(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024012857
(43)【公開日】2024-01-31
(54)【発明の名称】機器の設置方法
(51)【国際特許分類】
E04B 1/348 20060101AFI20240124BHJP
【FI】
E04B1/348 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022114623
(22)【出願日】2022-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100161230
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 雅博
(72)【発明者】
【氏名】石田 雅之
(57)【要約】
【課題】建物ユニットの天井部に下がり天井を設けなくても、その天井部に機器を設置した状態で建物ユニットを好適に搬送することができる機器の設置方法を提供する。
【解決手段】建物ユニットの搬送前に、換気装置30の各フランジ部45の孔部に固定ねじ48を下方から挿通し支持部材40の各固定駒42の孔部にねじ込むとともに、それらねじ込んだ各固定ねじ48の頭部48bの上に各フランジ部45を載置する。その後、フランジ部45と固定駒42との間にスペーサ50を配置し、固定ねじ48を締め込むことでフランジ部45をスペーサ50を介して固定駒42に仮固定する。建物ユニットの搬送後、各固定ねじ48を緩め、フランジ部45と固定駒42との間からスペーサ50を取り外す。その後、各固定ねじ48を上方へ締め込むことにより、各固定ねじ48の頭部48bに載置された各フランジ部45を換気装置30とともに押し上げ、各固定駒42に固定する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物ユニットの天井部において隣り合う一対の天井梁の間に機器を設置する際の設置方法であって、
前記機器には、互いに反対側に向けて側方に突出する一対のフランジ部が設けられ、
前記各フランジ部には、上下方向に貫通する第1孔部が形成され、
前記各天井梁には、前記各天井梁の間の側に位置する固定部を有した支持部材が取り付けられ、
前記各支持部材の前記固定部には、下方に開口された第2孔部が形成され、
前記建物ユニットを建物の施工現場へ搬送する前の工程として、
前記各支持部材の前記固定部の下方に前記各フランジ部がそれぞれ位置する状態で、前記機器を前記各固定部の間に配置する機器配置工程と、
前記機器配置工程による配置状態で、前記各フランジ部の前記第1孔部に長尺の締結具を下方から挿通して前記各固定部の前記第2孔部にそれぞれねじ込むとともに、それらねじ込んだ前記各締結具の下端部に形成された頭部の上に前記各フランジ部をそれぞれ載置する機器載置工程と、
前記機器載置工程の後、前記機器を挟んだ両側における前記フランジ部と前記固定部との間にそれぞれスペーサを前記締結具を回避した状態で配置し、その配置状態で前記各締結具を締め込むことにより前記各フランジ部を前記固定部に前記スペーサを介して仮固定する仮固定工程と、を備え、
前記建物ユニットを建物の施工現場へ搬送した後の工程として、
前記各締結具を緩め、前記機器を挟んだ両側における前記フランジ部と前記固定部との間からそれぞれ前記スペーサを取り外すスペーサ取り外し工程と、
前記スペーサ取り外し工程の後、前記各締結具を上方に向けて締め込むことにより前記各締結具の前記頭部に載置された前記各フランジ部を前記機器とともに上方に押し上げるとともに、それら各フランジ部を前記固定部に当接させた状態で当該固定部に固定する本固定工程と、を備える、機器の設置方法。
【請求項2】
前記支持部材は、
前記天井梁に沿って配置され、当該天井梁に固定される長尺状の梁固定材と、
前記梁固定材の長手方向に間隔をおいて配置され、それぞれ前記梁固定材に固定されている複数の前記固定部と有しており、
前記フランジ部には、前記複数の固定部に対応させて複数の前記第1孔部が形成され、
前記機器配置工程の前に、前記支持部材の前記梁固定材を、前記各固定部が前記各天井梁の間の側に位置するように前記天井梁に取り付ける支持部材取付工程を備え、
前記機器載置工程では、前記フランジ部の前記各第1孔部にそれぞれ前記締結具を挿通して前記支持部材の前記各固定部の前記第2孔部にねじ込み、それらねじ込んだ複数の締結具の前記頭部に跨る状態で前記フランジ部を載置し、
前記仮固定工程では、前記支持部材の前記各固定部と前記フランジ部との間にそれぞれ前記スペーサを配置し、それらのスペーサを介して前記フランジ部を前記支持部材の前記各固定部に仮固定し、
