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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128532
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】検査方法および検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/85 20060101AFI20240913BHJP
【FI】
G01N21/85 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037536
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100135013
【弁理士】
【氏名又は名称】西田 隆美
(72)【発明者】
【氏名】吉田 祐輝
(72)【発明者】
【氏名】高田 弘大
(72)【発明者】
【氏名】中野 信行
(72)【発明者】
【氏名】谷口 和隆
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AA02
2G051AA03
2G051AB07
2G051BA01
2G051BC01
2G051CA04
2G051CA06
2G051CB01
2G051CC11
2G051DA06
(57)【要約】
【課題】1つの照明条件では判別しにくい粒状物の形状を判別できる検査方法および検査装置を提供する。
【解決手段】まず、光照射部31から粒状物9に第1の照明光を照射しつつ、粒状物9を撮影する。これにより、粒状物9の第1画像を取得する。次に、光照射部41から粒状物9に第1の照明光とは異なる第2の照明光を照射しつつ、粒状物9を撮影する。これにより、粒状物9の第2画像を取得する。そして、第1画像および第2画像に基づいて、粒状物9の形状を検出する。このように、照明条件の異なる第1画像および第2画像を取得すれば、第1画像および第2画像のうちの一方の画像では判別しにくい粒状物9の形状を、他方の画像で判別できる。
【選択図】図5

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒状物の外観検査を行う検査方法であって、
光照射部から前記粒状物に第1の照明光を照射しつつ、前記粒状物を撮影することにより、前記粒状物の第1画像を取得する第1撮像工程と、
前記光照射部から前記粒状物に前記第1の照明光とは異なる第2の照明光を照射しつつ、前記粒状物を撮影することにより、前記粒状物の第2画像を取得する第2撮像工程と、
前記第1画像および前記第2画像に基づいて、前記粒状物の形状を検出する検出工程と、
を有する、検査方法。
【請求項2】
請求項1に記載の検査方法であって、
前記光照射部は、
前記粒状物の側方の第1位置から前記粒状物へ向かう第1側方照明光と、
前記粒状物の側方の前記第1位置とは異なる第2位置から前記粒状物へ向かう第2側方照明光と、
前記粒状物の被検査面と対向する位置から前記被検査面へ向かう対向照明光と、
を照射可能であり、
前記第1の照明光および前記第2の照明光は、それぞれ、前記第1側方照明光、前記第2側方照明光、および前記対向照明光のうちの1つまたは複数を組み合わせた照明光である、検査方法。
【請求項3】
請求項2に記載の検査方法であって、
前記第1の照明光は、前記第1側方照明光、前記第2側方照明光、および前記対向照明光を含み、
前記第2の照明光は、前記第1側方照明光、前記第2側方照明光、および前記対向照明光のうち、前記対向照明光のみを含む、検査方法。
【請求項4】
請求項3に記載の検査方法であって、
前記第2の照明光における前記対向照明光の照射時間は、前記第1の照明光における前記対向照明光の照射時間よりも長い、検査方法。
【請求項5】
請求項2に記載の検査方法であって、
前記第1の照明光は、前記第1側方照明光および前記第2側方照明光の両方を含み、
前記第2の照明光は、前記第1側方照明光および前記第2側方照明光のうちのいずれか一方のみを含む、検査方法。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の検査方法であって、
前記粒状物を搬送しながら、前記第1撮像工程における前記粒状物の撮影と、前記第2撮像工程における前記粒状物の撮影とを、1つのカメラで行う、検査方法。
【請求項7】
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の検査方法であって、
前記粒状物は錠剤である、検査方法。
【請求項8】
粒状物の外観検査を行う検査装置であって、
前記粒状物へ向けて照明光を照射する光照射部と、
前記粒状物を撮影するカメラと、
前記光照射部および前記カメラの動作を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記光照射部から前記粒状物に第1の照明光を照射しつつ、前記カメラにより前記粒状物を撮影することにより、前記粒状物の第1画像を取得する第1撮像工程と、
前記光照射部から前記粒状物に前記第1の照明光とは異なる第2の照明光を照射しつつ、前記カメラにより前記粒状物を撮影することにより、前記粒状物の第2画像を取得する第2撮像工程と、
前記第1画像および前記第2画像に基づいて、前記粒状物の形状を検出する検出工程と、
