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特開2024-128530掘進機の振動制御システムと振動制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128530
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】掘進機の振動制御システムと振動制御方法
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/06 20060101AFI20240913BHJP
【FI】
E21D9/06 301L
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037532
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】磯部 将吾
(72)【発明者】
【氏名】竹中 計行
(72)【発明者】
【氏名】田中 ひかり
(72)【発明者】
【氏名】安本 宣興
(72)【発明者】
【氏名】山田 紀之
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 功輔
【テーマコード(参考)】
2D054
【Fターム(参考)】
2D054AC01
2D054FA12
2D054GA08
2D054GA25
2D054GA56
(57)【要約】
【課題】シールド工法等において、掘進機が掘進する際に発生し得る振動の抑制に有効な箇所に対策を講じることができる、掘進機の振動制御システムと振動制御方法を提供する。
【解決手段】掘進機の振動制御システム100は、スキンプレート20の内部において、正面視における中心Oを通る推進ジャッキ28が対向位置の関係にある、複数組の推進ジャッキ群を形成し、推進ジャッキ28の近傍には、計測器60に含まれる加速度計61とストローク計63が少なくとも装着され、全ての計測器60は時刻同期され、制御装置50は、複数の加速度計61から取得した計測データに基づいて振動の発生源となる第1推進ジャッキ28を特定し、第1推進ジャッキ28に対応する位置にある注入器30、及び/又は、第1推進ジャッキ28と対向位置の関係にある第2推進ジャッキ28に対応する位置にある注入器30に対して滑材を注入させる制御を実行する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールド工法もしくは推進工法において適用され、筒状のスキンプレートと、該スキンプレートの掘進方向前方に回転自在に設けられているカッタヘッドとを有し、該カッタヘッドの前面には掘削ビットが設けられ、該カッタヘッドの背面にチャンバを備えている掘進機の振動を特定して制御する、掘進機の振動制御システムであって、
前記スキンプレートの内部において、正面視における該スキンプレートの中心を通る対向位置にはそれぞれ、相互に対応する推進ジャッキが設けられて、対向位置の関係にある推進ジャッキ群を形成し、該対向位置の関係にある推進ジャッキ群が複数組設けられており、
前記推進ジャッキもしくはその近傍には、計測器に含まれる加速度計が少なくとも装着され、全ての該計測器は時刻同期されており、
前記スキンプレートにおける各推進ジャッキに対応する位置には、該スキンプレートの内部から外部へ滑材を注入する注入器が設けられており、
前記計測器による計測データを取得し、複数の前記注入器のうちの少なくとも1つに対して滑材を注入させる制御を実行する、制御装置をさらに有し、
前記制御装置は、複数の前記加速度計から取得した計測データに基づいて振動の発生源となる第1推進ジャッキを特定し、該第1推進ジャッキに対応する位置にある注入器、及び/又は、第1推進ジャッキと前記対向位置の関係にある第2推進ジャッキに対応する位置にある注入器に対して、滑材を注入させる制御を実行することを特徴とする、掘進機の振動制御システム。
【請求項2】
前記振動には、最初に発生する相対的に振幅の小さなトリガー振動と、その後で発生する相対的に振幅の大きな本振動が含まれ、
前記制御装置は、前記トリガー振動が特定された際に、該トリガー振動の原因となる推進ジャッキを前記第1推進ジャッキとし、該第1推進ジャッキに対応する前記注入器に対して滑材を注入させる制御を実行することを特徴とする、請求項1に記載の掘進機の振動制御システム。
【請求項3】
前記振動には、最初に発生する相対的に振幅の小さなトリガー振動と、その後で発生する相対的に振幅の大きな本振動が含まれ、
前記トリガー振動を特定する加速度計と前記本振動を特定する加速度計は、前記対向位置の関係にあるとし、
前記制御装置は、トリガー振動が特定された際に、該トリガー振動の原因となる推進ジャッキを前記第1推進ジャッキとし、前記本振動の原因となる前記第2推進ジャッキに対応する前記注入器に対して滑材を注入させる制御を実行することを特徴とする、請求項1に記載の掘進機の振動制御システム。
【請求項4】
前記振動には、最初に発生する相対的に振幅の小さなトリガー振動と、その後で発生する相対的に振幅の大きな本振動が含まれ、
前記トリガー振動を特定する加速度計と前記本振動を特定する加速度計は、前記対向位置の関係にあるとし、
前記制御装置は、トリガー振動が特定された際に、該トリガー振動の原因となる推進ジャッキを前記第1推進ジャッキとし、該第1推進ジャッキに対応する前記注入器と、前記本振動の原因となる前記第2推進ジャッキに対応する前記注入器の双方に対して滑材を注入させる制御を実行することを特徴とする、請求項1に記載の掘進機の振動制御システム。
【請求項5】
複数の前記計測器の近傍にはそれぞれ、前記注入器が設けられており、
前記トリガー振動には、第1閾値が設定されて前記制御装置に記憶されており、
前記制御装置は、ある計測器にて特定された前記トリガー振動が前記第1閾値を超えた際に、該計測器の近傍にある前記注入器から滑材を注入させる制御を実行することを特徴とする、請求項2又は3に記載の掘進機の振動制御システム。
【請求項6】
前記本振動には、前記注入器からの滑材の注入の要否となる第2閾値が設定されて前記制御装置に記憶されており、
前記制御装置は、特定された前記本振動が前記第2閾値を超えた際に、前記注入器から滑材を注入させる制御を実行することを特徴とする、請求項2又は3に記載の掘進機の振動制御システム。
【請求項7】
前記制御装置は表示部を有し、
前記表示部は、前記トリガー振動が特定された前記推進ジャッキの加速度波形と、前記本振動が特定された前記推進ジャッキの加速度波形を少なくとも、同一画面上に表示することを特徴とする、請求項2又は3に記載の掘進機の振動制御システム。
【請求項8】
シールド工法もしくは推進工法において適用され、筒状のスキンプレートと、該スキンプレートの掘進方向前方に回転自在に設けられているカッタヘッドとを有し、該カッタヘッドの前面には掘削ビットが設けられ、該カッタヘッドの背面にチャンバを備えている掘進機の振動を特定して制御する、掘進機の振動制御方法であって、
前記スキンプレートの内部において、正面視における該スキンプレートの中心を通る対向位置にはそれぞれ、相互に対応する推進ジャッキが設けられて、対向位置の関係にある推進ジャッキ群を形成し、該対向位置の関係にある推進ジャッキ群が複数組設けられており、
前記推進ジャッキもしくはその近傍には、計測器に含まれる加速度計が少なくとも装着され、全ての該計測器は時刻同期されており、
前記スキンプレートにおける各推進ジャッキに対応する位置には、該スキンプレートの内部から外部へ滑材を注入する注入器が設けられており、