前記スペーサ取り外し工程では、前記各固定部と前記フランジ部との間からそれぞれ前記スペーサを取り外し、
前記本固定工程では、前記複数の締結具をそれぞれ締め込むことにより前記フランジ部を押し上げ前記支持部材の前記各固定部に固定する、請求項1に記載の機器の設置方法。
【請求項3】
前記スペーサは、互いに離間して配置されることで互いの間に前記締結具を挿通可能な挿通空間を形成する一対のスペーサ部と、前記挿通空間の外側で前記各スペーサ部を連結する連結部とを有しており、
前記仮固定工程では、前記挿通空間に前記締結具を挿通した状態で前記各スペーサ部を前記フランジ部と前記固定部との間に配置し、その配置状態で前記締結具を締め込むことにより前記フランジ部を前記各スペーサ部を介して前記固定部に仮固定する、請求項1又は2に記載の機器の設置方法。
【請求項4】
前記仮固定工程による仮固定状態では、前記機器が前記建物ユニットの上端よりも上方に突出しない状態で配置される、請求項1に記載の機器の設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機器の設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ユニット式建物には、屋内の換気を行う換気装置が設置される場合がある。特許文献1には、換気装置が、ユニット式建物を構成する建物ユニットの天井部に設置された構成が開示されている。特許文献1の構成では、建物ユニットの天井部に、他の天井よりも低い位置に配置された下がり天井が設けられており、その下がり天井の上方の天井裏空間に換気装置が設置されている。かかる構成では、換気装置を建物ユニットの上端よりも上方に突出することなく設置することができる。そのため、換気装置をユニット製造工場において建物ユニットの天井部に設置し、その設置状態で建物ユニットを建物を施工する施工現場へ好適に搬送することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1の構成では、建物ユニットの天井の一部が下がり天井になっているため、それにより、屋内の開放感が損なわれる等の問題が生じるおそれがある。
【0005】
また、建物ユニットに下がり天井を設けず、通常高さの天井の上方に換気装置を設置する場合には、換気装置が建物ユニットの上端よりも上方に大きく突出した状態で設置されることになる。そのため、この場合には、換気装置を建物ユニットの天井部に設置した状態で、建物ユニットを施工現場に搬送するのが困難になるおそれがある。
【0006】
なお、これらの問題は、換気装置を建物ユニットの天井部に設置する場合だけでなく、空調装置等、換気装置以外の機器を建物ユニットの天井部に設置する場合にも同様に生じうる問題である。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、建物ユニットの天井部に下がり天井を設けなくても、その天井部に機器を設置した状態で建物ユニットを好適に搬送することができる機器の設置方法を提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決すべく、第1の発明の機器の設置方法は、建物ユニットの天井部において隣り合う一対の天井梁の間に機器を設置する際の設置方法であって、前記機器には、互いに反対側に向けて側方に突出する一対のフランジ部が設けられ、前記各フランジ部には、上下方向に貫通する第1孔部が形成され、前記各天井梁には、前記各天井梁の間の側に位置する固定部を有した支持部材が取り付けられ、前記各支持部材の前記固定部には、下方に開口された第2孔部が形成され、前記建物ユニットを建物の施工現場へ搬送する前の工程として、前記各支持部材の前記固定部の下方に前記各フランジ部がそれぞれ位置する状態で、前記機器を前記各固定部の間に配置する機器配置工程と、前記機器配置工程による配置状態で、前記各フランジ部の前記第1孔部に長尺の締結具を下方から挿通して前記各固定部の前記第2孔部にそれぞれねじ込むとともに、それらねじ込んだ前記各締結具の下端部に形成された頭部の上に前記各フランジ部をそれぞれ載置する機器載置工程と、前記機器載置工程の後、前記機器を挟んだ両側における前記フランジ部と前記固定部との間にそれぞれスペーサを前記締結具を回避した状態で配置し、その配置状態で前記各締結具を締め込むことにより前記各フランジ部を前記固定部に前記スペーサを介して仮固定する仮固定工程と、を備え、前記建物ユニットを建物の施工現場へ搬送した後の工程として、前記各締結具を緩め、前記機器を挟んだ両側における前記フランジ部と前記固定部との間からそれぞれ前記スペーサを取り外すスペーサ取り外し工程と、前記スペーサ取り外し工程の後、前記各締結具を上方に向けて締め込むことにより前記各締結具の前記頭部に載置された前記各フランジ部を前記機器とともに上方に押し上げるとともに、それら各フランジ部を前記固定部に当接させた状態で当該固定部に固定する本固定工程と、を備える。
