(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128599
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】制御方法、制御装置、及び車両
(51)【国際特許分類】
B60L 58/24 20190101AFI20240913BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20240913BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20240913BHJP
H01M 10/615 20140101ALI20240913BHJP
H01M 10/633 20140101ALI20240913BHJP
【FI】
B60L58/24
H01M10/625
H01M10/613
H01M10/615
H01M10/633
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037645
(22)【出願日】2023-03-10
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-05-09
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷 勇輝
(72)【発明者】
【氏名】大垣 徹
【テーマコード(参考)】
5H031
5H125
【Fターム(参考)】
5H031CC09
5H125AA01
5H125AC12
5H125AC22
5H125BC08
5H125BC19
5H125CA18
5H125DD02
5H125EE25
5H125EE27
5H125EE61
(57)【要約】
【課題】車両が充電予定の充電設備に到着する前に、複数のバッテリモジュールを有するバッテリを適切に温調すること。
【解決手段】制御装置17は、温度が相対的に高い第1バッテリモジュール11mの温度である第1温度が目標温度になるようにバッテリ11を温調した場合の充電設備における充電時間である第1充電時間と、温度が相対的に低い第2バッテリモジュール11mの温度である第2温度が目標温度になるようにバッテリ11を温調した場合の充電設備における充電時間である第2充電時間とを予測し、第1充電時間と第2充電時間との比較結果に基づいて、第1温度又は第2温度が目標温度になるようにバッテリ11を温調する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のバッテリモジュールを有するバッテリと、前記バッテリを温調可能な温調装置と、を備える車両を制御するコンピュータが行う制御方法であって、
前記コンピュータは、
前記車両の走行予定経路に含まれる充電設備にて前記バッテリが充電予定の場合に、前記充電設備への到着時の前記バッテリの温度が所定の目標温度となるように前記温調装置により前記バッテリを温調可能に構成され、
前記コンピュータが、
前記複数のバッテリモジュールのうち、温度が相対的に高い第1バッテリモジュールの温度である第1温度と、温度が相対的に低い第2バッテリモジュールの温度である第2温度との現在の温度差に基づいて、前記第1温度が前記目標温度になるように前記バッテリを温調した場合の前記充電設備への到着時の前記第2温度の予測値である第1予測値を導出し、
前記充電設備への到着時の前記バッテリの残容量と、前記第1予測値とに基づいて、前記第1温度が前記目標温度になるように前記バッテリを温調した場合の前記充電設備における充電時間である第1充電時間を予測し、
前記温度差に基づいて、前記第2温度が前記目標温度になるように前記バッテリを温調した場合の前記充電設備への到着時の前記第1温度の予測値である第2予測値を導出し、
前記充電設備への到着時の前記バッテリの残容量と、前記第2予測値とに基づいて、前記第2温度が前記目標温度になるように前記バッテリを温調した場合の前記充電設備における充電時間である第2充電時間を予測し、
前記第1充電時間と、前記第2充電時間との比較結果に基づいて、前記第1温度又は前記第2温度が前記目標温度になるように前記バッテリを温調する、
処理を行う、制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載の制御方法であって、
前記コンピュータが、
前記第1充電時間が前記第2充電時間よりも短い場合に、前記第1温度が前記目標温度になるように前記バッテリを温調し、
前記第2充電時間が前記第1充電時間よりも短い場合に、前記第2温度が前記目標温度になるように前記バッテリを温調する、
処理を行う、制御方法。
【請求項3】
請求項1に記載の制御方法であって、
前記コンピュータが、
前記充電設備への到着時の前記バッテリの残容量と、前記第1予測値と、前記充電設備の出力性能とに基づいて、前記第1充電時間を予測し、
前記充電設備への到着時の前記バッテリの残容量と、前記第2予測値と、前記充電設備の出力性能とに基づいて、前記第2充電時間を予測する、
処理を行う、制御方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の制御方法であって、
前記コンピュータが、
現在の前記第1温度又は前記第2温度に基づいて、前記バッテリを温調しなかった場合の前記充電設備への到着時の前記第1温度の予測値である第3予測値又は前記第2温度の予測値である第4予測値を導出し、
前記充電設備への到着時の前記バッテリの残容量と、前記第3予測値又は前記第4予測値とに基づいて、前記バッテリを温調しなかった場合の前記充電設備における充電時間である第3充電時間を予測する、
処理をさらに行い、
前記第1充電時間と前記第2充電時間と前記第3充電時間とのうち前記第1充電時間が最も短い場合に、前記第1温度が前記目標温度になるように前記バッテリを温調し、
前記第1充電時間と前記第2充電時間と前記第3充電時間とのうち前記第2充電時間が最も短い場合に、前記第2温度が前記目標温度になるように前記バッテリを温調し、
前記第1充電時間と前記第2充電時間と前記第3充電時間とのうち前記第3充電時間が最も短い場合に、前記バッテリの温調を行わない、
処理を行う、制御方法。
【請求項5】
複数のバッテリモジュールを有するバッテリと、前記バッテリを温調可能な温調装置と、を備える車両を制御する制御装置であって、
前記制御装置は、
前記車両の走行予定経路に含まれる充電設備にて前記バッテリが充電予定の場合に、前記充電設備への到着時の前記バッテリの温度が所定の目標温度となるように前記温調装置により前記バッテリを温調可能に構成され、
前記複数のバッテリモジュールのうち、温度が相対的に高い第1バッテリモジュールの温度である第1温度と、温度が相対的に低い第2バッテリモジュールの温度である第2温度との現在の温度差に基づいて、前記第1温度が前記目標温度になるように前記バッテリを温調した場合の前記充電設備への到着時の前記第2温度の予測値である第1予測値を導出し、
前記充電設備への到着時の前記バッテリの残容量と、前記第1予測値とに基づいて、前記第1温度が前記目標温度になるように前記バッテリを温調した場合の前記充電設備における充電時間である第1充電時間を予測し、
前記温度差に基づいて、前記第2温度が前記目標温度になるように前記バッテリを温調した場合の前記充電設備への到着時の前記第1温度の予測値である第2予測値を導出し、
前記充電設備への到着時の前記バッテリの残容量と、前記第2予測値とに基づいて、前記第2温度が前記目標温度になるように前記バッテリを温調した場合の前記充電設備における充電時間である第2充電時間を予測し、
前記第1充電時間と、前記第2充電時間との比較結果に基づいて、前記第1温度又は前記第2温度が前記目標温度になるように前記バッテリを温調する、
処理を行う処理部を備える、制御装置。
【請求項6】
複数のバッテリモジュールを有するバッテリと、前記バッテリを温調可能な温調装置と、制御装置と、を備える車両であって、
前記制御装置は、
前記車両の走行予定経路に含まれる充電設備にて前記バッテリが充電予定の場合に、前記充電設備への到着時の前記バッテリの温度が所定の目標温度となるように前記温調装置により前記バッテリを温調可能に構成され、
前記複数のバッテリモジュールのうち、温度が相対的に高い第1バッテリモジュールの温度である第1温度と、温度が相対的に低い第2バッテリモジュールの温度である第2温度との現在の温度差に基づいて、前記第1温度が前記目標温度になるように前記バッテリを温調した場合の前記充電設備への到着時の前記第2温度の予測値である第1予測値を導出し、
