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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128575
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】エアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/205 20110101AFI20240913BHJP
   B60R 21/2346 20110101ALI20240913BHJP
   B60R 21/237 20060101ALI20240913BHJP
   B60R 21/239 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
B60R21/205
B60R21/2346
B60R21/237
B60R21/239
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037606
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雄也
(72)【発明者】
【氏名】田中 志幸
【テーマコード(参考)】
3D054
【Fターム(参考)】
3D054AA03
3D054AA07
3D054BB17
3D054CC10
3D054CC15
3D054CC29
3D054FF16
(57)【要約】
【課題】膨張展開時に内圧を迅速に低下させることができるエアバッグ装置を提供する。
【解決手段】エアバッグ装置1は、乗員席STに向かって開口51が形成されたエアバッグケース50と、インフレータ55と、開口から乗員席に向かって膨張展開するバッグ本体100と、バッグ本体に設けられ、ガスを排出するベントホール10L,10Rと、バッグ本体内に配置され、ガスが流入する流入口22とガスが流出する流出口21L,21Rとを有し、ガスを整流する整流布20と、を備え、バッグ本体および整流布は、折畳完了状態でエアバッグケース内に収納されており、事前折畳状態においてバッグ本体は、第1折畳体110と、第2折畳体120と、を有し、第1折畳体には、インフレータの挿入孔12が位置し、第2折畳体には、ベントホールが位置し、事前折畳状態において、整流布は、流出口が第2折畳体の内部に位置するように折り畳まれている。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される乗員席用のエアバッグ装置であって、
前記車両のインストルメントパネルの内側に搭載され、前記乗員席に向かって開口が形成されたエアバッグケースと、
前記エアバッグケース内に配置され、ガスを噴射するインフレータと、
前記エアバッグケース内に収納され、前記インフレータから噴射される前記ガスにより前記開口から前記乗員席に向かって膨張展開するバッグ本体と、
前記バッグ本体に設けられ、前記膨張展開時に、前記ガスを排出するベントホールと、
前記バッグ本体内に配置され、前記ガスが流入する流入口と前記ガスが流出する流出口とを有し、前記ガスを整流する整流布と、
を備え、
前記バッグ本体および前記整流布は、事前折畳状態の前記バッグ本体および前記整流布が更に折り畳まれた状態である折畳完了状態となって前記エアバッグケース内に収納されており、
前記事前折畳状態において前記バッグ本体は、前記バッグ本体の側面が蛇腹状に折り込まれることにより形成される第1折畳体と、前記膨張展開時に前記第1折畳体と比べて前記インフレータの遠くに位置する第2折畳体と、を有し、
前記第1折畳体には、前記インフレータの挿入孔が位置し、
前記第2折畳体には、前記ベントホールが位置し、
前記事前折畳状態において、前記整流布は、前記流出口が前記第2折畳体の内部に位置するように折り畳まれている、
エアバッグ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のエアバッグ装置において、
前記事前折畳状態の前記バッグ本体は、前記側面が蛇腹状に折り込まれることにより形成される第3折畳体であって、前記膨張展開時に前記第2折畳体に比べて前記インフレータから遠くに位置する第3折畳体を更に有する、エアバッグ装置。
【請求項3】
請求項2に記載のエアバッグ装置において、
前記事前折畳状態において、前記第1折畳体と前記第2折畳体と前記第3折畳体との大きさは、前記第1折畳体、前記第2折畳体、前記第3折畳体の順番に大きくなっている、エアバッグ装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のエアバッグ装置において、