複数の前記加速度計から取得した計測データに基づいて振動の発生源となる第1推進ジャッキを特定し、該第1推進ジャッキに対応する位置にある注入器、および/又は、第1推進ジャッキと前記対向位置の関係にある第2推進ジャッキに対応する位置にある注入器に対して、滑材を注入させる制御を実行することを特徴とする、掘進機の振動制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、掘進機の振動制御システムと振動制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シールド工法や推進工法においては、掘進機を掘進させながら地山を切削し、掘進機の後方においてセグメントトンネルや推進トンネルが施工される。推進工法では、掘進機による掘進に加えて、後方から元押しジャッキや中押しジャッキによるジャッキ推力により複数の推進函が推進されることになる。
ところで、掘進機の掘進に際しては、掘進中に振動(騒音を含む)が発生することが往々にしてあり、特に都市部におけるシールド工法等の際に発生する振動は、周辺環境への影響からその対策が急務となり得る。この振動発生の原因の一つに、掘進機と周辺地盤との間の摩擦が切れること(所謂、摩擦切れ)が挙げられる。例えば、砂地盤等において、砂の粒子のかみ合わせが緩んで体積膨張することにより掘進機が締付けられる、ジャーミングが発生する場合には、この摩擦切れの際の振動発生が顕著になり、硬質な礫地盤等では、切削抵抗が大きくなり、カッタヘッドが回転する際の振動が顕著になり得る。
【0003】
そこで、従来は、振動が発生した後に掘進機の内部に加速度計等の計測器を設置することもあったが、振動原因の明確な特定には至っていない。また、限られた点で振動を測定していることから、掘進機全体が一体となって軸方向に動いていることを測定結果として把握しておらず、加速度計と同じ周期で推進ジャッキや掘進機の挙動が計測されていない。
上記のような振動が発生した際の対策として、夜間における掘進停止や、掘進スピードの低下、推進ジャッキの当て直し、滑剤の注入等が実施されているものの、振動の原因が明確に特定されていないことから、いずれも効果的な対策には至っていない。掘進機の周囲をオーバーカットし、オーバーカット領域に滑剤を注入することにより振動を低減できる場合もあるが、例えば、振動の発生源を特定することなく、掘進機の周囲に大量に滑材を注入することにより、掘進機のテールボイドに注入されている裏込め材の塩基によって滑材が脱水され(裏込め材による吸水)、滑材が脱水にて収縮することによって裏込め材と滑材の間に空隙が生じる恐れがある。この空隙により、裏込め材の強度が低下し得る。従って、掘進機の周囲の全域に大量の滑材を注入することは、裏込め材の強度低下の要因になり得ることから好ましくない。
以上のことから、シールド工法等において、掘進機が掘進する際に発生し得る振動の抑制に有効な箇所に対策を講じることのできる、掘進機の振動制御システムと振動制御方法が望まれる。
【0004】
ここで、特許文献1には、スキンプレートと掘削孔の内壁面との間におけるスキンプレートの全周に亘って滑材を注入する、掘削機が提案されている。具体的には、円筒状のスキンプレートと、スキンプレートの先端に回転自在に設けられているカッター装置とを有し、カッター装置により地山を掘進するシールド機において、カッター装置の外周部分におけるスキンプレートよりも外方側でかつ後方側に向いている部位に開口部が設けられ、開口部を介してスキンプレートと掘削孔の内壁面との間に後方に向けて滑材が注入される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-89167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の掘削機(掘進機)によれば、カッター装置の外周部分におけるスキンプレートよりも外方側の後方側に向いた部位にある開口部を介して、スキンプレートと掘削孔の内壁面との間に後方に向けて滑材を注入することにより、スキンプレートと掘削孔の内壁面との間に生じる摩擦力を十分に低減できるとしている。
しかしながら、既に述べたように、掘進機が掘進する際に発生し得る振動の抑制に有効な箇所に対策を講じる手段を開示するものではない。
【0007】
本発明は、シールド工法等において、掘進機が掘進する際に発生し得る振動の抑制に有効な箇所に対策を講じることができる、掘進機の振動制御システムと振動制御方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成すべく、本発明による掘進機の振動制御システムの一態様は、
シールド工法もしくは推進工法において適用され、筒状のスキンプレートと、該スキンプレートの掘進方向前方に回転自在に設けられているカッタヘッドとを有し、該カッタヘッドの前面には掘削ビットが設けられ、該カッタヘッドの背面にチャンバを備えている掘進機の振動を特定して制御する、掘進機の振動制御システムであって、
前記スキンプレートの内部において、正面視における該スキンプレートの中心を通る対向位置にはそれぞれ、相互に対応する推進ジャッキが設けられて、対向位置の関係にある推進ジャッキ群を形成し、該対向位置の関係にある推進ジャッキ群が複数組設けられており、
前記推進ジャッキもしくはその近傍には、計測器に含まれる加速度計が少なくとも装着され、全ての該計測器は時刻同期されており、
前記スキンプレートにおける各推進ジャッキに対応する位置には、該スキンプレートの内部から外部へ滑材を注入する注入器が設けられており、
前記計測器による計測データを取得し、複数の前記注入器のうちの少なくとも1つに対して滑材を注入させる制御を実行する、制御装置をさらに有し、
前記制御装置は、複数の前記加速度計から取得した計測データに基づいて振動の発生源となる第1推進ジャッキを特定し、該第1推進ジャッキに対応する位置にある注入器、及び/又は、第1推進ジャッキと前記対向位置の関係にある第2推進ジャッキに対応する位置にある注入器に対して、滑材を注入させる制御を実行することを特徴とする。
【0009】
本態様によれば、制御装置が、複数の加速度計から取得した計測データに基づいて振動の発生源となる第1推進ジャッキを特定し、第1推進ジャッキに対応する位置にある注入器、及び/又は、第1推進ジャッキと正面視におけるスキンプレートの中心を通る対向位置にある第2推進ジャッキに対応する位置にある注入器に対して、滑材を注入させる制御を実行することにより、振動の発生源となる推進ジャッキに対応する領域、もしくは当該推進ジャッキと対向位置の関係にある推進ジャッキに対応する領域に絞って、滑材を注入して振動を低減することができる。このように、掘進機が掘進する際に発生し得る振動の抑制に有効な箇所に対策を講じることができるため、例えば掘進機の周囲の全域に大量の滑材を注入する際に生じ得る、裏込め材の強度低下を抑制もしくは抑止できる。
例えば正面視円形の掘進機には、そのスキンプレートの内部において周方向に複数の推進ジャッキが装備されているが、本発明者等によれば、実際のシールド施工現場において、大きな振動が発生する推進ジャッキと、最初に振動(微小な振動)が発生する推進ジャッキが異なる傾向にあり、より詳細には、これらの推進ジャッキは正面視においてスキンプレートの中心を通る対向位置の関係にあることが特定されている。尚、この「対向位置の関係にある」とは、厳密に対向位置(180度対向する位置)の関係にあることの他に、180度対向する位置の左右±30度程度幅を持った範囲も含まれる。
