(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128558
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】クリップカートリッジ、及び、クリップカートリッジシステム
(51)【国際特許分類】
A61B 17/122 20060101AFI20240913BHJP
A61B 17/128 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
A61B17/122 100
A61B17/128
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037580
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000200035
【氏名又は名称】SBカワスミ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】佐山 祐亮
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160DD19
4C160DD29
4C160MM32
4C160NN04
(57)【要約】
【課題】処置具本体にクリップを連結した後で、クリップを外ケースの挿通孔に引き込むとともに挿通孔内で処置具本体の内部に引き込む動作をより確実に行うことが可能なクリップカートリッジを提供する。
【解決手段】クリップカートリッジは、処置具本体に対してクリップを連結するために用いられるクリップカートリッジであって、内ケース30と、処置具本体が軸方向に移動可能に挿通される長尺な挿通孔と、内ケース30を挿通孔の軸方向に進退可能に収容する第2収容領域とを有する外ケース40と、を備え、内ケース30は、挿通孔の遠位端と内ケース30とが離間している第1位置から、挿通孔の遠位端と内ケース30とが近接している第2位置まで、後退可能であり、クリップカートリッジは、内ケース30が第1位置から第2位置に後退した後で、再び第1位置に前進してしまうことを規制する前進規制機構を備える。
【選択図】
図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クリップを収容可能な長尺なシースと、前記クリップに連結されるクリップ連結部を遠位端に有し前記シースの軸方向に進退可能に前記シースに挿通されている操作ワイヤと、を備える長尺な処置具本体に対して前記クリップを連結するために用いられるクリップカートリッジであって、
前記クリップを収容する第1収容領域を有する内ケースと、
前記処置具本体が軸方向に移動可能に挿通される長尺な挿通孔と、前記挿通孔の遠位端に連通しているとともに前記内ケースを前記挿通孔の軸方向に進退可能に収容する第2収容領域と、を有する外ケースと、
を備え、
前記内ケースは、前記第2収容領域内において、前記挿通孔の遠位端と前記内ケースとが離間している第1位置から、前記挿通孔の遠位端と前記内ケースとが近接している第2位置まで、後退可能であり、
当該クリップカートリッジは、前記内ケースが前記第1位置から前記第2位置に後退した後で、再び前記第1位置に前進してしまうことを規制する前進規制機構を備えるクリップカートリッジ。
【請求項2】
前記前進規制機構は、前記第2位置において前記内ケースと前記外ケースとを相互に係合させる係合機構を含む請求項1に記載のクリップカートリッジ。
【請求項3】
前記係合機構は、前記第2収容領域を画定する前記外ケースの内面から内向きに突出している第1係合部と、前記内ケースに形成されていて前記第2位置において前記第1係合部と係合する第2係合部と、を含む請求項2に記載のクリップカートリッジ。
【請求項4】
前記内ケースを後退させて前記第1係合部に対して前記第2係合部を係合させるのに要する力よりも、前記内ケースを前進させて前記第1係合部に対する前記第2係合部の係合状態を解除させるのに要する力の方が大きい請求項3に記載のクリップカートリッジ。
【請求項5】
前記第1係合部は、近位側に向けて突出量が増大している請求項4に記載のクリップカートリッジ。
【請求項6】
前記第1係合部の近位端は、前記挿通孔の軸方向に対して直交する第1直交面となっている請求項5に記載のクリップカートリッジ。
【請求項7】
前記第2係合部は、遠位側に向けて、前記第1係合部側への突出量が増大している請求項4から6のいずれか一項に記載のクリップカートリッジ。
【請求項8】
前記第2係合部の遠位端は、前記挿通孔の軸方向に対して直交する第2直交面となっている請求項7に記載のクリップカートリッジ。
【請求項9】
前記内ケースは、前記第2係合部の近位側に、前記第1係合部を収容可能であるとともに前記挿通孔の軸方向への前記第1係合部の移動を許容する収容凹部を有する請求項4から6のいずれか一項に記載のクリップカートリッジ。
【請求項10】
前記内ケースは、前記挿通孔の軸方向に対して直交する第1方向における当該内ケースの寸法が、当該軸方向における当該内ケースの寸法と、当該軸方向と前記第1方向とに対して直交する第2方向における当該内ケースの寸法と、の双方よりも小さい、扁平形状に形成されており、
前記内ケースは、前記第2方向における前記内ケースの両端にそれぞれ前記第2係合部を有し、
前記外ケースは、前記第2係合部の各々と対応する一対の前記第1係合部を有する請求項3から6のいずれか一項に記載のクリップカートリッジ。
【請求項11】
前記内ケースは、前記挿通孔の軸方向に対して直交する第1方向における当該内ケースの寸法が、当該軸方向における当該内ケースの寸法と、当該軸方向と前記第1方向とに対して直交する第2方向における当該内ケースの寸法と、の双方よりも小さい、扁平形状に形成されており、
前記第1係合部は、前記第2収容領域を画定する前記外ケースの内面から前記第1方向に突出している突起部であり、
前記第2係合部は、近位側に向けて切り欠かれた形状に前記内ケースの遠位端に形成されている切欠形状部であり、
前記切欠形状部は、前記第2方向における当該切欠形状部の内寸が遠位側に向けて狭まる括れ部を含み、
前記内ケースが前記第1位置に配置されているときには、前記突起部が前記括れ部よりも近位側に位置し、
前記内ケースが前記第2位置に配置されているときには、前記突起部が前記括れ部よりも遠位側に位置する請求項3又は4に記載のクリップカートリッジ。
【請求項12】
請求項1から6のいずれか一項に記載のクリップカートリッジと、
前記処置具本体と、
前記第1収容領域に収容された前記クリップと、
を備えるクリップカートリッジシステム。
【請求項13】
前記処置具本体は、前記シースの内部に収納可能で前記クリップ連結部を収容する筒状のスリーブを更に備え、
前記スリーブは、
弾性的に自己拡開可能な拡径部と、
前記拡径部よりも近位側に位置する筒状のスリーブ本体と、
を有し、
前記クリップは、
生体組織を把持する複数のアーム部と、前記アーム部の基端側に設けられた係止部と、を有するクリップ本体と、
前記複数のアーム部が内部に挿通されており、前記複数のアーム部に対して前進することにより前記複数のアーム部を締め付けて閉状態とする締付部と、
を有し、
前記挿通孔に前記処置具本体が挿入された状態で、前記操作ワイヤが前方に押し込まれることにより、前記クリップ連結部と前記スリーブの前記拡径部とが、前記シースから遠位側に突出して前記第2収容領域における前記内ケースと前記挿通孔との間の領域に入り込むとともに、前記拡径部が弾性的に拡径し、
前記操作ワイヤが更に前方に押し込まれることにより、前記クリップ連結部が前記スリーブから遠位側に突出し、前記クリップ連結部と前記係止部とが連結された連結状態となり、
前記連結状態で前記操作ワイヤが近位側に牽引されることにより、前記クリップが前記クリップ連結部により引っ張られるとともに、前記内ケースが前記第1位置から前記第2位置に後退し、前記内ケースが前記拡径部を後方に押圧することにより前記拡径部が縮径しながら前記シースに引き込まれ、前記クリップが前記内ケースから離脱して前記シースに引き込まれるように構成され、
拡径時における前記拡径部の内径は、前記締付部の外径以上である請求項12に記載のクリップカートリッジシステム。
【請求項14】
前記内ケースを後退させて前記第1係合部に対して前記第2係合部を係合させるのに要する力よりも、前記締付部により前記複数のアーム部を締め付けて閉状態とするのに要する力の大きさの方が大きい請求項13に記載のクリップカートリッジシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリップカートリッジ、及び、クリップカートリッジシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡下で体腔内の生体組織を切除し、その切除部位をクリップにより結紮して止血する内視鏡用クリップ装置が提供されている。
【0003】
特許文献1には、内視鏡用クリップ装置の処置具本体にクリップを連結するために用いられるクリップカートリッジについて記載されている。同文献のクリップカートリッジは、クリップを収容する第1収容領域を有する内ケースと、内ケースを収容する第2収容領域を有する外ケースと、を備えている。外ケースは、処置具本体が軸方向に移動可能に挿通される長尺な挿通孔を有しており、第2収容領域は、挿通孔の遠位端に連通しているとともに内ケースを挿通孔の軸方向に進退可能に収容する。処置具本体にクリップを装着する動作は、クリップを処置具本体に連結し、クリップを外ケースの挿通孔内に引き込むとともに、挿通孔内で処置具本体の内部に引き込むことによって行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者等の検討によれば、特許文献1のクリップカートリッジでは、処置具本体にクリップを連結した後で、クリップを外ケースの挿通孔に引き込むとともに挿通孔内で処置具本体の内部に引き込む動作をより確実に行う観点で、改善の余地がある。
【0006】
本発明は上述のような課題に鑑みてなされたものであり、処置具本体にクリップを連結した後で、クリップを外ケースの挿通孔に引き込むとともに挿通孔内で処置具本体の内部に引き込む動作をより確実に行うことが可能なクリップカートリッジ、及び、クリップカートリッジシステムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、クリップを収容可能な長尺なシースと、前記クリップに連結されるクリップ連結部を遠位端に有し前記シースの軸方向に進退可能に前記シースに挿通されている操作ワイヤと、を備える長尺な処置具本体に対して前記クリップを連結するために用いられるクリップカートリッジであって、
前記クリップを収容する第1収容領域を有する内ケースと、
前記処置具本体が軸方向に移動可能に挿通される長尺な挿通孔と、前記挿通孔の遠位端に連通しているとともに前記内ケースを前記挿通孔の軸方向に進退可能に収容する第2収容領域と、を有する外ケースと、
を備え、
前記内ケースは、前記第2収容領域内において、前記挿通孔の遠位端と前記内ケースとが離間している第1位置から、前記挿通孔の遠位端と前記内ケースとが近接している第2位置まで、後退可能であり、
当該カートリッジは、前記内ケースが前記第1位置から前記第2位置に後退した後で、再び前記第1位置に前進してしまうことを規制する前進規制機構を備えるクリップカートリッジを提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、処置具本体にクリップを連結した後で、クリップを外ケースの挿通孔に引き込むとともに挿通孔内で処置具本体の内部に引き込む動作をより確実に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係るクリップカートリッジの分解斜視図である。
【
図2】第1実施形態に係るクリップカートリッジの外ケースを構成する外ケース構成部品の斜視図である。
【
図3】
図3(a)及び
図3(b)は第1実施形態に係るクリップカートリッジの内ケースを構成する内ケース構成部品の斜視図である。
【
図5】第1実施形態に係るクリップカートリッジにクリップを収容した状態を示す平面図である。
【
図7】内視鏡用クリップ装置の一例を示す斜視図である。
【
図8】
図8(a)及び
図8(b)は内視鏡用クリップ装置の処置具本体にクリップを装着する一連の動作を説明するための模式図である。
【
図9】
図9(a)から
図9(c)は内視鏡用クリップ装置の処置具本体にクリップを装着する一連の動作を説明するための模式図である。
【
図10】
図10(a)及び
図10(b)は内視鏡用クリップ装置の処置具本体にクリップを装着する一連の動作を説明するための模式図である。
【
図11】
図11(a)から
図11(c)は内視鏡用クリップ装置の処置具本体にクリップを装着する一連の動作を説明するための模式図である。
【
図12】閉腕状態のクリップを示す図であり、このうち
