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特開2024-128531健康機器、健康機器の制御方法、及び健康機器の制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128531
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】健康機器、健康機器の制御方法、及び健康機器の制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/36 20060101AFI20240913BHJP
   A61N 1/04 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
A61N1/36
A61N1/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037533
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】503246015
【氏名又は名称】オムロンヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 哲也
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053BB02
4C053JJ01
4C053JJ02
4C053JJ24
(57)【要約】
【課題】人体への装着状態によらずに、操作を適切に行うことのできる健康機器とその制御方法及び制御プログラムを提供する。
【解決手段】低周波治療器100は、身体50に装着されて電力が供給されるパッド部10と、慣性センサ23と、パッド部10と連結され且つパッド部10へ供給する電力を制御する本体部20と、を備え、本体部20は、操作部30と、操作部30の操作に応じた処理を実行するプロセッサ21と、を有し、プロセッサ21は、慣性センサ23の出力に基づいてパッド部10の人体への装着状態を判定し、上記判定に基づいて、操作部30の操作に応じて実行する処理を変更する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体に装着されて電力が供給される装着部と、
慣性センサと、
前記装着部と連結され且つ前記装着部へ供給する電力を制御する本体部と、を備え、
前記本体部は、操作部と、前記操作部の操作に応じた処理を実行する制御部と、を有し、
前記制御部は、前記慣性センサの出力に基づいて前記装着部の人体への装着状態を判定し、前記判定に基づいて、前記操作部の操作に応じて実行する処理を変更する、健康機器。
【請求項2】
請求項1に記載の健康機器であって、
前記操作部は、前記装着部に供給する電力を増減させるための第1操作領域及び第2操作領域を含む、健康機器。
【請求項3】
請求項2に記載の健康機器であって、
前記制御部は、
前記装着状態が第1状態であり且つ前記第1操作領域の操作を検出した場合には第1処理を実行し、
前記装着状態が前記第1状態であり且つ前記第2操作領域の操作を検出した場合には第2処理を実行し、
前記装着状態が第2状態であり且つ前記第2操作領域の操作を検出した場合には前記第1処理を実行し、
前記装着状態が前記第2状態であり且つ前記第1操作領域の操作を検出した場合には前記第2処理を実行する、健康機器。
【請求項4】
請求項3に記載の健康機器であって、
前記第1処理は、前記装着部に供給する電力を増加させる処理であり、
前記第2処理は、前記装着部に供給する電力を減少させる処理であり、
前記第1状態は、前記第1操作領域と前記第2操作領域が装着者の身長方向に沿って並んで配置され、且つ、前記第1操作領域が前記第2操作領域よりも装着者の頭部側に配置される状態であり、
前記第2状態は、前記第1操作領域と前記第2操作領域が前記身長方向に沿って並んで配置され、且つ、前記第2操作領域が前記第1操作領域よりも装着者の頭部側に配置される状態である、健康機器。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の健康機器であって、
前記装着部は、接触対象に治療用又はトレーニング用のパルス電流を供給可能なパッド部である、健康機器。
【請求項6】
人体の背面部に装着されて電力が供給される装着部と、前記装着部と連結され且つ前記装着部へ供給する電力を制御する本体部と、前記本体部に設けられた操作部と、を有する健康機器の制御方法であって、
前記装着部の人体への装着状態を判定し、その判定に基づいて、前記操作部の操作に応じて実行する処理を変更する、健康機器の制御方法。
【請求項7】
人体の背面部に装着されて電力が供給される装着部と、前記装着部と連結され且つ前記装着部へ供給する電力を制御する本体部と、前記本体部に設けられた操作部と、を有する健康機器の制御プログラムであって、
