコーダを備えている。
【0003】
特許文献1に記載のインクジェットプリンタでは、リニアエンコーダは、Yバーに沿って設置されるリニアスケールと、リニアスケールを読み取る光学式のセンサとを備えている。センサは、キャリッジに搭載されている。このインクジェットプリンタでは、キャリッジは、所定の原点位置を基準にして主走査方向に往復移動するとともにリニアエンコーダの検知結果に基づいて主走査方向に往復移動する。また、このインクジェットプリンタでは、リニアエンコーダの検知結果に基づいて、インクジェットヘッドからのインクの吐出制御を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-175540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のインクジェットプリンタでは、たとえば、インクジェットプリンタに異常が発生してインクジェットプリンタを非常停止させた後、再び、インクジェットプリンタの電源を入れた場合、リニアエンコーダの検知結果からでは、原点位置に対するキャリッジの現在位置を特定できなくなることがある。そのため、特許文献1に記載のインクジェットプリンタは、キャリッジの原点位置を検知するための原点検知機構を備えている。原点検知機構は、たとえば、光学式のセンサと、このセンサによって検知される被検知部材とを備えている。たとえば、センサは、キャリッジに取り付けられ、被検知部材は、Yバーに取り付けられており、センサが被検知部材を検知したときのキャリッジの位置が原点位置となっている。
【0006】
特許文献1に記載のインクジェットプリンタでは、たとえば、インクジェットプリンタを非常停止させた後、インクジェットプリンタの電源を入れたときには、原点検知機構の検知結果に基づいて、キャリッジを原点位置に移動させることで、キャリッジの現在位置を特定する。現在位置が特定されていないキャリッジが原点位置の近くに停止している場合、キャリッジを原点位置まで高速で移動させると、キャリッジがインクジェットプリンタの他の構成部品に衝突してキャリッジの構成部品等が損傷するおそれがある。そのため、キャリッジを原点位置まで移動させるときには、キャリッジを低速で移動させることが好ましい。
【0007】
一方で、幅の広い媒体に印刷を行うために、主走査方向におけるキャリッジの移動範囲が広くなっているインクジェットプリンタでは、現在位置が特定されていないキャリッジが原点位置から離れた位置に停止している場合、キャリッジを低速で原点位置まで移動させると、原点位置までのキャリッジの移動時間が長くなる。すなわち、この場合には、キャリッジの現在位置を特定するまでに長い時間がかかる。
【0008】
そこで、本発明の課題は、所定の方向に直線的に往復移動する移動体と、移動体を移動可能に支持する支持体と、支持体に対して移動体を直線的に移動させる移動体駆動部とを備えるリニア駆動機構において、原点位置に対する現在位置が特定されていない移動体の停止位置にかかわらず、移動体を低速で移動させても、短時間で移動体の現在位置を特定することが可能なリニア駆動機構を提供することにある。また、本発明の課題は、かかるリニア駆動機構を備えるインクジェットプリンタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明のリニア駆動機構は、所定の方向に直線的に往復移動する移動体と、移動体を移動可能に支持する支持体と、支持体に対して移動体を直線的に移動させる移動体駆動部と、支持体に対する移動体の位置を検知するための位置検知機構とを備え、位置検知機構は、支持体に取り付けられる第1リニアスケールおよび第2リニアスケールと、移動体に取り付けられる第1センサおよび第2センサと、第1センサの出力信号および第2センサの出力信号が入力される位置検知部とを備え、移動体の往復移動方向となる第1リニアスケールおよび第2リニアスケールの長手方向をリニアスケール長手方向とし、支持体に対する移動体の基準位置を原点位置とすると、第1リニアスケールには、第1センサによって検知される多数の第1被検知部が形成され、第2リニアスケールには、第2センサによって検知される多数の第2被検知部が形成され、多数の第1被検知部および多数の第2被検知部は、リニアスケール長手方向に配列され、リニアスケール長手方向における多数の第1被検知部のピッチは、リニアスケール長手方向の一端から他端に向かって次第に広くなっており、リニアスケール長手方向における多数の第2被検知部のピッチは、一定になっており、位置検知部は、第1センサの出力信号および第2センサの出力信号に基づいて原点位置に対する移動体の現在位置を検知することを特徴とする。
