(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128566
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】ケース付ボンド磁石
(51)【国際特許分類】
H01F 1/055 20060101AFI20240913BHJP
G01D 5/245 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
H01F1/055 180
G01D5/245 110L
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037592
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 翔平
【テーマコード(参考)】
2F077
5E040
【Fターム(参考)】
2F077AA41
2F077AA42
2F077VV03
2F077VV31
5E040AA04
5E040AA06
5E040BB04
5E040BB05
5E040CA01
5E040CA05
5E040CA07
(57)【要約】
【課題】ケースの開口部を塞ぐ封止材(接着剤層)の膜厚のばらつきを小さくでき、ボンド磁石の防錆性が安定したケース付ボンド磁石を提供する。
【解決手段】希土類磁石粉末と熱硬化性樹脂とを含むボンド磁石と、前記ボンド磁石を挿入するケースと、封止材とを備えてなるケース付ボンド磁石である。ケースは、ボンド磁石を受入れるための凹部を備える。凹部は、ボンド磁石を収納する本体部と、開口側の副部とからなり、副部は、ボンド磁石の一部が収納または収納されず、副部の開口部における凹部の深さ方向と直交する面の断面積を、本体部における凹部の深さ方向と直交する面の断面積よりも大きくした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
希土類磁石粉末と熱硬化性樹脂とを含むボンド磁石と、前記ボンド磁石を挿入するケースと、封止材とを備えてなるケース付ボンド磁石であって、前記ケースは、前記ボンド磁石を受入れるための凹部を備え、前記凹部は、前記ボンド磁石を収納する本体部と、開口側の副部とからなり、前記副部は、ボンド磁石の一部が収納または収納されず、前記副部の開口端における凹部の深さ方向と直交する面の断面積を、前記本体部における凹部の深さ方向と直交する面の断面積よりも大きくしたことを特徴とするケース付ボンド磁石。
【請求項2】
前記ケースの凹部の断面積が変化する境界点が前記ボンド磁石の重心より高い位置にあることを特徴とする請求項1に記載のケース付ボンド磁石。
【請求項3】
前記ボンド磁石の空隙率が10%以下であることを特徴とする請求項1に記載のケース付ボンド磁石。
【請求項4】
前記ケースの空隙率が20%以下であることを特徴とする請求項1に記載のケース付ボンド磁石。
【請求項5】
前記封止材の硬化前の常温での粘度が0.01(Pa・s)~1(Pa・s)であることを特徴とする請求項1に記載のケース付ボンド磁石。
【請求項6】
前記ボンド磁石をコンパウンド中の磁粉が体積比率で85%~90%含まれ、かつ樹脂バインダは体積比率で10%~15%含まれるコンパウンドを用いて製造されてなることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のケース付ボンド磁石。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケース付ボンド磁石に関し、特に、非接触で角度を検出するセンサに使用されるケース付ボンド磁石に関する。
【背景技術】
【0002】
希土類合金などの磁石粉末を樹脂バインダで結合して成形したボンド磁石は、樹脂バインダを含む分、バインダレスの焼結磁石より磁気特性は劣るものの、任意の形状に加工が容易であり、その寸法精度にも優れることから、種々の用途に使用されている。なお、樹脂バインダとしては、一般的に、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、PPS樹脂から選択される場合が多い。
【0003】
例えば、非接触で角度を検出するセンサ用途として、自動車分野では、HEV車やEV車のエンジン、インバータ、バッテリーなどの冷却を効率よく行うための冷却水や気体の流路切り換えバルブ、その他、オイルポンプ、燃料ポンプなどのバルブや弁体の開閉度を検知するセンサ磁石として利用され、産業機械分野では、たとえばロボットの関節部やモータ、ギヤなどの角度や回転数検出用のセンサ磁石(センサーマグネット)などに利用されている。
【0004】
希土類磁石粉末をボンド磁石に用いる場合、特に圧縮ボンド磁石は多孔体のため表面積が大きく、また錆びやすい鉄や希土類を含むことから、錆や酸化腐食による磁気特性の劣化のおそれがある。特に、高温高湿環境や、水などの流体と接触する腐食性環境下では顕著となる。このため、磁石表面に、例えば、電着塗装、静電塗装、スプレー塗装などによる樹脂塗膜や、ニッケルメッキなどのメッキ膜を形成することで、上記問題に対処している。
