(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128542
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】電気光学装置、および電子機器
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1345 20060101AFI20240913BHJP
G02F 1/1368 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
G02F1/1345
G02F1/1368
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037551
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】弁理士法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】江上 孝史
【テーマコード(参考)】
2H092
2H192
【Fターム(参考)】
2H092GA31
2H092HA04
2H092HA11
2H092HA28
2H092JA25
2H092KA04
2H092KB25
2H092MA07
2H092MA17
2H092MA55
2H092NA30
2H092QA06
2H092QA07
2H092RA05
2H192AA24
2H192CB02
2H192CB34
2H192CB53
2H192FA02
2H192GA21
2H192HA14
2H192HA88
2H192HB12
2H192JA06
2H192JA13
2H192JA17
2H192JA33
2H192JB02
(57)【要約】
【課題】品質信頼性の低下が抑制された電気光学装置、および電子機器を提供すること。
【解決手段】電気光学装置は、第1基板と、前記第1基板に対向する第2基板と、前記第1基板と前記第2基板との間に配置され、電界に応じて光学的特性が変化する電気光学層とを備え、前記第1基板は、複数の画素電極と、第1凹部を有する第1絶縁層と、前記第1絶縁層と前記複数の画素電極との間に配置される第2絶縁層と、前記第1絶縁層と前記第2絶縁層との間で、前記第1凹部の内部に配置され、前記第2絶縁層の膜厚を測定するために用いられる導電パターンと、を備え、前記導電パターンには、前記第1絶縁層の材料を含む絶縁部が設けられている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板と、前記第1基板に対向する第2基板と、前記第1基板と前記第2基板との間に配置され、電界に応じて光学的特性が変化する電気光学層とを備え、
前記第1基板は、
複数の画素電極と、
第1凹部を有する第1絶縁層と、
前記第1絶縁層と前記複数の画素電極との間に配置される第2絶縁層と、
前記第1絶縁層と前記第2絶縁層との間で、前記第1凹部の内部に配置され、前記第2絶縁層の膜厚を測定するために用いられる導電パターンと、を備え、
前記導電パターンには、前記第1絶縁層の材料を含む絶縁部が設けられている、
ことを特徴とする電気光学装置。
【請求項2】
前記絶縁部が有する先端面は、前記第1凹部が有する底面よりも前記第2絶縁層に近い、
請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項3】
前記絶縁部は、前記導電パターンを複数の導電部に分割する、
請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項4】
前記複数の導電部は、4つの導電部であり、
前記絶縁部は、前記導電パターンを前記4つの導電部に分割する、
請求項3に記載の電気光学装置。
【請求項5】
前記複数の導電部の各平面積は、前記絶縁部の平面積よりも大きい、
請求項3に記載の電気光学装置。
【請求項6】
前記絶縁部は、直線状に延在する第1絶縁部を含み、
前記複数の導電部の各平面形状は、四角形状であり、
前記第1絶縁部の幅は、前記複数の導電部の各幅の1/10以下である、
請求項3に記載の電気光学装置。
【請求項7】
前記複数の導電部のそれぞれは、前記第2絶縁層と接触し、前記第2絶縁層の膜厚を測定するための反射面を含む、
請求項3に記載の電気光学装置。
【請求項8】
前記複数の画素電極が設けられる表示領域と、平面視で前記表示領域の外側に配置される周辺領域とが設けられており、
前記導電パターンは、前記周辺領域に設けられる、
請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項9】
前記第1絶縁層は、前記表示領域に設けられる第2凹部を有し、
前記第1基板は、前記第2凹部の内部に画素ごとに設けられた導電性を有する導電膜を、さらに有する、
請求項8に記載の電気光学装置。
【請求項10】
前記絶縁部は、平面視で前記導電パターンの中心に重なる、
請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項11】
請求項1に記載の電気光学装置と、
前記電気光学装置の動作を制御する制御部と、を有することを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気光学装置、および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
プロジェクター等の電子機器には、例えば、画素ごとに光学的特性を変更可能な液晶表示装置等の電気光学装置が用いられる。当該電気光学装置の例として、特許文献1に記載の電気光学装置が知られている。
【0003】
特許文献1の電気光学装置は、TFT(Thin Film Transistor)基板と対向基板とこれら基板の間に配置される液晶層とを備える。TFT基板は、複数の層間絶縁膜と画素電極と配向膜と含む。複数の層間絶縁膜には、TFTおよび各種配線が配置される。各層間絶縁膜の表面は、CMP(Chemical Mechanical Polishing)等の研磨によって平坦化される。
【0004】
また、TFT基板には、層間絶縁膜の膜厚測定のためのモニターパターンが設けられる。モニターパターンには、反射率が高いアルミニウム層が用いられる。当該文献では、ある層間絶縁膜上にモニターパターンを形成した後、モニターパターン上に他の層間絶縁膜が形成される。その後、モニターパターンからの反射光を利用して当該他の層間絶縁膜の膜厚を測定しながら、当該他の層間絶縁膜の表面に対してCMPによる研磨が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、層間絶縁膜に凹部を形成し、当該凹部の内部に導電膜を形成するダマシン法が知られている。当該ダマシン法では、例えば、層間絶縁膜上に導電基材を成膜し、当該導電基材にCMP等の平坦化処理を施す。これにより、当該導電基材から、凹部の内部に配置された導電膜が形成される。
【0007】
