(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128536
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】車体前部構造
(51)【国際特許分類】
B60R 19/18 20060101AFI20240913BHJP
B62D 21/00 20060101ALI20240913BHJP
B62D 25/08 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
B60R19/18 D
B62D21/00 A
B62D25/08 D
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037543
(22)【出願日】2023-03-10
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-08-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003683
【氏名又は名称】弁理士法人桐朋
(72)【発明者】
【氏名】江原 義明
(72)【発明者】
【氏名】細部 智章
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼畑 賢士
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203AA02
3D203BA13
3D203BB16
3D203BB17
3D203BB35
3D203BB43
3D203BB44
3D203BC36
3D203CA23
3D203CA37
3D203CA38
3D203DA22
(57)【要約】 (修正有)
【課題】フロントバンパに衝突した物体の損傷を軽減する車体前部構造を提供する。
【解決手段】車体前部構造は、車体フレームと、フロントバンパ(100)とを備える。車体前部構造は、フロントバンパの後部に設けられたストッパ部(104)と、車体を構成する車体構成部材(53)に設けられた荷重受部(51)とを備える。ストッパ部は、車体の前方から後方に向かう方向の荷重がフロントバンパに入力される前の初期状態において、荷重受部に向かい合う。ストッパ部は、荷重がフロントバンパに入力された入力状態において、荷重受部に当接する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレームと、車体の前後方向において前記車体フレームよりも前方に位置するフロントバンパとを備える車体前部構造であって、
前記車体前部構造は、前記フロントバンパの前記前後方向における後部に設けられたストッパ部と、前記ストッパ部の後方において、前記車体を構成する車体構成部材に設けられた荷重受部とを備え、
前記ストッパ部は、前記車体の前方から後方に向かう方向の荷重が前記フロントバンパに入力される前の初期状態において前記荷重受部に向かい合い、前記荷重が前記フロントバンパに入力された入力状態において前記荷重受部に当接する、車体前部構造。
【請求項2】
請求項1記載の車体前部構造において、前記ストッパ部は、前記フロントバンパの前記後部の下端に設けられている、車体前部構造。
【請求項3】
請求項2記載の車体前部構造において、前記フロントバンパの前記下端は、前記車体構成部材に向かって延びる延出部を有し、前記ストッパ部は、前記延出部の上面に設けられている、車体前部構造。
【請求項4】
請求項3記載の車体前部構造において、前記ストッパ部の最後部の位置と、前記フロントバンパの前記延出部の最後部の位置とが、前記前後方向において一致している、車体前部構造。
【請求項5】
請求項3記載の車体前部構造において、前記ストッパ部は、内部空間を有する中空体であり、且つ前記フロントバンパに一体的に設けられた、車体前部構造。
【請求項6】
請求項5記載の車体前部構造において、前記ストッパ部は、該ストッパ部の内面又は該ストッパ部の外面に設けられたリブを有する、車体前部構造。
【請求項7】
請求項3記載の車体前部構造において、前記ストッパ部は、前記前後方向における前記前方に向かって延びる凸部と、該凸部に対して相対的に前記前後方向における前記後方に向かって凹んだ凹部とを有する、車体前部構造。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の車体前部構造において、前記車体構成部材はアンダロードパス部を有し、前記荷重受部は、前記アンダロードパス部における前記前後方向の前端部である、車体前部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車における車体前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