【0005】
特許文献1には、希土類磁石の表面に浸漬法により防錆熱硬化性被膜を形成したボンド磁石の製造方法が提案されている。この製造方法では、浸漬、乾燥・硬化を2~6回繰り返して行い、磁石内空隙に樹脂を含浸させつつ磁石表面に0.005mm~0.05mmの防錆熱硬化性被膜を形成している。
【0006】
また、近年は磁気特性の高性能化が望まれており、磁気特性向上のために磁粉配合量を増加し、樹脂バインダ量を少なくすることが多く、磁石自身の強度の確保が難しくなってきている。そのため、利用する際は磁石に直接ダメージを与えないように、一般に、金属製や樹脂製のケースに挿入して接着固定したり、インサート成形したりすることで磁石を保護して使用される場合が多い。
【0007】
特許文献2には、希土類ボンド磁石の圧粉体をケースに挿入し、その挿入開口部を熱硬化性樹脂で封止した後、ボンド磁石の樹脂バインダと封止用の熱硬化性樹脂を硬化させることで、ケースと磁石の固定を行いつつ、磁石表面を熱硬化性樹脂で保護する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002-260943号公報
【特許文献2】特許6258689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に示す方法では、希土類ボンド磁石の成形後に防錆被膜を形成する処理を追加で行う必要があり、その処理に多くの工数がかかることになる。また、特許文献1に示す方法以外にも電着塗装、静電塗装、スプレー塗装などがあるがいずれも追加工数が掛かることは変わらない。
【0010】
特許文献2に示す方法では、磁石の防錆工程をケースとの固定工程と同時に行うことで、工数削減を達成している。しかしながら、希土類ボンド磁石と封止用の熱硬化性樹脂との濡れ性が悪かったり、樹脂の粘度が高かったりした場合は、硬化処理後に該磁石表面が一部露出したりする。しかも、封止用の熱硬化性樹脂がケースと接触しないまま硬化され、磁石とケースとの固定が不十分となったり防錆性が不足する懸念があった。
【0011】
ところで、ケースのボンド磁石を収納するケースの凹部が、円筒形状である場合、ボンド磁石の上面と凹部の開口端との間に隙間が形成され、この隙間に進入した封入材が、防錆膜を構成することになる。しかしながら、この隙間に進入する封入材(接着剤)の充填量がばらつくおそれがある。充填量にばらつきがあると、防錆膜の膜厚にばらつきが生じ、安定した防錆機能を発揮できない、又は耐久性に劣ることになっていた。
【0012】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みて、ケースの開口部を塞ぐ封止材(接着剤層)の膜厚のばらつきを小さくでき、ボンド磁石の防錆性が安定したケース付ボンド磁石を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のケース付ボンド磁石は、希土類磁石粉末と熱硬化性樹脂とを含むボンド磁石と、前記ボンド磁石を挿入するケースと、封止材とを備えてなるケース付ボンド磁石であって、前記ケースは、前記ボンド磁石を受入れるための凹部を備え、前記凹部は、前記ボンド磁石を収納する本体部と、開口側の副部とからなり、前記副部は、ボンド磁石の一部が収納または収納されず、前記副部の開口端における凹部の深さ方向と直交する面の断面積を、前記本体部における凹部の深さ方向と直交する面の断面積よりも大きくしたものである。
【0014】
本発明のケース付ボンド磁石によれば、副部の開口端における凹部の深さ方向と直交する面の断面積(開口端の開口面積)を、前記本体部における凹部の深さ方向と直交する面の断面積よりも大きくしたので、凹部の内径面を円筒面としたものと比べた場合、ボンド磁石の上面から凹部の開口端までの高さが同一であれば、ボンド磁石の上面から開口端の凹部の容量は、本発明のケース付ボンド磁石のほうが大となる。このため、これらの空間における封止材の充填量が同じであれば、封止材の高さを小さくできる。すなわち、開口端まで封止材を充填する場合、充填量が多くなる。そのため、充填高さのばらつきを小さくできる。この場合、この封止材(接着剤)が硬化することによって、ボンド磁石の表面(上面)の防錆膜となるため、この防錆膜の膜厚の低減を図ることができる。
【0015】
前記ケースの凹部の断面積が変化する境界点が前記ボンド磁石の重心より高い位置にあるのが好ましい。このように構成することにより、凹部に収納されるボンド磁石は、傾くのを有効に防止できる。これに対して、境界点がボンド磁石の重心よりも低ければ、凹部に収納されるボンド磁石は傾くおそれがある。傾けば、ボンド磁石の上面が、凹部の底面(水平面)に対して傾斜することになる。このように、ボンド磁石の上面が傾斜した状態となれば、防錆膜の膜厚が小になるとことが生じたり、ボンド磁石の一部が防錆膜が露出した状態になったりする。しかしながら、境界点がボンド磁石の重心より高い位置にあれば、ボンド磁石の傾斜を防止でき、防錆膜の膜厚が小になることが生じたり、ボンド磁石の一部が防錆膜が露出した状態になったりせず、安定した防錆膜を形成できる。