前記充電設備への到着時の前記バッテリの残容量と、前記第1予測値とに基づいて、前記第1温度が前記目標温度になるように前記バッテリを温調した場合の前記充電設備における充電時間である第1充電時間を予測し、
前記温度差に基づいて、前記第2温度が前記目標温度になるように前記バッテリを温調した場合の前記充電設備への到着時の前記第1温度の予測値である第2予測値を導出し、
前記充電設備への到着時の前記バッテリの残容量と、前記第2予測値とに基づいて、前記第2温度が前記目標温度になるように前記バッテリを温調した場合の前記充電設備における充電時間である第2充電時間を予測し、
前記第1充電時間と、前記第2充電時間との比較結果に基づいて、前記第1温度又は前記第2温度が前記目標温度になるように前記バッテリを温調する、
処理を行う処理部を備える、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御方法、制御装置、及び車両に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球の気候変動に対する具体的な対策として、低炭素社会又は脱炭素社会の実現に向けた取り組みが活発化している。自動車等の車両においても、CO2排出量の削減やエネルギー効率の向上が要求され、駆動源の電動化が進んでいる。例えば、駆動輪を駆動する駆動源としてのモータ(「トラクションモータ」とも称される)と、このモータに電力を供給する電源としてのバッテリとを備える電気自動車が開発されている。
【0003】
充電開始時には、バッテリが適切な温度であることが望まれる。例えば、下記特許文献1には、車両の到着地(例えば充電ステーション)でのバッテリの状態に影響する車両利用情報を取得し、当該車両利用情報に基づき、バッテリに対して実施される温調制御の目標電池温度を設定初期値から変更するようにした技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複数のバッテリモジュールを有するバッテリにあっては、バッテリモジュールごとに温度がばらつくことがある。仮に、このようなバッテリモジュールごとの温度のばらつきを考慮せずに充電開始前のバッテリの温調を行ってしまうと、当該温調を行ったがゆえにかえって充電時間が長くなるといった事態も発生し得る。
【0006】
本発明は、車両が充電予定の充電設備に到着する前に、複数のバッテリモジュールを有するバッテリを適切に温調することを可能にする制御方法、制御装置、及び車両を提供する。そして、延いてはエネルギー効率の改善に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、
複数のバッテリモジュールを有するバッテリと、前記バッテリを温調可能な温調装置と、を備える車両を制御するコンピュータが行う制御方法であって、
前記コンピュータは、
前記車両の走行予定経路に含まれる充電設備にて前記バッテリが充電予定の場合に、前記充電設備への到着時の前記バッテリの温度が所定の目標温度となるように前記温調装置により前記バッテリを温調可能に構成され、
前記コンピュータが、
前記複数のバッテリモジュールのうち、温度が相対的に高い第1バッテリモジュールの温度である第1温度と、温度が相対的に低い第2バッテリモジュールの温度である第2温度との現在の温度差に基づいて、前記第1温度が前記目標温度になるように前記バッテリを温調した場合の前記充電設備への到着時の前記第2温度の予測値である第1予測値を導出し、
前記充電設備への到着時の前記バッテリの残容量と、前記第1予測値とに基づいて、前記第1温度が前記目標温度になるように前記バッテリを温調した場合の前記充電設備における充電時間である第1充電時間を予測し、
前記温度差に基づいて、前記第2温度が前記目標温度になるように前記バッテリを温調した場合の前記充電設備への到着時の前記第1温度の予測値である第2予測値を導出し、
前記充電設備への到着時の前記バッテリの残容量と、前記第2予測値とに基づいて、前記第2温度が前記目標温度になるように前記バッテリを温調した場合の前記充電設備における充電時間である第2充電時間を予測し、
前記第1充電時間と、前記第2充電時間との比較結果に基づいて、前記第1温度又は前記第2温度が前記目標温度になるように前記バッテリを温調する、
処理を行う、制御方法である。
【0008】
また、本発明の他の一態様は、
複数のバッテリモジュールを有するバッテリと、前記バッテリを温調可能な温調装置と、を備える車両を制御する制御装置であって、
前記制御装置は、
前記車両の走行予定経路に含まれる充電設備にて前記バッテリが充電予定の場合に、前記充電設備への到着時の前記バッテリの温度が所定の目標温度となるように前記温調装置により前記バッテリを温調可能に構成され、
前記複数のバッテリモジュールのうち、温度が相対的に高い第1バッテリモジュールの温度である第1温度と、温度が相対的に低い第2バッテリモジュールの温度である第2温度との現在の温度差に基づいて、前記第1温度が前記目標温度になるように前記バッテリを温調した場合の前記充電設備への到着時の前記第2温度の予測値である第1予測値を導出し、
前記充電設備への到着時の前記バッテリの残容量と、前記第1予測値とに基づいて、前記第1温度が前記目標温度になるように前記バッテリを温調した場合の前記充電設備における充電時間である第1充電時間を予測し、
前記温度差に基づいて、前記第2温度が前記目標温度になるように前記バッテリを温調した場合の前記充電設備への到着時の前記第1温度の予測値である第2予測値を導出し、
前記充電設備への到着時の前記バッテリの残容量と、前記第2予測値とに基づいて、前記第2温度が前記目標温度になるように前記バッテリを温調した場合の前記充電設備における充電時間である第2充電時間を予測し、
前記第1充電時間と、前記第2充電時間との比較結果に基づいて、前記第1温度又は前記第2温度が前記目標温度になるように前記バッテリを温調する、
処理を行う処理部を備える、制御装置である。
【0009】
また、本発明の他の一態様は、
複数のバッテリモジュールを有するバッテリと、前記バッテリを温調可能な温調装置と、制御装置と、を備える車両であって、
前記制御装置は、
前記車両の走行予定経路に含まれる充電設備にて前記バッテリが充電予定の場合に、前記充電設備への到着時の前記バッテリの温度が所定の目標温度となるように前記温調装置により前記バッテリを温調可能に構成され、
前記複数のバッテリモジュールのうち、温度が相対的に高い第1バッテリモジュールの温度である第1温度と、温度が相対的に低い第2バッテリモジュールの温度である第2温度との現在の温度差に基づいて、前記第1温度が前記目標温度になるように前記バッテリを温調した場合の前記充電設備への到着時の前記第2温度の予測値である第1予測値を導出し、
前記充電設備への到着時の前記バッテリの残容量と、前記第1予測値とに基づいて、前記第1温度が前記目標温度になるように前記バッテリを温調した場合の前記充電設備における充電時間である第1充電時間を予測し、
前記温度差に基づいて、前記第2温度が前記目標温度になるように前記バッテリを温調した場合の前記充電設備への到着時の前記第1温度の予測値である第2予測値を導出し、
前記充電設備への到着時の前記バッテリの残容量と、前記第2予測値とに基づいて、前記第2温度が前記目標温度になるように前記バッテリを温調した場合の前記充電設備における充電時間である第2充電時間を予測し、
前記第1充電時間と、前記第2充電時間との比較結果に基づいて、前記第1温度又は前記第2温度が前記目標温度になるように前記バッテリを温調する、
処理を行う処理部を備える、車両である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、車両が充電予定の充電設備に到着する前に、複数のバッテリモジュールを有するバッテリを適切に温調することが可能な制御方法、制御装置、及び車両を提供できる。そして、延いてはエネルギー効率の改善に寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】温調対象となるバッテリ11を搭載する車両10を示す図である。
【
図2】バッテリ11及び温調装置15の一例を示す図である。
【
図3】制御装置17によるバッテリ11の温調方法の一例を示す図である。
【
図4】制御装置17による具体的なバッテリ11の温調の一例を示す図である。
【
図5】制御装置17が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【
図6】制御装置17による具体的なバッテリ11の温調の他の一例を示す図である。
【
