(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128583
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】医薬品管理装置、医薬品管理システム、医薬品管理方法及び医薬品管理プログラム
(51)【国際特許分類】
G16H 20/10 20180101AFI20240913BHJP
G06K 7/10 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
G16H20/10
G06K7/10 264
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037616
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】314005768
【氏名又は名称】PHCホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】六車 直幸
(72)【発明者】
【氏名】高嶋 伸幸
(72)【発明者】
【氏名】大澤 明佳
(72)【発明者】
【氏名】吉田 龍仁
(72)【発明者】
【氏名】志垣 沙衣子
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA25
(57)【要約】
【課題】医薬品の無線タグに記録される環境情報を復旧すること。
【解決手段】医薬品管理装置は、医薬品に付された無線タグに当該医薬品の環境情報を書き込む書込部と、無線タグから環境情報を読み取る読取部と、を備え、書込部は、グループ化された複数の医薬品のそれぞれの無線タグに、グループ内の医薬品の環境情報を互いに書き込み、グループ内の第1医薬品の無線タグの情報を復旧する場合、読取部は、第1医薬品以外の第2医薬品の無線タグから第1医薬品の環境情報を読み取り、書込部は、読取部が読み取った環境情報を、第1医薬品の無線タグに書き込む。
【選択図】
図10A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬品に付された無線タグに当該医薬品の環境情報を書き込む書込部と、
前記無線タグから前記環境情報を読み取る読取部と、
を備え、
前記書込部は、グループ化された複数の前記医薬品のそれぞれの前記無線タグに、前記グループ内の前記医薬品の前記環境情報を互いに書き込み、
前記グループ内の第1医薬品の前記無線タグの情報を復旧する場合、
前記読取部は、前記第1医薬品以外の第2医薬品の前記無線タグから前記第1医薬品の前記環境情報を読み取り、
前記書込部は、前記読取部が読み取った前記環境情報を、前記第1医薬品の前記無線タグに書き込む、
医薬品管理装置。
【請求項2】
前記書込部は、前記医薬品の前記環境情報を当該医薬品に付された前記無線タグの第1記録領域に書き込み、前記グループ内において当該医薬品以外の前記医薬品の前記環境情報を当該医薬品に付された前記無線タグの第2記録領域に書き込み、
前記第1医薬品の前記無線タグの情報を復旧する場合、
前記読取部は、前記第2医薬品の前記無線タグの前記第2記録領域から前記第1医薬品の前記環境情報を読み取り、
前記書込部は、前記読取部が読み取った前記環境情報を、前記第1医薬品の前記無線タグの前記第1記録領域に書き込む、
請求項1に記載の医薬品管理装置。
【請求項3】
前記環境情報は、前記医薬品を管理する管理条件を逸脱した逸脱情報である、
請求項2に記載の医薬品管理装置。
【請求項4】
同じ環境下の複数の前記医薬品をグループ化する演算部を備え、
前記演算部は、前記管理条件が同じ前記医薬品をグループ化する、
請求項3に記載の医薬品管理装置。
【請求項5】
前記演算部は、前記第1記録領域に前記逸脱情報が記録されていない前記医薬品をグループ化する、
請求項4に記載の医薬品管理装置。
【請求項6】
前記演算部は、前記管理条件が異なる前記医薬品に対して、前記第1記録領域及び前記第2記録領域に記録された前記逸脱情報が多い前記医薬品と少ない前記医薬品とを組み合わせてグループ化する、
請求項4に記載の医薬品管理装置。
【請求項7】
前記書込部は、グループ化後において、前記グループ内のいずれかの前記医薬品の前記環境情報が前記管理条件を逸脱した場合、当該医薬品に対する前記逸脱情報を前記グループ内の前記医薬品に付された全ての前記無線タグの第3記録領域に書き込み、
前記第1医薬品の前記無線タグの情報を復旧する場合、
前記読取部は、前記第2医薬品の前記無線タグの前記第3記録領域から前記第1医薬品の前記逸脱情報を読み取り、
前記書込部は、前記読取部が読み取った前記逸脱情報を、前記第1医薬品の前記無線タグの前記第3記録領域に書き込む、
請求項3から6のいずれか一項に記載の医薬品管理装置。
【請求項8】
医薬品に付された無線タグに当該医薬品の環境情報を書き込む書込部と、
前記無線タグから前記環境情報を読み取る読取部と、
前記書込部及び前記読取部と前記環境情報を送受信可能に構成され、前記環境情報を記憶する記憶部を有するサーバと、
を備え、
前記書込部は、グループ化された複数の前記医薬品のそれぞれの前記無線タグに、前記グループ内の前記医薬品の前記環境情報を互いに書き込み、
前記サーバは、前記読取部を介して、前記グループ内の前記医薬品のそれぞれの前記無線タグから前記環境情報を取得して前記記憶部に記憶し、
前記グループ内の第1医薬品の前記無線タグの情報を復旧する場合、
前記書込部は、前記第1医薬品以外の第2医薬品の前記無線タグから取得して記憶した前記第1医薬品の前記環境情報を前記記憶部から取得し、取得した前記環境情報を前記第1医薬品の前記無線タグに書き込む、
医薬品管理システム。
【請求項9】
医薬品に付された無線タグに当該医薬品の環境情報を書き込み、前記無線タグから前記環境情報を読み取って、前記医薬品を管理する医薬品管理方法において、
グループ化された複数の前記医薬品のそれぞれの前記無線タグに、前記グループ内の前記医薬品の前記環境情報を互いに書き込み、
前記グループ内の第1医薬品の前記無線タグの情報を復旧する場合、前記第1医薬品以外の第2医薬品の前記無線タグから前記第1医薬品の前記環境情報を読み取り、読み取った前記環境情報を、前記第1医薬品の前記無線タグに書き込む、
医薬品管理方法。
【請求項10】
医薬品に付された無線タグに当該医薬品の環境情報を書き込み、前記無線タグから前記環境情報を読み取って、前記医薬品を管理する医薬品管理プログラムにおいて、
コンピューターに、
グループ化された複数の前記医薬品のそれぞれの前記無線タグに、前記グループ内の前記医薬品の前記環境情報を互いに書き込む処理と、
前記グループ内の第1医薬品の前記無線タグの情報を復旧する場合、前記第1医薬品以外の第2医薬品の前記無線タグから前記第1医薬品の前記環境情報を読み取り、読み取った前記環境情報を、前記第1医薬品の前記無線タグに書き込む処理と、