【0009】
第1の発明によれば、建物ユニットが建物の施工現場へ搬送される前に、機器配置工程、機器載置工程及び仮固定工程が行われる。これらの工程により、機器の各フランジ部が、フランジ部の上方に配置される各支持部材の固定部にスペーサを介して仮固定される。この仮固定状態では、機器の各フランジ部が固定部に対してスペーサの高さ寸法分だけ低い位置に配置されるため、機器を比較的低位に配置することができる。そのため、機器が建物ユニットの上端よりも上方に突出するのを抑制することができる。これにより、建物ユニットの天井部に機器を設置した状態で、建物ユニットを施工現場へ好適に搬送することができる。
【0010】
また、建物ユニットが施工現場へ搬送された後は、スペーサ取り外し工程と本固定工程とが行われる。これらの工程により、スペーサが取り外され、各フランジ部が各支持部材の固定部に直接固定される。この本固定状態では、スペーサの高さ寸法分だけ、機器が仮固定状態よりも高位に配置される。そのため、機器を通常高さの天井よりも上方に配置することが可能となる。これにより、下がり天井を設けなくても、建物ユニットの天井部に機器を設置することが可能となる。
【0011】
第2の発明の機器の設置方法は、第1の発明において、前記支持部材は、前記天井梁に沿って配置され、当該天井梁に固定される長尺状の梁固定材と、前記梁固定材の長手方向に間隔をおいて配置され、それぞれ前記梁固定材に固定されている複数の前記固定部と有しており、前記フランジ部には、前記複数の固定部に対応させて複数の前記第1孔部が形成され、前記機器配置工程の前に、前記支持部材の前記梁固定材を、前記各固定部が前記各天井梁の間の側に位置するように前記天井梁に取り付ける支持部材取付工程を備え、前記機器載置工程では、前記フランジ部の前記各第1孔部にそれぞれ前記締結具を挿通して前記支持部材の前記各固定部の前記第2孔部にねじ込み、それらねじ込んだ複数の締結具の前記頭部に跨る状態で前記フランジ部を載置し、前記仮固定工程では、前記支持部材の前記各固定部と前記フランジ部との間にそれぞれ前記スペーサを配置し、それらのスペーサを介して前記フランジ部を前記支持部材の前記各固定部に仮固定し、前記スペーサ取り外し工程では、前記各固定部と前記フランジ部との間からそれぞれ前記スペーサを取り外し、前記本固定工程では、前記複数の締結具をそれぞれ締め込むことにより前記フランジ部を押し上げ前記支持部材の前記各固定部に固定する。
【0012】
第2の発明によれば、支持部材が複数の固定部を有し、それら各固定部に機器のフランジ部が固定されるため、機器を安定した状態で設置することができる。また、支持部材は、長尺状の梁固定材に複数の固定部が固定されてなるため、梁固定材を天井梁に取り付けることで複数の固定部を一挙に配設することができる。そのため、複数の固定部を有する構成にあって、それら固定部の配設作業を容易に行うことができる。
【0013】
ところで、機器の仮設置に用いる各スペーサは、本設置の際に取り外されるため、それら取り外されたスペーサを他の建物ユニットにおける機器の仮設置の際に再利用することが考えられる。この点、上記の構成によれば、支持部材の各固定部とフランジ部との間にそれぞれスペーサが個別に配置されているため、各スペーサをコンパクトに形成することができる。そのため、取り外したスペーサを再利用すべく、スペーサを保管等する際に好都合となっている。
【0014】
第3の発明の機器の設置方法は、第1又は第2の発明において、前記スペーサは、互いに離間して配置されることで互いの間に前記締結具を挿通可能な挿通空間を形成する一対のスペーサ部と、前記挿通空間の外側で前記各スペーサ部を連結する連結部とを有しており、前記仮固定工程では、前記挿通空間に前記締結具を挿通した状態で前記各スペーサ部を前記フランジ部と前記固定部との間に配置し、その配置状態で前記締結具を締め込むことにより前記フランジ部を前記各スペーサ部を介して前記固定部に仮固定する。
【0015】
第3の発明によれば、締結具を挟んだ両側で各スペーサ部がフランジ部と固定部との間に挟み込まれる。そのため、フランジ部を安定した状態で固定部に仮固定することができる。また、締結具を挟んだ両側にそれぞれ個別にスペーサを配置しても同様の効果は得られるが、その場合、仮固定の作業が面倒になると考えられる。その点、上記の構成によれば、締結具を挟んだ両側に各スペーサ部を一挙に配置できるとともに、各スペーサ部の間に締結具が入り込むことで各スペーサ部(ひいてはスペーサ)にずれも生じにくく、仮固定の作業を容易に行うことが可能となる。