換言すれば、最初に微小な振動を生じさせる推進ジャッキの対向位置の関係にある推進ジャッキが、大きな振動を生じさせる推進ジャッキであることが特定されている。
そこで、振動の発生源となる第1推進ジャッキと、これと対向位置の関係にある第2推進ジャッキの少なくとも一方に対応する注入器から滑材を注入することにより、滑材の注入領域を振動の抑制に効果的な領域に絞ることができ、掘進機の全周に大量の滑材を注入することなく振動抑制を図ることが可能になる。
【0010】
ここで、「振動の発生源となる第1推進ジャッキ」とは、例えば最初に微小な振動を生じさせる推進ジャッキであり、大きな振動の発生原因となる振動(トリガー振動)であることから、トリガー振動の発生源ということもできる。一方、この第1推進ジャッキと対向位置の関係にある推進ジャッキは、大きな振動である本振動を発生させる第2推進ジャッキとなる。
【0011】
また、制御装置は、掘進機に搭載される形態の他に、例えば地上にある管理施設等に制御装置が設置され、掘進機の内部にある各種の計測器による計測データが制御装置に送信される形態であってもよい。尚、「振動」には、掘進機が任意の周波数で揺れる文字通りの振動の他に、騒音(空気の振動によって発生)も含まれる。掘進機の振動が周辺の地盤に伝播され、地盤を介して地上等の周辺環境に影響を与える場合があり、同様に、掘進機で発生した振動が地表面もしくは地上建物に伝搬し、放射された騒音が、周辺環境に影響を与え得る。
また、本態様では、推進ジャッキもしくはその近傍において、計測器に含まれる複数の加速度計が少なくとも装着され、全ての計測器が時刻同期されていることにより、振動の発生源を高い精度で特定することができ、振動低減効果を高めることができて好ましい。
【0012】
また、本発明による掘進機の振動制御システムの他の態様において、
前記振動には、最初に発生する相対的に振幅の小さなトリガー振動と、その後で発生する相対的に振幅の大きな本振動が含まれ、
前記制御装置は、前記トリガー振動が特定された際に、該トリガー振動の原因となる推進ジャッキを前記第1推進ジャッキとし、該第1推進ジャッキに対応する前記注入器に対して滑材を注入させる制御を実行することを特徴とする。
【0013】
本態様によれば、最初に発生する相対的に振幅の小さなトリガー振動の原因となる推進ジャッキに対応する注入器から滑材を注入することにより、滑材の注入領域を振動の抑制に効果的な領域に絞ることができる。
【0014】
また、本発明による掘進機の振動制御システムの他の態様において、
前記振動には、最初に発生する相対的に振幅の小さなトリガー振動と、その後で発生する相対的に振幅の大きな本振動が含まれ、
前記トリガー振動を特定する加速度計と前記本振動を特定する加速度計は、前記対向位置の関係にあるとし、
前記制御装置は、トリガー振動が特定された際に、該トリガー振動の原因となる推進ジャッキを前記第1推進ジャッキとし、前記本振動の原因となる前記第2推進ジャッキに対応する前記注入器に対して滑材を注入させる制御を実行することを特徴とする。
【0015】
本態様によれば、最初に発生する相対的に振幅の小さなトリガー振動の原因となる推進ジャッキと対向位置の関係にある推進ジャッキを本振動の原因となる推進ジャッキとし、この推進ジャッキに対応する注入器から滑材を注入することにより、滑材の注入領域を振動の抑制に効果的な領域に絞ることができる。
【0016】
また、本発明による掘進機の振動制御システムの他の態様において、
前記振動には、最初に発生する相対的に振幅の小さなトリガー振動と、その後で発生する相対的に振幅の大きな本振動が含まれ、
前記トリガー振動を特定する加速度計と前記本振動を特定する加速度計は、前記対向位置の関係にあるとし、
前記制御装置は、トリガー振動が特定された際に、該トリガー振動の原因となる推進ジャッキを前記第1推進ジャッキとし、該第1推進ジャッキに対応する前記注入器と、前記本振動の原因となる前記第2推進ジャッキに対応する前記注入器の双方に対して滑材を注入させる制御を実行することを特徴とする。
【0017】
本態様によれば、トリガー振動の原因となる推進ジャッキに対応する注入器と、本振動の原因となる推進ジャッキに対応する注入器の双方から滑材を注入することにより、滑材の注入領域を振動の抑制に効果的な領域に絞ることができる。
【0018】
また、本発明による掘進機の振動制御システムの他の態様において、
複数の前記計測器の近傍にそれぞれ、前記注入器が設けられており、
前記トリガー振動には、第1閾値が設定されて前記制御装置に記憶されており、
前記制御装置は、ある計測器にて特定された前記トリガー振動が前記第1閾値を超えた際に、該計測器の近傍にある前記注入器から滑材を注入させる制御を実行することを特徴とする。
【0019】
本態様によれば、複数の計測器のそれぞれの近傍に注入器が設けられ、制御装置が、ある計測器にて特定されたトリガー振動が設定されている第1閾値を超えた際に当該計測器の近傍にある注入器から滑材を注入させる制御を実行することにより、最も早くトリガー振動が発生した第2推進ジャッキに対応する領域に対して、速やかに滑材を注入することができる。
ここで、トリガー振動に関する第1閾値は、例えば周辺環境に影響を及ぼし得る大きさの振動等に基づいて設定できる。
【0020】
また、本発明による掘進機の振動制御システムの他の態様において、
前記本振動には、前記注入器からの滑材の注入の要否となる第2閾値が設定されて前記制御装置に記憶されており、
前記制御装置は、特定された前記本振動が前記第2閾値を超えた際に、前記注入器から滑材を注入させる制御を実行することを特徴とする。
【0021】
本態様によれば、本振動が当該本振動の第2閾値を超えた際に、例えば本振動が特定されている計測器の近傍にある注入器や、この注入器を含む複数の注入器から滑材を注入させる制御を実行することにより、振動を速やかに低減することが可能になる。ここで、第2閾値を超える計測データが複数存在する場合は、計測データの中で最大値を示す計測器に対応する第1推進ジャッキを、本振動の発生源であると特定したり、複数の計測データの中で上位に位置する複数の計測器に対応する各第1推進ジャッキを、本振動の発生源であると特定することができる。
また、第2閾値を超えた本振動が特定された後、この本振動が発生する前の時刻の中で、最も早くトリガー振動が発生した計測器の近傍にある注入器から滑剤を注入する制御が実行されてもよい。
ここで、本振動に関する第2閾値は、例えば周辺環境に影響を及ぼし得る大きさの振動等に基づいて設定できる。
【0022】
また、本発明による掘進機の振動制御システムの他の態様において、
前記制御装置は表示部を有し、
前記表示部は、前記トリガー振動が特定された前記推進ジャッキの加速度波形と、前記本振動が特定された前記推進ジャッキの加速度波形を少なくとも、同一画面上に表示することを特徴とする。
【0023】
本態様によれば、制御装置の表示部において、少なくともトリガー振動と本振動が特定されたそれぞれの推進ジャッキの加速度波形が同一画面上に表示されることにより、双方の振動の大きさの相違、双方の振動発生の時間の相違等を明りょうに視認することができて好ましい。ここで、加速度波形には、上記する第1閾値や第2閾値を示すラインも表示されることにより、加速度波形が閾値を超えているか否かを明りょうに視認できてより一層好ましい。また、同一画面上にはその他の推進ジャッキに対応する加速度波形も表示されることにより、トリガー振動と本振動に対応するそれぞれの加速度波形が保証できてより一層好ましい。
【0024】
また、本発明による掘進機の振動制御方法の一態様は、