前記装着部の人体への装着状態を判定し、その判定に基づいて、前記操作部の操作に応じて実行する処理を変更するステップをプロセッサに実行させる、健康機器の制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、健康機器、健康機器の制御方法、及び健康機器の制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ウェアラブル装置として、人体の背面部(背中、背筋、腰、肩、腿裏、又は臀部等の本人から見えにくい部位)や、人体の前面部(胸、腕、腹、又は膝等の本人から容易に見える部分)に装着して用いられる健康機器がある。例えば、導電層を有するパッドをユーザの身体に取り付けて、身体に低周波パルス電流を供給することで、ユーザの筋肉をほぐす等の治療を行う低周波治療器が健康機器の一例である。こういった健康機器としては、他にも、導電層を有するパッドをユーザの身体に取り付けて、身体に電流を供給することで筋肉をトレーニングするEMS(Electrical Muscle Stimulation)機器がある。
【0003】
特許文献1には、人体への装着姿勢によって動作を変えるウェアラブル装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許6467525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
人体に装着して用いられる健康機器に、その操作を行うための操作部が設けられる場合を想定する。この場合、健康機器を人体の背面部に装着した状態では、操作部を容易に視認できない。そのため、操作部を含む健康機器が例えば上下逆で装着されていたり、左右逆で装着されていたりした場合には、操作部の操作が誤って行われる可能性がある。特許文献1では、このような課題について認識されていない。なお、人体の前面部に装着して用いられる健康機器であっても、健康機器が例えば上下逆で装着されていたり、左右逆で装着されていたりしていることにユーザが気づかない場合には、同様に、操作部の操作が誤って行われる可能性がある。
【0006】
本開示の目的は、人体への装着状態によらずに、操作を適切に行うことのできる健康機器とその制御方法及び制御プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の技術は以下の通りである。なお、括弧内には、以降の実施形態において対応する構成要素等を示しているが、これに限定されるものではない。
【0008】
(1)
人体(身体50)に装着されて電力が供給される装着部(パッド部10)と、
慣性センサ(慣性センサ23)と、
上記装着部と連結され且つ上記装着部へ供給する電力を制御する本体部(本体部20)と、を備え、
上記本体部は、操作部(操作部30)と、上記操作部の操作に応じた処理を実行する制御部(プロセッサ21)と、を有し、
上記制御部は、上記慣性センサの出力に基づいて前記装着部の人体への装着状態を判定し、上記判定に基づいて、上記操作部の操作に応じて実行する処理を変更する、健康機器。
【0009】
(1)によれば、装着部の装着状態が例えば正規の状態と非正規の状態とで、操作部に対して同じ操作がなされた場合でも、その操作に応じた処理を変更することができる。このため、装着部が誤った装着状態で人体に装着された場合でも、操作内容を変えることなく、機器の作動内容を適切に調整することができる。
【0010】
(2)
(1)に記載の健康機器であって、
上記操作部は、上記装着部に供給する電力を増減させるための第1操作領域(第1キー32)及び第2操作領域(第2キー33)と、を含む、健康機器。
【0011】
(2)によれば、例えば、第1装着状態と第2装着状態とで、第1操作領域と第2操作領域の位置関係が逆転するような場合には、第1装着状態と第2装着状態とで、第1操作領域が操作されたときに行う処理と第2操作領域が操作されたときに行う処理を同じにすることで、ユーザは、その位置関係の逆転を意識せずに、操作部に対して同一の操作を行うだけで、所望の処理を実行させることができる。
【0012】
(3)
(2)に記載の健康機器であって、
上記制御部は、
上記装着状態が第1状態(正規状態:図2に示す状態)であり且つ上記第1操作領域の操作を検出した場合には第1処理(刺激増加処理:振幅Vを上げる処理)を実行し、
上記装着状態が上記第1状態であり且つ上記第2操作領域の操作を検出した場合には第2処理(刺激減少処理:振幅Vを下げる処理)を実行し、
上記装着状態が第2状態(上下反転状態:図4に示す状態)であり且つ上記第2操作領域の操作を検出した場合には上記第1処理を実行し、
上記装着状態が上記第2状態であり且つ上記第1操作領域の操作を検出した場合には上記第2処理を実行する、健康機器。
【0013】