図12(a)は平面図、
図12(b)は側面図である。
【
図13】
図13(a)及び
図13(b)は第1実施形態に係るクリップカートリッジの平面図であり、このうち
図13(a)は内ケースが第2収容領域内において第1位置に配置されている状態を示し、
図13(b)は内ケースが第2収容領域内において第2位置に配置されている状態を示す。
【
図15】
図15(a)及び
図15(b)は内視鏡用クリップ装置の処置具本体にクリップを連結した後で、クリップを外ケースの挿通孔に引き込むとともに挿通孔内で処置具本体の内部に引き込む一連の動作を説明するための模式図である。
【
図16】
図16(a)及び
図16(b)は内視鏡用クリップ装置の処置具本体にクリップを連結した後で、クリップを外ケースの挿通孔に引き込むとともに挿通孔内で処置具本体の内部に引き込む一連の動作を説明するための模式図である。
【
図17】クリップの締付リング(締付部)が内ケースの外部に移動する過程で内ケースの一対の可動片が最も開いた状態を示す断面図である。
【
図18】
図18(a)は一対の可動片が閉じた状態の内ケースを近位側から視た図であり、
図18(b)は一対の可動片が最も開いた状態の内ケースを近位側から視た図である。
【
図19】第2実施形態に係るクリップカートリッジの外ケースを構成する外ケース構成部品の斜視図である。
【
図20】第2実施形態に係るクリップカートリッジの内ケースを構成する内ケース構成部品の斜視図である。
【
図21】
図21(a)及び
図21(b)は第2実施形態に係るクリップカートリッジの平面図であり、このうち
図21(a)は内ケースが第2収容領域内において第1位置に配置されている状態を示し、
図21(b)は内ケースが第2収容領域内において第2位置に配置されている状態を示す。
【
図23】
図23(a)は第2実施形態の変形例1に係るクリップカートリッジの内ケースを構成する内ケース構成部品の平面図であり、
図23(b)及び
図23(c)は第2実施形態の変形例2に係るクリップカートリッジの拡大平面図であり、このうち
図23(a)は内ケースが第2収容領域内において第1位置に配置されている状態を示し、
図23(b)は内ケースが第2収容領域内において第2位置に配置されている状態を示す。
【
図24】
図24(a)は処置具本体のスリーブの拡径部の内径を示す図であり、
図24(b)はクリップの締付リング(締付部)の外径を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は適宜に省略する。
【0011】
〔第1実施形態〕
先ず、
図1から
図18と
図24及び
図25を用いて第1実施形態を説明する。
なお、本明細書において「軸方向」とは、特に断りがない限り、クリップカートリッジ200の外ケース40の挿通孔43の軸方向を意味し、当該方向は、クリップカートリッジ200を用いてクリップ110を装着する際の処置具本体90の操作ワイヤ20の進退方向とも同じである。
また、「遠位側(または遠位)」とは、特に断りのない限り、内視鏡用クリップ装置100、これに装着されたクリップ110又はクリップカートリッジ200において、内視鏡用クリップ装置100の操作者から遠い側を呼称し、具体的にはクリップ110のアーム部120の先端(爪部126)がある側をいう。また、「近位側(または近位)」とは、特に断りのない限り、内視鏡用クリップ装置100、クリップ110又はクリップカートリッジ200において操作者に近い側をいう。また、内視鏡用クリップ装置100、クリップ110又はクリップカートリッジ200の構成要素が遠位側に移動することを前進するといい、逆に近位側に移動することを後退するという場合がある。さらに、「先端側(または先端)」を「遠位側(または遠位)」と同義で用い、「基端側(または基端)」を「近位側(または近位)」と同義で用いる。
また、基端側から先端側、又は、先端側から基端側に向かう方向のことを、先基端方向又は前後方向と称する。
また、後述するようにクリップカートリッジ200は扁平に形成されている。そして、クリップカートリッジ200の厚み方向、すなわち上下方向を、第1方向と称する場合がある。また、先基端方向とクリップカートリッジ200の厚み方向との双方に対して直交する方向、すなわち幅方向を第2方向と称する場合がある。更に、幅方向のうち、近位側から遠位側に向かって視たときに左側に位置する方を左(左側)という場合があり、右側に位置する方を右(右側)という場合がある。
【0012】
本実施形態に係るクリップカートリッジ200は、クリップ110を収容可能な長尺なシース10と、クリップ110に連結されるクリップ連結部50を遠位端に有しシース10の軸方向に進退可能にシース10に挿通されている操作ワイヤ20と、を備える長尺な処置具本体90に対してクリップ110を連結するために用いられるクリップカートリッジ200である。
クリップカートリッジ200は、クリップ110を収容する第1収容領域32を有する内ケース30と、処置具本体90が軸方向に移動可能に挿通される長尺な挿通孔43と、挿通孔43の遠位端43aに連通しているとともに内ケース30を挿通孔43の軸方向に進退可能に収容する第2収容領域42と、を有する外ケース40と、を備える。
内ケース30は、第2収容領域42内において、挿通孔43の遠位端43aと内ケース30とが離間している第1位置(
図5、
図6、
図9(b)、(c)、
図10(a)、
図13(a)、
図14(a)、
図15(a)に示す内ケース30の位置)から、挿通孔43の遠位端43aと内ケース30とが近接している第2位置(
図11(a)、
図11(b)、
図13(b)、
図14(b)、
図16(a)、
図16(b)、
図17に示す内ケース30の位置)まで、後退可能である。
クリップカートリッジ200は、内ケース30が第1位置から第2位置に後退した後で、再び第1位置に前進してしまうことを規制する前進規制機構を備える。なお、本実施形態の場合、前進規制機構は、後述する係合機構を含んで構成されている。係合機構は、後述する第1係合部45と第2係合部35とを含んで構成されている(
図13(a)から
図14(b)参照)。
【0013】
本実施形態によれば、内ケース30が第1位置から第2位置に後退した後で、再び第1位置に前進してしまうことを規制する前進規制機構を備えているため、処置具本体90にクリップ110を連結した後で、クリップ110を挿通孔43に引き込む動作をより確実に行うことが可能となる(詳細後述)。その結果、クリップ110を処置具本体90に装着(セット)する動作をより容易且つ確実に行うことができる。
【0014】
図4に示すように、クリップ110は、生体組織を把持するための複数のアーム部120と、アーム部120の基端側に設けられた係止部130を有するクリップ本体110aを備えている。
図7から
図11(c)のいずれかに示されるように、処置具本体90は、長尺なシース10と、シース10の内部に進退移動可能に挿通され遠位端にクリップ連結部50が設けられた操作ワイヤ20と、シース10の内部に収納可能でクリップ連結部50を収容する筒状のスリーブ70と、操作ワイヤ20からスリーブ70に前進力及び後退力を伝達する伝達部(例えば、伸縮部80)と、を有する。
スリーブ70は、弾性的に自己拡開可能な拡径部72と、拡径部72よりも近位側に設けられ拡径部72よりも径方向の剛性が高い筒状のスリーブ本体76と、を有する。ここで、スリーブ本体76の径方向の剛性が、拡径部72の径方向の剛性よりも高いとは、スリーブ本体76及び拡径部72に対してそれぞれ径方向内側に力が加わった際に、弾性変形による径方向内側への変位量が、拡径部72よりもスリーブ本体76の方が小さくなることを意味する。
【0015】
図8(a)から
図9(c)に示すように外ケース40の挿通孔43に処置具本体90が挿入された状態で、操作ワイヤ20が前方に押し込まれることにより、クリップ連結部50とスリーブ70の拡径部72とが、シース10から先端側に突出して第2収容領域42における内ケース30と挿通孔43との間の領域に入り込むとともに、拡径部72が弾性的に拡径する。
操作ワイヤ20が更に前方に押し込まれることにより、クリップ連結部50がスリーブ70に対して相対的に前進することによってスリーブ70から先端側に突出し、クリップ連結部50と係止部130とが連結された連結状態となる(
図9(c))。
図10(a)から
図11(a)に示されるように、連結状態で操作ワイヤ20が基端側に牽引されることにより、内ケース30が第2収容領域42内で外ケース40に対して相対的に後退し、内ケース30がスリーブ70を後方に押圧することにより拡径部72が縮径しながらシース10に引き込まれる。
【0016】
以下、本実施形態についてより詳細に説明する。
【0017】
内視鏡用クリップ装置100が備える処置具本体90の具体的な構造は特に限定されない。
図7には、指掛けリング92、スライダ94および本体軸96を備える処置具本体90を例示する。内視鏡用クリップ装置100の使用者は、例えば、指掛けリング92に指(たとえば親指)を引っ掛けて、スライダ94を他の指(たとえば人差し指および中指)で挟持した状態で、本体軸96に対してスライダ94を相対移動させて操作する。これにより、スライダ94に連結された操作ワイヤ20がシース10の内部で進退移動する。また、処置具本体90の全体を軸まわりに回転させることで、スライダ94とともに操作ワイヤ20が回転する。シース10が内視鏡の鉗子孔の壁面に密着している場合、操作ワイヤ20はシース10の内部で軸回転することとなる。以下、処置具本体90や操作ワイヤ20、クリップ110が軸回転することを「トルク回転」する、という場合がある。
【0018】
内視鏡用クリップ装置100は、操作ワイヤ20の先端にクリップ110を連結した状態で、内視鏡の鉗子孔(不図示)に挿通して用いられる。具体的には、内視鏡用クリップ装置100は、体腔内に留置された内視鏡の鉗子孔に対して近位側からシース10を挿入し、鉗子孔の遠位開口からシース10の遠位端を突出させ、さらにシース10からクリップ110を露出させて生体組織を結紮するのに用いることができる。結紮される生体組織としては、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)の被処置部位などの粘膜壁のほか、血管などの体管を挙げることができる。
【0019】
クリップ110は、生体組織を結紮するものであり、アーム部120で生体組織を結紮することにより、たとえば止血処置、縫縮およびマーキングなどの処置を行うことができる。アーム部120は自己拡開力を有し、後述するように閉腕状態のアーム部120をシース10から突出させることでアーム部120は自然に拡開して開腕状態となる。ここで、「自己拡開」とは、閉じようとする外力に対して反発して自ら開こうとすることをいう。
【0020】
クリップ110は、複数のアーム部120と係止部130とを有するクリップ本体110aの他に、複数のアーム部120がまとめて挿入された締付リング150を備えている。締付リング150がアーム部120に対して相対的にアーム部120の先端側に移動することによって、複数のアーム部120の先端(爪部126)が互いに閉じた状態となるように構成されている。
【0021】
より詳細には、クリップ110は、互いに対向する一対のアーム部120を備えている。
一対のアーム部120は、係止部130から遠位側(
図4における左方)に向かって突出する基端部122と、この基端部122の遠位側に連接されているアーム本体部124と、をそれぞれ備えている。基端部122は遠位側に向かって外向きに湾曲している。
ここで、「外向き」とは、操作ワイヤ20の軸または当該軸の延長線から離れる方向を意味し、たとえば径方向の外方向である。「内向き」とは、操作ワイヤ20の軸または当該軸の延長線に近づく方向を意味し、たとえば径方向の内方向である。
【0022】
アーム本体部124は直線状に形成されており、アーム本体部124の先端には爪部126が形成されている。アーム本体部124および爪部126は生体組織を主として把持する把持領域である。爪部126は、一対のアーム本体部124から内向きに突出しており、生体組織に食い込むことでクリップ110の把持力を向上する。
アーム部120は、基端部122とアーム本体部124との境界で屈曲しており、またかかる境界にはアーム部120の幅寸法が局所的に縮小する細幅部123が形成されている(
図12(b)参照)。
【0023】
図4に示すように、係止部130と一対のアーム部120とは一体成形されてクリップ本体110aを構成している。すなわち一方の爪部126、アーム本体部124および基端部122と、他方の爪部126、アーム本体部124および基端部122とが係止部130を介してシームレスに連続形成されている。
より具体的には、金属製の板材を打ち抜き、プレスおよび曲げ加工することにより、相互に一体的な一対のアーム部120及び係止部130を含むクリップ本体110aを作製することができる。かかる金属材料としては、ステンレス鋼、チタンまたはチタン合金などを例示することができるが、これに限定されない。また上記金属材料は、耐腐食性被覆処理がなされたものでもよい。