を実行させる、
医薬品管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品管理装置、医薬品管理システム、医薬品管理方法及び医薬品管理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品は、その品質を保つため、医薬品を保管する保管温度等を管理することが重要である。医薬品は、医薬品を保冷して保管する保冷庫間を流通するため、医薬品の温度情報等は医薬品側で保持した方が、その管理を単純化できる。
【0003】
医薬品側で温度情報等を保持する場合、例えば、RFID(radio frequency identification)タグ等の無線タグをそれぞれの医薬品に貼付し、無線タグの記録領域に温度情報等を記録する。流通中及び保冷中の医薬品の温度情報等を無線タグに記録させれば、その履歴を記録することになり、医薬品の保管温度等を管理することができる。
【0004】
例えば、特許文献1には、温度情報等の環境情報を検知するセンサーを備え、環境情報が管理条件を逸脱した場合、逸脱した環境情報を記録部に記録する無線タグが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、無線タグに故障等の不具合が発生して、環境情報の読み書きができなくなった場合、当該無線タグが貼付された医薬品の環境情報の履歴を確認することができず、医薬品の保管状態が不明となってしまう。
【0007】
このような場合、実際は、医薬品が適切な保管環境で管理されていたとしても、それを証明する情報がなく、品質を保証することができないため、該当する医薬品は使用することができず、廃棄処分等が必要となってしまう。そのため、無線タグに不具合が発生して、医薬品の保管状態が不明となった場合でも、該当する医薬品の無線タグに記録される環境情報を復旧することが望まれている。
【0008】
本発明の目的は、医薬品の無線タグに記録される環境情報を復旧可能な医薬品管理装置、医薬品管理システム、医薬品管理方法及び医薬品管理プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る医薬品管理装置は、
医薬品に付された無線タグに当該医薬品の環境情報を書き込む書込部と、
前記無線タグから前記環境情報を読み取る読取部と、
を備え、
前記書込部は、グループ化された複数の前記医薬品のそれぞれの前記無線タグに、前記グループ内の前記医薬品の前記環境情報を互いに書き込み、
前記グループ内の第1医薬品の前記無線タグの情報を復旧する場合、
前記読取部は、前記第1医薬品以外の第2医薬品の前記無線タグから前記第1医薬品の前記環境情報を読み取り、
前記書込部は、前記読取部が読み取った前記環境情報を、前記第1医薬品の前記無線タグに書き込む。
【0010】
本発明に係る医薬品管理システムは、
医薬品に付された無線タグに当該医薬品の環境情報を書き込む書込部と、
前記無線タグから前記環境情報を読み取る読取部と、
前記書込部及び前記読取部と前記環境情報を送受信可能に構成され、前記環境情報を記憶する記憶部を有するサーバと、
を備え、
前記書込部は、グループ化された複数の前記医薬品のそれぞれの前記無線タグに、前記グループ内の前記医薬品の前記環境情報を互いに書き込み、
前記サーバは、前記読取部を介して、前記グループ内の前記医薬品のそれぞれの前記無線タグから前記環境情報を取得して前記記憶部に記憶し、
前記グループ内の第1医薬品の前記無線タグの情報を復旧する場合、
前記書込部は、前記第1医薬品以外の第2医薬品の前記無線タグから取得して記憶した前記第1医薬品の前記環境情報を前記記憶部から取得し、取得した前記環境情報を前記第1医薬品の前記無線タグに書き込む。
【0011】
本発明に係る医薬品管理方法は、
医薬品に付された無線タグに当該医薬品の環境情報を書き込み、前記無線タグから前記環境情報を読み取って、前記医薬品を管理する医薬品管理方法において、
グループ化された複数の前記医薬品のそれぞれの前記無線タグに、前記グループ内の前記医薬品の前記環境情報を互いに書き込み、
前記グループ内の第1医薬品の前記無線タグの情報を復旧する場合、前記第1医薬品以外の第2医薬品の前記無線タグから前記第1医薬品の前記環境情報を読み取り、読み取った前記環境情報を、前記第1医薬品の前記無線タグに書き込む。
【0012】
本発明に係る医薬品管理プログラムは、
医薬品に付された無線タグに当該医薬品の環境情報を書き込み、前記無線タグから前記環境情報を読み取って、前記医薬品を管理する医薬品管理プログラムにおいて、
コンピューターに、
グループ化された複数の前記医薬品のそれぞれの前記無線タグに、前記グループ内の前記医薬品の前記環境情報を互いに書き込む処理と、
前記グループ内の第1医薬品の前記無線タグの情報を復旧する場合、前記第1医薬品以外の第2医薬品の前記無線タグから前記第1医薬品の前記環境情報を読み取り、読み取った前記環境情報を、前記第1医薬品の前記無線タグに書き込む処理と、
を実行させる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、医薬品の無線タグに記録される環境情報を復旧することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施の形態に係る医薬品管理装置の一例を示す図である。
【
図2A】医薬品に貼付するRFIDタグにおいて、その記録部に温度情報を時系列で記録する構成例を示す図である。
【
図2B】
図2Aに示した記録部の構成例に対して、記録量の削減及びグループ化を図った一例を示す図である。
【
図2C】
図2Bに示した記録部の構成例に対して、グループ化の効率化を図った一例を示す図である。
【
図2D】
図2Cに示した記録部の構成例に対して、情報の共有化を図った一例を示す図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る医薬品管理装置で管理する医薬品のRFIDタグについて、その記録部の構成の一例を示す図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係る医薬品管理装置で実施する医薬品のグループ化を説明するフローチャートである。
【
図5A】RFIDタグの記録部に記録された情報の一例を示す図である。
【
図5B】RFIDタグの記録部に記録された情報について、グループのリセットを説明する図である。
【
図5C】RFIDタグの記録部に記録された情報について、グループ化を説明する図である。
【
図6】本発明の実施の形態に係る医薬品管理装置で実施する医薬品のRFIDタグへの温度逸脱情報の記録を説明するフローチャートである。
【
図7A】グループ化された同じ管理条件の医薬品のRFIDタグに記録された情報の一例を示す図である。
【