(3)によれば、装着状態が第1状態のときに第1操作領域の操作を行った場合と、装着状態が第2状態のときに第2操作領域の操作を行った場合とで、同じ第1処理が実行される。このため、例えば、第1状態と第2状態とで、第1操作領域と第2操作領域の位置関係が逆転するような場合でも、ユーザは、その位置関係の逆転を意識せずに、操作部に対して同一の操作を行うだけで、第1処理又は第2処理を実行させることができる。
【0014】
(4)
(3)に記載の健康機器であって、
上記第1処理は、上記装着部に供給する電力を増加させる処理であり、
上記第2処理は、上記装着部に供給する電力を減少させる処理であり、
上記第1状態は、上記第1操作領域と上記第2操作領域が装着者の身長方向に沿って並んで配置され、且つ、上記第1操作領域が上記第2操作領域よりも装着者の頭部側に配置される状態であり、
上記第2状態は、上記第1操作領域と上記第2操作領域が前記身長方向に沿って並んで配置され、且つ、上記第2操作領域が上記第1操作領域よりも装着者の頭部側に配置される状態である、健康機器。
【0015】
(4)によれば、装着部が上下逆に装着された場合でも、人体において頭部に近い側の操作領域を操作することで、装着部に供給する電力を増加させることができ、人体においてつま先に近い側の操作領域を操作することで、装着部に供給する電力を減少させることができる。これにより、電力の増減をユーザが直感的に調整することができる。
【0016】
(5)
(1)から(4)のいずれかに記載の健康機器であって、
上記装着部は、接触対象に治療用又はトレーニング用のパルス電流を供給可能なパッド部である、健康機器。
【0017】
(5)によれば、パルス電流によって人体に加えられる刺激の強弱を、操作部を操作して変更する場合に、装着部の装着状態によらずに、一定の操作で、刺激を強くしたり弱くしたりすることができる。これにより、刺激が意図しない方向に変更されるのを防いで、安全性を向上させたり、ユーザの満足度を向上させたりすることができる。
【0018】
(6)
人体の背面部に装着されて電力が供給される装着部と、上記装着部と連結され且つ上記装着部へ供給する電力を制御する本体部と、上記本体部に設けられた操作部と、を有する健康機器の制御方法であって、
上記装着部の人体への装着状態を判定し、その判定に基づいて、上記操作部の操作に応じて実行する処理を変更する、健康機器の制御方法。
【0019】
(7)
人体の背面部に装着されて電力が供給される装着部と、上記装着部と連結され且つ上記装着部へ供給する電力を制御する本体部と、上記本体部に設けられた操作部と、を有する健康機器の制御プログラムであって、
上記装着部の人体への装着状態を判定し、その判定に基づいて、上記操作部の操作に応じて実行する処理を変更するステップをプロセッサに実行させる、健康機器の制御プログラム。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、人体への装着状態によらずに、操作を適切に行うことのできる健康機器とその制御方法及び制御プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、低周波治療器100の概略構成を示す平面図である。
図2図2は、低周波治療器100がユーザの身体50に装着された状態の一例を示す模式図である。
図3図3は、本体部20のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図4図4は、図2に示す正規の装着状態に対し、低周波治療器100が上下反転して身体50に装着された状態を示す図である。
図5図5は、低周波治療器100の動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<本開示の健康機器の概要>
本開示の健康機器は、人体に装着されて電力が供給される装着部と、慣性センサと、上記装着部と連結され且つ上記装着部へ供給する電力を制御する本体部と、を備え、上記本体部は、操作部と、上記操作部の操作に応じた処理を実行する制御部と、を有する。上記制御部は、上記慣性センサの出力に基づいて上記装着部の人体への装着状態を判定し、上記判定に基づいて、上記操作部の操作に応じて実行する処理を変更する。これにより、装着部が誤った装着状態で人体に装着された場合でも、操作内容を変えることなく、機器の作動内容を適切に調整することができる。
【0023】
以下、本開示の技術の一実施形態の健康機器の一例である低周波治療器について説明する。
【0024】
<適用例>
図1は、低周波治療器100の概略構成を示す平面図である。
【0025】
低周波治療器100は、コードレスタイプの低周波治療器であり、ユーザに対して低周波パルス電流を供給して電気的な刺激を与えることにより、治療等を行うための装置である。低周波パルス電流の周波数は、特に限定されるものではないが、例えば1~1200[Hz]程度である。低周波治療器100は、人体(ユーザの身体)に装着されて電力が供給される装着部を構成するパッド部10と、パッド部10と連結され且つパッド部10へ供給する電力を制御する本体部20と、を備える。
