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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128526
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】電動ブラインド
(51)【国際特許分類】
   E06B 9/322 20060101AFI20240913BHJP
【FI】
E06B9/322
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037527
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000134958
【氏名又は名称】株式会社ニチベイ
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(72)【発明者】
【氏名】坂上 健太
【テーマコード(参考)】
2E043
【Fターム(参考)】
2E043AA01
2E043BB14
2E043BC02
2E043BD02
2E043BE12
2E043BE13
2E043BE15
(57)【要約】
【課題】遮蔽材の昇降可能範囲における少なくとも所定の範囲において、モータの特性とギヤ機構とに起因した振動が生じない電動ブラインドを提供する。
【解決手段】電動ブラインド1は、遮蔽材2を昇降させる昇降コード3を巻取り及び巻解き可能に回転する駆動軸4に、モータ5の回転をギヤ機構6で減速して伝達する駆動系7を備え、遮蔽材の昇降動作時には駆動軸の回転を許容し、遮蔽材の昇降停止時には駆動軸の回転を規制する第1ブレーキ手段8と、駆動軸に設けられ、遮蔽材の重量により駆動軸に作用する遮蔽材下降方向のトルクに対して所定量の保持力を付与する第2ブレーキ手段9とを備える。モータは、第1ブレーキ手段が解除されて遮蔽材を下降動作させる場合、遮蔽材の昇降可能範囲における少なくとも所定の範囲においては、第2ブレーキ手段による保持力に抗しながら遮蔽材を下降動作させるトルクで回転駆動する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遮蔽材を昇降させる昇降コードを巻取り及び巻解き可能に回転する駆動軸に、モータの回転をギヤ機構で減速して伝達する駆動系を備える電動ブラインドであって、
前記遮蔽材の昇降動作時には前記駆動軸の回転を許容し、前記遮蔽材の昇降停止時には前記駆動軸の回転を規制する第1ブレーキ手段と、
前記駆動軸に設けられ、前記遮蔽材の重量により前記駆動軸に作用する遮蔽材下降方向のトルクに対して所定量の保持力を付与する第2ブレーキ手段と、を備え、
前記モータは、前記第1ブレーキ手段が解除されて前記遮蔽材を下降動作させる場合、前記遮蔽材の昇降可能範囲における少なくとも所定の範囲においては、前記第2ブレーキ手段による前記保持力に抗しながら前記遮蔽材を下降動作させるトルクで回転駆動する、電動ブラインド。
【請求項2】
前記駆動系は、前記所定量の前記保持力が付与されていない状態では、前記遮蔽材の下降動作時に、前記遮蔽材の前記昇降可能範囲の何れかの昇降位置において、前記モータのトルクの正負が反転するように構成されている、請求項1に記載の電動ブラインド。
【請求項3】
前記モータは、前記遮蔽材の前記昇降可能範囲における何れの昇降位置においても、前記第2ブレーキ手段による前記保持力に抗しながら前記遮蔽材を下降動作させるトルクで回転駆動する、請求項1又は2に記載の電動ブラインド。
【請求項4】
前記遮蔽材は、ラダーコードによって整列状態に支持される多数のスラットと、前記多数のスラットの下端において前記昇降コードの下端に連結されるボトムレールとを有し、
前記昇降コードにかかる前記遮蔽材の重量は、前記ボトムレールの昇降位置が高いほど大きく、前記ボトムレールの昇降位置が低いほど小さい、請求項1又は2に記載の電動ブラインド。
【請求項5】