【0016】
前記ボンド磁石の空隙率が10%以下であるのが好ましい。空隙率が10%以下であれば、磁気特性が高く、膜圧の確保の両立が可能となる。
【0017】
前記ケースの空隙率が20%以下であるのが好ましい。ケースの空隙率が20%を越えれば、封止材がケースの空隙に浸透してボンド磁石の表面に残る割合が少なくなり、安定した防錆膜が形成されないおそれがある。
【0018】
前記封止材の硬化前の常温での粘度が0.01(Pa・s)~1(Pa・s)であるのが好ましい。封止材はボンド磁石をケース内部に封止できるものであればよいので、ケースの空隙とボンド磁石の空隙にそれぞれ浸透しない粘度を持つものが好ましく、具体的には0.01(Pa・s)以上が好ましい。ただし、粘度が大きすぎるとケースとボンド磁石との隙間に入り込みづらく、ボンド磁石側面が露出してしまうことが多いため、1(Pa・s)以下が好ましい。
【0019】
前記ボンド磁石をコンパウンド中の磁粉が体積比率で85%~90%含まれ、かつ樹脂バインダは体積比率で10%~15%含まれるコンパウンドを用いて製造されてなるものが好ましい。ボンド磁石には空隙が含まれており、成形条件により空隙率は変化する。空隙には封止材が浸透する可能性があり、浸透するほど表面に残りにくく、封止材をより多く使用する必要があるため、浸透を少なくするには、空隙率は14%以下が好ましい。この際に磁粉が85%~90%含まれるコンパウンドを用いた場合は、ボンド磁石中の磁粉の体積比率は75%~85%、樹脂バインダの体積比率は9%~15%となる。(ここでの体積比率は、コンパウンド中の体積比率とは異なり、成形および熱処理による樹脂バインダの硬化を経て得られた最終的な成形体中の体積比率である。)
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るケース付ボンド磁石では、ケース端面とボンド磁石端面の間の空間の断面積を大きくすることにより、封止材塗布時の塗布量に対しての液面上昇率、すなわちボンド磁石の防錆膜厚の増加率を小さくすることができる。つまり、塗布量のばらつきがある際に防錆膜厚のばらつきが小さくでき、ねらいの膜厚での生産がより安定し、防錆性が安定したケース付ボンド磁石が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明に係る第1のケース付ボンド磁石の簡略断面図である。
【
図2】本発明に係る第2のケース付ボンド磁石の簡略断面図である。
【
図3】本発明に係る第3のケース付ボンド磁石の簡略断面図である。
【
図4】本発明に係る第4のケース付ボンド磁石を示し、(a)は簡略断面図であり、(b)は簡略平面図である。
【
図5】本発明に係るケース付ボンド磁石の第1の製造方法を示す簡略図である。
【
図6】本発明に係るケース付ボンド磁石の第2の製造方法を示す簡略図である。
【
図7】ケースの凹部の開口部に大径部を有する場合と有さない場合との比較を示し、(a)は大径部を有さない場合の簡略断面図であり、(b)は大径部を有する場合の簡略断面図である。
【
図8】液量と液面高さとの関係を示すグラフ図である。
【
図9】ケースの凹部の内径寸法をボンド磁石の外径寸法よりも比較的大きくとった場合の問題点を示し、(a)はケースとボンド磁石との関係を示す簡略断面図であり、(b)はボンド磁石がケースに対して傾斜している状態の簡略断面図である。
【
図10】防錆膜厚ばらつき、防錆機構評価に用いた試料を示し、(a)は本発明品の簡略断面であり、(b)は従来品の簡略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下本発明の実施の形態を
図1~
図10に基づいて説明する。
【0023】
図1は、本発明に係る第1のケース付ボンド磁石を示し、
図2は、本発明に係る第2のケース付ボンド磁石を示し、
図3は本発明に係る第3のケース付ボンド磁石を示し、
図3は本発明に係る第4のケース付ボンド磁石を示している。本発明に係るケース付ボンド磁石は、希土類磁石粉末と熱硬化性樹脂のボンド磁石1と、ボンド磁石1を挿入するケース2と、円柱形状の封止材3とを備えてなる。すなわち、ケース2は、ボンド磁石1を挿入するための挿入開口部2aを有し、この挿入開口部2aからボンド磁石1からケース2に挿入されて、ボンド磁石1が封止材3にてケース2内に封止されている。
【0024】
希土類ボンド磁石は磁粉と樹脂バインダを含むコンパウンドを圧縮成形して熱硬化、あるいは射出成形することにより得られる。また、磁粉は希土類系であればよく、例えば、Nd-Fe-B系、Sm-Fe-N系、Sm-Co系などである。樹脂バインダはエポキシ樹脂、フェノール樹脂などの熱硬性樹脂またはポリアミド樹脂、PPS樹脂などの熱可塑性樹脂が選択される。成形性の改善のため、必要に応じて潤滑剤等を添加しても良い。