【0026】
パッド部10は、ユーザの身体に取り付け可能である。パッド部10は、ユーザに低周波パルス電流を供給する導電層(図示省略)を備えており、本体部20から供給される電力により、取り付け先(接触対象)であるユーザの身体に対して、パルス電流を供給可能である。パッド部10は、例えば、軟質合成樹脂製の基材の表面に、印刷により導体であるカーボン層を積層したものであり、このカーボン層が導電層となる。
【0027】
パッド部10には、図示省略のホルダが一定的に設けられ、このホルダに本体部20が固定されることで、パッド部10と本体部20が連結されている。パッド部10は交換可能(消耗品である)ことが好ましいため、本体部20は上記ホルダに着脱可能に構成されていることが好ましい。
【0028】
本体部20は、例えば箱状の筐体を有しており、この筐体の表面(人体に装着された状態で人体側と反対側を向く面)には、操作部30が設けられている。操作部30は、例えば、ユーザからの操作入力を受け付ける入力デバイス、又は、ユーザへ情報を出力する出力デバイス等を含む。
【0029】
入力デバイスは、例えばキー等により実現することができる。出力デバイスは、例えばディスプレイ又はスピーカ等により実現することができる。また、タッチパネル等によって入力デバイス及び出力デバイスの両方を実現してもよい。例えば、入力デバイスとしてのキーを、ディスプレイと一体化されたタッチパネルに表示されるソフトウェアキーによって実現してもよい。
【0030】
図1の例では、操作部30に含まれる入力デバイスとして、低周波治療器100の電源のオンオフを行うための電源キー31と、低周波治療器100によって身体に与えられる刺激の強さを調整するための第1キー32及び第2キー33と、が示されている。以下では、第1キー32及び第2キー33を総称して、刺激調整キーとも記載する。
【0031】
図2は、低周波治療器100がユーザの身体50に装着された状態の一例を示す模式図である。図2に示すように、パッド部10は、例えば、ユーザの身体50の腰部51に装着される。パッド部10は、腰部51を広範囲でカバーできるように、ユーザの左右方向に延びる帯状となっている。
【0032】
本体部20の筐体において、第1キー32及び第2キー33は、パッド部10の長手方向に対して交差(好ましくは直交)する方向に並んで配置されている。図2は、低周波治療器100を腰部51に装着して使用する際に推奨される装着状態を示している。つまり、低周波治療器100では、図2に示したように、第1キー32及び第2キー33がユーザの身長方向(上下方向)に沿って配置され、且つ、第1キー32がユーザの頭部側に位置し、且つ、第2キー33がユーザのつま先側に位置するように、身体50に装着された状態を、正規の装着状態としている。
【0033】
<本体部20のハードウェア構成>
図3は、本体部20のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。本体部20は、プロセッサ21と、メモリ22と、加速度センサ又はジャイロセンサ等の慣性センサ23と、電源部24と、パッド駆動部25と、操作部30と、を含む。
【0034】
プロセッサ21は、例えば、CPU(Central Processing Unit)又はMPU(Micro Processing Unit)等のプロセッサである。プロセッサ21は、メモリ22に記憶されたプログラムを読み出して実行することで、低周波治療器100の各部の動作を制御する。なお、プロセッサ21は、複数のプロセッサの組み合わせであってもよい。
【0035】
メモリ22は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、又はフラッシュメモリ等によって実現される。メモリ22は、プロセッサ21によって実行されるプログラム、又はプロセッサ21によって用いられるデータ等を記憶する。
【0036】
電源部24は、低周波治療器100の各構成要素に電力を供給する。電源としては、例えば、乾電池、又は、リチウムイオン電池やニッケル水素電池等の二次電池が用いられ、電池電圧を安定化して各構成要素に供給する駆動電圧を生成する。電源部24は、電池に限らず、家庭用電源等から供給される電力を用いて、低周波治療器100の各構成要素に電力を供給するものであってもよい。この場合には、家庭用電源等の外部電源と本体部20とがケーブル等によって接続される構成とすればよい。つまり、低周波治療器100がコードレスであることは必須ではない。
【0037】
パッド駆動部25は、パッド部10にパルス電圧を印加することで、パッド部10によるユーザへの低周波パルス電流の供給を制御する。パッド駆動部25は、プロセッサ21によって制御される。
【0038】
パッド駆動部25がパッド部10に印加するパルス電圧のパラメータは、振幅(電圧)Vと、パルス幅Wと、パルス周期T(パルス周波数F=1/T)と、を含む。パッド駆動部25は、これらのパラメータのうち少なくとも1つのパラメータを変更することにより、ユーザに対する治療内容を変更できる。