交通参加者のうち高齢者、障がい者又は子供等は、特に脆弱な立場である。近年、このような脆弱な立場の人々に配慮した持続可能な輸送システムへのアクセスを提供する取り組みが活発化している。この実現に向け、交通の安全性又は利便性を一層改善するための研究開発が行われている。その一例として、衝突安全性能に関する開発が挙げられる。
【0003】
特許文献1には、フロントバンパの後面に、延出壁部を有するエアガイドを設けることが提案されている。エアガイドは、車体の前後方向において、熱交換器よりも前方に位置する。延出壁部は、車体の前後方向における後方に向かって突出する。フロントバンパに何らかの物体が衝突して該フロントバンパに荷重が入力されたとき、延出壁部がフロントバンパと熱交換器との間に挟まれて圧潰される。特許文献1には、この圧潰に基づいて荷重が吸収されるので、熱交換器等が損傷することが回避される、との旨の記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1においては、車体に搭載された機器(熱交換器等)の損傷を軽減することに着目している。しかしながら、衝突安全性能の向上においては、フロントバンパに衝突した物体の損傷軽減も課題の一つである。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決し、持続可能な輸送システムの発展に寄与することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態によれば、車体フレームと、車体の前後方向において前記車体フレームよりも前方に位置するフロントバンパとを備える車体前部構造であって、前記車体前部構造は、前記フロントバンパの前記前後方向における後部に設けられたストッパ部と、前記ストッパ部の後方において、前記車体を構成する車体構成部材に設けられた荷重受部とを備え、前記ストッパ部は、前記車体の前方から後方に向かう方向の荷重が前記フロントバンパに入力される前の初期状態において前記荷重受部に向かい合い、前記荷重が前記フロントバンパに入力された入力状態において前記荷重受部に当接する、車体前部構造が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、フロントバンパに何らかの物体が衝突することによってフロントバンパの下部を後方に移動させる力が作用したとき、フロントバンパの後部に設けられたストッパ部が荷重受部に当接する。その結果、荷重受部がフロントバンパの下部の後方への移動を停止させる。このため、車体の下方への物体の潜り込みが抑制される。従って、フロントバンパに衝突した物体の損傷軽減に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、車体の前部を構成する車体前部構造の要部概略斜視図である。
【
図2】
図2は、車体を下方から見たときの車体前部構造の要部概略底面図である。
【
図3】
図3は、車体を側面から見たときの車体前部構造の要部概略側面図である。
【
図4】
図4は、フロントバンパの後部近傍を車体の上方から見た要部概略平面図である。
【
図5】
図5は、ストッパ部を車体の後方から見た要部概略背面図である。
【
図6】
図6は、フロントバンパの下部が
図3の状態から若干移動して停止した状態と、ストッパ部を有しないフロントバンパの下部が移動した状態とを併せて示した車体前部構造の要部概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下における前後方向及び左右方向は、四輪自動車を構成する車体10(
図1参照)の前後方向及び左右方向に基づいた相対的な方向付けである。例えば、フロントバンパ100は、車体10の前後方向において、車体フレーム30よりも前方に位置する。例えば、フロントバンパ100は、車体10の前方を向く前面101fと、車体10の後方を向く後面101r(
図2参照)とを有する。なお、車体10の前後方向及び左右方向は、車体10の運転席に着席したユーザから見た前後方向及び左右方向に一致する。上下方向は、鉛直方向を指す。
【0011】
図1は、車体10の前部を構成する車体前部構造12の要部概略斜視図である。車体10は、ダッシュパネル14を有する。ダッシュパネル14は、車体10を、本実施形態に係る車体前部構造12と、車室16とに区分する。車室16には図示しない乗員用シートが設けられる。乗員用シートは、運転席を含む。車体前部構造12は、車室16よりも前方の構造である。車体前部構造12は、フロントルーム18を形成する。フロントルーム18には、図示しない内燃機関又はモータ等が収容される。
【0012】
車体前部構造12は、車体フレーム30と、フロントバンパ100とを備える。フロントバンパ100は、車体10の前後方向において、車体フレーム30よりも前方に位置する。
【0013】
車体フレーム30は、左フロントサイドメンバ32L及び右フロントサイドメンバ32Rを有する。左フロントサイドメンバ32L及び右フロントサイドメンバ32Rは、車体10の前後方向に沿って延びる。
【0014】