【0010】
本発明のリニア駆動機構では、第1リニアスケールに形成される多数の第1被検知部のリニアスケール長手方向のピッチは、リニアスケール長手方向の一端から他端に向かって次第に広くなっており、第2リニアスケールに形成される多数の第2被検知部のリニアスケール長手方向のピッチは一定になっている。そのため、本発明では、停止している移動体が移動を開始した後、第2センサで検知された第2被検知部の数が所定数に達したときの、第1センサで検知された第1被検知部の数が、移動体の停止位置によって異なる。
【0011】
また、本発明では、位置検知部は、第1センサの出力信号および第2センサの出力信号に基づいて原点位置に対する移動体の現在位置を検知している。そのため、本発明では、停止している移動体が移動を開始した後、第2センサで検知された第2被検知部の数が所定数に達したときの、第1センサで検知された第1被検知部の数をカウントすることで、移動体の現在位置を特定することが可能になる。すなわち、本発明では、移動体の現在位置を特定するときの移動体の移動距離を短くしても、移動体の現在位置を特定することが可能になる。したがって、本発明では、現在位置が特定されていない移動体の停止位置にかかわらず、移動体を低速で移動させても、短時間で移動体の現在位置を特定することが可能になる。
【0012】
また、上記の課題を解決するため、本発明のリニア駆動機構は、所定の方向に直線的に往復移動する移動体と、移動体を移動可能に支持する支持体と、支持体に対して移動体を直線的に移動させる移動体駆動部と、支持体に対する移動体の位置を検知するための位置検知機構とを備え、位置検知機構は、支持体に取り付けられる被検知体およびリニアスケールと、移動体に取り付けられる第1センサおよび第2センサと、第1センサの出力信号および第2センサの出力信号が入力される位置検知部とを備え、移動体の往復移動方向となるリニアスケールの長手方向をリニアスケール長手方向とし、支持体に対する移動体の基準位置を原点位置とすると、被検知体には、第1センサによって検知される多数の第1被検知部が形成され、リニアスケールには、第2センサによって検知される多数の第2被検知部が形成され、多数の第1被検知部および多数の第2被検知部は、リニアスケール長手方向に配列され、リニアスケール長手方向における多数の第1被検知部のそれぞれの長さは、リニアスケール長手方向の一端から他端に向かって次第に長くなっており、リニアスケール長手方向における多数の第2被検知部のピッチは、一定になっており、位置検知部は、第1センサの出力信号および第2センサの出力信号に基づいて原点位置に対する移動体の現在位置を検知することを特徴とする。
【0013】
本発明のリニア駆動機構では、被検知体に形成される多数の第1被検知部のそれぞれのリニアスケール長手方向のピッチは、リニアスケール長手方向の一端から他端に向かって次第に広くなっており、第2リニアスケールに形成される多数の第2被検知部のリニアスケール長手方向のピッチは一定になっている。そのため、本発明では、停止している移動体が移動を開始してから、移動体と一緒に移動する第1センサが1つの第1被検知部のリニアスケール長手方向の一端を検知した後、その第1被検知部のリニアスケール長手方向の他端を検知するまでの、第2センサで検知される第2被検知部の数が、移動体の停止位置によって異なる。
【0014】
また、本発明では、位置検知部は、第1センサの出力信号および第2センサの出力信号に基づいて原点位置に対する移動体の現在位置を検知している。そのため、本発明では、停止している移動体が移動を開始してから、第1センサが1つの第1被検知部のリニアスケール長手方向の一端を検知した後、その第1被検知部のリニアスケール長手方向の他端を検知するまでの、第2センサで検知される第2被検知部の数をカウントすることで、移動体の現在位置を特定することが可能になる。すなわち、本発明では、移動体の現在位置を特定するときの移動体の移動距離を短くしても、移動体の現在位置を特定することが可能になる。したがって、本発明では、現在位置が特定されていない移動体の停止位置にかかわらず、移動体を低速で移動させても、短時間で移動体の現在位置を特定することが可能になる。
【0015】