図7B】グループ化された同じ管理条件の医薬品のRFIDタグであって、グループエリアを使用しない場合のRFIDタグに記録された情報の一例を示す図である。
【
図7C】グループ化された異なる管理条件の医薬品のRFIDタグに記録された情報の一例を示す図である。
【
図7D】グループ化された異なる管理条件の医薬品のRFIDタグであって、グループエリアを使用しない場合のRFIDタグに記録された情報の一例を示す図である。
【
図8】本発明の実施の形態に係る医薬品管理装置で実施する医薬品のRFIDタグにおける情報の復旧を説明するフローチャートである。
【
図9】RFIDタグにおける情報の復旧と引戸の開閉との関係を示すタイムチャートである。
【
図10A】グループ化された同じ管理条件の医薬品のRFIDタグにおける情報の復旧を説明する図である。
【
図10C】グループ化された異なる管理条件の医薬品のRFIDタグにおける情報の復旧を説明する図である。
【
図10E】グループ化された異なる管理条件の医薬品のRFIDタグであって、グループエリアを使用しない場合のRFIDタグにおける情報の復旧を説明する図である。
【
図11】本発明の実施の形態に係る医薬品管理システムの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は一例であり、本発明は、これに限定されるものではない。
【0016】
図1は、本実施の形態に係る医薬品管理装置の一例を示す図である。
【0017】
医薬品管理装置10は、保冷庫30に設けられる。保冷庫30は、例えば、医薬品40を製造する製薬メーカー、医薬品40を流通する流通機関、医薬品40を使用する病院や薬局等の医療機関等に設置され、医薬品40の品質を維持する管理温度で医薬品40を保冷する。
【0018】
[保冷庫]
保冷庫30は、庫内31、庫内31の前面を開閉する引戸32等を有し、また、図示は省略するが、庫内31を保冷する冷凍回路、庫内31の温度を検知する温度センサー、引戸32の開閉を検知するセンサー、温調装置等を有する。温調装置は、温度センサーで検知した温度に基づいて、庫内31を設定された温度に維持する。
【0019】
後述するケージ20は、庫内31に設置される。医薬品40は、引戸32を開閉し、ケージ20へ収容したり、ケージ20から取り出したりすることで、入庫及び出庫が行われる。このとき、後述するように、制御装置11が、後述するアンテナ22を介して、ケージ20内の医薬品40のRFIDタグ41の医薬品固有ID等の情報を読み取る。そして、制御装置11は、医薬品40の医薬品固有IDと引戸32の開閉時間と紐付けて、入庫時間、出庫時間を管理することができる。
【0020】
[医薬品管理装置]
上述した入出庫管理を含めて、後述する逸脱温度管理を行う医薬品管理装置10は、ケージ20(RFID41)を用いるものであり、制御装置11、操作表示装置12等を有する。
【0021】
制御装置11は、制御部11a、読み書き部11b、取得部11c等を有する。
【0022】
制御部11a(本発明における演算部の一例)は、図示は省略するが、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を有する。CPUは、ROMに記憶されたプログラムやデータを読み出して、RAMに記憶させ、プログラムを実行して演算処理を行う。CPUは、実行するプログラムに従って、読み書き部11b、取得部11c、通信部11d等を制御して、医薬品管理装置10の動作を統括制御する。例えば、CPUは、医薬品管理プログラムを実行することにより、入出庫管理や逸脱温度管理を含む医薬品管理装置10の医薬品管理方法を行うことになる。
【0023】
読み書き部11b(本発明における読取部、書込部の一例)は、CPUが実行するプログラムに従って、後述するアンテナ22を介して、ケージ20内の医薬品40のRFIDタグ41の情報(例えば、医薬品固有ID)を読み取ったり、書き込んだりする。読み書き部11b及びアンテナ22は、RFIDタグ41のリードライト装置として機能する。
【0024】
取得部11cは、CPUが実行するプログラムに従って、庫内31の温度センサーの温度情報、引戸32の開閉センサーの開閉情報、後述するケージ20の温度センサー23の温度情報等を取得する。
【0025】
なお、制御装置11は、通信部11dを有していてもよい。この場合、通信部11dは、CPUが実行するプログラムに従って、外部装置との通信を行う。例えば、後述の変形例1で説明するように(
図11を参照)、ネットワークNWを介して、サーバ50との通信を行う。
【0026】
操作表示装置12は、制御装置11に対して、ユーザーが操作指示のコマンドを入力したり、制御装置11が取得した情報、例えば、医薬品固有IDや入出庫の情報等を表示したりする。操作表示装置12は、例えば、タッチパネルディスプレイである。なお、操作表示装置12は、タッチパネルディスプレイ等の一体型の装置であるが、例えば、ディスプレイとキーボード等のように、表示部と操作入力部とが分離した別体の装置構成でもよい。
【0027】
ケージ20は、上述したように、保冷庫30の庫内31に設置される。ケージ20は、底面、側面及び背面から構成され、上面及び前面が開口し、内側に医薬品40を収容する容器21を有する。
【0028】
また、ケージ20は、アンテナ22、温度センサー23等を有する。アンテナ22、温度センサー23は、例えば、容器21の内側に配置される。
【0029】
アンテナ22は、上述した読み書き部11bと電気的に接続され、容器21内に収容された医薬品40のRFIDタグ41の情報(例えば、医薬品固有ID)を、無線通信で読み取ったり、書き込んだりする。温度センサー23は、容器21内の温度を検知する。
【0030】
容器21内に収容される医薬品40には、RFIDタグ41が貼付される。RFIDタグ41には、貼付される医薬品40の名称や医薬品固有ID等が表面に印刷されている。
【0031】
RFIDタグ41(本発明における無線タグの一例)は、公知の技術が適用可能であり、図示は省略するが、例えば、アンテナ22と無線通信で情報の送信及び受信を行う送受信部と、情報が記録される記録部とを有する。
【0032】
RFIDタグ41の記録部には、医薬品固有ID等の情報が記録され、読み書き部11bは、アンテナ22を介して、記録部に記録された情報を読み取る。また、記録部には、医薬品40を管理するための温度情報(本発明における環境情報の一例)等を書き込むことができ、読み書き部11bは、温度センサー23の温度情報を、アンテナ22を介して、記録部に書き込む。また、読み書き部11bは、アンテナ22を介して、記録部に書き込んだ温度情報を読み取り、制御部11aは、読み取った温度情報を操作表示装置12に表示して、医薬品40の温度管理に使用することができる。
【0033】
[RFIDタグの記録部]
RFIDタグ41の記録部について、
図2A~
図2Dを参照して説明を行う。なお、以降において、医薬品40同士を区別する場合、例えば、
