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  • 特開-バッテリパック 図1
  • 特開-バッテリパック 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128600
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】バッテリパック
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/291 20210101AFI20240913BHJP
   H01M 50/224 20210101ALI20240913BHJP
   H01M 50/298 20210101ALI20240913BHJP
   H01M 50/293 20210101ALI20240913BHJP
   H01M 50/242 20210101ALN20240913BHJP
【FI】
H01M50/291
H01M50/224
H01M50/298
H01M50/293
H01M50/242
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037649
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】芝田 泰之
(72)【発明者】
【氏名】川▲瀬▼ 滉貴
【テーマコード(参考)】
5H040
【Fターム(参考)】
5H040AA14
5H040LL01
(57)【要約】
【課題】側面衝突からバッテリを保護することができ、小型化及び軽量化が可能なバッテリパックを提供する。
【解決手段】バッテリパック10は、バッテリモジュール20と、バッテリケース30と、バッテリケース30の内部に配置される配線類60と、を備える。バッテリケース30は、ボトムプレート31と、ボトムプレート31の外縁部から立設する側壁32と、対向する左右の側壁32に跨って配置されるクロスメンバ33と、を備える。クロスメンバ33は、少なくとも一部のボトムプレート31及び側壁32とともにアルミダイカストにより成形されているクロスメンバ本体52と、クロスメンバ本体52の上面に架設される補強プレート53と、を有する。クロスメンバ本体52は、バッテリケース30の中央部に凹部51を有し、配線類60は、クロスメンバ本体52と補強プレート53との間に形成される空間部55に配置される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリモジュールと、
前記バッテリモジュールを収容するバッテリケースと、
前記バッテリケースの内部に配置される配線若しくは配管と、を備える、バッテリパックであって、
前記バッテリケースは、
底面と
前記底面の外縁部から立設する側壁と、
対向する左右の前記側壁に跨って配置されるクロスメンバと、を備え、
前記クロスメンバは、
少なくとも一部の前記底面及び前記側壁とともにアルミダイカストにより成形されているメンバ本体と、
前記メンバ本体の上面に架設される補強プレートと、を有し、
前記メンバ本体は、前記バッテリケースの中央部に凹部を有し、
前記配線若しくは前記配管は、前記メンバ本体と前記補強プレートとの間に形成される空間部に配置される、バッテリパック。
【請求項2】
請求項1に記載のバッテリパックであって、
前記クロスメンバは、複数設けられ、
前記補強プレートは、複数の前記クロスメンバのうちの一部にのみ取り付けられている、バッテリパック。
【請求項3】
請求項1に記載のバッテリパックであって、
前記補強プレートは、高張力鋼から形成される、バッテリパック。
【請求項4】
請求項3に記載のバッテリパックであって、
前記補強プレートは、前記クロスメンバにボルトで固定されている、バッテリパック。
【請求項5】
請求項1に記載のバッテリパックであって、
前記補強プレートには、電子部品を取り付ける固定部が設けられている、バッテリパック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載可能なバッテリパックに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、低炭素社会又は脱炭素社会の実現に向けた取り組みが活発化し、車両においてもCO2排出量の削減やエネルギー効率の改善のために、電動化技術に関する研究開発が行われている。
【0003】
電動化技術ではバッテリが重要な役割を担っている。バッテリは高電圧部品であるため、衝撃からバッテリを保護する必要がある。しかしながら、バッテリが車両に搭載される場合、衝突などによりバッテリに大きな荷重が入力される可能性がある。これまでバッテリケースは、衝突荷重からバッテリを保護するため鉄製のバッテリケースが用いられていた。