前記第2ブレーキ手段は、前記駆動軸が貫通され、前記駆動軸の前記遮蔽材下降方向のトルクに対してのみ前記保持力を付与する一方向クラッチを有するロータリーダンパである、請求項1又は2に記載の電動ブラインド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動ブラインドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電動ブラインドとして、下記特許文献1に開示されるものが知られている。この電動ブラインドは、ヘッドボックス内に配設されたモータで駆動軸を回転駆動してスラットを昇降し、スラットの重量による駆動軸の回転を阻止してスラットの自重降下を防止するブレーキ手段を備えた駆動装置を備えている。駆動装置は、モータの出力軸の回転を減速して駆動軸に伝達するギヤボックスをモータと駆動軸との間に介在させ、モータの出力軸の回転に制動力を付与するブレーキ装置を前記ブレーキ手段としてギヤボックスに収容した構成としている。このような構成であるので、スラットの自重降下を防止可能としながら、駆動装置の取付スペースを縮小することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-197952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この種の電動ブラインドは、モータの回転を減速して駆動軸に伝達するための減速機構を備えている。減速機構は、複数のギヤを有するギヤ機構で構成されるのが一般的である。互いに噛み合うギヤ同士の間には、ギヤ同士をスムーズに回転させるための「バックラッシュ」と称される隙間が設けられている。
【0005】
しかしながら、ギヤ同士の間にバックラッシュが設けられていると、スラットの下降動作時に、モータのトルクが正負に反転することでモータにかかる負荷が変化して、モータの回転が不安定となる負荷状態となった場合に、入力側のギヤがその軸まわりにがたつくおそれがある。入力側のギヤががたつくと、駆動軸の回転ががたついて、昇降コードが上下に振動してしまう。これにより、ボトムレールが上下に振動して、電動ブラインドに振動が生じる。従って、従来の電動ブラインドでは、バックラッシュに起因する振動が生じることがある。
【0006】
このように、従来の電動ブラインドでは、モータの特性とギヤ機構とに起因した振動が生じ得るという課題があった。そこで、本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、遮蔽材の昇降可能範囲における少なくとも所定の範囲において、モータの特性とギヤ機構とに起因した振動が生じない電動ブラインドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、遮蔽材の昇降可能範囲における少なくとも所定の範囲において、駆動軸を回転させるモータに一方向のトルクのみが生じる構成とすることで、上記の課題を解決できると考え、これに基づいて、以下のような新たな電動ブラインドを発明するに至った。
【0008】
本発明による電動ブラインドは、遮蔽材を昇降させる昇降コードを巻取り及び巻解き可能に回転する駆動軸に、モータの回転をギヤ機構で減速して伝達する駆動系を備える電動ブラインドであって、前記遮蔽材の昇降動作時には前記駆動軸の回転を許容し、前記遮蔽材の昇降停止時には前記駆動軸の回転を規制する第1ブレーキ手段と、前記駆動軸に設けられ、前記遮蔽材の重量により前記駆動軸に作用する遮蔽材下降方向のトルクに対して所定量の保持力を付与する第2ブレーキ手段と、を備え、前記モータは、前記第1ブレーキ手段が解除されて前記遮蔽材を下降動作させる場合、前記遮蔽材の昇降可能範囲における少なくとも所定の範囲においては、前記第2ブレーキ手段による前記保持力に抗しながら前記遮蔽材を下降動作させるトルクで回転駆動する。
【0009】
前記駆動系は、前記所定量の前記保持力が付与されていない状態では、前記遮蔽材の下降動作時に、前記遮蔽材の前記昇降可能範囲の何れかの昇降位置において、前記モータのトルクの正負が反転するように構成されているのが好ましい。
【0010】
前記モータは、前記遮蔽材の前記昇降可能範囲における何れの昇降位置においても、前記第2ブレーキ手段による前記保持力に抗しながら前記遮蔽材を下降動作させるトルクで回転駆動するのが好ましい。