さらに、上記の課題を解決するため、本発明のリニア駆動機構は、所定の方向に直線的に往復移動する移動体と、移動体を移動可能に支持する支持体と、支持体に対して移動体を直線的に移動させる移動体駆動部と、支持体に対する移動体の位置を検知するための位置検知機構とを備え、移動体駆動部は、駆動源としてのモータを備え、位置検知機構は、支持体に取り付けられるリニアスケールと、移動体に取り付けられる第1センサと、モータのロータ側に取り付けられるロータリースケールと、モータのステータ側に取り付けられる第2センサと、第1センサの出力信号および第2センサの出力信号が入力される位置検知部とを備え、支持体に対する移動体の基準位置を原点位置とすると、リニアスケールには、第1センサによって検知される多数の第1被検知部が形成され、ロータリースケールには、第2センサによって検知される多数の第2被検知部が形成され、多数の第1被検知部は、リニアスケールの長手方向であるリニアスケール長手方向に配列され、多数の第2被検知部は、ロータリースケールの周方向であるロータリースケール周方向に配列され、リニアスケール長手方向における多数の第1被検知部のピッチは、リニアスケール長手方向の一端から他端に向かって次第に広くなっており、ロータリースケール周方向における多数の第2被検知部のピッチは、一定になっており、位置検知部は、第1センサの出力信号および第2センサの出力信号に基づいて原点位置に対する移動体の現在位置を検知することを特徴とする。
【0016】
本発明のリニア駆動機構では、リニアスケールに形成される多数の第1被検知部のリニアスケール長手方向のピッチは、リニアスケール長手方向の一端から他端に向かって次第に広くなっており、ロータリースケールに形成される多数の第2被検知部のロータリースケール周方向のピッチは一定になっている。そのため、本発明では、停止している移動体が移動を開始した後(すなわち、モータのロータが回転を開始した後)、第2センサで検知された第2被検知部の数が所定数に達したときの、第1センサで検知された第1被検知部の数が、移動体の停止位置によって異なる。
【0017】
また、本発明では、位置検知部は、第1センサの出力信号および第2センサの出力信号に基づいて原点位置に対する移動体の現在位置を検知している。そのため、本発明では、停止している移動体が移動を開始した後(すなわち、モータのロータが回転を開始した後)、第2センサで検知された第2被検知部の数が所定数に達したときの、第1センサで検知された第1被検知部の数をカウントすることで、移動体の現在位置を特定することが可能になる。すなわち、本発明では、移動体の現在位置を特定するときの移動体の移動距離を短くしても、移動体の現在位置を特定することが可能になる。したがって、本発明では、現在位置が特定されていない移動体の停止位置にかかわらず、移動体を低速で移動させても、短時間で移動体の現在位置を特定することが可能になる。
【0018】
また、上記の課題を解決するため、本発明のリニア駆動機構は、所定の方向に直線的に往復移動する移動体と、移動体を移動可能に支持する支持体と、支持体に対して移動体を直線的に移動させる移動体駆動部と、支持体に対する移動体の位置を検知するための位置検知機構とを備え、移動体駆動部は、駆動源としてのモータを備え、位置検知機構は、支持体に取り付けられるリニアスケールと、移動体に取り付けられるセンサと、モータの回転速度を検知する速度検知部と、センサの出力信号および速度検知部の出力信号が入力される位置検知部とを備え、支持体に対する移動体の基準位置を原点位置とすると、リニアスケールには、センサによって検知される多数の被検知部が形成され、多数の被検知部は、リニアスケールの長手方向であるリニアスケール長手方向に配列され、リニアスケール長手方向における多数の被検知部のピッチは、リニアスケール長手方向の一端から他端に向かって次第に広くなっており、位置検知部は、センサの出力信号および速度検知部の出力信号に基づいて原点位置に対する移動体の現在位置を検知することを特徴とする。
【0019】
本発明のリニア駆動機構では、リニアスケールに形成される多数の被検知部のリニアスケール長手方向のピッチは、リニアスケール長手方向の一端から他端に向かって次第に広くなっている。そのため、本発明では、停止している移動体が移動を開始した後、所定の速度で所定時間移動したときの(すなわち、モータが回転を開始した後、所定の回転速度で所定時間回転したときの)、センサで検知された被検知部の数が、移動体の停止位置によって異なる。
【0020】