前記第2折畳体における前記ベントホールと前記流出口とは、前記バッグ本体の前記膨張展開の初期において互いに対向するように位置している、エアバッグ装置。
【請求項5】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のエアバッグ装置において、
前記第2折畳体において前記バッグ本体と前記整流布とは、前記膨張展開時に破断可能に構成されたテアシームにより接続されている、エアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に衝突が発生した際に、助手席に着座している乗員を保護するためのエアバッグ装置が種々提案されている。例えば特許文献1は、エアバッグの膨張展開時に、乗員等の干渉物に加えられる衝撃を低減するために、エアバッグ内のガスを早期に排出できる技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-124035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、広い乗員空間を確保するために、インストルメントパネルを小型化し、エアバッグケースの開口を乗員席に向けた構成のエアバッグ装置が提案されている。かかるエアバッグ装置においては、特許文献1に開示されているようなエアバッグケースの開口が上方側に向いた構成と比較して、エアバッグの膨張開始からエアバッグと乗員との接触までの時間が短い。このため、エアバッグの膨張展開時にエアバッグの内圧をより迅速に下げる技術が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
(1)本開示の一形態によれば、車両に搭載される乗員席用のエアバッグ装置が提供される。このエアバッグ装置は、前記車両のインストルメントパネルの内側に搭載され、前記乗員席に向かって開口が形成されたエアバッグケースと、前記エアバッグケース内に配置され、ガスを噴射するインフレータと、前記エアバッグケース内に収納され、前記インフレータから噴射される前記ガスにより前記開口から前記乗員席に向かって膨張展開するバッグ本体と、前記バッグ本体に設けられ、前記膨張展開時に、前記ガスを排出するベントホールと、前記バッグ本体内に配置され、前記ガスが流入する流入口と前記ガスが流出する流出口とを有し、前記ガスを整流する整流布と、を備え、前記バッグ本体および前記整流布は、事前折畳状態の前記バッグ本体および前記整流布が更に折り畳まれた状態である折畳完了状態となることで前記エアバッグケース内に収納されており、前記事前折畳状態において前記バッグ本体は、前記バッグ本体の側面が蛇腹状に折り込まれることにより形成される第1折畳体と、前記膨張展開時に前記第1折畳体と比べて前記インフレータの遠くに位置する第2折畳体と、を有し、前記第1折畳体には、前記インフレータの挿入孔が位置し、前記第2折畳体には、前記ベントホールが位置し、前記事前折畳状態において、前記整流布は、前記流出口が前記第2折畳体の内部に位置するように折り畳まれている。
この形態のエアバッグ装置によれば、事前折畳状態において、整流布は、一対の流出口が一対のベントホールが位置する第2折畳体の内部に位置するように折り畳まれているので、一対の流出口が第2折畳体の内部に位置するように整流布が折り畳まれていない構成と比較して、膨張展開の初期において、インフレータから噴射されたガスを早期にバッグ本体の外部に排出することができ、バッグ本体の内圧を迅速に低下させることができる。また、第2折畳体よりもインフレータ側に第1折畳体を有するので、膨張展開の初期、すなわち第1折畳体が膨張展開を開始するまでの時間においては、第1折畳体を有しない構成と比較して、ベントホールと流出口との距離を比較的近くに維持できる。これにより、流出口から流出するガスを迅速にベントホールに導くことができ、膨張展開の初期におけるバッグ本体の内圧を迅速に下げることができる。また、膨張展開の初期より後の時間においては、第1折畳体を有しない構成と比較して、第1折畳体が膨張展開することによりベントホールと流出口との距離が比較的遠くなるので、流出口から流出したガスがベントホールにそのまま流出する頻度が減る。これにより、バッグ本体の内圧が過剰に下がることを抑制し、乗員の衝撃を吸収するための十分な内圧を確保できる。
(2)上記形態のエアバッグ装置において、前記事前折畳状態の前記バッグ本体は、前記側面が蛇腹状に折り込まれることにより形成される第3折畳体であって、前記膨張展開時に前記第2折畳体に比べて前記インフレータから遠くに位置する第3折畳体を更に有してもよい。