シールド工法もしくは推進工法において適用され、筒状のスキンプレートと、該スキンプレートの掘進方向前方に回転自在に設けられているカッタヘッドとを有し、該カッタヘッドの前面には掘削ビットが設けられ、該カッタヘッドの背面にチャンバを備えている掘進機の振動を特定して制御する、掘進機の振動制御方法であって、
前記スキンプレートの内部において、正面視における該スキンプレートの中心を通る対向位置にはそれぞれ、相互に対応する推進ジャッキが設けられて、対向位置の関係にある推進ジャッキ群を形成し、該対向位置の関係にある推進ジャッキ群が複数組設けられており、
前記推進ジャッキもしくはその近傍には、計測器に含まれる加速度計が少なくとも装着され、全ての該計測器は時刻同期されており、
前記スキンプレートにおける各推進ジャッキに対応する位置には、該スキンプレートの内部から外部へ滑材を注入する注入器が設けられており、
複数の前記加速度計から取得した計測データに基づいて振動の発生源となる第1推進ジャッキを特定し、該第1推進ジャッキに対応する位置にある注入器、および/又は、第1推進ジャッキと前記対向位置の関係にある第2推進ジャッキに対応する位置にある注入器に対して、滑材を注入させる制御を実行することを特徴とする。
【0025】
本態様によれば、複数の加速度計から取得した計測データに基づいて振動の発生源となる第1推進ジャッキを特定し、第1推進ジャッキに対応する位置にある注入器、及び/又は、第1推進ジャッキと正面視におけるスキンプレートの中心を通る対向位置にある第2推進ジャッキに対応する位置にある注入器に対して、滑材を注入させる制御を実行することにより、振動の発生源となる推進ジャッキに対応する領域、もしくは当該推進ジャッキと対向位置の関係にある推進ジャッキに対応する領域に絞って、滑材を注入して振動を低減することができる。そのため、例えば掘進機の周囲の全域に大量の滑材を注入する際に、裏込め材の強度が低下するといった問題は生じない。
【発明の効果】
【0026】
本発明の掘進機の振動制御システムと振動制御方法によれば、シールド工法等において、掘進機が掘進する際に発生し得る振動の抑制に有効な箇所に対策を講じることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】実施形態に係る振動制御システムの一例の縦断面図である。
図2図1のII方向の矢視図であって、掘進機の正面図である。
図3】掘進機の内部における各計測器の設置位置を示す正面図である。
図4図1のIV部の拡大図である。
図5】制御装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
図6】制御装置の機能構成の一例を示す図である。
図7】制御装置の表示画面の一例を示す図であって、各計測器の計測データの一例を示す図である。
図8】(a)、(b)、(c)はそれぞれ、3時の方向の加速度波形、ジャッキストローク波形、及びジャッキひずみ波形を示す図であり、(d)、(e)、(f)はそれぞれ、9時の方向の加速度波形、ジャッキストローク波形、及びジャッキひずみ波形を示す図であり、(g)は、対向位置の関係にある推進ジャッキ群のジャッキストローク差波形を示す図である。
図9】(a)、(b)はそれぞれ、5時の方向の傾斜計波形と加速度波形を示す図であり、(c)、(d)はそれぞれ、3時の方向の傾斜計波形と加速度波形を示す図である。
図10】制御装置の記憶部に記憶されている、第1実施形態に係る振動制御方法における対策フローの一例を示す図である。
図11】(a)は、本振動を示す3時の方向の掘進開始から掘進終了までの加速度波形を示す図であり、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)はそれぞれ、本振動の発生時刻周辺における、3時の方向の加速度波形、5時の方向の加速度波形、7時の方向の加速度波形、9時の方向の加速度波形、及び11時の方向の加速度波形を示す図である。
図12】対向位置の関係にある推進ジャッキ群が、トリガー振動の原因となる第1推進ジャッキと、本振動の原因となる第2推進ジャッキであることを説明する測定結果を示す図である。
図13】制御装置の記憶部に記憶されている、第2実施形態に係る振動制御方法における対策フローの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、実施形態に係る振動制御システムと振動制御方法について、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0029】
[実施形態に係る振動制御システムと、第1実施形態及び第2実施形態に係る振動制御方法]
図1乃至図13を参照して、実施形態に係る振動制御システムの一例と、第1実施形態及び第2実施形態に係る振動制御方法の一例について説明する。ここで、図1は、実施形態に係る振動制御システムの一例の縦断面図であり、図2は、図1のII方向の矢視図であって、掘進機の正面図である。また、図3は、掘進機の内部における各計測器の設置位置を示す正面図であり、図4は、図1のIV部の拡大図である。
【0030】
振動制御システム100は、掘進機40の掘進の際に発生する振動を制御するシステムであり、掘進機40と、掘進機40の内部に設置されている複数の計測器60と、各計測器60による計測データを取得して、推進ジャッキ28の駆動制御を実行したり、第1注入器30(注入器の一例)から滑材を注入する制御を実行する制御装置50とを有する。
【0031】
掘進機40は、土圧式のシールド掘進機であり、筒状のスキンプレート20(鋼殻)と、スキンプレート20の掘進方向前方において回転自在に設けられているカッタヘッド10とを有する。
【0032】
カッタヘッド10は、その前面に多数の掘削ビット12を備えるとともに、前面の外周には複数の外周掘削ビット14を備えている。さらに、カッタヘッド10の外周面11の複数箇所には、コピーカッタ16が外周面11からX2方向に出入り自在に設けられている。
【0033】
外周掘削ビット14は、カッタヘッド10の外周面11やスキンプレート20の外周面21よりも地山G側へ所定長さだけ張り出している。油圧駆動モータ19によるカッタヘッド10のX1方向への回転の際に複数の外周掘削ビット14が回転することにより、カッタヘッド10の外周面11とスキンプレート20の外周面21の外側にオーバーカット領域CAを形成する。
【0034】
また、コピーカッタ16は、掘進機40の方向制御の際に掘進機40を移動させたい方向の地山Gを掘削し、オーバーカット領域CAよりも大きな余掘部(図示せず)を形成する際に適用される。
【0035】
カッタヘッド10のうち、後方にあるチャンバ25に対向する背面には、複数の撹拌翼18が設けられている。一方、スキンプレート20の前方には、カッタヘッド10の背面とともにチャンバ25を形成するバルクヘッド22が設けられている。バルクヘッド22のうち、前方にあるチャンバ25に対向する前面には、複数の固定翼23が設けられている。複数の固定翼23と、バルクヘッド22の回転によって移動する複数の撹拌翼18は、相互に干渉しない位置で、かつ、チャンバ25内に取り込まれた掘削土を効果的に撹拌できる位置に設けられている。
【0036】
スキンプレート20の掘進方向後方の周方向には、地山G内に設置される複数のセグメントSからなるセグメントリングとの間のテールボイドを閉塞して止水を図るべく、テールブラシ26が設けられている。
【0037】