【0016】
第4の発明の機器の設置方法は、第1の発明において、前記仮固定工程による仮固定状態では、前記機器が前記建物ユニットの上端よりも上方に突出しない状態で配置される。
【0017】
第4の発明によれば、仮固定状態において機器が建物ユニットの上端よりも上方に突出しないため、建物ユニットの搬送の際、機器が邪魔になることがない。そのため、建物ユニットを施工現場へより好適に搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】(a)が換気装置の本設置構造を正面側から見た断面図であり、(b)が側面側から見た断面図である。
【
図2】(a)が換気装置の仮設置構造を正面側から見た断面図であり、(b)が側面側から見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明を具体化した一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、複数の建物ユニットが互いに組み合わせられることで構成されるユニット式建物において、いずれかの建物ユニットの天井部に換気装置が設置されている。そして、その換気装置を建物ユニットの天井部に設置する際の設置方法として、本発明を具体化している。以下ではまず、建物ユニット20の構成について
図4を用いて簡単に説明する。なお、
図4は、建物ユニット20の構成を示す斜視図である。
【0020】
図4に示すように、建物ユニット20は、その四隅に配設される4本の柱21と、各柱21の上端部及び下端部をそれぞれ連結する各4本の天井大梁22及び床大梁23とを備えている。それら柱21、天井大梁22及び床大梁23により直方体状の枠体が形成されている。柱21は四角筒状の角形鋼よりなる。また、天井大梁22及び床大梁23は断面コ字状の溝形鋼よりなり、その開口部を水平方向の内側に向けて配置されている。
【0021】
建物ユニット20の長辺部の相対する天井大梁22の間には、所定間隔で複数の天井小梁25が架け渡されている。また、建物ユニット20の長辺部の相対する床大梁23の間には、所定間隔で複数の床小梁26が架け渡されている。例えば、天井小梁25はリップ溝形鋼よりなり、床小梁26は角形鋼よりなる。天井小梁25によって天井面材27が支持され、床小梁26によって床面材28が支持されている。
【0022】
建物ユニット20は、ユニット製造工場において製造され、製造後、トラック等の搬送手段により建物の施工現場に搬送されるようになっている。そして、施工現場では、搬送された各建物ユニット20が所定の設置位置に設置されるとともに、互いに連結されることで建物が構築されるようになっている。
【0023】
続いて、建物ユニット20の天井部に設置される換気装置30の設置構造について
図1に基づき説明する。
図1は、(a)が換気装置30の設置構造(本設置構造)を正面側から見た断面図であり、(b)が側面側から見た断面図である。なお、
図1(b)では、説明の便宜上、天井小梁25を二点鎖線で示しており、また野縁29及び天井面材27の図示を省略している(この点は、後述する
図2(b)も同様である。)。
【0024】
図1(a)及び(b)に示すように、建物ユニット20の天井部には、各天井小梁25の下面側に天井面材27が野縁29を介して取り付けられている。野縁29は、天井小梁25の長手方向に延びる木製の長尺材であり、天井小梁25の下面に取り付けられている。また、天井面材27は、石膏ボードにより形成され、例えば石膏ボードが2枚重ねされることにより形成されている。天井面材27は、各野縁29の下面にビスにより取り付けられている。なお、天井面材27は、通常の天井高さに配置されており、そのため、天井面材27はいわゆる下がり天井ではない。
【0025】
天井面材27の上方には、屋内の換気を行う換気装置30が設置されている。換気装置30は直方体状に形成され、隣り合う一対の天井小梁25の間に配置されている。換気装置30は、その長手方向を天井小梁25の長手方向に向けた状態で配置されている。なお、換気装置30が「機器」に相当する。また、換気装置30を挟んで隣り合う各天井小梁25が「隣り合う一対の天井梁」に相当する。
【0026】
換気装置30には、短辺側の各側面にダクト(図示略)が接続される複数の接続部31~33が設けられている。接続部31には、屋外に通じる取込ダクトが接続され、その取込ダクトを通じて屋外の空気(外気)が換気装置30に取り込まれる。また、接続部32には、屋内空間に通じる給気ダクトが接続され、その給気ダクトを通じて上記取り込まれた屋外の空気が屋内空間(居室等)に供給される。