【0011】
前記遮蔽材は、ラダーコードによって整列状態に支持される多数のスラットと、前記多数のスラットの下端において前記昇降コードの下端に連結されるボトムレールとを有し、前記昇降コードにかかる前記遮蔽材の重量は、前記ボトムレールの昇降位置が高いほど大きく、前記ボトムレールの昇降位置が低いほど小さいのが好ましい。
【0012】
前記第2ブレーキ手段は、前記駆動軸が貫通され、前記駆動軸の前記遮蔽材下降方向のトルクに対してのみ前記保持力を付与する一方向クラッチを有するロータリーダンパであるのが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明による電動ブラインドは、遮蔽材の昇降可能範囲における少なくとも所定の範囲において、駆動軸を回転させるモータに一方向のトルクのみが生じる構成である。従って、遮蔽材の昇降可能範囲における少なくとも所定の範囲において、モータの特性とギヤ機構とに起因した振動が生じない電動ブラインドを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態1による電動ブラインドを示す正面図である。
図2】本発明の実施形態1による電動ブラインドの駆動系を示す正面図である。
図3】本発明の実施形態1による電動ブラインドの第2ブレーキ手段を示す斜視図である。
図4】本発明の実施形態1による電動ブラインドを示す左側面図であり、(a)はボトムレールが上限位置にある状態を示しており、(b)はボトムレールの下降途中の状態を示しており、(c)はボトムレールが下限位置にある状態を示している。
図5】従来の電動ブラインドにおけるモータのトルクとボトムレールの昇降位置との関係を示すグラフである。
図6】本発明の実施形態1による電動ブラインドの減速装置を示す図であり、互いに噛み合うギヤ同士の間のバックラッシュを説明するための説明図である。
図7】従来の電動ブラインドにおいて振動が生じている状態を示す説明図である。
図8】本発明の実施形態1による電動ブラインドにおけるモータのトルクとボトムレールの昇降位置との関係を示すグラフである。
図9】本発明の実施形態1による電動ブラインドにおいて振動が解消された状態を示す説明図である。
図10】本発明の実施形態2による電動ブラインドにおけるモータのトルクとボトムレールの昇降位置との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態を説明する。
【0016】
図1図2及び図4に示すように、実施形態1の電動ブラインド1は、遮蔽材2を昇降させる昇降コード3を巻取り及び巻解き可能に回転する駆動軸4に、モータ5の回転をギヤ機構6で減速して伝達する駆動系7を備える。後述するように、電動ブラインド1は、第1ブレーキ手段8及び第2ブレーキ手段9を備える。このような構成の電動ブラインド1は、建物の窓枠などの開口部の内部に設置される。電動ブラインド1は、建物の室外に対して、窓ガラスなどで仕切られた室内に設置される。
本明細書において、電動ブラインド1が設置された状態において、駆動軸4の軸線方向を左右方向、上下方向及び左右方向に直交する方向を前後方向とする。また、前後方向について、室内の側を前方、室外の側を後方とする。
【0017】
電動ブラインド1は、C形チャンネル状のヘッドボックス10を上部に備える。ヘッドボックス10は、複数のブラケット11を介して、窓枠の上面又は天井に固定される。これにより、電動ブラインド1は、窓の内側に配置される。ヘッドボックス10には、遮蔽材2が吊り下げられる。実施形態1では、遮蔽材2は、多数のスラット12及びボトムレール13を有する。
【0018】
ヘッドボックス10内には、複数のドラム14が回転自在に設けられる。ドラム14は、図示しないドラム受けを介して、ヘッドボックス10に設けられる。ドラム14は、ドラム受けに回転自在に支持される。複数のドラム14は、ドラム受けに支持された状態において、同軸上に配置される。
【0019】