【0024】
アーム本体部124には、幅方向の中央の一部をプレス(エンボス)加工することにより補強部125が形成されている(
図12(b)参照)。補強部125を形成することでアーム本体部124の厚み寸法が増大し(
図4、
図12(a)参照)、アーム本体部124の曲げ剛性が向上する。これにより、生体組織に対する高い把持力を得ることができる。補強部125は、アーム本体部124のうち爪部126を除く先端部から、細幅部123に至る基端部まで連続形成されている。
【0025】
クリップ110の締付リング150はアーム部120に対し進退可能に装着されている。締付リング150をアーム部120に対して相対的に遠位側に移動させることにより、開腕状態(
図4参照)のアーム部120を自己拡開力に抗して締付リング150で締め付けることができる。これにより、アーム部120は閉腕状態(
図12(a)、(b))となる。また、締付リング150をアーム部120に対して相対的に後退させることでアーム部120は自己拡開力により開腕する。なお、環状の締付リング150は、周方向に亘り周面全体が連続する全環状でもよく、または周方向の一部に切欠きやスリットが設けられている部分環状でもよい。
【0026】
アーム部120のアーム本体部124は、基端部122や細幅部123よりも太幅に形成されており、締付リング150が細幅部123を乗り越えてアーム本体部124まで前進することが規制されている。また、基端部122には、部分的に太幅に形成された太幅部121が形成されている。締付リング150の近位側の内径は太幅部121の幅寸法よりも小さい。このため、締付リング150が太幅部121を乗り越えてクリップ110の近位側に移動することも規制されている。締付リング150は太幅部121とアーム本体部124との間の長さ領域でアーム部120に対して進退移動する。そして、締付リング150が細幅部123に嵌合することで締付リング150はアーム部120に係止し、クリップ110は閉腕状態でロックされる。
【0027】
クリップ110の係止部130は、操作ワイヤ20の先端のクリップ連結部50(
図8(a)等)を受容する空間132を内部に有する受容部134と、この受容部134の基端側に内向きに突出形成された突起部140と、を有している。受容部134が空間132内にクリップ連結部50を受容することにより、クリップ110と操作ワイヤ20とは互いに連結される。
【0028】
突起部140は、クリップ連結部50によって押し広げられるように弾性的に変形して開放され、また弾性復元することによりクリップ連結部50と係合してこれを保持する爪部である。
突起部140は受容部134の近位側に配置されて空間132の一部または全部を開放可能に閉鎖する部位である。突起部140の形状、位置および大きさは特に限定されない。たとえば、受容部134を環状に形成し、突起部140を環状の受容部134の周面から径方向の内向きに突出形成してもよい。または、下記のように受容部134を環状などの基部136と、この基部136から近位側に突出する突片部142とで構成し、突起部140を当該突片部142の先端に形成してもよい。
【0029】
係止部130は、アーム部120の基端に接続された基部136と、この基部136から基端側に突出形成されて受容部134を構成する複数の突片部142と、を備えている。突起部140は、突片部142の近位側の先端部にそれぞれ形成されている。
【0030】
基部136と突片部142と突起部140とで囲まれる空間132に操作ワイヤ20のクリップ連結部50は収容される。基部136の内径はクリップ連結部50の最大外径よりも小さく、基部136はクリップ連結部50の前進移動を規制する。突起部140は、空間132に収容されたクリップ連結部50が後退することを規制する。空間132に収容されたクリップ連結部50は、基部136と突起部140とで先基端方向に拘束されて空間132の内部で進退移動が規制されてもよく、または空間132の内部でクリップ連結部50は僅かに軸方向に進退移動可能であってもよい。
【0031】
クリップ連結部50は、例えば塊状のものである。クリップ連結部50が「塊状」であるとは、クリップ連結部50が係止部130よりも肉厚であって、クリップ連結部50が係止部130に連結され、またクリップ連結部50が係止部130から抜去されるにあたり、係止部130の変形に比してクリップ連結部50の変形が十分に小さいことをいう。塊状のクリップ連結部50の具体的な形状は特に限定されず、
図8(a)に示すように遠位側部と近位端部とがそれぞれ遠位端と近位端とに向かって縮径する形状であるほか、柱状や球状でもよい。
例えば、クリップ連結部50の断面形状は多角形であり、好ましくは正多角形断面である。一例として、クリップ連結部50は正六角形断面を有している。
【0032】
係止部130には複数の突片部142が対向して配置されている。突片部142の数は限定されないが、多角形断面のクリップ連結部50の外周平面の数よりも少ない数であることが好ましい。具体的には、係止部130は、例えば2本の突片部142を有している。突片部142はクリップ連結部50の直径よりも細幅の板状をなしている。
2本の突片部142は、クリップ連結部50の外周平面にそれぞれ対面可能な位置に設けられている。より具体的には、2本の突片部142は係止部130の基部136において180度対向する位置に設けられている。
ただし、本発明はこの例に限らず、3本の突片部142が120度間隔で均等に対向配置されていてもよい。突片部142どうしの対向間隔は、クリップ連結部50の外周平面に突片部142がそれぞれ密着または近接することが可能な寸法に設定されている。
【0033】
クリップ連結部50をクリップ110(クリップ本体110a)に連結すると、受容部134に受容されたクリップ連結部50の外周平面を取り囲むようにして、複数の突片部142はクリップ連結部50に密着または近接して配置される。これにより、クリップ連結部50をトルク回転させるとクリップ連結部50の外周平面は突片部142を軸まわりに回転させ、係止部130を介してクリップ本体110a全体にトルクを付与する。
【0034】
突片部142の近位側の先端に形成された突起部140は、基部136と同心の円周上に配置されており、部分円弧状に形成されている。個々の突起部140は、中心角が約120度の部分円弧状をなし、2個の突起部140により上記円周の約三分の二の領域を保持することができるように形成されている。
【0035】
基部136は、金属材料などの板材を曲げ形成して端縁138を互いに突き当ててなる環状をなしている。複数の突片部142は、環状の基部136の周囲に離間配置されている。
図4および
図12(a)に示すように、突き当てられた端縁138の合わせ目は、隣接する突片部142どうしの中間位置に配置されている。
環状の基部136の具体的な形状は特に限定されず、円筒状、角筒状、またはこれらの組み合わせなどを例示することができる。また、基部136は、端縁138の合わせ目が互いに接触した全環状のほか、端縁138の合わせ目が所定の間隔で離間した部分環状でもよい。
【0036】
基部136の基端側の周縁には、遠位側に向かって窪む複数の凹部137が形成されている。突片部142は、凹部137の底部139から基端側に突出形成されている。これにより、軸方向における係止部130の寸法を抑制しつつ、突片部142を長く形成することができ、受容部134に操作ワイヤ20のクリップ連結部50を嵌合または抜去する際に突片部142を柔軟に変形させることができる。
【0037】
図7及び
図8(a)等に示すように、処置具本体90のシース10は、長尺で可撓性の管状部材である。シース10は、内視鏡用クリップ装置100とともに用いられる内視鏡の鉗子孔よりも長い。シース10は、たとえば金属ワイヤを長尺に巻回したコイル層(不図示)で構成することができる。コイル層の内周面には、フッ素系ポリマーで作製された内層(不図示)が設けられていてもよい。また、シース10を樹脂製のワイヤを巻回したコイル層としてもよく、可撓性の樹脂チューブとしてもよい。
【0038】
シース10の内径寸法は、操作ワイヤ20の先端に設けられたセンタリング部60(
図8(a)等)を摺動可能に収容する大きさである。シース10は、閉腕状態のクリップ110を内部に収容可能である(
図11(b)、(c)参照)。具体的には、シース10の内径は、たとえば、100μm以上かつ2400μm以下である。また、シース10の厚み寸法は、たとえば、100μm以上かつ350μm以下である。これにより、シース10の屈曲性をよくすることができる。
【0039】
操作ワイヤ20は、シース10に挿通されており、当該シース10の内部を軸方向に進退可能となっている。操作ワイヤ20は、たとえば、ステンレス鋼、耐腐食性被覆された鋼鉄線、チタンまたはチタン合金などの剛性の強い金属材料により形成されている。金属板を構成する金属材料としては、ステンレス鋼、チタンまたはチタン合金などを例示することができるが、これに限定されない。また上記金属部材は、適宜、耐腐食性被覆処理がなされたものであってもよい。操作ワイヤ20の外周面には、フッ素系ポリマーで作製された外層(不図示)が設けられていてもよい。
【0040】
操作ワイヤ20の遠位端部には、例えば、センタリング部60、支柱部56、クリップ連結部50、伸縮部80およびスリーブ70が設けられている。
センタリング部60は、操作ワイヤ20よりも大径の塊状をなし、操作ワイヤ20の遠位端部に固定されている。センタリング部60は円柱状の部位(円柱部)を含み、かかる円柱部の外径はシース10の内径と同等かつ僅かに小さく形成されている。シース10の内部で操作ワイヤ20を進退移動させることに伴ってセンタリング部60はシース10の内部を摺動して進退する。このとき、センタリング部60の外径がシース10の内径と略同径であることで、操作ワイヤ20はシース10の軸心近傍に位置したまま進退移動する。湾曲した内視鏡(図示せず)の鉗子孔にシース10が挿入された場合にも、操作ワイヤ20は当該鉗子孔の中心線上にほぼ位置するため操作ワイヤ20の経路長は変化せず、クリップ連結部50やクリップ110がシース10から意図せず突出してしまうことが抑制される。
【0041】
操作ワイヤ20の遠位端部であってセンタリング部60よりも遠位側の位置には、操作ワイヤ20と同軸に支柱部56が形成されている。支柱部56の遠位端にはクリップ連結部50が一体形成されている。支柱部56とクリップ連結部50との間には、縊れ部51が形成されている(
図8(a)等参照)。伸縮部80は支柱部56を収容するようにして支柱部56の周囲に設けられ、クリップ連結部50はスリーブ70の内部に収容可能となっている。
【0042】
クリップ連結部50の遠位部に第2傾斜面54が設けられている。これにより、クリップ連結部50を突起部140に対して基端側から押圧することで、第2傾斜面54は突起部140を外向きに弾性変形させる。
【0043】
また、クリップ連結部50の近位部に第1傾斜面52が設けられている。これにより、クリップ連結部50が受容部134に受容された状態で操作ワイヤ20を進退方向の近位側に牽引することで、第1傾斜面52は突起部140を外向きに変形させる。
【0044】
第1傾斜面52および第2傾斜面54の一方または両方は、平面でもよく、または曲面でもよい。曲面である場合は、突起部140を好適に外向きに押し広げることができるよう、径方向の外向きに膨出する凸面であってもよい。
第1傾斜面52または第2傾斜面54の少なくとも一方は、円錐台または角錐台などの錘面状をなしている。
より具体的には、第1傾斜面52は近位側に向かって縮径する円錐台面であり、第2傾斜面54は遠位側に向かって縮径する円錐台面である。
【0045】
操作ワイヤ20の遠位端部には、シース10の内部に収納可能で、かつクリップ連結部50を収容する筒状のスリーブ70が設けられている。スリーブ70の少なくとも一部の内径は、クリップ連結部50が受容部134から引き抜き可能となるときの係止部130の外径よりも小さい。
【0046】
スリーブ70は、シース10に対する締付リング150の後退移動を規制し、開腕状態のクリップ110(
図4参照)を閉腕状態(
図12参照)に遷移させるための部材である。スリーブ70は、
図8(a)等に示すようにシース10の内部に収納可能であり、また操作ワイヤ20を前進させることでスリーブ70の一部(拡径部72)をシース10から突出させることが可能である(
図9(b)等参照)。
【0047】
スリーブ(スリーブ70)は、拡径部72、縮径段差部74およびスリーブ本体76を有している。拡径部72は、スリーブ70における遠位側に設けられて弾性的に自己拡開可能である。縮径段差部74は、拡径部72の近位側に設けられている。スリーブ本体76は、縮径段差部74よりも更に近位側に設けられ、拡径部72よりも径方向の剛性が高い。