【0027】
換気装置30の下面側には、屋内空間の空気を吸い込む吸込グリル(図示略)が取り付けられている。吸込グリルは、天井面材27に形成された開口部35に取り付けられている。また、接続部33には、屋外に通じる排気ダクトが接続され、その排気ダクトを通じて吸込グリルにより吸い込んだ屋内の空気が屋外に排出される。このようにして、換気装置30により屋内の換気が行われるようになっている。
【0028】
換気装置30は、各天井小梁25に支持部材40を介して取り付けられている。支持部材40は、天井小梁25に固定された梁固定材41と、梁固定材41に固定された複数(具体的には3つ)の固定駒42とを有する。梁固定材41は、木質材料により長尺状に形成され、天井小梁25の長手方向に延びている。また、梁固定材41は、断面L字状をなしており、天井小梁25の上面に載置された上板部41aと、天井小梁25の内側面(換言すると、換気装置30側の側面)に配置された側板部41bとを有している。上板部41aは、天井小梁25にビス等の締結具により固定されている。
【0029】
固定駒42は、木質材料により直方体状に形成されている。各固定駒42は、梁固定材41の長手方向に所定の間隔(詳しくは等間隔)で配置され、梁固定材41の側板部41bの外面に釘等により固定されている。この場合、各固定駒42は、各天井小梁25の間の側(換言すると天井小梁25の内側面の側)に位置し、天井小梁25の長手方向に並んでいる。また、各固定駒42には、上下方向に貫通する孔部43が形成されている。なお、各固定駒42が「固定部」に相当し、各孔部43が「第2孔部」に相当する。
【0030】
換気装置30には、長辺側の各側面部30aにフランジ部45が取り付けられている。各フランジ部45は、側面部30aの下端部に沿って延び、断面L字状をなしている。フランジ部45は、側面部30aに取り付けられた鉛直板部45aと、鉛直板部45aの下端部から側方に突出する水平板部45bとを有する。この場合、各フランジ部45の水平板部45bは、換気装置30から互いに反対側に向けて側方に突出している。
【0031】
各フランジ部45の水平板部45bには、厚み方向(換言すると上下方向)に貫通する複数(本実施形態では3つ)の孔部47が形成されている。これらの孔部47は、フランジ部45の長手方向に所定の間隔(詳しくは等間隔)で配置されている。また、これらの孔部47は、支持部材40の各固定駒42の孔部43に対応させて形成されている。そのため、各孔部47の間隔(ピッチ)は、支持部材40の各固定駒42の孔部43の間隔(ピッチ)と同じとされている。なお、各孔部47が「第1孔部」に相当する。
【0032】
各フランジ部45は、支持部材40の各固定駒42に固定ねじ48を用いて下方から固定されている。固定ねじ48は、上下方向に延びる軸部48aと、軸部48aの下端部に設けられた頭部48bとを有している。固定ねじ48(詳しくはその軸部48a)は、フランジ部45の各孔部47にそれぞれ下方から挿通され、それら挿通された各固定ねじ48が各固定駒42の孔部43にそれぞれねじ込まれている。これにより、各フランジ部45が固定駒42に固定され、その固定状態で換気装置30が各天井小梁25の間に設置(本設置)されている。なお、固定ねじ48の頭部48bは、孔部47よりも径が大きく、フランジ部45の下面に配置されている。また、各固定ねじ48が「締結具」に相当する。
【0033】
ここで、かかる換気装置30の設置状態(本設置状態)では、換気装置30が建物ユニット20の上端(
図1(a)では、建物ユニット20の上端ラインを二点鎖線で示している)よりも上方に突出した状態となっている。このため、かかる設置状態で建物ユニット20をユニット製造工場から施工現場へ搬送する場合、その搬送に支障をきたすおそれがある。そこで、本実施形態では、このような点に鑑み、ユニット製造工場では、換気装置30を建物ユニット20の上端よりも上方に突出しない状態で仮設置し、その仮設置状態で建物ユニット20をユニット製造工場から施工現場へ搬送するようにしている。以下においては、かかる換気装置30の仮設置構造について
図2に基づき説明する。なお、
図2は、(a)が換気装置30の仮設置構造を正面側から見た断面図であり、(b)が側面側から見た断面図である。
【0034】
図2(a)及び(b)に示すように、換気装置30は、上述した本設置の場合と同様、各天井小梁25に固定された一対の支持部材40を用いて設置(仮設置)されるようになっている。そのため、換気装置30の仮設置構造は、概ね換気装置30の本設置構造と同じ構造となっている。そこで、以下では、本設置構造と相違する点を中心に、仮設置構造の説明を行う。