図1に示すように、医薬品A、B、Cと呼び、それぞれに貼付されたRFIDタグ41をタグRa、Rb、Rcと呼ぶ。
【0034】
図2Aは、医薬品Aに貼付するタグRaにおいて、その記録部Maに温度情報を時系列で記録する構成例を示す図である。
図2Bは、
図2Aに示した記録部Maの構成例に対して、記録量の削減及びグループ化を図った一例を示す図である。
図2Cは、
図2Bに示した記録部Maの構成例に対して、グループ化の効率化を図った一例を示す図である。
図2Dは、
図2Cに示した記録部Maの構成例に対して、情報の共有化を図った一例を示す図である。ここでは、医薬品40のうちの医薬品Aを例にとって説明を行う。
【0035】
医薬品Aは、その品質を保つため、医薬品Aを保管する保管温度等を管理することが重要であり、医薬品Aに貼付されたタグRaの記録部Maに温度情報等を記録することにより、医薬品Aの保管温度等を管理することができる。
【0036】
本実施の形態では、読み書き部11bが、アンテナ22を介して、ケージ20内の医薬品Aに貼付されたタグRaに温度情報を書き込んだり、タグRaから温度情報を読み取ったりする。
【0037】
例えば、
図2Aに示すように、医薬品Aに貼付するタグRaの記録部Maに、温度情報が時系列で記録されるようにする。
図2Aにおいては、記録部Maに温度情報管理エリアDa0が設けられており、時系列で連続する複数の温度情報1~温度情報nが温度情報管理エリアDa0に記録されている。
【0038】
一般的に、タグRaの記録部Maの容量は大きくない。そのため、時系列で温度情報を記録する場合、全ての温度情報を記録部Maに記録することができず、保管温度の管理ができない可能性がある。
【0039】
そのため、時系列で温度情報を記録するのではなく、温度逸脱情報(本発明における環境情報の一例)のみを記録部Maに記録すれば、記録部Maへの記録量を削減することができる。温度逸脱情報は、保管温度を逸脱した時間と温度の情報であり、保管温度を逸脱した期間のみ、その時刻と温度が記録部Maに記録される。このような温度逸脱情報により、記録部Maに記録する記録量を削減することができる。
【0040】
加えて、タグRaに故障等の不具合が発生して、記録部Maへの温度情報の読み書きができなくなる場合を考慮すると、対象のタグRaから他のタグRb、Rcへ温度情報をコピーすることが考えられる。この場合も、時系列の温度情報ではなく、温度逸脱情報のみをコピーすれば、記録部Maや他のタグRb、Rcの記録部への記録量を削減することができる。これにより、対象のタグRaに不具合が発生しても、他のタグRb、Rcから対象のタグRaの温度逸脱情報を復旧可能である。なお、復旧方法については、
図8~
図10Fを参照して後述する。
【0041】
この場合、同じ庫内31(同じ保管環境下)の複数の医薬品40をいくつかのグループにグループ化する。例えば、医薬品A、B、Cを1つのグループにグループ化する。そして、同じグループのタグRa、Rb、Rcにおいて、同じグループの全てのタグRa、Rb、Rcの温度逸脱情報を記録部に記録するようにする。
【0042】
例えば、
図2Bに示すように、タグRaの記録部Maに、タグRaが貼付される医薬品Aの温度逸脱情報と、同じグループの医薬品A、B、Cの温度逸脱情報が記録されるようにする。
図2Bにおいては、記録部Maに、個別エリアDa11とグループエリアDa12とを有する管理エリアDa1が設けられている。
【0043】
管理エリアDa1は、温度情報を管理するエリアであり、個別エリアDa11には、タグRaが貼付される医薬品Aのグループ化前の温度逸脱情報1が記録され、グループエリアDa12には、グループ化後の医薬品A、B、Cの温度逸脱情報2~4が記録される。
【0044】
このように、RFIDタグ41の記録部に記録する情報を温度逸脱情報とすることにより、記録部に記録する記録量を削減することができる。また、同じグループのRFIDタグ41において、同じグループの全てのRFIDタグ41の温度逸脱情報を記録部に記録することにより、同じグループ内で不具合が発生したRFIDタグ41の温度逸脱情報を復旧可能である。また、グループ化することにより、グループ内の医薬品40の数を限定することができ、これにより、記録部に記録する温度逸脱情報も限定することになり、記録部に記録する記録量を削減可能である。
【0045】
図2Bに示す例では、グループ化の条件を定めることなく、庫内31の複数の医薬品40をグループ化しているが、例えば、同じ管理条件の医薬品40がある場合には、同じ管理条件の医薬品40同士をグループ化した方がよい。
【0046】
例えば、医薬品Aと医薬品Bの温度の管理条件が同じ場合には、グループエリアDa12には、同じ管理条件でグループ化後の医薬品A、Bの温度逸脱情報2、3が記録されるが、管理条件が同じであるので、温度逸脱情報2、3は同じ情報となる。そのため、タグRaの記録部MaのグループエリアDa12には、
図2Cに示すように、温度逸脱情報2が記録され、タグRbの記録部のグループエリアには、温度逸脱情報3が記録される。
【0047】
このように、管理条件が同じグループのRFIDタグ41においては、グループ化後は、同じ温度逸脱情報を記録部に記録することになる。このため、同じグループ内で不具合が発生したRFIDタグ41の温度逸脱情報を復旧可能である。また、同じ管理条件でグループ化することにより、グループ内の医薬品40の数を限定することができ、また、グループ化後は、同じ温度逸脱情報をそれぞれのRFIDタグ41の記録部に記録すればよい。これにより、記録部に記録する温度逸脱情報も限定することになり、記録部に記録する記録量を削減可能である。
【0048】
図2B、
図2Cに示す例では、グループエリアDa12には、同じグループの医薬品40のグループ化後の温度逸脱情報が記録されるが、グループ化前の温度逸脱情報も記録部に記録されていれば、グループ化前の温度逸脱情報も復旧可能である。医薬品40の保管温度を漏れなく管理するためには、グループ化前の温度逸脱情報も記録部に記録した方がよい。
【0049】
例えば、
図2Dに示すように、医薬品Aと同じグループの医薬品A以外の医薬品40について、そのグループ化前の温度逸脱情報を記録する共有エリアDa13を設けている。
図2Dに示す例では、医薬品Bが医薬品Aと同じグループの医薬品A以外の医薬品40であり、その温度逸脱情報5が医薬品Bのグループ化前の温度逸脱情報であり、共有エリアDa13には、温度逸脱情報5が記録される。
【0050】
図2Dに示す例では、記録部Maの管理エリアDa1は、個別エリアDa11(本発明における第1記録領域の一例)とグループエリアDa12(本発明における第3記録領域の一例)と共有エリアDa13(本発明における第2記録領域の一例)とを有する。
【0051】