を実行する、検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒状物の外観検査を行う検査方法および検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、錠剤や錠菓などの粒状物の表面に印刷を行う印刷装置が知られている。従来の印刷装置については、例えば、特許文献1に記載されている。特許文献1の印刷装置は、複数の錠剤をコンベアで搬送しつつ、各錠剤の表面に、インクジェット方式で画像を印刷する。また、特許文献1の印刷装置では、印刷前の錠剤を撮影し、得られた撮影画像に基づいて、錠剤の外観検査を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-138824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
錠剤の外観検査では、錠剤の上面と側面を判別するために、上面と側面の間にコントラストが生じるような照明条件で、錠剤を撮影する場合がある。しかしながら、当該照明条件では、錠剤の上面に浅い凹状の欠陥が存在する場合に、欠陥に対してコントラストが付きにくいため、欠陥を判別しにくいという問題がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、1つの照明条件では判別しにくい粒状物の形状を判別できる検査方法および検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本願の第1発明は、粒状物の外観検査を行う検査方法であって、光照射部から前記粒状物に第1の照明光を照射しつつ、前記粒状物を撮影することにより、前記粒状物の第1画像を取得する第1撮像工程と、前記光照射部から前記粒状物に前記第1の照明光とは異なる第2の照明光を照射しつつ、前記粒状物を撮影することにより、前記粒状物の第2画像を取得する第2撮像工程と、前記第1画像および前記第2画像に基づいて、前記粒状物の形状を検出する検出工程と、を有する。
【0007】
本願の第2発明は、第1発明の検査方法であって、前記光照射部は、前記粒状物の側方の第1位置から前記粒状物へ向かう第1側方照明光と、前記粒状物の側方の前記第1位置とは異なる第2位置から前記粒状物へ向かう第2側方照明光と、前記粒状物の被検査面と対向する位置から前記被検査面へ向かう対向照明光と、を照射可能であり、前記第1の照明光および前記第2の照明光は、それぞれ、前記第1側方照明光、前記第2側方照明光、および前記対向照明光のうちの1つまたは複数を組み合わせた照明光である。
【0008】
本願の第3発明は、第2発明の検査方法であって、前記第1の照明光は、前記第1側方照明光、前記第2側方照明光、および前記対向照明光を含み、前記第2の照明光は、前記第1側方照明光、前記第2側方照明光、および前記対向照明光のうち、前記対向照明光のみを含む。
【0009】
本願の第4発明は、第3発明の検査方法であって、前記第2の照明光における前記対向照明光の照射時間は、前記第1の照明光における前記対向照明光の照射時間よりも長い。
【0010】
本願の第5発明は、第2発明の検査方法であって、前記第1の照明光は、前記第1側方照明光および前記第2側方照明光の両方を含み、前記第2の照明光は、前記第1側方照明光および前記第2側方照明光のうちのいずれか一方のみを含む。
【0011】
本願の第6発明は、第1発明から第5発明までのいずれか1発明の検査方法であって、前記粒状物を搬送しながら、前記第1撮像工程における前記粒状物の撮影と、前記第2撮像工程における前記粒状物の撮影とを、1つのカメラで行う。
【0012】
本願の第7発明は、第1発明から第5発明までのいずれか1発明の検査方法であって、前記粒状物は錠剤である。
【0013】
本願の第8発明は、粒状物の外観検査を行う検査装置であって、前記粒状物へ向けて照明光を照射する光照射部と、前記粒状物を撮影するカメラと、前記光照射部および前記カメラの動作を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記光照射部から前記粒状物に第1の照明光を照射しつつ、前記カメラにより前記粒状物を撮影することにより、前記粒状物の第1画像を取得する第1撮像工程と、前記光照射部から前記粒状物に前記第1の照明光とは異なる第2の照明光を照射しつつ、前記カメラにより前記粒状物を撮影することにより、前記粒状物の第2画像を取得する第2撮像工程と、前記第1画像および前記第2画像に基づいて、前記粒状物の形状を検出する検出工程と、を実行する。
【発明の効果】
【0014】
本願の第1発明~第8発明によれば、異なる照明条件で撮影をすることにより、第1画像および第2画像を取得する。これにより、第1画像および第2画像のうちの一方の画像では判別しにくい形状を、他方の画像で判別できる。
【0015】
特に、本願の第3発明によれば、第1画像では、2方向から照射される側方照明光により判別しにくくなる被検査面の凹状の欠陥を、側方照明光を使用しない撮影により得られた第2画像において判別できる。
【0016】
特に、本願の第4発明によれば、側方照明光を使用しない代わりに、対向照明光の照射時間を長くする。これにより、第2画像が過度に暗くなることを抑制できる。
【0017】
特に、本願の第5発明によれば、第1画像では、2方向から照射される側方照明光により判別しにくくなる被検査面の線状の溝を、片方の側方照明光を使用しない撮影により得られた第2画像において判別できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】錠剤印刷装置の構成を示した図である。
図2】搬送コンベアの部分斜視図である。
図3】ヘッドの下面図である。