当該方法を用いて、特許文献1に記載の層間絶縁膜に凹部を形成し、当該凹部の内部にモニターパターンを形成することが考えられる。この場合、平坦化処理の過程で、モニターパターンの中央が薄くなってしまうディッシングと呼ばれる現象が生じるおそれがある。特に、モニターパターンの平面積が大きくなるほど、当該ディッシングが生じ易くなってしまう。このため、平坦化の過程で、モニターパターンの一部が消失してしまい、よって、膜厚測定の精度が低下してしまう。この結果、電気光学装置の品質信頼性が低下するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電気光学装置の一態様は、第1基板と、前記第1基板に対向する第2基板と、前記第1基板と前記第2基板との間に配置され、電界に応じて光学的特性が変化する電気光学層とを備え、前記第1基板は、複数の画素電極と、第1凹部を有する第1絶縁層と、前記第1絶縁層と前記複数の画素電極との間に配置される第2絶縁層と、前記第1絶縁層と前記第2絶縁層との間で、前記第1凹部の内部に配置され、前記第2絶縁層の膜厚を測定するために用いられる導電パターンと、を備え、前記導電パターンには、前記第1絶縁層の材料を含む絶縁部が設けられている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係る電気光学装置の平面図である。
【
図2】
図1に示す電気光学装置のA-A線の断面図である。
【
図3】
図2の第1基板の電気的な構成を示す等価回路図である。
【
図4】
図2の第1基板が有する導電パターンの断面図である。
【
図6】
図6の第1基板の一部の製造方法の流れを示す図である。
【
図7】
図6の第1凹部形成工程を説明するための断面図である。
【
図8】
図6の導電膜形成工程を説明するための断面図である。
【
図9】
図6の導電パターン形成工程を説明するための断面図である。
【
図10】絶縁部が設けられていない場合における平坦化処理を説明するための図である。
【
図11】絶縁部が設けられている場合における平坦化処理を説明するための図である。
【
図12】
図2の第1基板の表示領域の一部を示す断面図である。
【
図13】
図4の導電パターンを含む膜厚測定領域を示す断面図である。
【
図14】第1変形例の導電パターンを示す平面図である。
【
図15】第2変形例の導電パターンを示す平面図である。
【
図16】電子機器の一例であるパーソナルコンピューターを示す斜視図である。
【
図17】電子機器の一例であるスマートフォンを示す平面図である。
【
図18】電子機器の一例であるプロジェクターを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態を説明する。なお、図面において各部の寸法または縮尺は実際と適宜に異なり、理解を容易にするために模式的に示す部分もある。また、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られない。
【0011】
1.電気光学装置
A.実施形態
A-1.電気光学装置100の概要
図1は、実施形態に係る電気光学装置100の平面図である。
図2は、
図1に示す電気光学装置100のA-A線の断面図である。以下では、説明の便宜上、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸を適宜用いて説明する。また、X軸に沿う一方向をX1方向と表記し、X1方向とは反対の方向をX2方向と表記する。同様に、Y軸に沿う一方向をY1方向と表記し、Y1方向とは反対の方向をY2方向と表記する。Z軸に沿う一方向をZ1方向と表記し、Z1方向とは反対の方向をZ2方向と表記する。
【0012】
また、また、要素αと要素βとの「電気的な接続」は、要素αと要素βとが直接的に接合されることで導通する構成のほか、要素αと要素βとが他の導電体を介して間接的に導通する構成も含まれる。
【0013】
図1および
図2に示す電気光学装置100は、画素Pごとにスイッチング素子としてTFT(Thin Film Transistor)を備えたアクティブマトリクス駆動方式の液晶装置である。
【0014】
図1に示す電気光学装置100の平面形状は四角形であるが、四角形以外の多角形または円形であってもよい。また、電気光学装置100には、表示領域A10と周辺領域A20とが設けられる。表示領域A10は、画像を表示する領域である。周辺領域A20は、平面視で表示領域A10の外側に設けられる。表示領域A10には、行列状に配列される複数の画素Pが設けられる。画素Pは、表示する画像の最小単位であって、個別の駆動制御される最小単位である。
【0015】
図2に示すように、電気光学装置100は、第1基板2と、第2基板3と、枠状のシール部材4と、液晶層5とを有する。第1基板2、液晶層5および第2基板3は、この順にZ1方向に並ぶ。なお、第1基板2、液晶層5および第2基板3の重なる方向であるZ1方向またはZ2方向から見ることを「平面視」とする。
【0016】
電気光学装置100は透過型であり、第1基板2および第2基板3は、透光性を有する。
図2に示すように、光LLが第2基板3に入射した後、第1基板2から出射される間に変調することにより、画像が表示される。なお、第1基板2に入射した光が第2基板3から出射される間に変調することにより、画像が表示されてもよい。また、「透光性」とは、可視光に対する透過性を意味し、好ましくは可視光の透過率が50%以上であることをいう。
【0017】
第1基板2は、基板21と、積層体20と、複数の画素電極24と、配向膜29とを有する。基板21、積層体20、複数の画素電極24および配向膜29は、この順にZ1方向に積層される。
【0018】
基板21は、透光性および絶縁性を有する平板であり、例えばガラス基板または石英基板で構成される。積層体20は、透光性を有する複数の絶縁層を含む。積層体20には、トランジスターおよび各種配線等が設けられる。また、積層体20には、導電パターン7が設けられる。導電パターン7は、積層体20が有する特定の絶縁層の膜厚を測定するための膜厚測定用のパターンである。
図1に示すように、導電パターン7は、例えば、第1基板2の角部に設けられる。なお、導電パターン7の平面的な配置はこれに限定されず、任意である。
【0019】
複数の画素電極24は、積層体20上に配置される。複数の画素電極24は、複数の画素Pに対して1対1で配置される。したがって、表示領域A10には、複数の画素電極24が設けられる。複数の画素電極24は、液晶層5に電界を印加するために用いられる。複数の画素電極24は、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)およびFTO(Fluorine-doped tin oxide)等の透明導電材料を含む。なお、図示省略するが、複数の画素電極24の外側には、ノイズ対策等のための複数のダミー画素電極、およびイオントラップ用の電極が設けられてもよい。また、配向膜29は、透光性および絶縁性を有する。配向膜29は、液晶層5に接触しており、液晶層5が有する液晶分子50を配向させる。配向膜29は、複数の画素電極24を覆うように配置される。配向膜29の材料は、例えばポリイミドおよび酸化ケイ素等である。
【0020】
図1に示すように、第1基板2には、駆動回路10と複数の外部端子13とが配置される。これらは、周辺領域A20に配置される。駆動回路10は、走査線駆動回路11およびデータ線駆動回路12を含む。また、複数の外部端子13の一部は、図示しないが、駆動回路10から引き回される配線に接続される。なお、第2基板3の平面積は、第1基板2の平面積よりも小さく、複数の外部端子13は、第1基板2に覆われておらず露出している。