車体前部構造12は、左フロントサイドメンバ32L及び右フロントサイドメンバ32Rに跨がるフロントクロスメンバ34を有する。フロントクロスメンバ34の左部及び右部は、左ステイ36L及び右ステイ36Rを介して、左フロントサイドメンバ32Lの前部と、右フロントサイドメンバ32Rの前部とにそれぞれ連結される。従って、フロントクロスメンバ34は、左ステイ36L及び右ステイ36Rの高さに相当する距離で、左フロントサイドメンバ32L及び右フロントサイドメンバ32Rから離間する。フロントクロスメンバ34は、左フロントサイドメンバ32Lの前部下方から、右フロントサイドメンバ32Rの前部下方にわたって、車体10の左右方向に沿って延びる。フロントバンパ100は、主にフロントクロスメンバ34に保持される。
【0015】
車体前部構造12は、左フロントアッパメンバ38Lと、右フロントアッパメンバ38Rとをさらに有する。左フロントアッパメンバ38Lは、左フロントサイドメンバ32Lの車幅方向外側(左方)に設けられる。右フロントアッパメンバ38Rは、右フロントサイドメンバ32Rの車幅方向外側(右方)に設けられる。左フロントアッパメンバ38Lと左フロントサイドメンバ32Lとは、左連結部材40Lを介して連結される。右フロントアッパメンバ38Rと右フロントサイドメンバ32Rとは、右連結部材40Rを介して連結される。地面から左連結部材40Lまでの高さと、地面から右連結部材40Rまでの高さとは略同じである。
【0016】
車体前部構造12は、ビーム42をさらに有する。ビーム42は、左フロントサイドメンバ32Lの前面から、右フロントサイドメンバ32Rの前面にわたって延びる。ビーム42は、フロントクロスメンバ34の上方に位置し、且つフロントクロスメンバ34に対して略平行である。
【0017】
車体前部構造12は、逆U字型フレーム44をさらに有する。逆U字型フレーム44の左下端部は、左ステイ36Lの上端部に支持される。逆U字型フレーム44の右下端部は、右ステイ36Rの上端部に支持される。フロントクロスメンバ34及び逆U字型フレーム44は、図示しないラジエタ等を保持する。
【0018】
車体前部構造12は、前方のフロントクロスメンバ34から後方に向かって延出された左アンダロードパス部50L及び右アンダロードパス部50Rを有する。左アンダロードパス部50Lは左フロントサイドメンバ32Lに対して略平行に延び、右アンダロードパス部50Rは右フロントサイドメンバ32Rに対して略平行に延びる。
【0019】
左アンダロードパス部50Lは、左ボックス部材52Lと、左メインパス部材54Lとを有する。左アンダロードパス部50Lは、サブフレーム56を介して左フロントアッパメンバ38Lに支持される。先ず、サブフレーム56につき説明する。サブフレーム56は、略X字形状をなす。サブフレーム56は、右フロントサイドメンバ32R及び左フロントサイドメンバ32Lよりも下方に位置する。
【0020】
サブフレーム56は、左前連結部58L、右前連結部58R、左後連結部60L及び右後連結部60Rを有する。左前連結部58Lの上部及び右前連結部58Rの上部は、連結ブラケット62を介して、左フロントサイドメンバ32L及び右フロントサイドメンバ32Rにそれぞれ連結される。サブフレーム56の左後連結部60L及び右後連結部60Rは、アウトリガー64を介して、左フロントアッパメンバ38L及び右フロントアッパメンバ38Rにそれぞれ連結される。
【0021】
左ボックス部材52Lは、左メインパス部材54Lよりも前方に位置し、取付ブラケット66を介してフロントクロスメンバ34に支持される。左メインパス部材54Lは、左ボックス部材52Lから、サブフレーム56の左前連結部58Lに向かって延びる。左メインパス部材54Lの前端は、左ボックス部材52Lを介してフロントクロスメンバ34に支持される。左メインパス部材54Lの後端は、支持ブラケット68を介して、サブフレーム56の左前連結部58Lの前面に連結される。
【0022】
右アンダロードパス部50Rは、右ボックス部材52Rと、右メインパス部材54Rとを有する。右アンダロードパス部50Rは、サブフレーム56を介して右フロントアッパメンバ38Rに支持される。右ボックス部材52Rは、右メインパス部材54Rよりも前方に位置し、取付ブラケット66を介してフロントクロスメンバ34に支持される。右メインパス部材54Rは、右ボックス部材52Rから、サブフレーム56の右前連結部58Rに向かって延びる。右メインパス部材54Rの前端は、右ボックス部材52Rを介してフロントクロスメンバ34に支持される。右メインパス部材54Rの後端は、支持ブラケット68を介して、サブフレーム56の右前連結部58Rの前面に連結される。
【0023】
フロントバンパ100から荷重が入力され、該荷重が左アンダロードパス部50Lに伝わった場合、荷重は、左ボックス部材52Lに先ず入力される。荷重は、その後、左メインパス部材54Lに伝わり、さらに、サブフレーム56に伝わる。又は、荷重が右アンダロードパス部50Rに伝わった場合、該荷重は、右ボックス部材52Rに先ず入力され、その後、右メインパス部材54Rを経てサブフレーム56に伝わる。このように、左アンダロードパス部50L及び右アンダロードパス部50Rは、荷重を車体10の後方に逃がす役割を果たす。