【0004】
ところで、車両の航続距離を延ばすためには車両の軽量化が重要である。例えば、特許文献1には、バッテリケースのサイドメンバの一部に、鉄よりも軽量な素材であるアルミニウム合金を引抜形成したものを利用することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-97816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
また、バッテリケースの内部には、冷却用の配管、電力線、信号線等の配線、などが配策される。これらの配管や配線をバッテリの上方に配策すると、バッテリパックの高さが高くなってしまう。バッテリパックを車両の床下に配置する場合、バッテリパックの高さが高くなると、車室側に張り出し車室を十分に広く確保できない虞がある。
【0007】
本発明は、側面衝突からバッテリを保護することができ、小型化及び軽量化が可能なバッテリパックを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
バッテリモジュールと、
前記バッテリモジュールを収容するバッテリケースと、
前記バッテリケースの内部に配置される配線若しくは配管と、を備える、バッテリパックであって、
前記バッテリケースは、
底面と
前記底面の外縁部から立設する側壁と、
対向する左右の前記側壁に跨って配置されるクロスメンバと、を備え、
前記クロスメンバは、
少なくとも一部の前記底面及び前記側壁とともにアルミダイカストにより成形されているメンバ本体と、
前記メンバ本体の上面に架設される補強プレートと、を有し、
前記メンバ本体は、前記バッテリケースの中央部に凹部を有し、
前記配線若しくは前記配管は、前記メンバ本体と前記補強プレートとの間に形成される空間部に配置される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、バッテリパックの高さを低くすることができるとともに軽量化することができ、さらにバッテリケースで側面衝突の入力荷重を適切に受け止めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】バッテリパック10を構成するバッテリケース30の斜視図である。
図2】第1クロスメンバ331の空間部55を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のバッテリパックの一実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0012】
バッテリパック10は、図1に示すように、複数のバッテリモジュール20と、この複数のバッテリモジュール20を収容するバッテリケース30と、を備える。なお、図1には、2つのバッテリモジュール20のみを記載し、他のバッテリモジュール20については記載を省略している。バッテリケース30に収容されるバッテリモジュール20の数や配置については適宜設定され得る。
【0013】
バッテリケース30は、複数のバッテリモジュール20を搭載する矩形状のボトムプレート31と、ボトムプレート31の外縁部から立設された側壁32と、複数のクロスメンバ33と、を備える。
【0014】
側壁32は、バッテリケース30の前壁を構成するフロントプレート321と、後壁を構成するリアプレート322と、左壁を構成する左サイドプレート333Lと、右壁を構成する右サイドプレート333Rと、を備える。
【0015】
クロスメンバ33は、第1クロスメンバ331と、第1クロスメンバ331とは形状の異なる第2クロスメンバ332と、を備える。本実施形態のクロスメンバ33は、2本の第1クロスメンバ331と4本の第2クロスメンバ332とを有し、前方から順に第2クロスメンバ332、第1クロスメンバ331と交互に配置され、2本目の第1クロスメンバ331よりも後方には2本の第2クロスメンバ332が配置されている。なお、第1クロスメンバ331、第2クロスメンバ332の数と配置は適宜変更することができる。
【0016】
図2も参照して、第1クロスメンバ331は、中央部に凹部51が設けられたクロスメンバ本体52と、クロスメンバ本体52の上面に凹部51を覆うように架設される補強プレート53と、を備える。
【0017】
クロスメンバ本体52は、左サイドプレート333Lと右サイドプレート333Rとを接続する2枚の板状部材が前後方向に所定の隙間を介して対向して配置されている。クロスメンバ本体52には、凹部51を挟む左右両側であって板状部材の間に、複数(本実施形態では4つ)のナット部335が形成されている。
【0018】