【0021】
図2に示す第2基板3は、第1基板2に対向して配置される。第2基板3は、基板31と、積層体30と、対向電極32と、配向膜39と、見切り38とを有する。基板31、積層体30、対向電極32および配向膜39は、この順にZ2方向に積層される。
【0022】
基板31は、透光性および絶縁性を有する平板であり、例えばガラス基板または石英基板で構成される。積層体30は、複数の絶縁膜を含む。当該複数の絶縁膜のそれぞれは、透光性および絶縁性を有し、例えば酸化ケイ素等のケイ素を含む無機材料で形成される。積層体30は、例えば、マイクロレンズを含む。積層体30には、見切り38が設けられる。見切り38は、平面視で複数の画素電極24を囲む遮光性の見切りである。なお、「遮光性」とは、可視光に対する遮光性を意味し、好ましくは可視光の透過率が50%未満であることをいい、より好ましくは10%以下であることをいう。
【0023】
対向電極32は、複数の画素電極24に対して液晶層5を介して対向する。対向電極32は、複数の画素Pで共通に設けられる共通電極である。対向電極32は、液晶層5に電界を印加するために用いられる。対向電極32は、透光性および導電性を有する。対向電極32は、例えば、ITO、IZOおよびFTO等の透明導電材料を含む。対向電極32には、定電位Vcomが印加させる。配向膜39は、透光性および絶縁性を有する。配向膜39は、液晶分子50を配向させる。配向膜39の材料は、例えばポリイミドおよび酸化ケイ素等である。
【0024】
また、第2基板3と第1基板2との間には、
図1に示す複数の基板間導通材6が設けられる。複数の基板間導通材6は、第1基板2との第2基板3とを電気的に接続するための導通材である。基板間導通材6は、第1基板2に配置される図示省略された引き回し配線を介して、複数の外部端子13のいずれかの外部端子13に接続される。また、例えば、基板間導通材6よりも内側に前述の導電パターン7が配置される。ただし、基板間導通材6と導電パターン7との配置関係はこれに限定されない
【0025】
シール部材4は、第1基板2と第2基板3との間に配置される。シール部材4は、例えばエポキシ樹脂等のUV硬化性材料を含む。UVは、ultravioletの略称であり、特に、波長100nm以上400nm以下の光をいう。また、シール部材4は、ガラス等の無機材料で構成されるギャップ材を含んでもよい。
【0026】
液晶層5は、第1基板2、第2基板3およびシール部材4によって囲まれる領域内に配置される。液晶層5は、電界に応じて光学的特性が変化する電気光学層である。液晶層5は、液晶分子50を含む。液晶分子50は、正または負の誘電異方性を有する。液晶分子50の配向は、液晶層5に印加される電圧に応じて変化する。
【0027】
かかる電気光学装置100は、例えば、後述するパーソナルコンピューターおよびスマートフォン等のカラー表示を行う表示装置に適用される。当該表示装置に適用される場合、電気光学装置100に対してカラーフィルターが適宜用いられる。また、電気光学装置100は、例えば、後述する投射型のプロジェクターに適用される。この場合、電気光学装置100は、ライトバルブとして機能する。この場合、電気光学装置100に対してカラーフィルターが省略される。
【0028】
A-2.第1基板2の電気的な構成
図3は、
図2の第1基板2の電気的な構成を示す等価回路図である。
図3に示すように、第1基板2には、複数のトランジスター23とn本の走査線241とm本のデータ線242とn本の定電位線243とが設けられる。これらは
図2の積層体20に設けられる。なお、nおよびmはそれぞれ2以上の整数である。n本の走査線241とm本のデータ線242との各交差に対応してトランジスター23が配置される。各トランジスター23は、例えばスイッチング素子として機能するTFTである。各トランジスター23は、ゲート、ソースおよびドレインを含む。
【0029】
n本の走査線241のそれぞれはX1方向に延在し、n本の走査線241はY1方向に等間隔で並ぶ。n本の走査線241のそれぞれは、対応する複数のトランジスター23のゲートに電気的に接続される。n本の走査線241は、
図1に示す走査線駆動回路11に電気的に接続される。1~n本の走査線241には、走査線駆動回路11から走査信号G1、G2、…、およびGnが線順次で供給される。
【0030】
図3に示すm本のデータ線242のそれぞれはY1方向に延在し、m本のデータ線242はX1方向に等間隔で並ぶ。m本のデータ線242のそれぞれは、対応する複数のトランジスター23のソースに電気的に接続される。m本のデータ線242は、
図1に示すデータ線駆動回路12に電気的に接続される。1~m本のデータ線242には、データ線駆動回路12から画像信号S1、S2、…、およびSmが並行に供給される。
【0031】
図3に示すn本の走査線241とm本のデータ線242とは、互いに電気的に絶縁されており、平面視で格子状に配置される。隣り合う2つの走査線241と隣り合う2つのデータ線242とで囲まれる領域が画素Pに対応する。画素Pごとにトランジスター23、画素電極24および容量素子25が設けられる。画素電極24は、トランジスター23に対応して設けられる。1つの画素電極24に対して1つのトランジスター23が配置される。各画素電極24は、対応するトランジスター23のドレインに電気的に接続される。
【0032】
n本の定電位線243のそれぞれはY1方向に延在し、n本の定電位線243はX1方向に等間隔で並ぶ。各定電位線243には、定電位Vcomが印加される。各定電位線243は、対応する容量素子25が有する2つの電極のうちの一方に電気的に接続される容量線である。各容量素子25は、画素電極24の電位を保持するための保持容量である。容量素子25は、トランジスター23に対して1対1で設けられる。また、各容量素子25が有する2つの電極のうちの他方は、画素電極24とトランジスター23のドレインとに電気的に接続される。
【0033】
走査信号G1、G2、…、およびGnが順次アクティブとなり、n本の走査線241が順次選択されると、選択される走査線241に接続されるトランジスター23がオン状態となる。すると、m本のデータ線242を介して表示すべき階調に応じた大きさの画像信号S1、S2、…、およびSmに応じた電位が、選択される走査線241に対応する画素Pの画素電極24に印加される。これにより、画素電極24と対向電極32との間に形成される液晶容量に、表示すべき階調に応じた電圧が印加され、印加される電圧に応じて液晶分子50の配向が変化する。また、容量素子25によって、印加される電圧が保持される。このような液晶分子50の配向の変化によって光LLが変調され階調表示が可能となる。
【0034】
A-3.導電パターン7
図4は、
図2の第1基板2が有する導電パターン7の断面図である。
図4では、表示領域A10の一部および周辺領域A20の一部が図示される。
【0035】
図4に示すように、導電パターン7は、積層体20に設けられる。積層体20は、第1絶縁層223と第2絶縁層224とを含む。第1絶縁層223のZ2方向に前述の基板21が配置される。第2絶縁層224のZ1方向に前述の複数の画素電極24が配置される。したがって、第2絶縁層224は、第1絶縁層223と複数の画素電極24との間に配置される。