図7】制御装置17が実行する処理の他の一例を示すフローチャート(その1)である。
【
図8】制御装置17が実行する処理の他の一例を示すフローチャート(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の制御方法、制御装置及び車両の一実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。以下の説明において、前後、左右、上下は、車両のユーザ(例えば運転者)から見た方向に従い記載する。また、図面は、符号の向きに見るものとする。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に記載の発明を限定するものではなく、実施形態で説明されている特徴の組み合わせのすべてが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち2つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、以下では、同一又は類似の要素には同一又は類似の符号を付して、その説明を適宜省略又は簡略化することがある。
【0013】
[車両]
まず、本発明の制御方法による温調(温度調節)対象となるバッテリを搭載する車両の一例について説明する。
図1に示すように、本実施形態の車両10は、充放電可能な二次電池であるバッテリ11と、バッテリ11の電力が供給されることによって駆動輪DWを駆動可能なモータ13と、バッテリ11とモータ13との間で授受される電力を変換する電力変換装置12と、を備える電気自動車である。
【0014】
バッテリ11は、例えば、外部電源PSから受け付けた電力Pによって充電可能に構成される。外部電源PSは、例えば、所定の電圧(例えば100~200[V])且つ所定の周波数(例えば50~60[Hz])を有する交流を供給する商用電源である。
【0015】
具体的に説明すると、車両10は、外部電源PSと電気的に接続可能に構成される。車両10と外部電源PSとの電気的な接続は、物理的なコネクタやケーブルなどによって実現されてもよいし、非接触の電力伝送(Wireless Power Transfer)によって実現されてもよい。非接触の電力伝送を採用した場合、その電力伝送の方式としては、電磁誘導型、磁気共鳴型、電磁誘導型及び磁気共鳴型の組み合わせなどを用いることができる。
【0016】
外部電源PSから受け付けた電力Pは、例えば、車両10が備える充電器(図示省略)によって交流から直流へ変換されるとともにバッテリ11の充電に適した電圧へ変換された後に、バッテリ11へ供給される。これにより、車両10は、外部電源PSから受け付けた電力Pによってバッテリ11を充電することができる。
【0017】
バッテリ11は、それぞれが1つ又は複数の蓄電セルを有するバッテリモジュール11m(
図2を参照)を直列に複数接続することで高電圧(例えば100~400[V])を出力可能に構成され、電力変換装置12を介してモータ13と接続される。バッテリ11の蓄電セルとしては、例えば、リチウムイオン電池やニッケル水素電池などを用いることができる。
【0018】
また、バッテリ11には、バッテリ11の温度を検出する温度センサ11sが設けられる。温度センサ11sによって検出されたバッテリ11の温度を示す検出信号は、後述の制御装置17へ送られる。詳細は後述するが、本実施形態では、バッテリ11を構成するバッテリモジュール11mごとに温度センサ11sが設けられており、これら温度センサ11sによってバッテリモジュール11mごとの温度が検出されるようになっている。
【0019】
電力変換装置12は、インバータを含んで構成され、バッテリ11から出力される直流を交流へ変換し、変換した交流を、交流モータ(例えば三相交流モータ)によって実現されるモータ13へ供給する。また、電力変換装置12は、例えばDC/DCコンバータをさらに含んで構成され、バッテリ11とモータ13との間で授受される電力の電圧を変換してもよい。
【0020】
モータ13は、車両10が備える動力伝達装置(図示省略)を介して駆動輪DWと連結され、電力が供給されることによって車両10を走行させる駆動力(走行用の駆動力)Dを駆動輪DWへ出力する。したがって、車両10は、バッテリ11の電力をモータ13へ供給することによってモータ13が出力する駆動力によって走行することができる。すなわち、モータ13は、いわゆる「トラクションモータ」である。
【0021】
また、モータ13は、車両10の制動に伴って回生発電を行い、発電した電力(交流)を電力変換装置12へ出力することもできる。この場合、電力変換装置12は、モータ13から出力される交流を直流に変換し、変換した直流をバッテリ11へ供給する。これにより、車両10は、車両10の制動に伴ってモータ13が発電した電力によってバッテリ11を充電することもできる。
【0022】
さらに、車両10は、バッテリ11を温調可能な温調装置15と、車両10の走行をナビゲートするナビゲーション装置16と、車両10全体を統括制御する制御装置17と、を備える。
【0023】
温調装置15は、制御装置17の制御に従ってバッテリ11の温調を行う。本実施形態では、温調装置15は、バッテリ11を冷却可能なチラーとしての冷却装置15aと、バッテリ11を加温可能なヒータとしての加温装置15bとを備え、バッテリ11の温調として、バッテリ11の冷却と加温とを実行可能に構成される。
【0024】
ナビゲーション装置16は、例えば、車両10の現在位置を特定可能なGNSS(Global Navigation Satellite System)受信機を含んで構成され、GNSS受信機により特定された現在位置から、車両10のユーザ(例えば運転者)によって設定された目的地までの経路(以下、「誘導経路」とも称する)を、あらかじめ記憶された地図データなどを参照して決定する。このとき、ナビゲーション装置16は、例えば、目的地までの途中でバッテリ11の残容量(以下、「SOC」とも称する。SOC:State Of Charge)が所定値以下となることが予測されると、バッテリ11を充電可能な充電設備(例えば、いわゆる充電ステーション)を経由地として含む誘導経路に決定する。
【0025】
そして、ナビゲーション装置16は、誘導経路を決定すると、決定した誘導経路を車両10のディスプレイ(不図示)などに表示させることによってユーザに案内する。これにより、車両10は、誘導経路に沿って走行し得る。すなわち、誘導経路は、車両10が走行する予定の経路(以下、「走行予定経路」とも称する)となる。また、ナビゲーション装置16は、決定した誘導経路、すなわち走行予定経路を示す情報を、後述の制御装置17へ出力する。
【0026】
制御装置17は、電力変換装置12、モータ13、及び温調装置15を含む車両10全体を統括制御するコンピュータであり、本発明の制御装置の一例である。制御装置17は、例えば、ECU(Electric Control Unit)によって実現される。なお、制御装置17は、1つのECUによって実現されてもよいし、複数のECUが協調動作することによって実現されてもよい。
【0027】
制御装置17は、処理部17a、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)などの記憶部17b、及び制御装置17の内部と外部とのデータの入出力を制御するI/F部17c(インタフェース部)を備える。
【0028】
処理部17aは、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサであり、記憶部17bに記憶されたプログラムを実行する。記憶部17bには、処理部17aが実行するプログラムのほか、例えば第1充電時間マップM1や第2充電時間マップM2など、処理部17aが処理に使用するデータも格納される。第1充電時間マップM1や第2充電時間マップM2の詳細については後述する。
【0029】
例えば、制御装置17(換言すると処理部17a)は、温調装置15を制御してバッテリ11の温調を行う。制御装置17によるバッテリ11の温調方法の詳細については後述するため、ここでの説明を省略する。
【0030】
[バッテリ及び温調装置]
図2に示すように、バッテリ11は、複数のバッテリモジュール11mと、それらを収容するバッテリケース11cとを有する。各バッテリモジュール11mには、温度センサ11sがそれぞれ設けられており、各温度センサ11sの検出信号が制御装置17へ送られる。これにより、制御装置17は、各バッテリモジュール11mの温度を取得可能である。
【0031】