スリーブ本体76の内径は、クリップ連結部50が受容部134から引き抜き可能となるときの係止部130の外径よりも小さい。このため、係止部130とクリップ連結部50とが連結されている状態で、且つ、突起部140および突片部142がスリーブ本体76に収容されている状態では、突片部142の外向きの変形をスリーブ本体76が拘束するため、クリップ連結部50が受容部134から脱離することが防止される。
ただし、突起部140および突片部142の少なくとも一部をスリーブ本体76よりも後退させることで、突片部142が十分に変形してクリップ連結部50が受容部134から引き抜き可能となる。
【0048】
縮径段差部74は、スリーブ本体76と拡径部72との間において、近位側に向かって縮径するテーパー状に形成されている。スリーブ70の構成材料は、外力により縮径可能な部材であれば特定の材質に限定されない。たとえば金属材料や、樹脂、ゴムなどのエラストマーを用いることができる。
【0049】
スリーブ70はステンレス鋼などの金属材料で作製された筒状体(パイプ)であり、拡径部72の遠位端から近位側に向けて切り欠き形成された一以上のスリット(図示せず)を有している。スリットは、縮径段差部74に至る長さで形成されていてもよい。かかるスリットを有することで、スリーブ70の少なくとも拡径部72は拡径変形または縮径変形することが可能に構成されている。拡径部72は、
図8(a)等に示すようにスリーブ70がシース10に収容され且つシース10に拘束されている状態のときに、シース10に拘束されていない自然状態(
図9(b)等)のときよりも縮径変形して、外径がシース10の内径よりも小径になっている。
【0050】
そして、
図9(b)等に示すようにスリーブ70の拡径部72がシース10から遠位側に突出することで拡径部72は自然状態に弾性復元する。拡径部72は、自然状態でシース10の内径よりも大径である。また、スリーブ本体76は自然状態でシース10の内径よりも小径であり、縮径段差部74は自然状態でシース10の内径よりも大径の部分と小径の部分とを有する。
【0051】
伸縮部(伝達部)80は、センタリング部60とスリーブ70とを連結する部材であり、軸方向に伸縮可能に構成されている。
【0052】
伸縮部80は、金属もしくは樹脂の線材を螺旋巻回したコイル、またはゴムなどのエラストマーにより構成することができる。線材としては、ステンレスやタングステンなどの金属線を好ましく用いることができる。
本実施形態の場合、伸縮部80はコイルにより構成されている。
伸縮部80は、センタリング部60とスリーブ70にそれぞれ固定される両端部の巻回ピッチを小さくし、中間部の巻回ピッチを両端部よりも大きくした不等ピッチで巻回されたコイルである。より具体的には、伸縮部80の両端部は、隣接する巻線ループ同士が互いに接触する密巻きに巻回され、伸縮部80の中間部は、隣接する巻線ループ同士が互いに離間したピッチ巻きにより巻回されている。
【0053】
スリーブ70は伸縮部80に固定された筒状の部材であり、操作ワイヤ20、伸縮部80およびスリーブ70はシース10と同軸に配置されている。スリーブ70のスリーブ本体76は伸縮部80に収容されている。伸縮部80の遠位端は縮径段差部74の近位側に当接している。伸縮部80の遠位部は、スリーブ本体76の周囲に固定された固着部82と、固着部82の遠位側に位置してスリーブ本体76の周囲に非固定に装着された非固着部84と、を含む。固着部82は接着剤、ハンダ等の金属蝋、または溶接によりスリーブ本体76の周囲に固定されている。
【0054】
なお、上記においては、操作ワイヤ20の先端部がセンタリング部60を介して伸縮部80の基端部に連結(接続)されている例を説明したが、操作ワイヤ20の先端部が伸縮部80の基端部に対して直に連結(接続)されていても良い。
一例として、コイルにより構成された伸縮部80におけるスリーブ70よりも基端側の部分が、当該伸縮部80の基端に向かって内径及び外径が徐々に縮径するテーパー状の螺旋形状に形成されている構造を例示できる。この場合、例えば、当該螺旋形状の部分の内径を、操作ワイヤ20の先端部の外径と同等に設定するとともに、当該螺旋形状の部分の内周面を操作ワイヤ20の先端部の外周面に対して接合することにより、操作ワイヤ20と伸縮部80とを相互に連結することができる。
【0055】
以下、クリップカートリッジ200について詳細に説明する。
【0056】
図1に示すように、クリップカートリッジ200は、内ケース30と外ケース40とを備えている。
図6に示すように、内ケース30は、一対の内ケース構成部品31を相互に組み付けることにより構成されている。内ケース30は、平面視矩形状の扁平な形状のものであり、クリップ110を収容する第1収容領域32を内部に有する。
より詳細には、一対の内ケース構成部品31は、互いに同一形状に形成されている。
【0057】
また、外ケース40も、一対の外ケース構成部品41を相互に組み付けることにより構成されている。外ケース40は、前後方向に長尺な平面視矩形状の扁平な形状のものであり、内ケース30を収容する第2収容領域42を内部に有する。
より詳細には、一対の外ケース構成部品41は、互いに同一形状に形成されている。
【0058】
図1、
図3(a)及び
図3(b)に示すように、内ケース構成部品31は、平面視矩形状の平板状の板状部311を有している。
一対の内ケース構成部品31は、板状部311の一方の面どうしが互いに対向するようにして相互に組み付けられて、内ケース30を構成する。
【0059】
内ケース構成部品31は、更に、板状部311の幅方向における一側端に設けられて、板状部311の一方の面から起立している側壁315を有している。側壁315は、前後方向に延在している。
なお、内ケース30は、一方の側壁315が第2収容領域42の幅方向における一端に、他方の側壁315が第2収容領域42の幅方向における他端に、それぞれ配置されるようにして、第2収容領域42に収容される(
図5参照)。
【0060】
板状部311は、当該板状部311の一方の面における前端部に形成された突起部312と、当該前端部に形成された孔部313と、を有する。孔部313は、少なくとも板状部311の一方の面に開口している。本実施形態の場合、孔部313は、板状部311の表裏を貫通しており、したがって、板状部311の両面に開口している。
突起部312と孔部313とは、幅方向において互いに対称に配置されている。より詳細には、突起部312と孔部313とのうち孔部313が側壁315の近傍に配置され、突起部312が側壁315から遠い側に配置されている。
一対の内ケース構成部品31が相互に組み付けられた状態において、一方の内ケース構成部品31の突起部312が他方の内ケース構成部品31の孔部313に嵌入するとともに、他方の内ケース構成部品31の突起部312が一方の内ケース構成部品31の孔部313に嵌入するようになっている。
【0061】
更に、板状部311の一方の面には、クリップ110のアーム部120を収容するための凹部314が形成されている。凹部314は、幅方向において対称形に形成されている。
一対の内ケース構成部品31が組み付けられた状態で、一対の凹部314の対向間隔により第1収容領域32の一部分、すなわちアーム部120を収容する部分が構成されるようになっている。
【0062】
板状部311の一方の面において、凹部314の基端側に隣接する位置には、クリップ110の締付リング150を嵌合状態で保持するリング保持凹部317が形成されている。
図3(a)及び(b)に示すように、リング保持凹部317は、半割筒状(例えば半割円筒状)に形成されており、凹部314の底面よりも窪んでいる。リング保持凹部317は、幅方向における凹部314の中央部の基端側に配置されている。
【0063】
図3(a)及び(b)に示すように、板状部311の一方の面には、更に、リング保持凹部317の基端側に隣接している傾斜面318が形成されている。傾斜面318は、基端側に向けて高くなるように傾斜している。
傾斜面318の下端はリング保持凹部317の後端と交差しており、傾斜面318は凹部314の底面よりも高い位置まで延びている。
【0064】
更に、板状部311の一方の面には、傾斜面318の基端側に隣接している係止部収容凹部319が形成されている。係止部収容凹部319は半割筒状(例えば半割角筒状)に形成されており、凹部314の底面よりも高い位置に配置されている。
【0065】
更に、板状部311の一方の面において、リング保持凹部317、傾斜面318及び係止部収容凹部319に対して幅方向における片側に隣接する位置には、側壁315と同方向に起立(突出)している隣接壁316が形成されている。 隣接壁316は、側壁315と同等の高さに起立している。隣接壁316の後端面は、内ケース構成部品31の後端位置に配置されている。
【0066】
隣接壁316の後端面などにより、スリーブ70とクリップ連結部50とのうちスリーブ70の前進を選択的に規制する前進規制部322が構成されている。すなわち、内ケース30が前進規制部322を有する。
【0067】
更に、板状部311には、先基端方向に延在する一対のスリット320が形成されている。一方のスリット320は、リング保持凹部317、傾斜面318、係止部収容凹部319及び隣接壁316よりも幅方向における一方の側に配置されており、他方のスリット320は、リング保持凹部317、傾斜面318、係止部収容凹部319及び隣接壁316よりも幅方向における他方の側に配置されている。
一対のスリット320の前端は、例えば、凹部314の前端近傍に位置しており、スリット320の後端は、内ケース構成部品31の後端に達している。よって、一対のスリット320は、後方に向けて開放している。
このような一対のスリット320が板状部311に形成されていることにより、板状部311において一対のスリット320に挟まれている部分は、板状部311が弾性変形することにより板状部311の厚み方向に変位可能な可動片321を構成している。
そして、可動片321がリング保持凹部317、傾斜面318、係止部収容凹部319及び隣接壁316を含んでいる。
【0068】
なお、一対の内ケース構成部品31が相互に組み付けられた状態で、隣接壁316は、相手方の板状部311と厚み方向において重複するようになっている。このため、可動片321には、相手方の隣接壁316の先端部との干渉を避けるための切欠形状部323が形成されている。
【0069】
図1、
図2及び
図5に示すように、外ケース構成部品41は、前後方向に長尺な平面視矩形状の平板状に形成された板状部411を有している。
なお、
図5においては、外ケース40を構成する一対の外ケース構成部品41のうち上側の外ケース構成部品41の図示を省略しているとともに、内ケース30を構成している一対の内ケース構成部品31のうち上側の内ケース構成部品31の図示を省略している。
一対の外ケース構成部品41は、板状部411の一方の面どうしが互いに対向するようにして相互に組み付けられて、外ケース40を構成する。
【0070】
板状部411の一方の面の前部には、内ケース30を収容するための凹部424が形成されている。一対の外ケース構成部品41が組み付けられた状態で、一対の凹部424の対向間隔により第2収容領域42が構成されるようになっている。
外ケース40は、凹部424の前側に隣接して配置された先端壁421と、幅方向における凹部424の両側にそれぞれ隣接して配置された一対の側壁422と、を有している。先端壁421は幅方向に延在している一方で、一対の側壁422はそれぞれ前後方向に延在しており、先端壁421及び側壁422はそれぞれ板状部411の一方の面から起立している。
【0071】
一対の外ケース構成部品41が組み付けられた状態で、先端壁421の頂面どうしが当接するようになっている。
先端壁421の頂面には、相手方の先端壁421に向けて突出している突起部416が形成されている。先端壁421の背面側には、一対の外ケース構成部品41が組み付けられた状態で相手方の突起部416が嵌入する切欠形状部417が形成されている。突起部416と切欠形状部417とは、幅方向において互いに対称位置に配置されている。
【0072】
板状部411の後端部には、突起部414と孔部415とが形成されている。突起部414と孔部415とは幅方向において互いに対称位置に配置されている。
突起部414は、板状部411の一方の面から隆起した隆起部423から更に突出した状態に形成されている。
孔部415は、隆起部423及び板状部411を表裏に貫通しており、突起部414が嵌入可能な形状に形成されている。
一対の外ケース構成部品41を相互に組み付けた状態では、突起部414が根元まで孔部415に嵌入し、互いの隆起部423の対向面(頂面)どうしが当接するようになっている。
【0073】
凹部424の後側には、突起部412、孔部429、周囲壁425、係止爪428、ガイド突起413及び孔部427が、互いに横並びの配置で設けられている。
【0074】