【0025】
ボンド磁石コンパウンドには磁粉は体積比率で65%~92%含まれており、磁粉体積比率が高いほうが磁気特性を高められる。しかしながら、その分、樹脂バインダが少なくなり、強度が低くなる。ここで、高い磁気特性と強度を両立するためには、磁粉はコンパウンドに対して、磁粉は体積比率で85%~90%含まれ、かつ樹脂バインダは体積比率で10%~15%含まれることが好ましい。
【0026】
また、ボンド磁石1には空隙が含まれており、成形条件により空隙率は変化する。空隙には封止材3が浸透する可能性があり、浸透するほど表面に残りにくく、封止材3をより多く使用する必要があるため、空隙率は14%以下が好ましい。この際に磁粉が85~90%含まれるコンパウンドを用いた場合は、ボンド磁石中の磁粉の体積比率は75~85%、樹脂バインダの体積比率は9%~15%である。(ここでの体積比率は、コンパウンド中の体積比率とは異なり、成形および熱処理による樹脂バインダの硬化を経て得られた最終的な成形体中の体積比率である。)さらに磁気特性も高められるため、空隙率を10%以下とすることがより好ましい。
【0027】
ケース2の材質は特に限定しないが、非磁性の金属もしくは樹脂製のものが磁石から発生する磁力線への影響がなく好ましい。金属であれば、粉末冶金法によって作製するケースは生産性が高く好ましい。ケース2にも空隙が含まれ、空隙があるほど本発明の効果が得にくくなるため、ケース2の空隙は20%以下が好ましい。
【0028】
封止材3はボンド磁石1をケース2内部に封止できるものであればよい。ケース2とボンド磁石1の空隙に浸透しない粘度を持つものが好ましく、具体的には0.01(Pa・s)以上が好ましい。ただし、粘度が大きすぎるとケース2とボンド磁石1との隙間に入り込みづらく、ボンド磁石側面が露出してしまうことが多いため、1(Pa・s)以下が好ましい。すなわち、封止材3の粘度としては、硬化前の常温で、0.01(Pa・s)~1(Pa・s)が好ましい。また、無溶剤のものが硬化時に気泡を発生させにくく、防錆性が安定するためさらに好ましい。
【0029】
ところで、本発明では、
図1に示すように、ケース2は、ボンド磁石1を受入れるための凹部5を備え、凹部5は、ボンド磁石1を収納する有底円筒形状の本体部5aと、開口側の円盤形状の副部5bとからなり、副部5bは、ボンド磁石1の一部が収納または収納されず、副部5bの開口端における凹部5の深さ方向と直交する面の断面積(開口端の開口面積)S2を、本体部5aにおける凹部5の深さ方向と直交する面の断面積S1よりも大きく設定される。
【0030】
図1に示すケース付ボンド磁石では、本体部5aは、その内径が軸方向(深さ方向)に沿って、その内径寸法D1が一定である、円筒形状とされ、副部5bは、その内径寸法D2が本体部5aの内径寸法D1よりも大径の周方向切欠き部で構成されたものである。
【0031】
また、
図2に示すケース付ボンド磁石では、副部5bは、本体部5a側から凹部5の開口縁に向かって順次拡径するテーパ孔で構成されたものであるが、この場合も、副部5bの開口端における凹部5の深さ方向と直交する面の断面積S2を、本体部5aにおける凹部5の深さ方向と直交する面の断面積S1よりも大きく設定される。
【0032】
図1では、ボンド磁石1の上面1bの高さ位置を、本体部5aと副部5bとの境界点(境界位置)5cに合わせていたが、
図2では、ボンド磁石1の上面1b高さ位置を、本体部と副部との境界位置に合わせていない。すなわち、
図1では、ボンド磁石1の高さをh1とし、凹部5の底面5dから本体部5aと副部5bとの境界位置(境界点)5cまでの高さh3とした場合に、h1=h3とし、
図2では、ボンド磁石1の高さをh1とし、凹部5の底面5dから本体部5aと副部5bとの境界位置までの高さをh3とし、凹部5の底面5dから凹部5の開口端までの高さをh2とした場合に、h3<h1<h2としている。このため、ボンド磁石1の上面1bが、副部内に位置する状態となって、ボンド磁石1の一部が副部内に収納された状態となる。
【0033】
図3では、副部5bが、本体部5a側から凹部5の開口縁に向かって順次拡径するテーパ孔部5b1と、このテーパ孔部5b1に連設される円筒形状の大径部5b2とからなる。この場合、ボンド磁石1の上面1bが、テーパ部孔5b1内に配置されて、大怪部5b2内には侵入する。すなわち、ボンド磁石1の高さをh1とし、凹部5の底面5dから本体部5aと副部5bとの境界点(境界位置)5cまでの高さをh3とし、凹部5の底面5dから凹部5の開口端までの高さをh2とし、凹部5の底面5dからテーパ孔部5b1と大径部5b2との境界点5b3までの高さをh4とした場合に、h3<h4<h1<h2としている。
【0034】
この場合も、副部5bの開口端における凹部5の深さ方向と直交する面の断面積S2を、本体部5aにおける凹部5の深さ方向と直交する面の断面積S1よりも大きく設定されることになる。
【0035】
図4に示すケース付ボンド磁石は、ケース2の凹部5は、前記した
図1~