【0035】
換気装置30の仮設置状態では、換気装置30のフランジ部45(詳しくは水平板部45b)と、その上方に配置された支持部材40の固定駒42との間にスペーサ50が介在されている。スペーサ50は、各固定駒42ごとに設けられ、それら複数(本実施形態では6つ)のスペーサ50がいずれもフランジ部45と固定駒42との間に介在された状態となっている。そして、かかるスペーサ50の介在状態で、フランジ部45が、その上方の各固定駒42に固定ねじ48により固定(仮固定)されている。この場合、フランジ部45と各固定駒42との間にスペーサ50がそれぞれ挟み込まれた状態で、フランジ部45が各固定駒42に固定されている。また、固定ねじ48は、フランジ部45の孔部47に下方から挿通され、スペーサ50を介して固定駒42の孔部43にねじ込まれている。
【0036】
続いて、スペーサ50の構成について、
図2(a)及び(b)に加え、
図3を用いながら説明する。
図3は、スペーサ50を示す斜視図である。
図2(a),(b)及び
図3に示すように、スペーサ50は、互いに離間して配置された一対のスペーサ部51と、各スペーサ部51を連結する連結部52とを有する。各スペーサ部51は上下に延びる柱状をなし、木質材料により形成されている。各スペーサ部51の間は固定ねじ48を挿通可能な挿通空間53となっている。
【0037】
連結部52は矩形板状をなし、スペーサ部51と同様、木質材料により形成されている。連結部52は、各スペーサ部51の外面に架け渡されて設けられ、各スペーサ部51に釘などにより固定されている。したがって、連結部52は、挿通空間53の外側で各スペーサ部51を連結している。また、連結部52は、各スペーサ部51の下部同士を連結している。
【0038】
スペーサ50は、その挿通空間53に固定ねじ48を挿通した状態でフランジ部45と固定駒42との間に挟み込まれている。この場合、スペーサ50の各スペーサ部51は、フランジ部45の長手方向における固定ねじ48を挟んだ両側に配置され、その配置状態でフランジ部45と固定駒42との間にそれぞれ挟み込まれている。
【0039】
このように、換気装置30の仮設置状態では、各フランジ部45が、固定駒42に対してスペーサ50を介して固定(仮固定)さるようになっている。そのため、換気装置30の仮設置状態では、スペーサ50の高さ寸法分だけ、換気装置30が本設置状態(
図1(a)参照)よりも低位に配置されるようになっている。これにより、換気装置30の仮設置状態では、換気装置30の上端が建物ユニット20の上端(
図2(a)では、建物ユニット20の上端ラインを二点鎖線で示している)よりも低い位置に位置するようになっている。なお、この仮設置状態では、換気装置30が天井面材27の開口部35を通じて配置される。
【0040】
続いて、建物ユニット20の天井部に換気装置30を設置する際の設置方法について説明する。
図5は、換気装置30の設置方法を説明するための図である。なお、
図5では、説明の便宜上、天井面材27及び野縁29の図示を省略している。
【0041】
まず、ユニット製造工場において行う換気装置30の仮設置作業について説明する。なお、仮設置作業を行うにあたっては、天井面材27の開口部35が開口された状態となっている。つまり、仮設置作業に際しては開口部35に吸込グリルが取り付けられておらず、そのため開口部35が開口された状態となっている。
【0042】
ユニット製造工場ではまず、
図5(a)に示すように、建物ユニット20の天井部における隣り合う一対の天井小梁25にそれぞれ支持部材40を取り付ける支持部材取付工程を行う。この工程では、各支持部材40の梁固定材41(詳しくは上板部41a)をそれぞれ天井小梁25にビスにより固定する。これにより、支持部材40の各固定駒42が各天井小梁25の間の側に配置される。
【0043】
次に、
図5(b)に示すように、各支持部材40の固定駒42の下方に各フランジ部45(詳しくは水平板部45b)がそれぞれ位置するように、各支持部材40の固定駒42の間に換気装置30を配置する換気装置配置工程を行う。この工程では、換気装置30を天井下から持ち上げて各支持部材40の固定駒42の間に配置する。また、この際、換気装置30を天井面材27の開口部35を通じて配置する。なお、換気装置配置工程が「機器配置工程」に相当する。
【0044】
次に、換気装置載置工程を行う。この工程では、まず
図5(c)に示すように、換気装置配置工程による換気装置30の配置状態で、各フランジ部45の各々の孔部47(
図2(a)参照)に固定ねじ48を下方から挿通し、それら挿通した各固定ねじ48を各固定駒42の孔部43(