バッテリケース11cの底面(すなわち各バッテリモジュール11mの載置面)には、例えばLLC(Long Life Coolant)などの冷却水によって実現される温調媒体Wの流路となるウォータジャケット11jが設けられる。ウォータジャケット11jは、例えば、バッテリケース11cの底面において、各バッテリモジュール11mが載置される部分の下方を重複なく経由するように設けられる。
【0032】
温調装置15は、温調媒体Wを、ウォータジャケット11jを通して循環させることにより、バッテリ11を温調する。
図2に示す例では、温調媒体Wの循環経路(
図2中、太実線で示す矢印)における、バッテリ11の上流側に冷却装置15a及び加温装置15bが設けられ、バッテリ11の下流側にポンプ15pが設けられている。ポンプ15pは、温調媒体Wを圧送する電動ポンプであり、制御装置17によって制御される。
【0033】
冷却装置15aは、例えば、不図示のラジエータを備え、当該ラジエータを介した外気との熱交換により温調媒体Wを冷却可能である。一方、加温装置15bは、例えば、不図示の電気ヒータを備え、当該電気ヒータへの電力供給を制御することにより、温調媒体Wの加温を制御可能である。
【0034】
一例として、本実施形態では、冷却装置15aと加温装置15bとの間に、三方弁などによって実現される流路切替弁15vが設けられている。流路切替弁15vは、加温装置15bからの温調媒体Wの流路を、実線矢印で示すように冷却装置15aに導く第1流路1fと、破線矢印で示すように冷却装置15aを迂回させる第2流路2fとに切り替え可能に構成される。
【0035】
加温装置15bからの温調媒体Wの流路が第1流路1fの場合、温調媒体Wは、冷却装置15aで冷却されてバッテリ11に供給される。一方、第2流路2fの場合、加温装置15bからの温調媒体Wは、冷却装置15aを迂回するため、冷却されずにバッテリ11に供給される。流路切替弁15vは、例えば電気的に制御可能な電磁弁として構成され、制御装置17によって制御される。
【0036】
制御装置17は、温調装置15によるバッテリ11の温調としてバッテリ11の冷却を行う場合には、加温装置15bの電気ヒータに電力を供給しないようにする一方で冷却装置15aを動作させ、さらに、加温装置15bからの温調媒体Wの流路が第1流路1fとなるように流路切替弁15vを制御すればよい。また、制御装置17は、温調装置15によるバッテリ11の温調としてバッテリ11の加温を行う場合には、加温装置15bの電気ヒータに電力を供給するようにしたうえで、加温装置15bからの温調媒体Wの流路が第2流路2fとなるように流路切替弁15vを制御すればよい。なお、ここで説明した温調装置15の構成はあくまで一例であって、これに限られない。温調装置15は、制御装置17による制御に従ってバッテリ11を冷却及び加温できるものであればよく、その具体的な構成は特に限定されない。
【0037】
[制御装置によるバッテリの温調]
充電開始時には、バッテリ11が適切な温度であることが望まれる。そこで、制御装置17は、車両10の走行予定経路に含まれる充電設備にてバッテリ11が充電予定の場合(換言すると走行予定経路に充電設備が含まれる場合)に、当該充電設備への到着時のバッテリ11の温度が所定の目標温度Tgとなるように温調装置15によりバッテリ11を温調する。ここで、目標温度Tgとしては、例えば、バッテリ11のハードウェア的な特性などから充電するのに適した所定の温度が車両10の製造者によってあらかじめ定められる。これにより、制御装置17は、充電予定の充電設備への到着前にバッテリ11をあらかじめ適切な温度(すなわち充電に適した温度)としておくことができ、当該充電設備への到着後に直ちにバッテリ11の充電を開始させることを可能にする。したがって、充電設備への到着後にバッテリ11を温調するようにした場合に比べて、充電設備における充電時間を短縮でき、利便性の向上を図れる。なお、ここで、充電時間とは、例えば、バッテリ11を満充電状態にするのに必要な所要時間である。
【0038】
また、制御装置17は、充電予定の充電設備におけるバッテリ11の充電電力(以下、単に「充電電力」とも称する)に応じて、目標温度Tgを異ならせるようにしてもよい。このようにすれば、充電予定の充電設備への到着前に、バッテリ11を、充電電力を考慮した適切な温度としておくことが可能となる。ここで、充電電力は、例えば、充電予定の充電設備の上限出力(すなわち出力性能)とすることができる。また、充電電力は、充電予定の充電設備の上限出力とバッテリ11が受付可能な電力の上限とのうちの大きい方としてもよい。
【0039】
ところで、複数のバッテリモジュール11mを有するバッテリ11においては、バッテリモジュール11mごとに温度がばらつくことがある。例えば、加温装置15bによってバッテリ11が加温される場合、温調媒体Wの循環経路におけるウォータジャケット11jの下流側の端部である出口11outに近い箇所には、加温装置15bによって加温された温水が届きにくい。よって、この場合には、出口11outに近いバッテリモジュール11mは温まりにくくなる。一方、冷却装置15aによってバッテリ11が冷却される場合、ウォータジャケット11j内の温調媒体Wの温度は、温調媒体Wの循環経路におけるウォータジャケット11jの上流側の端部である入口11inから出口11outに近づくにつれて高くなる。よって、この場合には、出口11outに近いバッテリモジュール11mほど冷えにくくなる。さらに、バッテリケース11cの外側に近い位置に配置されたバッテリモジュール11mほど外気の影響を受けやすくなるため、外気が高い場合には高温に、外気が低い場合には低温になりやすい。
【0040】
このような要因から、バッテリ11においては、バッテリモジュール11mごとに温度がばらつき得る。そして、バッテリモジュール11mごとの温度がばらつくと、相対的に低温なバッテリモジュール11mの温度を基準とすれば充電設備への到着前に加温した方がよい一方で、相対的に高温なバッテリモジュール11mの温度を基準とすれば充電設備への到着前に冷却した方がよいといった状況が発生し得る。
【0041】
このような状況が発生した場合、仮に、一律で、相対的に低温なバッテリモジュール11mの温度を基準として加温すると、相対的に高温なバッテリモジュール11mの温度が高くなりすぎて、バッテリ11を効率よく充電できなくなるおそれがある。逆に、一律で、相対的に高温なバッテリモジュール11mの温度を基準として冷却すると、相対的に低温なバッテリモジュール11mの温度が低くなりすぎて、バッテリ11を効率よく充電できなくなるおそれがある。したがって、仮に、バッテリモジュール11mごとの温度のばらつきを考慮しないで充電設備への到着前に一律の温調を行うと、当該温調を行ったがゆえにかえって充電設備における充電時間が長くなるといった事態も発生し得る。
【0042】
そこで、制御装置17は、相対的に高温なバッテリモジュール11mの温度が目標温度Tgになるように充電設備への到着前に温調(例えば冷却)した場合の当該充電設備における充電時間と、相対的に低温なバッテリモジュール11mの温度が目標温度Tgになるように充電設備への到着前に温調(例えば加温)した場合の当該充電設備における充電時間とを比較し、その比較結果に基づいて当該充電設備への到着前に行う温調を決定する。
【0043】
以下、制御装置17によるバッテリ11の温調方法について、より詳細に説明する。なお、以下では、バッテリ11が有する複数のバッテリモジュール11mのうち最も高温なバッテリモジュール11mを「第1バッテリモジュール11m」とも称し、第1バッテリモジュール11mの温度を「第1温度TBMAX」とも称する。また、以下では、バッテリ11が有する複数のバッテリモジュール11mのうち最も低温なバッテリモジュール11mを「第2バッテリモジュール11m」とも称し、第2バッテリモジュール11mの温度を「第2温度TBMIN」とも称する。制御装置17は、各バッテリモジュール11mに設けられた温度センサ11sのそれぞれから受け付けた検出信号に基づいて、第1温度TBMAX及び第2温度TBMINを取得可能である。
【0044】
図3(a)に示すように、例えば、充電予定の充電設備への到着前の任意の時期である現在の第1温度TBMAXがT1以上、且つ、第2温度TBMINがT2以下であったとする。ここで、T1は、バッテリ11の冷却を行う条件として、車両10の製造者などによってあらかじめ定められた温度である。また、T2は、バッテリ11の加温を行う条件として、車両10の製造者などによってあらかじめ定められた温度である。なお、前述の目標温度Tgは、例えば、T2よりも高く且つT1よりも低い温度(すなわちT2<目標温度Tg<T1)とされる。
【0045】