また、本発明では、位置検知部は、センサの出力信号および速度検知部の出力信号に基づいて原点位置に対する移動体の現在位置を検知している。そのため、本発明では、停止している移動体が移動を開始した後、所定の速度で所定時間移動したときの、センサで検知された被検知部の数をカウントすることで、移動体の現在位置を特定することが可能になる。すなわち、本発明では、移動体の現在位置を特定するときの移動体の移動距離を短くしても、移動体の現在位置を特定することが可能になる。したがって、本発明では、現在位置が特定されていない移動体の停止位置にかかわらず、移動体を低速で移動させても、短時間で移動体の現在位置を特定することが可能になる。
【0021】
本発明のリニア駆動機構は、インクジェットプリンタに用いることができる。このインクジェットプリンタでは、たとえば、移動体は、インクジェットヘッドが搭載されるキャリッジであり、支持体は、キャリッジを支持するキャリッジ支持部材であり、移動体駆動部は、キャリッジ支持部材に対してキャリッジを主走査方向に移動させ、第2センサの検知結果に基づいてインクジェットヘッドからのインクの吐出制御を行う。このインクジェットプリンタでは、現在位置が特定されていないキャリッジの停止位置にかかわらず、キャリッジを低速で移動させても、短時間でキャリッジの現在位置を特定することが可能になる。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、本発明では、所定の方向に直線的に往復移動する移動体と、移動体を移動可能に支持する支持体と、支持体に対して移動体を直線的に移動させる移動体駆動部とを備えるリニア駆動機構において、原点位置に対する現在位置が特定されていない移動体の停止位置にかかわらず、移動体を低速で移動させても、短時間で移動体の現在位置を特定することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施の形態にかかるインクジェットプリンタの構成を説明するための概略図である。
図2図1に示す位置検知機構の構成を説明するためのブロック図である。
図3図1に示す第1リニアスケールおよび第2リニアスケールの構成を説明するための図である。
図4】本発明の他の実施の形態にかかる位置検知機構の構成を説明するためのブロック図である。
図5図4に示す被検知体の構成を説明するための図である。
図6】本発明の他の実施の形態にかかる位置検知機構の構成を説明するためのブロック図である。
図7】(A)は、図6に示すロータリースケールの正面図であり、(B)は、(A)のE部の拡大図である。
図8】本発明の他の実施の形態にかかる位置検知機構の構成を説明するためのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0025】
(インクジェットプリンタの概略構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかるインクジェットプリンタ1の構成を説明するための概略図である。
【0026】
本形態のインクジェットプリンタ1(以下、「プリンタ1」とする。)は、たとえば、業務用のインクジェットプリンタであり、印刷媒体2に印刷を行う。プリンタ1は、印刷媒体2に向かってインクを吐出するインクジェットヘッド3(以下、「ヘッド3」とする。)と、ヘッド3が搭載されるキャリッジ4と、キャリッジ4を移動可能に支持するキャリッジ支持部材としてのYバー5と、Yバー5に対してキャリッジ4を主走査方向(図1のY方向)に直線的に移動させるキャリッジ駆動機構6と、Yバー5に対するキャリッジ4の位置を検知するための位置検知機構7とを備えている。
【0027】
本形態では、プリンタ1で印刷が行われる印刷媒体2の最大幅が広くなっており、Yバー5に対するキャリッジ4の移動距離が長くなっている。たとえば、Yバー5に対するキャリッジ4の最大移動距離は、2(m)程度となっている。以下の説明では、キャリッジ4の往復移動方向となる主走査方向(Y方向)を「左右方向」とし、上下方向と主走査方向とに直交する副走査方向(図1のX方向)を「前後方向」とする。
【0028】
ヘッド3は、下側に向かってインクを吐出する。ヘッド3の下側には、プラテン8が配置されている。プラテン8には、印刷時の印刷媒体2が載置される。プラテン8に載置される印刷媒体2は、図示を省略する媒体送り機構によって前後方向に搬送される。キャリッジ駆動機構6は、駆動源としてのモータ9を備えている。また、キャリッジ駆動機構6は、たとえば、2個のプーリと、2個のプーリに架け渡されるとともに一部がキャリッジ4に固定されるベルトとを備えている。モータ9は、プーリを回転させる。