このように、同じ管理条件でグループ化された複数の医薬品40のRFIDタグ41において、自分以外のRFIDタグ41のグループ化前の温度逸脱情報を記録部に記録する。なお、本実施の形態では、管理条件が同じ医薬品40同士に限らず、管理条件が異なる医薬品40同士をグループ化してもよい。この場合でも、グループ化された複数の医薬品40のRFIDタグ41において、自分以外のRFIDタグ41のグループ化前の温度逸脱情報を記録部に記録する。これにより、不具合が発生したRFIDタグ41の温度逸脱情報を、同じグループ内も他のRFIDタグ41から復旧可能である。
【0052】
図3は、本実施の形態において、医薬品管理装置10で管理する医薬品AのタグRaについて、その記録部Maの構成の一例を示す図である。ここでも、医薬品40のうちの医薬品Aを例にとって説明を行う。
【0053】
図3において、記録部Maは、以上説明した管理エリアDa1、つまり、個別エリアDa11とグループエリアDa12と共有エリアDa13とを含む管理エリアDa1を有する。また、記録部Maは、医薬品固有情報エリアDa2も有する。
【0054】
個別エリアDa11には、タグRaが貼付される医薬品Aのグループ化前の温度逸脱情報1が記録される。温度逸脱情報は、(時刻、温度)の行列データであり、温度逸脱が長時間又は複数回発生した場合、個別エリアDa11には、行列データが複数配列される。なお、温度逸脱が長時間に渡って発生した場合には、時刻及び温度に代えて、温度逸脱の継続時間等を記録して、記録する記録量が増えないようにしてもよい。
【0055】
グループエリアDa12には、医薬品Aと同じグループの医薬品40、例えば、医薬品A、Bのグループ化後の温度逸脱情報が記録される。同じ管理条件の医薬品A、Bをグループ化した場合には、上述したように、グループ化後の温度逸脱情報は同じグループ内では同じになる。温度逸脱情報は、(時刻、温度)の行列データであり、温度逸脱が長時間又は複数回発生した場合、グループエリアDa12には、行列データが複数配列される。
【0056】
一方、異なる管理条件の医薬品A、Bをグループ化した場合には、グループ化後の温度逸脱情報は医薬品A、Bでそれぞれ異なる。そのため、温度逸脱情報は、(時刻、温度、医薬品固有ID)の行列データとなり、温度逸脱が長時間又は複数回発生した場合、グループエリアDa12には、行列データが複数配列される。
【0057】
共有エリアDa13には、医薬品Aと同じグループの他の医薬品40、例えば、医薬品Bのグループ化前の温度逸脱情報が記録される。温度逸脱情報は、(時刻、温度、医薬品固有ID)の行列データとなり、温度逸脱が長時間又は複数回発生した場合、共有エリアDa13には、行列データが複数配列される。
【0058】
医薬品固有情報エリアDa2には、タグRaが貼付される医薬品Aの固有情報が記録される。具体的には、医薬品固有情報エリアDa2には、医薬品Aの医薬品固有ID、医薬品管理温度、グループIDが記録される。医薬品固有IDは、医薬品Aを識別する一意の英数字記号であり、グループIDは、グループを識別する一意の英数字記号である。医薬品管理温度は、医薬品Aを管理する上限及び下限の温度、又は、上限若しくは下限の温度である。
【0059】
また、記録部Maは、保冷庫30への医薬品Aの入庫時間、出庫時間を記録する入出庫時間エリアを有していてもよい。これにより、医薬品Aの温度逸脱情報と共に、庫内期間を管理することができる。
【0060】
[グループ化]
同じ庫内31(同じ保管環境下)での医薬品40のグループ化について、
図4~
図5Cを参照して説明を行う。
【0061】
図4は、医薬品管理装置10で実施する医薬品40のグループ化を説明するフローチャートである。
図5Aは、タグRa~タグRcの記録部に記録された情報の一例を示す図である。
図5Bは、タグRa~タグRcの記録部に記録された情報について、グループのリセットを説明する図である。
図5Cは、タグRa~タグRcの記録部に記録された情報について、グループ化を説明する図である。ここでは、医薬品40のうちの医薬品A~医薬品Cを例にとって説明を行う。
【0062】
(ステップS11)
制御装置11の制御部11aは、グループ化のイベントが発生したかどうかを確認する。グループ化のイベントが発生した場合(YES)、ステップS12へ進み、グループ化のイベントが発生していない場合(NO)、ステップS11を繰り返す。
【0063】
グループ化のイベントとは、例えば、引戸32の開閉、保冷庫30への医薬品40の入庫、保冷庫30から医薬品40の出庫等である。制御部11aは、例えば、取得部11cを用いて、引戸32の開閉センサーの開閉情報等を取得して、グループ化のイベントが発生したかどうかを確認する。
図5Aでは、医薬品A及び医薬品Bが1つのグループにグループ化されている場合において、医薬品Cが入庫されるイベントが発生した場合の例を示している。
【0064】
また、所定周期毎にグループ化を行ってもよく、その場合、例えば、所定周期毎のトリガー信号がグループ化のイベントになる。例えば、ある医薬品40において温度逸脱が長時間又は複数回発生した場合、グループを再編して、温度逸脱がない又は少ない他の医薬品40とグループ化することにより、記録部の記録容量の制限により書き込みができなくなることを回避することが可能である。
【0065】
(ステップS12)
制御部11aは、医薬品40のグループをリセットする。具体的には、制御部11aは、読み書き部11b及びアンテナ22を用いて、医薬品A及び医薬品BのタグRa、タグRbの記憶部において、
図5Bにも示すように、グループエリアの情報をそれぞれの個別エリアに移動し、共有エリアの情報をクリアする。
【0066】
(ステップS13)
制御部11aは、管理条件が同じ医薬品40があるかどうかを確認する。具体的には、制御部11aは、読み書き部11b及びアンテナ22を用いて、医薬品A~医薬品CのタグRa~タグRcを読み込んで、管理条件が同じ医薬品40があるかどうかを確認する。管理条件が同じ医薬品40がある場合(YES)、ステップS14へ進み、管理条件が同じ医薬品40がない場合(NO)、ステップS17へ進む。
【0067】
(ステップS14)
制御部11aは、温度逸脱情報が0個の医薬品40があるかどうかを確認する。具体的には、制御部11aは、読み書き部11b及びアンテナ22を用いて、医薬品A~医薬品CのタグRa~タグRcを読み込んで、温度逸脱情報が0個の医薬品40があるかどうかを確認する。上記ステップS12で説明したように、タグRa、タグRbの記憶部において、グループエリアの情報は個別エリアに移動され、共有エリアの情報はクリアされている。そのため、ここでは、制御部11aは、タグRa~タグRcの記憶部の個別エリアにおいて、温度逸脱情報の数を確認する。温度逸脱情報が0個の医薬品40がある場合(YES)、ステップS15へ進み、温度逸脱情報が0個の医薬品40がない場合(NO)、ステップS16へ進む。
【0068】
(ステップS15)