ドラム14には、ラダーコード15の一端部が係留される。ラダーコード15には、多数のスラット12が取り付けられる。多数のスラット12は、ラダーコード15によって整列状態に支持される。具体的には、スラット12は、長手方向が左右方向に沿うようにして、ラダーコード15に取り付けられる。多数のスラット12がラダーコード15に取り付けられた状態において、多数のスラット12は、上下方向に間隔をあけて配置されている。このようにして、多数のスラット12は、ヘッドボックス10に吊り下げられる。
【0020】
また、ドラム14には、昇降コード3の一端部が係留される。昇降コード3は、ラダーコード15とは別のコードであって、ヘッドボックス10にボトムレール13を吊下支持するものである。ボトムレール13は、昇降コード3の他端部に設けられる。このようにして、ボトムレール13は、ヘッドボックス10に吊り下げられる。ヘッドボックス10に吊り下げられたボトムレール13は、最も下側に配置されたスラット12よりも下方に位置しているので、多数のスラット12の下端において昇降コード3の下端に連結される。ボトムレール13には、多数のスラット12を支持するラダーコード15の他端部が連結される。
【0021】
図1に示すように、ヘッドボックス10内には、駆動軸4が回転自在に設けられる。駆動軸4がヘッドボックス10内に設けられた状態において、駆動軸4の軸線方向は、ヘッドボックス10の長手方向に沿っている。駆動軸4は、ヘッドボックス10内に設けられた状態において、自身の軸線まわりに回転可能である。駆動軸4には、ドラム14が一体回転可能に設けられる。ドラム14は、駆動軸4がドラム14の軸線方向に貫通した状態で、駆動軸4に相対回転不能に固定される。これにより、駆動軸4は、その回転を複数のドラム14に伝達できる。
【0022】
駆動軸4の軸方向一端部は、ヘッドボックス10内に配置される駆動系7に連結される。図2に示すように、駆動系7は、モータユニット16を有する。モータユニット16は、モータ5、ギヤ機構6及び第1ブレーキ手段8を有する。
【0023】
モータ5は、駆動軸4を回転させる。そのため、モータ5の図示しない出力軸には、後述するギヤ機構6を介して、駆動軸4の一端部が連結される。ギヤ機構6は、モータ5の回転を減速して駆動軸4に伝達するものであり、従来公知の減速機構である。典型的には、ギヤ機構6は、複数のギヤ17を有する。図6に示すように、複数のギヤ17は、隣接するギヤ17,17同士が互いに噛み合うように配置される。互いに噛み合うギヤ17,17の歯18,18同士の間には、ギヤ17,17同士を噛み合った状態でスムーズに回転させるためのバックラッシュ19と称される隙間が設けられている。ギヤ機構6の複数のギヤ17のうち、入力側であるモータ5側に最も近いギヤ17には、モータ5の出力軸の回転が伝達される。ギヤ機構6の複数のギヤ17のうち、出力側である駆動軸4側に最も近いギヤ17の中央部には、出力軸20が設けられる。出力軸20は、それが設けられるギヤ17と一体回転可能である。出力軸20には、駆動軸4の一端部が連結される。図示例では、駆動軸4の一端部は、ジョイント21を介して出力軸20に連結される。駆動軸4は、出力軸20に連結された状態において、出力軸20と一体回転可能である。
【0024】
このような構成であるので、モータ5の出力軸の回転を駆動軸4に伝達することができる。具体的には、モータ5を駆動してモータ5の出力軸を回転させると、モータ5の出力軸の回転は、ギヤ機構6で減速されて出力軸20に伝達される。出力軸20が回転すると、出力軸20に連結された駆動軸4が回転することになる。このように、駆動軸4は、モータ5を駆動することで回転させることができる。
【0025】
駆動軸4を回転させると、駆動軸4と一体回転可能に設けられたドラム14が回転する。前述したように、ドラム14には、多数のスラット12を支持するラダーコード15が係留される。ラダーコード15は、ドラム14の所定角度の回転時にのみ、ドラム14と一体的に移動する。従って、ドラム14を回転させると、多数のスラット12は、略水平に配置された状態から同時に傾動される。多数のスラット12が傾斜した状態において、ドラム14を先ほどとは逆に回転させると、多数のスラット12は、略水平に配置された状態、又は逆方向に傾動された状態に同時になる。従って、多数のスラット12は、ドラム14を回転させることで、傾斜角度を同時に調整することができる。