【0029】
本形態では、キャリッジ4、Yバー5、キャリッジ駆動機構6および位置検知機構7等によって、キャリッジ4を左右方向(主走査方向)に直線的に移動させるリニア駆動機構10が構成されている。すなわち、リニア駆動機構10は、キャリッジ4とYバー5とキャリッジ駆動機構6と位置検知機構7とを備えている。以下、位置検知機構7の具体的な構成について説明する。なお、本形態のキャリッジ4は、所定の方向に直線的に往復移動する移動体であり、Yバー5は、移動体であるキャリッジ4を移動可能に支持する支持体である。また、キャリッジ駆動機構6は、支持体であるYバー5に対して移動体であるキャリッジ4を移動させる移動体駆動部である。
【0030】
(位置検知機構の構成)
図2は、図1に示す位置検知機構7の構成を説明するためのブロック図である。図3は、図1に示すリニアスケール14、15の構成を説明するための図である。
【0031】
位置検知機構7は、左右方向(主走査方向)におけるキャリッジ4の位置を検知することで、キャリッジ4に搭載されるヘッド3の左右方向の位置を検知する機能を果たしている。位置検知機構7は、Yバー5に取り付けられるリニアスケール14、15と、キャリッジ4に取り付けられるセンサ16、17と、センサ16、17の出力信号が入力される位置検知部18とを備えている。本形態のリニアスケール14は第1リニアスケールであり、リニアスケール15は第2リニアスケールであり、センサ16は第1センサであり、センサ17は第2センサである。
【0032】
リニアスケール14、15は、左右方向に細長い長尺状に形成されている。すなわち、キャリッジ4の往復移動方向となる左右方向(Y方向)は、リニアスケール14、15の長手方向であるリニアスケール長手方向となっている。リニアスケール14、15の長さは、Yバー5に対するキャリッジ4の最大移動距離よりも長くなっている。リニアスケール14とリニアスケール15とは一体で形成されていても良いし、別体で形成されていても良い。リニアスケール14とリニアスケール15とは、たとえば、上下方向で重なるようにYバー5に固定されている。リニアスケール14には、センサ16によって検知される多数の被検知部21が形成されている。リニアスケール15には、センサ17によって検知される多数の被検知部22が形成されている。本形態の被検知部21は第1被検知部であり、被検知部22は第2被検知部である。
【0033】
センサ16、17は、たとえば、反射型の光学式センサである。センサ16は、センサ16の発光部および受光部がリニアスケール14と前後方向で対向するように、キャリッジ4に取り付けられている。センサ17は、センサ17の発光部および受光部がリニアスケール15と前後方向で対向するように、キャリッジ4に取り付けられている。位置検知部18は、たとえば、プリンタ1を制御する制御部の一部を構成している。位置検出部18には、センサ16、17が電気的に接続されている。
【0034】
被検知部21は、前後方向でリニアスケール14を貫通するスリット状の貫通穴である。同様に被検知部22は、前後方向でリニアスケール15を貫通するスリット状の貫通穴である。また、被検知部21、22は、上下方向に細長いスリット状の貫通穴である。多数の被検知部21、22は、左右方向に配列されている。図3に示すように、多数の被検知部21の左右方向のピッチは、左右方向の一端から他端に向かって次第に広くなっている。多数の被検知部22の左右方向のピッチは、一定になっている。なお、被検知部21は、リニアスケール14の、被検知部21以外の部分と反射率が異なる樹脂等によって構成されていても良い。この場合の樹脂は、たとえば、硬化したインクである。同様に、被検知部22は、リニアスケール15の、被検知部22以外の部分と反射率が異なる樹脂等によって構成されていても良い。
【0035】
本形態では、リニアスケール14とセンサ16とによってリニアエンコーダが構成されている。また、リニアスケール15とセンサ17とによってリニアエンコーダが構成されている。プリンタ1は、センサ17の検知結果に基づいてヘッド3からのインクの吐出制御を行う。
【0036】