図2(a)参照)にねじ込む。そして、それらねじ込んだ固定ねじ48の頭部48bの上に各フランジ部45(詳しくは水平板部45b)を載置する。この場合、フランジ部45は、複数の固定ねじ48の頭部48bに跨がる状態で載置される。なお、換気装置載置工程が「機器載置工程」に相当する。
【0045】
次に、
図5(d)に示すように、換気装置30を挟んだ両側においてそれぞれフランジ部45と固定駒42との間にスペーサ50を配置するスペーサ配置工程を行う。この工程では、フランジ部45(詳しくは水平板部45b)と、その上方に配置されている各固定駒42との間にそれぞれスペーサ50を配置する(
図2(b)も参照)。したがって、この工程では、スペーサ50が支持部材40の固定駒42ごとに配置されることになる。また、本工程では、スペーサ50の挿通空間53に固定ねじ48を挿通させた状態で、スペーサ50の各スペーサ部51をそれぞれフランジ部45と固定駒42との間に配置する(
図2(b)参照)。
【0046】
次に、
図5(e)に示すように、スペーサ配置工程によるスペーサ50の配置状態で、各固定ねじ48を締め込むことにより各フランジ部45をスペーサ50を介して各固定駒42に仮固定するフランジ部仮固定工程を行う。この場合、フランジ部45は、その上方にある各固定駒42にそれぞれスペーサ50を介して仮固定される。また、この場合、フランジ部45は、固定駒42にスペーサ50の各スペーサ部51を介して仮固定される(
図2(b)参照)。なお、スペーサ配置工程とフランジ部仮固定工程とにより「仮固定工程」が構成されている。
【0047】
以上の各工程(支持部材取付工程~フランジ部仮固定工程)により、換気装置30が各天井小梁25の間に仮設置される。
【0048】
次に、換気装置30の仮設置状態で建物ユニット20をユニット製造工場から施工現場へトラックにより搬送するユニット搬送工程を行う。上述したように、換気装置30の仮設置状態では、換気装置30が建物ユニット20の上端よりも上方に突出しない状態で配置される。そのため、この場合、建物ユニット20を好適に施工現場へ搬送することが可能となる。また、建物ユニット20を施工現場へ搬送した後、建物ユニット20をクレーン等を用いて所定の設置箇所に設置する。
【0049】
続いて、施工現場で行う換気装置30の設置作業(本設置作業)について説明する。施工現場ではまず、
図5(f)に示すように、各固定ねじ48を緩めて、換気装置30を挟んだ両側におけるフランジ部45と固定駒42との間からそれぞれスペーサ50を取り外すスペーサ取り外し工程を行う。この工程では、フランジ部45と各固定駒42との間に配置されているすべてのスペーサ50を取り外す。
【0050】
なお、取り外された各スペーサ50は、その後、他の建物ユニット20における換気装置30の仮設置に用いられるようになっている。つまり、各スペーサ50は使い回しされるものとなっており、そのため、取り外された後、回収され保管されるようになっている。
【0051】
次に、本固定工程を行う。本固定工程ではまず、
図5(g)に示すように、各固定ねじ48を上方に向けて締め込む(つまり固定駒42の孔部43に締め込む)ことにより、各固定ねじ48の頭部48bに載置された各フランジ部45を換気装置30とともに上方に押し上げる。そして、その押し上げにより各フランジ部45をそれぞれ固定駒42に下方から当接させ、その当接状態で各フランジ部45を固定駒42に対して固定(本固定)する。これにより、換気装置30が各天井小梁25の間に本設置される。
【0052】
換気装置30の本設置状態では、スペーサ50の高さ寸法分だけ、換気装置30が仮設置状態よりも高位に配置される。このため、換気装置30の本設置状態では、換気装置30を天井面材27よりも上方に配置することが可能となっており、つまりは通常高さに配置された天井面材27よりも上方に配置することが可能となっている。これにより、建物ユニット20の天井部に下がり天井を設けなくても、その天井部に換気装置30を設置することが可能となっている。
【0053】
その後、天井面材27の開口部35に吸込グリルを取り付ける等することで、一連の作業が終了する。
【0054】
以上、詳述した本実施形態の構成によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0055】