また、スキンプレート20の内部には、その周方向に複数の推進ジャッキ28(シールドジャッキ)が設けられており、各推進ジャッキ28が後方へX3方向に摺動して、後方に設置されているセグメントS(セグメントリング)に反力を取ることにより、掘進機40が掘進方向前方へ掘進するようになっている。ここで、各推進ジャッキ28には、減圧弁35が装備されており、減圧弁35によって推進ジャッキ28のストロークの自動制御を実現できる。
【0038】
バルクヘッド22には、カッタヘッド10を介してチャンバ25に取り込まれた掘削土を、掘進方向後方へX4方向に搬送するスクリューコンベア29がさらに設けられている。
【0039】
図1図3及び図4に示すように、掘進機40の内部の複数箇所には、種々の計測器60が設置されている。図3は、掘進機40を正面から見た際に、各計測器60の設置位置を示しており、掘進機40の奥行き方向における各計測器60の位置関係は、図1図4に示している。
【0040】
図1図3に示すように、バルクヘッド22の正面視における1時の方向、3時の方向、5時の方向、7時の方向、9時の方向、及び11時の方向にはそれぞれ、複数の加速度計61が設置され、各方向に位置する推進ジャッキ28の位置には油圧計62とストローク計63がさらに設置されている。
【0041】
ここで、図3に示すように、1時の方向と7時の方向、3時の方向9時の方向、5時の方向と11時の方向は、正面視におけるスキンプレート20の中心Oを通る対向位置の関係にある。そして、例えば、1時の方向と7時の方向にある推進ジャッキ28を取り上げた際に、厳密に1時の方向と7時の方向にある推進ジャッキ28は、対向位置の関係にある推進ジャッキ群であるが、それ以外にも、1時の方向と7時の方向にある、それぞれの複数の推進ジャッキ28からなる推進ジャッキ群28A同士も対向位置の関係にあるし、一方の1つの推進ジャッキ28と他方の推進ジャッキ群28Aも対向位置の関係にあるとしてよい。このことは、他の時刻方向においても同様である。
【0042】
また、図1図4に示すように、任意の推進ジャッキ28の近傍位置には、傾斜計64がさらに設置されている。
【0043】
掘進機40では、バルクヘッド22の周辺において奥行き方向の2断面以上に複数の計測器60を設置し、さらには、外周の推進ジャッキ28付近において周方向の4箇所以上の位置に複数の計測器60が設置される。このような複数の計測器60の設置態様により、掘進機40のどの位置でどの程度の大きさ(加速度)の振動が発生しているかを特定することが可能になる。尚、全ての計測器60は、100Hz以上(例えば、200Hz乃至500Hz)のサンプリング周波数で計測データを取得し、全チャンネルを時刻同期させてデータ取得する。
【0044】
加速度計61は、バルクヘッド22と推進ジャッキ28の近傍において、トンネルの軸方向(X方向)とトンネルの軸方向に対して水平な軸直角方向(Y方向)、及び鉛直方向(Z方向)に設置する。尚、トンネルの軸方向(X方向)のみに設置する設置態様であってもよい。
【0045】
また、図1図3に示すように、傾斜計64は、掘進機40の下方位置(5時と7時の中間)と、バルクヘッド22の後方の正面視における略中央位置、さらに後方の正面視における略中央位置に設けられている。掘進機40が特に下方へ傾斜した際に振動の発生が顕著であることから、図示例の各位置に傾斜計64が設置される。
【0046】
スキンプレート20の内部には、架台に対して制御装置50が搭載されている。各計測器60により得られた計測データは、制御装置50に有線もしくは無線により送信されるようになっており、制御装置50は、取得した各計測データに基づいて、掘進機40における少なくとも振動発生位置と発生する振動の定量値を特定する。この振動には、掘進機40の揺れの他に騒音も含まれる。制御装置50は、特定された振動発生位置と発生する振動の定量値に基づき、振動を抑制もしくは解消するための対策をさらに特定する。ここで、制御装置50による機能構成等に関しては以下で詳説する。
【0047】
このように、各所に設置されている計測器60は、制御装置50にて振動特定を実行するための計測データを取得する計器である。尚、推進ジャッキ28には、固有のストローク計や油圧計等が予め装備されているが、掘進機40では制御装置50にて振動特定するための専用の複数の計測器60を各所に設置する。
【0048】
図1のIV部を拡大した図4に示すように、スキンプレート20には、その周方向に間隔を置いて複数の開口24が設けられており、各開口24に対応する位置には、第1注入器30が位置合わせされている。掘進機40のスキンプレート20の内部から第1注入器30を介し、開口24を介してオーバーカット領域CAに滑材がY2方向に注入されるようになっている。第1注入器30には不図示の逆止弁が装備されており、その閉塞が防止されるようになっている。スキンプレート20の複数の開口24を介した滑材の注入は、非回転のスキンプレート20における複数の固定位置にある複数の第1注入器30が通じる開口24から滑材を注入する、固定注入形態となる。
【0049】
一方、図1に示すように、カッタヘッド10には、その内部から外周面11を経て地山G側(外側)へ延びて、スキンプレート20の外周面21よりも外側へ張り出す第2注入器31が設けられている。
【0050】
第2注入器31は、カッタヘッド10の回転に応じて回転しながら第2注入器31から滑材をオーバーカット領域CAに対して斜め後方へY1方向に注入する注入器であり、非回転の複数の第1注入器30による固定注入形態に対して、回転注入形態となる。
【0051】
すなわち、第1注入器30と異なり、1本の第2注入器31がカッタヘッド10の外周面11の一箇所に設置されている場合でも、カッタヘッド10の回転によって、第2注入器31は場所を随時変更しながらオーバーカット領域CAの異なる領域に連続的に滑材を注入できる。そのため、第2注入器31は1本で十分であるが、第2注入器31の閉塞を勘案すると、複数の第2注入器31(予備の第2注入器)が設けられているのがよい。
【0052】
掘進機40によれば、複数の第1注入器30を介して、スキンプレート20の外周面21から滑材を注入する固定注入形態と、カッタヘッド10の回転に応じて回転する第2注入器31から滑材を注入する回転注入形態の2種類の注入形態により、オーバーカット領域CAに対して効率的かつ可及的速やかに滑材を注入することが可能になる。
【0053】
次に、図5乃至図10を参照して、制御装置50による振動特定及び各種機器の制御と、第1実施形態に係る振動制御方法に関して詳説する。ここで、図5は、制御装置のハードウェア構成の一例を示す図であり、図6は、制御装置の機能構成の一例を示す図である。
【0054】
図5に示すように、制御装置50は、パーソナルコンピュータ(PC:Personal Computer)等の情報処理装置(コンピュータ)により構成される。制御装置50を構成するコンピュータは、接続バス56により相互に接続されているCPU(Central Processing Unit)51、主記憶装置52、補助記憶装置53、通信IF54,及び入出力IF(interface)55を備えている。主記憶装置52と補助記憶装置53は、コンピュータが読み取り可能な記録媒体である。尚、上記の構成要素はそれぞれ個別に設けられてもよいし、一部の構成要素を設けないようにしてもよい。
【0055】
CPU51は、MPU(Microprocessor)やプロセッサとも呼ばれ、CPU51は、単一のプロセッサであってもよいし、マルチプロセッサであってもよい。CPU51は、コンピュータからなる制御装置50の全体の制御を行う中央演算処理装置である。CPU51は、例えば、補助記憶装置53に記憶されたプログラムを主記憶装置52の作業領域にて実行可能に展開し、プログラムの実行を通じて周辺機器の制御を行うことにより、所定の目的に合致した機能を提供する。