【0024】
後述するように、左ボックス部材52L及び右ボックス部材52Rは、フロントバンパ100に入力された荷重を、ストッパ部104を介して受ける。すなわち、本実施形態における荷重受部51は、左ボックス部材52L及び右ボックス部材52Rである。左メインパス部材54L及び右メインパス部材54Rは、荷重受部51が設けられる車体構成部材53である。
【0025】
なお、荷重受部51は、左ボックス部材52L及び右ボックス部材52R以外の部材であってもよい。荷重受部51が設けられる車体構成部材53は、左メインパス部材54L及び右メインパス部材54R以外であってもよい。例えば、フロントクロスメンバ34の後方に、フロントクロスメンバ34に対して平行なビームを設け、このビームに荷重受部51を設けてもよい。この場合、車体構成部材53はビームである。
【0026】
フロントバンパ100は、
図3に示すように、下端に延出部102を有する。延出部102は、フロントバンパ100の前壁部下端から、車体フレーム30の前方に位置する左アンダロードパス部50L及び右アンダロードパス部50Rに向かって延びる。すなわち、延出部102は、フロントバンパ100の下端から後方に向かって延出している。延出部102は、左ボックス部材52L及び右ボックス部材52Rに近接する。
【0027】
フロントバンパ100は、延出部102の上面に設けられたストッパ部104を有する。すなわち、ストッパ部104は、フロントバンパ100の後部に配置される。本実施形態では、ストッパ部104は、左ストッパ部104L及び右ストッパ部104Rを有する。左ストッパ部104L及び右ストッパ部104Rは、フロントバンパ100の後部に位置する。
【0028】
フロントバンパ100は、左ストッパ部104L及び右ストッパ部104Rが該フロントバンパ100に一体的に設けられた単一部材からなる。左ストッパ部104Lの最後部である後縁104aの位置は、延出部102の最後部である後縁102aの位置に一致する。この状態で、左ストッパ部104Lの後縁104aは、左ボックス部材52Lの前端に向かい合う。同様に、右ストッパ部104Rの最後部である後縁104bの位置は、延出部102の最後部である後縁102aの位置に一致する。この状態で、右ストッパ部104Rの後縁104bは、右ボックス部材52Rの前端に向かい合う。
【0029】
以下、フロントバンパ100に荷重が入力されていない状態を初期状態と呼ぶ。フロントバンパ100に荷重が入力された状態を入力状態と呼ぶ。初期状態では、
図2及び
図3に示すように、左ストッパ部104Lの後縁104aは、左ボックス部材52Lの前端から所定間隔で離間する。同様に、右ストッパ部104Rの後縁104bは、右ボックス部材52Rの前端から所定間隔で離間する。
【0030】
図4に示すように、左ストッパ部104Lは、延出部102を上方から見た平面視において、3個の凸部106と2個の凹部108とが波型に連なった形状をなす。3個の凸部106は、前方に向かって延びる。2個の凹部108は、後方に向かって凹む。3個の凸部106における頂部外面の各々と、延出部102の上面とに対し、第1外側リブ110が連なる。2個の凹部108における谷底外面の各々と、延出部102の上面とに対し、第2外側リブ112が連なる。
【0031】
図5に示すように、左ストッパ部104Lは、内部空間114を有する中空体である。2個の凹部108における谷底内面の各々と、延出部102の上面とに対し、内側縦リブ116が連なる。さらに、左ストッパ部104Lの内面には、上下方向における略中央部に、前後方向に沿って延びる内側横リブ118が設けられる。
【0032】
図4に示すように、左ストッパ部104Lの凹部108における谷底は、第2外側リブ112と、内側縦リブ116との間に位置する。換言すれば、第2外側リブ112及び内側縦リブ116は、凹部108の谷底を形成する壁部を介して、互いに向かい合う。
図4に示すように、内側横リブ118は、左ストッパ部104Lの形状に対応して蛇行する形状である。凹部108の谷底内面において、内側横リブ118は、内側縦リブ116に連なる。
【0033】
左ストッパ部104Lの内部空間114は、左ストッパ部104Lの後縁104aで開口する。すなわち、左ストッパ部104Lにおいて、左ボックス部材52Lに向かい合う後縁104aは、開放端である。
【0034】
右ストッパ部104Rは、左ストッパ部104Lと同様に構成されている。従って、右ストッパ部104Rにおいて、左ストッパ部104Lの構成要素と同一の構成要素に対して同一の参照符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0035】