なお、センサ16の発光部および受光部はリニアスケール14と上下方向で対向し、センサ17の発光部および受光部はリニアスケール15と上下方向で対向するように、リニアスケール14とリニアスケール15とが前後方向で並ぶように配置されていても良い。また、センサ16、17は、透過型の光学式センサであっても良い。この場合には、前後方向におけるセンサ16の発光部と受光部との間にリニアスケール14が配置され、前後方向におけるセンサ17の発光部と受光部との間にリニアスケール15が配置されている。また、センサ16、17は、磁気センサであっても良い。この場合には、リニアスケール14、15は磁気スケールであり、被検知部21、22は磁性材料によって形成されている。
【0037】
上述のように、多数の被検知部21の左右方向のピッチが左右方向の一端から他端に向かって次第に広くなっており、かつ、多数の被検知部22の左右方向のピッチが一定になっている。そのため、停止しているキャリッジ4が移動を開始した後、センサ17で検知された被検知部22の数が所定数に達したときの、センサ16で検知された被検知部21の数が、キャリッジ4の停止位置によって異なる。
【0038】
Yバー5に対するキャリッジ4の基準位置(左右方向の基準位置)を原点位置とすると、たとえば、プリンタ1に異常が発生してプリンタ1を非常停止させた後、再び、プリンタ1の電源を入れた場合であって、原点位置に対するキャリッジ4の現在位置が特定できていない場合には、キャリッジ4を移動させて原点位置に対するキャリッジ4の現在位置を検知する。このときには、位置検知部18は、センサ16、17の出力信号に基づいて原点位置に対するキャリッジ4の現在位置を検知する。具体的には、位置検知部18は、停止しているキャリッジ4が移動を開始した後、センサ17で検知された被検知部22の数が所定数に達したときの、センサ16で検知された被検知部21の数をカウントすることで、キャリッジ4の現在位置を特定する。
【0039】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、多数の被検知部21の左右方向のピッチが左右方向の一端から他端に向かって次第に広くなっており、かつ、多数の被検知部22の左右方向のピッチが一定になっているため、停止しているキャリッジ4が移動を開始した後、センサ17で検知された被検知部22の数が所定数に達したときの、センサ16で検知された被検知部21の数が、キャリッジ4の停止位置によって異なる。また、本形態では、原点位置に対するキャリッジ4の現在位置が特定できていない場合に、位置検知部18は、停止しているキャリッジ4が移動を開始した後、センサ17で検知された被検知部22の数が所定数に達したときの、センサ16で検知された被検知部21の数をカウントすることで、キャリッジ4の現在位置を特定している。
【0040】
そのため、本形態では、キャリッジ4の現在位置を特定するときのキャリッジ4の移動距離を短くしても、キャリッジ4の現在位置を特定することが可能になる。したがって、本形態では、現在位置が特定されていないキャリッジ4の停止位置にかかわらず、キャリッジ4を低速で移動させても、短時間でキャリッジ4の現在位置を特定することが可能になる。
【0041】
(位置検知機構の変更例1)
図4は、本発明の他の実施の形態にかかる位置検知機構7の構成を説明するためのブロック図である。図5は、図4に示す被検知体24の構成を説明するための図である。
【0042】
上述した形態において、位置検知機構7は、リニアスケール14に代えて、Yバー5に取り付けられる被検知体24を備えていても良い。被検知体24は、左右方向に細長い長尺状に形成されている。被検知体24には、センサ16によって検知される多数の被検知部25が形成されている。センサ16の発光部および受光部は、被検知体24と前後方向で対向している。被検知部25は、たとえば、前後方向で被検知体24を貫通するスリット状の貫通穴である。また、被検知部25は、左右方向に細長いスリット状の貫通穴である。被検知部25の左右方向の長さは、被検知部22の左右方向のピッチよりも長くなっている。多数の被検知部25は、左右方向に配列されている。
【0043】
図5に示すように、多数の被検知部25のそれぞれの左右方向の長さは、左右方向の一端から他端に向かって次第に長くなっている。そのため、停止しているキャリッジ4が移動を開始してから、センサ16が1つの被検知部25の左右方向の一端を検知した後、その被検知部25の左右方向の他端を検知するまでの、センサ17で検知される被検知部22の数が、キャリッジ4の停止位置によって異なる。
【0044】