【0026】
駆動軸4を回転させると、駆動軸4と一体回転可能に設けられたドラム14が回転する。前述したように、ドラム14には、ボトムレール13を支持する昇降コード3が係留される。昇降コード3は、ドラム14に巻取り及び巻解き可能に連結される。従って、昇降コード3を巻き取る方向にドラム14を回転させると、ボトムレール13は、昇降コード3によって上昇する。ボトムレール13が上昇すると、ボトムレール13上にスラット12が順次に重ね合わされる。これにより、多数のスラット12が上昇するので、電動ブラインド1を開くことができる。電動ブラインド1が開いた状態において、昇降コード3を巻き解く方向にドラム14を回転させると、ボトムレール13は、昇降コード3によって下降する。ボトムレール13が下降すると、ボトムレール13上に重ね合わされたスラット12の数が減少していく。これにより、多数のスラット12が下降するので、電動ブラインド1を閉じることができる。
【0027】
図4に示すように、電動ブラインド1では、ボトムレール13の位置が上にあるほど、ボトムレール13に重ね合わされるスラット12の数が多くなり、ボトムレール13の位置が下にあるほど、ボトムレール13に重ね合わされるスラット12の数が少なくなる。従って、昇降コード3にかかる遮蔽材2の重量は、ボトムレール13の昇降位置が高いほど大きく、ボトムレール13の昇降位置が低いほど小さい。
【0028】
第1ブレーキ手段8は、典型的には、従来公知の電磁ブレーキである。電磁ブレーキである第1ブレーキ手段8は、モータ5の駆動が停止するとオン状態となり、モータ5の出力軸の回転を停止させる。一方、第1ブレーキ手段8がオフ状態では、モータ5の出力軸は回転可能である。従って、第1ブレーキ手段8は、遮蔽材2の昇降動作時には駆動軸4の回転を許容し、遮蔽材2の昇降停止時には駆動軸4の回転を規制する。
【0029】
実施形態1の電動ブラインド1は、例えば、図示しないリモートコントローラによって操作することができる。そのため、ヘッドボックス10には、リモートコントローラからの赤外線による信号を受信する図示しない受光部が設けられる。受光部は、ヘッドボックス10の外部に露出している。また、ヘッドボックス10内には、図示しない電源ユニット、図示しない制御ユニット、図示しない駆動ユニット、図示しないエンコーダ、及び図示しないリミットスイッチが設けられる。
【0030】
電源ユニットは、モータ5、制御ユニット及び駆動ユニットなどに電力を供給することができる。電源ユニットには、図示しない電源コードが接続される。電源コードから電源ユニットに交流電源が入力されると、電源ユニットは、交流電源を直流電源に変換して、直流電源を制御ユニット及び駆動ユニットに供給する。制御ユニットは、エンコーダ及びリミットスイッチからの信号に基づいて、駆動ユニットを制御する。エンコーダは、駆動軸4の回転数及び回転速度を検出できる。リミットスイッチは、スラット12の上限位置を検出できる。駆動ユニットは、モータ5を駆動する。
【0031】
図1及び図3に示すように、駆動軸4には、第2ブレーキ手段9が設けられる。前述したように、電動ブラインド1は、昇降コード3に取り付けられたボトムレール13にスラット12が積層される構成である。従って、駆動軸4には、遮蔽材2の重量によって遮蔽材下降方向のトルクが作用する。遮蔽材下降方向のトルクとは、遮蔽材2が下降する際の駆動軸4の回転方向のトルクである。第2ブレーキ手段9は、前述した遮蔽材下降方向のトルクに対して所定の保持力を付与する。保持力は、遮蔽材下降方向のトルクに抗する方向の力である。
【0032】
第2ブレーキ手段9は、例えば、駆動軸4が貫通されるロータリーダンパである。ロータリーダンパは、駆動軸4の遮蔽材下降方向のトルクに対してのみ前記保持力を付与する一方向クラッチを有する。このような一方向クラッチを有するロータリーダンパは、従来公知の構成である。典型的には、ロータリーダンパは、駆動軸4が貫通される図示しない駆動軸用ギヤと、駆動軸用ギヤと噛み合う図示しない回転ギヤを有するダンパ部と、駆動軸用ギヤ及びダンパ部を覆うカバー22とを有する。