制御部11aは、温度逸脱情報が0個の医薬品40をグループ化する。この場合、温度逸脱情報が0個の医薬品40を、1つのグループにしてもよいし、2~3個毎に1つのグループとしてもよい。
【0069】
(ステップS16)
制御部11aは、温度逸脱情報を有する医薬品40を複数個毎にグループ化する。この場合、制御部11aは、共有エリアの情報を少なくするため、医薬品40を2~3個毎に1つのグループとする。また、温度逸脱情報が少ない医薬品40同士を組み合わせてグループ化してもよいし、温度逸脱情報が多い医薬品40と温度逸脱情報が少ない医薬品40とを組み合わせてグループ化してもよい。
【0070】
図5A~
図5Cは、ステップS16に該当する例であり、医薬品A~医薬品Cは同じ管理条件であるが、医薬品A及び医薬品Bが温度逸脱情報を有しており、医薬品A~医薬品Cを1つのグループとする例である。
【0071】
(ステップS17)
制御部11aは、管理条件が異なる医薬品40を複数個毎にグループ化する。この場合も、制御部11aは、共有エリアの情報を少なくするため、医薬品40を2~3個毎に1つのグループとする。また、温度逸脱情報が少ない医薬品40同士を組み合わせてグループ化してもよいし、温度逸脱情報が多い医薬品40と温度逸脱情報が少ない医薬品40とを組み合わせてグループ化してもよい。また、管理条件が近い医薬品40同士を組み合わせてグループ化してもよい。
【0072】
(ステップS18)
制御部11aは、グループ内において、それぞれの個別エリアの情報を、当該情報を有するRFIDタグ41とは異なるRFIDタグ41の共有エリアにコピーする。具体的には、制御部11aは、読み書き部11b及びアンテナ22を用いて、グループ内において、それぞれの個別エリアの情報を、当該情報を有するRFIDタグ41とは異なるRFIDタグ41の共有エリアにコピーする。
【0073】
例えば、
図5Cでは、グループ内において、医薬品AのタグRaの個別エリアの情報(温度逸脱情報1、6)を、当該情報を有するタグRaとは異なるタグRb、タグRcの共有エリアにコピーする。同様に、医薬品BのタグRbの個別エリアの情報(温度逸脱情報2、6)を、当該情報を有するタグRbとは異なるタグRa、タグRcの共有エリアにコピーする。同様に、医薬品CのタグRcの個別エリアの情報も、当該情報を有するタグRcとは異なるタグRa、タグRbの共有エリアにコピーするが、
図5Cに示す例では、タグRcの個別エリアに情報がないので、コピーは行っていない。
【0074】
(ステップS19)
制御部11aは、グループ内において、グループIDを共有する。具体的には、制御部11aは、読み書き部11b及びアンテナ22を用いて、グループ内のRFIDタグ41の医薬品固有情報エリアにおいて、同じグループIDを書き込む。
【0075】
以上の手順により、複数の医薬品40をグループ化し、グループ化された複数の医薬品40のそれぞれのRFIDタグ41に、グループ内の医薬品40の温度逸脱情報を互いに書き込むようにしている。これにより、グループ内のRFIDタグ41は、互いの温度逸脱情報を持ち合うことができる。
【0076】
なお、温度逸脱情報を有しているグループは、温度逸脱情報の拡散を防ぐため、そのグループはリセットせず、新たに入庫された医薬品40は、温度逸脱情報を有していないグループと優先的にグループ化するようにしてもよい。
【0077】
[温度逸脱情報の記録]
医薬品40のRFIDタグ41への温度逸脱情報の記録について、
図6~
図7Dを参照して説明を行う。
【0078】
図6は、医薬品管理装置10で実施する医薬品40のRFIDタグ41への温度逸脱情報の記録を説明するフローチャートである。
図7Aは、グループ化された同じ管理条件の医薬品A~医薬品CのタグRa~タグRcに記録された情報の一例を示す図である。
図7Bは、グループ化された同じ管理条件の医薬品A~医薬品CのタグRa~タグRcであって、グループエリアを使用しない場合のタグRa~タグRcに記録された情報の一例を示す図である。
図7Cは、グループ化された異なる管理条件の医薬品A~医薬品CのタグRa~タグRcに記録された情報の一例を示す図である。
図7Dは、グループ化された異なる管理条件の医薬品A~医薬品CのタグRa~タグRcであって、グループエリアを使用しない場合のタグRa~タグRcに記録された情報の一例を示す図である。
【0079】
なお、ここでは、一例として、医薬品A~医薬品Cがグループ化され、タグRa~タグRcに記録された情報は、ステップS24を除いて、
図5Cに示す状態を、温度逸脱情報が新たに記録される前の状態とする。
【0080】
(ステップS21)
制御装置11の制御部11aは、温度逸脱のイベントが発生したかどうかを確認する。温度逸脱のイベントが発生した場合(YES)、ステップS22へ進み、温度逸脱のイベントが発生していない場合(NO)、ステップS21を繰り返す。
【0081】
制御部11aは、例えば、取得部11cを用いて、庫内31の温度センサーやケージ20の温度センサー23の温度情報を取得する。そして、取得された温度情報を、医薬品A~医薬品CのタグRa~タグRcに記録された医薬品管理温度と比較することにより、温度逸脱のイベントが発生したかどうかを確認する。
【0082】
(ステップS22)
制御部11aは、グループ内の管理条件が同じかどうかを確認する。具体的には、制御部11aは、読み書き部11b及びアンテナ22を用いて、医薬品A~医薬品CのタグRa~タグRcを読み込んで、グループ内の管理条件が同じかどうかを確認する。グループ内の管理条件が同じ場合(YES)、ステップS23へ進み、グループ内の管理条件が同じでない場合(NO)、ステップS24へ進む。
【0083】
(ステップS23)
制御部11aは、グループ内において、タグRa~タグRcのグループエリアに温度逸脱情報(時刻、温度)を記録する。具体的には、制御部11aは、読み書き部11b及びアンテナ22を用いて、
図7Aに示すように、グループ内において、タグRa~タグRcのグループエリアに温度逸脱情報7(時刻、温度)を記録する。ここでは、医薬品A~医薬品Cは同じ管理条件αであり、例えば、庫内31の温度が管理条件αを逸脱した場合には、医薬品A~医薬品Cは全て保管温度を逸脱することになる。そのため、タグRa~タグRcのそれぞれのグループエリアには、同じ温度逸脱情報7が記録される。
【0084】
図7Bは、
図7Aとの比較のため、グループ化された同じ管理条件の医薬品A~医薬品CのタグRa~タグRcであって、グループエリアを使用しない場合のタグRa~タグRcに記録された情報の一例を示す図である。
【0085】
図7Aに示す例では、グループエリアを使用するので、タグRa~タグRcのグループエリアに温度逸脱情報7を記録すればよい。一方、
図7Bに示す例では、グループエリアを使用しないので、タグRa~タグRcの個別エリアに温度逸脱情報7を追記する必要がある。更に、情報の復旧のためには、それぞれの個別エリアに追記した情報を、当該情報を有するRFIDタグ41とは異なるRFIDタグ41の共有エリアに追記する必要がある。そのため、