図4】錠剤印刷装置の制御ブロック図である。
図5】印刷前撮像部の構成を示した図である。
図6】印刷前撮像部の下面図である。
図7】外観検査の流れを示したフローチャートである。
図8】照明条件を示した図である。
図9】第1画像を示した図である。
図10】第2画像を示した図である。
図11】変形例に係る照明条件を示した図である。
図12】変形例に係る第1画像を示した図である。
図13】変形例に係る第2画像を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0020】
<1.錠剤印刷装置の全体構成>
図1は、錠剤印刷装置1の構成を示した図である。この錠剤印刷装置1は、粒状物である複数の錠剤9を搬送しながら、各錠剤9の表裏両面に、製品名、製品コード、会社名、ロゴマーク等の画像を印刷する装置である。錠剤9は、素錠(裸錠)であってもよく、あるいは、糖衣錠、フィルムコーティング錠(FC錠)等のコーティング錠であってもよい。また、錠剤9は、硬カプセル剤および軟カプセル剤を含むカプセル剤であってもよい。また、本発明における「粒状物」は、医薬品としての錠剤に限らず、健康食品としての錠剤や、ラムネ等の錠菓であってもよい。
【0021】
図1に示すように、本実施形態の錠剤印刷装置1は、供給機構10、第1ドラム15、第2ドラム20、搬送コンベア25、印刷前撮像部30、印刷部35、印刷後撮像部40、乾燥機構45、反転機構50、排出機構55、および制御部100を備えている。
【0022】
供給機構10は、錠剤印刷装置1に投入された複数の錠剤9を、第1ドラム15へ供給する機構である。本実施形態の供給機構10は、ボウルフィーダ11、第1シュート12、供給コンベア13、および第2シュート14を有する。
【0023】
ボウルフィーダ11は、複数の錠剤9を受ける円盤状のトラフ110を有する。ボウルフィーダ11は、トラフ110を振動させることにより、複数の錠剤9を移動させて、第1シュート12へ供給する。第1シュート12は、トラフ110と供給コンベア13との間で、円弧状に延びている。第1シュート12は、複数の供給路を有する。ボウルフィーダ11は、第1シュート12の各供給路へ錠剤9を供給する。これにより、多数の錠剤9が複数の列に整列される。すなわち、搬送方向に並ぶ錠剤9の列が、幅方向(搬送方向に対して直交する方向)に複数形成される。そして、整列後の錠剤9が、第1シュート12から供給コンベア13へ供給される。なお、図1では、1つの列の錠剤9のみが示されている。
【0024】
供給コンベア13は、第1シュート12から第2シュート14へ、錠剤9を搬送する機構である。供給コンベア13は、2つのプーリ131と、2つのプーリ131に架け渡された環状の供給ベルト132とを有する。2つのプーリ131の一方は、モータ(図示省略)から得られる動力により回転する。これにより、供給ベルト132が、図1中の矢印の方向に回動する。他方のプーリ131は、供給ベルト132の回動に伴い従動回転する。また、供給ベルト132の上部には、錠剤9の列の境界に沿って延びる仕切プレートが設けられている。第1シュート12から供給される錠剤9は、仕切プレートによって複数の列に整列された状態を維持しつつ、供給ベルト132の回動により、搬送方向の下流側へ搬送される。
【0025】
第2シュート14は、供給コンベア13と第1ドラム15との間で、直線状に延びている。第2シュート14は、複数の水平な供給路を有する。供給コンベア13から供給される複数の錠剤9は、第2シュート14の各供給路へ供給される。第2シュート14内の錠剤9は、供給コンベア13により搬送される後続の錠剤9に押されることによって、搬送方向の下流側へ搬送される。そして、第2シュート14の搬送方向下流側の端部から第1ドラム15へ、錠剤9が供給される。
【0026】
第1ドラム15は、第2シュート14から供給される複数の錠剤9を、搬送方向に一定の間隔をあけて保持しつつ搬送する機構である。第1ドラム15は、幅方向と平行な第1軸O1を中心とする略円筒状の外周面を有する。また、第1ドラム15には、図示を省略したモータが接続されている。モータを駆動させると、第1ドラム15は、第1軸O1を中心として、図1中の矢印の方向へ回転する。第1ドラム15は、その上端部付近の第1受渡位置P1から、第2ドラム20に近接する第2受渡位置P2まで、錠剤9を搬送する。
【0027】
図1に示すように、第1ドラム15は、ドラム本体16と、保持リング17とを有する。ドラム本体16は、第1軸O1を中心とする円筒状の外周面を有する。ドラム本体16は、例えば、ステンレス等の金属により形成される。保持リング17は、ドラム本体16の外周面に装着される。具体的には、複数の保持リング17が、錠剤9の列のそれぞれに対応する幅方向の位置に配置される。保持リング17は、例えば、ポリアセタール等の樹脂により形成される。
【0028】
各保持リング17の外周面は、複数の凹状のポケット18を有する。複数のポケット18は、第1軸O1を中心とする周方向に、一定の間隔で設けられている。また、保持リング17は、各ポケット18の底部に、錠剤9を吸着するための吸着孔19を有する。吸着孔19は、保持リング17を貫通する貫通孔である。
【0029】
第1ドラム15は、図示を省略した吸引機構と接続されている。吸引機構を動作させると、第1受渡位置P1と第2受渡位置P2との間の角度範囲に位置する第1ドラム15の内部空間から、気体が吸い出される。これにより、当該内部空間が、大気圧よりも低い負圧となる。また、当該内部空間と連通する吸着孔19にも、負圧が生じる。第2シュート14から供給される複数の錠剤9は、この負圧によって、保持リング17の吸着孔19に、吸着保持される。