左ストッパ部104L及び右ストッパ部104Rを一体的に有するフロントバンパ100は、例えば、溶融樹脂を用いる射出成形によって作製することができる。特に図示していないが、射出成形装置は、下型と、上型と、中子部を有する摺動型とを備える。摺動型の中子部により、左ストッパ部104L及び右ストッパ部104Rを、内部空間114を有する中空体として成形することが可能である。摺動型は、下型及び上型よりも先に、成形品であるフロントバンパ100から離脱する。
【0036】
次に、車体前部構造12の作用につき説明する。
図3には、初期状態における左ストッパ部104Lと左ボックス部材52Lとの位置関係が示されている。上記したように、初期状態において、左ストッパ部104Lの後端と、荷重受部51である左ボックス部材52Lの前端とは、所定間隔で互いに離間している。車体前部構造12を備える四輪自動車の走行中においても、フロントバンパ100に荷重が入力されない限り、
図3に示す初期状態が保たれる。
【0037】
四輪自動車の走行中、不測の事態が発生し、何らかの物体がフロントバンパ100に衝突することがあり得る。この場合、フロントバンパ100に荷重が入力される。すなわち、初期状態から入力状態に切り替わる。フロントバンパ100において、フロントクロスメンバ34よりも下部は特に支持されていない。このため、入力状態では、フロントバンパ100に対し、該フロントバンパ100の下部を後方に移動させる力が作用する。これにより、
図6に示すように、フロントバンパ100において、フロントクロスメンバ34よりも下部が、車体10の後方に向かって移動すると想定される。
【0038】
ここで、本実施形態においては、フロントバンパ100における延出部102の上面に左ストッパ部104L及び右ストッパ部104Rが設けられている。フロントバンパ100の下部が移動しようとするとき、
図6に示すように、左ストッパ部104Lが左ボックス部材52Lに当接する。又は、右ストッパ部104Rが右ボックス部材52Rに当接する。場合によっては、左ストッパ部104Lが左ボックス部材52Lに当接し、且つ右ストッパ部104Rが右ボックス部材52Rに当接することもある。以上の当接により、フロントバンパ100の下部の移動が停止される。
【0039】
特に、本実施形態では、左ストッパ部104L及び右ストッパ部104Rの後縁104a、104b(最後部)の位置と、フロントバンパ100の延出部102の後縁102a(最後部)の位置とが、車体10の前後方向において一致している。このため、フロントバンパ100に荷重が入力された場合、左ストッパ部104Lが左ボックス部材52Lに即座に当接するか、又は、右ストッパ部104Rが右ボックス部材52Rに即座に当接する。このため、フロントバンパ100の下部の移動が即座に停止される。
【0040】
図6には、左ストッパ部104L及び右ストッパ部104Rを有しないフロントバンパ100paに対して前方から後方に向かう荷重が入力され、該フロントバンパ100paの下部が移動した状態を併せて示している。
図6から、フロントバンパ100の下部の移動量が、フロントバンパ100paの下部の移動量よりも少ないことが分かる。このように、左ストッパ部104L及び右ストッパ部104Rを有するフロントバンパ100においては、該フロントバンパ100に荷重が入力されたときに該フロントバンパ100の下部の移動が抑制される。
【0041】
従って、フロントバンパ100に衝突した物体が、フロントバンパ100に巻き込まれてフロントクロスメンバ34等の下方に潜り込むことが回避される。このため、物体の損傷が軽減される。
【0042】
本実施形態は、以下の効果を奏する。
【0043】
車体前部構造12は、車体フレーム30と、車体フレーム30よりも前方に位置するフロントバンパ100とを備える。フロントバンパ100は、該フロントバンパ100の後部の下端に設けられたストッパ部104を有する。上記の実施形態では、ストッパ部104は、左ストッパ部104L及び右ストッパ部104Rを有する。左ストッパ部104L及び右ストッパ部104Rは、前方から後方に向かう方向の荷重がフロントバンパ100に入力される前の初期状態において、左ボックス部材52L及び右ボックス部材52Rに向かい合う。左ストッパ部104L及び右ストッパ部104Rは、荷重がフロントバンパ100に入力された入力状態において、左ボックス部材52L及び右ボックス部材52Rに当接する。ここで、左ボックス部材52L及び右ボックス部材52Rは、荷重を受ける荷重受部51である。
【0044】
車体10の前方から後方に向かう方向の荷重がフロントバンパ100に入力された入力状態では、フロントバンパ100の下部を後方に移動させる力が作用する。このため、フロントバンパ100の下部が後方に移動しようとする。
【0045】