この形態のエアバッグ装置によれば、膨張展開時に第2折畳体に比べてインフレータから遠くに位置する第3折畳体を有するので、第3折畳体を有しない構成と比較して、バッグ本体の膨張展開時にバッグ本体の近くに存在する障害物にバッグ本体の膨張展開により加えられる圧力を低減できる。
(3)上記形態のエアバッグ装置において、前記事前折畳状態において、前記第1折畳体と前記第2折畳体と前記第3折畳体との大きさは、前記第1折畳体、前記第2折畳体、前記第3折畳体の順番に大きくなっていてもよい。
この形態のエアバッグ装置によれば、事前折畳状態において、第1折畳体と第2折畳体と第3折畳体との大きさは、第1折畳体、第2折畳体、第3折畳体の順番に大きくなっているので、膨張展開した第3折畳体の大きさを比較的大きくでき、バッグ本体から乗員に加えられる衝撃を比較的小さくできる。また、各折畳体の大きさが異なるので、各折畳体の大きさが同じである構成と比較して、容易にバッグ本体を折畳み、各折畳体を形成できる。また、第1折畳体と第2折畳体と第3折畳体との大きさが全て同じである構成と比較して、バッグ本体全体の大きさをよりコンパクトに構成できる。より詳細には、第1折畳体と第2折畳体と第3折畳体との大きさが全て同じである構成では、折り目が重なることで厚さが過剰に大きくなるおそれがあるのに対して、本形態のエアバッグ装置では、折り目が重なることが抑制されるので、バッグ本体全体の大きさをよりコンパクトに構成できる。
(4)上記形態のエアバッグ装置において、前記第2折畳体における前記ベントホールと前記流出口とは、前記バッグ本体の前記膨張展開の初期において互いに対向するように位置していてもよい。
この形態のエアバッグ装置によれば、第2折畳体におけるベントホールと流出口とは、バッグ本体の膨張展開の初期において互いに対向するように位置しているので、ベントホールと流出口とが対向していない構成と比較して、膨張展開の初期においてガスを早期に外部へと排出することができ、バッグ本体の内圧を迅速に低下させることができる。
(5)上記形態のエアバッグ装置において、前記第2折畳体において前記バッグ本体と前記整流布とは、前記膨張展開時に破断可能に構成されたテアシームにより接続されていてもよい。
この形態のエアバッグ装置によれば、第2折畳体においてバッグ本体と整流布とは、膨張展開時に破断可能に構成されたテアシームにより接続されているので、膨張展開の初期において流出口とベントホールとの位置を一定に保つことができる。これにより、整流布と第2折畳体の内部とがテアシームにより接続されていない構成と比較して、膨張展開の初期においてガスをより確実に排出し、バッグ本体の内圧をより確実に低減できる。また、テアシームは破断可能に構成されているので、テアシームがバッグ本体の膨張展開を妨げることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本開示の一形態におけるエアバッグ装置の概略構成を示す図である。
図2】左側前方から見たバッグ本体の概略図である。
図3】左側後方から見たバッグ本体の概略図である。
図4】整流シートの平面図である。
図5A】事前折畳状態におけるバッグ本体および整流布の説明図である。
図5B】事前折畳状態におけるバッグ本体および整流布の説明図である。
図6】事前折畳状態におけるバッグ本体および整流布の説明図である。
図7A】中間折畳状態のバッグ本体の説明図である。
図7B】中間折畳状態のバッグ本体の説明図である。
図8A】折畳完了状態のバッグ本体の説明図である。
図8B】折畳完了状態のバッグ本体の説明図である。
図9】膨張展開の初期におけるバッグ本体および整流布の説明図である。
図10】膨張展開が完了したバッグ本体の説明図である。
図11】障害物がバッグ本体に近い位置に存在する場合におけるバッグ本体の膨張展開の説明図である。
図12】第2実施形態のバッグ本体および整流布の説明図である。
図13】第3実施形態のバッグ本体および整流布の説明図である。
図14】他の実施形態におけるバッグ本体および整流布の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.第1実施形態:
A1.エアバッグ装置1の構成:
図1図3は、本開示の一形態におけるエアバッグ装置1の概略構成を示す図である。図1は、エアバッグ装置1が搭載される車両の左側から見たエアバッグ装置1の概略図である。図2は、左側前方から見たバッグ本体100の概略図である。図3は、左側後方から見たバッグ本体100の概略図である。なお、図面および以下の記載における「前後方向」は、車両の進行方向を「前方」としたときの前後方向を示し、「左右(横)方向」は車両の左右方向(幅方向)を示し、「上下方向」は、車両の高さ方向を示す。なお、図1図3では、バッグ本体100の膨張展開が完了した状態を示す。また、図2および図3では、バッグ本体100および整流布20のみを示し、その他の構成は省略されている。