【0030】
第2シュート14から供給される錠剤9は、1つずつポケット18に収容されて、吸着孔19に吸着保持される。このとき、錠剤9は、押圧機構141に押圧されることにより、保持リング17のポケット18へ誘い込まれる。その結果、複数の錠剤9の搬送方向の間隔が、ポケット18の間隔に応じた所定の間隔となる。各錠剤9は、ポケット18内の吸着孔19に吸着保持されつつ、第1ドラム15の回転によって、第1受渡位置P1から第2受渡位置P2まで搬送される。そして、錠剤9が第2受渡位置P2を通過すると、上記の負圧に保たれた内部空間の角度範囲から外れることによって、錠剤9の吸着が解除される。これにより、第1ドラム15から第2ドラム20へ、錠剤9が受け渡される。
【0031】
第2ドラム20は、第1ドラム15から受け渡される錠剤9を、搬送コンベア25まで搬送する機構である。第2ドラム20は、幅方向と平行な第2軸O2を中心とする略円筒状の外周面を有する。本実施形態では、第1ドラム15の外径と、第2ドラム20の外径とが、略同一である。ただし、第1ドラム15の外径と、第2ドラム20の外径とは、相違していてもよい。第2ドラム20には、図示を省略したモータが接続されている。モータを駆動させると、第2ドラム20は、第2軸O2を中心として、第1ドラム15とは反対の向きに回転する。第2ドラム20は、第1ドラム15に近接する第2受渡位置P2から、搬送コンベア25に近接する第3受渡位置P3まで、錠剤9を搬送する。第3受渡位置P3の高さは、第1受渡位置P1および第2受渡位置P2の高さよりも高い。
【0032】
図1に示すように、第2ドラム20は、ドラム本体21と、保持リング22とを有する。ドラム本体21は、第2軸O2を中心とする円筒状の外周面を有する。ドラム本体21は、例えば、ステンレス等の金属により形成される。保持リング22は、ドラム本体21の外周面に装着される。具体的には、複数の保持リング22が、錠剤9の列のそれぞれに対応する幅方向の位置に配置される。保持リング22は、例えば、シリコーン等の樹脂により形成される。
【0033】
各保持リング22は、複数の吸着孔24を有する。吸着孔24は、保持リング22を貫通する貫通孔である。また、第2ドラム20は、図示を省略した吸引機構と接続されている。吸引機構を動作させると、第2受渡位置P2と第3受渡位置P3との間の角度範囲に位置する第2ドラム20の内部空間から、気体が吸い出される。これにより、当該内部空間が、大気圧よりも低い負圧となる。また、当該内部空間と連通する吸着孔24にも、負圧が生じる。第1ドラム15から受け渡される複数の錠剤9は、この負圧によって、保持リング22の吸着孔24に吸着保持される。
【0034】
吸着孔24に吸着保持された錠剤9は、第2ドラム20の回転によって、第2受渡位置P2から第3受渡位置P3まで搬送される。そして、錠剤9が第3受渡位置P3を通過すると、上記の負圧に保たれた内部空間の角度範囲から外れることによって、錠剤9の吸着が解除される。これにより、第2ドラム20から搬送コンベア25へ、錠剤9が受け渡される。
【0035】
このように、本実施形態では、供給機構10から供給される複数の錠剤9を、第1ドラム15および第2ドラム20の2つのドラムを介して、搬送コンベア25へ搬送する。第1ドラム15は、複数の錠剤9を、搬送方向に間隔をあけた状態で保持する。第2ドラム20は、その搬送方向の間隔を保ちながら、搬送コンベア25へ錠剤9を搬送する。その際、第1ドラム15と第2ドラム20とで、錠剤9の搬送の向き(回転の向き)が反転する。これにより、搬送コンベア25の動作の向きに合わせて、第2ドラム20から搬送コンベア25へ、錠剤9を送ることができる。
【0036】
搬送コンベア25は、第2ドラム20から受け渡される複数の錠剤9を、吸着保持しつつ搬送する機構である。搬送コンベア25は、一対のプーリ26と、一対のプーリ26の間に架け渡された環状の搬送ベルト27とを有する。一対のプーリ26の一方は、図示を省略したモータから得られる動力により回転する。これにより、搬送ベルト27が、図1中の矢印の方向に回動する。一対のプーリ26の他方は、搬送ベルト27の回動に伴い従動回転する。
【0037】
図2は、搬送コンベア25の部分斜視図である。図2に示すように、搬送ベルト27には、複数の吸着孔29が形成されている。複数の吸着孔29は、搬送方向および幅方向に間隔をあけて配列されている。各吸着孔29は、搬送ベルト27を貫通する貫通孔である。また、搬送コンベア25は、搬送ベルト27の内側の空間から気体を吸い出す吸引機構(図示省略)を有する。吸引機構を動作させると、搬送ベルト27の内側の空間が、大気圧よりも低い負圧となる。複数の錠剤9は、当該負圧によって、吸着孔29に1つずつ吸着保持される。
【0038】
このように、複数の錠剤9は、搬送ベルト27の表面に、搬送方向よび幅方向に整列した状態で保持される。そして、搬送コンベア25は、搬送ベルト27を回動させることによって、複数の錠剤9を、環状の搬送経路に沿って搬送する。後述する印刷前撮像部30、印刷部35、および印刷後撮像部40の下方では、複数の錠剤9は、搬送ベルト27の上面に保持されつつ、水平方向に搬送される。
【0039】
図2に示すように、本実施形態の搬送ベルト27の表面は、反転機構50による反転前の錠剤9を保持する第1領域A1と、反転後の錠剤9を保持する第2領域A2とを有する。第1領域A1と第2領域A2とは、幅方向に隣接する。本実施形態では、第1領域A1および第2領域A2に、複数の吸着孔29が、幅方向に3列ずつ設けられる。上述した供給機構10、第1ドラム15、および第2ドラム20により供給される錠剤9は、第1領域A1の吸着孔29に吸着保持される。また、両面に印刷がされた複数の錠剤9は、第2領域A2の吸着孔29から排出機構55へ排出される。