上記したように、車体前部構造12には、フロントバンパ100の後部下端(延出部102の後縁102a)に左ストッパ部104L及び右ストッパ部104Rが設けられている。フロントバンパ100の下部が移動を開始すると、左ストッパ部104Lが左ボックス部材52Lに当接するか、又は、右ストッパ部104Rが右ボックス部材52Rに当接する。その結果、フロントバンパ100の下部の移動が停止される。すなわち、左ストッパ部104L、左ボックス部材52L、右ストッパ部104R及び右ボックス部材52Rは、フロントバンパ100に生じた荷重を吸収する。これにより、フロントバンパ100の下端が、フロントクロスメンバ34、左フロントサイドメンバ32L又は右フロントサイドメンバ32R等の下方に潜り込むことが回避される。
【0046】
従って、例えば、フロントバンパ100に何らかの物体が衝突したとき、該物体が、フロントバンパ100に巻き込まれて車体10の下方に潜り込むことが回避される。上記したように、左ストッパ部104L又は右ストッパ部104Rによってフロントバンパ100の下部の移動が停止されるからである。このため、物体の損傷が軽減される。
【0047】
フロントバンパ100の下端は、車体フレーム30に向かって延びる延出部102を有する。ストッパ部104を構成する左ストッパ部104L及び右ストッパ部104Rは、延出部102の上面に設けられている。
【0048】
このため、左ストッパ部104Lと、荷重受部51である左ボックス部材52Lとの位置合わせが容易である。右ストッパ部104Rと、荷重受部51である右ボックス部材52Rとについても同様に、両者の位置合わせが容易である。
【0049】
左ストッパ部104Lの後縁104a(最後部)の位置と、フロントバンパ100の延出部102の後縁102a(最後部)の位置とは、車体10の前後方向において一致している。右ストッパ部104Rの後縁104b(最後部)の位置と、延出部102の後縁102a(最後部)の位置とについても同様に、車体10の前後方向において一致している。
【0050】
この構成によれば、荷重がフロントバンパ100に入力されたとき、左ストッパ部104Lは、車体フレーム30の一部である左ボックス部材52Lに即座に当接する。又は、右ストッパ部104Rは、車体フレーム30の一部である右ボックス部材52Rに即座に当接する。このため、フロントバンパ100の下部の移動が即座に停止される。
【0051】
左ストッパ部104L及び右ストッパ部104Rは、内部空間114を有する中空体であり、且つフロントバンパ100に一体的に設けられている。
【0052】
フロントバンパ100は、一般的に、溶融樹脂を用いる射出成形によって得られる。この射出成形において、フロントバンパ100と、左ストッパ部104L及び右ストッパ部104Rとを一体的に成形することが可能である。また、射出成形を実施するときに中子部を用いることにより、内部空間114を有する中空体として左ストッパ部104L及び右ストッパ部104Rを容易に形成することができる。従って、左ストッパ部104L及び右ストッパ部104Rを成形するために必要な溶融樹脂の使用量は少量である。以上のような理由から、左ストッパ部104L及び右ストッパ部104Rを有するフロントバンパ100を作製するためのコストの低廉化を図ることができる。
【0053】
左ストッパ部104L及び右ストッパ部104Rは、該左ストッパ部104L及び右ストッパ部104Rの各々の内面に設けられた内側横リブ118及び内側縦リブ116を有する。左ストッパ部104L及び右ストッパ部104Rは、該左ストッパ部104L及び右ストッパ部104Rの各々の外面に設けられた第1外側リブ110及び第2外側リブ112を有する。
【0054】
以上の内側横リブ118、内側縦リブ116、第1外側リブ110及び第2外側リブ112により、左ストッパ部104L及び右ストッパ部104Rの強度が向上する。従って、左ストッパ部104Lが左ボックス部材52Lに当接した後、左ストッパ部104Lが損傷することが回避される。このため、左ストッパ部104Lが左ボックス部材52Lに当接した状態が維持される。このような理由から、フロントバンパ100に入力された荷重が、左ストッパ部104L及び左ボックス部材52Lによって吸収される。右ストッパ部104R及び右ボックス部材52Rについても同様である。
【0055】
左ストッパ部104L及び右ストッパ部104Rの各々は、車体10の前後方向における前方に向かって延びる凸部106と、該凸部106に対して相対的に車体10の前後方向における後方に向かって凹んだ凹部108とを有する。
【0056】
このような形状を有する左ストッパ部104L及び右ストッパ部104Rは、優れた強度を示す。従って、この構成に基づき、該左ストッパ部104Lが左ボックス部材52Lに当接した後、該左ストッパ部104Lが損傷することが回避される。これにより、左ストッパ部104Lが左ボックス部材52Lに当接した状態が維持される。その結果、フロントバンパ100に入力された荷重が、左ストッパ部104L及び左ボックス部材52Lによって確実に吸収される。右ストッパ部104R及び右ボックス部材52Rについても同様である。
【0057】