【0036】
第1絶縁層223は、透光性および絶縁性を有する。第1絶縁層223の各料は、例えば、酸化ケイ素、または酸窒化ケイ素等のケイ素を含む無機材料が挙げられる。
【0037】
第1絶縁層223は、第1凹部220と第2凹部2231とを含む。第1凹部220は、複数の凹部2201の集合体である。複数の凹部2201および第2凹部2231のそれぞれは、第1絶縁層223に形成された窪みである。各凹部2201は、底面220aを有する。
【0038】
第1凹部220は、周辺領域A20に設けられる。第2凹部2231は、表示領域A10に設けられる。
図4では、第2凹部2231が1つ図示されるが、第2凹部2231は、画素Pごとに設けられる。
【0039】
導電パターン7は、第1絶縁層223と第2絶縁層224との間に設けられる。導電パターン7は、第1凹部220の内部に配置される。よって、導電パターン7は、周辺領域A20に設けられる。また、導電パターン7は、第1凹部220を埋める。導電パターン7は、第2絶縁層224の膜厚Dを測定するために用いられる膜厚測定用パターンである。また、導電パターン7は、導電性、および可視光に対する反射性を有する。特に、導電パターン7の可視光に対する反射率は、30%程度でもよいが、測定値の信頼性の確保から高い方が好ましい。例えば、当該反射率は、80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。
【0040】
導電パターン7は、複数の導電部71と絶縁部72とを含む。複数の導電部71は、複数の凹部2201に1対1で対応する。各導電部71は、対応する凹部2201の内部に配置される。各導電部71は、導電性、および可視光に対する反射性を有する。各導電部71は、第2絶縁層224の膜厚測定のための基準面、すなわち反射面を含む。各導電部71の第2絶縁層224との接触面、すなわち各導電部71と第2絶縁層224との界面が当該基準面である。
【0041】
各導電部71の材料としては、例えば、タングステン(W)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、鉄(Fe)およびアルミニウム(Al)等の金属、金属窒化物ならびに金属シリサイド等が挙げられる。これらの中でも、各導電部71はタングステンを含むことが好ましい。タングステンは、各種金属の中でも、耐熱性に優れる。このため、製造時に変質し難い。
【0042】
また、各導電部71は、単層でも複数層であってもよい。各導電部71が複数層である場合、例えば、導電部71は、バリア層と導電層とを含む。バリア層は、凹部2201に接触する。バリア層は、導電層の成分の拡散防止のために設けられる。導電層は、バリア層の内側に配置され、凹部2201を埋める。バリア層は、タングステンナイトライド(WN)またはチタンナイトライド(TiN)含むことが好ましい。導電層は、タングステンを含むことが好ましい。
【0043】
絶縁部72は、絶縁性を有する。絶縁部72は、第1凹部220が有する底面220aに対してZ1方向に突出している。このため、絶縁部72が有する先端面720は、各底面220aよりも第2絶縁層224に近い。先端面720は、第2絶縁層224に接触する。先端面720は、絶縁部72の上面でもある。
【0044】
絶縁部72は、第1絶縁層223の材料を含む。絶縁部72の材料としては、例えば、酸化ケイ素、または酸窒化ケイ素等のケイ素を含む無機材料が挙げられる。なお、本実施形態では、絶縁部72は、第1絶縁層223と一体で形成されており、第1絶縁層223の一部で構成されるとも捉えられる。絶縁部72は、第1絶縁層223と別体でもよい。
【0045】
導電膜61は、第1絶縁層223と第2絶縁層224との間に設けられる。導電膜61は、第2凹部2231の内部に配置される。よって、導電膜61は、表示領域A10に設けられており、画素Pごとに設けられる。また、導電膜61は、第2凹部2231を埋める。導電膜61は、例えば、対応する画素電極24に電気的に接続される中継電極である。
【0046】
導電膜61の材料は、特に限定されないが、例えば、タングステン、チタン、クロム、鉄およびアルミニウム等の金属、金属窒化物ならびに金属シリサイド等が挙げられる。これらの中でも、導電膜61は、タングステンを含むことが好ましい。タングステンは、各種金属の中でも、耐熱性に優れる。このため、製造時に変質し難い。また、導電膜61は、各導電部71と同様に、単層でも複数層であってもよい。導電膜61が複数層である場合、各導電部71と同様に、バリア層および導電層を含んでもよい。
【0047】
また、前述の導電パターン7の平面積は、導電膜61の平面積よりも大きい。導電パターン7の平面積の方が大きいことで、導電パターン7を用いた第2絶縁層224の膜厚測定の精度が向上する。
【0048】
第1絶縁層223上には、第2絶縁層224が配置される。第2絶縁層224は、導電パターン7および導電膜61を覆う。第2絶縁層224は、透光性および絶縁性を有する。第2絶縁層224の材料は、例えば、酸化ケイ素、または酸窒化ケイ素等のケイ素を含む無機材料が挙げられる。
【0049】
図5は、
図2の第1基板2が有する導電パターン7の平面図である。
図5に示すように、導電パターン7の全体は、平面視で四角形状である。
【0050】
図5に示す例では、複数の導電部71として4つの導電部71が設けられる。各導電部71の平面形状は、四角形である。4つの導電部71は、互いに離間し、平面視で行列状に配置される。また、図示の例では、各導電部71は、X1方向での長さとY1方向の長さとが等しいが、これら長さは互いに異なっていてもよい。また、図示の例では、X1方向の長さを幅D1とする。ただし、導電部71の平面視形状が四角形の場合、X1方向での長さおよびY1方向の長さのうちの短い方を幅D1とする。
【0051】
図5に示す例では、絶縁部72の平面形状は、十字形である。絶縁部72は、導電パターン7を複数の導電部71に分割している。絶縁部72は、導電パターン7の平面視における中心O1と重なる。絶縁部72は、X1方向に延在する第1絶縁部721と、Y1方向に延在する第2絶縁部722とを含む。また、図示の例では、絶縁部72の幅、具体的には第1絶縁部721の幅D21および第2絶縁部722の幅D22のそれぞれは、一定であるが、一定で無くてもよい。また、第1絶縁部721および第2絶縁部722のそれぞれは、直線状であるが、湾曲した部分を含んでもよい。また、幅D21と幅D22とは。互いに等しいが、異なっていてもよい。
【0052】
導電パターン7は、前述のように、絶縁部72を含む。このため、絶縁部72が設けられていない場合に比べ、導電パターン7の製造時に導電パターン7が消失するおそれが抑制される。よって、導電パターン7を用いた膜厚測定を精度よく行うことができる。このため、電気光学装置100の品質信頼性の向上させることができる。
【0053】
A-4.第1基板2の製造方法
図6は、
図6の第1基板2の一部の製造方法の流れを示す図である。以下では、第1基板2のうち第1絶縁層223、第2絶縁層224および導電パターン7の製造方法について説明する。