【0040】
印刷前撮像部30は、印刷前の錠剤9を撮影するためのユニットである。印刷前撮像部30は、上述した第3受渡位置P3よりも搬送経路の下流側かつ印刷部35よりも搬送経路の上流側に位置する。また、印刷前撮像部30は、第1領域A1と第2領域A2の双方に跨がって、幅方向に延びる。印刷前撮像部30は、搬送ベルト27により搬送される複数の錠剤9を撮影する。撮影により取得された画像は、印刷前撮像部30から後述する制御部100へ送信される。制御部100は、印刷前撮像部30から得られた画像に基づいて、錠剤9の外観検査を行う。印刷前撮像部30のより詳細な構成については、後述する。
【0041】
印刷部35は、搬送ベルト27により搬送される錠剤9の表面に、インクジェット方式で画像を印刷する処理部である。図1に示すように、本実施形態の印刷部35は、4つのヘッド36を有する。4つのヘッド36は、搬送ベルト27の上方に位置し、錠剤9の搬送方向に沿って、一列に配置されている。各ヘッド36は、第1領域A1と第2領域A2の双方に跨がって、幅方向に延びる。4つのヘッド36は、錠剤9に向けて、互いに異なる色(例えば、シアン、マゼンタ、イエロー、およびブラックの各色)のインク滴を吐出する。すると、これらの各色により形成される単色画像の重ね合わせによって、錠剤9の表面に、多色画像が記録される。なお、各ヘッド36から吐出されるインクには、日本薬局方、食品衛生法等で認可された原料により製造された可食性インクが使用される。
【0042】
図3は、1つのヘッド36の下面図である。図3には、搬送ベルト27と、搬送ベルト27に保持された複数の錠剤9とが、二点鎖線で示されている。図3中に拡大して示したように、ヘッド36の下面には、インク滴を吐出可能な複数のノズル37が設けられている。本実施形態では、ヘッド36の下面に、複数のノズル37が、搬送方向および幅方向に二次元的に配列されている。各ノズル37は、幅方向に位置をずらして配列されている。このように、複数のノズル37を二次元的に配置すれば、各ノズル37の幅方向の位置を、互いに接近させることができる。ただし、複数のノズル37は、幅方向に沿って一列に配列されていてもよい。
【0043】
ノズル37からのインク滴の吐出方式には、例えば、ピエゾ素子に電圧を加えて変形させることにより、ノズル37内のインクを加圧して吐出する、いわゆるピエゾ方式が用いられる。ただし、インク滴の吐出方式は、ヒータに通電してノズル37内のインクを加熱膨張させることにより吐出する、いわゆるサーマル方式であってもよい。
【0044】
印刷後撮像部40は、印刷後の錠剤9を撮影するためのユニットである。印刷後撮像部40は、印刷部35よりも搬送経路の下流側かつ乾燥機構45よりも搬送経路の上流側に位置する。また、印刷後撮像部40は、第1領域A1と第2領域A2の双方に跨がって、幅方向に延びる。印刷後撮像部40は、搬送ベルト27により搬送される複数の錠剤9を撮影する。撮影により取得された画像は、印刷後撮像部40から後述する制御部100へ送信される。制御部100は、印刷後撮像部40から得られた画像に基づいて、錠剤9に印刷された画像の良否を検査する。
【0045】
乾燥機構45は、錠剤9に付着したインクを乾燥させる機構である。乾燥機構45は、印刷後撮像部40よりも搬送経路の下流側かつ後述する反転機構50および排出機構55よりも搬送経路の上流側に位置する。また、乾燥機構45は、第1領域A1と第2領域A2の双方に跨がって、幅方向に延びる。乾燥機構45には、例えば、搬送ベルト27により搬送される錠剤9へ向けて、加熱された気体(熱風)を吹き付ける、熱風供給機構が用いられる。錠剤9に付着したインクは、熱風により乾燥して、錠剤9の表面または裏面に定着する。
【0046】
反転機構50は、搬送ベルト27により搬送される錠剤9の表裏を反転させるとともに、第1領域A1から第2領域A2へ錠剤9を移動させる機構である。反転機構50は、乾燥機構45よりも搬送経路の下流側に位置する。反転機構50は、幅方向に並んだ一対の傾斜ドラム51を、複数組有する。各傾斜ドラム51は、円錐状の保持面を有する。一対の傾斜ドラム51のうち、一方の傾斜ドラム51は、第1領域A1において搬送される錠剤9を、保持面に吸着しつつ回転し、当該錠剤9を他方の傾斜ドラム51へ受け渡す。他方の傾斜ドラム51は、一方の傾斜ドラム51から受け取った錠剤9を、保持面に吸着しつつ回転し、当該錠剤9を第2領域A2へ受け渡す。これにより、錠剤9の表裏が反転するとともに、第1領域A1から第2領域A2へ錠剤9が移動する。
【0047】
供給機構10から第1ドラム15および第2ドラム20を介して搬送コンベア25へ搬送された錠剤9は、まず、搬送ベルト27の第1領域A1に保持される。そして、錠剤印刷装置1は、第1領域A1に錠剤9を保持しつつ搬送し、錠剤9の一方の面に対して、印刷前撮像部30による撮影、印刷部35による印刷、印刷後撮像部40による撮影、および乾燥機構45による乾燥、の各処理を行う。続いて、反転機構50が、錠剤9の表裏を反転させるとともに、第1領域A1から第2領域A2へ錠剤9を移動させる。その後、錠剤印刷装置1は、第2領域A2に錠剤9を保持しつつ搬送し、錠剤9の他方の面に対して、印刷前撮像部30による撮影、印刷部35による印刷、印刷後撮像部40による撮影、および乾燥機構45による乾燥、の各処理を行う。
【0048】