図7Bに示す例は、
図7Aに示す例より多くの情報量が必要となる。
【0086】
(ステップS24)
制御部11aは、グループ内において、タグRa~タグRcのグループエリアに温度逸脱情報(時刻、温度、医薬品固有ID)を記録する。具体的には、制御部11aは、読み書き部11b及びアンテナ22を用いて、
図7Cに示すように、グループ内において、タグRa~タグRcのグループエリアに温度逸脱情報7(時刻、温度、医薬品固有ID)を記録する。ここでは、医薬品A及び医薬品Bは管理条件αであり、医薬品Cは管理条件βであり、グループ内の管理条件が異なる。そして、例えば、庫内31の温度が管理条件βを逸脱した場合には、医薬品Cが保管温度を逸脱することになる。そのため、タグRa~タグRcのそれぞれのグループエリアには、医薬品Cに対する温度逸脱情報7が記録される。
【0087】
図7Dは、
図7Cとの比較のため、グループ化された異なる管理条件の医薬品A~医薬品CのタグRa~タグRcであって、グループエリアを使用しない場合のタグRa~タグRcに記録された情報の一例を示す図である。
【0088】
図7Cに示す例では、グループエリアを使用するので、タグRa~タグRcのグループエリアに温度逸脱情報7を記録すればよい。一方、
図7Dに示す例では、グループエリアを使用しないので、個別エリアに温度逸脱情報を追記する必要がある。ここでは、医薬品Cにのみ温度逸脱情報7があるので、タグRcの個別エリアに温度逸脱情報7を追記する。更に、情報の復旧のためには、それぞれの個別エリアに追記した情報を、当該情報を有するRFIDタグ41とは異なるRFIDタグ41の共有エリアに追記する必要がある。ここでは、医薬品Cにのみ温度逸脱情報7があるので、タグRcとは異なるタグRa、RBの共有エリアに温度逸脱情報7を追記する。グループ化された異なる管理条件の医薬品A~医薬品Cの場合は、
図7Cに示す例と
図7Dに示す例とでは、追加の情報量は同じであった。
【0089】
[温度逸脱情報の復旧]
医薬品40のRFIDタグ41について、温度逸脱情報の復旧について、
図8~
図10Fを参照して説明を行う。
【0090】
図8は、医薬品管理装置10で実施する医薬品40のRFIDタグ41における情報の復旧を説明するフローチャートである。
図9は、RFIDタグ41における情報の復旧と引戸の開閉との関係を示すタイムチャートである。
【0091】
また、
図10Aは、グループ化された同じ管理条件の医薬品40のRFIDタグ41における情報の復旧を説明する図である。
図10Bは、
図10Aに示したRFIDタグ41における情報の復旧後を示す図である。
図10Cは、グループ化された異なる管理条件の医薬品40のRFIDタグ41における情報の復旧を説明する図である。
図10Dは、
図10Cに示したRFIDタグ41における情報の復旧後を示す図である。
図10Eは、グループ化された異なる管理条件の医薬品のRFIDタグであって、グループエリアを使用しない場合のRFIDタグ41における情報の復旧を説明する図である。
図10Fは、
図10Eに示したRFIDタグ41における情報の復旧後を示す図である。
【0092】
情報の復旧の前段階として、制御装置11の制御部11aは、定期的に、又は、医薬品40の入出庫時に、RFIDタグ41の読み書きが可能か確認し、読み書きできなかった場合、RFIDタグ41が故障していると判定する。この故障は、RFIDタグ41の物理的な故障に限らず、論理的な故障も含まれる。
【0093】
(ステップS31)
制御部11aは、復旧の指示があったかどうかを確認する。復旧の指示があった場合(YES)、ステップS32へ進み、復旧の指示がない場合(NO)、ステップS31を繰り返す。
【0094】
制御部11aは、例えば、故障があったRFIDタグ41を初期化したり、交換したりした後、操作表示装置12を介して、ユーザーから復旧指示があった場合、復旧の指示があったと判定する。この場合、ユーザーは、復旧指示と共に、復旧対象の医薬品40を指示する。
図10A、
図10C及び
図10Eにおいては、医薬品BのタグRbが復旧対象として指示される例を示している。また、
図10A、
図10C及び
図10Eにおいては、コピーされる情報を点線で囲っている。
【0095】
医薬品40のRFIDタグ41の情報の復旧は、同一グループ内の他の医薬品40のRFIDタグ41からであれば復旧可能である。同一グループ内の医薬品40であるということは、同じ保管環境であることを意味している。対象の医薬品40が同一グループから外れていないかどうかは、引戸32の開閉情報によって判断する方法があり、また、保冷庫30にカメラ等の撮影装置を設け、撮影装置による撮影データにより確認する方法等でもよい。
【0096】
図9は、引戸32の開閉情報により、対象の医薬品40が同一グループから外れていないかどうかを判断して復旧する例である。
図9に示すように、引戸32が閉まっている状態である場合、対象の医薬品40が同一グループから外れていない、つまり、庫内31のグループ構成に変更がないと判断できる。この場合、同一グループの他の医薬品40のRFIDタグ41から、対象の医薬品40のRFIDタグ41の情報を復旧することが可能である。但し、故障があったRFIDタグ41を交換する場合、交換時に要する短時間の引戸32の開閉は、閉まっている状態とみなす。例えば、
図9において、タグRbを交換した場合、引戸32が閉まっている状態とみなすことができれば、庫内31のグループ構成の変化がないので、タグRbと同じグループのタグRa、Rcからの情報の復旧が可能である。
【0097】
(ステップS32)
制御部11aは、グループ内において、RFIDタグ41の共有エリアから復旧対象のRFIDタグ41の情報を検索し、検索した情報を復旧対象のRFIDタグ41の個別エリアにコピーする。具体的には、制御部11aは、読み書き部11b及びアンテナ22を用いて、グループ内のタグRa及びタグRcの共有エリアから復旧対象のタグRbの情報を検索して読み込む。そして、制御部11aは、読み書き部11b及びアンテナ22を用いて、検索して読み込んだ情報を復旧対象のタグRbの個別エリアにコピーする。
【0098】
【0099】
(ステップS33)
制御部11aは、グループ内において、RFIDタグ41のグループエリアの情報を復旧対象のRFIDタグ41のグループエリアにコピーする。具体的には、制御部11aは、読み書き部11b及びアンテナ22を用いて、グループ内のタグRa、タグRcのグループエリアの情報を復旧対象のタグRbのグループエリアにコピーする。
【0100】
例えば、
図10A及び
図10Bに示す例では、グループ内のタグRa、タグRcのグループエリアの温度逸脱情報7を復旧対象のタグRbのグループエリアにコピーする。
図10C及び
図10Dに示す例でも、
図10A及び