【0054】
図6に示すように、第1基板2の製造方法は、第1絶縁層形成工程S11と、第1凹部形成工程S12と、導電基材形成工程S13と、導電パターン形成工程S14と、第2絶縁層形成工程S15とを含む。
【0055】
第1絶縁層形成工程S11では、第1絶縁層223が形成される。第1絶縁層223は、例えばCVD(chemical vapor deposition)法等の蒸着法によりケイ素を含む絶縁材料を堆積することにより形成される。
【0056】
図7は、
図6の第1凹部形成工程S12を説明するための断面図である。
図7に示すように、第1凹部形成工程S12では、複数の凹部2201を含む第1凹部220が形成される。複数の凹部2201は、例えば、マスクを用いたエッチングにより第1絶縁層223の一部を除去することにより形成れる。本工程において、複数の凹部2201とともに、絶縁部72が形成される。本実施形態の例では、絶縁部72は、エッチングにより除去されなった部分であり、第1絶縁層223の一部で構成される。また、本工程において、第2凹部2231が、第1凹部220とともに形成される。
【0057】
図8は、
図6の導電基材形成工程S13を説明するための断面図である。
図8に示すように、導電基材形成工程S13では、第1絶縁層223上に導電基材7xが形成される。導電基材7xは、例えば、タングステン等の金属、金属窒化物ならびに金属シリサイド等の金属材料を含む。導電基材7xは、スパッタリング法または蒸着法により当該金属材料を第1絶縁層223上に堆積することにより形成される。導電基材7xは、第1凹部220および第2凹部2231を埋めるように形成される。
【0058】
図9は、
図6の導電パターン形成工程S14を説明するための断面図である。
図9に示すように、導電パターン形成工程S14では、導電パターン7が形成される。例えば、導電基材7xに対してCMP(chemical mechanical polishing)等の研磨による平坦化処理を施すことにより、導電基材7xの一部が除去される。この結果、複数の導電部71が形成される。よって、複数の導電部71および絶縁部72を含む導電パターン7が得られる。
【0059】
前述のように第1絶縁層223に複数の凹部2201を形成し、当該複数の凹部2201を埋めるように複数の導電部71が形成されることにより、導電パターン7が形成される。つまり、導電パターン7は、ダマシン法によって形成される。
【0060】
第2絶縁層形成工程S15では、第2絶縁層224が形成される。本工程では、まず、例えばCVD法等の蒸着法によりケイ素を含む絶縁材料を堆積することにより第2絶縁層224が形成される。その後、導電パターン7を用いて第2絶縁層224の膜厚Dを測定しながら第2絶縁層224に対してCMP等による研磨が行われる。これにより、所望の膜厚Dを有する第2絶縁層224が得られる。
【0061】
導電パターン7を用いた膜厚測定では、例えば、エリプソ式膜厚測定法のような光線を用いた光学式方法が用いられる。例えば、導電パターン7に可視光線を照射し、導電パターン7に対する入射光と反射光の偏光状態の変化を測定することにより、第2絶縁層224の膜厚を測定する。導電パターン7への可視光線の確実な入射のために、導電パターン7の平面積は導電膜61の平面積よりも広いことが好ましい。
【0062】
エリプソ式膜厚測定法を用いることで、膜厚をnm単位で測定可能である。本願の膜厚測定では、エリプソ式膜厚測定法が好適に用いられる。第2絶縁層224の外部の空気中と第2絶縁層224との界面で反射した光と、第2絶縁層224を透過して導電パターン7で反射した光との偏光状態を測定し、対象となる第2絶縁層224の膜厚が測定される。また、導電パターン7の可視光に対する反射率は、第2絶縁層224の可視光に対する反射率よりも高い。このため、光学式方法により第2絶縁層224の膜厚Dを高精度に計測することができる。
【0063】
A-5.導電パターン7の作用
図10は、絶縁部72が設けられていない場合における平坦化処理を説明するための図である。
図10には、絶縁部72が設けられていない比較例としての導電パターン7αが図示される。
【0064】
前述の平坦化処理における研磨条件では、導電基材7xの研磨速度が第2絶縁層224の研磨速度または研磨量よりも大きくなるよう設定される。このため、
図10に示すように、絶縁部72が設けられていない場合、導電パターン7αがその周囲の第2絶縁層224の表面以下に過剰に削り取られる傾向がある。したがって、前述の平坦化処理の過程で、導電パターン7αの中央が薄くなってしまうディッシングと呼ばれる現象が生じてしまう。特に、導電パターン7αの平面積が大きくなるほど、当該ディッシングが生じ易くなってしまう。この結果、
図10に示すように、導電パターン7αの一部が消失するおそれがある。
【0065】
ディッシングによる導電パターン7αの消失を避けるためには、導電パターン7αの平面積を導電膜61の平面積と同程度に小さくする必要がある。しかし、導電パターン7αの平面積を小さくすると、導電パターン7αを用いた膜厚測定において、非常に高い光線の照射精度が必要になる。このため、導電パターン7αの平面積の単なる縮小は望ましくない。
【0066】
図11は、絶縁部72が設けられている場合における平坦化処理を説明するための図である。
図11に示すように、本実施形態の導電パターン7は、第1絶縁層223の材料を含む絶縁部72を有する。このため、導電パターン7全体の平面積を縮小せずに、ディッシングにより各導電部71が過剰に削り取られることが抑制される。さらには、ディッシングによる導電パターン7の一部の消失を防ぐことができる。このため、導電パターン7が絶縁部72を有することで、有さない場合に比べ、第2絶縁層224の膜厚測定の精度の低下を抑制することができる。よって、第1基板2の歩留まりが向上し、電気光学装置100の品質信頼性を向上させることができる。
【0067】
また、前述のように、絶縁部72は、第1凹部220の各底面220aに対して第2絶縁層224に向かって突出している。したがって、絶縁部72が有する先端面720は、複数の凹部2201の各底面220aよりも第2絶縁層224に近い。そして、絶縁部72の研磨速度は各導電部71の研磨速度よりも遅い。このため、絶縁部72が突出していることで、絶縁部72の存在によって、各導電部71が過剰に削り取られることが抑制される。よって、導電パターン7のディッシングによる消失を抑制することができる。
【0068】
さらに、本実施形態では、絶縁部72は、導電パターン7を複数の導電部71に分割している。このため、複数の導電部71に分割されていない場合に比べ、導電パターン7のディッシングによる消失を抑制することができる。特に、導電パターン7の平面積が大きいほど、導電パターン7を複数の導電部71に分割することは有効である。
【0069】
本実施形態では、
図5に示すように、絶縁部72は、導電パターン7を4つの導電部71に分割している。このため、導電パターン7を均等に分割し易く、全ての導電部71がディッシングによる消失を抑制することができる。さらに、絶縁部72の平面積が過度に大きくならず、よって、導電パターン7の膜厚測定の精度の低下に影響を及ぼし難い。つまり、膜厚測定用の導電パターン7としての機能が損なわれ難い。なお、導電パターン7の分割数は、4に限定されず、2、3、または5以上でもよい。