【0039】
具体的には、本体部20は、電源電圧を所定の電圧に昇圧し、昇圧した電圧を、設定された振幅に対応する電圧に調整する。例えば、本体部20は、ユーザからの指示に従って所定数のレベル(一例として10段階のレベル)でパルス電圧の振幅Vを調整できる。刺激調整キーは、このレベルをプロセッサ21に指示するためのものである。本体部20は、あるレベルの設定入力をユーザから受け付けると、そのレベルに対応する振幅Vに基づいて、治療モードに応じた治療波形(パルス電圧波形)を生成し、当該治療波形をパッド部10に出力する。
【0040】
低周波治療器100には、複数の治療モードが用意されていてもよい。例えば、治療モードとしては、「もみ」、「たたき」、「押し」、「スイープ」モード等が挙げられる。本体部20は、パッド部10に印加するパルス電圧の波形を変化させることにより、各種のモードに対応する電気刺激をパッド部10からユーザに与える。これらのいずれの治療モードにおいても、パルス電圧の振幅Vを変更することで、ユーザに与える刺激の強度を変更することができる。
【0041】
慣性センサ23は、パッド部10の身体50への装着状態を判定するために用いられる。慣性センサ23は、本体部20の任意の場所に設けられることが好ましいが、パッド部10が消耗品ではない場合には、パッド部10に設けられてもよい。
【0042】
図4は、図2に示す正規の装着状態に対し、低周波治療器100が上下反転して身体50に装着された状態(上下反転状態)を示す図である。低周波治療器100では、図4に示すように、正規の装着状態に対して上下反転した状態での装着が行われても、操作部30に含まれる入力デバイスの操作は可能となっており、その操作に応じた処理が行われる。
【0043】
図5は、低周波治療器100の動作を説明するためのフローチャートである。
図5に示すフローは、例えば、低周波治療器100が腰部51に装着され、その状態で、電源キー31が操作されて低周波治療器100の電源がオンになった時点で開始される。
【0044】
まず、プロセッサ21は、慣性センサ23の出力信号を取得し(ステップS1)、この出力信号に基づいて、パッド部10の身体50への装着状態を判定する。具体的には、プロセッサ21は、装着状態が、図2に示した正規の状態と、図4に示した上下反転状態と、のどちらであるかを判定する(ステップS2)。
【0045】
ステップS2の判定の結果、装着状態が正規の状態であった場合(ステップS2:YES)には、プロセッサ21は、刺激調整キーの操作に応じて実行する処理のパターンを正規パターンに設定する(ステップS3)。この正規パターンは、第1キー32の操作を検出した場合には、パルス電圧の振幅Vを増加させてパッド部10に供給する電力を増加させる処理(以下、刺激増加処理と記載)を行い、第2キー33の操作を検出した場合には、パルス電圧の振幅Vを減少させてパッド部10に供給する電力を減少させる処理(以下、刺激減少処理と記載)を行う、ことを定めたパターンである。
【0046】
プロセッサ21は、ステップS3の後、第1キー32の操作を検出すると(ステップS4:YES)、刺激増加処理を実行する(ステップS7)。プロセッサ21は、ステップS3の後、第1キー32の操作を検出せず(ステップS4:NO)、第2キー33の操作を検出すると(ステップS5:YES)、刺激減少処理を実行する(ステップS6)。プロセッサ21は、第1キー32と第2キー33のいずれの操作も検出していない場合(ステップS5:NO)には、ステップS4に処理を戻す。
【0047】
ステップS2の判定の結果、装着状態が上下反転状態であった場合(ステップS2:NO)には、プロセッサ21は、刺激調整キーの操作に応じて実行する処理のパターンを逆正規パターンに設定する(ステップS8)。この逆正規パターンは、第1キー32の操作を検出した場合には刺激減少処理を行い、第2キー33の操作を検出した場合には刺激増加処理を行う、ことを定めたパターンである。
【0048】
プロセッサ21は、ステップS8の後、第1キー32の操作を検出すると(ステップS9:YES)、刺激減少処理を実行する(ステップS12)。プロセッサ21は、ステップS8の後、第1キー32の操作を検出せず(ステップS9:NO)、第2キー33の操作を検出すると(ステップS10:YES)、刺激増加処理を実行する(ステップS11)。プロセッサ21は、第1キー32と第2キー33のいずれの操作も検出していない場合(ステップS10:NO)には、ステップS9に処理を戻す。
【0049】
<低周波治療器100の効果>
以上のように、低周波治療器100によれば、第1キー32を操作した場合でも、パッド部10の装着状態が図2の状態であれば、刺激増加処理が実行され、パッド部10の装着状態が図4の状態であれば、刺激減少処理が実行される。また、第2キー33を操作した場合でも、パッド部10の装着状態が図2の状態であれば、刺激減少処理が実行され、パッド部10の装着状態が図4の状態であれば、刺激増加処理が実行される。