排出機構55は、両面に印刷がされた複数の錠剤9を、搬送コンベア25から排出するための機構である。排出機構55は、乾燥機構45よりも搬送経路の下流側に位置する。排出機構55は、搬送ベルト27の第2領域A2に保持された錠剤9を、不良品と良品とに分別しつつ、搬送コンベア25の下方へ排出する。
【0049】
制御部100は、錠剤印刷装置1内の各部を動作制御するためのユニットである。図4は、錠剤印刷装置1の制御ブロック図である。図4中に概念的に示したように、制御部100は、CPU等のプロセッサ101、RAM等のメモリ102、およびハードディスクドライブ等の記憶部103を有するコンピュータにより構成される。記憶部103内には、錠剤9の搬送、印刷、および検査を実行するためのコンピュータプログラムCPが、記憶されている。
【0050】
また、図4に示すように、制御部100は、上述したボウルフィーダ11、供給コンベア13、第1ドラム15、第2ドラム20、搬送コンベア25、印刷前撮像部30、印刷部35、印刷後撮像部40、乾燥機構45、反転機構50、および排出機構55と、それぞれ電気的に接続されている。印刷前撮像部30は、後述する光照射部31およびカメラ34を含む。
【0051】
制御部100は、記憶部103に記憶されたコンピュータプログラムCPやデータをメモリ102に一時的に読み出し、当該コンピュータプログラムCPに基づいて、プロセッサ101が演算処理を行うことにより、上記の各部を動作制御する。これにより、複数の錠剤9の搬送および印刷が進行する。また、制御部100は、印刷前撮像部30および印刷後撮像部40から得られる画像を、コンピュータプログラムCPに従って処理することにより、錠剤9の検査を行う。
【0052】
<2.印刷前撮像部について>
続いて、印刷前撮像部30の構成について、より詳細に説明する。印刷前撮像部30は、搬送コンベア25により搬送される錠剤9の列のそれぞれの上方に配置される。例えば、図2のように、搬送コンベア25が錠剤9を6列で搬送する場合、印刷前撮像部30は、幅方向に6つ配置される。印刷前撮像部30は、搬送コンベア25により搬送される各列の錠剤9を、1つずつ撮影する。
【0053】
図5は、印刷前撮像部30の構成を示した図である。図6は、印刷前撮像部30の下面図である。図5に示すように、印刷前撮像部30は、光照射部31、第1ミラー32、第2ミラー33、およびカメラ34を有する。
【0054】
光照射部31は、第1ミラー32、第2ミラー33、およびカメラ34よりも下方に位置する。光照射部31は、撮影のための照明光を、錠剤9へ向けて照射する。光照射部31は、第1側方照明部61、第2側方照明部62、および対向照明部63を有する。
【0055】
第1側方照明部61は、錠剤9の上方かつ側方の第1位置から錠剤9へ向けて、第1側方照明光L1を照射する。図6に示すように、第1側方照明部61は、印刷前撮像部30の中心軸A(搬送ベルト27の表面に対して垂直な軸)を中心として円弧状に配列された複数の光源611を有する。複数の光源611は、中心軸Aの周囲の約180°の範囲に配列される。図6のように下方から見た状態において、複数の光源611は、撮影時の錠剤9を半円弧状に取り囲む。第1側方照明部61は、錠剤9の上面91および側面92の両方に対して、第1側方照明光L1を照射する。
【0056】
第2側方照明部62は、錠剤9の上方かつ側方の第2位置から錠剤9へ向けて、第2側方照明光L2を照射する。第1位置と第2位置とは、異なる位置である。本実施形態では、図6に示すように、第1側方照明部61と第2側方照明部62とは、中心軸Aを挟んで互いに反対側に位置する。第2側方照明部62は、中心軸Aに対して円弧状に配列された複数の光源621を有する。複数の光源621は、中心軸Aの周囲の約180°の範囲に配列される。図6のように下方から見た状態において、複数の光源621は、撮影時の錠剤9を半円弧状に取り囲む。第2側方照明部62は、錠剤9の上面91および側面92の両方に対して、第2側方照明光L2を照射する。
【0057】
対向照明部63は、錠剤9の上面(被検査面)91と対向する位置から錠剤9の上面91へ向けて、対向照明光L3を照射する。対向照明部63は、後述する第2ミラー33の下方の、中心軸Aと重なる位置に配置される。対向照明部63から照射される対向照明光L3の光量は、第1側方照明光L1の光量および第2側方照明光L2の光量よりも小さい。対向照明部63は、撮影時の錠剤9の上面91および側面92のうち、主に上面91に対して対向照明光L3を照射する。
【0058】
第1ミラー32および第2ミラー33は、錠剤9の像をカメラ34へ入射させるための反射鏡である。第1ミラー32および第2ミラー33は、光照射部31よりも上方かつカメラ34よりも下方に位置する。第2ミラー33は、中心軸Aと重なる位置に配置される。第1ミラー32は、第2ミラー33の周囲に位置する。第1ミラー32は、対向照明部63の下方へ向けて、斜め下向きに傾斜した反射面を有する。第2ミラー33は、四角錐状の外形を有する。第2ミラー33は、当該四角錐の4つの側面に、三角形状の4つの反射面を有する。
【0059】
図6に示すように、第1側方照明部61および第2側方照明部62は、対向照明部63の周囲にリング状に配置されている。そして、第1側方照明部61および第2側方照明部62と、対向照明部63との間には、リング状の開口部64が形成されている。光照射部31から照射され、錠剤9の表面で反射した光は、開口部64を通って、第1ミラー32へ入射する。そして、第1ミラー32において反射し、さらに第2ミラー33において反射した光が、カメラ34へ入射する。これにより、対向照明部63を迂回して、錠剤9の像をカメラ34へ入射させることができる。