【0056】
主記憶装置52は、CPU51が実行するコンピュータプログラムや、CPU51が処理するデータ等を記憶する。主記憶装置52は、例えば、フラッシュメモリ、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)を含む。補助記憶装置53は、各種のプログラム及び各種のデータを読み書き自在に記録媒体に格納し、外部記憶装置とも呼ばれる。補助記憶装置53には、例えば、OS(Operating System)、各種プログラム、各種テーブル等が格納される。OSは、例えば、通信IF54を介して接続される外部装置等とのデータの受け渡しを行う通信インターフェースプログラムを含む。外部装置等には、例えば、各種の計測器60、掘進機40が内部に備えるジャイロ等の位置センサ(図示せず)の他、ネットワークに接続する管理棟にある施工管理用のパーソナルコンピュータ(図示せず)等が含まれる。
【0057】
補助記憶装置53は、例えば、主記憶装置52を補助する記憶領域として使用され、CPU51が実行するコンピュータプログラムや、CPU51が処理するデータ等を記憶する。補助記憶装置53は、不揮発性半導体メモリ(フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable ROM))を含むシリコンディスク、ハードディスクドライブ(HDD:Hard Disk Drive)装置、ソリッドステートドライブ装置等である。また、補助記憶装置53として、CDドライブ装置、DVDドライブ装置、BDドライブ装置といった着脱可能な記録媒体の駆動装置が例示され、着脱可能な記録媒体として、CD、DVD、BD、USB(Universal Serial Bus)メモリ、SD(Secure Digital)メモリカード等が例示される。
【0058】
入出力IF55は、制御装置50に接続する機器との間でデータの入出力を行うインターフェイスである。入出力IF55には、例えば、キーボード、タッチパネルやマウス等のポインティングデバイス、マイクロフォン等の入力デバイス等が接続する。制御装置50は、入出力IF55を介して、入力デバイスを操作する操作者からの操作指示等を受け付ける。
【0059】
また、入出力IF55には、例えば、液晶パネル(LCD:Liquid Crystal Display)や有機ELパネル(EL:Electroluminescence)等の表示デバイス、プリンタ、スピーカ等の出力デバイスが接続される。以下の図7乃至図10に示すような、計測データ画面や対策画面、対策フロー画面等が表示されるようになっている。
【0060】
通信IF54は、制御装置50が接続するネットワークとのインターフェイスである。通信IF54は、インターネット等の公衆ネットワーク、携帯電話網等の無線ネットワーク、VPN(Virtual Private Network)等の専用ネットワーク、LAN(Local Area Network)等、様々なネットワークを介して、各種の計測器60からの計測データを受信し、この計測データや、計測データに基づいて制御装置50にて特定された、掘進機40における振動発生位置と発生する振動の定量値、特定された対策等に関するデータを管理棟等におけるパーソナルコンピュータに送信する。尚、各計測器60と制御装置50は、有線にてデータ送受信可能に接続されていてもよい。
【0061】
図6に示すように、制御装置50は、CPU51によるプログラムの実行により、少なくとも、取得部102、振動・傾斜特定部104、対策特定部106、推進ジャッキ制御部108、注入器制御部110、表示部112、及び記憶部114の各種機能を提供する。ここで、上記処理機能の少なくとも一部が、DSP(Digital Signal Processor)、GPU(Graphics Processing Unit)等によって提供されてもよく、同様に、上記処理機能の少なくとも一部が、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、数値演算プロセッサ、画像処理プロセッサ等の専用LSI(large scale integration)やその他のデジタル回路等であってもよい。
【0062】
取得部102には、各種の計測器60により計測された、各位置における加速度(X方向、Y方向、Z方向の加速度)、推進ジャッキ28の油圧量とストローク量、掘進機40の傾斜量等に関する計測データが随時受信され、記憶部114に随時記憶(格納)されるとともに、図7に示すように、各計測データが表示部112の表示画面に表示される。尚、上記するように、全ての計測器60は時刻同期されている。
【0063】
振動・傾斜特定部104では、各種の計測器60による計測データ、特に加速度計61による計測データに基づいて、掘進機40における振動発生位置と、発生する振動の定量値(振動周波数や振動加速度等)を特定する。
【0064】
例えば、推進ジャッキ28のジャッキ推力の変化を計測するための油圧計62は、スキンプレート20の外周近傍において周方向に4断面以上設置し、ストローク計63も油圧計62の近傍に設置し、推進ジャッキ28の挙動を細かく計測することにより、どの推進ジャッキ28がどのような原因で振動を発生させているか、すなわち、振動発生位置と発生原因を特定する。例えば、摩擦切れの場合は、振動が発生すると同時にジャッキストロークが伸びて、油圧が下がる現象が見られる。
【0065】
また、掘進機40の全体の傾きの変化を計測するための傾斜計64は、掘進機40の1カ所以上に設置されており、掘進機40の全体の挙動から、振動原因が掘進機40の姿勢によるものか否かが特定される。例えば、掘進機40の傾斜による振動の場合は、振動が発生すると同時に、傾斜計64が上下に動く現象が見られる。
【0066】
実際のシールド施工現場において、振動計測から推進ジャッキ28のストロークが普通ではない挙動や、推進ジャッキ28のひずみが大きく変化する際に、振動が発生する可能性が高いことが本発明者等により特定されている。
【0067】
例えば、正面視円形の掘進機40において装備されている周方向の複数の推進ジャッキ28では、各推進ジャッキ28のストローク差に注目した際に、各推進ジャッキ28の近傍にある加速度計61から振動の発生源として特定された第1推進ジャッキ28と、正面視におけるスキンプレートの中心を通る対向位置の関係にある第2推進ジャッキ28のストローク差を低減することにより、振動を低減できることが特定されている。
【0068】
尚、振動の発生源となる第1推進ジャッキ28は、複数の推進ジャッキの中の1つの推進ジャッキ28の他に、複数の推進ジャッキ28からなる場合も含んでおり、例えば周方向に間隔を置いて並んでいる、隣接する複数の推進ジャッキ28からなる第1推進ジャッキ群28Aも含まれる。このこととの関係で、第1推進ジャッキ28と対向位置の関係にある第2推進ジャッキ28も、1つの第1推進ジャッキ28と対向位置の関係にある1つの第2推進ジャッキ28の他に、第1推進ジャッキ群28Aと対向位置の関係にある、相互に隣接する複数の推進ジャッキ28からなる第2推進ジャッキ群28Aも含まれる。
【0069】
いずれの形態であっても、振動・傾斜特定部104にて振動の発生源となる第1推進ジャッキ28が特定されることにより、対向位置の関係にある第2推進ジャッキ28も同時に特定され、推進ジャッキ制御部108により、双方のストローク差を低減するように双方の推進ジャッキ28のストロークが制御される。
【0070】