図3に示す凹部5と同様、本体部5aと、副部5bとからなる。この場合、ケース2に円筒形状の凹部6を形成するとともに、この凹部6の内径面の上方開口部に相対向する位置に切り欠き凹部7、7を形成することによって、副部5bを形成する。すなわち、本体部5aは、凹部6における切り欠き凹部7、7よりも下方部位にて構成し、副部5bは、凹部6における切り欠き凹部7、7で構成する。従って、この場合も、副部5bの開口端における凹部5の深さ方向と直交する面の断面積S2を、本体部5aにおける凹部5の深さ方向と直交する面の断面積S1よりも大きく設定されることになる。
【0036】
次に、上述した
図1~
図4におけるケース付ボンド磁石の製造方法を説明する。この場合、説明の簡略化のため、凹部5に副部5bを有さないケース2で説明する。また、ケース2内にボンド磁石1を挿入した後、封止材3を塗布する方法(第1の製造方法)と、封止材3を塗布したボンド磁石1をケース2に挿入する方法(第2の製造方法)がある。
図5に第1の製造方法を示し、
図6に第2の製造方法を示している。
【0037】
図5に示す第1の製造方法は、
図5(a)に示すように、ケース2にその挿入開口部2aから、封止材3が塗布されていない状態のボンド磁石1を挿入する。この状態では、ケース2の収納空所4(
図1等の凹部5に対応する)の側面(周囲内壁4a)とボンド磁石1の側面(周囲外壁1a)との間に隙間Saが設けられ、ボンド磁石1の上面1bの高さよりも収納空所4の開口端(挿入開口部2aの開口端)4bよりも高く、ボンド磁石1の上面1bと、収納空所4の開口端4bとの間に隙間Sb(実際には、この隙間は副部5bで構成されることになる。)
【0038】
この状態で、ボンド磁石1の上面1bに封止材3を滴下する。この場合、封止材3として、硬化前の接触角θが50°未満であり、濡れやすいので、
図3(b)(c)に示すように、ボンド磁石表面に自然に広がって、隙間Sa、Sbに封止材が浸入することになる。その後は、所定の温度(例えば、80℃)で処理することで、封止材3を硬化させる。これによって、ケース付ボンド磁石を形成することができる。
【0039】
また、
図6に示す第2の製造方法は、まず、
図6(a)に示すように、ケース2の収納空所4の底面4cに封止材3(を滴下する。次に、
図6(b)に示すように、ケース2にその挿入開口部2aから、封止材3が塗布されていない状態のボンド磁石1を挿入する。これによって、
図6(c)に示すように、封止材3が隙間Sa、Sbに封止材3が浸入することになる。その後は、所定の温度(例えば、 80 ℃)で処理することで、封止材3を硬化させる。これによって、ケース付ボンド磁石を形成することができる。この場合も、ケース2は有底円筒形状とされ、収納空所4としても、円形孔であり、ボンド磁石1が円柱形状とされる。
【0040】
このように、いずれの製造方法であっても、ボンド磁石1の廻りに、封止材3にて防錆被膜が形成されることになる。ところで、封止材3は所定の温度(例えば、80℃)で処理することで硬化させるものであるが、この場合、その雰囲気は大気中などの酸化性雰囲気でも、窒素やアルゴン中などの不活性雰囲気、さらには真空中でも構わない。
【0041】
また、前記製造方法により防錆機能が不足する場合はさらに追加で防錆被膜を形成して複数の層としても良い。例えば、前記方法で形成した防錆被膜に、追加で封止材3を塗布して厚膜とする方法がある。封止材3の種類は前記のアルコキシシラン化合物からなる無機系封止材、各種シランカップリング剤、各種シリコーンオリゴマー、各種シリコーンオイル、各種シリコーン樹脂などが使用できる他、前記のものと相性の良い熱硬化性樹脂も選択できる。
【0042】
次に、
図7(a)(b)に示すように、副部5bを有さない場合と、
図1に示すように副部5bを有する場合とを比較する。この場合、
図7(a)に示すように、副部5bを有さない場合、凹部4に底面4cからボンド磁石1の上面1bまでの高さをh1とし、収納空所4の深さ寸法をh2として、h1<h2とする。また、
図7(b)に示すように、副部5bを有する場合は
図1に示す形状のものを使用する。すなわち、凹部5をその内径寸法D1が軸方向(深さ方向)に沿って均一な円筒形状の本体部5aと、内径寸法D2が本体部5aよりも大きい大径の副部5bとを有する。この
図7(b)に示すケース付ボンド磁石では、ボンド磁石1の上面の高さ位置h1を、本体部5aと副部5bとの境界点5cに合わせ、この高さをh3=h1とし、本体部5aと副部5bとで構成される凹部5の深さ寸法をh2とした場合に、h1<h2とする。
【0043】
そして、
図7(a)のh1及びh2と、
図7(b)のh1及びh2とを一致させている。また、
図7(a)の凹部4における、深さ方向に直交する面の断面積S1aを、
図7(b)の凹部5の本体部5aにおける、深さ方向に直交する面の断面積S1と同じに設定し、
図7(a)及び
図7(b)ともに、外径寸法Dである短円円柱形状のボンド磁石を用いた。さらに
図7(b)では、副部5bにおける、深さ方向に直交する面の断面積S2は、断面積S1bよりも大きく設定されるが、この場合、0.6≦S1/S2≦0.8程度に設定される。