この変更例でも、たとえば、プリンタ1に異常が発生してプリンタ1を非常停止させた後、再び、プリンタ1の電源を入れた場合であって、原点位置に対するキャリッジ4の現在位置が特定できていない場合に、キャリッジ4を移動させて、位置検知部18が、センサ16、17の出力信号に基づいて原点位置に対するキャリッジ4の現在位置を検知する。具体的には、位置検知部18は、停止しているキャリッジ4が移動を開始してから、センサ16が1つの被検知部25の左右方向の一端を検知した後、その被検知部25の左右方向の他端を検知するまでの、センサ17で検知される被検知部22の数をカウントすることで、キャリッジ4の現在位置を特定する。
【0045】
そのため、この変更例でも、上述した形態と同様に、キャリッジ4の現在位置を特定するときのキャリッジ4の移動距離を短くしても、キャリッジ4の現在位置を特定することが可能になる。したがって、現在位置が特定されていないキャリッジ4の停止位置にかかわらず、キャリッジ4を低速で移動させても、短時間でキャリッジ4の現在位置を特定することが可能になる。
【0046】
なお、被検知部25は、被検知体24の、被検知部25以外の部分と反射率が異なる樹脂等によって構成されていても良い。また、被検知体24は、上下方向を厚さ方向として配置される平板状の基部と、基部から立ち上がる平板状の多数の被検知部とによって構成されていても良い。この場合には、平板状の被検知部は、被検知部の厚さ方向と前後方向とが一致するように配置されている。また、センサ16が磁気センサである場合には、被検知部25は磁性材料によって形成されていても良い。
【0047】
(位置検知機構の変更例2)
図6は、本発明の他の実施の形態にかかる位置検知機構7の構成を説明するためのブロック図である。図7(A)は、図6に示すロータリースケール28の正面図であり、図7(B)は、図7(A)のE部の拡大図である。
【0048】
上述した形態において、位置検知機構7は、リニアスケール15およびセンサ17に代えて、モータ9のロータ側に取り付けられるロータリースケール28と、モータ9のステータ側に取り付けられる第2センサとしてのセンサ29とを備えていても良い。この場合には、センサ16、29が位置検知部18に電気的に接続されており、センサ16、29の出力信号が位置検知部18に入力される。
【0049】
ロータリースケール28は、円板状に形成されている。ロータリースケール28には、センサ29によって検知される多数の被検知部30が形成されている。この変形例における被検知部30は第2被検知部である。センサ29は、たとえば、透過型の光学式センサである。ロータリースケール28は、センサ29の発光部と受光部との間に配置されている。被検知部30は、ロータリースケール28を貫通するスリット状の貫通穴である。多数の被検知部30は、ロータリースケール28の周方向(円周方向)であるロータリー周方向に配列されている。ロータリー周方向における多数の被検知部30のピッチは一定になっている(図7(B)参照)。
【0050】
この変更例では、ロータリースケール28とセンサ29とによってモータ9の回転位置や回転速度を検知するロータリーエンコーダが構成されている。なお、被検知部30は、ロータリースケール28の、被検知部30以外の部分と反射率が異なる樹脂等によって構成されていても良い。また、センサ29は、磁気センサであっても良い。この場合には、被検知部30は磁性材料によって形成されている。また、この変更例においても、プリンタ1は、リニアスケール15およびセンサ17を備えており、センサ17の検知結果に基づいてヘッド3からのインクの吐出制御を行う。
【0051】
この変更例では、多数の被検知部21の左右方向のピッチが左右方向の一端から他端に向かって次第に広くなっている。また、ロータリー周方向における多数の被検知部30のピッチは一定になっている。そのため、停止しているキャリッジ4が移動を開始した後(すなわち、モータ9のロータが回転を開始した後)、センサ29で検知された被検知部30の数が所定数に達したときの、センサ16で検知された被検知部21の数が、キャリッジ4の停止位置によって異なる。
【0052】
また、この変更例では、たとえば、プリンタ1に異常が発生してプリンタ1を非常停止させた後、再び、プリンタ1の電源を入れた場合であって、原点位置に対するキャリッジ4の現在位置が特定できていない場合に、キャリッジ4を移動させて、位置検知部18が、センサ16、29の出力信号に基づいて原点位置に対するキャリッジ4の現在位置を検知する。具体的には、位置検知部18は、停止しているキャリッジ4が移動を開始した後、センサ29で検知された被検知部30の数が所定数に達したときの、センサ16で検知された被検知部21の数をカウントすることで、キャリッジ4の現在位置を特定する。