突起部412、孔部429、周囲壁425、係止爪428、ガイド突起413及び孔部427のうち、突起部412は、幅方向における一端側に配置されており、板状部411の一方の面から、側壁422の頂面よりも高く突出している。孔部427は、板状部411を貫通している。突起部412と孔部427とは、幅方向において互いに対称位置に配置されている。
一対の外ケース構成部品41を相互に組み付けた状態では、突起部412が孔部427に嵌入するようになっている。
【0075】
ガイド突起413は、幅方向において孔部427と隣接する位置に配置されており、板状部411の一方の面から突起部412と同方向に突出している。ガイド突起413は、一対の外ケース構成部品41を相互に組み付ける際に、突起部412を孔部427に向けて案内する。
【0076】
係止爪428は、幅方向においてガイド突起413よりも中心寄りに配置されているとともに、板状部411の一方の面から突起部412と同方向に突出しており、先端が鉤爪状に屈曲している。
【0077】
孔部429は、板状部411を貫通している。孔部429と係止爪428とは、幅方向において互いに対称位置に配置されている。
一対の外ケース構成部品41を相互に組み付けた状態では、係止爪428が孔部429に嵌入して係止されるようになっている。
【0078】
周囲壁425は幅方向における中央部に配置されており、挿通孔43の先端の開口を囲むものである。周囲壁425は、凹部424よりも高く形成されている。周囲壁425の前面は平坦に形成され、前方を向いている。
【0079】
外ケース構成部品41において、突起部412、孔部429、周囲壁425、係止爪428、ガイド突起413及び孔部427が配置されている部位と、後端部の一対の隆起部423が配置されている部位との間の部位は、隆起部423よりも低段に形成されている。
この低段の部位の前後方向における中間位置には、中間突起部426が形成されている。中間突起部426の頂面の高さ位置は、隆起部423の頂面の高さ位置と同等になっており、一対の外ケース構成部品41が相互に組み付けられた状態では、一対の中間突起部426の頂面どうしが当接するようになっている。
なお、板状部411には、例えば、後述する挿通孔構成溝418の両側位置に、それぞれ1つずつの中間突起部426が形成されている。
【0080】
板状部411の後端部の幅方向における中央部には、後方に向けて幅広になる平面視V字状の切欠形状部420が形成されている。
板状部411の一方の面の幅方向における中央部には、切欠形状部420の前端部から周囲壁425の前端に亘って直線状の挿通孔構成溝418が形成されている。
挿通孔構成溝418は、軸方向に延在している。挿通孔構成溝418は、半割筒状に形成されており、一対の外ケース構成部品41が相互に組み付けられた状態では、一対の挿通孔構成溝418が互いに対向配置されて合わさることにより、円管状の挿通孔43(
図6、
図8(a)等参照)が形成される。なお、本実施形態では、直線状の挿通孔43を例示するが、挿通孔43は湾曲していてもよい。
【0081】
挿通孔構成溝418は、挿通孔構成溝418の長手方向における大部分を占める溝本体418aと、溝本体418aの前側に位置し溝本体418aよりも幅方向において幅広に形成されている幅広部418bと、を含んでいる。
溝本体418aの内径(つまり挿通孔43の内径)は、シース10の外径よりも若干大きい程度に設定されており、挿通孔43にシース10を挿入する際には、シース10は挿通孔43の周壁に沿って前方にガイドされるようになっている。
挿通孔構成溝418の前端部には、シース10の前進を規制するストッパ部44(
図6、
図8(a)等参照)を構成するストッパ構成部419が形成されている。
【0082】
上述のように、クリップカートリッジ200は、内ケース30が第1位置から第2位置に後退した後で、再び第1位置に前進してしまうことを規制する前進規制機構を備える。
本実施形態の場合、前進規制機構は、第2位置(
図13(b)、
図14(b)に示す位置)において内ケース30と外ケース40とを相互に係合させる係合機構を含む。このため、簡易な構成により、内ケース30が再び第1位置に前進してしまうことを規制することができる。
本実施形態の場合、上記係合機構は、第2収容領域42を画定する外ケース40の内面から内向きに突出している第1係合部45と、内ケース30に形成されていて第2位置において第1係合部45と係合する第2係合部35と、を含む。このため、より簡易な構成により、内ケース30が再び第1位置に前進してしまうことを規制することができる。
なお、
図14(a)、
図14(b)においては、外ケース40を構成する一対の外ケース構成部品41のうち上側の外ケース構成部品41の図示を省略しているとともに、内ケース30を構成している一対の内ケース構成部品31のうち上側の内ケース構成部品31の図示を省略している。
【0083】
第1係合部45は、
図1、
図2に示すように、例えば、外ケース構成部品41の側壁422の内面(第2収容領域42を画定する内面)の遠位端部に形成されている。第1係合部45は、側壁422の内面の上端から下端に亘る全域に形成されていることが好ましい。すなわち、第1係合部45は、例えば、外ケース40の内面の遠位端部の上端から亘る全域に形成されていることが好ましい。
【0084】
一方、第2係合部35は、
図1、
図3(a)、(b)に示すように、例えば、内ケース構成部品31の側壁315の外面の遠位端部に形成されている。第2係合部35は、側壁315の上端から下端に亘る全域に形成されていることが好ましい。すなわち、第2係合部35は、例えば、内ケース30の遠位端部の外面に形成されており、内ケース30の厚み方向の全域に亘って形成されていることが好ましい。
【0085】
図13(a)及び
図14(a)に示すように、第2収容領域42内において、内ケース30が第1位置に配置されているときには、第2係合部35は第1係合部45に対して係合していない。
一方、
図13(b)及び
図14(b)に示すように、第2収容領域42内において、内ケース30が第1位置から第2位置に後退すると、第2係合部35が第1係合部45に対して係合した状態となる。第2係合部35が第1係合部45に対して係合することによって、内ケース30が再び第1位置に前進してしまうことが規制される。
【0086】
本実施形態の場合、内ケース30を後退させて第1係合部45に対して第2係合部35を係合させるのに要する力よりも、内ケース30を(再び)前進させて第1係合部45に対する第2係合部35の係合状態を解除させるのに要する力の方が大きくなるように、係合機構が構成されている。
これにより、内ケース30が再び第1位置に前進してしまうことを、より確実に規制することができる。
【0087】
ここで、内ケース30を後退させて第1係合部45に対して第2係合部35を係合させるのに要する力よりも、締付部(締付リング150)によりクリップ110の複数のアーム部120を締め付けて閉状態とするのに要する力の大きさの方が大きい。このため、内ケース30を後退させて第1係合部45に対して第2係合部35を係合させる際に、締付リング150が複数のアーム部120を締め付けて閉状態としてしまう(締付リング150により一対のアーム部120を閉じて結紮してしまう)ことを抑制できる。
【0088】
図14(a)及び
図14(b)に示すように、第1係合部45は、近位側に向けて(第2収容領域42の内方への)突出量が増大している。すなわち、
図14(a)及び
図14(b)に示す第1係合部45は、近位側に向けて、左方への突出量が増大している。
また、第1係合部45の近位端45aは、挿通孔43の軸方向に対して直交する第1直交面となっている。
また、第2係合部35は、遠位側に向けて、第1係合部45側への突出量が増大している。すなわち、
図14(a)及び
図14(b)に示す第2係合部35は、遠位側に向けて、右方への突出量が増大している。
また、第2係合部35の遠位端35aは、挿通孔43の軸方向に対して直交する第2直交面となっている。
これらの構成の各々は、内ケース30を後退させて第1係合部45に対して第2係合部35を係合させるのに要する力よりも、内ケース30を前進させて第1係合部45に対する第2係合部35の係合状態を解除させるのに要する力の方が大きくなるために、寄与している。
【0089】
図1、
図3(a)、(b)に示すように、内ケース30は、第2係合部35の近位側に、第1係合部45を収容可能であるとともに挿通孔43の軸方向への第1係合部45の移動を許容する収容凹部36を有する。
このため、内ケース30が外ケース40に対して相対的に軸方向に移動する際に、第1係合部45と内ケース30との干渉を抑制することができ、内ケース30をスムーズに移動させることが可能となる。
【0090】
内ケース30は、挿通孔43の軸方向に対して直交する第1方向(厚み方向)における当該内ケース30の寸法が、当該軸方向における当該内ケース30の寸法と、当該軸方向と第1方向とに対して直交する第2方向(幅方向)における当該内ケース30の寸法と、の双方よりも小さい、扁平形状に形成されている。
そして、内ケース30は、第2方向における内ケース30の両端にそれぞれ第2係合部35を有し、外ケース40は、第2係合部35の各々と対応する一対の第1係合部45を有する。
これにより、内ケース30が再び第1位置に前進してしまうことを、より確実に規制することができる。
本実施形態の場合、上下の外ケース構成部品41のうち下側の外ケース構成部品41の右端に第1係合部45が形成されており、当該第1係合部45と対応する(当該第1係合部45に対して係合する)第2係合部35は、上下の内ケース構成部品31のうち下側の内ケース構成部品31の右端に形成されている。同様に、上下の外ケース構成部品41のうち上側の外ケース構成部品41の左端に第1係合部45が形成されており、当該第1係合部45と対応する(当該第1係合部45に対して係合する)第2係合部35は、上下の内ケース構成部品31のうち上側の内ケース構成部品31の左端に形成されている。
【0091】
ここで、側壁422の一部分は、板状部411に対して揺動することが可能な揺動片422aとなっている。揺動片422aは、当該揺動片422aの基端部(近位端部)において、側壁422における揺動片422a以外の部分と繋がっている。揺動片422aの基端部よりも先端側(遠位側)においては、揺動片422aと、側壁422における揺動片422a以外の部分との間にスリットが形成されている。
これにより、揺動片422aは、当該揺動片422aの基端部を揺動の支点として、幅方向に揺動(弾性変形)可能となっている。
そして、揺動片422aの先端部(の内面)に第1係合部45が形成されている。
このように、外ケース40において第1係合部45が形成されている部分は、片持ち梁になっており、容易に弾性変形できるようになっている。
このため、第2係合部35が第1係合部45に対して係合する際に揺動片422aが揺動することによって、第1係合部45に対する第2係合部35の係合動作をスムーズに行うことが可能となっている。
【0092】
内ケース構成部品31及び外ケース構成部品41は、それぞれ以上のように構成されている。
【0093】
一対の内ケース構成部品31は、相互間に形成される第1収容領域32にクリップ110が収容された状態となるように、相互に組み付けられて、内ケース30を構成している(
図6、
図8(a)等参照)。
更に、一対の外ケース構成部品41は、相互間に形成される第2収容領域42に内ケース30が収容された状態となるように、相互に組み付けられて、外ケース40を構成している。
こうして、クリップ110を内部に保持したクリップカートリッジ200が構成されている(
図5、
図6、
図8(a)等参照)。
【0094】
ここで、一対の内ケース構成部品31の突起部312と孔部313とは相互に嵌合している。すなわち、内ケース30は、互いに同一形状に形成された一対の内ケース構成部品31を組み合わせて構成され、一対の内ケース構成部品31は、互いに対向した状態で相互に嵌合している。
【0095】
また、一対の外ケース構成部品41は、突起部416と切欠形状部417とが相互に嵌合し、突起部414と孔部415とが相互に嵌合し、突起部412と孔部427とが相互に嵌合し、係止爪428と孔部429とが相互に嵌合している。
すなわち、外ケース40は、互いに同一形状に形成された一対の外ケース構成部品41を組み合わせて構成され、一対の外ケース構成部品41は、互いに対向した状態で相互に嵌合している。
【0096】
なお、幅方向において、内ケース30の寸法は、第2収容領域42の内寸よりも若干小さい程度に設定されており、内ケース30は、第2収容領域42内において前後に移動可能となっている。より詳細には、一対の側壁315の外面が、外ケース構成部品41の側壁422の内面にガイドされて、内ケース30は外ケース40に対して前後に摺動するようになっている。
【0097】
また、締付リング150は一対の内ケース構成部品31の可動片321によって挟持されている。より詳細には、締付リング150は一対のリング保持凹部317に嵌まり、締付リング150の後端は一対の傾斜面318によって後方への移動が規制されている。