【0044】
図7(a)(b)における封止材の充填量(液量)と液面との関係を
図8のグラフ図に示し、大径の副部5bを有さないもの(従来品と呼ぶ)を破線で示し、大径の副部5aを有するもの(発明品と呼ぶ)を実線で示している。このグラフ図からわかるように、発明品では、従来品に比べて、h1とh2との間の空間で、発明品では、封止材3の充填量(液量)に対して充填高さの上昇を抑えることができる。言い換えると、h2の高さまで、封止材3を充填するのに、多くの液量を必要とするのであって、液量をX軸とし、液面高さをY軸とした場合、h1とh2との間の、従来品の液量と、液面高さとの関係は、h1の高さ位置を原点とすれば、Y=aXとなり、発明品の液量と、液面高さとの関係は、h1の高さ位置を原点とすれば、Y=bXとなり、a>bとなり、h2の高さに封止材3が充填されるまで、大きくの液量を必要とすることになる。
【0045】
このため、副部5bの開口端における凹部5の深さ方向と直交する面の断面積S2を、本体部5aにおける凹部5の深さ方向と直交する面の断面積S1よりも大きく設定されることにより、封止材の充填高さのばらつきを有効に低減することができる。また、この副部5bの空間の封止材充填層は硬化後にボンド磁石表面の防錆膜となるため、防錆膜の膜厚のばらつきを低減することができることになる。
【0046】
また、
図1以外の
図2~
図4に示すケース付ボンド磁石であっても、副部5bの開口端における凹部5の深さ方向と直交する面の断面積S2を、本体部5aにおける凹部5の深さ方向と直交する面の断面積S1よりも大きく設定されているので、防錆膜の膜厚のばらつきを低減することができることになる。
【0047】
図1~
図4に示す本発明に係るケース付ボンド磁石では、ケース端面2bとボンド磁石端面1bの間の空間の断面積を大きくすることにより、封止材塗布時の塗布量に対しての液面上昇率、すなわちボンド磁石1の防錆膜厚の増加率を小さくすることができる。つまり、塗布量のばらつきがある際に防錆膜厚のばらつきが小さくでき、ねらいの膜厚での生産がより安定し、防錆性が安定したケース付ボンド磁石が得られる。
【0048】
ボンド磁石1の空隙率が10%以下であるのが好ましい。空隙率が10%以下であれば、磁気特性が高く、膜圧の確保の両立が可能となる。
【0049】
ケース2の空隙率が20%以下であるのが好ましい。ケースの空隙率が20%を越えれば、封止材がケース2の空隙に浸透してボンド磁石の表面に残る割合が少なくなり、安定した防錆膜が形成されないおそれがある。
【0050】
封止材3の硬化前の常温での粘度が0.01(Pa・s)~1(Pa・s)であるのが好ましい。封止材はボンド磁石をケース内部に封止できるものであればよい。ケースの空隙とボンド磁石の空隙にそれぞれ浸透しない粘度を持つものが好ましく、具体的には0.01(Pa・s)以上が好ましい。ただし、粘度が大きすぎるとケースとボンド磁石との隙間に入り込みづらく、ボンド磁石側面が露出してしまうことが多いため、1(Pa・s)以下が好ましい。
【0051】
ボンド磁石1をコンパウンド中の磁粉が体積比率で85%~90%含まれ、かつ樹脂バインダは体積比率で10%~15%含まれるコンパウンドを用いて製造されてなるものである。ボンド磁石には空隙が含まれており、成形条件により空隙率は変化する。空隙には封止材が浸透する可能性があり、浸透するほど表面に残りにくく、封止材をより多く使用する必要があるため、空隙率は14%以下が好ましい。この際に磁粉が85~90%含まれるコンパウンドを用いた場合は、ボンド磁石中の磁粉の体積比率は75~85%、樹脂バインダの体積比率は9~15%である。(ここでの体積比率は、コンパウンド中の体積比率とは異なり、成形および熱処理による樹脂バインダの硬化を経て得られた最終的な成形体中の体積比率である。)
【0052】
ところで、凹部5の開口側の断面積を大きくすれば、防錆膜の膜厚のばらつきを低減することができることになる。このため、
図9(a)に示すように、大径の凹部5Aを形成したものとするこが考えられる。しかしながら、このような場合、
図1に示す本発明に係る凹部5の本体部5aの内径寸法よりも凹部5Aの内径寸法が大きく、ボンド磁石1の周囲外壁1a側の隙間Saが大きくなる。このため、封止材3を充填し硬化させる工程において、
図9(b)に示すように、凹部5A内で傾斜する可能性がある。このように傾いた状態で、封止材3が硬化すれば、ボンド磁石上面の防錆膜の膜厚が不均一になり、薄膜になる箇所が発生したり、ボンド磁石の一部が防錆膜から露出したりして、防錆性が低下するおそれがある。
【0053】
しかしながら、各実施形態において、ケース2の凹部5には、ボンド磁石1の軸方向高さの途中、もしくは全体がボンド磁石1に沿うような壁面(最近接する面)を設ける。すなわち、凹部5の底面5d側の断面積S1は凹部5の開口側端面の断面積S2に対して小さい。これにより、工程中にボンド磁石1に外力が加わった場合でも傾くのを防止することができる。また、凹部5の断面積が変わる境界点5cはボンド磁石1の重心G(