【0009】
本実施形態におけるエアバッグ装置1は、車両の助手席ST前方に配置される。エアバッグ装置1は、車両に衝突が発生した場合、または衝突が予測された場合に、助手席STの乗員を衝撃から保護する。エアバッグ装置1は、エアバッグケース50と、インフレータ55と、バッグ本体100と、整流布20と、を備える。
【0010】
エアバッグケース50は、車両のインストルメントパネル40の内側に搭載され、箱状形状を有する。エアバッグケース50には、助手席STに向かって開口51が形成されている。換言すると、開口51は、フロントガラスFGに向かわない方向に形成されている。開口51は、バッグ本体100が収納されている状態においては、不図示の扉部により塞がれている。
【0011】
インフレータ55は、バッグ本体100にガスを噴射する。より具体的には、車両に搭載された不図示の制御部が衝突の発生を検知または予測すると、インフレータ55にガスを噴射するように指示する。インフレータ55は、エアバッグケース50内に配置されており、エアバッグケース50の底部52に固定されている。
【0012】
バッグ本体100は、袋状の形状を有する。バッグ本体100は、通常時はエアバッグケース50内に後述する「折畳完了状態」で収納されており、インフレータ55によりガスが注入されると不図示の扉部を押し開き、開口51から助手席STに向かって膨張展開する。バッグ本体100は、膨張展開することにより乗員を受け止め、車両の衝突による乗員の損傷を抑制する。バッグ本体100は、例えば複数の可撓性を有するシート材により形成される。可撓性を有するシート材は、例えばポリアミド製の織布などである。
【0013】
バッグ本体100には、インフレータ挿入孔12と、一対のベントホール10L,10Rとが設けられている。インフレータ挿入孔12には、インフレータ55が挿入される。一対のベントホール10L,10Rは、バッグ本体100内のガスを外部に排出する。膨張展開中においては、ベントホール10L,10Rからガスが排出されることで、バッグ本体100の内圧が過剰に高まることが抑制される。また、膨張展開したバッグ本体100と乗員とが接触した場合においては、バッグ本体100は、ベントホール10L,10Rからガスが排出されることで、乗員を適切に受け止めることができる。
【0014】
整流布20は、バッグ本体100の内部に配置されており、インフレータ55から噴射されたガスを整流する。本実施形態において、整流布20は、ガスを左右方向に整流する。整流布20は、前方向に窪んだ円筒状の外観形状を有する。図4は、整流シート23の平面図である。整流シート23は、左右方向に半円状の窪みを有する長方形状の外観形状を有する。整流布20は、図4に示す整流シート23の辺A1,A2と、辺B1,B2とが重なるように縫製することで、形成される。整流シート23は、ポリアミド製の織布など可撓性を有するシート材を裁断することで製造される。整流シート23の中央部分には、流入口22が形成されている。流入口22には、インフレータ55が挿入される。流入口22の周囲には、図4に示す複数のボルト挿入孔24が設けられている。複数のボルト挿入孔24と、バッグ本体100におけるインフレータ挿入孔12の周囲に設けられた不図示の複数のボルト挿入孔とが、重ね合わせられ、バッグ本体100および整流布20の内側からボルトにより螺子止めされることにより、バッグ本体100および整流布20は、エアバッグケース50の底部52に固定される。図2および図3に示すように、整流布20の左右方向の両端には、一対の流出口21L,21Rが形成されている。インフレータ55から噴射されたガスは、流入口22を介して整流布20内に送り込まれ、一対の流出口21L,21Rからバッグ本体100に流出する。
【0015】
A2.バッグ本体100および整流布20の折り畳み方:
本実施形態におけるバッグ本体100および整流布20は、複数回折り畳まれ、事前折畳状態および中間折畳状態を経て折畳完了状態となってエアバッグケース50内に収納されている。なお、事前折畳状態、中間折畳状態、および折畳完了状態については、以下で説明する。図5A図5B、および図6は、事前折畳状態におけるバッグ本体100および整流布20の説明図である。図5Aは、後方向(すなわち、助手席ST側)から見たバッグ本体100および整流布20を示し、図5Bは、右方向から見たバッグ本体100および整流布20を示し、図6は、図5Aおよび図5BのVI-VI断面線における断面を示す。図5A図5B、および図6では説明の便宜上、バッグ本体100と整流布20とインフレータ55とを除いた他の構成は、省略されている。なお、本実施形態においてバッグ本体100および整流布20は、折り畳まれる前の状態において、インフレータ挿入孔12にインフレータ55が挿入される。すなわち、バッグ本体100は、インフレータ55と接続された状態で複数回折り畳まれることで、事前折畳状態および予備折畳状態を経て折畳完了状態となる。
【0016】
「事前折畳状態」は、エアバッグケース50に収納される前のバッグ本体100の状態を意味する。具体的には、バッグ本体100の側面が折り込まれることで、複数の折畳体が形成された状態を言う。より具体的には、図6に示すように、事前折畳状態におけるバッグ本体100は、左右方向の両側面が蛇腹状に折り畳まれることで形成される第1折畳体110と、第2折畳体120と、第3折畳体130と、を有する。換言すると、バッグ本体100の両側面が2つの谷折りにより折り込まれることで、第1折畳体110と、第2折畳体120と、第3折畳体130とが形成されている。第1折畳体110と、第2折畳体120と、第3折畳体130とは、インフレータ55に近い方からこの順番で位置している。本実施形態において、第1折畳体110には、インフレータ挿入孔12が位置する。第2折畳体120には、一対のベントホール10L,10Rが位置する。一対のベントホール10L,10Rは、第2折畳体120における前方側に位置する。整流布20は、一対の流出口21L,21Rが第2折畳体120の内部に位置するように折り畳まれている。一対のベントホール10L,10Rのそれぞれは、後述する膨張展開の初期において、一対の流出口21L,21Rのそれぞれと対向するように位置している。
【0017】
図7Aおよび図7Bは、中間折畳状態のバッグ本体100の説明図である。図7Aは、後方向から見たバッグ本体100を示し、図7Bは、右方向から見たバッグ本体100を示す。なお、図7Bでは説明の便宜上、第1折畳体110と第2折畳体120と第3折畳体130とは、省略されており、これらをまとめてバッグ本体100として示されている。「中間折畳状態」は、事前折畳状態のバッグ本体100の上下部分を折り畳んだ状態を意味する。具体的には、事前折畳状態のバッグ本体100の上下を図5Aおよび図5Bの上下に示す矢印方向に複数回ロール折りすることで、バッグ本体100は中間折畳状態となる。
【0018】
図8Aおよび図8Bは、折畳完了状態のバッグ本体100の説明図である。図8Aは、後方向から見たバッグ本体100を示し、図8Bは、右方向から見たバッグ本体100を示す。なお、図8Bでは説明の便宜上、第1折畳体110と第2折畳体120と第3折畳体130とは、省略されており、これらをまとめてバッグ本体100として示されている。「折畳完了状態」は、中間折畳状態のバッグ本体100の左右部分を折り畳んだ女歌いを意味する。具体的には、中間折畳状態のバッグ本体100の左右を図7Aの左右に示す矢印方向に複数回ロール折りすることで、バッグ本体100は折畳完了状態となる。折畳完了状態となったバッグ本体100は、エアバッグケース50内に収納される。
【0019】
事前折畳状態において、一対の流出口21L,21Rが第2折畳体120の内部に位置し、一対のベントホール10L,10Rが第2折畳体120に位置する効果について説明する。図9は、膨張展開の初期におけるバッグ本体100および整流布20の説明図である。本実施形態において「膨張展開の初期」とは、バッグ本体100の膨張展開開始から膨張展開完了するまでの時間において、第2折畳体120および第3折畳体130は膨張展開中または膨張展開が完了しており、第1折畳体110は膨張展開していない時間を指す。図9の整流布20の左右に在る矢印は、インフレータ55から噴射されたガスが整流布20により整流される方向を示す。インフレータ55から噴射されたガスは、一対の流出口21L,21Rを介してバッグ本体100に流出する。事前折畳状態において一対の流出口21L,21Rは第2折畳体120の内部に位置しており、ガスは整流布20により左右後方側に向かって整流されるので、第2折畳体120から膨張展開を開始し、続いて第3折畳体130が展開膨張を開始し、最後に第1折畳体110が膨張展開を開始する。このため、図9に示すように膨張展開の初期においては、一対の流出口21L,21Rと一対のベントホール10L,10Rとの位置が比較的近いため、バッグ本体100内のガスが早期に外部へと排出され、バッグの内圧を迅速に低下させることができる。