【0070】
複数の導電部71の各平面積は、絶縁部72の平面積よりも大きい。このため、このため、各導電部71の平面積が絶縁部72の平面積よりも小さい場合に比べ、膜厚測定用の導電パターン7としての機能が損なわれ難い。なお、複数の導電部71のうちのいずれかの平面積は、絶縁部72の平面積よりも大きくてもよい。
【0071】
図5に示す絶縁部72の有する幅D21およびD22のそれぞれが、複数の導電部71の各幅D1の1/10以下であることが好ましい。幅D21およびD22のそれぞれが各幅D1の1/10以下であることで、範囲外である場合に比べ、膜厚測定用の導電パターン7としての機能が損なわれ難い。なお、幅D21およびD22のそれぞれが各幅D1の1/10を超えてもよい。
【0072】
導電パターン7の平面積は、特に限定されないが、例えば、400μm2以上10000μm2以下である。かかる範囲であることで、範囲外である場合に比べ、膜厚測定用の導電パターン7としての機能が損なわれ難く、かつ、第1基板2の平面積が過度に大きくなることが抑制される。
【0073】
各導電部71の平面積は、特に限定されないが、例えば、100μm2以上2500μm2以下である。かかる範囲であることで、範囲外である場合に比べ、各導電部71がディッシングにより過度に削り取られ難く、かつ、膜厚測定用の導電パターン7としての機能が損なわれ難い。
【0074】
各絶縁部72の平面積は、特に限定されないが、例えば、40μm2以上1000μm2以下である。かかる範囲であることで、範囲外である場合に比べ、各導電部71のディッシングによる消失を効果的に抑制しつつ、かつ、膜厚測定において絶縁部72が弊害になることが抑制される。
【0075】
各幅D1は、特に限定されないが、例えば、10μm以上50μm以下である。かかる範囲であることで、範囲外である場合に比べ、各導電部71にディッシングが生じ難く、かつ、膜厚測定用の導電パターン7としての機能が損なわれ難い。
【0076】
幅D21およびD22のそれぞれは、特に限定されないが、例えば、1μm以上10μm以下である。かかる範囲であることで、範囲外である場合に比べ、各導電部71のディッシングによる消失を効果的に抑制しつつ、かつ、膜厚測定において絶縁部72が弊害になることが抑制される。
【0077】
また、前述のように、絶縁部72は、平面視で導電パターン7の中心O1を通る。よって、絶縁部72は、平面視で導電パターン7の中心O1に重なる。このため、絶縁部72が平面視で中心O1と重ならない場合に比べ、各導電部71がディッシングにより過度に削り取られ難い。
【0078】
また、導電パターン7は、周辺領域A20に設けられる。このため、導電パターン7によって表示領域A10における光LLの透過が遮られるおそれを回避することができる。よって、導電パターン7が存在していても、表示領域A10における表示品位が損なわれるおそれがない。なお、導電パターン7は、画像の表示を損なわない限り、表示領域A10に設けられてもよい。
【0079】
また、前述のように、第1絶縁層223は、表示領域A10に設けられる第2凹部2231を有する。そして、第1基板2は、第2凹部2231の内部に画素Pごとに設けられた導電性を有する導電膜61を有する。また、導電パターン7は、導電膜61と同様に、導電性を有する。かかる導電膜61と導電パターン7とが、同一の第1絶縁層223に設けられている。このため、導電膜61と導電パターン7とを同一工程で形成することができる。よって、別途、膜厚測定用の導電パターン7を形成する工程を設ける必要がない。それゆえ、導電膜61と導電パターン7とが別層に設けられる場合に比べ、製造の手間を省くことができる。
【0080】
A-6.第1基板2の表示領域A10の構成
図12は、
図2の第1基板2の表示領域A10の一部を示す断面図である。
図12では、1つの画素Pに設けられる各種配線の一部が図示される。
【0081】
基板21は、凹部210を有する。凹部210は、第1基板2に形成された窪みである。凹部210の内部には、下部導電膜64が配置される。下部導電膜64の材料としては、例えば、タングステン、チタン、クロム、鉄およびアルミニウム等の金属、金属窒化物ならびに金属シリサイド等が挙げられる。
【0082】
積層体20は、複数の絶縁層221、222、225、226および227を有する。なお、積層体20は、前述のように、第1絶縁層223および第2絶縁層224を含む。絶縁層221、222、第1絶縁層223、第2絶縁層224、絶縁層225、絶縁層226,絶縁層227は、この順に基板21から積層される。積層体20が有する各絶縁層は、透光性および絶縁性を有し、例えば、酸化ケイ素および酸窒化ケイ素等のケイ素を含む無機材料を含む。また、積層体20には、
図3に示すトランジスター23、走査線241、およびデータ線242が配置される。さらに、
図12に示すように、積層体20には、画素中継電極244、中継電極245、246、247、および248が配置される。なお、積層体20には、
図3に示す定電位線243および容量素子25が配置されるが、
図12ではこれらの図示を省略する。
【0083】
絶縁層221上には、トランジスター23が配置される。トランジスター23は、半導体層231と、ゲート電極232と、ゲート絶縁層233とを有する。半導体層231は絶縁層221上に配置され、ゲート電極232は絶縁層222上に配置される。ゲート絶縁層233は、ゲート電極232と半導体層231が有するチャネル領域231cとの間に介在する。絶縁層222のうちゲート電極232に対応する領域がゲート絶縁層233に相当する。
【0084】
半導体層231は、LDD(Lightly Doped Drain)構造を有する。具体的には、半導体層231は、ドレイン領域231a、ソース領域231b、チャネル領域231c、低濃度ドレイン領域231dおよび低濃度ソース領域231eを有する。チャネル領域231cは、ドレイン領域231aとソース領域231bとの間に位置する。低濃度ドレイン領域231dは、チャネル領域231cとドレイン領域231aとの間に位置する。低濃度ソース領域231eは、チャネル領域231cとソース領域231bとの間に位置する。半導体層231は、例えば、ポリシリコンで形成される。チャネル領域231cを除く領域には、導電性を高める不純物がドープされる。低濃度ドレイン領域231d中の不純物濃度は、ドレイン領域231a中の不純物濃度よりも低い。低濃度ソース領域231e中の不純物濃度は、ソース領域231b中の不純物濃度よりも低い。なお、例えば、低濃度ソース領域231eは、省略してもよい。
【0085】
ゲート電極232は、例えば、ポリシリコンに導電性を高める不純物がドープされることにより形成される。なお、ゲート電極232は、金属、金属酸化物および金属化合物の導電性を有する材料を用いて形成されてもよい。また、ゲート絶縁層233は、例えば、熱酸化またはCVD法等で成膜される酸化ケイ素膜で構成される。
【0086】
また、絶縁層221には、下部接続部631が設けられる。下部接続部631は、下部導電膜64と、半導体層231のドレイン領域231aとに接続される。
【0087】