【0053】
そのため、この変更例でも、上述した形態と同様に、キャリッジ4の現在位置を特定するときのキャリッジ4の移動距離を短くしても、キャリッジ4の現在位置を特定することが可能になる。したがって、現在位置が特定されていないキャリッジ4の停止位置にかかわらず、キャリッジ4を低速で移動させても、短時間でキャリッジ4の現在位置を特定することが可能になる。
【0054】
(位置検知機構の変更例3)
図8は、本発明の他の実施の形態にかかる位置検知機構7の構成を説明するためのブロック図である。
【0055】
上述した位置検知機構の変更例2において、位置検知機構7は、ロータリースケール28およびセンサ29に代えて、モータ9の回転速度を検知する速度検知部33を備えていても良い。速度検知部33は、たとえば、プリンタ1を制御する制御部の一部を構成している。速度検知部33は、位置検知部18に電気的に接続されており、位置検知部18には、センサ16の入力信号に加えて、速度検知部33の出力信号が入力される。
【0056】
この変更例では、多数の被検知部21の左右方向のピッチが左右方向の一端から他端に向かって次第に広くなっているため、停止しているキャリッジ4が移動を開始した後、所定の速度で所定時間移動したときの(すなわち、モータ9が回転を開始した後、所定の回転速度で所定時間回転したときの)、センサ16で検知された被検知部21の数が、キャリッジ4の停止位置によって異なる。
【0057】
また、この変更例では、たとえば、プリンタ1に異常が発生してプリンタ1を非常停止させた後、再び、プリンタ1の電源を入れた場合であって、原点位置に対するキャリッジ4の現在位置が特定できていない場合に、キャリッジ4を移動させて、位置検知部18が、センサ16の出力信号および速度検知部33の出力信号に基づいて原点位置に対するキャリッジ4の現在位置を検知する。具体的には、位置検知部18は、停止しているキャリッジ4が移動を開始した後、所定の速度で所定時間移動したときの(すなわち、モータ9が回転を開始した後、所定の回転速度で所定時間回転したときの)、センサ16で検知された被検知部21の数をカウントすることで、キャリッジ4の現在位置を特定する。
【0058】
そのため、この変更例でも、上述した形態と同様に、キャリッジ4の現在位置を特定するときのキャリッジ4の移動距離を短くしても、キャリッジ4の現在位置を特定することが可能になる。したがって、現在位置が特定されていないキャリッジ4の停止位置にかかわらず、キャリッジ4を低速で移動させても、短時間でキャリッジ4の現在位置を特定することが可能になる。
【0059】
(他の実施の形態)
上述した形態および変更例は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0060】
上述した形態および変更例において、プリンタ1は、プラテン8に代えて、印刷媒体2が載置されるテーブルと、テーブルを前後方向に移動させるテーブル駆動機構とを備えていても良い。また、本発明が適用されるリニア駆動機構は、プリンタ1以外の装置で使用されても良い。たとえば、本発明が適用されるリニア駆動機構は、カッティングプロッタで使用されても良い。また、本発明が適用されるリニア駆動機構は、産業用ロボット等で使用される各種のスライド機構で使用されても良い。
【符号の説明】
【0061】
1 プリンタ(インクジェットプリンタ)
3 ヘッド(インクジェットヘッド)
4 キャリッジ(移動体)
5 Yバー(支持体、キャリッジ支持部材)
6 キャリッジ駆動機構(移動体駆動部)
7 位置検知機構
9 モータ
10 リニア駆動機構
14 リニアスケール(第1リニアスケール)
15 リニアスケール(第2リニアスケール)
16 センサ(第1センサ)
17 センサ(第2センサ)
18 位置検知部
21 被検知部(第1被検知部)
22 被検知部(第2被検知部)
24 被検知体
25 被検知部(第1被検知部)
28 ロータリースケール
29 センサ(第2センサ)
30 被検知部(第2被検知部)
33 速度検知部
Y 主走査方向、移動体の往復移動方向、リニアスケール長手方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8