図1参照)より高い位置にある設定とすることにより、有効に傾くのを防止できる。
【0054】
このように、ケース1の凹部5の断面積Sが変化する境界点5cがボンド磁石1の重心Gより高い位置にあるように構成することにより、凹部5に収納されるボンド磁石1は、傾くのを有効に防止できる。このため、境界点5cがボンド磁石1の重心Gより高い位置にあれば、ボンド磁石1の傾斜を防止でき、防錆膜の膜厚が小になることが生じたり、ボンド磁石1の一部が防錆膜が露出した状態になったりせず、安定した防錆膜を形成できる。
【0055】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく種々の変形が可能であって、本ケース付ボンド磁石は、車載メーター、エアコン、カラーコピー機のトナー転写で用いられるマグネットロールなどスピンドルモーターに限らず車載用、家電用、事務機器用などに用いることができる。
【0056】
また、
図1に示すケース付ボンド磁石では、ボンド磁石1の上面1b位置を、凹部5の本体部5aと副部5bとの境界点5cに一致させていたが、ボンド磁石1の上面1b位置が、凹部5の副部5b内にあっても、凹部5の副部5bに侵入しないものであってもよい。すなわち、ボンド磁石1の上面1bの高さをh1とし、凹部5の本体部5aと副部5bとの境界点5cの高さをh3とし、副部5bの開口端の高さをh2としたときに、h1=h3であっても、h1>h3であっても、h1<h3であってもよい。
【0057】
また、
図2に示すように、副部がテーパ孔部で構成される場合、h1=h3であっても、h1>h3であっても、h1<h3であってもよい。
図3に示すように、副部5bがテーパ孔部5b1と大径部5b2とで構成されている場合、h1=h3であっても、h1>h3であっても、h1<h3であっても、h1=h4であっても、h1<h4であってもよい。
【0058】
なお、いずれの場合であっても、h1=h2やh1>h2とならないようにするのが好ましい。すなわち、h1=h2やh1>h2では、ボンド磁石1の上面1bが封止材3から露出することになるからである。
【0059】
図4におけるケース付ボンド磁石では、切り欠き凹部7を形成することで、副部5bを構成していたが、切り欠き凹部7の形状として、図例では、平面視において、一部に欠損部を有する円形状であったが、この図例のものに限るものではなく、矩形状や多角形状等種々の形状のもので構成できる。また、切り欠き凹部7の数としても2個に限るものではなく、さらに1個の切り欠き凹部7の断面積の変更も任意である。
【0060】
また、ボンド磁石1としては、凹部5の深さ方向と直交する面の断面積としては、80mm2以下とするのが好ましい。80mm2を越えれば、副部5bの開口端における凹部5の深さ方向と直交する面の断面積を、本体部5aにおける凹部5の深さ方向と直交する面の断面積よりも大きくすることなく、膜厚のばらつきを小さくすることが可能である。
【実施例0061】
〈防錆膜厚評価〉
封止材の防錆膜の膜厚の評価を行った。この場合、表1に示すように、実施品1~12、比較品1~11の全23種類について行った。実施品1~6、及び比較品1~5までは、封止材3として、二液性エポキシ樹脂を用い、実施品7~12、比較品6~9までは、封止材3として、嫌気性接着剤を用いた。比較品10は、一液性エポキシ樹脂を用い、比較品11は、一液性防錆材を用いた。粘度としては、実施品1~6、及び比較品1~5までは、0.5(Pa・s)であり、実施品7~12、比較品6~9までは、0.1(Pa・s)であり、比較品10は、5(Pa・s)であり、比較品11は、0.009(Pa・s)である。
【0062】
また、実施品および比較品での、評価に用いるボンド磁石はNd-Fe-B系の磁粉とビスフェノールA型エポキシ樹脂からなるコンパウンドを圧縮成形し、所定の熱処理条件(例えば、180℃)でエポキシ樹脂を硬化させ作製した。ボンド磁石1は円柱形状であり、この時点では防錆処理は行っていない。ケース2はSUS304の粉末を用いて粉末冶金法により作製した。ケース2は一端に磁石を挿入する開口部がある概円柱形状である。
【0063】
ボンド磁石1とケース2の空隙率をまず算出した。各原料の真密度にその配合割合を掛けて算出した値を真密度とし、作製後の実測の密度との比率から求めた。ボンド磁石1の空隙率は、実施品1は、6%、実施品2は、7%、実施品3及び実施品4は、8%、実施品5は、14%、実施品6は、12%、比較品1は、7%、比較品2は、10%、比較品3は、13%、比較品4は、16%、比較品5は、15%であり、実施品7は、7%、実施品8は、6%、実施品9は、9%、実施品10は、10%、実施品11は、14%、実施品12は13%、比較品6は、8%、比較品7は、9%であり、比較品8は、13%、比較品9は、16%、比較品10は、9%、比較品11は8%である。ケース2の空隙率は、実施品1は、17%、実施品2は、20%、実施品3は、17%、実施品4は、18%、実施品5は、16%、実施品6は、19%、比較品1は、22%、比較品2は、23%、比較品3は、22%、比較品4は、17%、比較品5は、19%であり、実施品7は、18%、実施品8は、20%、実施品9は、17%、実施品10は、19%、実施品11は、18%、実施品12は、19%、比較品6は、22%、比較品7は、21%であり、比較品8は、22%、比較品9は、17%、比較品10は、17%、比較品11は18%である。