第1絶縁層223には、導電膜61および中継電極246が配置される。第1絶縁層223には、第2凹部2231と第3凹部2232とが設けられる。第2凹部2231には、前述のように、導電膜61が配置される。第3凹部2232は、第1絶縁層223に形成された窪みである。第3凹部2232には、中継電極246が配置される。中継電極246は、導電膜61および前述の導電パターン7と同一工程で形成される。また、中継電極246は、第1絶縁層223を貫通する導電性を有するコンタクト271を介してソース領域231bに電気的に接続される。
【0088】
また、第1絶縁層223には、上部接続部632が設けられる。上部接続部632は、半導体層231のドレイン領域231aと導電膜61とに接続される。さらに、図示省略するが、上部接続部632は、下部接続部631に直接的に接続される。また、図示省略するが、下部導電膜64、下部接続部631、上部接続部632および導電膜61は、半導体層231のドレイン領域231aを囲むように配置される。
【0089】
第2絶縁層224上には、中継電極245、247および走査線241が配置される。走査線241は、第1絶縁層223および第2絶縁層224を貫通する導電性を有するコンタクト272を介してゲート電極232に電気的に接続される。中継電極245は、第2絶縁層224を貫通する導電性を有するコンタクト273を介して導電膜61に電気的に接続される。中継電極247は、第2絶縁層224を貫通する導電性を有するコンタクト274を介して中継電極246に電気的に接続される。
【0090】
絶縁層225上には、画素中継電極244および中継電極248が配置される。画素中継電極244は、絶縁層225を貫通する導電性を有するコンタクト275を介して導電膜61に電気的に接続される。図示省略するが、画素中継電極244は、画素電極24に電気的に接続される。中継電極248は、絶縁層225を貫通する導電性を有するコンタクト276を介して中継電極247に電気的に接続される。
【0091】
絶縁層226上には、データ線242が配置される。データ線242は、絶縁層226を貫通する導電性を有するコンタクト277を介して中継電極248に電気的に接続される。
【0092】
なお、前述の走査線241、データ線242、画素中継電極244、中継電極245、246、247、および248の各材料としては、例えば、タングステン、およびアルミニウム等の金属、金属窒化物ならびに金属シリサイド等が挙げられる。また、コンタクト271~277は、コンタクトプラグでもよいし、トレンチ電極でもよい。コンタクト271~277の各材料としては、タングステン、およびアルミニウム等の金属、金属窒化物ならびに金属シリサイド等が挙げられる。
【0093】
また、前述のように導電パターン7は、第1絶縁層223に設けられるが、積層体20が有する他の絶縁層に設けられてもよい。この場合、導電パターン7と同一層に設けられる電極または配線は、ダマシン法により形成される。また、この場合、導電パターン7が設けられる絶縁層が「第1絶縁層」に相当し、当該絶縁層上に配置される他の絶縁層が「第2絶縁層」に相当する。
【0094】
A-6.導電パターン7を含む膜厚測定領域70
図13は、
図4の導電パターン7を含む膜厚測定領域70を示す断面図である。
図13に示すように、周辺領域A20には、膜厚測定領域70が設けられる。膜厚測定領域70は、導電パターン7と、他の導電パターン80と、膜厚測定パターン81と、膜厚測定パターン82とを含む。
【0095】
他の導電パターン80は、基板21に形成された他の第1凹部211の内部に配置される。導電パターン80は、前述の下部導電膜64と同層に設けられ、これと同一工程で形成される。第1凹部211は、複数の凹部2110を含む。導電パターン80は、導電パターン7と同様に、複数の導電部801と絶縁部802とを含む。複数の導電部801は、複数の凹部2110の内部に1対1で配置される。このため、各導電部801がディッシングにより過剰に削り取られることが抑制される。
【0096】
膜厚測定パターン81は、第2絶縁層224上に配置される。膜厚測定パターン81は、前述の走査線241、中継電極245および247と同層に設けられ、これらと同一工程で形成される。なお、膜厚測定パターン81は、第2絶縁層224の平坦な上面に配置される。かかる膜厚測定パターン81は、例えば、第2絶縁層224上に形成された金属膜をエッチングによりパターニングすることにより形成される。このため、膜厚測定パターン81は、導電パターン7のように絶縁部72を有していなくてよい。ディッシングの問題が生じないためである。なお、第2絶縁層224に凹部が形成されており、当該凹部の内部に膜厚測定パターン81が設けられる場合、膜厚測定パターン81は、導電パターン7のように絶縁部72を有することが好ましい。
【0097】
膜厚測定パターン82は、絶縁層225上に配置される。膜厚測定パターン82は、前述の画素中継電極244および中継電極248と同層に設けられ、これらと同一工程で形成される。なお、膜厚測定パターン82は、絶縁層225の平坦な上面に配置される。かかる膜厚測定パターン82は、例えば、絶縁層225上に形成された金属膜をエッチングによりパターニングすることにより形成される。このため、膜厚測定パターン82は、導電パターン7のように絶縁部72を有していなくてよい。ディッシングの問題が生じないためである。なお、絶縁層225に凹部が形成されており、当該凹部の内部に膜厚測定パターン82が設けられる場合、膜厚測定パターン82は、導電パターン7のように絶縁部72を有することが好ましい。
【0098】
導電パターン7を含む膜厚測定領域70が設けられることで、所定の絶縁層の膜厚を任意の厚さにすることができる。よって、所望の厚さの積層体20を精度よく形成することができる。
【0099】
なお、
図13に示す膜厚測定領域70は一例であり、例えば、他の導電パターン80は省略されてもよい。また、導電パターン80が設けられている場合、導電パターン7が省略されてもよい。
【0100】
B.変形例
以上に例示した実施形態は多様に変形され得る。前述の実施形態に適用され得る具体的な変形の態様を以下に例示する。
【0101】
B-1.第1変形例
図14は、第1変形例の導電パターン7Aを示す平面図である。
図14に示すように、複数の導電部71は、互いに接続されてもよい。導電パターン7Aは、複数の接続部73を有する。
図14では、複数の接続部73として4つの接続部73が設けられる。各接続部73は、2つの導電部71を接続する。各接続部73の幅D3は、各導電部71の幅D1よりも小さい。なお、複数の接続部73を有することで、導電パターン7Aは、複数の絶縁部72を含む。
【0102】
かかる第1変形例によっても、ディッシングにより各導電部71が過度に削られることが抑制されるので、導電パターン7Aを用いた膜厚測定を精度よく行うことができる。また、導電パターン7Aでは、実施形態の導電パターン7と同様に、平面視で導電パターン7Aの中心O1に重なる1つの絶縁部72を有する。このため、各導電部71がディッシングにより過度に削り取られ難い。
【0103】
B-2.第2変形例
図15は、第2変形例の導電パターン7Bを示す平面図である。
図15に示す導電パターン7Bでは、絶縁部72Bの平面形状が四角形である。絶縁部72Bの外縁は、導電パターン7Bの外縁と相似である。また、導電パターン7Bは、平面形状が四角枠状の導電部71Bを有する。