【0050】
このように、特定のキーが操作されたときに実行する処理は単一に固定化されておらず、パッド部10の装着状態に応じて、複数処理の間で切り替えられる。ここで、第1キー32が操作されたときに実行する処理を、パッド部10の装着状態によらずに、刺激増加処理で固定し、第2キー33が操作されたときに実行する処理を、パッド部10の装着状態によらずに、刺激減少処理で固定した構成を想定する。この想定した構成では、図4に示す状態において、装着状態が正規ではないことに気付いていないと、ユーザが刺激の増加を希望して第2キー33の操作を行うことになる。しかし、第2キー33の操作に応じた処理が刺激減少処理に固定されているため、ユーザの意図に反して刺激は減少することとなる。本形態の低周波治療器100によれば、このようなことはなく、ユーザの満足度を向上させることができる。また、図4に示す状態から、パッド部10を装着し直して図2に示す状態にしなくとも、正規の状態と同様の操作で、意図した刺激調整が可能となる。
【0051】
<低周波治療器100の変形例>
第1キー32と第2キー33は、パッド部10の短手方向に沿って配置されるものとしたが、パッド部10の長手方向に沿って配置される構成としてもよい。この構成であっても、第1キー32と第2キー33の並びが、左右反転する関係となる2つの装着状態が想定される。その場合に、例えば、ユーザの右手側に位置するキーが操作されたときには刺激増加処理を実行し、ユーザの左手側に位置するキーが操作されたときには刺激減少処理を実行するように、装着状態に応じて処理パターンを変更することで、装着状態によらずに、常に同じ操作で、ユーザの意図に沿った刺激調整が可能となる。
【0052】
プロセッサ21は、装着状態が図2図4のいずれの状態であるか判定できない場合には、刺激調整キーの操作に応じて実行する処理のパターンを正規パターンに設定することが好ましい。これにより、刺激調整が不可となるのを防ぐことができる。
【0053】
第1キー32と第2キー33をソフトウェアキーで実現する場合には、パッド部10から人体に与える刺激を増加させる(換言すると、パッド部10に供給する電力を増加させる)ことを示す情報(例えば、“+”(プラス)の文字)と、パッド部10から人体に与える刺激を減少させる(換言すると、パッド部10に供給する電力を減少させる)ことを示す情報(例えば、“-”(マイナス)の文字)とを、第1キー32と第2キー33のそれぞれの外形を示す枠内等に表示させてもよい。
【0054】
例えば、図2に示す状態であれば、第1キー32に“+”の文字を付し、第2キー33に“-”の文字を付す構成とし、図4に示す状態であれば、第2キー33に“+”の文字を付し、第1キー32に“-”の文字を付す構成とすればよい。これにより、どちらを操作すれば刺激を増やせるか分からなくなるといった事態を防ぐことができる。
【0055】
本開示の技術は、ユーザの身体に装着して用いられる健康機器であれば適用可能であるが、ユーザの身体の背面部に装着される健康機器については、より好ましく適用できる。身体の背面部に装着される健康機器は、健康機器を装着した状態で、ユーザが操作部を目視できないため、装着状態によらずに同じように操作できる本開示の技術が特に効果を発揮する。
【0056】
<他の適用例>
低周波治療器100は、治療を目的とする機器であるが、パッド部10に供給する電圧を変更することで、筋肉をトレーニングする目的の機器とすることも可能である。つまり、本開示の技術は、低周波治療器100以外に、EMS機器にも適用可能である。
【0057】
本開示の技術は、低周波治療器やEMS機器以外の健康機器にも適用可能である。例えば、身体に装着して身体を温めたり冷やしたりする加温装置や冷却装置に、本開示の技術を適用することも可能である。加温装置や冷却装置に、温度を調整するための2つの調整キーが設けられる場合に、本開示の技術が有効となる。
【0058】
<制御プログラム>
低周波治療器100等の健康機器の制御プログラムは、プログラムをコンピュータが読取可能な一時的でない(non-transitory)記憶媒体に記憶される。このような「コンピュータ読取可能な記憶媒体」は、例えば、CD-ROM(Compact Disc-ROM)等の光学媒体や、USB(Universal Serial Bus)メモリ又はメモリカード等の磁気記憶媒体等を含む。また、このようなプログラムを、インターネット等のネットワークを介したダウンロードによって提供することもできる。
【符号の説明】
【0059】
10 パッド部
20 本体部
100 低周波治療器
21 プロセッサ
22 メモリ
23 慣性センサ
24 電源部
25 パッド駆動部
30 操作部
31 電源キー
32 第1キー
33 第2キー
50 身体
51 腰部
図1
図2
図3
図4
図5