【0020】
また、図9に示すように、本実施形態において一対のベントホール10L,10Rのそれぞれは、膨張展開の初期において一対の流出口21L,21Rのそれぞれと対向するように位置している。これにより、一対のベントホール10L,10Rと一対の流出口21L,21Rとが対向していない構成と比較して、膨張展開の初期においてガスを早期に外部へと排出することができ、バッグ本体100の内圧を迅速に低下させることができる。
【0021】
図10は、膨張展開が完了したバッグ本体100の説明図である。図9に示した膨張展開の初期から更にガスがバッグ本体100内に流入することで、第1折畳体110にもガスが行き渡り、第1折畳体110も膨張展開する。図10に示すように、第1折畳体110の膨張展開に伴い、一対のベントホール10L,10Rが後方側に移動することで、一対のベントホール10L,10Rと一対の流出口21L,21Rとの位置は、比較的遠くなる。これにより、膨張展開の初期より後の時間においては、一対の流出口21L,21Rから流出したガスが一対のベントホール10L,10Rにそのまま流出する頻度が減るため、バッグ本体100の内圧が過剰に下がることを抑制し、乗員の衝撃を吸収するための十分な内圧を確保できる。
【0022】
また、第3折畳体130を有することによる効果について以下に説明する。図11は、障害物Aがバッグ本体100に近い位置に存在する場合におけるバッグ本体100の膨張展開の説明図である。バッグ本体100の膨張展開の初期において、ガスは車両の後方側に向けて噴射されるため、整流布20には図11の矢印方向(すなわち、後ろ方向)に向けて大きな圧力が加えられる。このとき、例えば乗員などの障害物Aが膨張展開するバッグ本体100に比較的近い位置に存在すると、整流布20に加えられた大きな圧力が障害物Aに加えられるおそれがある。ここで、本実施形態におけるバッグ本体100は、整流布20が折り込まれる第2折畳体120よりも後方側(すなわち、インフレータ55から遠い側)に、第3折畳体130を有する。膨張展開した第1折畳体110が障害物Aに接触するので、第3折畳体130を有しない構成と比較して、整流布20に加えられた大きな圧力が障害物Aに加えられることを抑制できる。
【0023】
以上説明した第1実施形態のエアバッグ装置1によれば、事前折畳状態において、整流布20は、一対の流出口21L,21Rが一対のベントホール10L,10Rが位置する第2折畳体120の内部に位置するように折り畳まれているので、整流布20が第2折畳体120の内部に位置するように折り畳まれていない構成と比較して、膨張展開の初期において、インフレータ55から噴射されたガスを早期にバッグ本体100の外部に排出することができ、バッグ本体100の内圧を迅速に低下させることができる。
【0024】
また、第2折畳体120において一対のベントホール10L,10Rと一対の流出口21L,21Rとは、バッグ本体100の膨張展開の初期において互いに対向するように位置しているので、一対のベントホール10L,10Rと一対の流出口21L,21Rとが対向していない構成と比較して、膨張展開の初期においてガスを早期に外部へと排出することができ、バッグ本体100の内圧を迅速に低下させることができる。
【0025】
また、第2折畳体120よりもインフレータ55側に第1折畳体110を有するので、膨張展開の初期、すなわち第1折畳体110が膨張展開を開始するまでの時間においては、第1折畳体110を有しない構成と比較して、一対のベントホール10L,10Rと一対の流出口21L,21Rとの距離を比較的近くに維持できる。これにより、流出口21L,21Rから流出するガスを迅速にベントホール10L,10Rに導くことができ、膨張展開の初期におけるバッグ本体100の内圧を迅速に下げることができる。また、膨張展開の初期より後の時間においては、第1折畳体110を有しない構成と比較して、一対のベントホール10L,10Rと一対の流出口21L,21Rとの距離が比較的遠くなるので、一対の流出口21L,21Rから流出したガスが一対のベントホール10L,10Rにそのまま流出する頻度が減る。これにより、バッグ本体100の内圧が過剰に下がることを抑制し、乗員の衝撃を吸収するために十分な内圧を確保できる。
【0026】
また、第2折畳体120に比べてインフレータ55から遠くに位置する第3折畳体130を有するので、第3折畳体130を有しない構成と比較して、バッグ本体100の膨張展開時に、整流布20に加えられたガスの圧力がバッグ本体100の近くに存在する障害物Aに加えられることを抑制できる。
【0027】
B.第2実施形態:
図12は、第2実施形態のバッグ本体101および整流布20の説明図である。図12では、前後方向および左右方向に平行な断面におけるバッグ本体101および整流布20の断面図を示している。第2実施形態のエアバッグ装置におけるバッグ本体101は、事前折畳状態において、第1折畳体111と第2折畳体121と第3折畳体131との大きさが、第1折畳体111、第2折畳体121、第3折畳体131の順番に大きくなっている点で、第1実施形態のバッグ本体100と異なる。その他の構成については、第1実施形態と同様なので、同一の構成には同一の符号を付し、それらの詳細な説明を省略する。
【0028】
図12に示すように、事前折畳状態における第1折畳体111と第2折畳体121と第3折畳体131との大きさをこの順番に大きくすることで、最も後ろ側に位置し乗員と接触する部分である第3折畳体131を比較的大きい構成とすることができる。これにより、第3折畳体131が比較的小さい構成と比較して、第3折畳体131における圧力を小さくでき、膨張展開したバッグ本体100から乗員に加えられる衝撃をより低減できる。また、第1折畳体111と第2折畳体121と第3折畳体131とを形成する際に、第1折畳体111と第2折畳体121と第3折畳体131との大きさが全て同じである構成と比較して、容易にバッグ本体100を折畳み、各折畳体を形成できる。
【0029】
また、図12に示すように、本実施形態の各折畳体の山折り部分の位置は、左右方向においてずれている。第1折畳体111と第2折畳体121と第3折畳体131との大きさが全て同じである構成では、各折畳体の山折り部分同士が重なるため、厚さが過剰になるおそれがある。これに対して、本実施形態のように各折畳体の大きさが異なることで、折り目の位置がずれるので、折り目同士が重なることを抑制し、バッグ本体100全体の大きさをよりコンパクトに構成できる。
【0030】
以上説明した第2実施形態のエアバッグ装置によれば、第1実施形態のエアバッグ装置1と同様の効果を奏する。また、事前折畳状態において、第1折畳体111と第2折畳体121と第3折畳体131との大きさは、第1折畳体111、第2折畳体121、第3折畳体131の順番に大きくなっているので、膨張展開した第3折畳体131の大きさを比較的大きくでき、バッグ本体100から乗員に加えられる衝撃を比較的小さくできる。また、各折畳体の大きさが異なるので、各折畳体の大きさが同じである構成と比較して、各折畳体を容易に形成できる。また、第1折畳体と第2折畳体と第3折畳体との大きさが全て同じである構成と比較して、バッグ本体100全体の大きさをよりコンパクトに構成できる。
【0031】
C.第3実施形態:
図13は、第3実施形態のバッグ本体102および整流布20の説明図である。図13では、前後方向および左右方向に平行な断面におけるバッグ本体102および整流布20の断面図を示している。第3実施形態のエアバッグ装置におけるバッグ本体102は、一対のテアシーム60L,60Rを更に備える点で、第1実施形態のバッグ本体100と異なる。その他の構成については、第1実施形態と同様なので、同一の構成には同一の符号を付し、それらの詳細な説明を省略する。
【0032】
図13に示すように、整流布20の第2折畳体120に折り込まれた部分は、一対のテアシーム60L,60Rによって第2折畳体120の内部と接続されている。テアシーム60L,60Rは、バッグ本体102の膨張展開に伴って破断可能に構成されたシート状の部材である。テアシーム60L,60Rは、整流布20および第2折畳体120の内部と縫合されている。テアシーム60L,60Rが設けられることで、膨張展開の初期において、一対の流出口21L,21Rと一対のベントホール10L,10Rとの位置を一定に保つことができる。これにより、整流布20と第2折畳体120の内部とがテアシーム60L,60Rにより接続されていない構成と比較して、膨張展開の初期において流出口21L,21Rから流出するガスをより確実にバッグ本体102の外部へと排出し、バッグ本体102の内圧をより確実に低減できる。また、テアシーム60L,60Rは破断可能に構成されているので、バッグ本体102の膨張展開によりテアシーム60L,60Rは破断する。このため、テアシーム60L,60Rがバッグ本体102の膨張展開を妨げることを抑制できる。なお、図13においてテアシーム60L,60Rは、第2折畳体120の内部における前方側に接続されているが、第2折畳体120の内部における任意の位置に接続されてもよい。
【0033】