【0033】
駆動軸用ギヤは、カバー22内に回転自在に設けられる。カバー22内に設けられた駆動軸用ギヤには、駆動軸4が貫通される。駆動軸4が駆動軸用ギヤを貫通した状態で、駆動軸用ギヤは、駆動軸4に対して相対回転不能である。すなわち、駆動軸用ギヤは、駆動軸4と一体回転可能である。ダンパ部は、オイルなどの粘性を有する媒体を内部に含んでいる。従って、回転ギヤには、媒体の粘性抵抗により発生する制動力が作用する。ダンパ部には、一方向クラッチが内蔵されている。このような構成であるので、ダンパ部の回転ギヤには、一方向への回転に対して抵抗力が発生する。
【0034】
ここで、電動ブラインド1に第2ブレーキ手段9が設けられていない場合について説明する。この場合、モータ5のトルクとボトムレール13の昇降位置との関係は、図5のグラフに示すような関係となる。ボトムレール13が上限位置では、図4に示すように全てのスラット12がボトムレール13に載せ置かれているので、昇降コード3にかかる遮蔽材2の重量が最も重い。この状態からモータ5を回転させることで、ボトムレール13は下降する。この際、モータ5は、一定回転している。従って、ボトムレール13が下降する際には、モータ5は、遮蔽材2の重量によって生じる遮蔽材下降方向のトルクに抗しながら回転することになる。すなわち、モータ5は、ブレーキがかかりつつ回転している状態となる。
【0035】
ボトムレール13が下降するにつれて、ボトムレール13に載置されるスラット12の数が減少するので、昇降コード3にかかる遮蔽材2の重量が小さくなる。これにより、ボトムレール13が下降するにつれて、遮蔽材下降方向のトルクが小さくなる。遮蔽材下降方向のトルクが小さくなると、遮蔽材2の重量によって生じる力がなくなった状態で、モータ5が回転することになる。この際、モータ5のトルクに変化が生じる。すなわち、ボトムレール13を下降動作させる際に、モータ5にかかるトルクの正負が反転する。このように、電動ブラインド1の駆動系7は、前述した所定量の保持力が付与されていない状態では、遮蔽材2の下降動作時に、遮蔽材2の昇降可能範囲の何れかの昇降位置において、モータ5のトルクの正負が反転するように構成されている。
【0036】
モータ5のトルクの正負が反転する付近では、モータ5の回転が不安定となる回転不安定領域が生じる。回転不安定領域は、モータ5のトルクが無負荷状態に近づくと生じる。図7に示すように、モータ5の回転不安定領域では、前述したバックラッシュ19の存在によって、入力側のギヤ17がその軸まわりにがたつくおそれがある。入力側のギヤ17ががたつくと、駆動軸4の回転ががたついて、ドラム14に連結された昇降コード3が上下に振動してしまう。これにより、回転不安定領域では、ボトムレール13が上下に振動して、電動ブラインド1に振動が生じてしまう。なお、ギヤ機構6の複数のギヤ17のうち、最も駆動軸4側に近い位置に配置されるギヤ17に、前述したがたつきが生じる可能性が高い。
【0037】
電動ブラインド1に第2ブレーキ手段9が設けられた実施形態1の場合について説明する。この場合、モータ5のトルクとボトムレール13の昇降位置との関係は、図8のグラフに示すような関係となる。第2ブレーキ手段9は、駆動軸4の遮蔽材下降方向におけるトルク以上の保持力を有しており、遮蔽材2の下降動作時にのみ、駆動軸4に保持力をかける構成である。従って、図8に示すように、遮蔽材2を下降動作させる際、ボトムレール13の昇降位置によらず、モータ5には常に一方向のトルクのみが生じることになる。モータ5は、第1ブレーキ手段8が解除されて遮蔽材2を下降動作させる場合、遮蔽材2の昇降可能範囲における何れの昇降位置においても、第2ブレーキ手段9による前記保持力に抗しながら遮蔽材2を下降動作させるトルクで回転駆動する。これにより、モータ5のトルクの正負が反転することがないため、回転不安定領域が生じることがなく、図9に示すように入力側のギヤ17のがたつきが生じることがない。すなわち、電動ブラインド1に振動が生じることがない。
【0038】