車体前部構造12は、荷重受部51が設けられた車体構成部材53を有する。上記の実施形態において、車体構成部材53は、車体フレーム30に対して平行な左アンダロードパス部50L及び右アンダロードパス部50Rである。左アンダロードパス部50Lの左ボックス部材52Lは、左アンダロードパス部50Lにおける前端部に位置し、荷重受部51として機能する。右アンダロードパス部50Rについても同様に、右アンダロードパス部50Rにおける前端部に位置する右ボックス部材52Rは、荷重受部51として機能する。
【0058】
フロントバンパ100から左ストッパ部104Lに伝達された荷重は、左アンダロードパス部50Lを介して、車体10の後部に速やかに伝達される。すなわち、左ストッパ部104Lに伝わった荷重は、左アンダロードパス部50Lに速やかに吸収される。従って、この場合においても、左ストッパ部104Lが左ボックス部材52Lに当接した後、該左ストッパ部104Lが損傷することが回避される。これにより、左ストッパ部104Lが、左アンダロードパス部50Lの前端部である左ボックス部材52Lに当接した状態が維持される。このことに基づき、フロントバンパ100に入力された荷重が、左アンダロードパス部50Lの左ボックス部材52Lに当接した左ストッパ部104Lによって確実に吸収される。右ストッパ部104R及び右アンダロードパス部50Rについても同様である。
【0059】
上述した開示に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0060】
(付記1)
車体前部構造(12)は、車体フレーム(30)と、車体(10)の前後方向において前記車体フレームよりも前方に位置するフロントバンパ(100)とを備える。前記車体前部構造は、前記フロントバンパの前記前後方向における後部に設けられたストッパ部(104)と、前記ストッパ部の後方において、前記車体を構成する車体構成部材(53)に設けられた荷重受部(51)とを備える。前記ストッパ部は、前記車体の前方から後方に向かう方向の荷重が前記フロントバンパに入力される前の初期状態において、前記荷重受部に向かい合う。前記ストッパ部は、前記荷重が前記フロントバンパに入力された入力状態において、前記荷重受部に当接する。
【0061】
フロントバンパに何らかの物体が衝突することによってフロントバンパの下部を後方に移動させる力が作用したとき、ストッパ部が荷重受部に当接する。その結果、荷重受部がフロントバンパの下部の後方への移動を停止させるため、車体の下方への物体の潜り込みが抑制される。従って、フロントバンパに衝突した物体の損傷軽減に寄与することができる。
【0062】
(付記2)
付記1に記載の車体前部構造において、前記ストッパ部は、前記フロントバンパの前記前後方向における後部の下端に設けられてもよい。
【0063】
荷重受部は、例えば、フロントバンパの後部の下端に向かい合う位置に配置される。従って、上記の構成によれば、このように配置された荷重受部の前方にストッパ部を位置させることが容易である。
【0064】
(付記3)
付記2に記載の車体前部構造において、前記フロントバンパの前記下端は、前記車体構成部材に向かって延びる延出部(102)を有してもよい。前記ストッパ部は、前記延出部の上面に設けられてもよい。
【0065】
この構成においては、ストッパ部の位置と、車体フレームとの位置とを合わせることが容易である。
【0066】
(付記4)
付記3に記載の車体前部構造において、前記ストッパ部の最後部(104a)の位置と、前記フロントバンパの前記延出部の最後部(102a)の位置とが、前記前後方向において一致してもよい。
【0067】
この場合、荷重がフロントバンパに入力されたとき、ストッパ部が即座に車体フレームに当接する。このため、フロントバンパの下部の移動が即座に停止される。
【0068】
(付記5)
付記1~4のいずれか1項に記載の車体前部構造において、前記ストッパ部は、内部空間(114)を有する中空体であり、且つ前記フロントバンパに一体的に設けられてもよい。
【0069】
フロントバンパは、一般的に、溶融樹脂を用いる射出成形によって得られる樹脂成形品である。この射出成形において、フロントバンパとストッパ部とを一体的に成形することが可能である。また、内部空間を有するストッパ部を形成する場合、ストッパ部を成形するために必要な溶融樹脂の使用量は少量である。以上のような理由から、フロントバンパにストッパ部を設けるためのコストの低廉化を図ることができる。
【0070】
(付記6)
付記5に記載の車体前部構造において、前記ストッパ部は、該ストッパ部の内面又は該ストッパ部の外面に設けられたリブ(110、112、116、118)を有してもよい。
【0071】
リブを有するストッパ部は、優れた強度を示す。従って、該ストッパ部が荷重受部に当接した後、該ストッパ部が損傷することが回避される。このため、フロントバンパに入力された荷重が、ストッパ部及び荷重受部に吸収される。
【0072】
(付記7)
付記3~6のいずれか1項に記載の車体前部構造において、前記ストッパ部は、前記前後方向における前記前方に向かって延びる凸部(106)と、該凸部に対して相対的に前記前後方向における前記後方に向かって凹んだ凹部(108)とを有してもよい。