【0104】
かかる第2変形例によっても、ディッシングにより導電部71Bが過度に削られることが抑制されるので、導電パターン7Bを用いた膜厚測定を精度よく行うことができる。また、導電パターン7Bでは、実施形態の導電パターン7と同様に、絶縁部72Bが平面視で導電パターン7Bの中心O1に重なる。このため、各導電部71Bがディッシングにより過度に削り取られ難い。
【0105】
「電気光学装置」の駆動方式は、縦電界方式に限定されず、横電界方式でもよい。なお、横電界方式としては、例えばIPS(In Plane Switching)モードが挙げられる。また、縦電界方式としては、TN(Twisted Nematic)モード、VA(Virtical Alignment)、PVAモードおよびOCB(Optically Compensated Bend)モードが挙げられる。
【0106】
前述の各実施形態では、アクティブマトリクス方式の電気光学装置100が例示されるが、これに限定されず、電気光学装置100の駆動方式は、例えば、パッシブマトリクス方式等でもよい。
【0107】
また、前述した説明では、「電気光学装置」のの一例として液晶表示装置について説明したが、「電気光学装置」のはこれに限定されない。例えば、「電気光学装置」のは、イメージセンサー等にも適用することができる。
【0108】
2.電子機器
電気光学装置100は、各種電子機器に用いることができる。
【0109】
図16は、電子機器の一例であるパーソナルコンピューター2000を示す斜視図である。パーソナルコンピューター2000は、各種の画像を表示する電気光学装置100と、電源スイッチ2001およびキーボード2002が設置される本体部2010と、制御部2003と、を有する。制御部2003は、例えばプロセッサーおよびメモリーを含み、電気光学装置100の動作を制御する。
【0110】
図17は、電子機器の一例であるスマートフォン3000を示す平面図である。スマートフォン3000は、操作ボタン3001と、各種の画像を表示する電気光学装置100と、制御部3002と、を有する。操作ボタン3001の操作に応じて電気光学装置100に表示される画面内容が変更される。制御部3002は、例えばプロセッサーおよびメモリーを含み、電気光学装置100の動作を制御する。
【0111】
図18は、電子機器の一例であるプロジェクターを示す模式図である。投射型表示装置4000は、例えば、3板式のプロジェクターである。電気光学装置1rは、赤色の表示色に対応する電気光学装置100であり、電気光学装置1gは、緑の表示色に対応する電気光学装置100であり、電気光学装置1bは、青色の表示色に対応する電気光学装置100である。すなわち、投射型表示装置4000は、赤、緑および青の表示色に各々対応する3個の電気光学装置1r、1g、1bを有する。制御部4005は、例えばプロセッサーおよびメモリーを含み、電気光学装置100の動作を制御する。
【0112】
照明光学系4001は、光源である照明装置4002からの出射光のうち赤色成分rを電気光学装置1rに供給し、緑色成分gを電気光学装置1gに供給し、青色成分bを電気光学装置1bに供給する。各電気光学装置1r、1g、1bは、照明光学系4001から供給される各単色光を表示画像に応じて変調するライトバルブ等の光変調器として機能する。投射光学系4003は、各電気光学装置1r、1g、1bからの出射光を合成して投射面4004に投射する。
【0113】
以上の電子機器は、前述の電気光学装置100と、制御部2003、3002または4005と、を備える。前述の電気光学装置100は品質信頼性に優れる。よって、電気光学装置100を備えることで、パーソナルコンピューター2000、スマートフォン3000または投射型表示装置4000の表示品位の低下を抑制することができる。
【0114】
なお、本発明の電気光学装置が適用される電子機器としては、例示した機器に限定されず、例えば、PDA(Personal Digital Assistants)、デジタルスチルカメラ、テレビ、ビデオカメラ、カーナビゲーション装置、車載用の表示器、電子手帳、電子ペーパー、電卓、ワードプロセッサー、ワークステーション、テレビ電話、およびPOS(Point of sale)端末等が挙げられる。さらに、本発明が適用される電子機器としては、プリンター、スキャナー、複写機、ビデオプレーヤー、またはタッチパネルを備えた機器等が挙げられる。
【0115】
以上、好適な実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は前述の実施形態に限定されない。また、本発明の各部の構成は、前述の実施形態の同様の機能を発揮する任意の構成に置換でき、また、任意の構成を付加できる。
【符号の説明】
【0116】
1b…電気光学装置、1g…電気光学装置、1r…電気光学装置、2…第1基板、3…第2基板、4…シール部材、5…液晶層、6…基板間導通材、7…導電パターン、7A…導電パターン、7B…導電パターン、7x…導電基材、7α…導電パターン、10…駆動回路、11…走査線駆動回路、12…データ線駆動回路、13…外部端子、20…積層体、21…基板、23…トランジスター、24…画素電極、25…容量素子、29…配向膜、30…積層体、31…基板、32…対向電極、38…見切り、39…配向膜、50…液晶分子、61…導電膜、64…下部導電膜、70…膜厚測定領域、71…導電部、71B…導電部、72…絶縁部、72B…絶縁部、73…接続部、80…導電パターン、81…膜厚測定パターン、82…膜厚測定パターン、100…電気光学装置、210…凹部、211…第1凹部、220…第1凹部、220a…底面、221…絶縁層、222…絶縁層、223…第1絶縁層、224…第2絶縁層、225…絶縁層、226…絶縁層、227…絶縁層、231…半導体層、231a…ドレイン領域、231b…ソース領域、231c…チャネル領域、231d…低濃度ドレイン領域、231e…低濃度ソース領域、232…ゲート電極、233…ゲート絶縁層、241…走査線、242…データ線、243…定電位線、244…画素中継電極、245…中継電極、246…中継電極、247…中継電極、248…中継電極、271…コンタクト、272…コンタクト、273…コンタクト、274…コンタクト、275…コンタクト、276…コンタクト、277…コンタクト、631…下部接続部、632…上部接続部、720…先端面、721…第1絶縁部、722…第2絶縁部、801…導電部、802…絶縁部、2000…パーソナルコンピューター、2001…電源スイッチ、2002…キーボード、2003…制御部、2010…本体部、2201…凹部、2231…第2凹部、2232…第3凹部、3000…スマートフォン、3001…操作ボタン、3002…制御部、4000…投射型表示装置、4001…照明光学系、4002…照明装置、4003…投射光学系、4004…投射面、4005…制御部、A10…表示領域、A20…周辺領域、D…膜厚、D1…幅、D21…幅、D22…幅、D3…幅、LL…光、O1…中心、P…画素、S11…第1絶縁層形成工程、S12…第1凹部形成工程、S13…導電基材形成工程、S14…導電パターン形成工程、S15…第2絶縁層形成工程。