【0060】
カメラ34は、第2ミラー33の上方に位置する。カメラ34は、中心軸Aと重なる位置に配置される。カメラ34は、CCDやCMOS等の撮像素子と、撮像素子へ光を結像させるレンズとを有する。カメラ34は、第2ミラー33の4つの反射面に写る錠剤9の像を撮影する。これにより、斜め上方の4方向から視た錠剤9の撮影画像が得られる。撮影画像は、画素毎に階調値をもつデジタルデータである。取得された撮影画像は、カメラ34から制御部100へ出力される。
【0061】
<3.外観検査について>
印刷前撮像部30および制御部100は、錠剤9の外観検査を行う検査装置を構成する。制御部100は、光照射部31およびカメラ34の動作を制御することにより、錠剤9を撮影する。そして、制御部100は、カメラ34から入力される撮影画像に基づいて、錠剤9の外観検査を行う。以下では、錠剤9の外観検査の処理について、より詳細に説明する。
【0062】
図7は、印刷前撮像部30および制御部100による錠剤9の外観検査の流れを示したフローチャートである。図8は、第1撮像工程および第2撮像工程における光照射部31の照明条件を示した図である。
【0063】
搬送コンベア25により錠剤9が印刷前撮像部30の下方へ搬送されると、印刷前撮像部30は、まず、第1撮像工程を実行する(ステップS1)。図8に示すように、第1撮像工程では、光照射部31が、第1側方照明部61、第2側方照明部62、および対向照明部63を全て点灯させる。これにより、第1側方照明光L1、第2側方照明光L2、および対向照明光L3の全ての照明光を、第1の照明光として、錠剤9に照射する。そして、印刷前撮像部30は、第1の照明光を照射しつつ、カメラ34による錠剤9の撮影を行う。この第1撮像工程により得られる錠剤9の撮影画像を、以下では「第1画像D1」と称する。
【0064】
第1撮像工程が終了すると、次に、印刷前撮像部30は、錠剤9の第2撮像工程を実行する(ステップS2)。図8に示すように、第2撮像工程では、光照射部31が、第1側方照明部61および第2側方照明部62を消灯させて、対向照明部63のみを点灯させる。これにより、対向照明光L3のみを、第2の照明光として、錠剤9に照射する。そして、印刷前撮像部30は、第2の照明光を照射しつつ、カメラ34による錠剤9の撮影を行う。この第2撮像工程により得られる錠剤9の撮影画像を、以下では「第2画像D2」と称する。
【0065】
第2撮像工程において対向照明部63から照射される対向照明光L3の光量は、第1撮像工程において対向照明部63から照射される対向照明光L3の光量よりも、大きくすることが望ましい。具体的には、第2撮像工程における対向照明光L3の照射時間を、第1撮像工程における対向照明光L3の照射時間よりも、長くするとよい。例えば、第1撮影処理における対向照明光L3の照射時間を50μsとし、第2撮影処理における対向照明光L3の照射時間を200μsとする。このようにすれば、第1画像D1と比べて第2画像D2が暗くなることを抑制できる。したがって、第2画像D2に基づく外観検査を、精度よく行うことができる。
【0066】
第1画像D1および第2画像D2は、カメラ34から制御部100へ送信される。制御部100は、第1画像D1および第2画像D2に基づいて、錠剤9の欠陥を検出する(ステップS3)。また、制御部100は、第1画像D1および第2画像D2に基づいて、錠剤9の重心を検出する処理や、錠剤9の割線の向きを検出する処理も行う。
【0067】
図9は、第1撮像工程により得られる第1画像D1の例を示した図である。図10は、第2撮像工程により得られる第2画像D2の例を示した図である。図9の第1画像D1は、第1側方照明部61、第2側方照明部62、および対向照明部63を全て点灯させた状態で撮影されたものである。このため、第1画像D1では、錠剤9の上面91と側面92の間で高いコントラストを得ることができる。したがって、制御部100は、第1画像D1を使用することにより、錠剤9の上面91と側面92とを、容易に判別することができる。
【0068】
ただし、第1側方照明光L1および第2側方照明光L2を照射した場合、得られた第1画像D1において、錠剤9の上面91の浅い凹凸に対して、コントラストが得られにくい場合がある。例えば、図9および図10の破線で囲んだ領域には、浅い凹状の欠陥が存在する。しかしながら、図9の第1画像D1では、この凹状の欠陥のコントラストが小さくなっている。このため、図9の第1画像D1では、凹状の欠陥を判別することが難しい。
【0069】
これに対し、図10の第2画像D2は、第1側方照明部61および第2側方照明部62を消灯した状態で撮影されたものである。このため、図10の第2画像D2では、図9の第1画像D1よりも、破線で囲まれた凹状の欠陥のコントラストが大きくなっている。したがって、制御部100は、図10の第2画像D2を使用することにより、図9の第1画像D1を使用する場合よりも、凹状の欠陥を容易に判別することができる。
【0070】
このように、本実施形態では、印刷前撮像部30が、照明条件の異なる2回の撮影により、第1画像D1および第2画像D2を取得する。このため、制御部100は、第1画像D1および第2画像D2のうちの一方の画像では判別しにくい形状を、他方の画像で判別することができる。これにより、錠剤9の外観検査において、欠陥の検出精度を向上させることができる。
【0071】