この場合、制御装置17の処理部17aは、まず、第1温度TBMAXと第2温度TBMINとの現在の温度差ΔTを導出する。現在の温度差ΔTは、第1温度TBMAXから第2温度TBMINを減じることで導出可能である。
【0046】
次に、処理部17aは、現在の温度差ΔTに基づいて、第1温度TBMAXが目標温度Tgになるようにバッテリ11を温調した場合の充電設備への到着時の第2温度TBMINの予測値である第1予測値TP1を導出する。
図3(a)に示すように、例えば、処理部17aは、目標温度Tgから温度差ΔTを減じた温度を、第1予測値TP1として導出する。
【0047】
次に、処理部17aは、充電設備への到着時のバッテリ11のSOCの予測値(以下、単に「充電設備への到着時のバッテリ11のSOC」とも称する)と、第1予測値TP1とに基づいて、第1温度TBMAXが目標温度Tgになるようにバッテリ11を温調(ここでは冷却)した場合の充電設備における充電時間である第1充電時間Xを予測する。
図3(a)に示すように、例えば、処理部17aは、記憶部17bに記憶された第1充電時間マップM1を参照して、充電設備への到着時のバッテリ11のSOCと、導出した第1予測値TP1とに基づき第1充電時間Xを予測する。
【0048】
ここで、第1充電時間マップM1は、例えば、充電設備におけるバッテリ11のSOCと第2温度TBMINとの組み合わせごとの充電時間の予測値を規定したマップ(情報)である。一例として、充電設備への到着時のバッテリ11のSOCがα[%]と予測され、第1予測値TP1として導出された温度がβ[℃]であったとする。この場合、処理部17aは、第1充電時間マップM1において、バッテリ11のSOC「α[%]」、且つ第2温度TBMIN「β[℃]」に対応付けられた充電時間「γ[min]」を、第1充電時間Xとして導出する。
【0049】
また、第1充電時間マップM1は、充電設備の上限出力ごとに、当該充電設備におけるバッテリ11のSOCと第2温度TBMINとの組み合わせごとの充電時間の予測値を規定したマップであってもよい。一例として、充電予定の充電設備の上限出力がδ[Wh]であり、当該充電設備への到着時のバッテリ11のSOCがα[%]と予測され、第1予測値TP1として導出された温度がβ[℃]であったとする。この場合、処理部17aは、第1充電時間マップM1において、充電設備の上限出力「δ[Wh]」、且つバッテリ11のSOC「α[%]」、且つ第2温度TBMIN「β[℃]」に対応付けられた充電時間「γ[min]」を、第1充電時間Xとして導出すればよい。
【0050】
次に、処理部17aは、
図3(b)に示すように、現在の温度差ΔTに基づいて、第2温度TBMINが目標温度Tgになるようにバッテリ11を温調した場合の充電設備への到着時の第1温度TBMAXの予測値である第2予測値TP2を導出する。
図3(b)に示すように、例えば、処理部17aは、目標温度Tgに温度差ΔTを足した温度を、第2予測値TP2として導出する。
【0051】
次に、処理部17aは、充電設備への到着時のバッテリ11のSOCと、第2予測値TP2とに基づいて、第2温度TBMINが目標温度Tgになるようにバッテリ11を温調した場合の充電設備における充電時間である第2充電時間Yを予測する。
図3(b)に示すように、例えば、処理部17aは、記憶部17bに記憶された第2充電時間マップM2を参照して、充電設備への到着時のバッテリ11のSOCと、導出した第2予測値TP2とに基づき第2充電時間Yを予測する。
【0052】
ここで、第2充電時間マップM2は、例えば、充電設備におけるバッテリ11のSOCと第1温度TBMAXとの組み合わせごとの充電時間の予測値を規定したマップである。一例として、充電設備への到着時のバッテリ11のSOCがα[%]と予測され、第2予測値TP2として導出された温度がε[℃]であったとする。この場合、処理部17aは、第2充電時間マップM2において、バッテリ11のSOC「α[%]」、且つ第1温度TBMAX「ε[℃]」に対応付けられた充電時間「ζ[min]」を、第2充電時間Yとして導出する。
【0053】
また、第2充電時間マップM2は、充電設備の上限出力ごとに、当該充電設備におけるバッテリ11のSOCと第1温度TBMAXとの組み合わせごとの充電時間の予測値を規定したマップであってもよい。一例として、充電予定の充電設備の上限出力がδ[Wh]であり、当該充電設備への到着時のバッテリ11のSOCがα[%]と予測され、第2予測値TP2として導出された温度がε[℃]であったとする。この場合、処理部17aは、第2充電時間マップM2において、充電設備の上限出力「δ[Wh]」、且つバッテリ11のSOC「α[%]」、且つ第1温度TBMAX「ε[℃]」に対応付けられた充電時間「ζ[min]」を、第2充電時間Yとして導出すればよい。
【0054】
そして、処理部17aは、第1充電時間Xと、第2充電時間Yとの比較結果に基づいて、第1温度TBMAX又は第2温度TBMINが目標温度Tgになるようにバッテリ11を温調する。例えば、第1充電時間Xが第2充電時間Y以下であった場合、処理部17aは、充電予定の充電設備への到着時の第1温度TBMAXが目標温度Tgになるようにバッテリ11を冷却する。一方、第1充電時間Xが第2充電時間Yよりも長かった場合、処理部17aは、充電予定の充電設備への到着時の第2温度TBMINが目標温度Tgになるようにバッテリ11を加温する。
【0055】
以上に説明したように、制御装置17(処理部17a)は、現在の温度差ΔTに基づいて第1予測値TP1を導出し、充電予定の充電設備への到着時のバッテリ11のSOCと第1予測値TP1とに基づいて第1充電時間Xを予測する。また、制御装置17は、現在の温度差ΔTに基づいて第2予測値TP2を導出し、充電予定の充電設備への到着時のバッテリ11のSOCと第2予測値TP2とに基づいて第2充電時間Yを予測する。そして、制御装置17は、第1充電時間Xと第2充電時間Yとの比較結果に基づいて、充電予定の充電設備への到着時の第1温度TBMAX又は第2温度TBMINが目標温度Tgになるようにバッテリ11を温調する。これにより、車両10が充電予定の充電設備に到着する前に、複数のバッテリモジュール11mを有するバッテリ11を、当該充電設備における充電時間がより短くなるように適切に温調することが可能となる。したがって、充電時間が長期化するのを抑制して、利便性の向上を図れる。
【0056】
より具体的には、制御装置17は、第1充電時間Xが第2充電時間Yよりも短い場合には、充電予定の充電設備への到着時の第1温度TBMAXが目標温度Tgになるようにバッテリ11を温調(例えば冷却)する。一方、制御装置17は、第2充電時間Yが第1充電時間Xよりも短い場合には、充電予定の充電設備への到着時の第2温度TBMINが目標温度Tgになるようにバッテリ11を温調(例えば加温)する。これにより、バッテリ11が有する複数のバッテリモジュール11mのうち相対的に高温な第1バッテリモジュール11mが目標温度Tgになるような温調と、相対的に低温な第2バッテリモジュール11mが目標温度Tgになるような温調とのうち、充電予定の充電設備における充電時間が短くなる方を行うことができ、当該充電設備における充電時間がより短くなるように適切に温調することが可能となる。したがって、充電時間が長期化するのを抑制して、利便性の向上を図れる。
【0057】
また、前述したように、制御装置17は、充電予定の充電設備への到着時のバッテリ11のSOCと、第1予測値TP1と、当該充電設備の上限出力(すなわち出力性能)とに基づいて、第1充電時間Xを予測してもよい。同様に、制御装置17は、充電予定の充電設備への到着時のバッテリ11のSOCと、第2予測値TP2と、当該充電設備の上限出力とに基づいて、第2充電時間Yを予測してもよい。このようにすれば、制御装置17は、充電設備の上限出力(すなわち出力性能)も考慮して、第1バッテリモジュール11mが目標温度Tgになるような温調、又は第2バッテリモジュール11mが目標温度Tgになるような温調のいずれかを選択的に行うことが可能となる。
【0058】
また、制御装置17は、第1充電時間マップM1を用いて第1充電時間Xを予測することにより、第1充電時間Xを演算により求めるようにした場合に比べて、処理負荷を抑制しつつ、第1充電時間Xを予測できる。同様に、制御装置17は、第2充電時間マップM2を用いて第2充電時間Yを予測することにより、第2充電時間Yを演算により求めるようにした場合に比べて、処理負荷を抑制しつつ、第2充電時間Yを予測できる。
【0059】
[制御装置による具体的なバッテリの温調の一例]
次に、
図4を参照して、制御装置17による具体的なバッテリ11の温調の一例について説明する。