以上説明した第3実施形態のエアバッグ装置によれば、第1実施形態のエアバッグ装置1と同様の効果を奏する。また、第2折畳体120においてバッグ本体100と整流布20とは、膨張展開時に破断可能に構成されたテアシーム60L,60Rにより接続されているので、膨張展開の初期において流出口21L,21Rとベントホール10L,10Rとの位置を一定に保つことができる。これにより、整流布20と第2折畳体120の内部とがテアシーム60L,60Rにより接続されていない構成と比較して、膨張展開の初期において流出口21L,21Rから流出するガスをより確実にバッグ本体102の外部へと排出でき、バッグ本体102の内圧をより確実に低減できる。また、テアシーム60L,60Rは破断可能に構成されているので、テアシーム60L,60Rがバッグ本体102の膨張展開を妨げることを抑制できる。
【0034】
D.他の実施形態:
(D1)図14は、他の実施形態におけるバッグ本体103および整流布20の説明図である。前後方向および左右方向に平行な断面におけるバッグ本体103および整流布20の断面図を示している。上記各実施形態において、事前折畳状態のバッグ本体100,101,102は、第3折畳体130,131を有していたが、本開示はこれに制限されない。バッグ本体103は、第3折畳体130を有しなくてもよい。すなわち、事前折畳状態においてバッグ本体103は、第1折畳体112および第2折畳体122のみを有する構成としてもよい。この構成によっても、一対の流出口21L,21Rが第2折畳体122の内部に位置するように整流布20が第2折畳体122に折り込まれているので、膨張展開の初期においてガスを外部に排出することができ、バッグ本体103の内圧を迅速に低下させることができる。
【0035】
(D2)上記各実施形態において、事前折畳状態において一対のベントホール10L,10Rは、第2折畳体120,121,122の内部における前方側に位置していたが、本開示はこれに限定されない。一対のベントホール10L,10Rは、第2折畳体120,121,122の内部における任意の位置に配置されてもよい。
【0036】
(D3)上記各実施形態において、一対の流出口21L,21Rと一対のベントホール10L,10Rとは、膨張展開の初期において対向するような位置に配置されていたが、本開示はこれに限定されない。一対の流出口21L,21Rが第2折畳体120,121,122の内部に位置するように折り畳まれていれば、一対の流出口21L,21Rと一対のベントホール10L,10Rとは膨張展開の初期において対向しない位置に配置されてもよい。
【0037】
(D4)上記第1実施形態~第3実施形態において、事前折畳状態のバッグ本体100,101,102は、第1折畳体110,111と第2折畳体120,121と第3折畳体130,131との3つの折畳体を有していたが、本開示はこれに限定されない。事前折畳状態のバッグ本体100,101,102は、4以上の任意の数の折畳体を有してもよい。
【0038】
(D5)上記各実施形態において、整流布20の流出口21L,21Rは、左右方向に向けられていたが、本開示はこれに限定されない。流出口21L,21は、例えば上下方向等、任意の方向に向けられていてもよい。
【0039】
(D6)上記各実施形態において、バッグ本体100,101,102,103は、インフレータ55が挿入された後に折り畳まれていたが、本開示はこれに限定されない。バッグ本体100,101,102,103は、予め折り畳まれることにより折畳完了状態となった後にインフレータ55が挿入され、エアバッグケース50内に収納されてもよい。
【0040】
(D7)上記各実施形態において、エアバッグ装置1は車両の助手席STに用いられていたが、本開示はこれに制限されない。エアバッグ装置1は、車両における任意の乗員席に配置されてもよい。エアバッグ装置1は、例えばステアリング装置を備えない自動運転車両の乗員席に配置されてもよい。
【0041】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0042】
1…エアバッグ装置、10L,10R…ベントホール、12…インフレータ挿入孔、20…整流布、21L,21R…流出口、22…流入口、23…整流シート、24…ボルト挿入孔、40…インストルメントパネル、50…エアバッグケース、51…開口、52…底部、55…インフレータ、60L,60R…テアシーム、100,101,102,103…バッグ本体、110,111,112…第1折畳体、120,121,122…第2折畳体、130,131…第3折畳体、A…障害物、A1,A2,B1,B2…辺、FG…フロントガラス、ST…助手席
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12
図13
図14