本実施形態では、搬送コンベア25により錠剤9を搬送しながら、印刷前撮像部30が、1つの錠剤9に対して、第1撮像工程および第2撮像工程を、短時間の間に実行する。このため、1つのカメラ34が、第1撮像工程における錠剤9の撮影と、第2撮像工程における錠剤9の撮影と、を行う。このようにすれば、第1撮像工程における錠剤9の撮影と、第2撮像工程における錠剤9の撮影とを、別々のカメラで行う場合よりも、カメラの台数を低減できる。また、別々のカメラで撮影する場合よりも、同一の錠剤9が撮影された第1画像D1と第2画像D2の組み合わせを、容易に特定することができる。
【0072】
<4.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではない。以下では、種々の変形例について、上記の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0073】
<4-1.第1変形例>
光照射部31は、第1撮像工程および第2撮像工程において、上記の実施形態とは異なる照明条件で、照明光を照射してもよい。図11は、第1撮像工程および第2撮像工程における光照射部31の照明条件の他の例を示した図である。
【0074】
図11の例では、光照射部31は、第1撮像工程において、第1側方照明部61、第2側方照明部62、および対向照明部63を全て点灯させる。これにより、第1側方照明光L1、第2側方照明光L2、および対向照明光L3の全ての照明光を、第1の照明光として、錠剤9に照射する。そして、印刷前撮像部30は、第1の照明光を照射しつつ、カメラ34による錠剤9の撮影を行うことにより、第1画像D1を取得する。
【0075】
また、図11の例では、光照射部31は、第2撮像工程において、第2側方照明部62を消灯させて、第1側方照明部61および対向照明部63を点灯させる。これにより、第1側方照明光L1および対向照明光L3を、第2の照明光として、錠剤9に照射する。そして、印刷前撮像部30は、第2の照明光を照射しつつ、カメラ34による錠剤9の撮影を行うことにより、第2画像D2を取得する。
【0076】
図12は、図11の第1撮像工程により得られる第1画像D1の例を示した図である。図13は、図11の第2撮像工程により得られる第2画像D2の例を示した図である。図12および図13のように、錠剤9は、割線93を有する場合がある。割線93は、錠剤9の上面91に形成された線状の溝である。図12のように、第1側方照明光L1および第2側方照明光L2の両方を照射した場合、2方向から照射される側方照明光により、得られた第1画像D1において、割線93のコントラストが低くなる。このため、図12の第1画像D1では、割線93を明確に判別することが難しい。
【0077】
これに対し、図13の第2画像D2は、第2側方照明部62を消灯した状態で撮影したものである。この場合、第1側方照明光L1および第2側方照明光L2のうち、第2側方照明光L2を使用しないことにより、割線93に陰が生じる。このため、図13の第2画像D2では、図12の第1画像D1よりも、割線93のコントラストが大きくなる。したがって、制御部100は、図13の第2画像D2を使用することにより、図12の第1画像D1よりも、割線93を容易に判別することができる。
【0078】
なお、図11の例では、第2撮像工程において、第1側方照明部61を点灯して、第2側方照明部62を消灯している。しかしながら、第2撮像工程において、第1側方照明部61を消灯して、第2側方照明部62を点灯してもよい。
【0079】
<4-2.他の変形例>
また、光照射部31は、第1撮像工程および第2撮像工程において、図8および図11とは異なる照明条件で、照明光を照射してもよい。第1撮像工程において照射される第1の照明光と、第2撮像工程において照射される第2の照明光とは、それぞれ、第1側方照明光L1、第2側方照明光L2、および対向照明光L3のうちの1つまたは複数を組み合わせた、他の照明条件であってもよい。
【0080】
また、光照射部31は、必ずしも、第1側方照明部61、第2側方照明部62、および対向照明部63を有するものでなくてもよい。光照射部31は、2種類以上の照明条件で照明光を照射できるものであればよい。光照射部31は、各照明部の点灯のON/OFFだけではなく、光の照射時間、偏光、光の色などを変更することにより、照明条件を切り替えるものであってもよい。
【0081】
また、上記の実施形態は、印刷部35に、4つのヘッド36が設けられていた。しかしながら、印刷部35に含まれるヘッド36の数は、1~3つであってもよく、5つ以上であってもよい。
【0082】
また、上記の実施形態では、錠剤9に対して印刷を行う錠剤印刷装置1について説明した。しかしながら、本発明は、錠剤等の粒状物に対して、印刷を行うことなく、外観検査を行うものであってもよい。
【0083】
また、上記の実施形態や変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に取捨選択してもよい。
【符号の説明】
【0084】
1 錠剤印刷装置
9 錠剤
10 供給機構
15 第1ドラム
20 第2ドラム
25 搬送コンベア
30 印刷前撮像部
31 光照射部
32 第1ミラー
33 第2ミラー
34 カメラ
35 印刷部
40 印刷後撮像部
45 乾燥機構
50 反転機構
55 排出機構
61 第1側方照明部
62 第2側方照明部
63 対向照明部
64 開口部
91 錠剤の上面
92 錠剤の側面
93 割線
100 制御部
611 光源
621 光源
A 中心軸
D1 第1画像
D2 第2画像
L1 第1側方照明光
L2 第2側方照明光
L3 対向照明光
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13