図4に示す例では、充電予定の充電設備までの距離又は所要時間が所定値以下となった(すなわち充電予定の充電設備に車両10がある程度近づいた)時期t1において第1温度TBMAXがT1以上であり、冷却要求が発生したとする。ただし、このとき、第2温度TBMINはまだT2よりも高く、加温要求は発生していない。このような場合、制御装置17は、時期t1から、第1温度TBMAXが目標温度Tgになるようにバッテリ11の冷却を開始する。これにより、バッテリ11が有する各バッテリモジュール11mの温度は、時期t1から低下していく。
【0060】
そして、時期t1後の時期t2において、第2温度TBMINがT2以下となり、加温要求が発生したとする。また、このとき、第1温度TBMAXはまだT1以上であり、冷却要求も引き続き発生している。このように、第1温度TBMAXがT1以上且つ第2温度TBMINがT2以下であって冷却要求と加温要求とが競合した場合に、制御装置17は、前述のように第1充電時間X及び第2充電時間Yを予測して、これらの比較結果に基づいて、充電予定の充電設備における充電時間がより短くなる方の温調を選択的に行う。
図4に示す例では、第2充電時間Yが第1充電時間Xよりも短かったため、制御装置17は、時期t2からは第2温度TBMINが目標温度Tgになるようにバッテリ11を加温している。
【0061】
[制御装置が実行する処理の一例]
次に、
図5を参照して、制御装置17が実行する処理の一例について説明する。制御装置17は、例えば、車両10のイグニッション電源がオンであるときに、
図5に示す一連の処理を所定の周期で繰り返し実行する。
【0062】
まず、制御装置17は、充電予定の充電設備への到着前にバッテリ11を冷却する冷却要求が発生したか否かを判定する(ステップS1)。ステップS1の処理において、制御装置17は、例えば、充電予定の充電設備までの距離又は所要時間が所定値以下であり、且つ、第1温度TBMAXがT1以上であることを条件に冷却要求ありと判定する。
【0063】
冷却要求なしと判定した場合(ステップS1:NO)、制御装置17は、充電予定の充電設備への到着前にバッテリ11を加温する加温要求が発生したか否かを判定する(ステップS2)。ステップS2の処理において、制御装置17は、例えば、充電予定の充電設備までの距離又は所要時間が所定値以下であり、且つ、第2温度TBMINがT2以下であることを条件に加温要求ありと判定する。
【0064】
加温要求なしと判定した場合(ステップS2:NO)、制御装置17は、そのまま
図5に示す一連の処理を終了する。一方、加温要求ありと判定した場合(ステップS2:YES)、制御装置17は、第2温度TBMINが目標温度Tgとなるようにバッテリ11を加温して(ステップS3)、
図5に示す一連の処理を終了する。
【0065】
また、ステップS1の処理において冷却要求ありと判定した場合(ステップS1:YES)、制御装置17は、ステップS2の処理と同様に、加温要求が発生したか否かを判定する(ステップS4)。
【0066】
加温要求なしと判定した場合(ステップS4:NO)、制御装置17は、後述するステップS10の処理へ進む。一方、加温要求ありと判定した場合(ステップS4:YES)、制御装置17は、第1温度TBMAXと第2温度TBMINとの現在の温度差ΔTに基づいて、第1温度TBMAXが目標温度Tgになるようにバッテリ11を冷却した場合の充電設備への到着時の第2温度TBMINの予測値である第1予測値TP1を導出する(ステップS5)。
【0067】
次に、制御装置17は、充電設備への到着時のバッテリ11のSOCと、第1予測値TP1とに基づいて、第1温度TBMAXが目標温度Tgになるようにバッテリ11を冷却した場合の充電設備における充電時間である第1充電時間Xを予測する(ステップS6)。
【0068】
次に、制御装置17は、第1温度TBMAXと第2温度TBMINとの現在の温度差ΔTに基づいて、第2温度TBMINが目標温度Tgになるようにバッテリ11を加温した場合の充電設備への到着時の第2温度TBMINの予測値である第2予測値TP2を導出する(ステップS7)。
【0069】
次に、制御装置17は、充電設備への到着時のバッテリ11のSOCと、第2予測値TP2とに基づいて、第2温度TBMINが目標温度Tgになるようにバッテリ11を加温した場合の充電設備における充電時間である第2充電時間Yを予測する(ステップS8)。
【0070】
次に、制御装置17は、ステップS6の処理により導出された第1充電時間Xと、ステップS8の処理により導出された第2充電時間Yとを比較し、第1充電時間Xが第2充電時間Y以下であるか否かを判定する(ステップS9)。
【0071】
第1充電時間Xが第2充電時間Y以下でないと判定した場合(ステップS9:NO)、すなわち、第2充電時間Yが第1充電時間Xよりも短いと判定した場合、制御装置17は、前述したステップS3の処理へ進む。一方、第1充電時間Xが第2充電時間Y以下と判定した場合(ステップS9:YES)、制御装置17は、第1温度TBMAXが目標温度Tgとなるようにバッテリ11を冷却して(ステップS10)、
図5に示す一連の処理を終了する。
【0072】
以上に説明したように、本実施形態によれば、充電予定の充電設備への到着前にバッテリ11を冷却した場合の第1充電時間Xと、充電予定の充電設備への到着前にバッテリ11を加温した場合の第2充電時間Yとを比較し、その比較結果に基づいて当該充電設備への到着前にバッテリ11を温調できる。これにより、車両10が充電予定の充電設備に到着する前に、複数のバッテリモジュール11mを有するバッテリ11を、当該充電設備における充電時間がより短くなるように適切に温調することが可能となる。したがって、充電時間が長期化するのを抑制して、利便性の向上を図れる。そして、車両10の商品性を向上させ、車両10を含む自動車の電動化を推進し、延いてはエネルギー効率の改善に寄与できる。
【0073】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、適宜、変形又は改良等が可能である。
【0074】
例えば、前述した実施形態では、冷却要求と加温要求とが競合した場合に冷却又は加温が行われるようにしたが、これに限られない。すなわち、冷却要求と加温要求とが競合した場合には、敢えて冷却も加温も行わない方が充電時間を短縮する観点からより有効な場合もあり得る。
【0075】
そこで、制御装置17は、前述した第1充電時間X及び第2充電時間Yに加えて、充電予定の充電設備への到着前にバッテリ11を温調(すなわち冷却及び加温)しなかった場合の当該充電設備における充電時間である第3充電時間Zを予測するようにしてもよい。そして、制御装置17は、第1充電時間Xと第2充電時間Yと第3充電時間Zとのうち、第1充電時間Xが最も短い場合には第1温度TBMAXが目標温度Tgになるようにバッテリ11を温調(例えば冷却)し、第2充電時間Yが最も短い場合には第2温度TBMINが目標温度Tgになるようにバッテリ11を温調(例えば加温)し、第3充電時間Zが最も短い場合にはバッテリ11の温調を行わないようにしてもよい。
【0076】
第3充電時間Zの予測に際し、制御装置17は、例えば、まず、現在の第1温度TBMAX又は第2温度TBMINに基づいて、バッテリ11を温調しなかった場合の充電設備への到着時の第1温度TBMAXの予測値である第3予測値TP3及び/又は第2温度TBMINの予測値である第4予測値TP4を導出する。第3予測値TP3は、例えば、これまでのバッテリ11の冷却を行っていないときの第1温度TBMAXの推移などから予測(導出)できる。同様に、第4予測値TP4は、例えば、これまでのバッテリ11の加温を行っていないときの第2温度TBMINの推移などから予測(導出)できる。
【0077】
そして、制御装置17は、充電設備への到着時のバッテリ11のSOCと、第3予測値TP3又は第4予測値TP4とに基づいて、第3充電時間Zを予測する。一例として、制御装置17は、充電設備への到着時のバッテリ11のSOCと、第3予測値TP3があらわす第1温度TBMAXに対応付けられた充電時間(以下、「第1候補充電時間」とも称する)を、第2充電時間マップM2を参照して導出する。さらに、制御装置17は、充電設備への到着時のバッテリ11のSOCと、第4予測値TP4があらわす第2温度TBMINに対応付けられた充電時間(以下、「第2候補充電時間」とも称する)を、第1充電時間マップM1を参照して導出する。そして、制御装置17は、第1候補充電時間と第2候補充電時間とを比較し、長い方を第3充電時間Zとして採用する。
【0078】