施工現場において、スペーサ50を取り外すとともに(スペーサ取り外し工程)、固定ねじ48を上方に締め込むことにより、換気装置30を仮設置位置から本設置位置に上昇させるようにした(本固定工程)。具体的には、換気装置30を各フランジ部45が固定駒42に当接する位置まで上昇させ、その当接位置でフランジ部45を固定駒42に固定することにより、換気装置30を本設置するようにした。この場合、換気装置30を本設置する際には、フランジ部45が固定駒42に当接するまで換気装置30を上昇させればよく、位置決め作業が不要となる。そのため、換気装置30を容易に本設置することが可能となる。また、本設置の際には、仮設置の際に用いた固定ねじ48をそのまま締め込めばよいため、その点でも本設置を容易に行うことができる。
【0056】
また、換気装置30を仮設置位置から上昇させることにより本設置位置に移動させるようにしているため、仮設置位置用の開口部を天井面材27に別途設ける必要はない。つまり、天井面材27に、開口部35以外に、別途開口部を設ける必要がない。そのため、天井部の構成が複雑になるのを回避できる利点もある。
【0057】
支持部材40が複数の固定駒42を有し、それら各固定駒42に換気装置30のフランジ部45が固定されるため、換気装置30を安定した状態で設置することができる。また、支持部材40は、長尺状の梁固定材41に複数の固定駒42が固定されてなるため、梁固定材41を天井小梁25に取り付けることで複数の固定駒42を一挙に配設することができる。そのため、複数の固定駒42を有する構成にあって、それら固定駒42の配設作業を容易に行うことができる。
【0058】
ところで、換気装置30の仮設置に用いる各スペーサ50は、本設置の際に取り外されるため、それら取り外されたスペーサ50を他の建物ユニット20における換気装置30の仮設置の際、再利用することが考えられる。この点、上記の実施形態では、支持部材40の各固定駒42とフランジ部45との間にそれぞれスペーサ50が個別に配置されているため、各スペーサ50をコンパクトに形成することができる。そのため、取り外したスペーサ50を再利用すべく、スペーサ50を保管等する際に好都合となっている。
【0059】
仮固定工程により、固定ねじ48を挟んだ両側でスペーサ50の各スペーサ部51がフランジ部45と固定駒42との間に挟み込まれる。そのため、フランジ部45を安定した状態で固定駒42に仮固定することができる。また、固定ねじ48を挟んだ両側にそれぞれ個別にスペーサを配置しても同様の効果は得られるが、その場合、仮固定の作業が面倒になると考えられる。その点、上記の構成によれば、固定ねじ48を挟んだ両側に各スペーサ部51を一挙に配置できるとともに、各スペーサ部51の間に固定ねじ48が入り込むことで各スペーサ部51(ひいてはスペーサ50)にずれも生じにくく、仮固定の作業を容易に行うことが可能となる。
【0060】
本発明は上記実施形態に限らず、例えば次のように実施されてもよい。
【0061】
(1)上記実施形態では、換気装置30の仮設置状態において、換気装置30を建物ユニット20の上端よりも上方に突出しない状態で配置したが、例えば換気装置30を建物ユニット20の上端よりも若干上方に突出した状態で配置するようにしてもよい。この場合にも、換気装置30の仮設置状態で建物ユニット20を搬送する際、その搬送を好適に行うことが可能となる。
【0062】
(2)支持部材40は必ずしも木製とする必要はなく、金属製であってもよい。その場合、金属製の支持部材40を天井小梁25に予め溶接により固定するようにしてもよい。
【0063】
(3)上記実施形態では、支持部材40が複数の固定駒42を有する構成としたが、複数の固定駒42に代えて、梁固定材41に沿って延びる長尺材(固定部に相当)を梁固定材41に固定するようにしてもよい。この場合、その長尺材にフランジ部45の各孔部47に対応する複数の孔部(第2孔部に相当)を設けるようにすればよい。そして、フランジ部45と長尺材との間に複数のスペーサ50を配置し、その配置状態でフランジ部45を複数のスペーサ50を介して長尺材に仮固定するようにすればよい。
【0064】
(4)上述した(3)の例のように、長尺材を固定部とする構成では、スペーサを、フランジ部45と長尺材との間において隣り合う固定ねじ48の間ごとに配置するようにしてもよい。この場合、スペーサとして、例えば直方体状のスペーサを用いてもよい。
【0065】
(5)上記実施形態では、建物ユニット20の天井部に換気装置30を設置する設置方法として本発明を具体化したが、空調装置等、換気装置30以外の機器を設置する場合にも本発明を適用することが可能である。
【符号の説明】
【0066】
20…建物ユニット、25…天井小梁、30…機器としての換気装置、40…支持部材、41…梁固定材、42…固定部としての固定駒、43…第2孔部としての孔部、45…フランジ部、47…第1孔部としての孔部、48…締結具としての固定ねじ、50…スペーサ、51…スペーサ部、52…連結部、53…挿通空間。