本実施形態の場合、一対の可動片321によって一対のリング挟持部が構成されている。
【0098】
次に、
図8(a)から
図11(c)を用いて、操作ワイヤ20のクリップ連結部50をクリップ110に連結するための一連の手技を説明する。
【0099】
先ず、
図8(a)及び(b)に示すように、シース10の先端がストッパ部44に突き当たるまで処置具本体90のシース10をクリップカートリッジ200の外ケース40の挿通孔43に挿入する。
【0100】
次に、
図9(a)及び(b)に示すように、操作ワイヤ20を押し込むことにより、クリップ連結部50とスリーブ70の拡径部72とが、シース10から先端側に突出して第2収容領域42における内ケース30と挿通孔43との間の領域に入り込むとともに、拡径部72が弾性的に拡径する。
なお、スリーブ70は、拡径部72の先端が前進規制部322に突き当たった段階でさらなる前進が規制され、以後は、スリーブ70とクリップ連結部50とのうちクリップ連結部50が選択的に前進する。
【0101】
次に、
図9(c)に示すように、操作ワイヤ20を更に押し込むことにより、クリップ連結部50がスリーブ70に対して相対的に前進することによってスリーブ70から先端側に突出し、クリップ連結部50と係止部130とが連結された連結状態となる。なお、内ケース30は、外ケース40に対して前後に摺動可能であるため、操作ワイヤ20を押し込む際に内ケース30が外ケース40に対して前進しうるが、内ケース30の前進は第2収容領域42の前端位置において規制される。
【0102】
次に、
図10(a)及び(b)に示すように、操作ワイヤ20を牽引すると、クリップ110の基端部が少しスリーブ70内に引き込まれた状態となりながら、内ケース30とクリップ110がシース10へ引き寄せられる。
このとき、締付リング150が傾斜面318を後方に押すことにより内ケース30が後退し、スリーブ70は内ケース30の前進規制部322により後方に押されて後退する。
また、クリップ110の一対のアーム部120は僅かに閉じながら締付リング150内に引き込まれるが、結紮には至らない。
【0103】
図10(b)から
図11(a)に示すように、スリーブ70は、拡径部72が周囲壁425に当接するまで後退した後は、拡径部72が縮径しながらシース10に入り込む。
このとき、内ケース30が第2収容領域42内で外ケース40に対して相対的に後退し、内ケース30がスリーブ70を後方に押圧することにより拡径部72が縮径しながら挿通孔43に引き込まれる。
【0104】
ここで、締付リング150により一対のアーム部120を閉じて結紮するのに要する力の大きさは、例えば30N以上50N以下程度であるのに対して、クリップ110を内ケース30から後方に離脱させるのに要する力F1の大きさは、例えば10N程度である。力F1は、締付リング150をリング挟持部から後方に離脱させるのに要する力である。
したがって、操作ワイヤ20を力F1以上の力で牽引することにより、クリップ110がクリップ連結部50により引っ張られることによって内ケース30から離脱して後退するが、結紮には至らない(
図11(b)参照)。
【0105】
ここで、スリーブ70の拡径部72を第2収容領域42からシース10に引き込むのに要する力F2の大きさは、例えば2N以上3N以下程度である。
また、内ケース30を第2収容領域42において外ケース40に対して相対的に後退させるのに要する力F3は、力F2よりも十分に小さいものとする。
すなわち、クリップカートリッジ200は、連結状態で操作ワイヤ20が基端側に牽引されることにより、クリップ110がクリップ連結部50により引っ張られることによって内ケース30から離脱して後退するように構成されている。そして、クリップ110を内ケース30から離脱させるのに要する力F1と、スリーブ70の拡径部72を第2収容領域42からシース10に引き込むのに要する力F2と、内ケース30を第2収容領域42において外ケース40に対して相対的に後退させるのに要する力F3とが、F1>F2>F3を満たす。
よって、操作ワイヤ20が締付リング150を介して内ケース30を牽引することにより内ケース30を後退させつつ、拡径部72をシース10に引き込むことができる。
上述のようにクリップ110を完全に結紮する(本締めする)ためには30N以上50N以下程度の力が必要であるため、本締めとなる前にスリーブ70の拡径部72が縮径してシース10に収納される。更に、本締めとなる前に、締付リング150とクリップ110がシース10に収納される(
図11(b))。
その後、クリップカートリッジ200からシース10を引き抜く(
図11(c))。
以上により、処置具本体90に対するクリップ110の装填が完了する。
【0106】
ここで、連結状態で操作ワイヤ20が基端側に牽引される際に、拡径部72がシース10に引き込まれる前に、クリップ110の係止部130及びクリップ連結部50がスリーブ70のスリーブ本体76の内部に収納されるようになっている(
図10(a)参照)。よって、連結状態を維持しつつ、拡径部72をシース10に引き込むことができる。
【0107】
より詳細には、クリップ110は、複数のアーム部120がまとめて挿入された締付リング150を備え、締付リング150がアーム部120に対して相対的にアーム部120の先端側に移動することによって複数のアーム部120の先端が互いに閉じた状態となるように構成されている。
内ケース30は、締付リング150を挟持するリング挟持部(例えば可動片321)を有し、連結状態で操作ワイヤ20が基端側に牽引されることにより、リング挟持部が弾性変形して締付リング150がリング挟持部から離脱するように構成されている。
そして、力F1は、締付リング150をリング挟持部から離脱させる際に要する力である。
ここで、締付リング150をリング挟持部から離脱させる際に要する力とは、締付リング150をリング挟持部から離脱させる際に必要とされる諸々の力の合力である。
上記合力を構成する力には、締付リング150をリング挟持部から離脱させるのに要する力が含まれる。この力は、締付リング150が基端側に牽引されることによって、当該締付リング150が、例えば、一対の可動片321の対向間隔を押し拡げながら、一対の可動片321に対して摩擦的に摺動して、基端側に移動するために必要な力である。
さらに、上記合力には、クリップ110を第1収容領域32から基端側に離脱させるのに要する力も含まれる。すなわち、クリップ110のアーム部120が自己拡開力を有していることにより、クリップ110が第1収容領域32から後方に離脱する際には、アーム部120と内ケース30における第1収容領域32の内壁面との間に、当該自己拡開力に起因する摩擦抵抗(抵抗力)が生じる。このため、この抵抗力も、上記合力に含まれる。
上記合力には、これら以外にも、各部の摩擦等に起因する力が含まれる。
【0108】
より詳細には、リング挟持部は、締付リング150を嵌合状態で保持するリング保持凹部317と、リング保持凹部317の基端側に隣接している傾斜面318であって基端側に向けてリング挟持部の対向間隔が狭まる方向に傾斜している傾斜面318と、を有する。
【0109】
より詳細には、内ケース30は、内ケース本体(例えば内ケース構成部品31における可動片321を除く部分)と、リング挟持部と、を有し、リング挟持部は、内ケース本体によって片持ち式に支持された可動片321を含む(本実施形態の場合、可動片321自体がリング挟持部である)。
そして、連結状態で操作ワイヤ20が基端側に牽引される際に、可動片321がリング挟持部(つまり可動片321)の対向間隔が拡大する方向に弾性的に変位することによって、締付リング150が内ケース30から離脱する。つまり、一対の可動片321が互いに離間する方向にそれぞれ弾性変形することによって、締付リング150が内ケース30から離脱する。
【0110】
ここで、
図6に示すように、可動片321において、外ケース40の内面と対向する外面324が、基端側に向けて外ケース40の内面から離間する方向に傾斜している。これにより、外面324と外ケース40の内面との間には、一対の可動片321が互いの対向間隔が拡大する方向に弾性的に変位するための空間が確保されている。
【0111】
次に、クリップ110を閉腕させ、更にクリップ連結部50からクリップ110を脱離させるまでの一連の手技を説明する。
【0112】
図11(c)に示すようにクリップ110がシース10に収容された状態で、内視鏡の鉗子孔を通じて体腔内にシース10を侵入させる。シース10の遠位側端部が、結紮を要する生体組織の近傍に至ったら、操作ワイヤ20を遠位側へ押し出す。これにより、クリップ110および締付リング150がシース10先端より突出し、クリップ110は自己拡開力により自然に最大開口幅まで広がる。
【0113】
このとき、スリーブ70における少なくとも拡径部72と縮径段差部74はシース10の遠位開口より突出し、自然状態の径に拡径変形する。次に、結紮すべき生体組織に対してクリップ110の位置および向きを調整する。
【0114】
処置具本体90をトルク回転させると、操作ワイヤ20およびクリップ連結部50は連動してトルク回転する。更に、クリップ連結部50が係止部130にトルクを伝達するので、クリップ110のアーム部120もトルク回転する。これにより、アーム部120の開腕方向を生体組織の結紮部位に対して所望の向きに指向させることができる。
【0115】
クリップ110の位置および向きを決めたのち、クリップ110の先端を結紮部位に押し当てた状態で、操作ワイヤ20を近位側へ引き込む。締付リング150は、縮径段差部74の内側面に当接するとともに拡径部72の内側に嵌合しており、スリーブ70およびシース10に対する後退移動が規制されている。また、締付リング150が拡径部72に嵌合していることで拡径部72に外力が付加されても縮径変形することが抑止されており、操作ワイヤ20を大きな力で近位側に引き込んでも拡径部72がシース10内に引き込まれることは防止されている。
【0116】
操作ワイヤ20とスリーブ70とは、伸縮部80によって連結されている。そのため、スリーブ70が内視鏡用クリップ装置100に対する近位側への相対移動を規制された後も、操作ワイヤ20を近位側に引き込むことによって伸縮部80が伸び、クリップ連結部50をシース10内において更に近位側に引き込むことが可能である。
【0117】
クリップ連結部50が受容部134に受容された状態で操作ワイヤ20を進退方向の近位側に牽引することで、アーム部120が閉腕して(
図12(a)及び(b)参照)生体組織を把持する。なお、アーム部120が閉腕する途中で引き込みを中断し、再度、操作ワイヤ20を押込むことによって、アーム部120を再び拡開させることも可能である。そして、最適な結紮が確認できた後に、更に操作ワイヤ20を近位側へ引き込むと、アーム部120に設けられた細幅部123に締付リング150が嵌合してクリップ110がロックされる。これにより、クリップ110は閉腕状態となる。
【0118】
アーム部120が閉腕して生体組織を把持するときに、係止部130の突起部140はスリーブ70の内部に収容されている。この状態から更に操作ワイヤ20を近位側に牽引することにより、突起部140はスリーブ70のスリーブ本体76から基端側に突出して、外向きに大きく変形可能となる。ここで突起部140が大きく変形するとは、少なくともクリップ連結部50が受容部134から引き抜き可能となるまで突起部140が大径に変形することをいう。
このため、生体組織を結紮する際にスライダ94を後退させる動作と連続して、スライダ94を更に後退させることでクリップ連結部50が係止部130から抜去される。これによりクリップ110は操作ワイヤ20から分離し、生体組織を結紮した状態で体腔内に留置される。
【0119】
以上により、クリップ連結部50をクリップ110に連結し、クリップ110を閉腕させ、更にクリップ110からクリップ連結部50を脱離させるまでの一連の手技が終了する。上記の手技を繰り返すことで、多数のクリップ110で生体組織を結紮することができる。
【0120】
ここで、
図8(a)から
図11(c)は模式図であるが、
図15(a)から
図16(b)には、処置具本体90にクリップ110を連結した後で、クリップ110を外ケース40の挿通孔43に引き込むとともに、挿通孔43内で処置具本体90のシース10の内部にクリップ110を引き込む一連の動作について、より詳細に示している。
図15(a)~
図16(b)においては、外ケース40を構成する一対の外ケース構成部品41のうち上側の外ケース構成部品41の図示を省略しているとともに、内ケース30を構成している一対の内ケース構成部品31のうち上側の内ケース構成部品31の図示を省略している。また、処置具本体90については平断面で示している。
図15(a)~
図16(b)に示すように、処置具本体90にクリップ110を連結した後で、クリップ110を外ケース40の挿通孔43に引き込むとともに、挿通孔43内で処置具本体90のシース10の内部にクリップ110を引き込む際には、拡径部72が内ケース30によってシース10内に押し込まれ(