ここで、図8は、対向位置の関係にある推進ジャッキ群のうち、3時の方向にある推進ジャッキ28の近傍の加速度計61によるX方向の加速度、ジャッキストローク、及びジャッキひずみの各時刻歴波形と、その対向位置の関係にある9時の方向にある推進ジャッキ28の近傍の加速度計61によるX方向の加速度、ジャッキストローク、及びジャッキひずみの各時刻歴波形を示している。
【0071】
図8(b)に示すように、3時の方向のジャッキストロークの途中において、推進ジャッキ28の動きが一定時間停止し、その後に動きが再開するような普通ではない挙動があり、その際に、図8(a)に示すように、振動が発生していることが分かる。
【0072】
そして、3時の方向の推進ジャッキ28と対向位置の関係にある9時の方向の推進ジャッキ28でも、図8(d)に示すように、ほぼ同時刻にジャッキの動きが一定時間停止し、その後に動きが再開してストロークが急変するような普通ではない挙動があり、その際に、図8(d)に示すように、振動が発生していることが分かる。
【0073】
そして、図8(g)に示すように、双方の推進ジャッキ28の間のストローク差は、他の対向位置の関係にある推進ジャッキ群のストローク差に比べて最も大きくなっていることが特定される。
【0074】
以上の結果を総合勘案すると、対向位置の関係にある推進ジャッキ群の中で、ストローク差が最も大きな推進ジャッキ群が掘進機40の振動の発生原因であると特定することができ、特定された第1推進ジャッキ28と第2推進ジャッキ28との間のストローク差を低減する方策を講じることにより、掘進機40の振動を低減できるものと考えられる。
【0075】
尚、図8(c)と図8(f)に示すジャッキひずみ波形においては、ジャッキひずみが圧縮から引張、もしくはその逆に変化する時刻が、推進ジャッキ28の動きの停止時刻や動きの再開時刻に一致しており、ジャッキひずみの変化点であることも特定されている。
【0076】
対策特定部106は、記憶部114に記憶されている、図10に示す表示画面112(表示部)に示すような事象ごとに予め対策が設定されている対策フローに即して、特定された振動事象に対して対策を特定する。
【0077】
図10において、振動が対向位置の関係にある推進ジャッキ間のストローク差で発生している場合は、主として、以下の3種の方法によって推進ジャッキ間のストローク差を低減する。
【0078】
第1の制御方法は、対向位置の関係にある第1推進ジャッキ28と第2推進ジャッキ28のうち、相対的にストロークの大きな推進ジャッキの駆動をOFFにする制御である。対して、第2の制御方法は、対向位置の関係にある第1推進ジャッキ28と第2推進ジャッキ28のそれぞれの減圧弁35による油圧調整による、ストロークの自動制御である。対して、第3の制御方法は、対向位置の関係にある第1推進ジャッキ群28Aと第2推進ジャッキ群28Aのそれぞれを構成する複数の推進ジャッキ28の減圧弁35による油圧調整による、ストロークの自動制御である。
【0079】
いずれの制御方法であっても、記憶部114には、ストローク差に関する閾値が設定されており、対向位置の関係にある第1推進ジャッキ28と第2推進ジャッキ28の間のストローク差が、記憶部114に格納されている閾値を超えた際に、対策特定部106にて、対向位置の関係にある推進ジャッキ28のうちでストロークの大きな推進ジャッキ28のストロークをOFFにする制御や、各推進ジャッキ28の減圧弁35により双方のストロークを自動制御するといった決定を下す。推進ジャッキ制御部108は、この決定に基づき、ストローク差を低減するように双方の推進ジャッキ28のストロークを制御する。
【0080】
ここで、ストローク差に関する閾値は、例えば、周辺環境に影響を及ぼし得る大きさの振動等に基づいて設定される。
【0081】
一方、対向位置の関係にある推進ジャッキ28の間のストローク差に代わり、掘進機40が下方へ傾斜した際に、振動が生じ易いこともまた本発明者等により特定されている。振動・傾斜特定部104にて、例えば掘進機40が下方へ所定角度傾斜したことが特定された際に、推進ジャッキ制御部108は、傾斜方向に位置する推進ジャッキ28(群)のストロークを伸ばす制御を実行することにより、掘進機40の姿勢を調整する。
【0082】
ここで、図9は、5時の方向と3時の方向の双方の傾斜計波形と加速度波形を示している。ここで、5時の方向は掘進機40の下方を代表する方向である。
【0083】
図9(b)にて、掘進機40が下方へ傾斜している際に、図9(a)に示すように、振動が発生していることが分かる。
【0084】
図10に示すように、振動・傾斜特定部104が、傾斜計64から取得した計測データに基づいて、傾斜方向に位置する推進ジャッキ28を振動の発生源となる第1推進ジャッキ28であるとして特定した際は、対策特定部106にて、例えば傾斜方向の第1推進ジャッキ28(群)のストロークを制御する決定を下し、推進ジャッキ制御部108は、制御対象の第1推進ジャッキ28(群)のストロークを例えば伸長させる制御を実行する。
【0085】
ここで、上記する対向位置の関係にある推進ジャッキ28の間のストローク差を低減する制御や、傾斜方向に位置する推進ジャッキ28のストロークを制御することに加えて、注入器制御部110により、第1推進ジャッキ28、及び/又は第2推進ジャッキ28に対応する第1注入器30に対して、滑材を注入させる制御が実行されてもよい。
【0086】
第1実施形態に係る振動制御方法によれば、複数の加速度計61から取得した計測データに基づいて振動の発生源となる第1推進ジャッキ28を特定し、第1推進ジャッキ28と正面視におけるスキンプレートの20中心Oを通る対向位置の関係にある第2推進ジャッキ28との間のストローク差を低減するように双方の推進ジャッキ28のストロークを制御することにより、振動の発生源となる推進ジャッキ28に対して効果的に振動を低減する措置を講じることができ、仮に振動が大きな場合でも効果的に振動を低減することが可能になる。
【0087】
また、傾斜計64による計測データに基づき、傾斜方向に位置する推進ジャッキ28を振動の発生源としてそのストロークを制御することにより、例えば掘進機40が下方へ傾斜した際に生じ易い振動を効果的に抑制することができる。
【0088】
次に、図6と、図11乃至図13を参照して、制御装置50による振動特定及び各種機器の制御と、第2実施形態に係る振動制御方法に関して詳説する。
【0089】
第2実施形態に係る振動制御方法は、第1実施形態のように、対向位置の関係にある推進ジャッキ28同士のストローク差を制御したり、傾斜方向に位置する推進ジャッキ28のストロークを制御することに代わり、振動の発生源となる第1推進ジャッキ28を特定し、第1推進ジャッキ28に対応する位置にある第1注入器30(注入器の一例)、及び/又は、第1推進ジャッキ28と対向位置の関係にある第2推進ジャッキ28に対応する位置にある第1注入器30に対して、滑材を注入させる制御を実行するものである。
【0090】
正面視円形の掘進機40の周方向に装備されている複数の推進ジャッキ28において、大きな振動が発生する推進ジャッキ28と、最初に振動(微小な振動)が発生する推進ジャッキは異なる傾向にあること、より詳細には、これらの推進ジャッキ28は正面視においてスキンプレート20の中心Oを通る対向位置の関係にあることが本発明者等により特定されている。ここで、この「対向位置の関係にある」には、厳密に対向位置(180度対向する位置)の関係にあることの他に、180度対向する位置の左右±30度程度幅を持った範囲も含まれる。
【0091】