次に、図10を用いて、本発明の電動ブラインドの実施形態2について説明する。なお、上記実施形態で付した符号と同じ符号を有する構成部品は、その作用を同じにするので以下、説明を省略することがある。
【0039】
前記実施形態1の電動ブラインド1では、モータ5は、第1ブレーキ手段8が解除されて遮蔽材2を下降動作させる場合、遮蔽材2の昇降可能範囲における何れの昇降位置においても、第2ブレーキ手段9による前記保持力に抗しながら遮蔽材2を下降動作させるトルクで回転駆動した。しかしながら、このようなモータ5の回転駆動が行われる範囲は、前記実施形態1の場合に限定されない。モータ5は、第1ブレーキ手段8が解除されて遮蔽材2を下降動作させる場合、遮蔽材2の昇降可能範囲における少なくとも所定の範囲においては、第2ブレーキ手段9による前記保持力に抗しながら遮蔽材2を下降動作させるトルクで回転駆動すればよい。典型的には、図10に示すように、ボトムレール13が上限位置から下降を開始した当初であれば、モータ5のトルクの正負が反転してもよい。例えば、ボトムレール13が上限位置から下方に50cm程度移動した位置までの間において、モータ5のトルクの正負が反転してもよい。
【0040】
ボトムレール13が上限位置から下降を開始した当初において、モータ5のトルクの正負が反転した場合、スラット12の展開量が少ないため、無負荷状態を超えてトルクが変化しても、振動による影響はほとんどない。すなわち、スラット12が畳み込まれた状態で多少振動しても、見た目ではほとんど分からない。
【0041】
上述した電動ブラインド1の場合、電動ブラインド1は、第2ブレーキ手段9を備えている。従って、電動ブラインド1によれば、遮蔽材2の昇降可能範囲における少なくとも所定の範囲においては、遮蔽材2の下降動作時にモータ5にかかるトルクの正負が反転する回転不安定領域が生じないため、モータ5の特性とギヤ機構6とに起因した振動が生じるのを防止できる。
【0042】
上述した電動ブラインド1の場合、モータ5は、第1ブレーキ手段8が解除されて遮蔽材2を下降動作させる場合、遮蔽材2の昇降可能範囲における何れの昇降位置においても、第2ブレーキ手段9による前記保持力に抗しながら遮蔽材2を下降動作させるトルクで回転駆動する。従って、電動ブラインド1によれば、遮蔽材2の昇降可能範囲における何れの昇降位置においても、電動ブラインド1の振動を防止することができる。
【0043】
上述した電動ブラインド1の場合、電動ブラインド1は、昇降コード3にかかる遮蔽材2の重量が昇降位置に応じて大きく変化する横型ブラインドである。横型ブラインドでは、モータ5の負荷状態が昇降位置に応じて大きく変化するため、遮蔽材2の下降動作時にモータ5の回転が不安定になる回転不安定領域が生じやすく、振動の問題がより顕著となる。電動ブラインド1によれば、そのような横型ブラインドにおいて、モータ5の特性とギヤ機構6とに起因した振動が生じるのを防止できる。
【0044】
上述した電動ブラインド1の場合、第2ブレーキ手段9は、遮蔽材下降方向のトルクに対してのみ保持力を付与する一方向クラッチを有するロータリーダンパである。従って、電動ブラインド1によれば、遮蔽材2を上昇動作させる際のトルクが大きくなることがないため、トルクの大きなモータに仕様を変更することなく振動を防止できる。
【0045】
なお、本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良は本発明に含まれる。
【0046】
例えば、前記各実施形態では、電動ブラインド1は、横型ブラインドとされたが、これに限定されるものではなく、プリーツスクリーン、ハニカムスクリーン、又はローマンシェード等であってもよい。
【符号の説明】
【0047】
1 電動ブラインド
2 遮蔽材
3 昇降コード
4 駆動軸
5 モータ
6 ギヤ機構
7 駆動系
8 第1ブレーキ手段
9 第2ブレーキ手段
12 スラット
13 ボトムレール
15 ラダーコード
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
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図10