【0064】
空隙率の測定後は、ケース2の開口部にボンド磁石1を挿入し、その上面1bから封止材3を滴下して塗布した。その後、所定の熱処理条件(例えば、120℃)で封止材を硬化させ、ケース2とボンド磁石1とを固定し、かつボンド磁石表面に防錆膜を形成した。なお、ケース2の凹部5の壁面(内径面)とボンド磁石1の周囲外壁1aとの隙間Saは0.2mmである。また、事前に東京計器(株)製のB型粘度計B8Lを用いて、25℃で硬化前の状態の封止材の粘度を測定した。
【0065】
ボンド磁石表面の防錆膜膜厚はケース開口部端面を基準とした封止前後の磁石中央部の深さをソニーマグネスケール(株)製のDZ-500に備え付けたソニーマグネスケール(株)製のLY-101で測定し、その差分を膜厚とした。
【0066】
ボンド磁石表面の防錆膜膜厚は、実施品1は、0.120mm、実施品2は、0.112mm、実施品3は、0.116mm、実施品4は、0.101mm、実施品5は、0.042mm、実施品6は、0.037mm、比較品1は、0.016mm、比較品2は、0.014mm、比較品3は、0.005mm、比較品4は、0.009mm、比較品5は、0.011mmであり、実施品7は、0.133mm、実施品8は、0.134mm、実施品9は、0.106mm、実施品10は、0.110mm、実施品11は、0.060mm、実施品12は0.067mm、比較品6は、0.018mm、比較品7は、0.010mm、比較品8は、0.005mm、比較品9は、0.003mmであり、比較品10は、0.130mm、比較品11は、0.008mmである。
【0067】
磁気特性は完成品をコンデンサ着磁器により飽和着磁した後に、所定の位置の磁束密度を(株)DMT製のマグネットアナライザMAD-300を用いて測定した。その結果を表1に示した。表1において、磁気特性において、二重丸は高いこと、一重丸(〇)は必要分は満足すること、バツ(×)は不足することを示している。
【表1】
【0068】
表1からわかるように、二液性エポキシ樹脂A及び嫌気性接着剤Bについては、ケースの空隙率が20%以下のもの、かつボンド磁石が14%以下のものについては膜厚が0.1mm前後で形成されていることを確認した。逆に、ケースの空隙率が21%以上のもの、もしくはボンド磁石が15%以上のものは膜厚が0.02mm以下程度であり、実施品の0.1mm前後とは差が大きい。滴下した封止材が空隙に浸透し、表面に残る割合が少なくなっていることが確認できる。
【0069】
一液性エポキシ樹脂Cについては、膜厚は実施品と同程度に形成されているが、粘度が高いことでケース2とボンド磁石1の隙間に入り込みにくく、ボンド磁石表面が露出している部分を確認した。一液性防錆塗料Dについては、ボンド磁石1やケース2の空隙率が高くても、粘度が低いことでケースやボンド磁石に浸透し、表面にほとんど膜が形成されない結果であった。
【0070】
また、ボンド磁石1の空隙率が11%~14%のものが十分な磁束密度を有していることは確認したが、空隙率が10%以下のものは磁気特性がさらに高く膜厚の確保と両立できることを確認した。
また、ケース2の凹部4,5にボンド磁石1を挿入した状態で、封止材を±7mgのばらつきの範囲で塗布し、所定の熱処理で封止材を硬化させ、ケース2とボンド磁石1を固定し、ボンド磁石表面の防錆膜を形成した。
膜厚はケース凹部端面を基準とした封止前後の磁石中央部の深さをソニーマグネスケール(株)製のDZ-500に備え付けたソニーマグネスケール(株)製のLY-101で測定し、その差分を膜厚とし、作製した試料群の膜厚の標準偏差を膜厚ばらつきとした。
次に、作製したケース付ボンド磁石を用いて、その防錆機能を耐食性試験により評価した。試験条件はJIS Z2371:2015で示される中性塩水噴霧試験に準拠し、48時間実施した。試験完了後は、水で試料を洗浄し、水分をよく拭き取った。その後、ボンド磁石表面をマイクロスコープで確認し、錆の存在有無を判断した。
防錆膜(ボンド磁石の上面を被覆する被覆層)の平均膜厚は、実施品13では0.089mmであり、実施品14では0.105mmであり、比較品12では0.116mmであり、比較品13では、0.075mmであった。また、膜厚ばらつきは、実施品13では0.056mmであり、実施品14では0.049mmであり、比較品12では0.061mmであり、比較品13では、0.032mmであった。
比率(凹部端面の断面積に対する凹部の底面の断面積の比率)は、比較品12を基準として、実施品13では-8%となり、実施品14では-20%となり、比較品13では-48%となった。