クロスメンバ本体52の上面に架設される補強プレート53は、高張力鋼から形成される板状部材であり、左右方向の長さが、クロスメンバ本体52よりも短くなっている。補強プレート53は、クロスメンバ本体52に設けられたナット部335にボルト337で締結され、クロスメンバ本体52に固定されている。補強プレート53の幅(前後方向長さ)は、クロスメンバ本体52の幅(前後方向長さ)と略等しい。
【0019】
図1に示すように、第2クロスメンバ332は、中央部に向かって高さが低くなるように左サイドプレート333L及び右サイドプレート333Rから傾斜するように構成されている。第2クロスメンバ332の中央部の高さは、第1クロスメンバ331を構成するクロスメンバ本体52の凹部51の高さと略等しい。
【0020】
第2クロスメンバ332には、補強プレート53が設けられていない。補強プレート53は、複数のクロスメンバ33のうちの一部、即ち、第1クロスメンバ331にのみ設けられている。
【0021】
バッテリケース30は、第1クロスメンバ331の補強プレート53を除き、アルミニウムを含むアルミニウム合金から形成される。より具体的には、バッテリケース30のボトムプレート31、側壁32、第1クロスメンバ331のクロスメンバ本体52、及び第2クロスメンバ332は、アルミダイカストにより形成される。アルミダイカストは、アルミニウム合金を溶融し、ダイカストマシンを使って金型の中に高速で充填した後に高い圧力をかけることで形成される。
【0022】
バッテリケース30は、バッテリケース30のボトムプレート31、側壁32、第1クロスメンバ331のクロスメンバ本体52、及び第2クロスメンバ332が一体成形されてもよく、これらが2分割、若しくは3分割等に複数に分割形成された後、接合されてもよい。ただし、第1クロスメンバ331のクロスメンバ本体52は、少なくとも一部のボトムプレート31及び少なくとも一部の側壁32とともにアルミダイカストにより形成される。
【0023】
このように鉄よりも軽量のアルミニウム合金を用いてバッテリケース30が形成されるので、鉄製の板材を用いたバッテリケースに比べて、軽量化することができる。また、バッテリケース30の大部分がアルミダイカストから形成されることで、板金部材同士の接合工程を省略又は簡略化することができる。
【0024】
近年、バッテリパック10は大型化して重量が増加しているため、バッテリケース30の骨格部材であるクロスメンバ33は高い強度が必要とされている。その中で、バッテリケース30の軽量化のために、バッテリケース30を鉄製からアルミニウム合金へと変更すると同じ厚さでは強度が低下し、高張力鋼と同等の強度をアルミニウム合金で得るためには、クロスメンバ33の高さを拡幅する必要がある。しかし、クロスメンバ33の高さを拡大すると、バッテリパック10が車室側に張り出してしまう。そこで、補強プレート53のみを高張力鋼として、バッテリケース30の大部分をアルミニウム合金とすることで、側面衝突時の荷重を、ボトムプレート31と一体的に形成された第1クロスメンバ331のクロスメンバ本体52及び第2クロスメンバ332と、第1クロスメンバ331に設けられた補強プレート53との両方で受け止めることができる。
【0025】
また、バッテリケース30の内部には、バッテリモジュール20を冷却するウォータジャケットに冷媒を供給したり、ウォータジャケットから冷媒を排出したりする冷媒配管、及び/又は、バッテリケース30内のバッテリモジュール20とバッテリケース30外のDC線とを接続する配線、などが配置される。以下、これら配線若しくは配管を、配線類60と称する。これらの配線類60を、クロスメンバ33の上方に配策すると、配線類60が上方に張り出しバッテリパック10が車室側に張り出してしまう。
【0026】
そこで、配線類60は、クロスメンバ本体52と補強プレート53との間に形成される空間部55に配置する。より具体的に説明すると、配線類60は、クロスメンバ本体52の凹部51と補強プレート53との間に形成される空間部55に配置される。これにより、配線類60が上方に張り出すことを抑制できる。
【0027】
また、第1クロスメンバ331の左右方向の位置によらず、略同一高さを有するので、断面中心の高さ方向の位置が略一定となる。左右方向の位置によって断面中心の高さ方向の位置が異なると、衝撃荷重が入力されるとモーメントが発生するため、そこにさらなる補強が必要となる。第1クロスメンバ331を構成するクロスメンバ本体52に凹部51を設け、凹部51と補強プレート53の間に形成される空間部55に配線類60を配策することで、第1クロスメンバ331の左右方向の位置によらず断面中心の高さを略同一に設定することができる。
【0028】
さらに、第2クロスメンバ332の中央部の高さと第1クロスメンバ331を構成するクロスメンバ本体52の凹部51の高さは略等しいので、配線類60が第1クロスメンバ331及び第2クロスメンバ332に跨って前後方向に延びる長尺状の部材であったとしても、上下方向の位置を変えずにバッテリパック10内を前後方向に配策することができる。