【0073】
このような形状のストッパ部は、優れた強度を示す。従って、該ストッパ部が荷重受部に当接した後、該ストッパ部が損傷することが回避される。このため、フロントバンパに入力された荷重が、ストッパ部及び荷重受部に吸収される。
【0074】
(付記8)
付記1~7のいずれか1項に記載の車体前部構造において、前記車体構成部材は、アンダロードパス部(50L、50R)を有してもよい。前記荷重受部は、前記アンダロードパス部における前記前後方向の前端部であってもよい。
【0075】
フロントバンパからストッパ部に伝達された荷重は、アンダロードパス部を介して、車体の後部に速やかに伝達される。すなわち、ストッパ部に伝わった荷重は、アンダロードパス部に速やかに吸収される。従って、この場合においても、ストッパ部が荷重受部に当接した後、該ストッパ部が損傷することが回避される。これにより、ストッパ部がアンダロードパス部の前端部に当接した状態が維持される。このことに基づき、フロントバンパに入力された荷重が、ストッパ部と、アンダロードパス部の前端部とによって確実に吸収される。
【0076】
なお、本発明は、上述した開示に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得る。
【符号の説明】
【0077】
10…車体 12…車体前部構造
16…車室 30…車体フレーム
32L…左フロントサイドメンバ 32R…右フロントサイドメンバ
34…フロントクロスメンバ 38L…左フロントアッパメンバ
38R…右フロントアッパメンバ 42…ビーム
50L…左アンダロードパス部 50R…右アンダロードパス部
51…荷重受部 52L…左ボックス部材
52R…右ボックス部材 53…車体構成部材
54L…左メインパス部材 54R…右メインパス部材
56…サブフレーム 100、100pa…フロントバンパ
102…延出部 102a…延出部の後縁
104…ストッパ部 104a…左ストッパ部の後縁
104b…右ストッパ部の後縁 104L…左ストッパ部
104R…右ストッパ部 106…凸部
108…凹部 110…第1外側リブ
112…第2外側リブ 114…内部空間
116…内側縦リブ 118…内側横リブ
【手続補正書】
【提出日】2024-07-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の前後方向に沿って延びる左右の車体フレームと、前記前後方向において前記車体フレームよりも前方に位置する樹脂製のフロントバンパとを備える車体前部構造であって、
前記車体前部構造は、左右の前記車体フレームの前端同士を繋げるように延びるビームと、
前記ビームよりも下方に位置し、左右の前記車体フレームに跨るフロントクロスメンバと、
前記フロントバンパの前記前後方向における後部に設けられたストッパ部と、
前記ストッパ部の後方において、前記フロントクロスメンバに設けられた荷重受部と、
を備え、
前記フロントバンパは、前記前後方向において、前記ビーム及び前記フロントクロスメンバよりも前方に位置し、
前記ストッパ部及び前記荷重受部は、前記フロントクロスメンバよりも下方に位置し、
前記ストッパ部は、前記車体の前方から後方に向かう方向の荷重が前記フロントバンパに入力される前の初期状態において前記荷重受部に向かい合い、前記荷重が前記フロントバンパに入力された入力状態において前記荷重受部に当接する、車体前部構造。
【請求項2】
請求項1記載の車体前部構造において、前記ストッパ部は、前記フロントバンパの前記後部の下端に設けられている、車体前部構造。
【請求項3】
請求項2記載の車体前部構造において、前記フロントバンパの前記下端は、前記フロントクロスメンバに向かって延びる延出部を有し、前記ストッパ部は、前記延出部の上面に設けられている、車体前部構造。
【請求項4】
請求項3記載の車体前部構造において、前記ストッパ部の最後部の位置と、前記フロントバンパの前記延出部の最後部の位置とが、前記前後方向において一致している、車体前部構造。
【請求項5】
請求項3記載の車体前部構造において、前記ストッパ部は、内部空間を有する中空体であり、且つ前記フロントバンパに一体的に設けられた、車体前部構造。
【請求項6】
請求項5記載の車体前部構造において、前記ストッパ部は、該ストッパ部の内面又は該ストッパ部の外面に設けられたリブを有する、車体前部構造。
【請求項7】
請求項3記載の車体前部構造において、前記ストッパ部は、前記前後方向における前記前方に向かって延びる凸部と、該凸部に対して相対的に前記前後方向における前記後方に向かって凹んだ凹部とを有する、車体前部構造。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の車体前部構造において、前記車体前部構造はアンダロードパス部を有し、前記荷重受部は、前記アンダロードパス部における前記前後方向の前端部である、車体前部構造。