このように、第1充電時間Xと第2充電時間Yと第3充電時間Zとのうち、第1充電時間Xが最も短い場合には第1温度TBMAXが目標温度Tgになるようにバッテリ11を温調(例えば冷却)し、第2充電時間Yが最も短い場合には第2温度TBMINが目標温度Tgになるようにバッテリ11を温調(例えば加温)し、第3充電時間Zが最も短い場合にはバッテリ11の温調を行わないようにすることで、敢えて温調(すなわち冷却及び加温)を行わない方が充電時間を短縮できるような状況が発生したとしても、充電時間の短縮を図れる。
【0079】
なお、制御装置17は、前述した第1候補充電時間と第2候補充電時間とのうちの一方のみを導出し、これを第3充電時間Zとして採用するようにしてもよい。このようにした場合、制御装置17は、例えば、第1候補充電時間を第3充電時間Zとして採用するならば、前述した第3予測値TP3と第4予測値TP4とのうち第3予測値TP3のみを導出し、当該第3予測値TP3に基づいて第1候補充電時間(すなわち第3充電時間Z)を導出すればよい。一方、制御装置17は、第2候補充電時間を第3充電時間Zとして採用するならば、前述した第3予測値TP3と第4予測値TP4とのうち第4予測値TP4のみを導出し、当該第4予測値TP4に基づいて第2候補充電時間(すなわち第3充電時間Z)を導出すればよい。
【0080】
[制御装置による具体的なバッテリの温調の他の一例]
次に、
図6を参照して、制御装置17による具体的なバッテリ11の温調の他の一例について説明する。なお、ここでは、
図4の説明とは異なる箇所を中心に説明することとし、
図4の説明と共通する箇所についてはその説明を適宜省略又は簡略化する。
【0081】
図4の説明と同様に、時期t2において、冷却要求と加温要求とが競合した場合に、制御装置17は、第1充電時間X、第2充電時間Y、及び第3充電時間Zを予測する。そして、制御装置17は、第1充電時間Xと第2充電時間Yと第3充電時間Zとのうち、第1充電時間Xが最も短い場合には第1温度TBMAXが目標温度Tgになるようにバッテリ11を冷却し、第2充電時間Yが最も短い場合には第2温度TBMINが目標温度Tgになるようにバッテリ11を加温し、第3充電時間Zが最も短い場合にはバッテリ11の温調を行わないようにする。
図6に示す例では、第3充電時間Zが最も短かったため、制御装置17は、時期t2からは冷却も加温も行わないようにしている。
【0082】
また、
図6に示すように、この場合、制御装置17は、時期t2からはポンプ15pを駆動して温調媒体Wを循環させることにより、各バッテリモジュール11m間の温度のばらつきを抑制するようにしてもよい。例えば、このとき、制御装置17は、加温装置15bへの電力供給を停止させ、且つ流路切替弁15vによって温調媒体Wが冷却装置15aを迂回するようにした状態で、ポンプ15pを駆動すればよい。
【0083】
[制御装置が実行する処理の他の一例]
次に、
図7及び
図8を参照して、制御装置17が実行する処理の一例について説明する。なお、ここでは、
図5の説明とは異なる箇所を中心に説明することとし、
図5の説明と共通する箇所については同符号を付してその説明を適宜省略又は簡略化する。
【0084】
本例において、制御装置17は、ステップS7の処理の次に、現在の第1温度TBMAX又は第2温度TBMINに基づいて、バッテリ11を温調しなかった場合の充電設備への到着時の第1温度TBMAXの予測値である第3予測値TP3及び第2温度TBMINの予測値である第4予測値TP4を導出する(ステップS11)。
【0085】
次に、制御装置17は、充電設備への到着時のバッテリ11のSOCと、第3予測値TP3とに基づいて、前述した第1候補充電時間を導出する(ステップS12)。さらに、制御装置17は、充電設備への到着時のバッテリ11のSOCと、第4予測値TP4とに基づいて、前述した第2候補充電時間を導出する(ステップS13)。そして、制御装置17は、ステップS12の処理により導出された第1候補充電時間と、ステップS13の処理により導出された第2候補充電時間とを比較し、長い方を第3充電時間Zとして採用し(ステップS14)、
図8に示すステップS15の処理へ進む。
【0086】
次に、制御装置17は、第3充電時間Zが第1充電時間X及び第2充電時間Yよりも短いか否かを判定する(ステップS15)。第3充電時間Zが第1充電時間X及び第2充電時間Yよりも長いと判定した場合(ステップS15:NO)、制御装置17は、前述したステップS9の処理へ進む。一方、第3充電時間Zが第1充電時間X及び第2充電時間Yよりも短いと判定した場合(ステップS15:YES)、制御装置17は、ポンプ15pを駆動して各バッテリモジュール11m間の温度のばらつきを抑制し(ステップS16)、
図7及び
図8に示す一連の処理を終了する。
【0087】
以上、本発明の一実施形態について、添付図面を参照しながら説明したが、本発明が前述した実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、前述した実施形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0088】
なお、前述した実施形態では、本発明の制御装置を、車両10に搭載された制御装置17によって実現した例を説明したが、これに限られない。例えば、本発明の制御装置を、制御装置17と通信可能なサーバによって実現してもよい。この場合、例えば、前述した制御装置17の各処理を、サーバのCPUなどによって実現される処理部が行えばよい。また、本発明の制御装置は、制御装置17とサーバとが協働することによって実現されてもよく、例えば、前述した制御装置17の処理のうちの一部がサーバによって実行されてもよい。
【0089】
また、前述した実施形態で説明した制御方法は、あらかじめ用意されたプログラムをコンピュータ(換言するとプロセッサ)で実行することによって実現できる。本プログラム(制御プログラム)は、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体に記憶され、記憶媒体から読み出されることによって実行される。また、本プログラムは、フラッシュメモリなどの不揮発性(非一過性)の記憶媒体に記憶された形で提供されてもよいし、インターネットなどのネットワークを介して提供されてもよい。本プログラムを実行するコンピュータは、車両10に含まれるものであってもよいし、車両10と通信可能な外部装置(例えばサーバ)に含まれるものでもあってもよい。
【0090】
本明細書などには少なくとも以下の事項が記載されている。なお、括弧内には、前述した実施形態において対応する構成要素を示しているが、これに限定されるものではない。
【0091】
(1) 複数のバッテリモジュール(バッテリモジュール11m)を有するバッテリ(バッテリ11)と、前記バッテリを温調可能な温調装置(温調装置15、冷却装置15a、加温装置15b)と、を備える車両(車両10)を制御するコンピュータ(制御装置17)が行う制御方法であって、
前記コンピュータは、
前記車両の走行予定経路に含まれる充電設備にて前記バッテリが充電予定の場合に、前記充電設備への到着時の前記バッテリの温度が所定の目標温度(目標温度Tg)となるように前記温調装置により前記バッテリを温調可能に構成され、
前記コンピュータが、
前記複数のバッテリモジュールのうち、温度が相対的に高い第1バッテリモジュールの温度である第1温度(第1温度TBMAX)と、温度が相対的に低い第2バッテリモジュールの温度である第2温度(第2温度TBMIN)との現在の温度差(温度差ΔT)に基づいて、前記第1温度が前記目標温度になるように前記バッテリを温調した場合の前記充電設備への到着時の前記第2温度の予測値である第1予測値(第1予測値TP1)を導出し、
前記充電設備への到着時の前記バッテリの残容量と、前記第1予測値とに基づいて、前記第1温度が前記目標温度になるように前記バッテリを温調した場合の前記充電設備における充電時間である第1充電時間(第1充電時間X)を予測し、
前記温度差に基づいて、前記第2温度が前記目標温度になるように前記バッテリを温調した場合の前記充電設備への到着時の前記第1温度の予測値である第2予測値(第2予測値TP2)を導出し、
前記充電設備への到着時の前記バッテリの残容量と、前記第2予測値とに基づいて、前記第2温度が前記目標温度になるように前記バッテリを温調した場合の前記充電設備における充電時間である第2充電時間(第2充電時間Y)を予測し、
前記第1充電時間と、前記第2充電時間との比較結果に基づいて、前記第1温度又は前記第2温度が前記目標温度になるように前記バッテリを温調する、
処理を行う、制御方法。
【0092】