図15(a)~
図16(a))、拡径部72に続いて締付リング150がシース10内に引き込まれる(
図16(b))。
【0121】
ここで、内ケース30の可動片321の動作について、再度説明する。
【0122】
可動片321は、当該可動片321の遠位端部において、板状部311における可動片321以外の部分と接続されており、この接続部分よりも近位側においては、可動片321と、板状部311における可動片321以外の部分との間には、上述のスリット320が存在している。つまり、可動片321は、片持ち梁になっている。
処置具本体90がクリップ110に連結された後で基端側に牽引されて、締付リング150も基端側に牽引される際に、締付リング150は上下の内ケース構成部品31の可動片321を上下に押し広げながら(可動片321を弾性変形させながら)、傾斜面318を乗り超えて、内ケース30よりも基端側に移動する。
【0123】
図17は、上下の可動片321の対向間隔が最も狭い部分を締付リング150が通過する瞬間、すなわち一対の可動片321が最も開いた状態の断面形状を示している。
図17は、
図6と同じ位置での断面を示している。ただし、
図17において、クリップ110については締付リング150を抜粋して示しており、締付リング150以外の部分の図示を省略している。また、処置具本体90についても図示を省略している。
可動片321の弾性変形は、可動片321の遠位端部を支点として行われる。締付リング150が上下の可動片321の対向間隔が最も狭い部分を通過した後は、可動片321は弾性復元し、上下の可動片321の対向間隔は、当初の状態(
図6に示す状態)に戻る。
図18(a)は一対の可動片321が閉じた状態の内ケース30を近位側から視た図であり、
図18(b)は一対の可動片321が最も開いた状態の内ケース30を近位側から視た図である。
なお、
図18(a)及び
図18(b)には締付リング150の外形線を二点鎖線で示している。
図18(a)に示すように、一対の可動片321が閉じた状態では、上下の可動片321の対向間隔(上下の可動片321の傾斜面318同士の間隔は、締付リング150の外径よりも狭い。
【0124】
ここで、
図24(a)及び
図24(b)を用いて、締付リング150の外径D2(
図24(b))と、自然状態(拡径時)における拡径部72の内径D1(
図24(a))との関係について説明する。
スリーブ70は、例えば、
図24(a)に示すように、拡径部72の遠位端からスリーブ本体76に亘って延在するスリット70bにより分断された複数の揺動片70aを有する。そして、複数の揺動片70aの先端部によって拡径部72が構成されている。この場合、拡径部72の内径D1は、複数の揺動片70aの先端部に内接する仮想円(軸方向に対して直交する平面内に位置する仮想円)の直径が、拡径部72の内径D1である。
一例として、スリーブ70は、4つの揺動片70aを周方向において等角度間隔で有している。
自然状態(拡径時)における拡径部72の内径D1は、締付リング150の外径D2以上である。より詳細には、内径D1は、締付リング150の外径D2と略同等であるか、又は、外径D2よりも若干大きい程度に設定されている。
このため、締付リング150は、拡径時における拡径部72の内部に入り込むことが可能である。
ただし、処置具本体90に対してクリップ110を装着する動作を適正に行う際には、締付リング150が拡径部72の内部に入り込むことはなく、拡径部72がシース10内に押し込まれるのに続いて、締付リング150がシース10内に引き込まれる(
図15(a)~
図16(b))。
なお、シース10の内径は、締付リング150の外径D2以上、且つ、縮径時における拡径部72の外径以上であり、より詳細には、シース10の内径は、締付リング150の外径D2及び縮径時における拡径部72の外径と略同等であるか、又は、外径D2及び縮径時における拡径部72の外径よりも若干大きい程度に設定されている。
【0125】
ここで、
図25を用いて、クリップカートリッジが前進規制機構を備えていない場合の課題の一例について説明する。
図25においては、外ケース1040を構成する一対の外ケース構成部品1041のうち上側の外ケース構成部品1041の図示を省略しているとともに、内ケース1030を構成している一対の内ケース構成部品1031のうち上側の内ケース構成部品1031の図示を省略している。更に、
図25においては、処置具本体90については平断面で示しており、その他については平面図で示している。
図25に示す内ケース1030(内ケース構成部品1031)及び外ケース1040(外ケース構成部品1041)は、前進規制機構を備えていない点で、本実施形態に係るクリップカートリッジ200の内ケース30(内ケース構成部品31)及び外ケース40(外ケース構成部品41)と相違しており、その他の点では本実施形態に係るクリップカートリッジ200の内ケース30(内ケース構成部品31)及び外ケース40(外ケース構成部品41)と同様に構成されている。
【0126】
クリップカートリッジが前進規制機構を備えていない場合に、操作ワイヤ20を牽引する操作の際に誤って操作ワイヤ20を遠位側に押し込んでしまうと、締付リング150及びスリーブ70の拡径部72がシース10から再び遠位側に突出し、拡径部72が自然状態すなわち拡径状態となる。
このため、その後に操作ワイヤ20を牽引して拡径部72及び締付リング150をシース10に収納しようとしても、内部に締付リング150が入り込んでしまった拡径部72が外ケース1040の挿通孔1043の遠位端1043aにつかえてしまい、拡径部72及び締付リング150をシース10に収納することができなくなってしまう可能性がある。
なお、
図18(a)に示すように、締付リング150の通過後に一対の可動片321が閉じた状態の内ケース30については、上下の可動片321の対向間隔が締付リング150の外径D2よりも狭い。同様に、締付リング150の通過後に一対の可動片が閉じた状態の内ケース1030については、上下の可動片の対向間隔が締付リング150の外径D2よりも狭い。
このため、誤って操作ワイヤ20を遠位側に押し込んだ際に、締付リング150に押されて内ケース1030が遠位側に移動(すなわち第1位置に向けて移動)し、第2収容領域1042内において、挿通孔1043の遠位端1043aと内ケース1030とが離間した状態となる。よって、第2収容領域1042内において、挿通孔1043の遠位端1043aと内ケース1030との間の領域に、締付リング150及びスリーブ70の拡径部72がシース10から再び遠位側に突出しうる。
【0127】
これに対し、本実施形態によれば、クリップカートリッジ200は、内ケース30が第1位置から第2位置に後退した後で、再び第1位置に前進してしまうことを規制する前進規制機構を備えている。
このため、操作ワイヤ20を牽引する操作の際に誤って操作ワイヤ20を遠位側に押し込んでしまったとしても、締付リング150に押されて内ケース30が遠位側に移動(すなわち第1位置に向けて移動)してしまうことを抑制することができる。よって、第2収容領域42内において、挿通孔43の遠位端43aと内ケース30とが離間した状態となることを抑制でき、第2収容領域42内において、挿通孔43の遠位端43aと内ケース30との間の領域に、締付リング150及びスリーブ70の拡径部72が突出してしまうことも抑制できる。
よって、内部に締付リング150が入り込んでしまった拡径部72が外ケース40の挿通孔43の遠位端43aにつかえてしまうこともない。
つまり、処置具本体90にクリップ110を連結した後で、クリップ110を外ケース40の挿通孔43に引き込むとともに挿通孔43内で処置具本体90のシース10の内部に引き込む動作を、より確実に行うことが可能となる。
【0128】
次に、本実施形態に係るクリップカートリッジシステムについて説明する。
本実施形態に係るクリップカートリッジシステムは、本実施形態に係るクリップカートリッジ200と、処置具本体90と、第1収容領域32に収容されたクリップ110と、を備えるクリップカートリッジシステムである。
【0129】
クリップカートリッジシステムにおいて、処置具本体90は、シース10の内部に収納可能でクリップ連結部50を収容する筒状のスリーブ70を備え、スリーブ70は、弾性的に自己拡開可能な拡径部72と、拡径部72よりも近位側に位置する筒状のスリーブ本体76とを有し、クリップ110は、生体組織を把持する複数のアーム部120と、アーム部120の基端側に設けられた係止部130と、を有するクリップ本体110aと、複数のアーム部120が内部に挿通されており、複数のアーム部120に対して前進することにより複数のアーム部120を締め付けて閉状態とする締付リング150(締付部)と、を有する。
挿通孔43に処置具本体90が挿入された状態で、操作ワイヤ20が前方に押し込まれることにより、クリップ連結部50とスリーブ70の拡径部72とが、シース10から遠位側に突出して第2収容領域42における内ケース30と挿通孔43との間の領域に入り込むとともに、拡径部72が弾性的に拡径し、操作ワイヤ20が更に前方に押し込まれることにより、クリップ連結部50がスリーブ70から遠位側に突出し、クリップ連結部50と係止部130とが連結された連結状態となり、連結状態で操作ワイヤ20が近位側に牽引されることにより、クリップ110がクリップ連結部50により引っ張られるとともに、内ケース30が第1位置から第2位置に後退し、内ケース30が拡径部72を後方に押圧することにより拡径部72が縮径しながらシース10に引き込まれ、クリップ110が内ケース30から離脱してシース10に引き込まれるように、クリップカートリッジシステムは構成されている。
そして、拡径時における拡径部72の内径D1(
図24(a))は、締付リング150(締付部)の外径D2(
図24(b))以上である。
【0130】
〔第2実施形態〕
次に、
図19から
図22(b)を用いて第2実施形態を説明する。
なお、
図21(a)、
図21(b)、
図22(a)及び
図22(b)においては、外ケース40を構成する一対の外ケース構成部品41のうち上側の外ケース構成部品41の図示を省略しているとともに、内ケース30を構成している一対の内ケース構成部品31のうち上側の内ケース構成部品31の図示を省略している。
【0131】
本実施形態に係るクリップカートリッジ200は、以下に説明する点で、上記の第1実施形態に係るクリップカートリッジ200と相違しており、その他の点では、上記の第1実施形態に係るクリップカートリッジ200と同様に構成されている。
【0132】
本実施形態の場合、クリップカートリッジ200は、上記の第1係合部45、第2係合部35及び揺動片422aを有していない。
その代わりに、クリップカートリッジ200は、以下に説明する突起部47(第1係合部)及び切欠形状部37(第2係合部)を有する(
図19、
図20、
図21(a)~
図22(b))。
すなわち、本実施形態の場合、第1係合部は、第2収容領域42を画定する外ケース40の内面から第1方向(上下方向)に突出している突起部47であり、第2係合部は、近位側に向けて切り欠かれた形状に内ケース30の遠位端に形成されている切欠形状部37である。
切欠形状部37は、第2方向(幅方向)における当該切欠形状部37の内寸が遠位側に向けて狭まる括れ部37aを含む。
図22(a)に示すように、内ケース30が第1位置に配置されているときには、突起部47が括れ部37aよりも遠位側に位置する。すなわち、突起部47において、幅方向の寸法が最大の部位である幅広部47aが、括れ部37aにおいて最も括れた部位よりも近位側に位置する。
一方、
図22(b)に示すように、内ケース30が第2位置に配置されているときには、突起部47が括れ部37aよりも遠位側に位置する。すなわち、突起部47において、幅方向の寸法が最大の部位である幅広部47aが、括れ部37aにおいて最も括れた部位よりも遠位側に位置する。
本実施形態の場合も、内ケース30が第1位置から第2位置に後退した後で、再び第1位置に前進してしまうことを規制することができる。
【0133】
より詳細には、外ケース40を構成する上下の外ケース構成部品41のうち、下側の外ケース構成部品41においては、突起部47は、当該外ケース構成部品41の内面(第2収容領域42を画定する内面である底面)から上方に向けて突出している。また、上側の外ケース構成部品41においては、突起部47は、当該外ケース構成部品41の内面(第2収容領域42を画定する内面である天面)から下方に向けて突出している。突起部47は、例えば、第2収容領域42内の遠位端部に配置されており、外ケース構成部品41の(外ケース40の)幅方向における中央部に配置されている。
突起部47の形状は特に限定されないが、本実施形態の場合、突起部47は、例えば、円柱状となっている。
【0134】