図10Bに示す例と同じである。一方、
図10E及び
図10Fに示す例では、グループエリアを使用しないので、このステップS33は実行しない。
【0101】
(ステップS34)
制御部11aは、グループ内において、復旧対象のRFIDタグ41以外のRFIDタグ41の個別エリアの情報を、復旧対象のRFIDタグ41の共有エリアにコピーする。具体的には、制御部11aは、読み書き部11b及びアンテナ22を用いて、グループ内において、復旧対象のタグRb以外のタグRa、Rcの個別エリアの情報を、復旧対象のタグRbの共有エリアにコピーする。
【0102】
例えば、
図10A及び
図10Bに示す例では、グループ内のタグRa、タグRcの個別エリアの情報を復旧対象のタグRbの共有エリアにコピーするが、ここでは、タグRcの個別エリアには情報がない。そのため、タグRaの個別エリアの温度逸脱情報1、6を復旧対象のタグRbの共有エリアにコピーする。
図10C及び
図10Dに示す例でも、
図10A及び
図10Bに示す例と同じである。一方、
図10E及び
図10Fに示す例では、タグRcの個別エリアに情報があるので、タグRaの個別エリアの温度逸脱情報1、6とタグRcの個別エリアの温度逸脱情報7を復旧対象のタグRbの共有エリアにコピーする。
【0103】
【0104】
以上説明したように、本実施の形態において、制御装置11の制御部11aは、読み書き部11b及びアンテナ22を用いて、グループ化された複数の40医薬品のそれぞれのRFIDタグ41に、グループ内の医薬品40の温度逸脱情報を互いに書き込む。グループ内の第1医薬品40のRFIDタグ41の情報を復旧する場合、制御部11aは、読み書き部11b及びアンテナ22を用いて、第1医薬品40以外の第2医薬品40のRFIDタグ41から第1医薬品40の温度逸脱情報を読み取る。そして、制御部11aは、読み書き部11b及びアンテナ22を用いて、読み取った温度逸脱情報を、第1医薬品40のRFIDタグ41に書き込む。
【0105】
このように構成した本実施の形態の医薬品管理装置10によれば、第1医薬品40のRFIDタグ41に記録される温度逸脱情報を、第2医薬品40のRFIDタグ41から復旧することができる。
【0106】
<変形例1>
図11は、本実施の形態の変形例としての医薬品管理システム100の一例を示す図である。
【0107】
医薬品管理システム100は、上述した医薬品管理装置10と、ネットワークNWと、サーバ50とを有する。
【0108】
医薬品管理装置10は、上述した通りであるので、重複する説明は省略する。ネットワークNWは、医薬品管理装置10とサーバ50との間において、各種データの送受信を行う。ネットワークNWには、外部端末60も接続される。外部端末60は、例えば、コンピューターであり、サーバ50介して、RFIDタグ41の情報を確認したり、RFIDタグ41に設定される情報、例えば、医薬品管理温度等を変更したりすることができる。
【0109】
サーバ50は、コンピューターであり、記憶装置51(本発明における記憶部の一例)を含む。サーバ50は、ネットワークNWや制御装置11の通信部11dを介し、上述した読み書き部11bと温度逸脱情報等を送受信可能に構成されている。例えば、サーバ50は、読み書き部11bを介して、RFIDタグ41の記録部に記録された温度逸脱情報等を取得し、記憶装置51に記憶する。
【0110】
記憶装置51は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等であり、RFIDタグ41の記録部の個別エリア、グループエリア及び共有エリアに対応して、サーバ側個別エリア、サーバ側グループエリア及びサーバ側共有エリアを有する。そして、RFIDタグ41の記録部の個別エリア、グループエリア及び共有エリアは、それぞれ、サーバ側個別エリア、サーバ側グループエリア及びサーバ側共有エリアに記憶される。これにより、サーバ50は、同一グループ内の医薬品40のそれぞれのRFIDタグ41から温度逸脱情報等を取得して記憶装置51に記憶することになる。
【0111】
記憶装置51は、RFIDタグ41の記録部と同様に、サーバ側個別エリア、サーバ側グループエリア及びサーバ側共有エリアを有する。そのため、制御装置11は、サーバ側個別エリア、サーバ側グループエリア及びサーバ側共有エリアに記憶された情報に基づいて、
図8において説明した温度逸脱情報の復旧を行うことができる。
【0112】
例えば、1つのグループの医薬品A~医薬品Cにおいて、医薬品BのタグRbを復旧対象とする。この場合、制御装置11(読み書き部11b)は、記憶装置51のサーバ側個別エリア、サーバ側グループエリア及びサーバ側共有エリアにおいて、医薬品A、CのタグRa、Rbの個別エリア、グループエリア及び共有エリアに対応する情報を読み取る。そして、制御装置11(読み書き部11b)は、記憶装置51のサーバ側個別エリア、サーバ側グループエリア及びサーバ側共有エリアから読み取った情報を、タグRbの個別エリア、グループエリア及び共有エリアに書き込む。
【0113】
このように、医薬品管理システム100でも、上述した医薬品管理装置10と同様に、医薬品40に対する温度逸脱情報を復旧することができる。
【0114】
なお、ここでは、RFIDタグ41の記録部の情報を、サーバ50の記憶装置51に記憶しているが、これに代えて、制御装置11に記憶装置11e(本発明における記憶部の一例)を設け、記憶装置11eに記憶するようにしてもよい。この場合でも、上述した医薬品管理装置10と同様に、医薬品40に対する温度逸脱情報を復旧することができる。
【0115】
以上、本発明の実施の形態について説明した。なお、以上の説明は、本発明の好適な実施の形態の例証であり、本発明の範囲はこれに限定されない。つまり、上記装置の構成や各部分の形状についての説明は一例であり、本発明の範囲においてこれらの例に対する様々な変更や追加が可能であることは明らかである。
【0116】
例えば、上記実施の形態では、環境情報を温度情報としているが、温度情報に限らず、湿度情報、遮光情報等、医薬品の保管に関連する情報であればよい。
【0117】
また、上記実施の形態では、無線タグとして、RFIDタグを例示しているが、無線で情報を読み書き可能であれば、RFIDタグ以外のものでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明に係る医薬品管理装置、医薬品管理方法、医薬品管理プログラムは、例えば、医薬品の管理、特に、スペシャリティ医薬品の管理に有用である。
【符号の説明】
【0119】
10 医薬品管理装置
11 制御装置
11a 制御部
11b 読み書き部
11c 取得部
11d 通信部
11e 記憶装置
12 操作表示装置
20 ケージ
21 容器
22 アンテナ
23 温度センサー
30 保冷庫
31 庫内
32 引戸
40 医薬品
41 RFIDタグ
50 サーバ
51 記憶装置