【0029】
また、図2に示すように、補強プレート53には、電子部品を取り付ける固定部53aが設けられていることが好ましい。これにより、電子部品を取り付けるためのブラケットを小さくすることができる。固定部53aは、例えば、補強プレート53に形成された雌ねじ部であってもよく、補強プレート53に溶接されたナット部であってもよい。また、電子部品を取り付けるブラケットは、ボルト337でナット部335に共締めされてもよい。
【0030】
また、バッテリケース30の左右方向の中央部には、前後方向に延びるリブ34が形成されていることが好ましい。これにより、バッテリケース30の強度を向上できる。また、リブ34は、ナット部35を含むことが好ましい。このナット部35を利用して、配線類60を固定するブラケット等を締結することができる。
【0031】
以上、図面を参照しながら各種の実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0032】
本明細書には少なくとも以下の事項が記載されている。なお、括弧内には、上記した実施形態において対応する構成要素等を示しているが、これに限定されるものではない。
【0033】
(1) バッテリモジュール(バッテリモジュール20)と、
前記バッテリモジュールを収容するバッテリケース(バッテリケース30)と、
前記バッテリケースの内部に配置される配線若しくは配管(配線類60)と、を備える、バッテリパック(バッテリパック10)であって、
前記バッテリケースは、
底面(ボトムプレート31)と
前記底面の外縁部から立設する側壁(側壁32)と、
対向する左右の前記側壁に跨って配置されるクロスメンバ(クロスメンバ33)と、を備え、
前記クロスメンバは、
少なくとも一部の前記底面及び前記側壁とともにアルミダイカストにより成形されているメンバ本体(クロスメンバ本体52)と、
前記メンバ本体の上面に架設される補強プレート(補強プレート53)と、を有し、
前記メンバ本体は、前記バッテリケースの中央部に凹部(凹部51)を有し、
前記配線若しくは前記配管は、前記メンバ本体と前記補強プレートとの間に形成される空間部(空間部55)に配置される、バッテリパック。
【0034】
(1)によれば、クロスメンバをアルミダイカストで成形することで、バッテリパックを軽量化することができる。また、クロスメンバ本体の上面に補強プレートを架設することで、側面衝突時の荷重を底面と一体的に形成されたクロスメンバと補強プレートの両方で受け止めることができる。これにより、バッテリパックの高さを低く抑えながら、側面衝突時の荷重を適切に受け止めることができる。ところで、車幅方向における位置によって断面中心が上下にずれていると、側面衝突荷重を受け止めるために上下にずれている部分の補強が必要になる。メンバ本体に凹部を形成し、補強プレートによって配線若しくは配管を通す空間部を形成することで、車幅方向における位置によって断面中心が上下にずれず、側面衝突の入力荷重をより適切に受け止めることができる。
【0035】
(2) (1)に記載のバッテリパックであって、
前記クロスメンバは、複数設けられ、
前記補強プレートは、複数の前記クロスメンバのうちの一部(第1クロスメンバ331)にのみ取り付けられている、バッテリパック。
【0036】
(2)によれば、補強プレートを必要な部分にのみ配置することで部品点数の増加を抑え、生産性を向上させることができる。
【0037】
(3) (1)に記載のバッテリパックであって、
前記補強プレートは、高張力鋼から形成される、バッテリパック。
【0038】
(3)によれば、高張力鋼にすることで小さな断面で強度を確保することができる。
【0039】
(4) (3)に記載のバッテリパックであって、
前記補強プレートは、前記クロスメンバにボルト(ボルト337)で固定されている、バッテリパック。
【0040】
(4)によれば、配線若しくは配管を取り付けた後に固定できるので生産性が向上する。
【0041】
(5) (1)に記載のバッテリパックであって、
前記補強プレートには、電子部品を取り付ける固定部(固定部53a)が設けられている、バッテリパック。
【0042】
(5)によれば、補強プレートを利用して電子部品を取り付けることで、電子部品を取り付けるためのブラケットを小さくすることができる。
【符号の説明】
【0043】
10 バッテリパック
20 バッテリモジュール
30 バッテリケース
31 ボトムプレート(底面)
32 側壁
33 クロスメンバ
51 凹部
52 クロスメンバ本体(メンバ本体)
53 補強プレート
53a 固定部
55 空間部
60 配線類(配管)
331 第1クロスメンバ
337 ボルト
図1
図2