また、内ケース30を構成する上下の内ケース構成部品31の各々に切欠形状部37が形成されている。切欠形状部37は、例えば、内ケース構成部品31の(内ケース30の)遠位端部に配置されており、内ケース構成部品31の(内ケース30の)幅方向における中央部に配置されている。切欠形状部37は、例えば、内ケース構成部品31を上下に貫通している。
【0135】
例えば、
図22(a)に示すように、内ケース30が第1位置に配置されているときに、突起部47の全体は括れ部37aよりも近位側において切欠形状部37内に配置されている。更に、突起部47における幅広部47aよりも近位側の部分の外周面が、切欠形状部37の内周面に沿って当接又は近接している。
これにより、内ケース30が第1位置に配置されているときに、切欠形状部37が突起部47に対して安定的に位置決めされるようにでき、ひいては、内ケース30が外ケース40に対して安定的に位置決めされるようにできる。
【0136】
また、
図22(b)に示すように、内ケース30が第2位置に配置されているときに、突起部47の幅広部47aよりも近位側の部分の一部分の外周面は、切欠形状部37において括れ部37aよりも遠位側の部分の内周面に沿って当接又は近接している。
これにより、内ケース30が第2位置に配置されているときに、切欠形状部37が突起部47に対して安定的に位置決めされるようにでき、ひいては、内ケース30が外ケース40に対して安定的に位置決めされるようにできる。
ここで、切欠形状部37の遠位端部は、遠位側に向けて幅広となる形状の拡径形状部37bとなっている。これにより、内ケース30が第2位置に配置されているときに、切欠形状部37が突起部47に対して安定的に位置決めされるようにできる。
【0137】
<第2実施形態の変形例1>
次に、
図23(a)を用いて第2実施形態の変形例1を説明する。
本変形例の場合、内ケース30が(内ケース構成部品31が)切欠形状部37の左右両側にそれぞれスリット48を有する点で、上記の第2実施形態と相違しており、その他の点では、上記の第2実施形態と同様である。
スリット48は、内ケース構成部品31を上下に貫通しているとともに、軸方向に延在している。
内ケース構成部品31がスリット48を有することにより、内ケース構成部品31における切欠形状部37の左右両側の部分が容易に弾性変形できるようになる。このため、内ケース30が第1位置から第2位置に移動して、突起部47が切欠形状部37における括れ部37aよりも近位側の部位から遠位側の部位に移動する際に、突起部47の幅広部47aが容易に括れ部37aを乗り超えることができる。
【0138】
<第2実施形態の変形例2>
次に、
図23(a)及び
図23(b)を用いて第2実施形態の変形例2を説明する。
本変形例の場合、第1実施形態の場合と同様に、内ケース30を後退させて突起部47に対して切欠形状部37を係合させるのに要する力よりも、内ケース30を(再び)前進させて突起部47に対する切欠形状部37の係合状態を解除させるのに要する力の方が大きくなるように、係合機構が構成されている。
これにより、内ケース30が再び第1位置に前進してしまうことを、より確実に規制することができる。
そのような構成を実現するために、突起部47は、例えば、平面視台形状などのように、近位側に向けて幅寸法が拡大する形状となっている。
【0139】
なお、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成される限りにおける種々の変形、改良等の態様も含む。
【0140】
例えば、係合機構の配置や数は、上記の例に限らない。
また、クリップカートリッジ200は、上記の第1実施形態で説明した第1係合部45及び第2係合部35と、上記の第2実施形態又はその変形例で説明した突起部47(第1係合部)及び切欠形状部37(第2係合部)と、を兼ね備えていてもよい。
また、前進規制機構は、係合機構以外の機構、例えば、磁力の作用によって内ケース30が再び第1位置に前進してしまうことを規制する機構であってもよい。また、前進規制機構は、係合機構と、係合機構以外の機構と、を兼ね備えていてもよい。
また、上述の実施形態においては、クリップ連結部50が塊状で、クリップ110の基端の爪状の係止部130に対して収容される例を説明したが、この例とは逆に、爪状に形成されたクリップ連結部50によって、クリップ110の基端の係止部130を包み込むようにして保持するようにしてもよい。
【0141】
なお、本発明のクリップカートリッジ200の各構成要素は、個々に独立した存在である必要はない。複数の構成要素が一個の部材として形成されていること、一つの構成要素が複数の部材で形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等を許容する。
【0142】
上記実施形態は、以下の技術思想を包含するものである。
(1)クリップを収容可能な長尺なシースと、前記クリップに連結されるクリップ連結部を遠位端に有し前記シースの軸方向に進退可能に前記シースに挿通されている操作ワイヤと、を備える長尺な処置具本体に対して前記クリップを連結するために用いられるクリップカートリッジであって、
前記クリップを収容する第1収容領域を有する内ケースと、
前記処置具本体が軸方向に移動可能に挿通される長尺な挿通孔と、前記挿通孔の遠位端に連通しているとともに前記内ケースを前記挿通孔の軸方向に進退可能に収容する第2収容領域と、を有する外ケースと、
を備え、
前記内ケースは、前記第2収容領域内において、前記挿通孔の遠位端と前記内ケースとが離間している第1位置から、前記挿通孔の遠位端と前記内ケースとが近接している第2位置まで、後退可能であり、
当該クリップカートリッジは、前記内ケースが前記第1位置から前記第2位置に後退した後で、再び前記第1位置に前進してしまうことを規制する前進規制機構を備えるクリップカートリッジ。
(2)前記前進規制機構は、前記第2位置において前記内ケースと前記外ケースとを相互に係合させる係合機構を含む(1)に記載のクリップカートリッジ。
(3)前記係合機構は、前記第2収容領域を画定する前記外ケースの内面から内向きに突出している第1係合部と、前記内ケースに形成されていて前記第2位置において前記第1係合部と係合する第2係合部と、を含む(2)に記載のクリップカートリッジ。
(4)前記内ケースを後退させて前記第1係合部に対して前記第2係合部を係合させるのに要する力よりも、前記内ケースを前進させて前記第1係合部に対する前記第2係合部の係合状態を解除させるのに要する力の方が大きい(3)に記載のクリップカートリッジ。
(5)前記第1係合部は、近位側に向けて突出量が増大している(4)に記載のクリップカートリッジ。
(6)前記第1係合部の近位端は、前記挿通孔の軸方向に対して直交する第1直交面となっている(4)又は(5)に記載のクリップカートリッジ。
(7)前記第2係合部は、遠位側に向けて、前記第1係合部側への突出量が増大している(4)から(6)のいずれか一項に記載のクリップカートリッジ。
(8)前記第2係合部の遠位端は、前記挿通孔の軸方向に対して直交する第2直交面となっている(4)から(7)のいずれか一項に記載のクリップカートリッジ。
(9)前記内ケースは、前記第2係合部の近位側に、前記第1係合部を収容可能であるとともに前記挿通孔の軸方向への前記第1係合部の移動を許容する収容凹部を有する(3)から(8)のいずれか一項に記載のクリップカートリッジ。
(10)前記内ケースは、前記挿通孔の軸方向に対して直交する第1方向における当該内ケースの寸法が、当該軸方向における当該内ケースの寸法と、当該軸方向と前記第1方向とに対して直交する第2方向における当該内ケースの寸法と、の双方よりも小さい、扁平形状に形成されており、
前記内ケースは、前記第2方向における前記内ケースの両端にそれぞれ前記第2係合部を有し、
前記外ケースは、前記第2係合部の各々と対応する一対の前記第1係合部を有する(3)から(9)のいずれか一項に記載のクリップカートリッジ。
(11)前記内ケースは、前記挿通孔の軸方向に対して直交する第1方向における当該内ケースの寸法が、当該軸方向における当該内ケースの寸法と、当該軸方向と前記第1方向とに対して直交する第2方向における当該内ケースの寸法と、の双方よりも小さい、扁平形状に形成されており、
前記第1係合部は、前記第2収容領域を画定する前記外ケースの内面から前記第1方向に突出している突起部であり、
前記第2係合部は、近位側に向けて切り欠かれた形状に前記内ケースの遠位端に形成されている切欠形状部であり、
前記切欠形状部は、前記第2方向における当該切欠形状部の内寸が遠位側に向けて狭まる括れ部を含み、
前記内ケースが前記第1位置に配置されているときには、前記突起部が前記括れ部よりも近位側に位置し、
前記内ケースが前記第2位置に配置されているときには、前記突起部が前記括れ部よりも遠位側に位置する(3)又は(4)に記載のクリップカートリッジ。
(12)(1)から(11)のいずれか一項に記載のクリップカートリッジと、
前記処置具本体と、
前記第1収容領域に収容された前記クリップと、
を備えるクリップカートリッジシステム。
(13)前記処置具本体は、前記シースの内部に収納可能で前記クリップ連結部を収容する筒状のスリーブを更に備え、
前記スリーブは、
弾性的に自己拡開可能な拡径部と、
前記拡径部よりも近位側に位置する筒状のスリーブ本体と、
を有し、
前記クリップは、
生体組織を把持する複数のアーム部と、前記アーム部の基端側に設けられた係止部と、を有するクリップ本体と、
前記複数のアーム部が内部に挿通されており、前記複数のアーム部に対して前進することにより前記複数のアーム部を締め付けて閉状態とする締付部と、
を有し、
前記挿通孔に前記処置具本体が挿入された状態で、前記操作ワイヤが前方に押し込まれることにより、前記クリップ連結部と前記スリーブの前記拡径部とが、前記シースから遠位側に突出して前記第2収容領域における前記内ケースと前記挿通孔との間の領域に入り込むとともに、前記拡径部が弾性的に拡径し、
前記操作ワイヤが更に前方に押し込まれることにより、前記クリップ連結部が前記スリーブから遠位側に突出し、前記クリップ連結部と前記係止部とが連結された連結状態となり、
前記連結状態で前記操作ワイヤが近位側に牽引されることにより、前記クリップが前記クリップ連結部により引っ張られるとともに、前記内ケースが前記第1位置から前記第2位置に後退し、前記内ケースが前記拡径部を後方に押圧することにより前記拡径部が縮径しながら前記シースに引き込まれ、前記クリップが前記内ケースから離脱して前記シースに引き込まれるように構成され、
拡径時における前記拡径部の内径は、前記締付部の外径以上である(12)に記載のクリップカートリッジシステム。
(14)前記内ケースを後退させて前記第1係合部に対して前記第2係合部を係合させるのに要する力よりも、前記締付部により前記複数のアーム部を締め付けて閉状態とするのに要する力の大きさの方が大きい(13)に記載のクリップカートリッジシステム。
【符号の説明】
【0143】
10 シース
20 操作ワイヤ
30 内ケース
31 内ケース構成部品
32 第1収容領域
311 板状部
312 突起部
313 孔部
314 凹部
315 側壁
316 隣接壁
317 リング保持凹部
318 傾斜面
319 係止部収容凹部
320 スリット
321 可動片
322 前進規制部
323 切欠形状部
324 外面
35 第2係合部
35a 遠位端
36 収容凹部
37 切欠形状部(第2係合部)
37a 括れ部
37b 拡径形状部
40 外ケース
41 外ケース構成部品
42 第2収容領域
43 挿通孔
43a 遠位端
44 ストッパ部
45 第1係合部
45a 近位端
47 突起部(第1係合部)
47a 幅広部
48 スリット
411 板状部
412 突起部
413 ガイド突起
414 突起部
415 孔部
416 突起部
417 切欠形状部
418 挿通孔構成溝
418a 溝本体
418b 幅広部
419 ストッパ構成部
420 切欠形状部
421 先端壁
422 側壁
422a 揺動片
423 隆起部
424 凹部
425 周囲壁
426 中間突起部
427 孔部
428 係止爪
429 孔部
50 クリップ連結部
51 縊れ部
52 第1傾斜面
54 第2傾斜面
56 支柱部
60 センタリング部
70 スリーブ
70a 揺動片
70b スリット
72 拡径部
74 縮径段差部
76 スリーブ本体
80 伸縮部(伝達部)
82 固着部
84 非固着部
90 処置具本体
92 指掛けリング
94 スライダ
96 本体軸
100 内視鏡用クリップ装置
110 クリップ
110a クリップ本体
120 アーム部
121 太幅部
122 基端部
123 細幅部
124 アーム本体部
125 補強部
126 爪部
130 係止部
132 空間
134 受容部
136 基部
137 凹部
138 端縁
139 底部
140 突起部
142 突片部
150 締付リング(締付部)
200 クリップカートリッジ
1030 内ケース
1031 内ケース構成部品
1040 外ケース
1041 外ケース構成部品
1042 第2収容領域
1043 挿通孔
1043a 遠位端