(1)によれば、温度が相対的に高い第1バッテリモジュールが所定の目標温度になるようにバッテリを温調した場合の充電設備における第1充電時間と、温度が相対的に低い第2バッテリモジュールが所定の目標温度になるようにバッテリを温調した場合の充電設備における第2充電時間との比較結果に基づいて、第1バッテリモジュールが目標温度になるような温調、又は第2バッテリモジュールが目標温度になるような温調のいずれかを選択的に行うことを可能にする。これにより、車両が充電予定の充電設備に到着する前に、複数のバッテリモジュールを有するバッテリを、当該充電設備における充電時間がより短くなるように適切に温調することが可能となる。したがって、充電時間が長期化するのを抑制して、利便性の向上を図れる。そして、延いてはエネルギー効率の改善に寄与できる。
【0093】
(2) (1)に記載の制御方法であって、
前記コンピュータが、
前記第1充電時間が前記第2充電時間よりも短い場合に、前記第1温度が前記目標温度になるように前記バッテリを温調し、
前記第2充電時間が前記第1充電時間よりも短い場合に、前記第2温度が前記目標温度になるように前記バッテリを温調する、
処理を行う、制御方法。
【0094】
(2)によれば、温度が相対的に高い第1バッテリモジュールが目標温度になるような温調と、温度が相対的に低い第2バッテリモジュールが目標温度になるような温調とのうち、充電予定の充電設備における充電時間が短くなる方を行うことができ、当該充電設備における充電時間がより短くなるように適切に温調することが可能となる。
【0095】
(3) (1)又は(2)に記載の制御方法であって、
前記コンピュータが、
前記充電設備への到着時の前記バッテリの残容量と、前記第1予測値と、前記充電設備の出力性能とに基づいて、前記第1充電時間を予測し、
前記充電設備への到着時の前記バッテリの残容量と、前記第2予測値と、前記充電設備の出力性能とに基づいて、前記第2充電時間を予測する、
処理を行う、制御方法。
【0096】
(3)によれば、充電設備の出力性能(例えば上限出力)も考慮して、温度が相対的に高い第1バッテリモジュールが目標温度になるような温調、又は温度が相対的に低い第2バッテリモジュールが目標温度になるような温調のいずれかを選択的に行うことを可能にする。
【0097】
(4) (1)から(3)のいずれかに記載の制御方法であって、
前記コンピュータが、
現在の前記第1温度又は前記第2温度に基づいて、前記バッテリを温調しなかった場合の前記充電設備への到着時の前記第1温度の予測値である第3予測値又は前記第2温度の予測値である第4予測値を導出し、
前記充電設備への到着時の前記バッテリの残容量と、前記第3予測値又は前記第4予測値とに基づいて、前記バッテリを温調しなかった場合の前記充電設備における充電時間である第3充電時間を予測する、
処理をさらに行い、
前記第1充電時間と前記第2充電時間と前記第3充電時間とのうち前記第1充電時間が最も短い場合に、前記第1温度が前記目標温度になるように前記バッテリを温調し、
前記第1充電時間と前記第2充電時間と前記第3充電時間とのうち前記第2充電時間が最も短い場合に、前記第2温度が前記目標温度になるように前記バッテリを温調し、
前記第1充電時間と前記第2充電時間と前記第3充電時間とのうち前記第3充電時間が最も短い場合に、前記バッテリの温調を行わない、
処理を行う、制御方法。
【0098】
(4)によれば、敢えて温調(すなわち冷却及び加温)を行わない方が充電予定の充電設備における充電時間を短縮できるような状況が発生したとしても、充電時間の短縮を図れる。
【0099】
(5) 複数のバッテリモジュールを有するバッテリと、前記バッテリを温調可能な温調装置と、を備える車両を制御する制御装置であって、
前記制御装置は、
前記車両の走行予定経路に含まれる充電設備にて前記バッテリが充電予定の場合に、前記充電設備への到着時の前記バッテリの温度が所定の目標温度となるように前記温調装置により前記バッテリを温調可能に構成され、
前記複数のバッテリモジュールのうち、温度が相対的に高い第1バッテリモジュールの温度である第1温度と、温度が相対的に低い第2バッテリモジュールの温度である第2温度との現在の温度差に基づいて、前記第1温度が前記目標温度になるように前記バッテリを温調した場合の前記充電設備への到着時の前記第2温度の予測値である第1予測値を導出し、
前記充電設備への到着時の前記バッテリの残容量と、前記第1予測値とに基づいて、前記第1温度が前記目標温度になるように前記バッテリを温調した場合の前記充電設備における充電時間である第1充電時間を予測し、
前記温度差に基づいて、前記第2温度が前記目標温度になるように前記バッテリを温調した場合の前記充電設備への到着時の前記第1温度の予測値である第2予測値を導出し、
前記充電設備への到着時の前記バッテリの残容量と、前記第2予測値とに基づいて、前記第2温度が前記目標温度になるように前記バッテリを温調した場合の前記充電設備における充電時間である第2充電時間を予測し、
前記第1充電時間と、前記第2充電時間との比較結果に基づいて、前記第1温度又は前記第2温度が前記目標温度になるように前記バッテリを温調する、
処理を行う処理部を備える、制御装置。
【0100】
(5)によれば、温度が相対的に高い第1バッテリモジュールが所定の目標温度になるようにバッテリを温調した場合の充電設備における第1充電時間と、温度が相対的に低い第2バッテリモジュールが所定の目標温度になるようにバッテリを温調した場合の充電設備における第2充電時間との比較結果に基づいて、第1バッテリモジュールが目標温度になるような温調、又は第2バッテリモジュールが目標温度になるような温調のいずれかを選択的に行うことを可能にする。これにより、車両が充電予定の充電設備に到着する前に、複数のバッテリモジュールを有するバッテリを、当該充電設備における充電時間がより短くなるように適切に温調することが可能となる。したがって、充電時間が長期化するのを抑制して、利便性の向上を図れる。そして、延いてはエネルギー効率の改善に寄与できる。
【0101】
(6) 複数のバッテリモジュールを有するバッテリと、前記バッテリを温調可能な温調装置と、制御装置と、を備える車両であって、
前記制御装置は、
前記車両の走行予定経路に含まれる充電設備にて前記バッテリが充電予定の場合に、前記充電設備への到着時の前記バッテリの温度が所定の目標温度となるように前記温調装置により前記バッテリを温調可能に構成され、
前記複数のバッテリモジュールのうち、温度が相対的に高い第1バッテリモジュールの温度である第1温度と、温度が相対的に低い第2バッテリモジュールの温度である第2温度との現在の温度差に基づいて、前記第1温度が前記目標温度になるように前記バッテリを温調した場合の前記充電設備への到着時の前記第2温度の予測値である第1予測値を導出し、
前記充電設備への到着時の前記バッテリの残容量と、前記第1予測値とに基づいて、前記第1温度が前記目標温度になるように前記バッテリを温調した場合の前記充電設備における充電時間である第1充電時間を予測し、
前記温度差に基づいて、前記第2温度が前記目標温度になるように前記バッテリを温調した場合の前記充電設備への到着時の前記第1温度の予測値である第2予測値を導出し、
前記充電設備への到着時の前記バッテリの残容量と、前記第2予測値とに基づいて、前記第2温度が前記目標温度になるように前記バッテリを温調した場合の前記充電設備における充電時間である第2充電時間を予測し、
前記第1充電時間と、前記第2充電時間との比較結果に基づいて、前記第1温度又は前記第2温度が前記目標温度になるように前記バッテリを温調する、
処理を行う処理部を備える、車両。
【0102】
(6)によれば、温度が相対的に高い第1バッテリモジュールが所定の目標温度になるようにバッテリを温調した場合の充電設備における第1充電時間と、温度が相対的に低い第2バッテリモジュールが所定の目標温度になるようにバッテリを温調した場合の充電設備における第2充電時間との比較結果に基づいて、第1バッテリモジュールが目標温度になるような温調、又は第2バッテリモジュールが目標温度になるような温調のいずれかを選択的に行うことを可能にする。これにより、車両が充電予定の充電設備に到着する前に、複数のバッテリモジュールを有するバッテリを、当該充電設備における充電時間がより短くなるように適切に温調することが可能となる。したがって、充電時間が長期化するのを抑制して、利便性の向上を図れる。そして、延いてはエネルギー効率の改善に寄与できる。
【符号の説明】
【0103】
10 車両
11 バッテリ
11m バッテリモジュール
15 温調装置
15a 冷却装置(温調装置)
15b 加温装置(温調装置)
17 制御装置(コンピュータ)
17a 処理部