そこで、振動の発生源となる第1推進ジャッキ28と、これと対向位置の関係にある第2推進ジャッキ28の少なくとも一方に対応する第1注入器30から滑材を注入することにより、滑材の注入領域を振動の抑制に効果的な領域に絞ることができ、掘進機40の全周に大量の滑材を注入することなく振動抑制を図ることが可能になる。
【0092】
掘進機40の掘進の際に振動が発生している場合に、その対策として、掘進機40の周囲をオーバーカットし、オーバーカット領域CAに滑剤を注入することにより振動を低減する方法がある。この滑材注入に際して、例えば、振動の発生源を特定することなく、掘進機40の周囲に大量に滑材を注入することにより、掘進機40のテールボイドに注入されている裏込め材の塩基によって滑材が脱水され、滑材が脱水にて収縮することによって裏込め材と滑材の間に空隙が生じ、この空隙により、裏込め材の強度が低下するといった課題がある。この課題を解消するには、掘進機40の周囲の全域に大量の滑材を注入することに代わり、掘進機40が掘進する際に発生し得る振動の抑制に有効な箇所を特定し、特定された箇所に対して滑材注入を講じることが望ましい。第2実施形態に係る振動制御方法は、振動の抑制に有効と考えられる、振動の発生源となる第1推進ジャッキ28に対応する位置、及び/又は、第1推進ジャッキ28と対向位置の関係にある第2推進ジャッキ28に対応する位置に対して、滑材を注入する方法である。
【0093】
ここで、振動の発生源となる第1推進ジャッキ28は、例えば最初に微小な振動を生じさせる推進ジャッキ28であり、大きな振動の発生原因となるトリガー振動であることから、トリガー振動の発生源となる。これに対して、この第1推進ジャッキ28と対向位置の関係にある第2推進ジャッキ28は、大きな振動である本振動を発生させる発生源となる。
【0094】
ここで、図11は、3時の方向に本振動が発生した場合における、各時刻方向の加速度波形を示した図であり、より具体的には、図11(a)は、本振動を示す3時の方向の掘進開始から掘進終了までの加速度波形を示す図であり、図11(b)、(c)、(d)、(e)、(f)はそれぞれ、本振動の発生時刻周辺における、3時の方向の加速度波形、5時の方向の加速度波形、7時の方向の加速度波形、9時の方向の加速度波形、及び11時の方向の加速度波形を示す図である。
【0095】
各加速度波形からも明らかなように、加速度波形の振幅の最も大きな3時の方向に本振動が生じており、これと対向位置の関係にある9時の方向における振動の発生が最も早いことが特定される。
【0096】
すなわち、本振動の原因となる推進ジャッキ28と、その原因となるトリガー振動を生じさせる推進ジャッキ28は、対向位置の関係にあることが分かる。
【0097】
図12は、その左側において、掘進機の正面視形状を各時刻方向を中心とした30度範囲でエリア分割し、図11に示す実測例の場合の本振動とトリガー振動のエリア傾向を図示している。一方、図12の右側には、左側の各エリア同士の関係を、時間刻み幅が狭い場合(右上)と広い場合(右下)で分けて示している。
【0098】
図12より、およそ対向位置の関係にある推進ジャッキ群が、本振動とトリガー振動の原因となる推進ジャッキ群を形成していることが分かる。
【0099】
振動・傾斜特定部104にて、各計測器60による計測データ、特に加速度計61による計測データに基づいて、トリガー振動と本振動が発生していると特定した場合に、対策特定部106は、記憶部114に記憶されている、図13に示す表示画面112(表示部)に示すような事象ごとに予め対策が設定されている対策フローに即して、特定された振動事象に対して対策を特定する。
【0100】
図13において、トリガー振動と本振動が発生している場合は、主として、以下の3種の方法によって各推進ジャッキ28を制御する。
【0101】
第1の制御方法は、注入器制御部110により、トリガー振動の原因となる第1推進ジャッキ28に対応する第1注入器30から滑材を注入する制御を実行することにより、振動を制御する方法である。一方、第2の制御方法は、本振動の原因となる第2推進ジャッキ28に対応する第1注入器30から滑材を注入することにより、振動を制御する方法である。さらに、第3の制御方法は、トリガー振動の原因となる第1推進ジャッキ28に対応する第1注入器30と、本振動の原因となる第2推進ジャッキ28に対応する第1注入器30の双方から滑材を注入することにより、振動を制御する方法である。
【0102】
ここで、トリガー振動には、第1注入器30からの滑材の注入の要否となる第1閾値が設定され、記憶部114に記憶されていて、トリガー振動が第1閾値を超えている際に、注入器制御部110により、第1推進ジャッキ28に対応する第1注入器30から滑材を注入する制御が実行される。
【0103】
さらに、本振動には、第1注入器30からの滑材の注入の要否となる第2閾値が設定され、記憶部114に記憶されていて、本振動が第2閾値を超えている際に、注入器制御部110により、第2推進ジャッキ28に対応する第1注入器30から滑材を注入する制御が実行される。
【0104】
ここで、トリガー振動に関する第1閾値と、本振動に関する第2閾値はともに、周辺環境に影響を及ぼし得る大きさの振動等に基づいて設定される。
【0105】
第2実施形態に係る振動制御方法によれば、複数の加速度計61から取得した計測データに基づいて振動の発生源となる第1推進ジャッキ28を特定し、第1推進ジャッキ28に対応する位置にある第1注入器30、及び/又は、第1推進ジャッキ28と正面視におけるスキンプレート20の中心Oを通る対向位置にある第2推進ジャッキ28に対応する位置にある第1注入器30に対して、滑材を注入させる制御を実行することにより、振動の発生源となる推進ジャッキ28に対応する領域、もしくは当該推進ジャッキ28と対向位置の関係にある推進ジャッキ28に対応する領域に絞って、滑材を注入して振動を低減することができる。そのため、例えば掘進機40の周囲の全域に大量の滑材を注入する際に、裏込め材の強度が低下するといった問題は生じない。
【0106】
尚、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、ここで示した構成に本発明が何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0107】
10:カッタヘッド
11:外周面
12:掘削ビット
14:外周掘削ビット
16:コピーカッタ
18:撹拌翼
19:油圧駆動モータ
20:スキンプレート(鋼殻)
21:外周面
22:バルクヘッド
23:固定翼
24:開口
25:チャンバ
26:テールブラシ
28:推進ジャッキ(第1推進ジャッキ、第2推進ジャッキ)
28A:推進ジャッキ群(第1推進ジャッキ(群)、第2推進ジャッキ(群))
29:スクリューコンベア
30:第1注入器(注入器)
31:第2注入器
35:減圧弁
40:掘進機
50:制御装置
60:計測器
61:加速度計(計測器)
62:油圧計(計測器)
63:ストローク計(計測器)
64:傾斜計(計測器)
70:隙間
100:振動制御システム(掘進機の振動制御システム)
102:取得部
104:振動・傾斜特定部
106:対策特定部
108:推進ジャッキ制御部
110:注入器制御部
112:表示部
114:記憶部
G:地盤(地山)
CA:オーバーカット領域
S:セグメント
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
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図10
図11
図12
図13